(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023105802
(43)【公開日】2023-07-31
(54)【発明の名称】加熱可能な窓を備える自動車用装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
B60S 1/02 20060101AFI20230724BHJP
B60J 1/20 20060101ALI20230724BHJP
H05B 3/84 20060101ALI20230724BHJP
【FI】
B60S1/02 310
B60J1/20 C
H05B3/84
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023002088
(22)【出願日】2023-01-11
(31)【優先権主張番号】102022000000776
(32)【優先日】2022-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(71)【出願人】
【識別番号】519463178
【氏名又は名称】フェラーリ エッセ.ピー.アー.
【氏名又は名称原語表記】FERRARI S.p.A.
【住所又は居所原語表記】Via Emilia Est, 1163, 41100 MODENA, Italy
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ステファノ デ ファビース
【テーマコード(参考)】
3D225
3K034
【Fターム(参考)】
3D225AA02
3D225AB01
3D225AC09
3D225AD02
3D225AG65
3D225AG78
3K034AA02
3K034AA16
3K034BB05
3K034DA01
3K034DA09
3K034DA10
3K034EA04
3K034EA11
3K034HA09
3K034JA10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】単純かつ効果的な方法で、窓の除霜及び防曇が可能な加熱可能な窓を提供する。
【解決手段】自動車(1)用の装置は、導電性材料を含む加熱可能なフロントガラスと、導電性材料に電気的に接続された電源(4)と、環境量及び加熱可能なフロントガラスの状態量を検出して、検出された量に関連する信号を生成するように構成されたトランスデューサ手段(6)と、それらの信号を取得するためにトランスデューサ手段(6)に結合された制御ユニット(15)とを含み、制御ユニット(15)は、取得された信号の少なくとも1つに応じて、電源(4)によって導電性材料に供給される電力を、調整するように構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車(1)用の装置であって、
導電性材料を含む加熱可能な自動車の窓(3f)、特に加熱可能なフロントガラスと、
前記導電性材料に電気的に接続された電源(4)と、
トランスデューサ手段(6)であって、
a)前記自動車(1)の外部の大気状態及び/又は前記自動車(1)の車室内の熱力学的状態を示す、1つ以上の環境量を検出し、
b)前記加熱可能な自動車の窓(3f)の状態を示す、1つ以上の状態量を検出し、
c)前記検出された環境量及び状態量に関する、1つ以上の信号を生成する
ように構成される、トランスデューサ手段(6)と、
前記信号を取得するために前記トランスデューサ手段(6)に結合された、制御ユニット(15)と、を備え、
前記制御ユニット(15)が、前記取得された信号の少なくとも1つに応じて、前記電源(4)によって前記導電性材料に供給される電力を調整するように構成される、装置。
【請求項2】
前記環境量の少なくとも1つが、
雰囲気温度、
雰囲気圧力、
雰囲気相対湿度、
日射強度
のうちの量を示す、請求項1に記載の自動車。
【請求項3】
前記状態量の少なくとも1つが、前記加熱可能な自動車のガラス(3f)上の結露量又は結露の存在を示す、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記状態量の少なくとも1つが、前記加熱可能な自動車の窓(3f)の温度を示す、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記取得された信号が、前記加熱可能な自動車のガラス(3)の前記温度が閾値を超えることを示す場合に、前記供給電力を低減する、又は無効にするように、前記制御ユニット(15)が構成される、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記自動車の運転者が、前記制御ユニット(15)に指令信号を送信するように操作可能な指令装置(16)を更に備え、それによって、前記制御ユニット(15)が、前記指令装置(16)