(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023105810
(43)【公開日】2023-07-31
(54)【発明の名称】紫外光測定装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/64 20060101AFI20230724BHJP
【FI】
G01N21/64 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004880
(22)【出願日】2023-01-17
(31)【優先権主張番号】P 2022006160
(32)【優先日】2022-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】501061319
【氏名又は名称】学校法人 東洋大学
(72)【発明者】
【氏名】勝亦 徹
(72)【発明者】
【氏名】相沢 宏明
(72)【発明者】
【氏名】人見 杏実
【テーマコード(参考)】
2G043
【Fターム(参考)】
2G043AA03
2G043CA05
2G043DA01
2G043EA01
2G043EA14
2G043GA07
2G043HA15
2G043KA03
(57)【要約】
【課題】 表面に凹凸を設けた蛍光体が紫外光の照射によって発する可視光または近赤外光の蛍光を測定することによって、簡便かつ安価な可視、近赤外用の光検出器を使って紫外光を高感度に検出できる紫外光測定装置を提供する。
【解決手段】 紫外光の照射によって蛍光体が発する可視光または近赤外光の蛍光強度を測定し当該紫外光の強度に換算することによって当該紫外光の強度を測定する蛍光増強紫外光測定装置において、紫外光の照射によって可視光または近赤外光を発する蛍光体の表面に凹凸を設けることによって蛍光強度を増強し紫外光を高感度で検出する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外光の照射によって蛍光体が発する蛍光の強度を使って当該紫外光の強度を測定する紫外光測定装置において、当該蛍光体の表面の一部または全部に凹凸を設けることを特徴とする紫外光測定装置。
【請求項2】
表面に凹凸を設けた蛍光体が紫外光の照射によって発する蛍光の強度を使って当該紫外光の強度を測定する紫外光測定装置において、当該蛍光体の表面に設けた凹凸が線状または格子状または格子および斜線状のうちのいずれか一つの形状の凹凸あるいは複数の形状の凹凸を組み合わせた形状であることを特徴とする請求項1に記載の紫外光測定装置。
【請求項3】
表面に凹凸を設けた蛍光体が紫外光の照射によって発する蛍光の強度を使って当該紫外光の強度を測定する紫外光測定装置において、多面体または板状または円柱状または多角柱状または球状またはファイバー状の突起またはくぼみまたは穴のうちのいずれか一つの形状の凹凸あるいは複数の形状の凹凸を組み合わせた形状であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の紫外光測定装置。
【請求項4】
表面に凹凸を設けた蛍光体が紫外光の照射によって発する蛍光の強度を使って当該紫外光の強度を測定する紫外光測定装置において、蛍光体の表面に設けた凹凸の高さが1μm以上であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の紫外光測定装置。
【請求項5】
表面に凹凸を設けた蛍光体が紫外光の照射によって発する蛍光の強度を使って当該紫外光の強度を測定する紫外光測定装置において、蛍光体の表面に設けた凹凸が当該蛍光体の切削または研磨またはサンドブラストまたはショットブラストのいずれかまたは複数の方法を組み合わせて形成されたものであることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の紫外光測定装置。
【請求項6】
表面に凹凸を設けた蛍光体が紫外光の照射によって発する蛍光の強度を使って当該紫外光の強度を測定する紫外光測定装置において、蛍光体の表面に設けた凹凸が金属製あるいは木製またはセラミックス製または樹脂製の鋳型を蛍光体に押し付ける方法あるいは蛍光体または蛍光体の原料を鋳型に充填する方法のいずれかの方法によって形成されたものであることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の紫外光測定装置。
【請求項7】
