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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023105777
(43)【公開日】2023-07-31
(54)【発明の名称】風車ブレード用落雷抑制装置
(51)【国際特許分類】
   F03D 80/30 20160101AFI20230724BHJP
   F03D 1/06 20060101ALI20230724BHJP
【FI】
F03D80/30
F03D1/06 A
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108761
(22)【出願日】2022-07-06
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-12-12
(31)【優先権主張番号】P 2022006368
(32)【優先日】2022-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】511019144
【氏名又は名称】株式会社落雷抑制システムズ
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】松本 敏男
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA03
3H178AA22
3H178AA43
3H178BB43
3H178CC02
3H178DD51X
(57)【要約】
【課題】風車ブレードからの脱離を極力防止することができる風車ブレード用落雷抑制装置を提供する。
【解決手段】風車ブレード6の先端に設けられ、風車ブレード6への落雷を抑制する、風車ブレード用落雷抑制装置であって、風車ブレード6の先端に取り付けられた、非導電材料によって形成された電気絶縁体11と、電気絶縁体11の風車ブレード6と反対側に取り付けられた内部電極9と、内部電極9を所定の間隔をおいて取り囲むように、電気絶縁体11に取り付けられた外部電極10と、を備え、電気絶縁体11は、風車ブレード6の先端に固定手段13によって固定され、内部電極9は、接地線8が連結されている、落雷抑制装置7を提供する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
風車ブレードの先端に設けられ、前記風車ブレードへの落雷を抑制する、風車ブレード用落雷抑制装置であって、
前記風車ブレードの先端に取り付けられた、非導電材料によって形成された電気絶縁体と、前記電気絶縁体の前記風車ブレードと反対側に取り付けられた内部電極と、前記内部電極を所定の間隔をおいて取り囲むように、前記電気絶縁体に取り付けられた外部電極と、を備え、
前記電気絶縁体は、前記風車ブレードの先端に固定手段によって固定され、
前記内部電極は、接地手段が連結されている、風車ブレード用落雷抑制装置。
【請求項2】
前記内部電極は、プレート状に形成されている、請求項1に記載の風車ブレード用落雷抑制装置。
【請求項3】
前記内部電極は、中空状に形成されている、請求項1に記載の風車ブレード用落雷抑制装置。
【請求項4】
前記風車ブレードの先端に補強部材が一体に設けられ、前記補強部材と前記電気絶縁体とが、前記固定手段によって固定されている、請求項1~3の何れかに記載の風車ブレード用落雷抑制装置。
【請求項5】
前記外部電極は、その外面が前記風車ブレードの外面の延長面に略沿うように形成されている、請求項1~3の何れかに記載の風車ブレード用落雷抑制装置。
【請求項6】
前記固定手段は、前記接地手段を兼ねている、請求項1~3の何れかに記載の風車ブレード用落雷抑制装置。
【請求項7】
前記固定手段は、複数設けられている、請求項6に記載の風車ブレード用落雷抑制装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風車ブレード、特に、風力発電機の風車を構成している風車ブレードへの落雷を抑制することで、風力発電機の損傷を抑制する、風車ブレード用落雷抑制装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
再生可能エネルギーの一つとして、風力エネルギーが知られている。
【0003】
この風力エネルギーを用いて発電する風力発電機は、風車を備える。
その風車は、高い支柱と、その支柱の上端に装着され、発電機が内装されているナセルと、そのナセルに装着され、発電機を回転駆動させる多数の風車ブレードと、を構成に含む。