によって送信された前記指令信号に応答して、前記供給電力を増加させるように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記環境量の1つ以上、及び/又は前記状態量の1つ以上が、対応する閾値とのそれぞれの関係を満たすことを、前記取得された信号が示す場合に、ゼロ値から始まる前記供給電力の調整を開始するように、前記制御ユニット(15)が構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記制御ユニット(15)が、前記環境量及び前記状態量を含む入力量と、基準電力に対応する出力量との間の関数関係を処理するように構成され、前記基準電力が、所定の時間量内に前記加熱可能な自動車のガラス(3f)を除霜又は防曇するのに十分なものであり、それにより、前記制御ユニット(15)が、前記基準電力を調整対象として設定することによって、前記供給電力を調整するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
請求項1に記載の装置を備える、自動車(1)。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか一項に記載の装置を制御するための方法であって、
前記環境量を検出するステップと、
前記状態量を検出するステップと、
前記環境量及び前記状態量に関する信号を生成するステップと、
前記生成された信号の少なくとも1つに応じて、前記電源(4)によって前記導電性材料に供給される前記電力を調整するステップと、を含む方法。
【請求項11】
前記状態量の1つが、前記加熱可能な自動車の窓(3f)の温度を示し、前記方法は、前記生成された信号が、前記加熱可能な自動車のガラス(3f)の前記温度が閾値を超えたことを示す場合に、前記供給電力を低減する、又は無効にするステップを更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記生成された信号が、前記環境量の1つ以上、及び/又は前記状態量の1つ以上が、対応する閾値とのそれぞれの関係を満たすことを示す場合に、前記供給電力を調整する前記ステップが、前記供給電力のゼロ値から開始する、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記環境量及び前記状態量によって定義される入力量と、基準電力に対応する出力量との間の関数関係を処理するステップをさらに含み、前記基準電力が、前記加熱可能な自動車のガラス(3f)を所定の時間量内に除霜又は防曇するのに十分なものであり、そのため、前記供給電力を調整する前記ステップが、前記基準電力を調整対象として設定することを含む、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱可能な窓を備える自動車用の装置、並びに、その装置の制御方法に関する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本特許出願は、2022年1月19日に出願されたイタリア特許出願第102022000000776号の優先権を主張し、その全開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
知られているように、市販の自動車には、加熱可能な窓を備えたものがある。
【0004】
加熱可能な窓の中では、後部窓が最も一般的であるが、場合によっては、フロントガラス又はサイド窓も、加熱可能な窓で構成することができる。
【0005】
加熱可能な窓は、大きな電気抵抗を有する導電性材料を備えた自動車の窓であり、電流がその材料を通過する際、熱の形態でエネルギーを散逸させることができる。
【0006】
この材料は、例えば、電気的マイクロフィラメント、又はより好ましくは、ガラスに組み込まれた金属で構成することができる。
【0007】
より具体的には、加熱可能な窓は、複数の層を重ねることによって製造される場合があり、そのうちの少なくとも1つが導電性材料を含む。例えば、その層は、例えば金属粒子を透明なガラス化合物に溶解することによって金属化される。
【0008】
加熱可能な窓、又はより正確には、その中の導電性材料は、電力供給されるように電源に接続される。
【0009】
加熱可能な窓の典型的な機能は、本質的に2つ、すなわち窓の除霜及び防曇である。
【0010】
必要に応じて、固有のコマンドを使用して、自動車の運転者によって加熱可能な窓を作動させることができる。このコマンドは、所定の電力を窓に供給するために、運転者が操作することのできるものである。
【0011】
一般に、加熱可能な窓の性能及び機能性の改善を得る必要があると考えられており、そのため、高温空気流を窓に向かって直接導くように設計された、意味のない、したがってなくても済む、専用の通気口の存在をもたらす場合がある。
【0012】