表面に凹凸を設けた蛍光体が紫外光の照射によって発する蛍光の強度を使って当該紫外光の強度を測定する紫外光測定装置において、蛍光体の表面に設けた凹凸がプラズマを用いたエッチングまたは気体を用いたエッチングまたは液体を用いたエッチングのうちのいずれか1つあるいは複数のエッチング法によって形成されたことを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の紫外光測定装置。
【請求項8】
表面に凹凸を設けた蛍光体が紫外光の照射によって発する蛍光の強度を使って当該紫外光の強度を測定する紫外光測定装置において、表面に凹凸を設けた蛍光体がCe、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Ho、Er、Tm、Yb、Ti、Cr、Mn、Fe、Coのうちの少なくとも1つまたは複数の元素を含むガーネット、オルソアルミネート、スピネル、サファイヤ、ルビーあるいは超リン酸塩のいずれか1つの結晶あるいは複数の結晶の混合物であることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の紫外光測定装置。
【請求項9】
表面に凹凸を設けた蛍光体が紫外光の照射によって発する蛍光の強度を使って当該紫外光の強度を測定する紫外光測定装置において、表面に凹凸を設けた蛍光体が1つまたは複数の有機化合物を蛍光色素として含む蛍光体または蛍光色素を混合したアクリル樹脂のうちの少なくとも1つであることを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載の紫外光測定装置。
【請求項10】
表面に凹凸を設けた蛍光体が紫外光の照射によって発する蛍光の強度を使って当該紫外光の強度を測定する紫外光測定装置において、表面に凹凸を設けた蛍光体として濃度1.0モル%以上かつ5.0モル%以下のCr2O3を添加したAl2O3を使用することを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載の紫外光測定装置。
【請求項11】
表面に凹凸を設けた蛍光体が紫外光の照射によって発する蛍光の強度を使って当該紫外光の強度を測定する紫外光測定装置において、表面に凹凸を設けた蛍光体が紫外光の照射によって可視光または近赤外光の蛍光を発する蛍光体の粉末を混合した樹脂またはガラスであることを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載の紫外光測定装置。
【請求項12】
表面に凹凸を設けた蛍光体が紫外光の照射によって発する蛍光の強度を使って当該紫外光の強度を測定する紫外光測定装置において、波長100 nm以上かつ320 nm以下の範囲の紫外線C波(UVC)または紫外線B波(UVB)のどちらか一方または両方の紫外光を含む光を測定することを特徴とする請求項1~11のいずれかに記載の紫外光測定装置。
【請求項13】
表面に凹凸を設けた蛍光体が紫外光の照射によって発する蛍光の強度を使って当該紫外光の強度を測定する紫外光測定装置において、当該蛍光体の表面積が当該光検出器の受光面の表面積よりも広く、紫外光の照射によって当該蛍光体が発した蛍光を光学レンズまたは光導波路によって当該光検出器の受光面に照射することを特徴とする請求項1~12のいずれかに記載の紫外光測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、紫外光源が発する紫外光の照射によって蛍光体が発する可視光あるいは近赤外光の一方または両方の蛍光を測定することにより、当該紫外光の強度を簡便かつ高感度に測定する紫外光測定装置に使用する蛍光体の表面に凹凸を設けることにより紫外光の検出感度を増強した紫外光測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線による消毒および殺菌の用途に波長280 nm~320 nmのB波紫外線(UVB)、波長100 nm~280 nmのC波紫外線(UVC)が広く用いられているが、これらの紫外光は人体にも有害であり安全確保のために発生状況を測定する必要がある。紫外光の測定には光電子増倍管(フォトマル)、紫外線用シリコンフォトダイオード(UV Si-PD)や特許文献1に記載された蛍光増感シリコンフォトダイオード(Fluoresce-enhanced Si-PD; FE-PD)などが使用できる。フォトマルは高感度であるが測定には高電圧が必要など、小型化、省電力化が困難であった。一方、UV Si-PDやFE-PDは小型、省電力で電池駆動も可能などの特徴を持ち、様々な紫外線応用機器に使用可能である。FE-PDの紫外光の検出感度は可視、近赤外用のSi-PD(VIS NIR Si-PD)よりも優れているがUV Si-PDに比べて劣るため、感度向上の問題と信号の増幅が課題であった。
