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特開2023-105813スロットレス電動モータ用ステータの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023105813
(43)【公開日】2023-07-31
(54)【発明の名称】スロットレス電動モータ用ステータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/04 20060101AFI20230724BHJP
【FI】
H02K15/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023005779
(22)【出願日】2023-01-18
(31)【優先権主張番号】2200661.3
(32)【優先日】2022-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】522252637
【氏名又は名称】イーティーエー グリーンパワー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ETA Green Power Limited
【住所又は居所原語表記】Hethel Engineering Centre Chapman Way Hethel NR14 8FB United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100103872
【弁理士】
【氏名又は名称】粕川 敏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100149456
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 喜幹
(74)【代理人】
【識別番号】100194238
【弁理士】
【氏名又は名称】狩生 咲
(74)【代理人】
【識別番号】100205648
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 真一
(72)【発明者】
【氏名】リアム ボウマン
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリー コリングス
【テーマコード(参考)】
5H615
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615BB01
5H615BB05
5H615BB14
5H615PP01
5H615PP12
5H615QQ23
5H615SS04
5H615SS18
(57)【要約】      (修正有)
【課題】時間が掛からないスロットレスモータの製造方法を提供すること。
【解決手段】導体を環状円筒形状に配置するステップと、導体の複数の接合部302を接合するステップと、前記導体を折り曲げて、前記導体に沿って繰り返される複数の花弁状部410を提供するステップと、を備えている。花弁状部の非接合部301は、第1円451の円周によって束ねられ、第1円は第1直径を有している。花弁状部を接続する非接合部は、第2円452の円周によって境界付けられ、第2円は第2直径を有し、第2直径は第1直径よりも小さく、第1円及び第2円は、同一平面上にあり、同心である。それぞれの花弁状部を第2円上の点を中心に回転させ、すべての花弁状部の接合部を平行に揃えることにより、第2直径に等しい直径を有する円筒形状導体を含み、接合部が円筒形状導体の中心長手方向軸の周りに、かつ中心長手方向軸から等距離に配置されたステータを提供する。
【選択図】図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体を環状円筒形状に配置するステップと、
導体の複数の接合部を接合するステップと、
前記導体を折り曲げて、前記導体に沿って繰り返される複数の花弁状部を提供するステップと、を備え、
前記接合部は、隣接するワイヤが前記接合部に沿って接合され、隣接するワイヤ間の平均間隔が接合部において非接合部よりも小さい前記導体の領域を含み、複数の前記接合部は、非接合部によって分離されており、
それぞれの前記花弁状部は、前記非接合部によって接続された一対の接合部を含み、前記一対の接合部は、互いに平行に配置され、
前記導体上の隣接する前記花弁状部は、前記非接合部によって接続され、
前記花弁状部の前記非接合部は、第1円の円周によって束ねられ、前記第1円は第1直径を有し、
前記花弁状部を接続する前記非接合部は、第2円の円周によって境界付けられ、前記第2円は第2直径を有し、前記第2直径は前記第1直径よりも小さく、前記第1円及び第2円は、同一平面上にあり、同心であり、
それぞれの前記花弁状部を前記第2円上の点を中心に回転させ、すべての前記花弁状部の接合部を平行に揃えることにより、前記第2直径に等しい直径を有する円筒形状導体を含み、前記接合部が前記円筒形状導体の中心長手方向軸の周りに、かつ前記中心長手方向軸から等距離に配置されたステータを提供する、
スロットレス電動モータ用ステータの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記導体上に複数の前記接合部を接合させるステップは、
前記導体の部分に接合化合物を塗布し、複数の接合部を形成することを含む、
方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、
前記導体上の複数の前記接合部を接合するステップは、接合化合物を活性化するステップをさらに含む、
方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の方法において、
前記導体の第1点におけるワイヤの断面が、前記導体の第2点におけるワイヤの断面の鏡像となるように、前記導体の前記非接合部の1つにハーフツイストを加えるステップを備え、
前記第1点における前記内側半径方向面上のワイヤが、前記第2点における前記外側半径方向面上にあるようにする、
方法。
【請求項5】
請求項1から4に記載の方法において、
前記円筒形状導体を前記第2直径よりも大きい内径を有するフラックスリングの中心孔内に配置するステップを備え、
前記導体の外側半径方向面の周りに配置されたフラックスリングを有する前記円筒形状導体を備えたステータを提供する、
方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、
前記フラックスリングは、少なくとも前記導体の接合部の長さである軸方向の長さを有し、前記フラックスリングは、少なくとも前記導体の接合部の長さである、
方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の方法において、