【0004】
このような風力発電機は、自然に発生する風で風車ブレードが回転し、それに連動して発電機が回転駆動することで、発電を行う。
【0005】
ここにおいて、風車ブレードが風を効率よく受け止められるように、支柱は高く形成され、風車ブレードは高い位置に設けられている。また、発電量が多くなるように、風車ブレードは長く形成されている。
【0006】
風車ブレードは、例えば、数十メートルから百メートル程度までの長さに形成されている。
ここにおいて、風車ブレードは、衝撃波の発生を回避するため、風車ブレードの先端の速さが音速を超えないように設計される。
例えば、回転速度が20回毎分である場合、実際の運用上、風車ブレードの長さの上限値は約110メートルと見積もられる。なお、この風車ブレードの長さにおいて、風車ブレードの先端の速さは約230メートル毎秒となる。
【0007】
ところで、このような風力発電機においては、風車ブレードが回転することで、風車ブレードの先端が、風力発電機全体で最も高い位置、すなわち、最も雷雲に近い位置にくる。
そのため、落雷が風車ブレードに向かって発生しやすい状態となっている。
【0008】
このような不都合への対策として、例えば、特許文献1に記載の風力発電用ブレードが知られている。
【0009】
特許文献1に記載の風力発電用ブレード(風車ブレードに対応)は、その先端に金属製の受雷部が設けられ、この受雷部に接地線が電気的に接続され、その接地線は、風車ブレード及び支柱の内部を経て大地に埋設されている。
【0010】
特許文献1に記載の風力発電用ブレードは、上記の構成によって、落雷が風力発電用ブレードに向かって発生した場合、受雷部にその落雷を誘引し、その雷撃を、接地線を介して大地に流すことができる。
これによって、特許文献1に記載の風力発電用ブレードは、落雷による雷撃によって、風車ブレード、ナセル、及びナセルに内装されている諸機器が損傷することを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2012-246812号公報
【特許文献2】特許第5839331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、このような従来の風車ブレードにおいては、次のような改善すべき問題点が残されている。
【0013】
従来の風車ブレードは、落雷が風車ブレードに向かって発生した場合でも、受雷部にその落雷を誘引することができるとは限らない。実際、風車ブレードに向かって発生した落雷が、風車ブレードの外面などに直撃するような事故が確認されている。
また、受雷部が落雷を誘引しているため、落雷が風車ブレードに向かって直撃する回数は増加している。
【0014】
そのため、従来の風車ブレードが、風車ブレード、ナセル、ナセルに内装されている諸機器、及び支柱への損傷を効果的に抑制することができているとは、必ずしも言えない。
【0015】
このような問題点は、落雷を被保護体のない場所に誘引する、という技術思想に起因している。
【0016】
一方、例えば、特許文献2に記載の落雷抑制装置が、落雷の発生メカニズムに着目した新しい対処技術として知られている。このような落雷抑制装置は、風車ブレードの先端に装着された場合、落雷が風車ブレードに向かって直撃する回数を大幅に減らすことができると考えられている。
【0017】
雷雲の内部では、電荷分離が発生し、その下部はマイナス電荷を帯びている。
例えば、雷雲の底部がマイナス電荷を帯びている場合、静電誘導によって、雷雲の下方に位置する大地の表面はプラス電荷を帯びている。このとき、大地に接地されている高い位置、例えば、避雷針、樹木などは、雷雲からの距離が短いため、プラス電荷の密度が大きくなっている。
ここにおいて、雷雲の内部では、電荷分離によって電位差が非常に大きくなっているため、大気の電気的な絶縁が局所的に破壊され、弱い放電が発生している。
【0018】
落雷においては、まず、雷雲から下方に進展しているマイナス電荷の弱い放電(ステップトリーダ)が、そのまま、大地に向かって断続的に進展する。
一方で、雷雲の底部と大地の表面近傍との電位差が非常に大きくなっているため、大気の電気的な絶縁が局所的に破壊され、大地の表面近傍、特に、避雷針、樹木などからその上方へ、プラス電荷の弱い放電(ストリーマ)が発生している。
そして、ステップトリーダとストリーマとが結合した場合、その放電経路にて、雷雲の底部と大地の表面とが電気的に接続され、その電位差に応じて非常に強い電流(帰還電流)が流れる。この帰還電流が、一般に落雷と呼ばれているものである。
