IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダイキン工業株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社ダイキンアプライドシステムズの特許一覧

<>
  • 特開-ファインバブル供給装置 図1
  • 特開-ファインバブル供給装置 図2
  • 特開-ファインバブル供給装置 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023105845
(43)【公開日】2023-08-01
(54)【発明の名称】ファインバブル供給装置
(51)【国際特許分類】
   B01F 23/23 20220101AFI20230725BHJP
   B01F 25/64 20220101ALI20230725BHJP
   B01F 25/10 20220101ALI20230725BHJP
   B01F 25/50 20220101ALI20230725BHJP
   B01F 35/75 20220101ALI20230725BHJP
   B01F 35/00 20220101ALI20230725BHJP
   C02F 1/68 20230101ALI20230725BHJP
   B08B 3/10 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
B01F3/04 A
B01F5/16
B01F5/00 G
B01F5/10
B01F15/02 C
B01F15/00 Z
C02F1/68 510A
C02F1/68 520B
C02F1/68 520C
C02F1/68 530B
B08B3/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022006827
(22)【出願日】2022-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000108890
【氏名又は名称】株式会社ダイキンアプライドシステムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹吉 真幹
【テーマコード(参考)】
3B201
4G035
4G037
【Fターム(参考)】
3B201AA46
3B201BB38
3B201BB88
3B201BB89
3B201BB92
4G035AB05
4G035AC33
4G035AC44
4G035AE13
4G035AE19
4G037AA11
4G037DA30
4G037EA01
(57)【要約】
【課題】大型のファインバブル生成装置や大型の貯留槽を用いずに、高濃度のマイクロバブルを含むファインバブル含有溶液を供給する。
【解決手段】ファインバブル供給装置(100)は、ファインバブルを生成するファインバブル生成部(10)と、ファインバブルを含有するファインバブル含有溶液(50)を貯留する貯留槽(20)と、ファインバブル生成部(10)と貯留槽(20)との間でファインバブル含有溶液(50)を循環させる循環機構(30)と、貯留槽(20)に貯留されているファインバブル含有溶液(50)を、相対的に高い第1貯留位置から外部に供給する供給機構(40)とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファインバブルを生成するファインバブル生成部(10)と、
前記ファインバブル生成部(10)により生成されたファインバブルを含有するファインバブル含有溶液(50)を貯留する貯留槽(20)と、
前記ファインバブル生成部(10)と前記貯留槽(20)との間で、前記ファインバブル含有溶液(50)を循環させる循環機構(30)と、
前記貯留槽(20)に貯留されている前記ファインバブル含有溶液(50)を、相対的に高い第1貯留位置から外部に供給する供給機構(40)と
を備える
ファインバブル供給装置。
【請求項2】
請求項1のファインバブル供給装置において、
前記循環機構(30)は、前記貯留槽(20)に貯留されている前記ファインバブル含有溶液(50)を、相対的に低い第2貯留位置から前記ファインバブル生成部(10)に戻す
ファインバブル供給装置。
【請求項3】
請求項1又は2のファインバブル供給装置において、
前記循環機構(30)は、前記ファインバブル生成部(10)から前記ファインバブル含有溶液(50)を、前記貯留槽(20)における前記第1貯留位置と前記第2貯留位置との間の第3貯留位置に送出する
ファインバブル供給装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項のファインバブル供給装置において、
