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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023105797
(43)【公開日】2023-07-31
(54)【発明の名称】積層型電子部品
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20230724BHJP
   C04B 35/468 20060101ALI20230724BHJP
【FI】
H01G4/30 201L
H01G4/30 515
H01G4/30 201Z
H01G4/30 512
H01G4/30 517
C04B35/468
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210464
(22)【出願日】2022-12-27
(31)【優先権主張番号】10-2022-0007749
(32)【優先日】2022-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】田 鎬仁
(72)【発明者】
【氏名】金 ▲キョン▼俊
(72)【発明者】
【氏名】金 美京
(72)【発明者】
【氏名】魯 彦朱
(72)【発明者】
【氏名】柳 惠▲ウォン▼
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AD04
5E001AE02
5E001AE03
5E001AE04
5E082AA01
5E082AB03
5E082FF05
5E082FG26
5E082GG10
5E082PP08
5E082PP09
5E082PP10
(57)【要約】
【課題】積層型電子部材を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態による積層型電子部品は、複数の誘電体層及び上記誘電体層を間に挟んで互いに対向するように配置される内部電極を含む本体と、上記内部電極と連結され、且つ上記本体の外側に配置される外部電極と、を含み、上記誘電体層はBaTiO系母材主成分及び副成分を含み、上記副成分はジスプロシウム(Dy)及びテルビウム(Tb)を含み、上記テルビウム(Tb)の含量は上記母材主成分100モルに対して0.2モル以上1.0モル未満であり、上記誘電体層は、粒度分布計による累積粒度分布において体積累計50%となる地点(D50)の粒子サイズが60nm以上250nm以下である複数の誘電体結晶粒を含むことができる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の誘電体層及び前記誘電体層を間に挟んで互いに対向するように配置される内部電極を含む本体と、
前記内部電極と連結され、且つ前記本体の外側に配置される外部電極と、を含み、
前記誘電体層はBaTiO系母材主成分及び副成分を含み、且つ前記副成分はジスプロシウム(Dy)及びテルビウム(Tb)を含み、
前記テルビウム(Tb)の含量は、前記母材主成分100モルに対して0.2モル以上1.0モル未満であり、
前記誘電体層は、粒度分布計による累積粒度分布において体積累計50%となる地点(D50)の粒子サイズが60nm以上250nm以下である複数の誘電体結晶粒を含む、積層型電子部品。
【請求項2】
前記ジスプロシウム(Dy)の含量は、前記母材主成分100モルに対して0.2モル以上1.2モル未満である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項3】
前記母材主成分はBaTiOである、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項4】
前記誘電体結晶粒の全個数(A)に対する前記誘電体結晶粒の内部に気孔が存在する誘電体結晶粒の個数(b)は、b/A<0.01を満たす、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項5】
前記誘電体結晶粒の内部には気孔が存在せず、結晶粒界の三重点に気孔が位置する、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項6】
前記誘電体層の平均厚さ(td)は0.4μm以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項7】
前記内部電極の平均厚さ(te)は0.4μm以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項8】
前記内部電極の平均厚さ(te)に対する前記誘電体層の平均厚さ(td)はtd/te>2を満たす、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項9】
前記外部電極は前記本体に配置され、前記内部電極と連結される電極層を含み、
前記電極層は、
第1導電性金属及びガラスを含む第1電極層と、
