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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023105847
(43)【公開日】2023-08-01
(54)【発明の名称】換気システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/007 20060101AFI20230725BHJP
   F24F 7/08 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
F24F7/007 B
F24F7/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022006829
(22)【出願日】2022-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】種治 健太
【テーマコード(参考)】
3L056
【Fターム(参考)】
3L056BD07
3L056BE01
(57)【要約】
【課題】効率的に微粒子を除去しながらも屋内の負圧を防止する換気システムを提供する。
【解決手段】屋外の空気を屋内に給気する給気ファンと、屋内の空気を屋外に排気する複数の排気ファンと、複数の排気ファンそれぞれに対応付けて設けられ排気の微粒子濃度値を検出する複数の微粒子センサと、給気ファンと排気ファンの制御を行う制御部と、を備える。複数の排気ファンは、対応する微粒子センサが検出した微粒子濃度値に基づいてそれぞれ独立して排気風量を制御する。制御部は、複数の排気ファンの総排気風量と給気ファンの給気風量が同じになるように給気ファンの風量制御を行う。これにより上記課題を解決する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外の空気を屋内に給気する給気ファンと、
屋内の空気を屋外に排気する複数の排気ファンと、
前記複数の排気ファンそれぞれに対応付けて設けられ前記排気の微粒子濃度値を検出する複数の微粒子センサと、
前記給気ファンと前記排気ファンの制御を行う制御部と、を備え、
前記複数の排気ファンは、
前記対応する微粒子センサが検出した前記微粒子濃度値に基づいてそれぞれ独立して排気風量を制御し、
前記制御部は、
前記複数の排気ファンの総排気風量と前記給気ファンの給気風量が同じになるように前記給気ファンの風量制御を行う換気システム。
【請求項2】
前記排気ファンは、
前記微粒子センサが検出した微粒子濃度値が大きいほど、当該微粒子センサに対応する排気ファンの排気風量を大きくし、
前記制御部は、
前記給気ファンの給気風量が、最大風量かつ前記総排気風量よりも小さい場合、
前記微粒子センサが検出した微粒子濃度値が小さいものから優先して当該微粒子センサに対応する排気ファンの排気風量を小さくし、前記総排気風量と前記給気風量を同じにする請求項1記載の換気システム。
【請求項3】
前記制御部は、
前記複数の微粒子センサの中で最も微粒子濃度値が小さい微粒子センサに対応する排気ファンの排気風量を小さくし、前記総排気風量と前記給気風量を同じにする請求項2記載の換気システム。
【請求項4】
前記制御部は、
動作中の前記排気ファンに対応する前記複数の微粒子センサの中で最も微粒子濃度値が小さい微粒子センサに対応する排気ファンを停止しても前記給気風量が前記総排気風量よりも小さい場合、
さらに前記停止した排気ファンを除いた動作中の前記排気ファンに対応する前記複数の微粒子センサの中で最も微粒子濃度値が小さい微粒子センサに対応する排気ファンの排気風量を順次小さくすることで、前記総排気風量と前記給気ファンの給気風量を同じにする請求項3記載の換気システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、換気システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、屋内環境に基づいて排気ファンの風量を制御する換気システムが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2013/132827号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
給気ファンと複数の排気ファンを備えた換気システムにおいて、屋内環境として屋内の微粒子濃度に基づいて排気ファンの風量を制御することが考えられる。しかし、屋内の構造により屋内の微粒子濃度分布は異なったり、時間の経過と共に屋内の微粒子濃度分布が異なったりする。そのため、効率的に屋内の微粒子を除去することが求められる。
【0005】
また、微粒子濃度に基づいて排気ファンの風量が変化することで、複数の排気ファンの総排気風量が給気ファンの給気風量よりも大きくなる可能性がある。これにより、屋内が負圧になってしまい、外開きのドアの開閉がしづらい等の課題が生じてしまう。
【0006】
そこで本発明は、上記課題を解決するものであり、効率的に微粒子を除去しながらも屋内の負圧を防止する換気システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そして、この目的を達成するために、本発明に係る換気システムは、屋外の空気を屋内に給気する給気ファンと、屋内の空気を屋外に排気する複数の排気ファンと、複数の排気ファンそれぞれに対応付けて設けられ排気の微粒子濃度値を検出する複数の微粒子センサと、給気ファンと排気ファンの制御を行う制御部と、を備え、複数の排気ファンは、対応する微粒子センサが検出した微粒子濃度値に基づいてそれぞれ独立して排気風量を制御し、制御部は、複数の排気ファンの総排気風量と給気ファンの給気風量が同じになるように給気ファンの風量制御を行う換気システムであり、これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、効率的に微粒子を除去しながらも屋内の負圧を防止する換気システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態に係る換気システムの概略図である。
