(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023105816
(43)【公開日】2023-07-31
(54)【発明の名称】フォトンカウンティングコンピュータ断層撮影スキャンシステムのための定量パルス選択
(51)【国際特許分類】
G01T 1/17 20060101AFI20230724BHJP
A61B 6/03 20060101ALI20230724BHJP
G01T 1/24 20060101ALI20230724BHJP
【FI】
G01T1/17 F
A61B6/03 320R
A61B6/03 373
G01T1/24
G01T1/17 A
G01T1/17 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023006049
(22)【出願日】2023-01-18
(31)【優先権主張番号】63/300,953
(32)【優先日】2022-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18/065,045
(32)【優先日】2022-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520490417
【氏名又は名称】アナログ ディヴァイスィズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】パトリック・スタンレー・リール
(72)【発明者】
【氏名】スンリタ・ポダール
【テーマコード(参考)】
2G188
4C093
【Fターム(参考)】
2G188AA02
2G188BB02
2G188BB15
2G188CC28
2G188DD05
2G188DD16
2G188EE01
2G188EE05
2G188EE07
2G188EE12
2G188EE17
2G188EE25
2G188EE29
2G188EE37
4C093AA22
4C093EA07
4C093FD09
(57)【要約】
【課題】フォトンカウンティングコンピュータ断層撮影(PCCT)スキャンシステム及びシステムで使用するための方法を提供する。
【解決手段】一実施形態は、複数の弁別器を備えるフォトンカウンティングコンピュータ断層撮影(PCCT)スキャンシステム内のピクセルによって検出された電荷事象をカウンティングするための方法であり、各弁別器は、複数の閾値電圧レベルのそれぞれ1つに関連付けられている。方法は、弁別器のうちの1つから出力された信号を検出することと、検出された弁別器出力信号が第1の条件を満たす場合、弁別器のうちの1つに関連付けられた閾値電圧レベルに対応する定量カウントをインクリメントすることと、検出された弁別器出力信号が少なくとも1つの第2の条件を満たす場合、定性カウントをインクリメントすることと、を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の弁別器を備えるフォトンカウンティングコンピュータ断層撮影(PCCT)スキャンシステム内のピクセルによって検出された電荷事象をカウンティングするための方法であって、各弁別器が、複数の閾値電圧レベルのそれぞれの1つに関連付けられており、前記方法が、
前記弁別器のうちの1つから出力された信号を検出することと、
前記検出された弁別器出力信号が第1の条件を満たす場合、前記弁別器のうちの前記1つに関連付けられた前記閾値電圧レベルに対応する定量カウントをインクリメントすることと、
前記検出された弁別器出力信号が少なくとも1つの第2の条件を満たす場合、定性カウントをインクリメントすることと、を含む、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの第2の条件が、閾値超過時間(ToT)タイマーの満了を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ToTタイマーの満了時に、
前記定性カウントをインクリメントすることと、
前記ToTタイマーをリセットすることと、を更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの第2の条件が、前記弁別器のうちの前記1つから出力された前記信号が隣接するピクセルに関連付けられた弁別器から出力された信号と重複することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの第2の条件が、前記弁別器のうちの前記1つから出力された前記信号が1つの単調な連続の低から高への遷移のみ及び1つの単調な連続の高から低への遷移のみを含むことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の条件が、前記少なくとも1つの第2の条件の不在を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記複数の弁別器が、5つの弁別器を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記複数の閾値電圧レベルが、5つの閾値電圧レベルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記弁別器の各々が、前記弁別器に入力された電圧信号を前記弁別器に関連付けられた前記閾値電圧レベルと比較する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記弁別器に入力された前記電圧信号が前記弁別器に関連付けられた前記閾値電圧レベルを超えるとき、前記弁別器の各々の出力が高く駆動される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
定性カウントの合計数が特定の閾値に達しない場合、スペクトル情報が無視される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
複数の弁別器を備えるフォトンカウンティングコンピュータ断層撮影(PCCT)スキャンシステム内のピクセルによって検出された電荷事象をカウンティングするための方法であって、各弁別器が、複数の閾値電圧レベルのそれぞれの1つに関連付けられており、前記方法が、
前記弁別器のうちの1つから出力された信号を検出することと、
閾値超過時間(ToT)タイマーが満了すること、
前記弁別器のうちの前記1つから出力された前記信号が、隣接するピクセルに関連付けられた弁別器から出力された信号と重複すること、並びに
前記弁別器のうちの前記1つから出力された前記信号が、1つの単調な低から高の遷移及び単調な高から低の遷移のみを含むことのうちの少なくとも1つが生じたときに、定性カウントをインクリメントすることと、
そうでなければ、前記弁別器のうちの前記1つに関連付けられた前記閾値電圧レベルに対応する定量カウントをインクリメントすることと、を含む、方法。
【請求項13】
前記ToTタイマーの満了時に、
前記定性カウントをインクリメントすることと、
前記ToTタイマーをリセットすることと、を更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