前記円筒形状導体の中心部に拡張可能なマンドレルを配置するステップと、
前記円筒形状導体が前記フラックスリングの中心孔内に配置されているときに、前記拡張可能なマンドレルを拡張して、前記円筒形状導体の直径を前記第2直径と前記フラックスリングの内径の間まで増加させるステップと、
を備えている、
方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の方法において、
前記円筒形状導体の第1軸方向端部を、前記中心長手方向軸に向かって折り曲げるステップを備えている、
方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の方法において、
前記円筒形状導体の第2軸方向端部を、前記中心長手方向軸から離れるように折り曲げるステップを備えている、
方法。
【請求項10】
スロットレス電動モータ用ステータの製造方法であって、
内側半径方向面、外側半径方向面、第1軸方向面、及び第2軸方向面を有する環状円筒の境界内に、導体を半円形状に配置するステップと、
前記導体上に複数の接合部を接合するステップと、
前記導体の第1点におけるワイヤの断面が、前記導体の第2点におけるワイヤの断面の鏡像となるように、前記導体の非接合部の1つにハーフツイストを加えるステップと、 を備え、
前記接合部は、領域内のワイヤが一緒に接合された導体の領域を備え、複数の前記接合部が前記非接合部によって分離されている、
方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の方法により得られるスロットレス電動モータ用ステータ。
【請求項12】
スロットレス電動モータを製造する方法であって、
請求項1から11のいずれか1項に記載の方法を実行して、ステータを提供するステップと、
前記ステータの軸心周りに回転するように構成されたロータを提供するステップと、 を備えている、
方法。
【請求項13】
スロットレス電動モータ用ステータであって、
前記ステータは、ワイヤの束を含む導体を備え、
それぞれのワイヤは、他のワイヤと平行に配置され、前記導体は、複数の接合部を備え、前記接合部は、隣接するワイヤが前記接合部に沿って接合されている前記導体の領域を備え、隣接するワイヤ間の平均間隔は、非接合部よりも前記接合部において小さく、前記非接合部は複数の前記接合部を分離する、
ステータ。
【請求項14】
請求項13に記載のステータにおいて、
前記導体の前記接合部は、互いに平行に配置され、円の円周上に配置され、
前記接合部は、円筒形状導体の中心長手方向軸の周りに、かつ前記中心長手方向軸から等距離に配置される、
ステータ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、本発明は、スロットレス電動モータに関し、特に、スロットレス電動モータ用ステータの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電動モータは、電気エネルギーを運動エネルギーに変換する電磁装置である。モータは、ステータ及びロータの2つの部品を備えている。スロットレスモータは、当該技術分野で知られているモータの一種である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
不利なことに、スロットレスモータを製造する先行技術の方法は、時間が掛かり、及び/又はコストが掛かる。
【0004】
不利なことに、スロットレスモータ用ステータを製造するいくつかの典型的な先行技術の方法は、導体コイルの成形後に、個々の導体コイルを全て一緒に接合する二次工程を必要とする。すなわち、導体を所定の形状に(例えば所定の幾何学的形状に)成形成する一次加工が、複数の導体コイルに対して複数回実行される。一次加工が所定回数(例えばN回)行われると、個々の導体コイル(例えばN個の導体コイル)が(例えばN-1個の接続部を介して)接合され、スロットレスモータ用ステータが提供される。
【0005】
不利なことに、スロットレスモータ用ステータを製造するいくつかの典型的な先行技術の方法は、単一の導体からステータを形成するが、導体を所定の形状(例えば、所定の幾何学形状)に圧縮して複数のループを形成することを含み(例えば、それによって上記の段落で説明したN-1個の接続部を省略する)、その結果、ループを形成する導体の長さが乱れた(例えば、交差及び/又は非平行)ステータが得られる可能性がある。導体ループの乱れは、巻線の循環損失によって発生する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様は独立請求項に記載され、任意の特徴は従属請求項に記載される。本開示の態様は、互いに関連して提供されてもよく、1つの態様の特徴は、他の態様に適用されてもよい。
【0007】
本開示の一態様は、スロットレス電動モータ用ステータの製造方法を提供する。この方法は、導体を環状円筒形状に配置するステップと、導体の複数の接合部を接合するステップと、導体を折り曲げて、導体に沿って繰り返される複数の花弁状部を提供するステップと、を備えている。接合部は、隣接するワイヤが接合部に沿って接合され、隣接するワイヤ間の平均間隔が接合部において非接合部よりも小さい導体の領域を含み、複数の接合部は、非接合部によって分離されている。それぞれの花弁状部は、非接合部によって接続された一対の接合部を含み、一対の接合部は、互いに平行に配置されている。導体上の隣接する花弁状部は、非接合部によって接続されている。花弁状部の非接合部は、第1円の円周によって束ねられ、第1円は第1直径を有している。花弁状部を接続する非接合部は、第2円の円周によって境界付けられ、第2円は第2直径を有し、第2直径は第1直径よりも小さく、第1円及び第2円は、同一平面上にあり、同心である。それぞれの花弁状部を第2円上の点を中心に回転させ、すべての花弁状部の接合部を平行に揃えることにより、第2直径に等しい直径を有する円筒形状導体を含み、接合部が円筒形状導体の中心長手方向軸の周りに、かつ中心長手方向軸から等距離に配置されたステータを提供する。
【0008】
有利なことに、先行技術の製造方法よりも時間が掛からないスロットレスモータ用ステータの製造方法が提供される。
【0009】
導体は、モータのステータの少なくとも一部を構成してもよい。
【0010】
実施例では、ステータの製造方法は、ウェーブ状巻線を提供するステップを含んでもよい。有利なことに、ウェーブ状巻線は、導体を提供するための比較的少ない数のはんだ付け/溶接プロセスで、比較的に大きな導体体積を有するステータを提供することができる。また、有利なことに、ウェーブ状巻線は、循環/渦巻き損失を減少させたステータを提供することができる。
【0011】
実施例では、環状円筒(円筒ともいう)は、内側半径方向面、外側半径方向面、第1軸方向面、第2軸方向面、中心長手方向軸を有してもよい。