前記第1電極層上に配置され、第2導電性金属及び樹脂を含む第2電極層と、を含み、
前記第1及び第2導電性金属は、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)及びこれらの合金からなる群から選択された1つ以上を含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項10】
前記外部電極は、
前記本体に配置され、前記内部電極と連結される電極層と、
前記電極層上に配置されるめっき層と、を含み、
前記めっき層は、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、鉛(Pb)及びこれらの合金からなる群から選択された1つ以上を含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項11】
前記誘電体層の常温比誘電率が3000以上である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項12】
前記積層型電子部品のMTTF(平均故障時間)は145時間以上である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
積層型電子部品の一つである積層セラミックキャパシタ(MLCC:Multi‐Layered Ceramic Capacitor)は、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)及びプラズマ表示装置パネル(PDP:Plasma Display Panel)などの映像機器、コンピュータ、スマートフォン及び携帯電話など、様々な電子製品の印刷回路基板に装着され、電気を充電又は放電させる役割を果たすチップ型のキャパシタである。また、キャパシタの適用範囲が益々広がるにつれて、小型化、高容量化及び高信頼性に対する要求が次第に拡大している。
【0003】
一方、高容量化及び高信頼性を達成するためにセラミック系誘電体組成物に添加剤元素を含ませて信頼性を向上させようとする試みがあったが、一定のサイズ以下に誘電体組成物を製造する場合、目標とする高信頼性レベルを達成しにくく焼成安定性が低いため、新たな機種の開発に困難があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-136298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとするいくつかの課題の一つは、セラミック系誘電体組成物に添加剤元素を添加して積層型電子部品の信頼性を向上させることである。
【0006】
ただし、本発明は上述の内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態による積層型電子部品は、複数の誘電体層及び上記誘電体層を間に挟んで互いに対向するように配置される内部電極を含む本体と、上記内部電極と連結され、且つ上記本体の外側に配置される外部電極と、を含み、上記誘電体層はBaTiO系母材主成分及び副成分を含み、且つ上記副成分はジスプロシウム(Dy)及びテルビウム(Tb)を含み、上記テルビウム(Tb)の含量は上記母材主成分100モルに対して0.2モル以上1.0モル未満であり、上記誘電体層は、粒度分布計による累積粒度分布において体積累計50%となる地点(D50)の粒子サイズが60nm以上250nm以下である複数の誘電体結晶粒を含むことができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明のいくつかの効果の一つは、セラミック系誘電体組成物に添加剤元素を添加して誘電体層を形成する場合、積層型電子部品の信頼性を向上させることができる。
【0009】
ただし、本発明の多様かつ有益な利点及び効果は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態による積層型電子部品の斜視図を概略的に示すものである。
図2図1のI-I’線に沿った断面図である。
図3】本発明の一実施例及び比較例によるTEM画像である。
図4】本発明の一実施例及び比較例による過酷信頼性の評価結果グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、具体的な実施形態及び添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲が以下で説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、通常の技術者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどは、より明確な説明のために誇張することができ、図面上の同じ符号で示される要素は同じ要素である。
【0012】