【0003】
殺菌、消毒用の紫外線光源装置としては水銀ランプ、Xeランプ、重水素ランプおよび深紫外光LED(UVC LED)が使用されている。これらの紫外光源が発生する紫外光は肉眼では見ることができない。紫外光のうちUVBやUVCの紫外光は殺菌効果が高く消毒や殺菌に有効であるが、人体にも有害なためUVBやUVCを使用する機器では紫外光を遮蔽するとともに紫外光の発生状況を常時モニターする必要がある。小型で低価格、高出力なUVC LEDは殺菌や除菌の目的で種々の機器に広く利用されると考えられる。UVC LED応用機器の安全性向上のため小型で高性能な紫外光測定装置が必要である。
【0004】
紫外光を簡便かつ高感度で測定する目的で、特許文献1に記載されているように紫外光の照射によって蛍光体が発する可視または近赤外光の蛍光を可視、近赤外用のSi-PD(VIS NIR Si-PD)を光検出器として使って測定することにより紫外光を高感度で測定可能な蛍光増感Si-PD(FE-PD)検出器が開発された。しかし蛍光体を備えたFE-PDの紫外光検出感度は、VIS NIR Si-PDの紫外光検出感度に比べて著しく高いが、紫外線検出用に作製されたフォトマルやUV Si-PDに比べて紫外光検出感度が低いという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
殺菌性能の高いUVCを発生可能なLED光源が開発されたことにより小型かつ省電力で強力なUVC LED光源が消毒および殺菌を目的として様々な機器に使用されるようになってきた。日常的に使用する様々な機器にUVC LED光源を使用するためには、人体に有害なUVCによる被ばくを防止する必要がある。このためにはUVCの発生状況を簡便、高感度かつ安価に測定可能な小型で省電力なUVC測定装置が不可欠である。
【0007】
波長320 nm~400 nmのUVA、波長280 nm~320 nmのUVBおよび波長100 nm~280 nmのUVC などの紫外光は目に見えないため目視による紫外光発生状況の監視は不可能であった。UVA、UVBやUVCなどの紫外光を測定するためには、フォトマルやUV Si-PDが使用可能である。フォトマルはUVA、UVBおよびUVCのすべての紫外線に対して高い感度を持っているが、検出器が高価で、測定には高電圧の電源が必要であるなどの欠点があった。一方、紫外光透過特性の良い石英ガラス製の窓材を使用する紫外光測定用に作製されたUV Si-PDは、高電圧の電源が不要で小型の測定器が製作可能であるが、短波長の紫外線では急激に測定感度が低下する欠点があった。また、UV Si-PDの価格はVIS NIR Si-PDに比べて高価であった。このためUVBやUVCなどの人体に有害な紫外線光源の紫外線発生状況はこれまで測定されていなかった。
【0008】
VIS NIR Si-PDは波長400 nmから1100 nmの範囲の可視光および近赤外光に対して高い感度を持つが波長400 nm以下の紫外光に対する感度は低い。このため光測定に広く使用されている低価格のVIS NIR Si-PDでは、紫外光の高感度な測定は困難であった。しかし、紫外光の照射によって波長400 nmから750 nmの範囲の可視光または波長750 nmから1100 nmの範囲の近赤外光のいずれかあるいは両方の波長の蛍光を発する蛍光体と、この蛍光体が発する蛍光を検出可能な安価なVIS NIR Si-PDを組み合わせたFE-PDを使ってUVBやUVCなどの紫外光の測定が可能になった。しかしこれまでに開発されたFE-PDの紫外光検出感度はUV Si-PDの紫外光検出感度よりも劣っており、高感度な紫外光測定のためにはFE-PDの高感度化が必要であった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