【0012】
実施例では、導体は、ワイヤの束を備えている。各ワイヤは、隣接するワイヤと平行に配置されてもよい(例えば、ワイヤ間に形成されるツイストや結び目はない)。
【0013】
導体は中心長手方向軸の周りにらせん状に巻かれている例では、導体の各ワイヤは内側半径方向面からの距離が一定である。
【0014】
導体がらせん状に中心長手方向軸の周りに巻かれている例では、導体の各ワイヤは、第1軸方向面からの距離が一定である。
【0015】
導体上に複数の接合部を接合するステップは、例えば、導体の長さに接合化合物(例えば、樹脂又はワックス等の接着剤)を塗布することを含んでもよく、それによって複数の接合部を形成し、導体上に複数の接合部を接合するステップは、接合化合物を活性化(例えば、樹脂又はワックスを固体にする)することをさらに含む。
【0016】
接合化合物がワックスである例では、ワックスを溶かし、導体の部分に塗布することができる。ワックスが固まるまで放冷しながら、ワックスが塗布された部分を圧縮することができる。これに関連して、ワックスを「活性化」することは、ワックスが固化するように冷却することを含んでもよい。
【0017】
例として、接合化合物は、モールディングワックス等のワックスである。モールディングウェーブは導体の部分に適用され、圧縮され、その後ポッティングプロセス中に焼き付けられる(すなわち、ワックスが「活性化」される)。
【0018】
有利なことに、複数の接合部を提供する簡単な手段が提供され得る、例えば、溶接等が必要でない場合がある。有利なことに、例えば製造/組み立てに必要な時間が短縮される。各電気相の導体は、個々の導体を特定の形状に複数回形成し、その後、これらの個々の導体を一緒に接合(例えば、溶接)する方法を実行するのではなく、製造方法を1回使用することで円筒形状に形成することができる。
【0019】
この方法は、導体の第1点におけるワイヤの断面が導体の第2点におけるワイヤの断面の鏡像となるように、導体の非接合部の1つにハーフツイストを加えること、すなわち、第1点における内側半径方向面上のワイヤが第2点における外側半径方向面上にあるようにすることを含んでもよい。
【0020】
有利なことに、導体のジュール加熱は、ハーフツイストの第1側の導体の第1部分とハーフツイストの第2側の導体の第2部分との間で分配することができる。したがって、加熱に伴う摩耗を両側で分散させることができ、これにより導体の寿命が延びる。
【0021】
この方法は、円筒形状の導体を、第2直径よりも大きい内径を有するフラックスリングの中心孔内に配置し、それによって、導体の外側半径方向面の周りに配置されたフラックスリングを有する円筒形状導体を含むステータを提供することを含んでもよい。
【0022】
フラックスリングは、少なくとも導体の接合部の長さである軸方向の長さを有してもよい。有利なことに、より短いフラックスリングが使用される場合と比較して、ステータからロータへの電力伝達が増加させることができる。
【0023】
この方法は、円筒形状導体の中心に拡張可能なマンドレルを配置することと、円筒形状導体がフラックスリングの中心孔内に配置されたときに拡張可能なマンドレルを拡張し、それによって円筒形状の導体の直径を第2直径とフラックスリングの内径の間の直径まで増加させることと、を含むことができる。
【0024】
実施例では、複数の折り畳まれた導体(例えば、導体に沿って繰り返される複数の花弁状部を提供するために導体を折り曲げるステップによって形成された導体、上記で詳細に説明した)が互いに上に積み重ねられる(例えば、各導体の第1円及び第2円が互いに重なって配置され、それぞれの花弁状部は整列する)。後続の方法ステップは、複数の導体に全体に対して実行される。
【0025】
有利なことに、導体とフラックスリングとの間の半径方向の距離は、それによって導体(例えばステータ)とロータとの間の電力伝達を比較的に増加させることができる。複数の折り返し導体が互いに積み重ねられる例では、折り畳み導体は、選択された好ましい高さに積み重ねられる。スタック高さは、積層された導体の軸方向の範囲である。好ましいスタック高さでは、銅密度が改善され、比較的低い電力損失で大電流が流れることを可能にする。折り畳まれた導体のスタックを好ましいスタック高さに近づけると、導体と磁束リングの間の半径方向の距離が減少する。
【0026】
この方法は、円筒形状導体の第1軸方向端部を長手方向軸に向かって曲げることを含んでもよい。
【0027】
第1軸方向端部は、ヒートシンクと接触して配置され、それによってステータからの熱伝達を助けることができる。例では、第2軸方向端部は、ヒートシンクと接触するように配置されてもよい。
【0028】
有利なことに、フラックスリングと導体の第1軸方向端部との間の平均軸方向距離を短くすることができ、それによりステータとロータとの間の電力伝達が増加する。電力損失(IR)が減少することで、電流が流れたときの導体の温度上昇が低くなる。導体の温度上昇を抑えることで、モータに大きなトルクをかけることができる(モータの回転数を上げることができる)。
【0029】
この方法は、円筒形状導体の第2軸方向端部を長手方向軸から離れるように曲げること、を含んでもよい。
【0030】
長手方向軸から離れた軸方向端部の少なくとも1つ(この例では、第2軸方向端部)を提供すると、ロータをステータに挿入することができる、すなわち、ロータは、円筒形状の導体によって形成される内側半径方向面の間に配置することができる。
【0031】
本開示の一態様は、スロットレス電動モータ用ステータの製造方法を提供する。この方法は、導体を環状円筒の境界内に半環状に配置するステップと、導体の第1点におけるワイヤの断面が、導体の第2点におけるワイヤの断面の鏡像となるように、導体の非接合部の1つにハーフツイストを加えるステップと、を含む。導体上の複数の接合部を接合し、接合部が、領域内のワイヤが一緒に接合された導体の領域を構成し、複数の接合部が非接合部によって分離されている。第1点における内側半径方向面上のワイヤが、第2点における外側半径方向面上にあるように、導体の第1点におけるワイヤの断面が、導体の第2点におけるワイヤの断面に対して鏡像となる。
【0032】
有利なことに、先行技術の製造方法よりも時間が掛からないスロットレスモータ用ステータの製造方法が提供される。
【0033】
例では、環状円筒(円筒ともいう)は、内側半径方向面、外側半径方向面、第1軸方向面、第2軸方向面、及び中央長手方向軸を有してもよい。
【0034】
実施例では、導体は、ワイヤの束を含む。各ワイヤは、隣接するワイヤと平行に配置されてもよい(例えば、ワイヤ間に形成されるねじれや結び目はない)。
【0035】
導体が中心長手方向軸の周りにらせん状に巻かれている例では、導体の各ワイヤは半径方向内側面からの距離が一定である。
【0036】