本発明の1つの目的は、好ましくは単純かつ効果的な方法で、上記の必要性を満たすことである。
【発明の概要】
【0013】
この目的は、独立請求項に定義された自動車用の装置、及び方法によって達成される。
【0014】
各従属請求項は、本発明の特定の実施形態を定義する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
以下、非限定的な例として、添付の図面を参照して、本発明の一実施形態をよりよく理解するための説明を行う。
【
図1】簡潔にするために部品が取り除かれた自動車の平面図であり、本発明による装置を含むものである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1において、参照番号1は、全体として自動車を示すために使用される。
【0017】
自動車1は、本体2、及び本体2に結合された、複数の自動車の窓を備える。これらの窓は、
図1において参照番号3d、3e、3fで示される。本体2は、運転者及び1人又はそれ以上の同乗者を収容する、自動車1の車室を画定する。以下、自動車1の内部とは、本体2によって画定される車室を意味するものであると理解され、一方、自動車の外部は、本体2の外部環境によって画定されるものである。
【0018】
自動車1はまた、エンジン8、及び特にエンジン8用の冷却流体といった調整流体によって、エンジン8を調整するための調整装置9、並びに、車室内の空気を調整するための、更なる調整装置10を備える。エンジン8、及び装置9、10は公知であり、自動車分野で一般に使用されるものであるため、詳細な説明は行わない。
【0019】
自動車1はまた、調整装置10を制御するように構成された制御ユニット11、並びに、運転者が操作して車室内の所望の温度を設定することができる、指令装置12を備える。制御ユニット11は、指令装置12によって所望の温度と関連付けられた情報を取り込み、設定点として所望の温度を設定することによって、調整装置10を制御するように構成されている。
【0020】
知られているように、例えば開ループ制御法又は閉ループ制御法といった、設定点に基づいて制御ユニット11が適用することのできる、様々な制御則が存在する。
【0021】
自動車の窓の1つ、特に、より具体的にはフロントガラスを画定する窓3fは、加熱可能な窓、すなわち、熱を発生させるように制御することのできる窓である。より詳細には、窓3fは電気的に制御することができる。言い換えれば、窓3fに供給される電力を散逸させることによって、熱が生成される。
【0022】
したがって、窓3fは、先行技術の説明において上述したように、例えば、電気的マイクロフィラメント又は金属化層などの、導電性材料を含む。
【0023】
詳細には、窓3fは、中間金属化層を含む、複数の層を備える。
【0024】
窓3d、3eも、それぞれ導電性材料を備えることができ、したがって、窓3fの代わりに、又はそれに加えて加熱可能であり得るため、窓3fを参照して上述したすべてのことは、限定的なものと理解されるべきではない。
【0025】
自動車1はまた、導電性材料に電気的に接続された、電源4を備える。
【0026】
特に、自動車1は、導電性材料に電気的に結合されたコネクタ5、及び、電源4をコネクタ5に接続する電気ケーブル7を備える。
【0027】
電源4は制御可能であり、すなわち、いずれの場合にも、導電性材料に電力を供給するのに適している。
【0028】
導電性材料に供給される電力は、窓3fが温まるように、少なくとも部分的に熱の形で散逸されなければならない。このようにして、自動車1の内部の熱力学的状態、及び/又は自動車1の外部の大気状態に起因して、氷の層又は結露が窓3fに形成される場合に、窓3fを除霜又は防曇することが可能である。
【0029】
電源4に加えて、自動車1はトランスデューサ手段6も備える。
【0030】
手段6は、自動車1の外部の大気状態、及び/又は、自動車1の車室内の熱力学的状態を示す、1つ以上の環境量を検出するように構成される。
【0031】
更に、手段6は、窓3fの状態を示す、1つ以上の状態量を検出するように構成される。
【0032】
更に、手段6はまた、検出された量に関連する、1つ以上の信号を生成するように構成される。
【0033】
より詳細には、環境量の少なくとも1つは、雰囲気温度、雰囲気圧力、雰囲気相対湿度、及び、特に窓3fを介した日射強度のうちの1つを示す。
【0034】
具体的には、雰囲気温度は、自動車1の外部の温度、又は車室の温度とすることができる。手段6によって検出される環境量には、自動車1の外部の温度を示す量と、車室の温度を示す量との両方を含むことが好ましい。
【0035】
このことは、雰囲気圧力及び雰囲気相対湿度にも同様に当てはまり、そのため、自動車1の内部及び外部に関するいくつかの環境量が、手段6によって検出され得る。したがって、手段6は、自動車1の内部の圧力、自動車1の外部の圧力、自動車1の内部の湿度率、及び自動車1の外部の湿度率をそれぞれ示す量を検出することができる。