【0019】
特許文献2に記載の落雷抑制装置は、キャパシタを形成している下部電極と上部電極とを備え、下部電極が接地されている。
【0020】
特許文献2に記載の落雷抑制装置は、上記の構成によって、下部電極が大地の表面が帯びている電荷と同種の電荷を帯びることで、上部電極が雷雲の底部が帯びている電荷と同種の電荷を帯び、雷雲の底部との電位差を緩和することができる。
これによって、特許文献2に記載の落雷抑制装置は、ストリーマの発生を抑制し、帰還電流としての落雷の直撃を抑制することできる。
【0021】
ここにおいて、特許文献2に記載の落雷抑制装置は、その外形形状が略球状に形成されていることで、上部電極に局所的に電荷密度の大きい箇所が形成されることを抑制することができる。
これによっても、特許文献2に記載の落雷抑制装置は、ストリーマの発生を抑制し、帰還電流としての落雷の直撃を抑制することできる。
【0022】
しかしながら、このような落雷抑制装置が風車ブレードの先端に装着されるためには、次のような問題が解決されなければならない。
【0023】
風車ブレードが回転した場合、風車ブレードの先端に装着される落雷抑制装置には、風車ブレードの先端から脱離する向きの強い遠心力が作用する。
例えば、回転速度が20回毎分であり、風車ブレードの長さが110メートルである場合、落雷抑制装置に作用する遠心力の大きさは、落雷抑制装置に作用する重力の大きさの約49倍と計算される。
【0024】
また、風車ブレードが回転した場合、風車ブレードの先端に装着される落雷抑制装置には、強い風圧がかかる。
例えば、回転速度が20回毎分であり、風車ブレードの長さが110メートルである場合、落雷抑制装置にかかる風圧は1平方メートルあたり約33キロニュートンと計算される。
このとき、落雷抑制装置の外形形状が球状であり、その直径が20センチメートルである場合、落雷抑制装置に作用する風圧抵抗力の大きさは約530ニュートン、すなわち、約54キログラムの質量に作用する重力の大きさと同程度のものと見積もられる。
【0025】
風車ブレードの先端に装着される落雷抑制装置は、上記の遠心力及び風圧抵抗力により、風車ブレードの先端から容易に脱離し、その落雷抑制効果を損なう恐れがある。
【0026】
以上の実状に鑑みて、本発明は、風車ブレードからの脱離を極力防止することができる風車ブレード用落雷抑制装置を提供することを、解決すべき課題とする。
加えて、本発明は、上記の風車ブレード用落雷抑制装置を提供するにあたり、風車ブレードの空力特性に与える影響を極力小さくすることを、更なる解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明は、前述した課題を解決するために、風車ブレードの先端に設けられ、風車ブレードへの落雷を抑制する、風車ブレード用落雷抑制装置であって、風車ブレードの先端に取り付けられた、非導電材料によって形成された電気絶縁体と、電気絶縁体の風車ブレードと反対側に取り付けられた内部電極と、内部電極を所定の間隔をおいて取り囲むように、電気絶縁体に取り付けられた外部電極と、を備え、電気絶縁体は、風車ブレードの先端に固定手段によって固定され、内部電極は、接地手段が連結されている。
【0028】
特許文献2に記載の落雷抑制装置と類似の機構にて、落雷抑制効果を奏することができる。
【0029】
例えば、雷雲の底部がマイナス電荷を帯びている場合、静電誘導によって、雷雲の下方に位置する大地の表面はプラス電荷を帯びている。
このとき、内部電極は、大地の表面と電気的に接続されているためにプラス電荷を帯びるので、静電誘導によって、外部電極はマイナス電荷を帯びることになる。
【0030】
外部電極が、雷雲の底部が帯びている電荷と同種であるマイナス電荷を帯びるため、風車ブレードが回転して、風車ブレードの先端が雷雲に対峙した場合、マイナス電荷を帯びている雷雲の底部と、同じくマイナス電荷を帯びている外部電極とは、その電位差が緩和されている。
そのため、外部電極からのストリーマの発生が抑制され、これによって、帰還電流としての落雷の外部電極への直撃が抑制される。
【0031】
このような落雷抑制効果は、外部電極におけるマイナス電荷の分布領域が、その下方を落雷の直撃から防護する障壁の役割を担うことで、風車全体及び風車に併設されている給配電施設及び送電線にまでも及ぶことが期待される。
【0032】
そして、本発明の使用者は、上記の構成によって、電気絶縁体を、内部電極及び外部電極を障害とせずに、風車ブレードの先端に固定することができる。
