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  • -車両用ホイールの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023105831
(43)【公開日】2023-08-01
(54)【発明の名称】車両用ホイールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60B 3/04 20060101AFI20230725BHJP
   B60B 3/02 20060101ALI20230725BHJP
   B60B 3/00 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
B60B3/04 B
B60B3/02
B60B3/04 A
B60B3/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022006798
(22)【出願日】2022-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】391006430
【氏名又は名称】中央精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115233
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 俊一
(72)【発明者】
【氏名】榛葉 基彦
(57)【要約】
【課題】意匠面に凹凸状の切削面を設けて意匠性を高めると共に、意匠性の低下を抑制しつつ寸法を測定する際の基準面を確保できる車両用ホイールの製造方法を提供すること。
【解決手段】この製造方法は、車両用ホイール1の意匠面30に、目標輪郭形状60に従い且つ径方向に隣接する切削痕同士が径方向に繋がる送り速度で旋盤加工を施すことで、目標輪郭形状60に倣った輪郭形状を有する切削面50を意匠面30に形成する工程を含む。目標輪郭形状60は、意匠面30の径方向一側端から延びる円弧状の第1面取り部61と、第1面取り部61の径方向他側に繋がり且つ直線状の第1平坦部62と、第1平坦部62の径方向他側に繋がり且つ凹部cと凸部dとが交互に繰り返す凹凸状の凹凸部63と、を含む。第1平坦部62の径方向の幅B1は、旋盤加工の1回転あたりの送り量の2倍以上、且つ、径方向に隣接する凹部c同士又は凸部d同士の間隔P1,P2以下である。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用ホイールの意匠面に、径方向の位置に対する軸方向の目標位置の推移を規定する目標輪郭形状に従い且つ径方向に隣接する切削痕同士が径方向に繋がる送り速度で旋盤加工を施すことで、前記目標輪郭形状に倣った輪郭形状を有する切削面を前記意匠面に形成する工程を含む、車両用ホイールの製造方法において、
前記目標輪郭形状は、
前記意匠面の径方向一側端から延びる円弧状の第1面取り部と、前記第1面取り部の径方向他側に繋がり且つ直線状の第1平坦部と、前記第1平坦部の径方向他側に繋がり且つ凹部と凸部とが交互に繰り返す凹凸状の凹凸部と、を含み、
前記第1平坦部の径方向の幅は、前記旋盤加工における1回転あたりの送り量の2倍以上、且つ、径方向に隣接する前記凹部同士又は前記凸部同士の間隔以下である、
車両用ホイールの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用ホイールの製造方法において、
前記目標輪郭形状は、
前記凹凸部の径方向他側に繋がり且つ直線状の第2平坦部と、前記第2平坦部の径方向他側に繋がり且つ前記意匠面の径方向他側端まで延びる円弧状の第2面取り部と、を更に含み、
前記第2平坦部の径方向の幅は、前記旋盤加工における1回転あたりの送り量の2倍以上、且つ、径方向に隣接する前記凹部同士又は前記凸部同士の間隔以下である、