導体がらせん状に中心長手方向軸の周りに巻かれている例では、導体の各ワイヤは、第1軸方向面からの距離が一定である。
【0037】
本開示の一態様は、本明細書に記載のいずれかの方法によって得られるスロットレス電動モータ用ステータを提供する。
【0038】
有利なことに、先行技術の方法で製造されたスロットレスモータよりも製造に時間が掛からないスロットレスモータ用ステータが提供される。
【0039】
本開示の一態様は、スロットレス電動モータを製造する方法を提供し、この方法は、本明細書に記載のステータのいずれかの製造方法を実行して、それによりステータを提供するステップと、ステータの軸中心の周りを回転するように構成されたロータを提供するステップと、を含む。
【0040】
有利なことに、先行技術の製造方法よりも時間が掛からないスロットレスモータ用ステータの製造方法が提供される。
【0041】
本開示の一態様は、スロットレス電動モータ用ステータを提供し、ステータは、ワイヤの束を含む導体であって、各ワイヤが他のワイヤと平行に配置されており、導体が複数の接合部を含み、接合部が、隣接するワイヤが接合部に沿って接合されている導体の領域を含み、隣接ワイヤ間の平均間隔が接合部において非接合部よりも小さく、非接合部が複数の接合部を分離することを含む。
【0042】
接合部は、チョコレートブロックと呼ばれることがある。有利なことに、接合部は、非接合部の導体密度と比較して、導体密度が増加した領域を提供する。これに対応して、接合された領域は、非接合部と比較して、接合部の周囲に強度の増加した磁場(例えば、より近い磁力線)を生成し得る比較的に高い電流密度がそこを通過することを可能にし得る。導体が銅である例では、接合部は、銅充填又は銅充填密度として知られる銅密度の増加した領域を提供する。
【0043】
接合部は、非接合部と比較して、より大きな硬さ(例えば、剛性)を有する。すなわち、接合部及び非接合部の両方に同じ大きさの力が加えられたとき、接合部は、非接合部よりも小さい程度に変形する。接合部の相対的な剛性を考慮すると、接合部はステータの構造を支持する(例えば、接合部のためにステータは自立する)可能性がある。
【0044】
導体は、円筒状に配置されてもよい。導体の接合部は、互いに平行に配置され、円の円周上に配置され、そして、接合部は、円筒状の導体の中心長手方向軸の周りに、及び中心長手方向軸から等距離に配置されている。導体の接合部は、円筒状である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】導体の平面図である。
図2A】導体の軸方向の平面図である。
図2B図2Aの導体の一部の軸方向平面図である。
図3A】複数の接合部及び非接合部を備えた図2A及び2Bの導体の平面の軸方向平面図である。
図3B】非接合部における導体の層の軸方向平面図である。
図3C】接合部における導体の層の軸方向平面図である。
図4A】複数の花弁状部を提供するように折り畳まれた図3A図3B、及び図3Cに示された導体を示す図である。
図4B】複数の花弁状部を提供するように折り畳まれた図3A図3B、及び図3Cに示された導体を示す図である。
図5A】複数の花弁状部を提供するように折り畳まれた図3A図3B、及び図3Cに示された第1導体に類似する別の導体を示す図である。
図5B】複数の花弁状部を提供するように折り畳まれた図3A図3B、及び図3Cに示された第1導体に類似する別の導体を示す図である。
図6A】複数の花弁状部を提供するように折り畳まれた図3A図3B、及び図3Cに示された第1導体に類似する別の導体を示す図である。
図6B】複数の花弁状部を提供するように折り畳まれた図3A図3B、及び図3Cに示された第1導体に類似する別の導体を示す図である。
図7A】折り畳み導体スタックを提供するために軸方向に積み重ねられた第1折り畳み導体、第2折り畳み導体、及び第3折り畳み導体を示す軸方向の図である。
図7B図7Aに示される折り畳み導体スタックの半径方向の図である。
図8A】導体の第1部分における接合部を示す図である。
図8B】導体の第2部分における接合部を示す図である。
図9】導体の非接合部分に設けられたハーフツイストを示す斜視図である。
図10A図7Aに示す折り畳み導体の花弁状部のセットを回転させて、図11に示すステータコアを形成する一連のステップを示す図である。
図10B図7Aに示す折り畳み導体の花弁状部のセットを回転させて、図11に示すステータコアを形成する一連のステップを示す図である。
図10C図7Aに示す折り畳み導体の花弁状部のセットを回転させて、図11に示すステータコアを形成する一連のステップを示す図である。
図11図7A図7Bに示す導体の積層体から形成される円筒形状の導体を示す図である。
図12】ステータ用の円筒形状の導体を示す軸方向図である。
図13】スロットレス電動モータ用ステータの製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0046】
ここで、スロットレスモータ用ステータの製造方法の説明を行う。ステータは、ラジアルフラックスステータでもよいが、他の例のステータを用いてもよいことは理解されるであろう。要するに、ステータの基礎を形成するワイヤを含む導体が提供される。導体の一部は接合され、組み立てられたステータにおいてステータコイルとして機能する複数の接合部を提供する。導体は、新規かつ独創的な方法で操作され、すべてのワイヤが同じ周方向平均位置を有し、ワイヤの同じ半径方向平均位置がすべて等しい導体を提供し、それによってステータを提供する。
【0047】
図1は、導体100を示す平面図である。
【0048】
導体100は、各ワイヤが他のワイヤと平行に配置されたワイヤの束(例えば、複数のワイヤ)を備えている。
【0049】
スロットレス電動モータ用ステータの製造方法は、導体を環状円筒の形状に配置するステップを含み、環状円筒は、内側半径方向面、外側半径方向面、第1軸方向面、及び第2軸方向面を有し、導体は、以下のワイヤの束を備え、各ワイヤは、他のワイヤに対して平行に配置され、各ワイヤは、内側半径方向面から一定の距離をおいて配置される。
【0050】
図2A及び図2Bは、上記方法ステップで述べたように、環状円筒の形状に配置された図1に示される導体を示す。
【0051】
図2Aは、導体の軸方向平面図である。図2Bは、図2Aの導体の一部の軸方向平面図である。
【0052】
導体100は、中心長手方向軸Xを取り囲む環状円筒状に形成されている。すなわち、導体100は、中心長手方向軸にらせん状に巻き付けられ、全体として環状円筒形状になっている。導体100は、中心長手方向軸の周りに複数のループを備えている。本例では、4つのループがあり、すなわち、導体は、中心長手方向軸Xの周りに4つの完全なターンを行う。4つのループは、第1ループ121、第2ループ122、第3ループ123、第4ループ124である。複数のループ121~124は、互いに平行かつ隣接して配置される。導体100が中心長手方向軸の周りに巻かれるとき、導体を形成するワイヤはらせん形状を有する、すなわち、ワイヤは、中心長手方向軸の周りに複数のターンを備えている。導体の各ワイヤは、第1軸方向面から一定の距離をおいて配置され、各ワイヤは、内側半径方向面から一定の距離をおいて配置される。導体100は、導体を起電力源に接続するための接続部120を提供する2つの端部を有する。