【0036】
より正確には、湿度率とは相対湿度率である。
【0037】
手段6は、それぞれ環境量を検出し、関連する信号を生成するための複数のトランスデューサ、又はより少ない数のトランスデューサを備えることができ、各トランスデューサは、2つ以上の環境量を検出し、1つ以上の関連する信号を生成するように構成される。実際、各信号は、検出された唯一の環境量、又はいくつかの環境量、又は検出されたすべての環境量にさえ関連し得る。当然ながら、手段6は、環境量を1つだけ検出し、単一の関連信号を生成するための、トランスデューサを1つだけ備えることもできる。
【0038】
個々のトランスデューサは公知のものであり、したがって詳細な説明は行わない。
【0039】
概して、これ以降、「~を示す量」という表現は、示された実際の量それ自体も含む。例えば、車室内の温度を示す量は、その温度自体であり得る。このことは、この説明のすべての量に当てはまる。更に、「示す」という用語は、示された量又は状態が、例えば、計算値又は推定値を使用して、その示す量によって説明又は記述され得る、という意味で使用される。
【0040】
状態量の1つは、ガラス3f上の結露量、又は結露の存在を示すことが好ましい。この場合、手段6は、窓3f上の結露量を検出するように設計された公知のフォグセンサ、例えば光学センサを含む、特定のトランスデューサを備えることができる。したがって、特定のトランスデューサは、状態量を検出し、関連する信号を生成するように構成される。
【0041】
その代わりに、又は加えて、より詳細には、状態量のうちの1つは、窓3fの温度を示す。この場合、手段6は、状態量を検出し、関連する信号を生成するように構成された、特定の温度トランスデューサを備えることができる。
【0042】
好都合には、手段6はまた、環境量及び/又は状態量によって示される量又は状態に関連する、他の量を検出するように構成され、したがって、検出された環境量及び/又は状態量とともに、それを算出又は推定するのに有用である。
【0043】
例えば、これらの他の量には、装置9の調整流体の温度を示す量が含まれる。この温度は、装置10の制御結果に影響を及ぼし、したがって、例えば、車室の実際の温度及び/又は車室の湿度率によって表される、車室内の実際の環境状態又は熱力学的状態に影響を及ぼす。実際、装置10が車室の空気を加熱するように制御される実施例では、エンジン8が温かいとき、すなわち、調整流体の温度が所望の温度を超えるときに、運転者によって設定された所望の温度に実際に到達することができる。したがって、車室内の実際の熱力学的状態は、調整流体の温度に依存する。このように、車室内の実際の熱力学的状態を算出又は推定するために、調整流体の温度を示す量を、特に所望の温度とともに使用することができる。
【0044】
所望の温度は検出されるものではないが、いずれにせよ、制御ユニット11が利用することのできる情報である。
【0045】
本発明によれば、自動車1は、手段6によって生成された信号を取得するために、それに結合された、制御ユニット15を備える。制御ユニット15は、取得された信号の少なくとも1つに応じて、電源4によって導電性材料に供給される電力を調整するように構成される。
【0046】
このことは、制御ユニット15が、供給電力を調整するために、必ずしも、検出された量に関するすべての信号を使用するわけではないことを意味する。
【0047】
もちろん、各信号は、検出された量を示し、したがって検出された量によって示される、量又は状態も示す。
【0048】
制御ユニット15は、例えば、制御ユニット11を備えてもよい。このことは、制御ユニット11が物理的に制御部15に組み込まれていることを、必ずしも意味しない。代わりに、制御ユニット15は、制御ユニット11から間隔を置いて、離間した更なる制御ユニットを備えてもよい。むしろ、制御ユニット15は、制御ユニット11と情報を交換することができ、制御ユニット11によって処理及び/又は受信された、情報及び信号を取得することができる。言い換えれば、制御ユニット15は、制御ユニット11に結合又は接続される。
【0049】
特に、制御ユニット11は、制御ユニット15に信号を送信することができる。この信号は、指令装置12を使用して設定された、所望の温度に関連するものである。
【0050】
更に、電源4は、制御ユニット15の一部とすることができる。言い換えれば、制御ユニット15は、自ら電源の機能を果たすことができる。このことは、明らかに限定的なものではない。電源4は、制御ユニット15とは別個であってもよく、例えば、電池又は凝縮器を備えてもよい。
【0051】
供給電力の調整に関して言えば、例えば、供給電力は、取得された信号によって示される自動車1の内部及び/又は外部の湿度と、正の相関関係がある。
【0052】