フォトンカウンティングコンピュータ断層撮影(PCCT)スキャンシステムであって、
複数の弁別器であって、各弁別器が、複数の閾値電圧レベルのそれぞれ1つに関連付けられている、複数の弁別器と、
カウンティング回路であって、
前記弁別器のうちの1つから出力された信号を検出すること、
前記検出された弁別器出力信号が第1の条件を満たす場合、前記弁別器のうちの前記1つに関連付けられた前記閾値電圧レベルに対応する定量カウントをインクリメントすること、及び
前記検出された弁別器出力信号が少なくとも1つの第2の条件を満たす場合、定性カウントをインクリメントすることを行うように構成されたカウンティング回路と、を備える、フォトンカウンティングコンピュータ断層撮影(PCCT)スキャンシステム。
【請求項15】
前記少なくとも1つの第2の条件が、閾値超過時間(ToT)タイマーの満了を含む、請求項14に記載のPCCTシステム。
【請求項16】
前記ToTタイマーの満了時に、
前記定性カウントをインクリメントすることと、
前記ToTタイマーをリセットすることと、を更に含む、請求項15に記載のPCCTシステム。
【請求項17】
前記少なくとも1つの第2の条件が、前記弁別器のうちの前記1つから出力された前記信号が隣接するピクセルと関連付けられた弁別器から出力された信号と重複することを含む、請求項14に記載のPCCTシステム。
【請求項18】
前記少なくとも1つの第2の条件が、前記弁別器のうちの前記1つから出力された前記信号が1つの単調な連続の低から高への遷移及び1つの単調な連続の高から低への遷移のみを含むことを含む、請求項14に記載のPCCTシステム。
【請求項19】
前記第1の条件が、前記少なくとも1つの第2の条件の不在を含む、請求項14に記載のPCCTシステム。
【請求項20】
前記弁別器の各々が、前記弁別器に入力された電圧信号を前記弁別器に関連付けられた前記閾値電圧レベルと比較し、前記弁別器に入力された前記電圧信号が前記弁別器に関連付けられた前記閾値電圧レベルを超えるときに、前記弁別器の各々の出力が高く駆動される、請求項14に記載のPCCTシステム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2022年1月19日に出願された「QUANTITATIVE PULSE SELECTION FOR PHOTON-COUNTING COMPUTED TOMOGRAPHY SCANNING SYSTEMS」と題する米国仮出願第63/300,953号の利益を主張し、その内容全体を全ての目的のために参照により本明細書に組み込む。
【技術分野】
【0002】
本開示は、概して、フォトンカウンティングコンピュータ断層撮影(PCCT)スキャンシステムの分野に関し、より具体的には、そのようなシステムで使用するための定量パルス選択技術に関する。
【図面の簡単な説明】
【0003】
本開示並びにその特徴及び利点のより完全な理解を提供するために、同様の参照番号が同様の部分を表す添付の図と併せて以下の説明を参照されたい。
【0004】
【
図1】本明細書に記載の特定の実施形態の特徴による、慣習的なCTスキャンシステムの動作の概略図の例示である。
【
図2】本明細書に記載の特定の実施形態の特徴による、PCCTスキャンシステムのための例示的な信号処理アーキテクチャの概略ブロック図である。
【
図3】本明細書に記載の特定の実施形態の特徴による、
図2のPCCTスキャンシステムのシミュレーション例の結果を示すグラフである。
【
図4A】本明細書に記載の特定の実施形態の特徴による、電荷事象のパイルアップの一例を示す。
【
図4B】本明細書に記載の実施形態の特徴による、電荷共有の例を示す。
【
図5A】本明細書に記載の実施形態の特徴による、定量パルス選択(QPS)技術の動作を示すフローチャートである。
【
図5B】本明細書に記載の実施形態の特徴による、QPS技術によって実装される状態機械である。
【
図6A】本明細書に記載の実施形態の特徴による、注目ピクセル(pixel-of-interest、POI)で検出された電荷事象のカウンティングを示す。
【
図6B】本明細書に記載の実施形態の特徴による、注目ピクセル(pixel-of-interest、POI)で検出された電荷事象のカウンティングを示す。
【
図6C】本明細書に記載の実施形態の特徴による、注目ピクセル(pixel-of-interest、POI)で検出された電荷事象のカウンティングを示す。
【
図7A】本明細書に記載の実施形態の特徴による、グラウンドトゥルースと比較した、様々なPCCTカウンティング方法の定量カウンティング曲線及び定性カウンティング曲線を示す。
【
図7B】本明細書に記載の実施形態の特徴による、グラウンドトゥルースと比較した、様々なPCCTカウンティング方法の定量カウンティング曲線及び定性カウンティング曲線を示す。
【
図7C】本明細書に記載の実施形態の特徴による、グラウンドトゥルースと比較した、様々なPCCTカウンティング方法の定量カウンティング曲線及び定性カウンティング曲線を示す。
【
図7D】本明細書に記載の実施形態の特徴による、グラウンドトゥルースと比較した、様々なPCCTカウンティング方法の定量カウンティング曲線及び定性カウンティング曲線を示す。
【
図8】本明細書に記載の実施形態の特徴による、グラウンドトゥルースと比較した、閾値超過時間(time-over-threshold、ToT)を伴う、及び伴わないQPS技術の合計カウンティング曲線を示す。
【
図9A】本明細書に記載の実施形態の特徴による、模擬データセットにおける骨の厚さの一連の推定を示す。
【
図9B】本明細書に記載の実施形態の特徴による、模擬データセットにおける骨の厚さの一連の推定を示す。
【
図10】本明細書に記載の特定の実施形態の特徴による、PCCTスキャンシステムの全部又は一部を実装するために使用され得るコンピュータシステムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本開示の目的上、「A及び/又はB」という言い回しは、(A)、(B)、又は(A及びB)を意味する。本開示の目的上、「A、B、及び/又はC」という言い回しは、(A)、(B)、(C)、(A及びB)、(A及びC)、(B及びC)、又は(A、B、及びC)を意味する。測定範囲に関して使用する際の「間の(between)」という用語は、測定範囲の両端を含めるものである。本明細書で使用する際、「A/B/C」という表記は、(A)、(B)、及び/又は(C)を意味する。
【0006】
説明では、各々、同じ又は異なる実施形態のうちの1つ以上を指し得る、「一実施形態において」又は「実施形態において」という言い回しを使用する。更に、本開示の実施形態に関して使用される「備える」、「含む」、及び「有する」などの用語は、同義である。本開示は、「上方」、「下方」、「頂部」、「底部」、及び「側部」などの遠近法に基づく記述を使用する場合があり、そのような記述は、考察を容易にするために使用され、開示された実施形態の適用を制限することを意図するものではない。添付の図面は、必ずしも縮尺通りに描かれていない。別段の指定がない限り、共通のオブジェクトを記述する「第1」、「第2」、及び「第3」などの序数形容詞の使用は、単に、同様のオブジェクトの様々な事例を指していることを示しており、そのように記述されたオブジェクトが、時間的、空間的、順位付け、又は任意の他の様式のいずれにおいても、所与の順序でなければならないことを意味するように意図するものではない。