前記貯留槽(20)の内部には、水平面に対して傾斜した傾斜板(23)が設けられ、
前記貯留槽(20)に貯留されている前記ファインバブル含有溶液(50)中のマイクロバブルが前記傾斜板(23)の下面に沿って上昇する
ファインバブル供給装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項のファインバブル供給装置において、
前記ファインバブル生成部(10)は、マイクロバブルを含有するファインバブルを生成する
ファインバブル供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ファインバブル供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
直径が100μmより小さい気泡であるファインバブルは、殺菌効果や脱臭効果等の優れた特性を有するので、洗浄等の様々な用途に利用されている。ファインバブルのうち直径が1μm以上100μm未満の気泡は「マイクロバブル」と呼ばれ、ファインバブルのうち直径が1μm未満の気泡は「ウルトラファインバブル」と呼ばれる。マイクロバブルは、水中でゆっくり浮上し、時間の経過と共に消滅するのに対して、ウルトラファインバブルは、水中でブラウン運動しながら残存する。
【0003】
ファインバブルの生成方法としては、例えば、高速液旋回流により気泡を粉砕する旋回液流式や、加圧下の飽和溶液の急減圧により気泡を析出させる加圧溶解析出式などが知られている。特許文献1には、キャビテーションと旋回流とを用いてファインバブルを生成するファインバブル生成装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-217803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ファインバブルによる洗浄効果を高めるためには、バブル濃度、特にマイクロバブル濃度が重要である。しかし、ファインバブル生成装置から生成されるバブル濃度は必ずしも均一ではない。そこで、従来、バブル濃度を均一にするために、貯留槽内のファインバブル含有溶液をファインバブル生成装置を介して循環させること(循環生成)が行われている。また、バブル濃度を高濃度化するためには、一定回数以上の循環生成が必要である。このため、工場等での洗浄では、1日に使用するファインバブル含有溶液を夜間に循環生成して貯留槽に貯めておき、日中の洗浄工程で貯留槽のファインバブル含有溶液を全て使い切る方式が普及している。
【0006】
しかしながら、1日分のファインバブル含有溶液を循環生成して貯留しようとすると、大型のファインバブル生成装置や大型の貯留槽が必要となるので、設置エリアの増大、イニシャルコストやランニングコストの増大、消費電力の増大等の問題を生じる。
【0007】
本開示の目的は、大型のファインバブル生成装置や大型の貯留槽を用いずに、高濃度のマイクロバブルを含むファインバブル含有溶液を供給できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の第1の態様は、ファインバブルを生成するファインバブル生成部(10)と、前記ファインバブル生成部(10)により生成されたファインバブルを含有するファインバブル含有溶液(50)を貯留する貯留槽(20)と、前記ファインバブル生成部(10)と前記貯留槽(20)との間で、前記ファインバブル含有溶液(50)を循環させる循環機構(30)と、前記貯留槽(20)に貯留されている前記ファインバブル含有溶液(50)を、相対的に高い第1貯留位置から外部に供給する供給機構(40)とを備えるファインバブル供給装置である。
【0009】
第1の態様では、ファインバブル含有溶液(50)中のマイクロバブルが液面の方へ上昇することを利用して、相対的に高い第1貯留位置つまりマイクロバブルの濃度が高い位置からファインバブル含有溶液(50)を外部に供給する。このため、ファインバブル生成部(10)によりファインバブルを生成しながら、高濃度のマイクロバブルを含むファインバブル含有溶液(50)を供給できるので、ファインバブル生成部(10)や貯留槽(20)を大型化する必要が無い。
【0010】
本開示の第2の態様は、第1の態様において、前記循環機構(30)は、前記貯留槽(20)に貯留されている前記ファインバブル含有溶液(50)を、相対的に低い第2貯留位置から前記ファインバブル生成部(10)に戻す。
【0011】
第2の態様では、相対的に低い第2貯留位置つまりマイクロバブルの濃度が低い位置からファインバブル含有溶液(50)をファインバブル生成部(10)に戻す。このため、貯留槽(20)に貯留されているファインバブル含有溶液(50)のうち、マイクロバブルの濃度が低い下層部分を選択的に循環させることができるため、循環効率が向上する。