車両用ホイールの製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用ホイールの製造方法において、
前記第1平坦部の径方向の幅は、前記第1平坦部に繋がり且つ径方向に隣接する前記凹部同士又は前記凸部同士の間隔以下であり、及び/又は、前記第2平坦部の径方向の幅は、前記第2平坦部に繋がり且つ径方向に隣接する前記凹部同士又は前記凸部同士の間隔以下である、
車両用ホイールの製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の車両用ホイールの製造方法において、
前記凹凸部を構成する前記凹部及び前記凸部の各々の形状は、円弧状である、
車両用ホイールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ホイールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両用ホイールにおいて、型成形後に軸方向の表側の面(以下、「意匠面」という)に機械加工を施すことで、意匠面の意匠性の向上を図る技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。この文献の記載の車両用ホイールでは、意匠面に旋盤加工が施されている。この旋盤加工は、径方向の位置に対する軸方向の目標位置の推移を規定する目標輪郭形状に従い、且つ、径方向に隣接する切削痕同士が径方向に繋がる送り速度で、実行される。この結果、目標輪郭形状に倣った輪郭形状を有する切削面が、車両用ホイールの意匠面に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許出願公開3225335号
【発明の概要】
【0004】
上記文献に記載の車両用ホイールでは、旋盤加工に使用される目標輪郭形状が、意匠面の径方向外側端から径方向内側端までの径方向全域に亘って、凹部と凸部とが交互に繰り返す凹凸状の凹凸部で構成されている。この結果、意匠面の径方向全域に亘って、切削面が、凹部と凸部とが交互に繰り返す凹凸面で形成されており、これにより、意匠面の意匠性が高められている。
【0005】
一般に、車両用ホイールの製造後の検査等において、寸法測定が行われる。その際、車両用ホイールの意匠面の一部は、寸法測定の基準面として用いられる。寸法測定の基準面には、平坦面であることが要求される。上記文献に記載の車両用ホイールでは、凹凸面の形状が直線的な傾斜面で構成され、且つ、傾斜面の径方向の幅(凹凸の間隔)が5mmから20mmであるため、凹凸面にも寸法測定の基準面として必要な平坦面を確保し易いと考えられる。しかしながら、意匠面の意匠性に変化を与えるために、凹凸の形状を円弧状にしたり、凹凸の間隔を狭くしたりすると、寸法測定の基準面として必要な平坦面を凹凸面に確保することが困難になる。更に、意匠性を考慮して、意匠面の径方向外側端や径方向内側端まで凹凸面を設けようとすると、寸法測定の基準面として必要な平坦面を車両用ホイールの意匠面に確保することが困難になる。
【0006】
本発明は上記問題に対処するためになされたものであり、その目的は、意匠面に凹凸状の切削面を設けて意匠性を高めると共に、意匠性の低下を抑制しつつ寸法を測定する際の基準面を確保できる車両用ホイールの製造方法を提供することである。
【0007】
本発明に係る車両用ホイールの製造方法は、車両用ホイールの意匠面に、径方向の位置に対する軸方向の目標位置の推移を規定する目標輪郭形状に従い且つ径方向に隣接する切削痕同士が径方向に繋がる送り速度で旋盤加工を施すことで、前記目標輪郭形状に倣った輪郭形状を有する切削面を前記意匠面に形成する工程を含む。
【0008】
本発明に係る車両用ホイールの製造方法の特徴は、目標輪郭形状が、前記意匠面の径方向一側端から延びる円弧状の第1面取り部と、前記第1面取り部の径方向他側に繋がり且つ直線状の第1平坦部と、前記第1平坦部の径方向他側に繋がり且つ凹部と凸部とが交互に繰り返す凹凸状の凹凸部と、を含み、前記第1平坦部の径方向の幅は、前記旋盤加工における1回転あたりの送り量の2倍以上、且つ、径方向に隣接する前記凹部同士又は前記凸部同士の間隔以下である、ことにある。