【0007】
以下の詳細な説明では、本明細書の一部を形成する添付の図面を参照し、例示として実施され得る実施形態を示す。本開示の範囲から逸脱することなく、他の実施形態を利用してもよく、かつ構造的又は論理的な変更を行ってもよいことを理解されたい。したがって、以下の詳細な説明は、限定的な意味でとられるべきではない。
【0008】
以下の開示は、本開示の特徴及び機能を実装するための様々な例示的な実施形態及び例を説明する。特定の構成要素、配置、及び/又は特徴は、様々な例示的な実施形態に関連して以下に説明されるが、これらは本開示を単純化するために使用される単なる例であり、限定を意図するものではない。もちろん、任意の実際の実施形態の開発において、システム、ビジネス、及び/又は法的制約への準拠を含む、開発者の特有の目標を達成するために、多くの実装態様特有の決定を行う必要があり、これは、実装態様によって異なる場合があることが理解されるであろう。また、そのような開発努力は複雑で時間がかかる場合があるが、それでも本開示の利益を受ける当業者にとっては日常的な作業であり得ることが理解されるであろう。
【0009】
本明細書では、添付の図面に描写されるように、様々な構成要素間の空間的関係及び構成要素の様々な態様の空間的配向が参照され得る。しかしながら、本開示を完全に読んだ後に当業者が認識するであろうように、本明細書に記載のデバイス、構成要素、部材、装置などは、任意の所望の配向に位置決めされ得る。したがって、本明細書で記述される構成要素は任意の所望の方向に配向され得るため、「上方」、「下方」、「上部」、「下部」、「頂部」、「底部」などの用語、又は様々な構成要素間の空間関係を記述するためか、又はそのような構成要素の態様の空間的配向を記述するための他の同様の用語の使用は、それぞれ、構成要素間の相対的な関係、又はそのような構成要素の態様の空間的配向を記述すると理解されるべきである。要素、動作、及び/又は条件の寸法又は他の特性(例えば、時間、圧力、温度、長さ、幅など)の範囲を説明するために使用する場合、言い回し「XとYとの間」は、X及びYを含む範囲を表す。
【0010】
更に、本開示は、様々な例において、参照番号及び/又は参照文字を反復することがある。この反復は、単純化及び明確化を目的としており、それ自体は、論じられる様々な実施形態及び/又は構成間の関係を決定付けるものではない。次に、本開示の特徴及び機能を実装するために使用され得る例示的な実施形態を、添付の図をより具体的に参照して説明する。
【0011】
図1を参照すると、従来のコンピュータ断層撮影(CT)スキャンシステム100は、X線源102によって発生されて関心オブジェクト104を通過したX線101を採用する。X線は、コリメータ及びシンチレータ106によって、フォトダイオードアレイ110として実装された検出器によって捕捉される光108に変換される。フォトダイオードアレイ110は、光108をアナログ電気信号112に変換し、アナログ電気信号112は、アナログ-デジタル(A/D)変換器116を使用してデジタル信号114に変換される。A/D変換器から出力されるデジタル信号は、CTスキャンと称されるグレースケールの画像を生成するために使用される。
【0012】
PCCT画像化は、上記の既存のCT画像化技術よりも大きな利点及び改善を提示し得る。PCCTシステムは、フォトンカウンティング検出器(PCD)を採用しており、PCDは、個々のフォトンの相互作用をPCDに登録する検出器ピクセルのアレイを実装するための半導体層を備える。各相互作用の蓄積エネルギーを追跡することによって、PCDの検出器ピクセルは、PCCTがスペクトル又はエネルギー分解CT技術であるように、フォトンの強度だけでなく、およそのエネルギースペクトルも記録する。対照的に、従来のCTスキャナは、1つ以上のフォトンからの総エネルギーと、一定期間中にピクセルに蓄積された電子ノイズとが登録されたエネルギー積分検出器(EID)を使用する。したがって、EIDは、モノクロ写真に類似して、フォトン強度のみを登録する。対照的に、PCDは、カラー写真に類似して、フォトン強度及びスペクトル情報の両方を登録する。
【0013】
PCCT画像化は、上述の3ステップのプロセスを、PCDを備える半導体層を介してX線から電荷へのより合理化された直接変換に変える。具体的には、PCDを効率的に実装するために使用される半導体材料は、各X線フォトンを、X線のエネルギーに比例する電荷のバーストに変える。この技術の利益は、信号対ノイズの改善、同じX線量で達成され得るより高い分解能に起因した、患者へのX線量の低減、空間分解能の向上、並びにいくつかの「エネルギービン」の使用を通じて複数の造影剤及び複数の種類の物質/組織を区別する能力を含む。
【0014】
フォトンがPCD内で相互作用するとき、得られる電気パルスの高さは、フォトンのエネルギーにほぼ比例する。ピクセル内で生成された各パルスを好適な低エネルギー閾値と比較することによって、(フォトン相互作用及び電子ノイズの両方から生じる)低エネルギー事象からの寄与をフィルタリングすることができる。結果として、PCDは、EIDと比較して高い信号対ノイズ比及びコントラスト対ノイズ比を有し、同じX線曝露レベルでの画像品質の向上、又は同じ画像品質での患者X線量の減少を可能にする。
【0015】
低エネルギー閾値を超えるより多くのエネルギー閾値を導入することにより、PCDをいくつかの別個のエネルギービンに分けることが可能になる。各ピクセルが入射X線スペクトルのヒストグラムを測定するように、各登録されたフォトンは、そのエネルギーに応じて特定のビンに割り当てられる。このスペクトル情報は、慣習的なCTスキャンで得られる推定平均線形減衰係数とは対照的に、再構成されたCT画像内の各ピクセルの物質組成の定性的判定を可能にする。加えて、3つ以上のエネルギービンを使用することにより、造影剤として一般的に使用されるより重い元素に対する、密度の高い骨及び石灰沈着部の弁別が可能になり、造影剤注入前の参照スキャンの必要性が低下し、それにより、患者が受けるX線量が更に低下する。
【0016】
図2は、単一のピクセルによって
図2に表された、複数の検出器ピクセルを含むPCDを備えるPCCTシステム200の例示的な信号処理アーキテクチャの概略図を示す。動作中、センサ202から電流のパルスが入り、電荷感応増幅器(CSA)204によって増幅され、パルスシェーパ(PS)206によって成形される。PS206から出力される電圧パルスは、それぞれパルスをN個の増大電圧閾値と比較する、N個の弁別器(又はコンパレータ)208のセットに入力される。弁別器208のセットは、「温度計コード」内にパルス状デジタル出力を作成する。パルスは、カウンタ210によって各レベル又は閾値でカウントされ得、得られたカウント値(リザルトレジスタ212に一時的に格納され得る)は、N個の閾値の各々で生じたX線ヒットの数を表す。閾値は、異なるエネルギーフォトンに対応する異なる電圧に一致するように設定されていることを認識されるであろう。本明細書に記載の実施形態の特徴によれば、N個の閾値の各々に対応する定量カウンタに加えて、カウンタ210は、以下により詳細に説明する目的のための定性カウンタを含む。