そして、図面において本発明を明確に説明するために説明と関係のない部分は省略し、図面に示された各構成の大きさ及び厚さは説明の便宜上、任意に示しているため、本発明は必ずしも図示されたものに限定されない。なお、同一思想の範囲内での機能が同一である構成要素については、同一の参照符号を用いて説明する。さらに、明細書全体において、ある部分がある構成要素を含むと言うとき、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0013】
図面において、第1方向は積層方向又は厚さT方向、第2方向は長さL方向、第3方向は幅W方向と定義することができる。
【0014】
積層型電子部品
図1は、本発明の一実施形態による積層型電子部品の斜視図を概略的に示すものであり、図2は、図1のI-I’線に沿った断面図である。以下では、図1及び図2を参照して、本発明の一実施形態による積層型電子部品について詳細に説明する。
【0015】
本発明の一実施形態による積層型電子部品は、複数の誘電体層及び上記誘電体層を間に挟んで互いに対向するように配置される内部電極を含む本体と、上記内部電極と連結され、且つ上記本体の外側に配置される外部電極と、を含み、上記誘電体層はBaTiO系母材主成分と副成分を含み、且つ上記副成分はジスプロシウム(Dy)及びテルビウム(Tb)を含み、上記テルビウム(Tb)の含量は上記母材主成分100モルに対して0.2モル以上1.0モル未満であり、上記誘電体層は、粒度分布計による累積粒度分布において体積累計50%となる地点(D50)の粒子サイズが60nm以上250nm以下である複数の誘電体結晶粒を含むことができる。
【0016】
本体110は、複数の誘電体層111及び上記誘電体層111を間に挟んで互いに対向するように配置される内部電極121、122を含むことができる。本体110の具体的な形状に特に限定はないが、図示のように、本体110は六面体形状又はこれと類似の形状からなることができる。焼成過程で本体110に含まれたセラミック粉末の収縮により、本体110は完全な直線を有する六面体形状ではないが、実質的に六面体形状を有することができる。
【0017】
本体110は、第1方向に互いに対向する第1面1及び第2面2、上記第1面1及び第2面2と連結され、第2方向に互いに対向する第3面3及び第4面4、第1面~第4面と連結され、第3方向に互いに対向する第5面5及び第6面6を含むことができる。
【0018】
本体110を形成する複数の誘電体層111は焼成された状態であって、隣接する誘電体層111の間の境界は走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を利用せずには確認しにくいほど一体化することができる。
【0019】
誘電体層111を形成する材料は、チタン酸バリウム(BaTiO)などのパウダーに、本発明の目的に応じて様々なセラミック添加剤、有機溶剤、可塑剤、結合剤、分散剤などを添加することができる。
【0020】
一方、誘電体層111の厚さ(td)は特に限定する必要はない。ただし、積層型電子部品100の小型化及び高容量化をより容易に達成するために誘電体層111の厚さ(td)は0.4μm以下であってもよい。ここで、誘電体層111の厚さ(td)は、誘電体層111の平均厚さを意味することができる。このとき、上記誘電体層111は、積層型電子部品の小型化及び高容量化のために400層以下であってもよく、常温比誘電率が3000以上であってもよい。
【0021】
誘電体層111の平均厚さは、本体110の長さ及び厚さ方向(L-T)の断面を倍率1万倍の走査型電子顕微鏡(SEM)で画像をスキャンして測定することができる。より具体的には、スキャンされた画像において1つの誘電体層111を長さ方向に等間隔である30個の地点でその厚さを測定し、平均値を測定することができる。上記等間隔の30個の地点は、活性部Acで指定することができる。また、このような平均値の測定を10個の誘電体層111に拡張して平均値を測定すれば、誘電体層111の平均厚さをさらに一般化することができる。
【0022】
また、上記誘電体層は、BaTiO系母材主成分と副成分とを含むことができる。より具体的に、誘電体層111を形成する上記BaTiO系母材主成分は、BaTiO、BaTiOにCa(カルシウム)、Zr(ジルコニウム)等が一部固溶した(Ba1-xCa)TiO、Ba(Ti1-yCa)O、(Ba1-xCa)(Ti1-yZr)O又はBa(Ti1-yZr)Oなどを含むことができるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0023】
上記副成分はジスプロシウム(Dy)及びテルビウム(Tb)を含み、上記テルビウム(Tb)の含量は上記母材主成分100モルに対して0.2モル以上1.0モル未満であってもよい。一般的に、積層型電子部品の内部における誘電体の信頼性を確保するために希土類系元素が副成分として多く添加されている。このような希土類系元素のうち、ジスプロシウム(Dy)は、母材主成分であるチタン酸バリウム(BaTiO)に添加時、Baサイトを置換しながら酸素空孔の濃度を減らすことにより、信頼性の改善に効果があることが知られている。