UVA、UVBやUVCなどの紫外光を高感度で測定するため、紫外光の照射によって波長400 nmから750 nmの範囲の可視光または波長750 nmから1100 nmの範囲の近赤外光のいずれかあるいは両方の波長の蛍光を発する蛍光体と、この蛍光体が発する蛍光を検出可能なVIS NIR Si-PDを組み合わせて紫外光を測定することができる特許文献1のFE-PDが開発された。本発明では、このFE-PDに使用する蛍光体の表面を凹凸加工することによって紫外光の検出感度を増強することができた。紫外光は蛍光体の表面で反射、散乱あるいは吸収されるため、蛍光体の表面近傍における励起が蛍光の発生に重要である。このため、FE-PDに使用する蛍光体の表面を凹凸加工して表面積を増加することおよび励起光の多重反射により蛍光強度を増加しFE-PDの紫外光検出感度を増強することが可能であることが分かった。
【0010】
FE-PDに使用する蛍光体の表面積を増加するための加工法としては、切削や研磨、サンドブラスト、ショットブラストなどによる凹凸加工、各種エッチングを用いた凹凸構造の形成、型押しや鋳型による成型など蛍光体の素材の特性に合わせた種々の凹凸加工技術が使用可能である。FE-PDに使用する蛍光体の表面の凹凸形状としては、研磨やサンドブラスト、ショットブラストにより表面を粗くした凹凸形状に加えて、三角屋根型、三角錐状、四角錐状、六角錐状などの多面体、円錐状、線状、格子状、線状と格子状を組み合わせた形状、円柱状、多角柱状、板状、穴を設けた形状、ファイバー状など蛍光体の表面積を増加できる種々の形状の凹凸表面が使用可能である。
【0011】
本発明の紫外光測定器では
図2に示した蛍光を使った紫外光測定装置のように、可視光または近赤外光に高い感度を持つ光検出器の受光面に紫外光の照射によって可視光または近赤外光の蛍光を発する蛍光体の表面を凹凸加工することによって従来のFE-PDよりも高感度に紫外光を測定することが可能になった。本発明の紫外光測定装置で使用する表面を凹凸に加工する蛍光体としては、測定対象の紫外光の照射によって可視光または近赤外光の蛍光を発する、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Ho、Er、Tm、Yb、Ti、Cr、Mn、Fe、Coのうちの少なくとも1つまたは複数の元素を発光イオンとして含む蛍光体や、1つあるいは複数の有機色素を含む蛍光体が使用可能である。これらの蛍光体を混合した樹脂やガラスの表面を凹凸に加工したものを使用することもできる。表面の凹凸加工が容易な蛍光アクリル樹脂も使用可能である。さらに、表面を凹凸に加工した蛍光を透過可能な基板に蛍光体の粉末を混合した塗料を塗布したものを使用することができる。
【発明の効果】
【0012】
紫外光の照射によって可視光または近赤外光の蛍光を発する蛍光体の表面を凹凸に加工しVIS NIR Si-PDの受光面に付加することにより、照射した紫外光の強度に比例した強度の可視光または近赤外光を安価なVIS NIR Si-PDを使って高感度で測定することができた。FE-PDに使用する蛍光体の表面を凹凸に加工することによって紫外光の検出感度を増強することができた。あらかじめ作成した検量線を使うことによってVIS NIR Si-PDを使って測定した蛍光体が発する可視光または近赤外光の蛍光強度を照射した紫外光の強度に定量的に換算することができた。
【0013】
本発明ではFE-PDで使用する蛍光体の表面を凹凸加工することにより蛍光を発する表面積を増加しFE-PDの紫外光検出感度を増感することが可能になった。したがって、紫外光の照射によって可視または近赤外の蛍光を発する蛍光体で、表面の凹凸加工が可能な蛍光体であれば本発明のFE-PDの蛍光体として使用可能である。さらに、表面を凹凸に加工した基板に蛍光を発することができる塗料を塗布することによって蛍光面の表面積を増加し高感度なFE-PDとすることも可能である。蛍光の検出器として使用するVIS NIR Si-PDの受光面の面積よりも広い表面積を持つ蛍光体を使用して、紫外光の照射によって発生した蛍光を光学レンズまたは光導波路を使って光検出器の受光面に導くことによってもFE-PDの高感度化が可能である。VIS NIR Si-PDの受光面の面積よりも広い表面積を持つ蛍光体の表面を凹凸に加工することによってさらに効果的なFE-PDの高感度化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】表面を凹凸に加工した蛍光体を使った紫外光測定装置
【
図3】表面に線状、格子状、格子および斜線状の凹凸を加工した蛍光体を使った紫外光測定装置
【
図4】表面に円柱状の凹凸を加工した蛍光体を使った紫外光測定装置
【
図5】表面に角柱状の凹凸を加工した蛍光体を使った紫外光測定装置
【
図6】表面に板状の凹凸を加工した蛍光体を使った紫外光測定装置
【
図7】表面に穴を加工した蛍光体を使った紫外光測定装置
【