【0009】
上記構成によれば、車両用ホイールの意匠面に形成される切削面は、目標輪郭形状の凹凸部に対応して形成される凹凸面を含む。この凹凸面により、意匠面の意匠性が高くなる。更に、車両用ホイールの意匠面に形成される切削面は、その径方向一側端の近傍において、目標輪郭形状の第1平坦部に対応して形成される第1平坦面を含む。第1平坦面の径方向の幅は、旋盤加工における1回転あたりの送り量(以下、単に「送り量」と呼ぶ)の2倍以上、且つ、凹凸面における径方向に隣接する凹部同士又は凸部同士の間隔以下となっている。なお、厳密には、第1平坦面及び凹凸面には、旋盤加工に使用される工具(バイト)の刃先形状に対応する形状を有する切削痕が送り量と同じ間隔で径方向に並んだ「切削痕による微小な凹凸形状」が、目標輪郭形状に重畳して形成されている。
【0010】
第1平坦面は、凹凸面と比べて、そもそも、寸法測定の基準面として必要な平坦面を確保し易い面形状であるといえる。特に、凹凸部を構成する凹部及び凸部の各々の形状が円弧状である場合、凹凸面では寸法測定の基準面として必要な平坦面を確保できない。加えて、第1平坦面は、送り量の2倍以上の径方向の幅を有しているので、第1平坦面には、周方向全域に亘って、「切削痕による微小な凹凸形状」における凸部が径方向に2つ以上存在している。この結果、第1平坦面は、寸法測定の基準面として必要な平坦面を確保している。また、第1平坦面の幅が、凹凸面における径方向に隣接する凹部同士又は凸部同士の間隔以下となっていることで、第1平坦面の幅が大き過ぎることに起因する意匠面の意匠性の低下が抑制される。以上より、上記構成によれば、意匠面に凹凸状の切削面を設けて意匠性を高めると共に、意匠性の低下を抑制しつつ寸法を測定する際の基準面を確保できる車両用ホイールを製造することが可能となる。
【0011】
上記本発明に係る車両用ホイールの製造方法では、前記目標輪郭形状が、前記凹凸部の径方向他側に繋がり且つ直線状の第2平坦部と、前記第2平坦部の径方向他側に繋がり且つ前記意匠面の径方向他側端まで延びる円弧状の第2面取り部と、を更に含み、前記第2平坦部の径方向の幅は、前記旋盤加工における1回転あたりの送り量の2倍以上、且つ、径方向に隣接する前記凹部同士又は前記凸部同士の間隔以下であることが好適である。
【0012】
これによれば、車両用ホイールの意匠面に形成される切削面は、その径方向他側端の近傍において、目標輪郭形状の第2平坦部に対応して形成される第2平坦面を含む。なお、厳密には、第2平坦面も、第1平坦面と同様、「切削痕による微小な凹凸形状」が、目標輪郭形状に重畳して形成されている。第2平坦面は、第1平坦面と同様、寸法測定の基準面として必要な平坦面を確保している。従って、切削面を基準に各部の寸法を測定する際の基準面を、径方向の両端部にそれぞれ確保し易くなるので、各部の寸法測定がより一層容易となる。
【0013】
ここにおいて、目標輪郭形状の凹凸部(従って、切削面の凹凸面)において、径方向に隣接する凹部同士又は凸部同士の間隔は、径方向の位置によらず一定であってもよいし、径方向の位置に応じて変化してもよい。径方向に隣接する凹部同士又は凸部同士の間隔が径方向の位置に応じて変化する場合、前記第1平坦部の径方向の幅は、前記第1平坦部に繋がり且つ径方向に隣接する前記凹部同士又は前記凸部同士の間隔以下であることが好適である。同様に、前記第2平坦部の径方向の幅は、前記第2平坦部に繋がり且つ径方向に隣接する前記凹部同士又は前記凸部同士の間隔以下であることが好適である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の実施形態に係る車両用ホイールの正面図である。
図2図2は、図1に示す車両用ホイールの縦断面図である。