更に、供給電力は、詳細には、取得された信号によって示される自動車1の内部及び/又は外部の温度と、逆の相関関係がある。
【0053】
それに加えて、供給電力は、詳細には窓3fの温度と逆の相関関係がある。
【0054】
更に、供給電力は、詳細には日射強度と逆の相関関係がある。
【0055】
ここで、取得された信号には、手段6によって取得された、調整流体の温度に関する信号、並びに、制御ユニット11によって取得された、所望の温度に関する信号も含むことができることに留意されたい。
【0056】
実際、取得された信号により、制御ユニット15は、自動車1の外部の大気状態及び/又は車室内の熱力学的状態を、推定又は算出することができる。
【0057】
したがって、制御ユニット15は、例えば上述したように、推定された大気状態及び/又は熱力学的状態に応じて供給電力を調整する。ここでは、より明確にするために、大気状態及び/又は熱力学的状態は、検出された環境量によって定義又は示されるか、又は検出された環境量に関連付けられることを明記する。
【0058】
特に、制御ユニット15は、入力量、より具体的には、検出された環境量及び状態量によって定義されるか、又は環境量及び状態量自体を含む入力量と、基準電力に対応する出力量との間の関数関係を、処理するように構成される。
【0059】
この基準電力は、所定の時間量内、具体的には自動車1の適合基準によって規定された時間量以内に、窓3fを除霜又は防曇するのに十分であり、特にちょうど、若しくはちょうど足りるもの、又はより具体的には、必要にして十分なものである。
【0060】
言い換えれば、基準電力は、いかなる電力の浪費も回避するために、所定の時間量の経過時に、正確に窓3fを除霜又は防曇するために必要なだけの電力とすることもできる。
【0061】
この期間は、不定の時間間隔として理解されるべきではなく、明確に決定され、例えば制御ユニット15によって記憶される、正確な時間間隔として理解されるべきである。
【0062】
必要に応じて、この期間は、例えば、時刻又は現在の季節といった、便宜上の他のパラメータ又は条件の関数として、事前に決定されてもよく、又は、運転者によって設定されてもよい。この期間は、制御ユニット15によって、記憶及び/又は調整することができる。
【0063】
制御ユニット15は、調整対象又は設定点に基準電力を設定することによって、供給電力を調整するように構成される。数々の制御則の1つ、例えば開ループ制御法又は閉ループ制御法のうちの1つを、制御ユニット15に適用することができる。特に、各制御則によって、供給電力は基準電力に近似したものとなる。言い換えれば、供給電力と基準電力との間の差は、無視できるものとなる。すなわち、無視することのできる限界値よりも小さくなり、又は、更に良好には、差がなくなる。
【0064】
入力量には、制御ユニット11によって取得された所望の温度のみならず、手段6によって検出された他の量も含むことができる。
【0065】
例えば、制御ユニット15は、関数関係を記憶して、出力量を算出するために、それを入力量に適用する処理を行う。
【0066】
制御ユニット15にロードされるべき関数関係は、実験的較正ステップを含む、1つ以上のステップを使用して取得することができる。これらのステップでは、入力量の値のより多くのセットが選択される。それぞれの値セットは、テストスタンド上で人工的に作成された、対応する実験条件を設定する。したがって、再び実験的較正ステップにおいて、各実験条件又は値の各セットに関連して出力量の値が決定され、かつ記録される。出力量の値は、所定の期間内、又は所定の期間の終了時に、窓3fを除霜又は防曇するのに十分、又はちょうど十分な供給電力に相当する。
【0067】
このようにして、較正ステップの結果として、入力量と出力量との間の関数が得られる。この関数は、関数関係を定義することができる。
【0068】
そうではなく、場合によって、関数関係を得るための追加のステップを、補間関数が計算されるステップとすることができる。この補間関数は、関数を補間して、較正ステップ中に選択されたもの以外の、入力量の値セットの関数として、出力量を取得するように設計される。
【0069】
したがって、関数に補間関数を適用することで、関数関係を定義することができる。
【0070】
別の実施例によれば、制御ユニット15は、例えば自動車1の数理モデルに基づく、最適化の結果として、又はより具体的には、最適制御問題の結果として、又は特に、コスト関数の限界値を、場合によって最小化又は最大化することの結果として、入力量を出力量と関連付けるという意味で、関数関係の処理を行う。より正確には、コスト関数は最小化され、窓3fを除霜又は防曇するための時間を示す。特に、コスト関数を最小化することは、安全上の制約によって抑制される。安全性の制約の例は、窓3fの温度及び/又はその時間導関数の最大限界を設定することによって、定義することができる。