図8】表面にファイバー状の凹凸を備えた蛍光体を使った紫外光測定装置
【
図9】表面に三角屋根型の凹凸を加工した蛍光体を使った紫外光測定装置
【
図10】表面に三角屋根型の凹凸を加工した蛍光体を使った紫外光測定装置
【
図11】表面に四角錐状の凹凸を加工した蛍光体を使った紫外光測定装置
【
図12】表面に四角錐状の凹凸を加工した蛍光体を使った紫外光測定装置
【
図13】三角屋根型または四角錐状の凹凸を加工した蛍光体表面での励起光の多重反射
【
図14】表面に線状、格子状、格子および斜線状の凹凸を加工した蛍光体を使ったFE-PDの感度特性
【
図15】研磨により表面に凹凸を加工した蛍光体を使ったFE-PDの感度特性
【
図16】表面に三角屋根型および四角錐状の凹凸を加工した蛍光体を使ったFE-PDの感度特性
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の測定装置を
図1に示した。紫外光測定装置では紫外線防護のための外装部材7の内部に設置した紫外光源6から発した紫外光1は蛍光体2に照射され、蛍光体2によって紫外光から可視光または近赤外光の蛍光に変換されて光検出器3に照射される。蛍光体2から発生した可視光または近赤外光の蛍光は光検出器3によって測定できた。蛍光体2が発する可視光または近赤外光の蛍光の強度は照射した紫外光源6から発した紫外光1の強度に比例するため、あらかじめ検量線を作成することで紫外光1の強度が測定できた。
図2に示したように本発明では従来のFE-PDの紫外光検出感度を増強するために蛍光体2の表面を凹凸に加工したものを使用した。表面を凹凸に加工した蛍光体2を光検出器3の受光面に設置することにより、紫外光1に対する感度が低く測定が困難なVIS NIR Si-PDの紫外光検出感度を増強でき高感度な紫外光検出器として使用可能になった。
【0016】
本発明の測定装置に使用する蛍光体としては、紫外光源1が発生する紫外光2の照射によって可視光または近赤外光の蛍光を発生することができる従来のFE-PDに使用可能な蛍光体は表面に凹凸を加工することによって全て使用可能である。Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Ho、Er、Tm、Yb、Ti、Cr、Mn、Fe、Coのうちの少なくとも1つまたは複数の元素を発光イオンとして含むガーネット(Y3Al5O12、Gd3Ga5O12)、オルソアルミネート(YAlO3)、希土類超リン酸塩(TbP5O14、EuP5O14)、スピネル(MgAl2O4)、ルビーやサファイヤ(Al2O3)などの結晶が使用できる。蛍光体2としては、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Ho、Er、Tm、Yb、Ti、Cr、Mn、Fe、Coのうちの少なくとも1つまたは複数の元素を発光イオンとして含む蛍光体または、1つあるいは複数の有機蛍光色素を含む蛍光体が使用可能である。また、これらの蛍光体を混合したガラス、単結晶、多結晶(セラミックス)、プラスチックなどの複合材料が使用可能である。さらに、これらの蛍光体または蛍光体を含有する複合材料を表面に塗布した透明または半透明のガラス、単結晶、多結晶(セラミックス)、蛍光アクリル樹脂のようなプラスチック蛍光体が使用できた。蛍光アクリルなどのプラスチック製の蛍光体は表面の凹凸加工やプレスなどによる凹凸成型が容易なため、本発明の蛍光体表面の凹凸加工によるFE-PDの紫外光検出感度増強に適している。
【0017】
本発明のFE-PDの紫外光検出感度増強のために使用する蛍光体としては、測定対象の紫外光の照射によって可視、近赤外光の蛍光を発生し、蛍光ピーク強度が大きい蛍光体が適している。しかし、Cr2O3を添加したAl2O3(ルビー)の場合にはCr2O3を0.5 モル%添加したルビーの蛍光ピーク強度が最も強いが、Cr2O3を1.0 モル%~5.0 モル%添加したルビーはVIS NIR Si-PDの光検出感度が高い波長700 nm~800 nm付近に幅広な蛍光がある。このため蛍光ピーク強度が弱いCr2O3を1.0 モル%~5.0 モル%添加したAl2O3を使用したFE-PDのUVC検出感度が優れていた。このようにFE-PD用の蛍光体としては、蛍光ピークのピーク強度に加えてピーク面積が大きな蛍光体または蛍光体と樹脂またはガラスの混合物が適している。特にVIS NIR Si-PDの光検出感度が高い波長域に蛍光ピークを持つ蛍光体は優れた紫外光検出感度を持つFE-PD用の蛍光体として使用できる。
【0018】