【0024】
一方、ジスプロシウム(Dy)よりイオン半径が大きい希土類元素、例えば、ランタン(La)、サマリウム(Sm)などを使用する場合、Baサイトをより効果的に置換することができるため、酸素空孔欠陥濃度の減少にはさらに効果的であるが、過度な半導体化により絶縁抵抗が急激に低下するという問題があるため、実際には適用されていない。
【0025】
したがって、信頼性を改善するために酸素空孔欠陥濃度を最小化させながらも、絶縁抵抗の確保のため半導体化も抑制するためには、ジスプロシウム(Dy)よりイオン半径はより大きいながらも、ジスプロシウム(Dy)とのサイズ差が大きくない希土類元素を適用する必要があった。
【0026】
また、一般的な希土類元素の原子価は固定原子価(Fixed‐valence)が+3価であるため、Ba(+2)を置換する場合、単一正電荷(single positive charge、D Ba)を有するが、テルビウム(Tb)のように+4の可変原子価(Multi‐valence)を有することができる場合、二重正電荷(double positive charge、D・・ Ba)を有することができるため、酸素空孔欠陥濃度の減少効果が2倍となることができる。
【0027】
逆に、イッテルビウム(Yb)のように+2の可変原子価を有する場合、Ba(+2)の置換時に、電荷的に中性であるため、酸素空孔欠陥濃度の減少に効果的でなく、このような理由によりイッテルビウム(Yb)の添加時にむしろ信頼性がさらに劣化することが知られている。
【0028】
結果として、ジスプロシウム(Dy)よりイオン半径は大きいが、絶縁抵抗を減少させる程度に半導体化がなされず、多重原子価を有するテルビウム(Tb)元素が酸素空孔欠陥濃度の減少に最も効果的であり、積層型電子部品誘電体の信頼性を大幅に改善させることができ、ジスプロシウム(Dy)とテルビウム(Tb)とを同時に適用した誘電体磁器組成物を添加することが重要であると言える。
【0029】
従来は、誘電体磁器組成物に希土類元素として、ジスプロシウム(Dy)、ガドリニウム(Gd)及びテルビウム(Tb)のうち1つ以上を添加する試みがあったが、テルビウム(Tb)の上述の効果に対する認識なしに単に希土類元素として列挙するか、又は少量添加された程度に過ぎず、信頼性の向上のために添加されるテルビウム(Tb)の含量に対する具体的な研究はほとんどなかったと考えられる。
【0030】
一方、上記テルビウム(Tb)が上記母材主成分100モルに対して0.2モル未満の場合、テルビウム(Tb)の添加による信頼性改善効果が不足する可能性があり、1.0モル以上の場合、信頼性の面では有利であるが、キュリー温度であるTc(Curie Temperature)が常温に移動しながら、容量温度係数(Temperature Coefficient of Capacitance、TCC)などの温度特性が大きく低下する可能性があり、半導体化による絶縁抵抗の低下が発生する可能性がある。
【0031】
なお、誘電体層は、粒度分布計による累積粒度分布において体積累計50%となる地点(D50)の粒子サイズが60nm以上250nm以下である複数の誘電体結晶粒を含むことができる。ここで、D50は、粒度分布計による累積粒度分布において体積累計50%となる地点の粒子サイズを意味することができる。例えば、D50=100nmというのは、体積累積100nm以下のサイズである粒子が50体積%を占めるという意味である。
【0032】
より具体的に、50nm以上150nm以下のD50サイズを有する固相微粒母材に副成分を添加して結晶粒成長を誘導して、誘電体結晶粒のD50サイズが60nm以上250nm以下であることができる。
【0033】
固相微粒母材がD50=50nmである場合、副成分の添加による結晶粒成長はD50を基準にして60nm以上100nm以下となることができ、固相微粒母材がD50=150nmである場合、副成分の添加による結晶粒成長はD50を基準にして170nm以上250nm以下であることができる。
【0034】
一方、誘電体結晶粒のD50サイズが50nm未満の場合には、誘電率の低下及び粒成長率の低下に伴う添加元素の固溶不足現象により期待効果の実現が不十分となる問題点が発生するおそれがあり、250nmを超える場合には、温度特性及びDC電圧による容量変化率が増加するおそれがあり、誘電体層当たりの誘電体結晶粒個数の減少又は誘電体内の気孔(pore)が発生することによって積層型電子部品の信頼性が低下するおそれがある。
【0035】
本発明の一実施形態において、上記ジスプロシウム(Dy)の含量は、上記母材主成分100モルに対して0.2モル以上1.2モル未満であってもよい。上記ジスプロシウム(Dy)が上記母材主成分100モルに対して0.2モル未満の場合、ジスプロシウム(Dy)の添加による信頼性改善効果が不足する可能性があり、1.2モル以上の場合、信頼性の面では有利であるが、Tc(Curie Temperature)が常温に移動しながら容量温度係数(TCC)などの温度特性が大きく低下する可能性があり、半導体化による絶縁抵抗の低下が発生する可能性がある。