【0053】
上述のように、導体100は、環状円筒形状で配置される。環状円筒は、中心長手方向軸Xと、内側半径RI(すなわち、中心長手方向軸から内側半径方向面151までの距離)を有する内側半径面151と、外側半径ROを有する外側半径方向面152と、第1軸方向面153と、第2軸方向面154と、を備えている。
【0054】
内側半径方向面151は、第1軸方向面153及び第2軸方向面154に隣接して配置される。外側半径方向面152は、第1軸方向面153及び第2軸方向面154に隣接して配置される。第1軸方向面153は、内側半径方向面151と外側半径方向面152とに隣接して配置される。第2軸方向面154は、内側半径方向面151及び外側半径方向面152に隣接して配置される。第1軸方向面153は、内側半径方向面151及び外側半径方向面152に対して垂直であり、第2軸方向面154に対して平行である。第1軸方向面153及び第2軸方向面154は、長手方向軸Xの方向に配置され、内側半径方向面151は、第1軸方向面153及び第2軸方向面154に対して垂直である。内側半径方向面151及び外側半径方向面152は、長手方向軸Xに対して垂直に配置される。
【0055】
導体100は連続的であるが、各ループ(すなわち、中心長手方向軸の周りの導体の完全なターン)は、離散的な整数として考えることができる。第1ループ121の第1端部は、起電力(EMF)源に接続するように構成される。第1ループ121の第2端部は、第2ループ122の第1端部に接続される。第2ループ122第2端部は、第3ループ123の第1端部に接続される。第3ループ123の第2端部は、第4ループ124の第1端部に接続される。第4ループ124の第2端部は、EMFのソースに接続するように構成される。
【0056】
より詳細には、そして図2Bに見られるように、第1ループ121は、第2ループ122と平行に、かつ隣接して配置され、第2ループ122は、第1ループ121と第3ループ123との間に平行に配置され、第3ループ123は、第2ループ122と第4ループ124との間に平行に配置され、第4ループ124は、第3ループ123と平行に、かつ隣接して配置される。接続部120は、第1ループの第1端部と第4ループの第2端部とを備えている。
【0057】
ループ121から124のいずれかの間の電圧及び/又は電流の非対称性を低減するために、ステータの周囲に循環電流が供給されてもよい。
【0058】
本例では、導体100は、15層のワイヤで構成されている。したがって、導体は、15tの厚さを有し、tはワイヤ1本分の厚さである。従って、ループの各々は、15tの厚さを有する。各層は、ワイヤ5本分の幅を有する。したがって、導体は5wの幅を有し、wはワイヤ1本分の幅である。このことから、各ループは厚さ15t、幅5wを有することがわかる。
【0059】
本明細書に記載の例では、各ワイヤは円形断面を有し(例えば各ワイヤは円筒チューブ)、各ワイヤは同じ直径を有し、厚さ及び幅は円形断面の直径に等しく、t=wである。
【0060】
導体のワイヤの第1層(図2BのLAYER1)は、内側半径方向面151に配置される。すなわち、第1層は、内側半径方向面から間隔ゼロで配置される。第2層(図2BのLAYER2)は、内側半径方向面151から1層分(すなわち、第1層LAYER1)だけ分離されている。言い換えれば、第2層は、内側半径方向面151から1本のワイヤの厚さtに等しい距離で配置される。同様に、第3層(図3B図3CのLAYER3)は、内側半径方向面151から2tの距離で配置される等している。第15層(図2BのLAYER15)は、14層のワイヤによって内側半径方向面151から分離されている。言い換えれば、15層目は、内側半径方向面151から14本分のワイヤの厚さ14tに等しい距離で配置される。第15層は、外側半径方向面152に配置される、すなわち第15層は、外側半径方向面152から間隔ゼロで配置される。
【0061】
ループ121から124の各々は、内側半径方向内側151から外側半径方向面152まで広がっている。第1ループ121の面は、第1軸方向面153に配置されている。すなわち、ループ121は、第1軸方向面153を形成する。第4ループ124の面は、第2軸方向面154に配置されている。すなわち、ループ124は、第2軸方向面154を形成する。
【0062】
スロットレス電動モータ用ステータの製造方法は、導体上に複数の接合部を接合するステップを含み、接合部は、隣接するワイヤが接合部に沿って接合される導体の領域を含み、隣接するワイヤ間の平均間隔は、非接合部よりも接合部において小さく、複数の接合部は、非接合部によって分離されている。
【0063】
図3Aは、上記方法ステップで述べたように、複数の接合部及び複数の非接合部を有する図2A及び図2Bに示される導体を示す。
【0064】
図3Aは、複数の接合部及び非接合部を含む図2A及び図2Bの導体の軸方向平面図を示し、図3Bは、非接合部における導体の層の軸方向平面図を示し、図3Cは、接合部における導体の層の軸方向平面図を示している。
【0065】
円筒状導体100は、複数の非接合部301と複数の接合部302とを含む。隣接する層のワイヤ間の平均間隔は、非接合部301よりも接合部302の方が小さい。言い換えれば、接合部302は、非接合部301よりも密度が大きい。接合部302の導体密度は、非接合部301の導体密度よりも大きい。導体が銅で形成された例では、接合部301は、非接合部よりも大きな銅充填量を有する。
【0066】
非接合部301は、接合部302よりも短い長さを有してもよい。
【0067】
接合部302は、導体100の部分に接合化合物を塗布し、接合化合物が塗布された部分を、接合化合物が硬化するまで圧縮することによって提供される。
【0068】
例えば、接合化合物は樹脂等の接着剤であり、例えば、熱活性化樹脂や光活性化樹脂(例えば、紫外線活性化樹脂)である。熱活性化樹脂を用いる例では、接着剤が塗布される部分を圧縮するためのクランプ装置によって熱を与えてもよいし、また、導体に電流を流して接着剤を塗布する導体の長さを加熱する(例えばジュール加熱)、クランプ装置を加熱して接着剤を塗布する導体の長さを加熱する、接着剤を塗布する導体の長さに赤外線を照射する、のいずれかによって加熱してもよい。
【0069】