【0012】
本開示の第3の態様は、第1又は第2の態様において、前記循環機構(30)は、前記ファインバブル生成部(10)から前記ファインバブル含有溶液(50)を、前記貯留槽(20)における前記第1貯留位置と前記第2貯留位置との間の第3貯留位置に送出する。
【0013】
第3の態様では、第3貯留位置よりも上方の第1貯留位置でのマイクロバブルの濃度の低下を抑制できる。また、第3貯留位置よりも下方の第2貯留位置でのマイクロバブルの濃度が上昇して循環効率が低下することを回避できる。
【0014】
本開示の第4の態様は、第1~第3のいずれか1つの態様において、前記貯留槽(20)の内部には、水平面に対して傾斜した傾斜板(23)が設けられ、前記貯留槽(20)に貯留されている前記ファインバブル含有溶液(50)中のマイクロバブルが前記傾斜板(23)の下面に沿って上昇する。
【0015】
第4の態様では、ファインバブル含有溶液(50)中のマイクロバブルが傾斜板(23)の下面に沿って上昇するため、マイクロバブルを効率的に集約させることができるので、マイクロバブルの高濃度化が容易になる。
【0016】
本開示の第5の態様は、第1~4のいずれか1つの態様において、前記ファインバブル生成部(10)は、マイクロバブルを含有するファインバブルを生成する。
【0017】
第5の態様では、長時間貯留すると消滅してしまうマイクロバブルを生成直後に外部に供給することができる。これにより、例えば、洗浄力の高いマイクロバブルを用いた洗浄等が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、実施形態に係るファインバブル供給装置の概略を示す構成図である。
図2図2は、図1に示すファインバブル供給装置におけるファインバブル生成部の概略を示す構成図である。
図3図3は、変形例に係るファインバブル供給装置の概略を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(実施形態)
以下、本開示の実施形態について図面を参照しながら説明する。尚、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、或いはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。また、各図面は、本開示を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために必要に応じて寸法、比又は数を誇張又は簡略化して表す場合がある。
【0020】
<ファインバブル供給装置>
本実施形態に係るファインバブル供給装置(100)は、図1に示すように、主に、ファインバブル生成部(10)と、貯留槽(20)と、循環機構(30)と、供給機構(40)とを備える。
【0021】
ファインバブル生成部(10)は、マイクロバブルを含有するファインバブルを生成する。ファインバブル生成部(10)には、所定の条件で純水を供給する純水供給管(11)が接続されている。
【0022】
貯留槽(20)は、ファインバブル生成部(10)により生成されたファインバブルを含有するファインバブル含有溶液(50)を貯留する。貯留槽(20)には、初期給水を行う給水管(21)が接続されている。尚、図1において、ファインバブル含有溶液(50)の流れを実線矢印で、水(純水)の流れを破線矢印で示している。
【0023】
循環機構(30)は、ファインバブル生成部(10)と貯留槽(20)との間で、ファインバブル含有溶液(50)を循環させる。循環機構(30)は、ファインバブル生成部(10)から貯留槽(20)にファインバブル含有溶液(50)を送出する送出管(31)と、貯留槽(20)からファインバブル生成部(10)にファインバブル含有溶液(50)を戻す戻し管(32)とを有する。
【0024】
供給機構(40)は、貯留槽(20)に貯留されているファインバブル含有溶液(50)を外部に供給する。供給機構(40)は、例えば、ファインバブル含有溶液(50)を吸い出す水中ポンプ(41)と、水中ポンプ(41)が吸い出したファインバブル含有溶液(50)を図外の洗浄装置等に供給するファインバブル供給管(42)とを有する。
【0025】
本実施形態では、水中ポンプ(41)は、貯留槽(20)に貯留されているファインバブル含有溶液(50)における相対的に高い第1貯留位置、具体的には、ファインバブル含有溶液(50)の液面近傍に設置される。これにより、供給機構(40)は、貯留槽(20)に貯留されているファインバブル含有溶液(50)を第1貯留位置から外部に供給することができる。