図3図3は、旋盤加工に使用される目標輪郭形状の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係る車両用ホイール1、及び、車両用ホイール1の製造方法について、図面を参照しながら説明する。以下、説明の便宜上、車両用ホイール1の軸方向、車両用ホイール1の径方向、車両用ホイール1の周方向を、それぞれ、「軸方向」、「径方向」及び「周方向」と呼ぶ。また、図2に示すように、径方向の「外側」及び「内側」、並びに、軸方向の「表側」及び「裏側」を定義する。軸方向は、車両用ホイール1の中心軸線C(図2参照)に沿う方向であり、軸方向の表側は、車両用ホイール1を車両に装着したときに車両の外側から視認できる側に対応し、軸方向の裏側は、その反対側に対応している。
【0016】
(全体構成)
車両用ホイール1は、軽合金製のホイールである。本実施形態では、車両用ホイール1は、アルミニウム合金製であり、例えば鋳造により製造される。車両用ホイール1は、円筒形状のリム部10と、リム部10の軸方向表側の端部に一体に設けられた円盤形状のディスク部20とを備えている。
【0017】
リム部10は、軸方向表側から軸方向裏側に向かって順に、表側リムフランジ11、表側ビードシート12、ドロップウェル13、裏側ビードシート14、及び、裏側リムフランジ15を有している。車両用ホイール1に装着されるタイヤ(図示省略)のビード部は、表側ビードシート12及び裏側ビードシート14に載せられ、表側リムフランジ11及び裏側リムフランジ15により保持される。ドロップウェル13は、タイヤを車両用ホイール1に装着する過程でタイヤのビード部が一時的に入り込む凹部である。
【0018】
ディスク部20は、中心軸心Cと同軸的に位置するハブ取付部21と、ハブ取付部21からリム部10(表側リムフランジ11)まで放射状に径方向外側に延びる複数のスポーク部22とを有している。ハブ取付部21は、軸方向に貫通するハブ孔23と、ハブ孔23の周囲に設けられた複数のボルト孔24とを有している。車両用ホイール1は、ハブ取付部21が車両の車軸のハブに取り付けられることで、車両に装着される。複数のスポーク部22の間には軸方向に貫通する複数の開口25が存在している。
【0019】
(意匠面の構成)
車両用ホイール1の軸方向表側の面である意匠面30(図1参照)は、車両外側から見える部分であって、車両用ホイール1の見栄えを決める部分でもある。意匠面30は、リム部10の軸方向表側の面及びディスク部20の軸方向表側の面から構成されている。
【0020】
意匠面30は、図1に示すように、塗装面40及び切削面50を有している。車両用ホイール1の表面全体には無色または有色のクリア塗装が施されている。そのため、塗装面40及び切削面50は、クリア塗膜を通して視認可能である。なお、全ての図面においてクリア塗膜の図示を省略している。
【0021】
塗装面40は、型成形したあと、鋳肌に有色の塗装が施された面である。図1では、塗装面40をドット柄で表している。車両用ホイール1では、意匠面30において、切削面50以外の部分が塗装面40である。
【0022】
切削面50は、塗装後の鋳肌の一部を塗膜ごと旋盤加工により除去して得られる金属光輝面であり、塗装面40との対比により光輝感が強調されている。車両用ホイール1では、切削面50は、図1から理解できるように、リム部10の表側リムフランジ11の径方向外側端から、ディスク部20のスポーク部22及びハブ取付部21を経由して、ハブ孔23の孔縁までに亘って(即ち、意匠面30の径方向全域に亘って)、径方向に連続して形成されている。切削面50の詳細な形状については後に詳述する。
【0023】
(製造方法)
車両用ホイール1は、鋳造工程、加工工程、塗装工程、旋盤加工工程、及び、最終塗装工程を順に経て、製造される。鋳造工程では、鋳造により車両用ホイール1の概形が形成される。加工工程では、例えば切削加工等により、リム部10、並びに、ディスク部20におけるハブ孔23及びボルト孔24等が形成される。塗装工程では、全体に塗装が施されることで、塗装面40が形成される。旋盤加工工程では、意匠面30において、旋盤加工により、塗装後の鋳肌(即ち、塗装面40)の一部を塗膜ごと切削加工して、切削面50が形成される(詳細は後述)。最終塗装工程では、クリア塗装が施される。