本発明の紫外光測定装置で使用する蛍光体2の表面に加工する凹凸の形状としては、
図3に示した線状の凹凸8、格子状の凹凸9、格子および斜線状の凹凸10などに加えて、
図4に示した円柱状の凹凸を加工した蛍光体12、
図5に示した角柱状の凹凸を加工した蛍光体13、
図6に示した板状の凹凸を加工した蛍光体14,
図7に示した円筒状のくぼみまたは穴を加工した蛍光体15,
図8に示したファイバー状の蛍光体16などが使用できる。
図9および
図10に示した三角屋根型の凹凸を加工した蛍光体17や、
図11および
図12に示した四角錐状の凹凸を加工した蛍光体18がFE-PDの蛍光体として使用できる。粗さの異なる研磨剤を使って蛍光体の表面に凹凸を加工した蛍光体も紫外光検出感度の増強に使用可能であった。
【0019】
本発明ではFE-PDで使用する蛍光体の表面を凹凸加工することにより蛍光を発する表面積を増加することおよび
図13に示したように蛍光体19の角度θ20の傾斜面での紫外光1の多重反射を利用して蛍光の励起光率を増加することによってFE-PDの紫外光検出感度を増感することが可能になった。蛍光体19の傾斜面の角度θ20が45度以下の場合には多くの多重反射によって蛍光を効果的に増加することが可能である。このように、FE-PDで使用する蛍光体の表面を増加することができればFE-PDの紫外光検出感度を増感することが可能である。たとえば、蛍光の検出器として使用するVIS NIR Si-PDの受光面の面積よりも広い表面積を持つ蛍光体を使用して、紫外光の照射によって発生した蛍光を光学レンズまたは光導波路を使って光検出器の受光面に導くことによってもFE-PDの高感度化が可能である。VIS NIR Si-PDの受光面の面積よりも広い表面積を持つ蛍光体の表面を凹凸に加工することによってさらに効果的なFE-PDの高感度化が可能である。
【実施例0020】
図1の検査装置を用いて紫外光源6からの紫外線発生状況を監視した。厚さ2 mm、6 mmx6 mmの板状に加工した赤色蛍光アクリル樹脂(ハザイヤ)を蛍光体2として光検出器3の受光面に設置した。赤色蛍光アクリル樹脂の表面は加熱したナイフエッジ(ブレード)を表面に押し付けて
図3のように線状の凹凸8、格子状の凹凸9、格子および斜線状の凹凸10を加工した。
図14のように線状の凹凸、格子状の凹凸、格子および斜線状の凹凸を加工したFE-PDのUVC検出感度24、25、26と凹凸加工していない鏡面状の蛍光体のUVC検出感度23を比較した。赤色蛍光アクリル樹脂からはUVCの照射によって赤色の蛍光が観察できた。検出器としてVIS NIR Si-PDとしてS6775型 Si-PDおよびUV Si-PDとしてS12698-04型Si-PD (浜松ホトニクス製)を使用した。Si-PDの出力はC2719 フォトセンサーアンプ(浜松ホトニクス製)4を使って1 × 10
5 V/A レンジで増幅した。アンプ4の出力電圧はPC7000Mデジタルマルチメーター (サンワ製) 5を使って測定しコンピューターでデータを解析した。紫外光源6としてUVC LED (波長275 nm、Ledil製および波長265 nm、スタンレー製)を使用した。UVC LEDの紫外光強度を調整するために直流定電流電源(高砂製)を使用した。
【0021】
図14に示したように、UVC LED (波長275 nm)を光源として用い、赤色蛍光アクリル樹脂を蛍光体として使ったFE-PDの感度特性23、24、25、26はUVC LEDの発光強度の増加に比例して増加することが分かった。赤色蛍光アクリル樹脂の表面の凹凸を増やし表面積が増加したFE-PDほどUVC検出感度が増強されることが分かった。
図14に示した格子および斜線状の凹凸10を加工した赤色蛍光アクリル樹脂を使ったFE-PDの感度特性26はUV Si-PDの感度特性22と同程度の高いUVC検出感度を示した。表面を凹凸に加工した赤色蛍光アクリル樹脂を使ったFE-PDの感度特性24、25、26は鏡面加工した表面を持つ赤色蛍光アクリル樹脂を使ったFE-PDの感度特性23に比べて高感度であった。表面を凹凸に加工した赤色蛍光アクリル樹脂を使ったFE-PDの感度特性24、25、26は蛍光体を使用しないVIS NIR Si-PDの感度特性21に比べてUVC検出感度が約8倍~10倍ほど高感度になった。FE-PDの蛍光体の表面に凹凸加工した赤色蛍光アクリル樹脂を使用することによりUV Si-PDと同等の高感度なUVC測定が可能になった。UVC LED (波長265 nm)を光源として用いた場合も同様の結果が得られた。