スロットレス電動モータ用ステータの製造方法は、導体を折り曲げて、導体に沿って繰り返される複数の花弁状部を提供するステップを含み、各花弁状部は、非接合部によって接続された一対の接合部を含み、一対の接合部は互いに平行に配置され、導体上の隣接する花弁状部は、非接合部によって接続され、花弁状部における非接合部は、第1円の円周によって境界付けられ、第1円は第1直径を有し、花弁状部を接続する非接合部は、第2円の円周によって境界付けられ、第2円は第2直径を有し、第2直径は第1直径より小さく、第1円及び第2円は同一平面上にあり、同心である。
【0070】
図4A及び図4Bは、上記方法ステップで述べたように、複数の花弁状部を提供するために折り畳まれた図3A図3B、及び図3Cに示されている導体(すなわち、第1導体)を示している。図5A及び図5Bは、上記方法ステップで述べたように、複数の花弁状部を提供するために折り畳まれた図3A図3B、及び図3Cに示した第1導体に類似する別の導体(すなわち、第2導体)を示している。図6A及び図6Bは、上記方法ステップで述べたように、複数の花弁状部を提供するために折り畳まれた図3A図3B及び図3Cに示された第1導体に類似する別の導体(すなわち、第3導体)を示している。
【0071】
図4Aは、複数の花弁状部410及び接続花弁状部420を備えた折り畳み導体400の軸方向の図を示し、図4Bは、図4Aに示す折り畳み導体400の半径方向の図を示す。図5Aは、複数の花弁状部410’及び接続花弁状部420’を備えた折り畳み導体400’の軸方向の図を示し、図5Bは、図5Aに示される折り畳み導体400’の半径方向の図である。図6Aは、複数の花弁状部410’’及び接続花弁状部420’’を備えた折り畳み導体400’’の軸方向の図を示し、図4Bは、図4Aに示される折り畳み導体400’’の半径方向の図である。隣接する花弁状部は、中央長手方向軸と45度の角度を形成する(すなわち、∠花弁状部-軸-花弁状部=45°)。
【0072】
各花弁状部410は、非接合部301によって接続された一対の接合部302を備えている。花弁状部410における一対の接合部は、互いに平行に配置される。導体の隣接する花弁状部410は、非接合部301により接続されている。
【0073】
接続花弁状部420は、花弁状部410と同様であるが、追加的に接続部120を備えている。
【0074】
花弁状部410、420における非接合部301は、第1円451の円周によって囲まれ、第1円451は第1直径を有する、すなわち花弁状部における非接合部301は、第1円451の円周の外側に配置される。
【0075】
隣接する花弁状部を接続する非接合部さは、第2円452の円周によって境界付けられ、第2円452は第2直径を有し、第2直径は第1直径より小さい、すなわち花弁状部を接続する非接合部は、第2円452の円周内に配置される。
【0076】
第1円452及び第2円452は、同一平面上にあり、同心である。第1円451及び第2円452は、本明細書において円平面と呼ばれる同一平面上に配置される。第1円451及び第2円452は、導体100の中心長手方向軸X上に中心を有する。
【0077】
図5A及び図5Bに示す第2折り畳み導体は、単一のプライム記号を加えた同じ符号を用いてそれぞれ示される第1折り畳み導体と同じ特徴を有する、すなわち、第2折り畳み導体は、複数の花弁状部410’と接続花弁状部420’等の特徴を有している。同様の方法で、第3折り畳み導体は、第1折り返し導体と同じ特徴を有し、それぞれダブルプライム記号を加えた同じ符号を用いて表記される(すなわち、第3折り畳み導体は、複数の花弁状部410’’と接続花弁状部420’’を有する)。
【0078】
第1導体400の第1円451及び第2円452は、第2導体400’の第1円451’及び第2円452’と同一である。第1導体400の第1円451及び第2円452は、第3導体400’’の第1円451’及び第2円452’’と同一である。
【0079】
図7Aは、軸方向に互いに積み重ねられて、折り畳まれた導体スタック500を提供する、第1折り畳み導体400、第2折り畳み導体400’、及び第3折り畳み導体400’’の軸方向の図であり、図7Bは、図7Aに示す折り畳み導体スタック500の半径方向の図である。
【0080】
第1導体400、第2導体400’及び第3導体400’’が、本明細書に記載された方法で花弁状部を提供するために折り畳まれると、3つの導体は、次に、他の上に一つ積み重ねられる。すなわち、第1導体400の軸方向面は、第2導体400’の軸方向面とほぼ接し、第2導体400’の別の軸方向面は、第3導体の軸方向面とほぼ接している。第1、第2及び第3導体の中心長手方向軸は、整列して一致する。
【0081】
ステータの形成方法は、複数(例えば好ましくは3つ)の折り畳み導体500を1つずつ軸方向に積み重ねることを含んでもよい。
【0082】
以下では、第1折り畳み導体400からの花弁状部、第2折り畳み導体400’からの花弁状部、第3折り畳み導体400’’からの花弁状部を含む花弁状部のセットを花弁状部セット510と称する。各花弁状部セット510は、2組の接合部602と1組の非接合部601を含む。各花弁状部セット510は、1組の非接合部により接続される。第1、第2及び第3導体の接続花弁状部に含まれる花弁状部セットは、接続花弁状部セット520と称する。各花弁状部セット510の非接合部601は、第1円551(第1円551は、第1円451、451’、451’’と同一)上に配置される。各花弁状部セット510を接続する非接合部601の各セットは、第2円552(第2円552は、第2円452、452’、452’’と同一である)上に配置される。
【0083】
第1、第2、第3導体は、各花弁状部における接合部が互いにオフセットされるように折り畳まれる。このオフセットの結果、軸方向に積み重ねたときに、導体の接合部が交互に配置される。この交互の配置は、図7Aに見ることができる。所定の花弁状部セットは、中心長手方向軸Xを中心に時計回りに移動するとき、次の順序で接合部を有する、第1折り畳み導体400からの接合部301、第2折り畳み導体400’からの接合部301’、第3折り畳み導体400’’からの接合部301’’、第1折り畳み導体400からの接合部301、第2折り畳み導体400’からの接合部301’、第3折り畳み導体400’’からの接合部301’’。
【0084】
図12は、ステータ用の円筒形状導体の軸方向の図である。折り畳み導体のスタック500がステータ用の円筒形状導体に形成されるとき、様々な折り返し導体の接合部は、図示のように交互に配置されたままである。
【0085】
各導体において、非接合部のうちの1つは、ハーフツイストを含んでもよい。例として、非接合部の1つ以上がハーフツイストを含んでもよく、例えば、非接合部のすべてがハーフツイストを含むか、非接合部の1つおきにハーフツイストを含んでもよい。
【0086】