【0024】
(旋盤加工工程)
以下、旋盤加工工程について詳述する。旋盤加工工程では、旋盤加工により、意匠面30の径方向全域に亘って、径方向に連続する切削面50が形成される。旋盤加工は、図3に示す目標輪郭形状60に従い、且つ、径方向に隣接する切削痕同士が径方向に繋がる送り速度で、実行される。目標輪郭形状60は、車両用ホイール1の縦断面における、切削面50の径方向の位置に対する軸方向の目標位置の推移を規定する形状であり、切削面50の輪郭形状に等しい。
【0025】
目標輪郭形状60は、具体的には、図3に示すように、リム部10の表側リムフランジ11の径方向外側端aから、ディスク部20のスポーク部22及びハブ取付部21を経由して、ハブ孔23の孔縁bまでに亘って切削面50を形成するために、径方向に沿って順に、第1面取り部61、第1平坦部62、凹凸部63、第2平坦部64、及び、第2面取り部65を有している。
【0026】
第1面取り部61は、リム部10の表側リムフランジ11の径方向外側端aから延びる円弧状の部分であり、表側リムフランジ11の表側端部を面取り加工する部分である。第1平坦部62は、第1面取り部61の径方向内側に繋がり且つ径方向に平行に直線状に延びる部分である。凹凸部63は、第1平坦部62の径方向内側に繋がり且つ凹部cと凸部dとが交互に繰り返す凹凸状の部分である。凹凸部63を構成する凹部c及び凸部dの各々の形状は、円弧状である。第2平坦部64は、凹凸部63の径方向内側に繋がり且つ径方向に平行に直線状に延びる部分である。第2面取り部65は、第2平坦部64の径方向内側に繋がり且つハブ孔23の孔縁bまで延びる円弧状の部分であり、ハブ孔23の表側端部を面取り加工する部分である。
【0027】
第1面取り部61及び第1平坦部62は、目標輪郭形状60の径方向外側端部に位置し、第2面取り部65及び第2平坦部64は、目標輪郭形状60の径方向内側端部に位置し、凹凸部63は、目標輪郭形状60における径方向両端部を除く大部分を構成している。図3では、凹凸部63において、凹部cが3つ径方向に並んでいるが、実際には、3つより多い多数の凹部cが切削面50の形状に沿って並んでいる。
【0028】
旋盤加工では、例えば、刃先形状が半径2mmの円弧形状のバイトが使用され、且つ、バイトの送り速度が0.4mm/回転で一定とされる。これにより、バイトの送り速度は、径方向に隣接するバイトの切削痕同士が径方向に繋がる速度となっている。
【0029】
第1面取り部61の円弧形状の半径R3は、例えば、2.5mmであり、第2面取り部65の円弧形状の半径R4は、例えば、1.0mmである。凹凸部63において、径方向に隣接する凹部c同士の間隔P1(=径方向に隣接する凸部d同士の間隔P2)は、例えば、2.2mmであり、凹部cの円弧形状の半径R1は、例えば、3.0mmであり、凸部dの円弧形状の半径R2は、例えば、1.0mmである。本例では、間隔P1(=間隔P2)は、径方向の位置によらず一定である。
【0030】
第1平坦部62の径方向の幅B1、及び、第2平坦部64の径方向の幅B2の各々は、旋盤加工における1回転あたりの送り量(=0.4mm)の2倍以上、且つ、径方向に隣接する凹部c同士の間隔P1(=凸部d同士の間隔P2)以下に設定されている。具体的には、幅B1及び幅B2の各々は、0.8mm以上、且つ、2.2mm以下である。
【0031】
旋盤加工では、車両用ホイール1が回転され、且つ、車両用ホイール1の縦断面における切削面50の輪郭形状が目標輪郭形状60に倣う形状となるようにバイトの径方向の位置に対するバイトの切込み深さが調整され、且つ、上記の送り速度でバイトが径方向に移動されながら、リム部10の表側リムフランジ11の径方向外側端aからハブ孔23の孔縁bまでに亘って、意匠面30が連続して切削される。これにより、バイトによるスパイラル状の切削痕(切削溝)が径方向に繋がるように形成されて、切削面50が形成される。