すなわち、内部電極及び外部電極が、電気絶縁体の風車ブレードと反対側に取り付けられているため、電気絶縁体は、風車ブレードの先端への固定手段を設ける部分を広範に有する。
【0033】
そのため、本発明の使用者は、固定手段の設置位置及び固定形態を比較的自由に選択して、電気絶縁体と風車ブレードの先端とを強固に固定することができる。
これによって、本発明は、遠心力及び風圧抵抗力に十分に抗して、風車ブレードの先端からの脱離を防ぎ、風車の健全性を確保することができる。
【0034】
また、本発明の一実施形態において、内部電極は、プレート状に形成されている。
本発明の使用者は、上記の構成によって、内部電極の形状に合わせて、外部電極の外形形状を扁平形状に形成することができる。
これによって、本発明は、風車ブレードが回転した場合の風圧抵抗力にさらに十分に抗して、風車ブレードの先端からの脱離を防ぎ、風車の健全性をさらに確保することができる。
【0035】
また、本発明の一実施形態において、内部電極は、中空状に形成されている。
本発明の使用者は、上記の構成によって、内部電極と外部電極とが形成しているキャパシタの極板面積を大きくし、その静電容量を大きくすることができる。
これによって、本発明は、外部電極にさらに多くの電荷を誘導させることで、また、外部電極における電荷の分布領域を拡大させることで、落雷抑制効果をさらに高めることができる。
【0036】
また、本発明は、好ましくは、風車ブレードの先端に補強部材が一体に設けられ、補強部材と電気絶縁体とが、固定手段によって固定されている。
本発明は、上記の構成によって、電気絶縁体と風車ブレードとの固定がさらに強化され、風車ブレードの先端からの脱離を防ぎ、より一層、風車の健全性を確保することができる。
【0037】
また、本発明において、好ましくは、外部電極は、その外面が風車ブレードの外面の延長面に略沿うように形成されている。
本発明は、上記の構成によって、風車ブレードの先端の外形形状が維持されることで、風車ブレードの空力特性に与える影響を極力小さくしながら、落雷抑制効果を奏することができる。
【0038】
また、本発明において、好ましくは、固定手段は、接地手段を兼ねている。
本発明は、上記の構成によって、その構成の数が削減され、組立工程を簡素化することができる。
【0039】
また、本発明において、さらに好ましくは、固定手段は、複数設けられている。
本発明は、上記の構成によって、内部電極が複数の固定手段で支持され、電気絶縁体にさらに安定して固定されることで、落雷抑制装置そのものの健全性を確保することができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明の風車ブレード用落雷抑制装置は、風車ブレードの先端との固定を強固なものとして、風車ブレードの健全性を確保することができる。
また、本発明の風車ブレード用落雷抑制装置は、外部電極の外面が、風車ブレードの外面の延長面に略沿うように形成されていることで、風車ブレードの空力特性に与える影響を極力小さくしながら、落雷抑制効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明の第一の実施形態が適用された風力発電設備の全体図である。
図2】本発明の第一の実施形態が適用された風車ブレードの断面図である。
図3】本発明の第一の実施形態が適用された風車ブレードの先端の断面図である。
図4図3のIV-IV線断面図である。
図5図3のV-V線断面図である。
図6】本発明の第二の実施形態が適用された風車ブレードの先端の断面図である。
図7図6のVII-VII線断面図である。
図8図6のVIII-VIII線断面図である。
図9】本発明の第三の実施形態が適用された風車ブレードの先端の断面図である。
図10図9のX-X線断面図である。
図11図9のXI-XI線断面図である。
図12】本発明の落雷抑制装置の連結ロッドから延びる接地線の経路を説明するための概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の第一の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1において、符号1は、本実施形態が適用される風力発電設備を示し、符号Aは、風力発電設備1が立設されている大地を示している。
【0043】
風力発電設備1は、風力発電用の風車2と、風車2において発電された電気エネルギーの給配電を行う給配電施設3及び送電線4と、を構成に含む。