図8Aは、導体100の第1部分における導体100の接合部302を示す図であり、図8Bは、導体100の第2部分における導体100の接合部302を示す図である。図9は、導体の非接合部分に設けられたハーフツイストを示す図である。実施例では、図9に示すハーフツイストは、円筒形状の導体の第1又は第2軸方向端部に設けられてもよい。
【0087】
ハーフツイストを設けることで、ハーフツイストの第1側に導体の第1部分901が提供され、ハーフツイストの第2側に導体の第2部分902が提供される。
【0088】
導体は、2つの面、すなわち、第1面1010、第2面1020を有する。2つの面は、導体の対向する面を規定する。導体の第1部分901では、導体の第1面1010は所定の方向(例えば、図9の図に向かう方向)を向いており、導体の第2面1020は所定の方向から離れる方向(例えば、図9の図から離れる方向)に向いている。導体の第2部分902において、導体の第2面1020は所定の方向(例えば、図9の図に向かう方向)を向いており、導体の第1面1010は所定の方向から離れる方向(例えば、図9の図から離れる方向)を向いている。
【0089】
所定のループが第1面を形成し、別のループが第2面を形成してもよい。したがって、ハーフツイストにより、どのループが所定の方向を向くか(どのループが最も近いか)が変化します。ハーフツイストを含む導体を用いて円筒形状の導体を形成する場合、第1面1010は、導体の第1部分901について中心長手方向軸に面し、第2面1020は、導体の第2部分902について中心長手方向軸に面する。
【0090】
図8Aの接合部302は、第1導体100の第1部分901における接合部302のすべてを代表するものである。図8Bの接合部302は、導体100の第2部分902における接合部302の全てを代表するものである。
【0091】
第1部分901において、接合部302は、次のように配置される、第1層LAYER1は、第2層LAYER2、第3層LAYER3、及び第15層までよりも中央長手方向軸Xに近い位置に配置される。
【0092】
接合部302の第2部分902では、次のように配置されている、第15層(図示せず)が中心長手方向軸に最も近い層であり、次に第14層(図示せず)であり、以下同様である。第3層LAYER3は、第2層LAYER2、及び第1層LAYER1よりも中心長手方向軸Xに近い位置に配置され、第2層LAYER2は、第1層LAYER1よりも中心長手方向軸Xに近い位置に配置される。
【0093】
使用中の導体に電流を流すと、中心長手方向軸Xに近いループは、中心長手方向軸Xから遠いループに比べて高い温度に加熱される。
ハーフツイストを設けることにより、導体のループが中心長手方向軸に対して配置される順序が変わるので、導体の温度を調節し、熱による損傷を回避することができる。
【0094】
ハーフツイストは、導体の中間点、すなわち導体の電気接続端子の間に等距離にある導体の点に配置されることが好ましい。有利なことに、導体の中間点にハーフツイストを設けると、ハーフツイストの第1側の第1領域901とハーフツイストの第2側の第2領域902におけるループの加熱量が等しくなり、したがって、導体の加熱によって生じる摩耗が第1領域901と第2領域902にわたって均一に分布する。図8A図8B、及び図9に関するハーフツイストの上記の説明は、導体を形成する任意の数のワイヤ(又はワイヤの層)に対して一般化できることが理解されるであろう。
【0095】
上述のハーフツイストは、第1折り畳み導体400、第2折り畳み導体400’、及び第3折り畳み導体400’’に適用されることが理解されるであろう。
【0096】
スロットレス電動モータ用ステータの製造方法は、各花弁状部を第2円上の点を中心に回転させて、すべての花弁状部の接合部を平行に整列させるステップを含み、それによって、直径は第2の直径に等しく、接合部は円筒形状導体の中心長手方向軸の周囲及び中心長手方向軸から等距離に配置される。
【0097】
図11は、上記した方法ステップを実施した後、図7A及び図7Bに示した導体スタック500から形成された円筒形状導体を示す図である。
【0098】
図10A図10B、及び図10Cは、図7Aに示される折り畳み導体の花弁状部セット510を回転させて図11に示されるステータコアを形成する一連のステップを示し、図11は、図7A及び図7Bに示される導体スタック500から形成される円筒形状導体1100の半径方向の斜視図を示す。
【0099】
すべての花弁状部(すなわち、花弁状部セットにおけるすべての花弁状部)610、620は、第2円552上の点、すなわち、所定の花弁状部セット610、620に最も近い第2円552上の点を中心として回転される。第1円551に最も近い各花弁状部410、420、410’、420’、410’’、420’’(花弁状部セット610、620における)の端部は、中心長手方向軸Xに向かって回転される。
【0100】
図10Bに示すように、花弁状部セット610、620の全ての花弁状部は、同じ方向に回転される、すなわち、花弁状部の第1端部の各々は、第1円551及び第2円552を含む平面の特定の側で回転される(例えば、すべての第1端部が平面の「上」側で回転される)。
【0101】
図10Cに示すように、花弁状部セット610、620の各花弁状部は、各花弁状部における各接合部302、302’、302’’の長さが、第1円551及び第2円552を含む平面に対して垂直となるように90°回転される。
【0102】
導体セット500の接合部302、302’、302’’のすべてが、第2円552上に配置される。
【0103】
また、本方法は、円筒形状導体の第1軸方向端部を長手方向軸に向かって折り曲げるステップを含んでもよい。
【0104】
図11は、導体セット500から形成された円筒形状導体1100を例示する。円筒形状導体1100は、第1軸方向端部1110と第2軸方向端部1120を有する。フラックスリング1105は、円筒形状導体1100の周囲に配置される。
【0105】
円筒形状導体1100を形成する導体400、400’、400’’は、それぞれの接続部120、120’、120’’(図4A、4B、5A、5B、6A、6Bを参照)を介して、起電力源に接続される。接続部は、スター結線を介して起電力源に接続される。
【0106】
第1軸方向端部1110上の非接合部は、中心長手方向軸Xに向かって曲げられ、それによって長手方向軸Xからの非接合部上のすべての点の平均距離が減少する。有利なことに、第1軸方向側面1110からの非接合部上のすべての点の平均距離が減少することによって、磁場が集中する(例えば、磁力線は、中心長手方向軸に対して比較的密に配置される)、導体に電流が流れるとき、これにより、ステータと、円筒形状導体の周囲に配置された(ステータとして動作する)ロータとの間の電力伝達を、使用時に比較的増大させることができる。有利なことに、電力損失(IR)が減少し、電流を流したときの導体の温度上昇が低くすることができる。導体の温度上昇を抑えることで、モータに大きなトルクをかけることができる(モータの回転数を上げることができる)。