【0032】
この結果、切削面50は、図3に示すように、目標輪郭形状60の第1面取り部61、第1平坦部62、凹凸部63、第2平坦部64、及び、第2面取り部65にそれぞれ対応して、第1面取り面51、第1平坦面52、凹凸面53、第2平坦面54、及び、第2面取り面55で構成される。ただし、実際には、図3に図示していないが、切削面50(=第1面取り面51+第1平坦面52+凹凸面53+第2平坦面54+第2面取り面55)には、バイトの刃先形状に対応する形状を有する切削痕(切削溝)が上記1回転あたりの送り量と同じ間隔で径方向に並んだ「切削痕による微小な凹凸形状」が、目標輪郭形状60に重畳して形成されている。
【0033】
切削面50では、凹凸面53が径方向両端部を除く大部分を構成している。この凹凸面53により、意匠面30の意匠性が高くなっている。更に、切削面50は、その径方向外側端部において、第1平坦面52を含む。第1平坦面52の径方向の幅B1は、上記1回転あたりの送り量の2倍以上、且つ、凹凸面53における径方向に隣接する凹部c同士又は凸部d同士の間隔以下となっている。
【0034】
第1平坦面52は、凹凸面53と比べて、そもそも、寸法測定の基準面として必要な平坦面を確保し易い面形状であるといえる。特に、本例では、凹凸面53を構成する凹部c及び凸部dの各々の形状が円弧状であるので、凹凸面53では寸法測定の基準面として必要な平坦面を確保できない。加えて、第1平坦面52は、上記1回転あたりの送り量の2倍以上の径方向の幅を有している。従って、第1平坦面52には、周方向全域に亘って、「切削痕による微小な凹凸形状」における凸部が径方向に2つ以上存在しており、寸法測定の基準面として必要な平坦面が確保されている。この結果、第1平坦面52は、凹凸面53と比べて、車両用ホイール1における、例えば寸法A1(図2参照)の測定に使用される基準面として利用し易い。また、第1平坦面52の幅が、凹凸面53における径方向に隣接する凹部c同士又は凸部d同士の間隔以下となっていることで、第1平坦面52の幅が大き過ぎることに起因する意匠面30の意匠性の低下が抑制される。
【0035】
同様に、切削面50は、その径方向内側端部において、第2平坦面54を含む。第2平坦面54の径方向の幅B2は、上記1回転あたりの送り量の2倍以上、且つ、凹凸面53における径方向に隣接する凹部c同士又は凸部d同士の間隔以下となっている。
【0036】
第2平坦面54は、凹凸面53と比べて、そもそも、寸法測定の基準面として必要な平坦面を確保し易い面形状であるといえる。特に、本例では、凹凸面53を構成する凹部c及び凸部dの各々の形状が円弧状であるので、凹凸面53では寸法測定の基準面として必要な平坦面を確保できない。加えて、第2平坦面54は、上記1回転あたりの送り量の2倍以上の径方向の幅を有している。従って、第2平坦面54には、周方向全域に亘って、「切削痕による微小な凹凸形状」における凸部が径方向に2つ以上存在しており、寸法測定の基準面として必要な平坦面が確保されている。この結果、第2平坦面54は、凹凸面53と比べて、車両用ホイール1における、例えば寸法A2(図2参照)の測定に使用される基準面として利用し易い。また、第2平坦面54の幅が、凹凸面53における径方向に隣接する凹部c同士又は凸部d同士の間隔以下となっていることで、第2平坦面54の幅が大き過ぎることに起因する意匠面30の意匠性の低下が抑制される。
【0037】
なお、第1平坦面52(第2平坦面54)に繋がる凹凸面53は、第1平坦面52(第2平坦面54)よりも軸方向裏側に位置する。このため、第1平坦面52(第2平坦面54)は、凹凸面53に対して軸方向表側に突き出した部分となるので、車両用ホイール1の寸法測定に使用される基準面として利用し易い。
【0038】
(作用・効果)