【0026】
一方、戻し管(32)の吸い込み口(32a)は、貯留槽(20)に貯留されているファインバブル含有溶液(50)における相対的に低い第2貯留位置、具体的には、ファインバブル含有溶液(50)の下層部分に設置される。これにより、循環機構(30)は、貯留槽(20)に貯留されているファインバブル含有溶液(50)を第2貯留位置からファインバブル生成部(10)に戻すことができる。
【0027】
また、送出管(31)の送出口(31a)は、貯留槽(20)に貯留されているファインバブル含有溶液(50)における第1貯留位置(水中ポンプ(41))と第2貯留位置(吸い込み口(32a))との間の第3貯留位置に設置される。これにより、循環機構(30)は、ファインバブル生成部(10)からファインバブル含有溶液(50)を第3貯留位置に送出することができる。
【0028】
尚、本実施形態のファインバブル供給装置(100)は、貯留槽(20)に貯留されているファインバブル含有溶液(50)の液位を一定に保つ液位保持機構をさらに備えてもよい。或いは、送出口(31a)、吸い込み口(32a)、及び水中ポンプ(41)のそれぞれのファインバブル含有溶液(50)中での位置を調整する位置調整機構をさらに備えてもよい。
【0029】
[ファインバブル生成]
本実施形態において、ファインバブル生成部(10)によるファインバブル生成方式は、特に限定されるものではないが、例えば図2に示すようにファインバブル生成部(10)を構成してもよい。
【0030】
図2に示すファインバブル生成部(10)は、主に、渦流ポンプ(12)と、空気供給部(13)と、微細気泡発生部(60)とを備える。
【0031】
渦流ポンプ(12)は、戻し管(32)から送られてきたファインバブル含有溶液及び/又は純水供給管(11)から送られてきた純水と、空気供給部(13)から送られてきた空気(51)とを混合して気液混合流体(52)を生成し、当該気液混合流体(52)を加圧して接続流路(14)に吐出する。気液混合流体(52)に混合された空気(51)は、渦流ポンプ(12)の内部で渦流によるせん断力を受けて微細化されて微細気泡(例えば直径がマイクロメートル(μm)オーダーの微細気泡)となる。
【0032】
接続流路(14)には、第1圧力調整バルブ(15)及び第1圧力計(16)が接続される。第1圧力調整バルブ(15)は、接続流路(14)内を流れる気液混合流体(52)の圧力を所定の第1圧力に調整する。気液混合流体(52)の圧力は、第1圧力計(16)によって確認することができる。
【0033】
微細気泡発生部(60)は、接続流路(14)を介して渦流ポンプ(12)と接続される。微細気泡発生部(60)は、微細気泡(例えば直径がナノメートル(nm)オーダーの微細気泡)を発生し、当該微細気泡を、接続流路(14)から送られてきた気液混合流体(52)に混合して高バブル濃度のファインバブル含有溶液(50)を生成し、送出管(31)に吐出する。
【0034】
微細気泡発生部(60)は、本体部となる微細気泡発生箱(61)を備える。微細気泡発生箱(61)の一方の面には、接続流路(14)から送られてきた気液混合流体(52)を微細気泡発生箱(61)内に噴射する噴射ノズル(流体入口部)(62)が設けられる。微細気泡発生箱(61)の他方の面には、送出管(31)に接続される流体出口部(63)が設けられる。送出管(31)には、第2圧力調整バルブ(17)及び第2圧力計(18)が接続される。第2圧力調整バルブ(17)は、送出管(31)内を流れるファインバブル含有溶液(50)の圧力を所定の第2圧力に調整する。ファインバブル含有溶液(50)の圧力は、第2圧力計(18)によって確認することができる。ファインバブル含有溶液(50)の第2圧力は、気液混合流体(52)の第1圧力よりも小さくなるように設定される。
【0035】
噴射ノズル(62)から微細気泡発生箱(61)の内部に噴射された気液混合流体(52)は、噴射速度が増加するのに伴い圧力が低下し、当該圧力が飽和蒸気圧まで減少すると、液体成分(水成分)が蒸発して気泡が発生するキャビテーションが生じる。この結果、気液混合流体(52)が噴射ノズル(62)から噴射されてなる噴流に、気液混合流体(52)に含まれる気泡等を核として、キャビテーション現象による気泡が発生する。その後、飽和蒸気圧まで低下した圧力が、噴流の下流側で元の圧力に戻り始めると、気泡は圧縮されて潰れる。この気泡が圧壊したときに発生する高温、高圧のエネルギーが周囲に放射され、このエネルギーにより噴流内の気泡がさらに微細化して、直径がナノメートル(nm)オーダーの微細気泡が生成される。
【0036】
<実施形態の特徴>