【0044】
また、風車2は、支柱5と、支柱5の上端に設けられているナセル51と、ナセル51に内装されている発電機の駆動軸(図示略)に接続されているハブ52と、ハブ52に装着されている複数の風車ブレード6と、を構成に含む。
【0045】
上記の構成によって、風車2は、複数の風車ブレード6が、風を受けて回転することにより、ハブ52を介して発電機の駆動軸を回転させ、発電を行う。
【0046】
そして、図2に示すように、風車ブレード6は、その先端に落雷抑制装置7が設けられ、また、接地線8が内装されている。
【0047】
落雷抑制装置7は、図3~5に示すように、半円のプレート状に形成されている内部電極9(断面図示せず)と、断面が略半球殻状である略扁平形状に形成され、内部電極9を所定の間隔Lをおいて取り囲むように配置されている外部電極10と、風車ブレード6の先端に固定され、風車ブレード6と反対側に内部電極9及び外部電極10が取り付けられている電気絶縁体11と、を備える。
【0048】
ここで、風車ブレード6の先端は閉塞された構成となっているが、その風車ブレード6は、その先端から周壁にかけて補強プレート12が埋設されていることが好ましい。
【0049】
また、ここで、外部電極10の略半球殻状の断面は、風車ブレード6の外面の延長面に略沿うように形成されていることが好ましい。
【0050】
内部電極9及び外部電極10は、それぞれ、その下端が電気絶縁体11に所定の深さにて嵌合され、接着剤等によって接着固定されている。
【0051】
内部電極9及び外部電極10は、導電材料、例えば、ステンレス鋼を素材とする。
また、電気絶縁体11は、非導電材料、例えば、繊維強化プラスチック(FRP)を素材とする。
【0052】
電気絶縁体11は、風車ブレード6の先端面に面接触状態で配置され、固定手段13(断面図示せず)によって、強固に圧着固定されている。
【0053】
ここで、本実施形態において、固定手段13は、ボルトであり、風車ブレード6の先端面と補強プレート12を、風車ブレード6の内部から貫通し、電気絶縁体11に螺着している。これによって、電気絶縁体11は、風車ブレード6の先端に強固に圧着固定されている。
【0054】
また、風車ブレード6の先端面、電気絶縁体11、及び補強プレート12の中央部には、連続した貫通孔が形成され、これらの貫通孔に、風車ブレード6の内部から、連結ロッド14(断面図示せず)が挿通されている。
このとき、内部電極9の下端部には、連結ロッド14を螺入可能な連結部が嵌合され、溶接等によって固定されている。
【0055】
連結ロッド14は、導電材料、例えば、ステンレス鋼を素材とする。
【0056】
連結ロッド14は、その先端が、内部電極9の下端部に設けられている連結部に螺着されている。
これによって、連結ロッド14は、内部電極9を支持している。
【0057】
また、連結ロッド14は、その中間部に固定ナット15(断面図示せず)が螺合されている。
【0058】
固定ナット15は、風車ブレード6の先端面の内面に圧接され、内部電極9と協働して、風車ブレード6の先端、電気絶縁体11、及び補強プレート12を挟持固定している。
【0059】
接地線8は、その一端が、風車ブレード6の内部の連結ロッド14に電気的に接続されている。
ここで、本実施形態としては、接地線8は、圧着端子に接続され、連結ロッド14に螺合されている、固定ナット15とは別体の2個の固定ナットによって圧接挟持されている。
【0060】
また、接地線8は、支柱5の内部を介し、その他端が大地Aに埋設されている。
なお、図12に示す例として、支柱5の内面5bが導電金属製の場合には、接地線8は、大地Aに埋設されている代わりに、その内面5bに電気的に接続されていてもよい。
【0061】
また、接地線8は、図12に示すように、ナセル51の内部において、スリップブラシ81が設けられ、これによって、風車ブレード6が回転している状態であっても、接地線8による電気的な接続が維持される。
【0062】
以上のように構成されている本実施形態の落雷抑制装置7において、その使用者は、まず、内部電極9及び外部電極10が取り付けられている電気絶縁体11を、風車ブレード6の先端面に面接触状態で配置する。
次に、使用者は、この電気絶縁体11を、固定手段13によって、風車ブレード6の先端面に圧着固定する。
次に、使用者は、連結ロッド14を内部電極9の下端部に設けられている連結部に螺着する。
そして、使用者は、固定ナット15を風車ブレード6の先端面の内面に圧接させることで、固定ナット15と内部電極9とを協働させ、風車ブレード6の先端及び電気絶縁体11を挟持固定する。