【0107】
円筒形状導体1100は、モータ用の3相ステータとして動作可能である。第1導体400は、第1相を搬送するように構成される。第2導体400’は、第2相(例えば、第1導体に印加されるAC電流に対して120度の位相遅れを有するAC電流)を搬送するように構成される。第3導体400’’は、第3相(例えば、第1導体に印加されるAC電流に対して240度の位相遅れを有するAC電流)を搬送するように構成される。
【0108】
図13は、スロットレス電動モータ用ステータの製造方法を示すフローチャートである。
【0109】
スロットレス電動モータ用ステータを製造する方法は、以下を含む。
【0110】
S802では、環状円筒形状の導体を配置する。環状円筒は、内側半径方向面、外側半径方向面、第1軸方向面、及び第2軸方向面を有する。導体は、以下のワイヤの束を含む。それぞれのワイヤは、他のワイヤに対して平行に配置され、それぞれのワイヤは内側半径方向面から一定の距離を置いて配置される。
【0111】
換言すれば、複数のループを含む導体は、図2A及び図2Bに示され、上述したように、環状形状に配置される。
【0112】
S804では、導体上の複数の接合部を接合する。接合部は、隣接するワイヤ(すなわち、ワイヤの隣接層)が接合部に沿って接合される導体の領域を含み、隣接するワイヤ間の平均間隔が、非接合部よりも接合部において小さく、複数の接合部が非接合部によって分離されている。
【0113】
換言すれば、導体の一部が接合されて、図3Aから図3Cに示される、上述したような導体が得られる。
【0114】
導体上に複数の接合部を接合するステップは、導体の部分に接合化合物を塗布すること、及び接合化合物を活性化し、それによって複数の接合部を形成することを含む。
【0115】
本明細書で説明したように、接合化合物は、樹脂などの接着剤であってもよい。例えば、接合化合物は、熱活性化樹脂のような樹脂であってもよい。必要な熱は、クランプ部材による加熱、導体のジュール加熱、赤外線の照射のうち少なくとも1つによって供給されてもよい。
【0116】
複数の接合部を接合するステップは、接合化合物(例えば樹脂)が塗布される導体の長さにクランプ力(例えばクランプ部材による)を加え、それによって接合化合物が塗布される導体の部分における導体のワイヤ間の平均間隔を縮小することも含んでもよい。接合化合物が活性化して固まると、クランプ力を除去することができる。
【0117】
任意で、S805において、導体の第1点におけるワイヤの断面が、導体の第2点におけるワイヤの断面の鏡像となるように、導体の非接合部の1つにハーフツイストを加え、第1点における内側半径方向面上のワイヤが、第2点における外側半径方向面上にあるような状態にする。
【0118】
ハーフツイストとその目的については、すでに詳しく説明している。
【0119】
S806では、導体を折り曲げて、導体に沿って繰り返される複数の花弁状部を提供する。各花弁状部は、非接合部によって接続された一対の接合部を含み、一対の接合部は、互いに平行に配置され、導体上の隣接する花弁状部は、非接合部によって接続され、花弁状部における非接合部は、第1円の円周によって境界付けられ、第1円は第1直径を有する。花弁状部を接続する非接合部は、第2円の円周によって境界付けられ、第2円は第2直径を有し、第2直径は第1直径より小さく、第1円及び第2円は、同一平面上にあり、同心である。
【0120】
換言すれば、図4Bに示され、上述したような導体を提供するために、導体内に花弁状部が設けられる。
【0121】
任意でステップS802からS806を繰り返して、複数の折り畳み導体を提供し、複数の折り畳み導体を軸方向にスタッキングする。
【0122】
S808では、各花弁状部を第2円上の点を中心に回転させる。すべての花弁状部の接合部を平行に揃えることにより、第2直径に等しい直径を有する円筒形状導体を含むステータを提供し、接合部が円筒形状導体の中心長手方向軸の周りに、かつそこから等距離で配置される。
【0123】
換言すれば、各花弁状部は、図10Aから図10Cのシーケンスに示される方法で回転され、図11に示されるような円筒形状導体を提供する。
【0124】
S809では、円筒形状導体の第1軸方向端部を、長手方向軸に向かって折り曲げる。
【0125】
S810では、円筒形状導体を、第2直径よりも大きい内径を有するフラックスリングの中心孔内に配置し、それによって、導体の外側半径方向面の周りに配置されたフラックスリングを有する円筒形状導体を含むステータを提供する。
【0126】
例えば、フラックスリングは、導体の接合部の長さ以下である軸方向の長さを有する。不利なことに、フラックスリングが接合部より長い例では、ワイヤが失われる可能性がある(例えば、接合部におけるワイヤの平均間隔が増大する可能性がある)。
【0127】
S812では、円筒形状導体の中心に拡張可能なマンドレルを配置する。円筒形状導体がフラックスリングの中心孔内に配置されたときに拡張可能なマンドレルを拡張し、それによって円筒形状導体の直径を第2直径とフラックスリングの内径との間の直径に拡大する。
【0128】
有利なことに、円筒形状導体とフラックス距離との間の半径方向の距離が最小化される。
【0129】
S814では、円筒形状導体の第2軸方向端部を長手方向軸から離れるように曲げる。
【0130】
第2軸方向端部302における非接合部301は外側に広がり、それによって非接合部とフラックスリングとの間の平均軸方向距離が減少する。
【0131】
さらなる実施形態が想定される。任意の1つの実施形態に関連して説明された任意の特徴は、単独で、又は説明された他の特徴と組み合わせて使用することができ、また、実施形態の任意の他の1つ又は複数の特徴、又は実施形態の任意の他の組み合わせと組み合わせて使用することができることを理解されたい。さらに、上記に記載されていない等価物や変更も、添付の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲から逸脱することなく採用することができる。
【0132】
導体を環状円筒形状に配置するステップを実行するために、環状円筒は、内側半径方向面、外側半径方向面、第1軸方向面、及び第2軸方向面を有し、導体は、ワイヤの束を含み、各ワイヤは、他のワイヤと平行に配置され、各ワイヤは、内側半径方向面に対して一定の距離で配置されている。導体を長手方向中心軸の周りにらせん状に巻く代わりに、導体を次のように巻くこともできます。中心長手方向軸の周りにらせんを描き、それによって導体を円筒形状に形成する。このような例では、各ワイヤは円筒形状の軸面から一定の距離に配置される。

図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図10C
図11
図12
図13
【外国語明細書】