【0017】
図3は、
図2に示すPCCTシステムのシミュレーション例の結果を示すグラフであり、重複する電荷事象はない。第1の波形300は、センサ202からの刺激電流を表し、第2の波形302は、ミリボルト(mV)で表示された、PS206からの対応するシェーパ電圧対増大電圧弁別器閾値電圧(vth[0]~vth[4])を表す。波形304は、カウンタ210によって各レベルでカウントされた対応するパルスを表す。最後に、波形306は、カウンタ210に入力された弁別器208の出力を表す。
図3から、電流の各パルスについて、パルスシェーパからの電圧パルスが弁別器208上で出力を発生させることが分かるであろう。各パルスについてのピーク弁別器出力のカウンタ210によるカウンティングは、所望の応答である。
【0018】
全てのパルスが時間的に十分に離れて生じるとき、パルスをカウントして「ビニング」するためのカウンタを効果的に実装する方法が複数ある。これには、非同期エッジ(asynch_edge)カウンティング及びピークゼロ(peak_zero)カウンティングの2つの一般的な技術が含まれる。非同期エッジカウンティングの使用により、非同期カウンタが各弁別器出力に関連付けられる。結果として、カウンタは、関連付けられた弁別器の閾値レベルを超える任意のエネルギーレベルに対してインクリメントする。「ビニングされた」値が必要な場合、各カウンタについて、より高い閾値レベルカウンタのカウントをカウントから減算して、閾値レベルに対して正しいカウントを判定する必要がある。例えば、弁別器0に関連付けられたカウンタはまた、弁別器1-Nカウント毎にインクリメントされ、したがって、正確なレベル0カウントを得るために、弁別器1-Nに対するカウントを弁別器0に対するカウントから減算する必要がある。同様に、弁別器1に関連付けられたカウンタもまた、弁別器2-Nカウント毎にインクリメントされ、したがって、正確なレベル1カウントを得るために、弁別器2-Nに対するカウントを弁別器1に対するカウントから減算する必要がある。
【0019】
ピークゼロカウンティングを使用することにより、弁別器0から出力された信号のエッジを使用して、どのカウンタをインクリメントするかを決定する。弁別器0の立ち上がりと立ち下がりとの間に生じる最大の弁別器カウントのみをインクリメントする方法が基本である。
【0020】
非同期エッジカウンティング及びピークゼロカウンティングの両方は、カウントされる事象がいかなる重複もせずに間隔を空けている場合に、かなりうまく働く。他の電荷事象がない場合、弁別器0の立ち上がり及び立ち下がりで始まりかつ終わる秩序ある順序が常に存在することとなる。最大スイッチングの弁別器を下回る全てのレベルの立ち上がりエッジもまた存在することとなる。
【0021】
実際には、電荷事象は、互いに区別されるには時間的に近すぎるように生じることがあり、これは、複数の電荷事象が誤ったエネルギーを有する単一の電荷事象としてカウントされる結果をもたらし得る。この現象は、典型的には「パイルアップ」と称され、その一例が
図4Aに示されている。
図4Aを参照すると、グラフ400は、参照番号402a及び402bによって指定された、パイルアップの2つの事例を示している。具体的には、事例402aは、2つの重複する電荷事象404a及び404bのパイルアップに対応する。事例402bは、3つの重複する電荷事象406a~406cのパイルアップに対応する。
【0022】
加えて、電荷事象は、隣接するピクセル間の境界上で生じ得、その結果、電荷エネルギーがピクセル間で(又はピクセルの中で)分割される。この現象は、典型的には「電荷共有」と称され、その一例が
図4Bに示されている。
図4Bを参照すると、ピクセル414、416の間の境界412上で電荷事象410が生じており、その結果、それらのピクセル間の電荷共有がもたらされる。対照的に、電荷事象418は、ピクセル420の境界内で完全に生じている。
【0023】
パイルアップ及び電荷共有の両方は、フォトンエネルギーを測定するときに誤差を引き起こす可能性がある。測定フレームにわたって、いくつかの事象はパイルアップ及び/又は電荷共有に悩まされ得るが、他の事象はそうではない場合がある。
【0024】
様々な電荷事象カウンティング技術が提案され、実装されてきた。例えば、本明細書で「ティックダウン(tickdown)」カウンタと称される技術は、非同期状態機械を採用して、「ダウンティック」事象をカウントし、合計事象カウントと一致する可能性を最大化する。採用されている別の方法は、ToT技術と称され、単一の事象について予想されるよりも長い期間スペクトル閾値を超えた場合、その閾値での事象が直ちにカウントされ、タイマーがリセットされる。ToT技術は、特に高フラックスでのカウンティング性能の向上をもたらす。電荷共有の効果を低減する方法は、電荷共有の効果に対する個々の事象を修正しようとする「同時カウンタ」法と称され得る。
【0025】
QPSシステムを実装するための本明細書に記載の実施形態の特徴によれば、パイルアップ及び/又は電荷共有のインシデントが検出できる場合、対応する電荷事象は、合計カウントの正確な記録を維持することを目的とする定性カウンタによって集計することができる。パイルアップ及び/又は電荷共有に測定可能なほど悩まされない事象のみが、エネルギー感応定量検出器によってビニングされる。測定フレーム中に統計的に有意な数の定性事象を測定することができる限り、全体的なエネルギースペクトルは、電荷共有及びパイルアップの結果から生じる系統的な誤差なしに推定することができる。特定の実施形態では、QPS技術は、性能を向上させるためにToT技術と組み合わされる。同時カウンタ法とは異なり、本明細書に記載されているQPS法では、電荷共有が検出され、対応する事象は、エネルギースペクトルを推定する目的のために無視される。
【0026】
図5Aは、QPSシステムの一実施形態の例示的な動作を示すフローチャートである。
図5Aに示すように、ピクセルで検出された事象(ステップ500)が量子化され(ステップ502)、次いでステップ504において、量子化された事象が、検出された事象がパイルアップの影響を受けないことを示す単調な上昇下降の特性を示すかどうかを判定する。具体的には、この条件は、量子化された事象がベースラインレベルから始まる一連の低から高の遷移、及びそれに続くベースラインレベルで終了する一連の高から低の遷移のみで構成されている場合かつその場合に限り満たされる。そうでない(検出された電荷事象がパイルアップによって影響を受けることを示す)場合、ステップ506において、事象は定性カウンタによってカウントされ、そうではない場合、ステップ510において、ToTパラメータを超えたかどうかを判定する。ToTパラメータを超えた場合、事象は、ステップ506において定性カウンタによってカウントされ(又は、ToTパラメータを超えた時間の長さに応じて、事象がカウントされ)、そうではない場合、ステップ512において、重複する事象がいずれかの隣接するピクセル514によって検出されたかどうかを判定し、これは、電荷共有状況を示す。重複する事象が1つ以上の隣接するピクセル516によって検出されたと判定された場合、事象は、ステップ506において定性カウンタによってカウントされ、そうではない場合、事象は、ステップ516において定量カウンタによってビニングされる。