【0063】
上記の流れによって、使用者は、落雷抑制装置7を組み立て、それを風車ブレード6の先端に固定させることができる。
【0064】
ここで、落雷抑制装置7の使用者は、電気絶縁体11を、内部電極9及び外部電極10を障害とせずに、風車ブレード6の先端に固定することができる。
すなわち、内部電極9及び外部電極10が、電気絶縁体11の風車ブレード6と反対側に取り付けられているため、電気絶縁体11は、風車ブレード6の先端への固定手段13であるボルトを設ける部分を広範に有する。
【0065】
そのため、落雷抑制装置7の使用者は、固定手段13であるボルトの設置位置及び本数などを比較的自由に選択して、電気絶縁体11と風車ブレード6の先端とを強固に固定することができる。
これによって、落雷抑制装置7は、遠心力及び風圧抵抗力に十分に抗して、風車ブレード6の先端からの脱離を防ぎ、風車2の健全性を確保することができる。
【0066】
また、雷雲が近づき、雷雲の底部がマイナス電荷を帯びている場合、静電誘導によって、雷雲の下方に位置する大地Aの表面はプラス電荷を帯びている。
このとき、内部電極9は、大地Aの表面と電気的に接続されているためにプラス電荷を帯びるので、静電誘導によって、外部電極10はマイナス電荷を帯びることになる。
【0067】
外部電極10が、雷雲の底部が帯びている電荷と同種であるマイナス電荷を帯びるため、風車ブレード6が回転して、風車ブレード6の先端が雷雲に対峙した場合、マイナス電荷を帯びている雷雲の底部と、同じくマイナス電荷を帯びている外部電極10とは、その電位差が緩和されている。
そのため、外部電極10からのストリーマの発生が抑制され、これによって、帰還電流としての落雷の外部電極10への直撃が抑制される。
【0068】
このような落雷抑制効果は、外部電極10におけるマイナス電荷の分布領域が、その下方を落雷の直撃から防護する障壁の役割を担うことで、風車2全体及び風車に併設されている給配電施設3及び送電線4にまでも及ぶことが期待される。
【0069】
本発明の第二の実施形態としては、図6~8に示すように、内部電極16が、内部電極9とは異なり、中空状に形成され、それに伴って、外部電極17の形状が、内部電極16との間隔を一定に保持するように、外部電極10から変更されている。
なお、電気絶縁体11の固定構造等は、第一の実施形態と略同様のため、同一符号を付して説明を簡略化する。
【0070】
内部電極16は、その外形形状が、断面が略半球殻状である略扁平形状、かつ中空状に形成され、その内部中央に、連結ロッド14の先端が螺着される連結部が設けられている。
【0071】
また、連結ロッド14に螺合されている固定ナット15は、風車ブレード6の先端面の内面に圧接されるものと、内部電極16の内部にて、電気絶縁体11に圧接されるものがあり、互いに協働して、風車ブレード6の先端及び電気絶縁体11を挟持固定している。
【0072】
本発明の第二の実施形態において、その使用者は、内部電極16と外部電極17とが形成しているキャパシタの極板面積を大きくし、その静電容量を大きくすることができる。
これによって、本発明の第二の実施形態に係る落雷抑制装置7は、外部電極17にさらに多くの電荷を誘導させることで、また、外部電極17における電荷の分布領域を拡大させることで、落雷抑制効果をさらに高めることができる。
【0073】
本発明の第三の実施形態としては、図9~11に示すように、内部電極18の固定構造が、内部電極9から変更されている。
なお、外部電極10及び電気絶縁体11の固定構造等は、第一の実施形態と略同様のため、同一符号を付して説明を簡略化する。
【0074】
複数の連結ロッド19(断面図示せず)は、内部電極18の下端部に嵌合され、支持板20(断面図示せず)と共に、溶接等によって固定されている。
それに伴って、風車ブレード6の先端面及び電気絶縁体11に形成されている連続した貫通孔は、複数設けられ、風車ブレード6の内部から連結ロッド19が挿通されている。
このとき、支持板20は、電気絶縁体11に埋設される態様となっている。
【0075】
また、連結ロッド19は、固定ナット21(断面図示せず)及び固定ナット22(断面図示せず)が螺合されている。
【0076】
固定ナット21は、風車ブレード6の先端面の内面に圧接され、内部電極18と協働して、風車ブレード6の先端及び電気絶縁体11を挟持固定している。
【0077】
さらに、固定ナット21は、固定ナット22と協働して、接地線8を圧接挟持している。