【0036】
本発明の一実施形態において、上記誘電体結晶粒の全個数(A)に対して上記誘電体結晶粒の内部に気孔(pore)が存在する誘電体結晶粒の個数(b)は、b/A<0.01を満たすことができる。また、上記誘電体結晶粒の内部に気孔(pore)が存在せず、結晶粒界の三重点に気孔(pore)が配置されることができる。より具体的には、母材主成分に希土類元素が添加されることによって結晶粒成長が起こり得るが、このとき、結晶粒の内部に気孔(pore)が残存して積層型電子部品の信頼性が低下する可能性がある。
【0037】
これを防止するために、50nm以上150nm以下のサイズを有する固相微粒母材にジスプロシウム(Dy)又はテルビウム(Tb)を添加し、且つジスプロシウム(Dy)の含量が母材主成分100モルに対して0.2モル以上1.2モル未満となるように調節する場合又はテルビウム(Tb)の含量が母材主成分100モルに対して0.2モル以上1.0モル未満となるように調節する場合、信頼性が向上しつつ結晶粒の内部に気孔(pore)が存在しないか、又はほとんど存在しないように製造することができる。
【0038】
図3は、誘電体層の誘電体結晶粒のTEM画像である。これを参照すると、従来の水熱合成法等により作製した200nm未満のサイズのBaTiO系微粒母材にジスプロシウム(Dy)添加剤を添加したとき、180nm以上300nm以下の結晶粒サイズを有し、結晶粒の内部に気孔(pore)が形成されていることを図3の(a)から確認することができる。これに対し、本発明の一実施例である200nm未満のサイズのBaTiO固相微粒母材にジスプロシウム(Dy)及びテルビウム(Tb)を含む添加剤を添加したとき、結晶粒の内部に気孔(pore)がほとんど形成されず、三重点に気孔(pore)が形成されたことを図3の(b)から確認することができる。
【0039】
一方、内部電極121、122は、第1内部電極121及び第2内部電極122を含んで容量を形成する活性部Acを含むことができる。すなわち、本体110は、第1内部電極121が印刷された誘電体層111と第2内部電極122が印刷された誘電体層111とを第1方向に交互に積層した後、焼成して形成することができる。
【0040】
第1内部電極121は第4面4と離隔し、第3面3を介して露出し、第2内部電極122は第3面3と離隔し、第4面4を介して露出することができる。また、第1内部電極121は、第3面3、第5面5及び第6面6を介して露出することができる。このとき、第1内部電極121及び第2内部電極122は、間に配置された誘電体層111によって互いに電気的に分離されてもよい。
【0041】
上記のような構成によって、第1外部電極131及び第2外部電極132に所定の電圧を印加すると、第1内部電極121と第2内部電極122との間に電荷が蓄積される。このとき、積層型電子部品100の静電容量は、上記活性部Acにおいて第1方向に沿って互いに重なる第1内部電極121及び第2内部電極122の重なり面積と比例するようになる。
【0042】
内部電極121、122を形成する材料は特に限定されず、例えば、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金のうち1つ以上を含むことができ、導電性ペーストを使用して内部電極121、122を形成することができる。
【0043】
一方、内部電極121、122の厚さ(te)は特に限定する必要はない。ただし、積層型電子部品100の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、内部電極121、122の厚さ(te)は0.4μm以下であってもよい。ここで、内部電極121、122の厚さ(te)は、内部電極121、122の平均厚さを意味することができる。
【0044】
内部電極121、122の平均厚さは、本体110の長さ及び厚さ方向(L-T)の断面を1万倍率の走査型電子顕微鏡(SEM)で画像をスキャンして測定することができる。より具体的に、スキャンされた画像において1つの内部電極121、122を長さ方向に等間隔である30個の地点でその厚さを測定し、平均値を測定することができる。上記等間隔の30個の地点は活性部Acで指定することができる。また、このような平均値の測定を10個の内部電極層121、122に拡張して平均値を測定すれば、内部電極121、122の平均厚さをさらに一般化することができる。
【0045】
本発明の一実施形態において、上記内部電極の平均厚さ(te)に対する上記誘電体層の平均厚さ(td)は、td/te>2を満たすことができる。上記内部電極の平均厚さ(te)に対する上記誘電体層の平均厚さ(td)がtd/te>2を満たすことにより、積層型電子部品の十分な誘電率を確保することができ、同時に小型化及び高容量化を達成することができる。
【0046】