【0027】
図5Bは、本明細書に記載の実施形態によるQPSシステムの例示的な動作を示す状態機械である。
図5Bの状態機械の状態変数は、以下のように定義される。
disc_nz:弁別器出力は非ゼロである(別称、disc_out[0])
neighbor_nz:少なくとも1つの隣接(N、S、E、W)弁別器出力が、非ゼロ又は全ての隣接するもののdisc_nzである
disc_dir:弁別器出力の最後の方向
0→最後の弁別器出力がより高かった
1→最後の弁別器出力がより低かった
t_over_t:閾値超過時間インジケータ
0→デフォルト
1→閾値超過時間タイマーが満了した
【0028】
図5Bの状態機械の出力は、以下のように定義される。
+QUAL_CT:インクリメント定性パルスカウンタ
+QUANT_CT[N]:ビンNのインクリメント定量パルスカウンタ
【0029】
カウンタがインクリメントされた後、t_over_tはゼロにリセットされる。上記で定義されたよりも多くの内部状態変数が、状態履歴を追跡するために必要とされる場合があることに留意されたい。
【0030】
図6Aは、QPSカウンティング方法を実装するための、本明細書に記載の実施形態の特徴による、POIで検出された事象600のカウンティングを示す。
図6Aに示すように、事象600は、パイルアップの影響を受けない(すなわち、POI弁別器出力波形は単調な上昇下降であり、ToTを超えない)か、又は電荷共有の影響を受けず(直交する隣接弁別器出力に対応する波形上の活動なし)、したがって、事象600は、ビン2に対応する定量カウンタによってカウントされる(波形602によって表されている)。
【0031】
図6Bは、QPSカウンティング方法を実装するための、本明細書に記載の実施形態の特徴による、POIで検出された事象610のカウンティングを示す。
図6Bに示されるように、事象610は、パイルアップの影響を受けない(すなわち、POI弁別器出力波形は単調な上昇下降であり、ToTを超えない)が、事象610は、直交する隣接弁別器出力(すなわち、波形612)に対応する波形のうちの少なくとも1つ上の活動によって示されるように、又は電荷共有の影響を受ける。結果として、事象610は、定性カウンタによってカウントされる(波形614によって表されている)。
【0032】
図6Cは、QPSカウンティング方法を実装するための、本明細書に記載の実施形態の特徴による、POIで検出された事象620のカウンティングを示す。
図6Cに示すように、事象620は、電荷共有による影響を受けない(直交する隣接弁別器出力に対応する波形上の活動なし)が、事象620は、ビン4のToTが2倍を超えていること(波形622)によって示されるように、パイルアップによる影響を受ける。結果として、事象620は、定量カウンタによって2倍カウントされる(波形624によって表されている)。
【0033】
図7A~
図7Dは、グラウンドトゥルースと比較した、ティックダウン(
図7A)、QPS(
図7B)、ToTを伴うティックダウン(
図7C)、及びToTを伴うQPS(
図7D)を含む、様々なPCCTカウント方法の定量カウンティング曲線及び定性カウンティング曲線を示す。なお、ToT法を伴うQPSは、推定合計カウントと実際の合計カウントとの相関関係、及びビン毎の推定のカウントの割合と実際のカウントの割合との相関関係を著しく改善することに留意されたい。
【0034】
図8は、比較の目的のために、ToTを伴う及び伴わないQPSの合計カウンティング曲線を示す。フラックス率が増加するにつれて、定量カウントの数は単調に増加し、一方、定性カウントの数は減少する。フラックス範囲の上限における測定値には、スペクトル情報がほとんど又は全く含まれていない。これは、合計カウントに対する定性カウントの低い割合を、信号が有用なスペクトル情報を含まないことを示すために使用することができるため、QPS法の有用な特徴である。いくつかの実施形態では、不正確なスペクトル推定を提供するよりも、そのようなインジケータに基づいて測定されたスペクトルを無視することが有益であり得る。
【0035】
電荷共有は、電荷の大部分を共有する隣接するピクセルからより低いビン内のPOI内に入る高エネルギーフォトンに主に起因して、スペクトルシフトを引き起こす。本明細書に記載されるQPS技術は、これらの事象のうちのいくつかを識別することができ、その結果、低フラックススペクトルの確度の改善をもたらす。特定の結果は、弁別器閾値の選択に依存することとなる。QPSは、高いビン(例えば、ビン4)カウントが他の(より低い)ビンを犠牲にして増大する、パイルアップによるスペクトルシフトを大きく防止する。1秒当たり約10メガカウント(Mcps)を超えると、定量カウントの数が非常に少ないため、情報を無視することができる。その結果、QPS技術を採用するシステムは、測定フレームのほぼ全ての電荷事象が電荷共有又はパイルアップのいずれかの影響を受ける条件を検出することができるため、フレームのスペクトル情報は大きく破壊されており、事実上役に立たない。他のシステムでは、破壊したスペクトル情報を使用して、不正確な結果を信頼できるものとして誤って提示することがある。
【0036】
CTスキャンの最終的な目標は、異なる物質を識別することができる、対象者の3D画像を生成することである。よって、PCCTカウンティング方法をベンチマークする1つの方法は、それを使用して物質識別タスクを実行することである。例えば、単一のピクセルからのカウンティングデータを使用して、模擬線形X線フォトン軌道に沿って存在する異なる物質の割合を推定することができる。
【0037】
図9A及び
図9Bは、そのような物質識別実験の結果を示しており、この実験では、模擬データは、10cmの水(ヒト組織と同様のX線吸収)及び1cmの骨を通過するX線ビームに対応する。水及び骨は、異なるX線吸収特性を有するため、受け取ったフォトンカウントを使用して、模擬軌道に沿った水及び骨の割合を推定することができる。
【0038】
図9Aは、模擬データセット内の骨の厚さの一連の推定を表す。
図9Aでは、「GT(解析)」とラベル付けされた第1の列は、模擬データを生成するために使用された骨の実際の厚さを示す。他の列は、3つの異なる仮説フォトンカウンタを使用した一連のモンテカルロシミュレーションに基づく、この骨の厚さの推定を表す。「GT(模擬)」とラベル付けされた第2の列は、パイルアップ及び電荷共有によって破壊されない各フォトン事象から正しいエネルギーを得る、理想的なフォトンカウンタに基づく推定を表す。この推定の誤差は、有限時間フレーム内に検出器に到達するフォトンの限られたサンプルサイズによって引き起こされる。「ティックダウン(Tick down)」とラベル付けされた第3の列は、「ティックダウン」法を用いた模擬フォトンカウンタに基づく推定を示している。「QPS」とラベル付けされた第4の列は、QPS法を用いた模擬フォトンカウンタに基づく推定を表す。
【0039】
図9Bは、模擬データセット内の水の厚さが推定されたときの同じ実験の結果を示す。
【0040】
図9A及び