以上、本実施形態に係る車両用ホイール1の製造方法によれば、車両用ホイール1の意匠面30に形成される切削面50は、目標輪郭形状60の凹凸部63に対応して形成される凹凸面53を含む。この凹凸面53により、意匠面30の意匠性が高くなる。更に、車両用ホイール1の意匠面30に形成される切削面50は、その径方向外側端部において、目標輪郭形状60の第1平坦部62に対応して形成される第1平坦面52を含み、その径方向内側端部において、目標輪郭形状60の第2平坦部64に対応して形成される第2平坦面54を含む。第1、第2平坦面52,54の径方向の幅B1,B2は、旋盤加工における1回転あたりの送り量の2倍以上、且つ、凹凸面53における径方向に隣接する凹部同士c又は凸部d同士の間隔以下となっている。厳密には、第1、第2平坦面52,54及び凹凸面53には、旋盤加工に使用される工具(バイト)の刃先形状に対応する形状を有する切削痕が送り量と同じ間隔で径方向に並んだ「切削痕による微小な凹凸形状」が、目標輪郭形状60に重畳して形成されている。
【0039】
第1、第2平坦面52,54は、そもそも、寸法測定の基準面として必要な平坦面を確保し易い面形状であるといえる。特に、本例では、凹凸面53を構成する凹部c及び凸部dの各々の形状が円弧状であるので、凹凸面53では寸法測定の基準面として必要な平坦面を確保できない。加えて、第1、第2平坦面52,54は、上記1回転あたりの送り量の2倍以上の径方向の幅を有しているので、第1、第2平坦面52,54には、周方向全域に亘って、「切削痕による微小な凹凸形状」における凸部が径方向に2つ以上存在している。この結果、第1、第2平坦面52,54は、寸法測定の基準面として必要な平坦面を確保している。また、第1、第2平坦面52,54の幅が、凹凸面53における径方向に隣接する凹部c同士又は凸部d同士の間隔以下となっていることで、第1、第2平坦面52,54の幅が大き過ぎることに起因する意匠面30の意匠性の低下が抑制される。以上より、本実施形態に係る車両用ホイールの製造方法によれば、意匠面30に凹凸状の切削面50を設けて意匠性を高めると共に、意匠性の低下を抑制しつつ寸法を測定する際の基準面を確保できる車両用ホイール1を製造することが可能となる。
【0040】
本発明は、上記の典型的な実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の応用や変形が考えられる。例えば、上記実施の形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0041】
本実施形態では、目標輪郭形状60の凹凸部63(従って、切削面50の凹凸面53)において、径方向に隣接する凹部c同士の間隔P1(=径方向に隣接する凸部d同士の間隔P2)は、径方向の位置によらず一定となっている。これに対し、径方向に隣接する凹部c同士の間隔P1(=径方向に隣接する凸部d同士の間隔P2)は、径方向の位置に応じて変化してもよい。この場合、第1平坦部62(従って、第1平坦面52)の径方向の幅B1は、第1平坦部62(従って、第1平坦面52)に繋がり且つ径方向に隣接する凹部c同士又は凸部d同士の間隔以下であることが好適である。同様に、第2平坦部64(従って、第2平坦面54)の径方向の幅B2は、第2平坦部64(従って、第2平坦面54)に繋がり且つ径方向に隣接する凹部c同士又は凸部d同士の間隔以下であることが好適である。
【0042】
また、本実施形態では、目標輪郭形状60(従って、切削面50)は、その径方向外側端部において第1平坦部62(従って、第1平坦面52)を含み、その径方向内側端部において第2平坦部64(従って、第2平坦面54)を含んでいる。これに対し、第1平坦部62(従って、第1平坦面52)、並びに、第2平坦部64(従って、第2平坦面54)のうち、何れか一方が省略されてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1・・・車両用ホイール、30・・・意匠面、60・・・目標輪郭形状、61・・・第1面取り部、62・・・第1平坦部、63・・・凹凸部、64・・・第2平坦部、65・・・第2面取り部
図1
図2
図3