外部電極131、132は本体110の外部に配置され、内部電極121、122と連結され、本体110の第3面3及び第4面4に配置されることができる。外部電極131、132は、第1内部電極121及び第2内部電極122とそれぞれ連結された第1外部電極131及び第2外部電極132を含むことができる。より具体的に、外部電極は、本体110の第3面3に配置される第1外部電極131及び本体110の第4面4に配置される第2外部電極132を含むことができる。このとき、第2外部電極132は第1外部電極131とは異なる電位に連結されてもよい。
【0047】
本明細書では、積層型電子部品100が2つの外部電極131、132を有する構造を説明しているが、外部電極131、132の個数や形状などは内部電極121、122の形態やその他の目的に応じて変更することができる。
【0048】
より具体的には、外部電極131、132は、本体110に配置される電極層131a、132aを含むことができる。上記電極層131a、132aは、導電性金属及びガラスを含む焼成電極であってもよく、導電性金属及びベース樹脂を含む樹脂系電極であってもよい。また、電極層131a、132aは、本体110上に焼成電極及び樹脂系電極が順次に形成された形態であってもよい。また、電極層131a、132aは、本体110上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成されるか、又は焼成電極上に導電性金属を含むシートを転写する方法で形成されたものであってもよい。
【0049】
すなわち、上記電極層131a、132aは、第1導電性金属及びガラスを含む第1電極層と、上記第1電極層上に配置され、第2導電性金属及び樹脂を含む第2電極層とを含み、上記第1及び第2導電性物質は、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)及びこれらの合金からなる群から選択された1つ以上を含むことができる。
【0050】
外部電極131、132は、金属などのように電気伝導性を有する物質であれば、如何なるものを使用して形成されてもよく、電気的特性、構造的安定性などを考慮して具体的な物質が決定されてもよく、さらに、多層構造を有してもよい。
【0051】
本発明の一実施形態において、上記外部電極131、132は、上記電極層131a、132a上に配置されるめっき層131b、132bをさらに含むことができる。めっき層131b、132bは実装特性を向上させる役割を果たす。めっき層131b、132bは、スパッタ又は電解めっきによって形成されてもよく、複数の層で形成されてもよいが、特にこれに限定されるものではない。例えば、めっき層は、電極層131a、132a上に第1めっき層及び第2めっき層が順次に形成された形態であってもよく、上記第1めっき層及び第2めっき層は銅(Cu)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、鉛(Pb)及びこれらの合金からなる群から選択された1つ以上を含んでもよいが、めっき層の種類は特に限定されない。
【0052】
めっき層に対するより具体的な例を挙げると、めっき層はNi又はSnめっき層であってもよく、電極層131a、132a上にNiめっき層が第1めっき層、Snめっき層が第2めっき層として順次に形成された形態であってもよく、Snめっき層、Niめっき層及びPdめっき層が順次に形成された形態であってもよい。また、めっき層は、複数のNiめっき層及び/又は複数のSnめっき層を含んでもよい。めっき層を含むことにより、基板との実装性、構造的信頼性、外部に対する耐久度、耐熱性及び/又は等価直列抵抗値(Equivalent Series Resistance、ESR)を改善することができる。
【0053】
上記ガラスは、外部電極131、132の接合性及び耐湿性を向上させる役割を果たすことができる。すなわち、ガラス成分によって外部電極の電極層131a、132aと本体110の誘電体層111との間に接着を維持されることができる。上記ガラスは酸化物が混合された組成であってもよく、特に限定されるものではないが、ケイ素酸化物、ホウ素酸化物、アルミニウム酸化物、遷移金属酸化物、アルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物からなる群から選択された1つ以上であってもよい。
【0054】
本発明の一実施形態において、上記積層型電子部品のMTTF(Mean Time To Failure、平均故障時間)は145時間以上であってもよい。ここで、MTTF(Mean Time To Failure)とは、修理しない製品等の使用開始から故障するまでの平均時間を意味することができ、MTTFは(総稼働時間/故障した製品数)によって計算することができる。すなわち、修理できない装置の寿命期間を予想できる数値の一つであり、MTTF時間が長いほど製品の信頼性が良いと評価することができる。これに対する具体的な基準については後述する実施例で説明する。
【0055】