図9Bの実験の結果は、QPS法が、ティックダウン法よりも良好な確度で物質識別タスクを実行することを示している。
【0041】
図10は、本明細書に記載の実施形態に従って、より具体的には、上記に記載の図に示すように、技術の少なくとも一部を実装するように構成され得る例示的なシステム1100を示すブロック図である。
図10に示すように、システム1100は、システムバス1106を介してメモリ素子1104に結合された、少なくとも1つのプロセッサ1102、例えばハードウェアプロセッサ1102を含み得る。よって、システムは、メモリ素子1104内にプログラムコード及び/又はデータを格納し得る。また、プロセッサ1102は、メモリ素子1104からシステムバス1106を介してアクセスされるプログラムコードを実行し得る。一態様において、システムは、プログラムコードを格納及び/又は実行するのに好適なコンピュータとして実装され得る。しかしながら、システム1100は、本開示で説明する機能を果たすことができるプロセッサ及びメモリを含む任意のシステムの形態で実装され得ることを理解すべきである。
【0042】
いくつかの実施形態では、プロセッサ1102は、本明細書で論じられるようなアクティビティ、具体的には、本明細書に記載の実施形態に関連するアクティビティを実行するように、ソフトウェア又はアルゴリズムを実行することができる。プロセッサ1102は、非限定的な例として、マイクロプロセッサ、DSP、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラマブルロジックアレイ(PLA)、集積回路(IC)、特定用途向けIC(ASIC)、又は仮想マシンプロセッサを含む、プログラマブルロジックを提供するハードウェア、ソフトウェア、又はファームウェアの任意の組み合わせを含み得る。プロセッサ1102は、プロセッサ1102がメモリ素子1104から読み取る、又はメモリ素子1104に書き込み得るように、例えばダイレクトメモリアクセス(DMA)構成でメモリ素子1104に通信可能に結合され得る。
【0043】
一般に、メモリ素子1104は、ダブルデータレート(DDR)ランダムアクセスメモリ(RAM)、シンクロナスRAM(SRAM)、ダイナミックRAM(DRAM)、フラッシュ、読み取り専用メモリ(ROM)、光媒体、仮想メモリ領域、磁気メモリ若しくはテープメモリ、又は任意の他の好適な技術を含む、任意の適切な揮発性又は不揮発性のメモリ技術を含み得る。別段の指定がない限り、本明細書で論じられるメモリ素子のいずれも、広義の用語「メモリ」内に包含されるものとして解釈されるべきである。システム1100の構成要素のいずれかとの間で測定、処理、追跡、又は送信が行われる情報は、その全てがいずれの好適な時間枠でも参照することができる、任意のデータベース、レジスタ、制御リスト、キャッシュ、又はストレージ構造において提供され得る。このようなストレージ選択肢のいずれも、本明細書で使用される際の広義の用語「メモリ」内に含まれ得る。同様に、本明細書に記載の潜在的な処理要素、モジュール、及び機械のいずれも、広義の用語「プロセッサ」内に包含されるものとして解釈されるべきである。本図に示される各要素はまた、それらが、例えば、これらの要素のうちの別の1つに類似又は同一のハードウェアを有するシステムと通信することができるように、ネットワーク環境で、データ又は情報を受信する、送信する、及び/又はその他の方法で通信するための好適なインターフェースも含み得る。
【0044】
特定の例示的な実装態様では、本明細書で概説する実施形態を実装するための機構は、非一時的媒体を含み得る1つ以上の有形媒体に符号化されたロジック、例えば、ASIC、DSP命令、プロセッサによって実行されるソフトウェア(潜在的にオブジェクトコード及びソースコードを含む)、又は他の同様の機械などに提供される埋め込みロジックによって実装され得る。これらの事例のうちのいくつかでは、例えば、
図10に示すメモリ素子1104などのメモリ素子は、本明細書に記載の動作に使用されるデータ又は情報を格納することができる。これには、本明細書に記載のアクティビティを遂行するように実行される、ソフトウェア、ロジック、コード、又はプロセッサ命令を格納することができるメモリ素子が含まれる。プロセッサは、本明細書で詳述する動作を達成するために、データ又は情報に関連付けられた任意の種類の命令を実行できる。一例では、例えば、
図10に示すプロセッサ1102などのプロセッサは、ある状態又は物から別の状態又は物に要素又は物品(例えば、データ)を変換し得る。別の例では、本明細書で概説するアクティビティは固定ロジック又はプログラマブルロジック(例えば、プロセッサによって実行されるソフトウェア/コンピュータ命令)を用いて実装され得、本明細書で識別される要素は、ある種のプログラマブルプロセッサ、プログラマブルデジタルロジック(例えば、FPGA、DSP、消去可能プログラマブル読み取り専用メモリ(EPROM)、電気的に消去可能なプログラマブル読み取り専用メモリ(EEPROM))、又はデジタルロジック、ソフトウェア、コード、電子命令、若しくはそれらの任意の好適な組み合わせを含むASICであり得る。
【0045】
メモリ素子1104は、例えば、ローカルメモリ1108などの1つ以上の物理メモリデバイス、及び1つ以上の大容量ストレージデバイス1110を含み得る。ローカルメモリは、プログラムコードの実際の実行中に一般的に使用されるRAM又は他の非永続的なメモリデバイスを指し得る。大容量ストレージデバイスは、ハードドライブ又は他の永続的なデータストレージデバイスとして実装され得る。処理システム1100はまた、実行中にプログラムコードを大容量ストレージデバイス1110から取り出さなければならない回数を減らすために、少なくともいくつかのプログラムコードの一時ストレージを提供する1つ以上のキャッシュメモリ(図示せず)も含み得る。
【0046】
図10に示すように、メモリ素子1104は、エネルギービン事象カウンティングモジュール1120を格納し得る。様々な実施形態において、モジュール1120は、ローカルメモリ1108に、1つ以上の大容量ストレージデバイス1110に、又はローカルメモリ及び大容量ストレージデバイスから離れて格納され得る。システム1100は、モジュール1120の実行を容易にすることができるオペレーティングシステム(
図10には示されていない)を更に実行し得ることを理解されたい。実行可能なプログラムコード及び/又はデータの形態で実装されるモジュール1120は、例えばプロセッサ1102によって、システム1100から読み取り、システム1100に書き込み、かつ/又はシステム1100によって実行することができる。モジュール1120からの読み取り、モジュール1120への書き込み、及び/又はモジュール1120の実行に応答して、システム1100は、本明細書に記載の1つ以上の動作又は方法ステップを実行するように構成され得る。
【0047】