【0071】
加えて、既に上述したように、最適化の結果として得られる電力は、所定の期間内に窓3fを除霜又は防曇するのに十分なものでなければならないという事実によって、コスト関数を最小化することは更に抑制される。数理モデルにより、入力量は出力量に関連付けられる。数理モデルは、制御ユニット15に記憶することができる。数理モデルは、自動車1についての理論的知識によってのみならず、その代わりに又は加えて、様々な方法、例えば、実験データから始まる既知の識別技術、自己学習技術を含む人工知能技術などによって、得ることができる。
【0072】
別の実施例によれば、関数関係は、この数理モデルによって定義することができるため、制御ユニット15は、入力量によって出力量を決定するために、数理モデルを適用することによって関数関係の処理を行う。
【0073】
実際には、制御ユニット15は、関数関係によって、入力量から基準電力を決定するように構成される。ここで基準電力は、入力量によって定義される環境状態において、所定期間内に、又は所定期間の正確な終了時に、窓3fを除霜又は防曇するのに常に十分、又はちょうど十分なものである。
【0074】
窓3fの温度が、例えば制御ユニットに記憶された閾値、及び/又は自動車1の固有の指令装置(図示せず)を介して運転者によって設定可能な閾値を超えることを、手段6によって取得された信号が示す場合には、供給電力を低減又は除去するように、制御ユニット15が構成されることが好ましい。
【0075】
言い換えれば、このことは本質的に、供給電力を分離すること、又は窓3fの機能、あるいは環境量及び状態量に応じて温度を調整する機能を、実際にオフにすることに相当する。
【0076】
加えて、好都合には、自動車1は、制御ユニット15に指令信号を送るために、運転者が操作することのできる指令装置16を備える。制御ユニットは、この指令装置16によって送られた指令信号に応答して、供給電力を増加させるように構成される。
【0077】
実際には、この場合、制御ユニット15は、供給電力がゼロである場合にのみ、供給電力を増加させる。言い換えれば、制御ユニット15は、指令信号に応じて、窓3fの機能をオンにするように構成されている。しかし、いずれにせよ、供給電力がゼロでない他の場合であっても、制御ユニット15が供給電力を増加させる変形例も考えられる。例えば、指令装置16は、所望の電力増加を設定するのに適したものであり得る。この場合、送信される信号は所望の電力増加を指示する。ここで、制御ユニット15は、所望の電力増加に応じて、供給電力を増加させる。
【0078】
その代わりに又は加えて、環境量のうちの1つ以上、及び/又は状態量のうちの1つ以上が、例えば制御ユニットによって記憶されている、及び/又は自動車1の特別な指令装置(図示せず)を介して運転者によって設定可能な、対応する閾値とのそれぞれの関係を満たすことを、取得された信号が示す場合に、窓3fの機能をオンにするように、又はゼロ値から開始して供給電力の調整を開始するように、制御ユニット15は構成される。
【0079】
上述したことに照らして、窓3f、電源4、手段6、及び制御ユニット15は、本発明による自動車1用の装置の一部である。
【0080】
本発明はまた、自動車1用の装置の制御方法に関する。
【0081】
本方法は、環境量を検出するステップ、状態量を検出するステップ、環境量及び状態量に関連する信号を生成するステップ、及び、生成された信号の少なくとも1つに応じて、電源によって導電性材料に供給される電力を調整するステップを含む。
【0082】
概して、上述したように、制御ユニット15及び手段6によって実行される各機能で、本方法の好ましいステップを、全体的又は部分的に定義することができる。
【0083】
以上のことから、本発明による装置及び方法の利点は明らかである。
【0084】
自動車1の外部の、実際の環境状態に応じて、及び車室の実際の熱力学的状態によって、窓3fを効果的に除霜又は防曇することができる。実際、導電性材料に供給される電力は、もはや上述の状態とは無関係ではなく、窓3fを実際に加熱する必要性に基づいて、効率性及び有効性の点で正確にゲイン調整される。
【0085】
更に、本発明による方法及び装置により、特に直接的に窓3fに空気を導くように構成された、あらゆる通気孔を排除することが可能となる。したがって、自動車1、より具体的には、そのダッシュボード又はインストルメントパネルは、そのような通気口を有さない。これにもかかわらず、自動車1は、特に部分的には制御ユニット15の構成のおかげで、いずれにせよ典型的な適合要件を満たすことになる。
【0086】
通気口がないことで、自動車1は軽量化され、小型化される。
【0087】
最後に、本発明による装置及び方法には変更を加えることができ、それらに生じる変形物には、いずれの場合も、特許請求の範囲によって定義される保護の範囲から逸脱しないことは明らかである。
【外国語明細書】