本明細書で説明する積層型電子部品100のサイズは特に限定する必要はない。ただし、小型化及び高容量化を同時に達成するためには、誘電体層111及び内部電極121、122の厚さを薄くして積層数を増加させなければならないため、0402(長さ×幅、0.4mm×0.2mm)以下のサイズを有する積層型電子部品100であるとき、本発明による信頼性向上効果がより顕著になることができる。
【0056】
以下では、実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明するが、これは、本発明の具体的な理解を助けるためのものであり、本発明の範囲が実施例によって限定されるものではない。
【0057】
(実施例)
本発明の一実施例1は、チタン酸バリウム(BaTiO)を含む誘電体組成物にジスプロシウム(Dy)及びテルビウム(Tb)を含む副成分を添加して結晶粒のD50サイズが120nm以上240nm以下である誘電体結晶粒を含む誘電体層を形成した。このとき、添加される副成分のうち、ジスプロシウム(Dy)はBaTiO100モルに対して0.9モル、テルビウム(Tb)はBaTiO100モルに対して0.5モル添加する。
【0058】
比較例1は、カルシウム(Ca)を含むチタン酸バリウム(BaTiO)であるBCT系誘電体組成物にジスプロシウム(Dy)を含む副成分を添加して誘電体結晶粒が形成された誘電体層を含む。このとき、添加される副成分のうちジスプロシウム(Dy)はBCT100モルに対して1.5モル含まれる。
【0059】
比較例2は、カルシウム(Ca)を含むチタン酸バリウム(BaTiO)であるBCT系誘電体組成物にジスプロシウム(Dy)を含む副成分を添加して誘電体結晶粒が形成された誘電体層を含む。このとき、添加される副成分のうち、ジスプロシウム(Dy)はBCT100モルに対して1.6モル含まれる。
【0060】
上記のような組成の誘電体層を含むサンプルチップに対して温度特性及び過酷信頼性(HALT)テストを行い、不良率を評価した。上記温度特性は容量温度係数(TCC)を測定し、X7S温度特性の基準は25℃容量基準に-55℃以上125℃の範囲で静電容量±22%を満たさなければならない。バイアスTCCの場合、25℃における容量を基準としたとき、上記の温度範囲内で容量変化率(%)の最大値を意味する。
【0061】
図4を参照すると、上記過酷信頼性(HALT)テストは、各比較例及び実施例別にサンプルチップ40個を基板上に実装し、温度150℃、電圧48Vを150時間印加して測定した。
【0062】
【表1】
【0063】
上記表1及び図4を参照すると、テルビウム(Tb)が添加されていない比較例1の場合、温度特性(X7S)を満たすことができず、過酷信頼性テスト(図4-(a))においても信頼性が改善されていない結果値を示している。同様に、テルビウム(Tb)が添加されていない比較例2の場合、積層数が高いにもかかわらず誘電率が相対的に低く、温度特性(X7S)は良好であるものの、過酷信頼性テスト(図4-(b))において信頼性が改善されていない結果値を示している。これに対し、テルビウムTbが添加された実施例1の場合、温度特性(X7S)も満たしており、過酷信頼性テスト(図4-(c))においても信頼性が改善された結果値を示している。
【0064】
さらに、比較例2及び実施例1について過酷信頼性テスト(HALT)を追加進行した結果を下記表2に記載した。このときの過酷信頼性テスト(HALT)は、比較例2及び実施例1それぞれのサンプルチップ40個を基板上に実装し、温度150℃、電圧75Vを125時間印加して測定した。
【0065】
【表2】
【0066】
上記表2を参照すると、テルビウム(Tb)が添加されていない比較例2の場合、温度150℃、75Vを印加したとき、最初故障時間が2.35時間であり、平均寿命が7.12時間であって、信頼性において良くない結果を示した。これに対し、テルビウム(Tb)が添加された実施例1の場合、同一条件において最初故障時間が39.02時間であり、平均寿命が145.65時間であって、信頼性が向上した結果を示した。
【0067】
したがって、実験例からテルビウム(Tb)及びジスプロシウム(Dy)が添加されることにより、積層型電子部品の信頼性が向上し得ることを判断することができる。
【0068】
以上のように、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は、上述した実施形態及び添付の図面によって限定されるものではない。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から逸脱しない範囲内で当該技術分野における通常の知識を有する者によって様々な形態の置換、変形及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属すると言える。
【符号の説明】
【0069】
100:積層型電子部品
110:本体
111:誘電体層
121、122:内部電極
131、132:外部電極
131a、132a:電極層
131b、132b:めっき層
図1
図2
図3
図4