入力デバイス1112及び出力デバイス1114として描写された入力/出力(I/O)デバイスが、任意選択的に、システムに結合され得る。入力デバイスの例として、キーボード、又はマウスなどのポインティングデバイスなどが含まれ得るが、これらに限定されない。出力デバイスの例として、モニタ若しくはディスプレイ、又はスピーカなどが含まれ得るが、これらに限定されない。いくつかの実装態様では、システムは、出力デバイス1114のためのデバイスドライバ(図示せず)を含み得る。入力及び/又は出力デバイス1112、1114は、直接か又は介在するI/Oコントローラを介してのいずれかで、システム1100に結合され得る。加えて、センサ1115は、直接又は介在するコントローラ及び/若しくはドライバを介してのいずれかで、システム1100に結合され得る。
【0048】
一実施形態において、入力デバイス及び出力デバイスは、組み合わせられた入力/出力デバイス(入力デバイス1112及び出力デバイス1114を取り囲む破線で
図10に示されている)として実装され得る。このような複合デバイスの一例は、「タッチスクリーンディスプレイ」又は単に「タッチスクリーン」とも称されることもあるタッチ感応ディスプレイである。このような一実施形態では、デバイスへの入力は、タッチスクリーンディスプレイ上又はタッチスクリーンディスプレイの近くの、例えば、スタイラス又はユーザの指などの物理的なオブジェクトの動きによって提供されてもよい。
【0049】
任意選択的に、ネットワークアダプタ1116もまた、システム1100に結合されて、システム1100が介在するプライベートネットワーク又はパブリックネットワークを介して他のシステム、コンピュータシステム、遠隔ネットワークデバイス、及び/又は遠隔ストレージデバイスに結合できるようにし得る。ネットワークアダプタは、該システム、デバイス、及び/又はネットワークによってシステム1100に送信されるデータを受信するためのデータ受信機と、システム1100から該システム、デバイス、及び/又はネットワークにデータを送信するためのデータ送信機と、を備え得る。モデム、ケーブルモデム、及びイーサネットカードは、システム1100で使用され得る様々な種類のネットワークアダプタの例である。
【0050】
例1は、複数の弁別器を含むフォトンカウンティングコンピュータ断層撮影(PCCT)スキャンシステム内のピクセルによって検出された電荷事象をカウンティングするための方法であって、各弁別器が、複数の閾値電圧レベルのそれぞれの1つに関連付けられており、方法が、弁別器のうちの1つから出力された信号を検出することと、検出された弁別器出力信号が第1の条件を満たす場合、弁別器のうちの1つに関連付けられた閾値電圧レベルに対応する定量カウントをインクリメントすることと、検出された弁別器出力信号が少なくとも1つの第2の条件を満たす場合、定性カウントをインクリメントすることと、を含む、方法を提供する。
【0051】
例2は、少なくとも1つの第2の条件が、閾値超過時間(ToT)タイマーの満了を含む、例1の方法を提供する。
【0052】
例3は、ToTタイマーの満了時に、定性カウントをインクリメントすることと、ToTタイマーをリセットすることと、を更に含む、例2の方法を提供する。
【0053】
例4は、少なくとも1つの第2の条件が、弁別器のうちの1つから出力された信号が隣接するピクセルに関連付けられた弁別器から出力された信号と重複することを含む、例1の方法を提供する。
【0054】
例5は、少なくとも1つの第2の条件が、弁別器のうちの1つから出力された信号が1つの単調な連続の低から高への遷移のみ及び1つの単調な連続の高から低への遷移のみを含むことを含む、例1の方法を提供する。
【0055】
例6は、第1の条件が、少なくとも1つの第2の条件の不在を含む、例1に記載の方法を提供する。
【0056】
例7は、複数の弁別器が、5つの弁別器を含む、例1の方法を提供する。
【0057】
例8は、複数の閾値電圧レベルが、5つの閾値電圧レベルを含む、例1の方法を提供する。
【0058】
例9は、弁別器の各々が、弁別器に入力された電圧信号を弁別器に関連付けられた閾値電圧レベルと比較する、例1の方法を提供する。
【0059】
例10は、弁別器に入力された電圧信号が弁別器に関連付けられた閾値電圧レベルを超えるとき、弁別器の各々の出力が高く駆動される、例9の方法を提供する。
【0060】
例11は、定性カウントの合計数が特定の閾値に達しない場合、スペクトル情報が無視される、例1の方法を提供する。
【0061】
例12は、複数の弁別器を備えるフォトンカウンティングコンピュータ断層撮影(PCCT)スキャンシステム内のピクセルによって検出された電荷事象をカウンティングするための方法であって、各弁別器が、複数の閾値電圧レベルのそれぞれの1つに関連付けられており、方法が、弁別器のうちの1つから出力された信号を検出することと、閾値超過時間(ToT)タイマーが満了すること、弁別器のうちの1つから出力された信号が、隣接するピクセルに関連付けられた弁別器から出力された信号と重複すること、並びに弁別器のうちの1つから出力された信号が、1つの単調な低から高の遷移及び単調な高から低の遷移のみを含むことのうちの少なくとも1つが生じたときに、定性カウントをインクリメントすることと、又はそうでなければ、弁別器のうちの1つに関連付けられた閾値電圧レベルに対応する定量カウントをインクリメントすることと、を含む、方法を提供する。
【0062】
例13は、ToTタイマーの満了時に、定性カウントをインクリメントすることと、ToTタイマーをリセットすることと、を更に含む、例12の方法を提供する。
【0063】
例14は、フォトンカウンティングコンピュータ断層撮影(PCCT)スキャンシステムであって、複数の弁別器であって、各弁別器が、複数の閾値電圧レベルのそれぞれ1つに関連付けられている、複数の弁別器と、カウンティング回路であって、弁別器のうちの1つから出力された信号を検出すること、検出された弁別器出力信号が第1の条件を満たす場合、弁別器のうちの1つに関連付けられた閾値電圧レベルに対応する定量カウントをインクリメントすること、及び検出された弁別器出力信号が少なくとも1つの第2の条件を満たす場合、定性カウントをインクリメントすることを行うように構成されたカウンティング回路と、を備える、フォトンカウンティングコンピュータ断層撮影(PCCT)スキャンシステムを提供する。
【0064】
例15は、少なくとも1つの第2の条件が、閾値超過時間(ToT)タイマーの満了を含む、例14のPCCTスキャンシステムを提供する。
【0065】
例16は、ToTタイマーの満了時に、定性カウントをインクリメントすることと、ToTタイマーをリセットすることと、を更に含む、例15のPCCTシステムを提供する。
【0066】
例17は、少なくとも1つの第2の条件が、弁別器のうちの1つから出力された信号が隣接するピクセルと関連付けられた弁別器から出力された信号と重複することを含む、例14のPCCTシステムを提供する。
【0067】
例18は、少なくとも1つの第2の条件が、弁別器のうちの1つから出力された信号が1つの単調な連続の低から高への遷移及び1つの単調な連続の高から低への遷移のみを含むことを含む、例14のPCCTシステムを提供する。
【0068】
例19は、第1の条件が、少なくとも1つの第2の条件の不在を含む、例14のPCCTシステムを提供する。
【0069】
例20は、複数の弁別器が、5つの弁別器を含む、例14のPCCTシステムを提供する。
【0070】
例21は、複数の閾値電圧レベルが、5つの閾値電圧レベルを含む、例14のPCCTシステムを提供する。