本実施形態のファインバブル供給装置(100)は、ファインバブルを生成するファインバブル生成部(10)と、当該ファインバブルを含有するファインバブル含有溶液(50)を貯留する貯留槽(20)と、ファインバブル生成部(10)と貯留槽(20)との間でファインバブル含有溶液(50)を循環させる循環機構(30)とを備える。さらに、ファインバブル供給装置(100)には、貯留槽(20)に貯留されているファインバブル含有溶液(50)を、相対的に高い第1貯留位置から外部に供給する供給機構(40)が設けられる。
【0037】
本実施形態のファインバブル供給装置(100)によると、ファインバブル含有溶液(50)に含まれるマイクロバブルが貯留槽(20)内で液面に向かって上昇することを利用して、相対的に高い第1貯留位置つまりマイクロバブルの濃度が高い位置からファインバブル含有溶液(50)を外部に供給する。すなわち、貯留槽(20)に貯留されているファインバブル含有溶液(50)のうち、マイクロバブルを高濃度で含有する上層部分を優先的に外部に供給する。このため、ファインバブル生成部(10)によりファインバブルを生成しながら、高濃度のマイクロバブルを含むファインバブル含有溶液(50)を供給できる。従って、従来方式のように長時間に亘ってファインバブル含有溶液を循環生成して貯めておかなくてもよいので、ファインバブル生成部(10)や貯留槽(20)を大型化する必要が無い。
【0038】
以上のように、本実施形態では、従来方式で必要であった、大型のファインバブル生成装置、大型の貯留槽、及びそれらの付帯設備が不要となるので、ファインバブル含有溶液の使用量に合わせて、適正なファインバブル生成装置等の選定が可能となる。これにより、各種装置及びそれらの設置スペースの縮小、基礎工事や躯体補強工事の低コスト化、消費電力量の削減等が可能となるので、イニシャルコスト及びランニングコストを削減することができる。
【0039】
また、本実施形態のファインバブル供給装置(100)のうち少なくとも貯留槽(20)を、ファインバブル含有溶液(50)の供給先(例えばフリーザー等の洗浄対象)の近くに配置すれば、当該供給先から離れた場所に設置したファインバブル生成部(10)が生成したファインバブル(特にマイクロバブル)を貯留槽(20)で高濃度化して供給することもできる。
【0040】
さらに、本実施形態では、貯留槽(20)に貯留されているファインバブル含有溶液(50)から、常時、マイクロバブルを高濃度で含有する溶液部分を選別できる。このため、従来技術のようにマイクロバブルを高濃度化するためにファインバブル含有溶液を夜間に循環生成することなく、ファインバブルを生成しながら、高濃度のマイクロバブルを含むファインバブル含有溶液(50)を供給できる。
【0041】
本実施形態のファインバブル供給装置(100)において、循環機構(30)は、貯留槽(20)に貯留されているファインバブル含有溶液(50)を、相対的に低い第2貯留位置からファインバブル生成部(10)に戻してもよい。このように、相対的に低い第2貯留位置つまりマイクロバブルの濃度が低い位置からファインバブル含有溶液(50)をファインバブル生成部(10)に戻すと、貯留槽(20)に貯留されているファインバブル含有溶液(50)のうち、マイクロバブルの濃度が低い下層部分を選択的に循環させることができる。従って、ファインバブル含有溶液(50)に含まれるマイクロバブルを循環によって効率的に高濃度化することができる。すなわち、循環効率を向上させることができる。それに対して、従来方式では、マイクロバブルを高濃度で含むファインバブル含有溶液も循環させているため、無駄な循環が生じてしまう。
【0042】
本実施形態のファインバブル供給装置(100)において、循環機構(30)は、ファインバブル生成部(10)からファインバブル含有溶液(50)を、貯留槽(20)における第1貯留位置と第2貯留位置との間の第3貯留位置に送出してもよい。このようにすると、貯留槽(20)における第1貯留位置よりも低い第3貯留位置にファインバブル生成部(10)からファインバブル含有溶液(50)を送出するため、第1貯留位置でのマイクロバブルの濃度の低下を抑制できる。また、貯留槽(20)における第2貯留位置よりも高い第3貯留位置にファインバブル生成部(10)からファインバブル含有溶液(50)を送出するため、第2貯留位置でのマイクロバブルの濃度が上昇して循環効率が低下することを回避できる。
【0043】
本実施形態のファインバブル供給装置(100)において、ファインバブル生成部(10)は、マイクロバブルを含有するファインバブルを生成してもよい。このようにすると、長時間貯留すると消滅してしまうマイクロバブルをファインバブル生成部(10)で生成した直後に外部に供給することができる。これにより、例えば、洗浄力の高いマイクロバブルを用いた洗浄等が可能になる。