【0078】
本発明の第三の実施形態は、内部電極18が複数の連結ロッド19及び支持板20で支持され、電気絶縁体11にさらに安定して固定されることで、落雷抑制装置7そのものの健全性を確保することができる。
【0079】
ところで、風力発電設備1の使用者は、年に一回、接地線8が切断されていないことを点検する義務が課せられているため、連結ロッド14(以下、第三の実施形態では、連結ロッド19)と大地Aとの導通を確認するために、連結ロッド14にアクセスする必要が生じる。
【0080】
この場合、図12に示す例として、風車ブレード6は、その先端近傍に蓋付きの開口61が設けられていることが好ましい。
ここで、開口61の蓋(図示略)は、風車ブレード6の回転による風圧抵抗力が、開口61が閉じる向きに作用するような構造となっている。
【0081】
上記の構成によって、風力発電設備1の使用者は、点検のために、風車ブレード6の外部から、開口61を介して、その内部の連結ロッド14にアクセスし、連結ロッド14に導通試験のためのブローブを接続することができる。
【0082】
以上の各実施形態において、その使用者は、落雷抑制装置7に、風車のウィングレット構造となるように、非導電材料の略流線形の構造を付加し、風車ブレードの空力特性を向上させてもよい。
【0083】
なお、以上の各実施形態において示した各構成部材の諸形状等は一例であり、設計要求等に基づき種々変更可能である。
【符号の説明】
【0084】
1 風力発電設備
2 風車
3 給配電施設
4 送電線
5 支柱
51 ナセル
52 ハブ
6 風車ブレード
61 開口
7 落雷抑制装置
8 接地線
81 スリップブラシ
9 内部電極
10 外部電極
11 電気絶縁体
12 補強プレート
13 固定手段
14 連結ロッド
15 固定ナット
16 内部電極
17 外部電極
18 内部電極
19 連結ロッド
20 支持板
21 固定ナット
22 固定ナット
A 大地
L 間隔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2022-09-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
風車ブレードの先端に設けられ、前記風車ブレードへの落雷を抑制する、風車ブレード用落雷抑制装置であって、
前記風車ブレードの先端に取り付けられた、非導電材料によって形成された電気絶縁体と、前記電気絶縁体の前記風車ブレードと反対側に取り付けられた内部電極と、前記内部電極を所定の間隔をおいて取り囲むように、前記電気絶縁体に取り付けられた外部電極と、を備え、
前記電気絶縁体は、前記風車ブレードの先端に、固定手段によって固定され、
前記内部電極は、接地手段が連結されているとともに、半円のプレート状に形成されている、風車ブレード用落雷抑制装置。
【請求項2】
風車ブレードの先端に設けられ、前記風車ブレードへの落雷を抑制する、風車ブレード用落雷抑制装置であって、
前記風車ブレードの先端に取り付けられた、非導電材料によって形成された電気絶縁体と、前記電気絶縁体の前記風車ブレードと反対側に取り付けられた内部電極と、前記内部電極を所定の間隔をおいて取り囲むように、前記電気絶縁体に取り付けられた外部電極と、を備え、
前記電気絶縁体は、前記風車ブレードの先端に、固定手段によって固定され、
前記内部電極は、接地手段が連結されているとともに、断面が略半球殻状である中空状に形成されている、風車ブレード用落雷抑制装置。
【請求項3】
前記電気絶縁体は、前記風車ブレードの先端に取り付けられた状態で、前記風車ブレードの先端との接触面の略全面が平坦となるように形成されている、請求項1又は2に記載の風車ブレード用落雷抑制装置。
【請求項4】
前記電気絶縁体は、前記風車ブレードの先端に取り付けられた状態で、凹凸構造によって嵌合されるように形成されている、請求項3に記載の風車ブレード用落雷抑制装置。
【請求項5】
前記風車ブレードの先端に補強部材が一体に設けられ、前記補強部材と前記電気絶縁体とが、前記固定手段によって固定されている、請求項1又は2に記載の風車ブレード用落雷抑制装置。
【請求項6】
前記外部電極は、その外面が前記風車ブレードの外面の延長面に略沿うように形成されている、請求項1又は2に記載の風車ブレード用落雷抑制装置。
【請求項7】
前記固定手段は、前記接地手段を兼ねている、請求項1又は2に記載の風車ブレード用落雷抑制装置。
【請求項8】
前記固定手段は、複数設けられている、請求項7に記載の風車ブレード用落雷抑制装置。