【0071】
例22は、弁別器の各々が、弁別器に入力された電圧信号を弁別器に関連付けられた閾値電圧レベルと比較する、例14のPCCTシステムを提供する。
【0072】
例23は、弁別器に入力された電圧信号が弁別器に関連付けられた閾値電圧レベルを超えるときに、弁別器の各々の出力が高く駆動される、例14のPCCTシステムを提供する。
【0073】
本明細書で概説する仕様、寸法、及び関係(例えば、要素の数、動作、ステップなど)の全ては、例及び教示のみを目的としてのみ提示されていることに留意されたい。このような情報は、本開示の趣旨、又は添付の特許請求の範囲の範囲から逸脱することなく、大幅に変更されることがある。仕様は、1つの非限定的な例にのみ適用され、したがって、それらはそのように解釈されるべきである。前述の説明では、例示的な実施形態は、特定の構成要素の配置に関して説明されている。添付の特許請求の範囲の範囲から逸脱しない限り、このような実施形態に対して様々な修正及び変更を加えてもよい。したがって、説明及び図面は、制限的な意味ではなく、例示的な意味で捉えられるべきである。
【0074】
本明細書で提供される多数の例では、相互作用は、2つ、3つ、4つ、又はそれ以上の電気的構成要素に関して説明され得ることに留意されたい。しかしながら、これは明確化及び例のみを目的として行われている。システムは、任意の好適な様式で統合され得ることを理解されたい。同様の設計の代替手段に従って、図面の図示された構成要素、モジュール、及び要素のいずれかが様々の可能な構成に組み合わせられてもよく、それらの全ては明らかに本明細書の広範な範囲内にある。場合によっては、限られた数の電気要素のみを参照することで、所与のフローのセットの1つ以上の機能を簡単に説明し得る。図の電気回路及びその教示は容易に拡張可能であり、多くの構成要素、並びにより複雑/洗練された配置及び構成に適合し得ることを理解されたい。したがって、提供される例は、無数の他のアーキテクチャに潜在的に適用されるため、電気回路の広範な教示を制限又は阻害すべきではない。
【0075】
また、本明細書では、「一実施形態(one embodiment)」、「例示的な実施形態」、「一実施形態(an embodiment)」、「別の実施形態」、「いくつかの実施形態」、「様々な実施形態」、「他の実施形態」、及び「代替的な実施形態」などに含まれる様々な特徴(例えば、要素、構造、モジュール、構成要素、ステップ、動作、特性など)への言及は、任意のそのような特徴が本開示の1つ以上の実施形態に含まれるが、同じ実施形態に組み合わせられてもよい、又は必ずしも組み合わせられなくてもよいことを意味することが意図されることにも留意されたい。
【0076】
また、回路アーキテクチャに関連する機能は、図に示されるシステムによって、又はシステム内で実行され得る、可能な回路アーキテクチャ機能のうちの一部のみを示していることにも留意されたい。これらの動作のうちのいくつかは、適宜削除若しくは除去されてもよいし、又は、本開示の範囲から逸脱することなく、これらの動作が大幅に修正又は変更されてもよい。加えて、これらの動作のタイミングは大幅に改変されてもよい。前述の動作フローは、例及び論述を目的として提示されている。本開示の教示から逸脱しない限り、任意の好適な配置、時系列、構成、及びタイミング機構が提供され得るという点で、本明細書に記載の実施形態によって、十分な柔軟性が実現される。
【0077】
当業者には、多数の他の変更、置換、変形、改変、及び修正が確認されてもよく、本開示は、添付の特許請求の範囲の範囲内に収まるような全てのそのような変更、置換、変形、改変、及び修正を包含することが意図される。
【0078】
上記のデバイス及びシステムの全ての任意選択的な特徴もまた、本明細書に記載の方法又はプロセスに対して実装されてもよく、例における詳細は1つ以上の実施形態のどこで用いられてもよいことに留意されたい。
【0079】
これらの事例(上記)の「するための手段」には、任意の好適なソフトウェア、回路、ハブ、コンピュータコード、ロジック、アルゴリズム、ハードウェア、コントローラ、インターフェース、リンク、バス、通信経路などとともに、本明細書で論じられる任意の好適な構成要素を使用することが含まれ得る(ただし、これに限定されない)。
【0080】
上記で提供された例、及び本明細書で提供される多数の他の例では、相互作用は、2つ、3つ、又は4つのネットワーク要素の観点から説明され得ることに留意されたい。しかしながら、これは明確化及び例のみを目的として行われている。場合によっては、限られた数のネットワーク要素のみを参照することによって、所与のフローのセットの1つ以上の機能を説明することがより容易であり得る。添付の図面(及びその教示)を参照して図示及び説明されるトポロジは、容易に拡張可能であり、多くの構成要素、並びにより複雑/洗練された配置及び構成に適合し得ることを理解されたい。したがって、提供される例は、無数の他のアーキテクチャに潜在的に適用されるため、示されるトポロジの広範な教示を制限又は阻害すべきではない。
【0081】
また、前述のフロー図内のステップは、図に示される通信システムによって、又は通信システム内で実行され得る、可能なシグナリングシナリオ及びパターンのうちの一部のみを示していることに注意することが重要である。これらのステップのうちのいくつかは、適宜削除若しくは除去されてもよいし、又は本開示の範囲から逸脱しない限り、これらのステップは大幅に修正若しくは変更されてもよい。加えて、いくつかのこれらの動作は、1つ以上の追加動作と同時に、又は1つ以上の追加動作と並行して実行されるものとして説明されている。しかしながら、これらの動作のタイミングは大幅に改変されてもよい。前述の動作フローは、例及び論述を目的として提示されている。本開示の教示から逸脱しない限り、任意の好適な配置、時系列、構成、及びタイミング機構が提供され得るという点で、図に示す通信システムによって、十分な柔軟性が実現される。
【0082】
本開示は、特定の配置及び構成を参照して詳細に説明されているが、これらの例示的な構成及び配置は、本開示の範囲から逸脱することなく、大幅に変更されてもよい。例えば、本開示は、特定の通信交換を参照して説明されてきたが、本明細書に記載される実施形態は、他のアーキテクチャに適用可能であり得る。
【0083】
当業者には、多数の他の変更、置換、変形、改変、及び修正が確認されてもよく、本開示は、添付の特許請求の範囲の範囲内に収まるような全てのそのような変更、置換、変形、改変、及び修正を包含することが意図される。米国特許商標庁(USPTO)、及び更に、本出願に関して発行されたあらゆる特許のあらゆる読者が、本明細書に添付された特許請求の範囲を解釈することを支援するために、出願人は、出願人が、(a)いかなる添付の特許請求の範囲も、本願の出願日に存在するように、用語「するための手段」又は「するためのステップ」が特定の特許請求の範囲において具体的に使用されていない限り、35U.S.C.第142条第6項を行使することを意図しないこと、及び(b)本明細書のいかなる記述によっても、添付の特許請求の範囲に特段に反映されないいかなる方法でも本開示を制限することを意図しないことに留意することを所望する。
【外国語明細書】