【0044】
(変形例)
本変形例に係るファインバブル供給装置(100)が、図1に示す前記実施形態と異なる点は、図3に示すように、貯留槽(20)の構成である。尚、図3において、図1に示す前記実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付す。
【0045】
図3に示す本変形例では、貯留槽(20)の上部の一方側に、水平方向に延伸した延伸部(22)が設けられる。また、貯留槽(20)の内部には、水平面に対して傾斜した傾斜板(23)が設けられる。傾斜板(23)は、延伸部(22)を除く貯留槽(20)の内部に、延伸部(22)側が高くなるように配置される。傾斜板(23)の最上部には、延伸部(22)の上部を仕切る垂直板(24)が設けられる。傾斜板(23)の最下部は、延伸部(22)の下方において貯留槽(20)の他方側の壁部に接続する。
【0046】
本変形例では、ファインバブル含有溶液(50)の最上位液面が延伸部(22)内に生じるようにファインバブル含有溶液(50)を貯留槽(20)に貯めた状態で、供給機構(40)の水中ポンプ(41)を延伸部(22)内のファインバブル含有溶液(50)中に配置する。この場合、ファインバブル含有溶液(50)の最上位液面が、傾斜板(23)と垂直板(24)との接続部と同じ高さ又はその上方に位置するように、言い換えると、傾斜板(23)の下面全体がファインバブル含有溶液(50)と接するように、液位調整を行ってもよい。
【0047】
また、送出管(31)の送出口(31a)、及び戻し管(32)の吸い込み口(32a)は、吸い込み口(32a)が送出口(31a)よりも低く位置するように、傾斜板(23)の下方に配置される。
【0048】
以上に説明した本変形例によると、貯留槽(20)の内部に、水平面に対して傾斜した傾斜板(23)が設けられ、ファインバブル含有溶液(50)中のマイクロバブルが傾斜板(23)の下面に沿って上昇する。このため、マイクロバブルを効率的に集約させることができるので、マイクロバブルの高濃度化が容易になる。
【0049】
尚、本変形例において、延伸部(22)を設けずに、傾斜板(23)における相対的に高い部分の直下に、水中ポンプ(41)を配置してもよい。
【0050】
また、本変形例において、傾斜板(23)は、貯留槽(20)と別体に設けてよいし、或いは、貯留槽(20)の側壁部や天井部を傾斜させて傾斜板(23)を構成してもよい。
【0051】
(その他の実施形態)
前記実施形態(前記変形例を含む。以下同じ。)では、供給機構(40)として、水中ポンプ(41)を用いたが、これに代えて、陸上ポンプを用いてもよい。また、ポンプを用いずに、供給機構(40)を構成してもよい。例えば、貯留槽(20)の側壁上部に開口を設け、当該開口から重力を利用してファインバブル含有溶液(50)を取り出してよい。或いは、貯留槽(20)からオーバーフローさせたファインバブル含有溶液(50)を外部に供給してもよい。
【0052】
また、前記実施形態では、ファインバブル生成部(10)として、図2に示す構成のもの(キャビテーションと旋回流とを用いたファインバブル生成装置)を用いた。しかし、前記実施形態において、ファインバブル生成方式は特に限定されるものではなく、加圧溶解析出式などの他の方式を用いてもよい。
【0053】
また、前記実施形態では、ファインバブルの用途として、洗浄を例示したが、これに限定されず、水質浄化、農作物育成、脱色・脱臭等の他の用途にファインバブルを使用してもよい。
【0054】
また、前記実施形態では、空気のファインバブルを水に含有させてファインバブル含有溶液(50)を生成する場合を例示したが、これに限定されず、他の気体(酸素、窒素、二酸化炭素など)のファインバブルを水又は他の液体(有機溶媒など)に含有させてファインバブル含有溶液を生成してもよい。
【0055】
以上、実施形態及び変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態及び変形例は、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。さらに、以上に述べた「第1」、「第2」、…という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上に説明したように、本開示は、ファインバブル供給装置について有用である。
【符号の説明】
【0057】
100 ファインバブル供給装置
10 ファインバブル生成部
20 貯留槽
23 傾斜板
30 循環機構
40 供給機構
50 ファインバブル含有溶液
図1
図2
図3