図2】本発明の実施の形態に係る換気システムの概略機能ブロック図である。
図3】本発明の実施の形態に係る排気風量テーブルのデータ構造を示す図である。
図4】本発明の実施の形態に係る換気システムにおける制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するために例示するものであって、本発明は以下のものに特定しない。特に実施の形態に記載されている数値、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる実施例に過ぎない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0011】
(実施の形態)
まず、本発明の実施の形態に係る換気システムについて説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る換気システムの概略図である。本実施の形態に係る換気システムは、複数の排気ファンと給気ファンによって屋内空間の換気を行うシステムである。
【0012】
換気システムは、屋外側給気口3と屋外側給気風路5と給気ファン1と屋内側給気風路6と屋内側給気口4とを備える。
【0013】
屋外側給気口3は、屋外の空気を屋内へ取り入れるための取入口である。屋外側給気口3は、屋外側給気風路5に接続される。
【0014】
屋外側給気風路5は、屋外側給気口3と給気ファン1とを連通する。屋外側給気風路5は、例えばダクトである。
【0015】
給気ファン1は、屋外側給気口3から取り入れられた屋外の空気を、屋内側給気風路6を経由して屋内側給気口4より屋内に吹き出すための送風機である。具体的には、給気ファン1が回転することによって、屋外側給気口3から取り入れられた屋外の空気が、屋内側給気風路6を経由して屋内側給気口4より屋内に放出される。給気ファン1は、図示しないモータが駆動することにより回転する。モータは例えば交流モータ(ACモータ:Alternating Current Motor)、または直流モータ(DCモータ:Direct Current Motor)である。
【0016】
屋内側給気風路6は、給気ファン1と屋内側給気口4とを連通する。給気ファン1により取り入れられた屋外の空気は、屋内側給気風路6を経由して屋内側給気口4に送られる。屋内側給気風路6は、例えばダクトである。
【0017】
屋内側給気口4は、給気ファン1により取り込まれた空気を屋内に吐き出すための吐出口である。屋内側給気口4は、屋内側給気風路6に接続される。
【0018】
また、換気システムは、第一屋内側排気口9Aと第一排気ファン2Aと排気風路11と屋外側排気口10と第一微粒子センサ12Aとを備える。
【0019】
第一屋内側排気口9Aは、屋内の空気を第一排気ファン2Aへ取り入れるための取入口である。
【0020】
第一排気ファン2Aは、第一屋内側排気口9Aから取り入れられた屋内の空気を屋外側排気口10より屋外に吹き出すための送風機である。具体的には、第一排気ファン2Aが回転することによって、第一屋内側排気口9Aから取り入れられた屋内の空気が排気風路11を経由して屋外側排気口10より屋外に放出される。第一排気ファン2Aは、図示しないモータが駆動することにより回転する。モータは例えば交流モータ、または直流モータである。
【0021】
排気風路11は、第一排気ファン2Aと屋外側排気口10とを連通する。第一排気ファン2Aにより取り入れられた屋内の空気は、排気風路11を経由して屋外側排気口10に送られる。排気風路11は、例えばダクトである。
【0022】
屋外側排気口10は、第一排気ファン2Aにより取り込まれた空気を屋外に吐き出すための吐出口である。屋外側排気口10は、排気風路11に接続される。
【0023】
第一微粒子センサ12Aは、第一排気ファン2Aに対応付けて設けられ、第一排気ファン2Aによる排気の微粒子濃度値を検出する。第一微粒子センサ12Aは、第一排気ファン2Aによる排気の微粒子濃度値を検出可能な場所に設けられれば良く、例えば、第一屋内側排気口9Aに設けられる。第一微粒子センサ12Aは、例えばPM2.5の濃度値を検出する。第一微粒子センサ12Aは、センサ内部に光学レンズを使用しており、ほこり等により光学レンズが汚れることが考えられるため、排気流の変化が小さい場所に設けられることが望ましい。
【0024】
また、換気システムは、第二屋内側排気口9Bと第二排気ファン2Bと第二微粒子センサ12Bとを備える。
【0025】
第二屋内側排気口9Bは、第一屋内側排気口9Aとは別の場所に設けられ、屋内の空気を第二排気ファン2Bへ取り入れるための取入口である。
【0026】
第二排気ファン2Bは、第二屋内側排気口9Bから取り入れられた屋内の空気を屋外側排気口10より屋外に吹き出す空気の流れをつくるための送風機である。具体的には、第二排気ファン2Bが回転することによって、第二屋内側排気口9Bから取り入れられた屋内の空気が排気風路11を経由して屋外側排気口10より屋外に放出される。第二排気ファン2Bは、図示しないモータが駆動することにより回転する。モータは例えば交流モータ、または直流モータである。排気風路11は、第二排気ファン2Bと屋外側排気口10とも連通する。屋外側排気口10は、第二排気ファン2Bにより取り込まれた空気を屋外に吐き出すための吐出口でもある。
【0027】
第二微粒子センサ12Bは、第二排気ファン2Bに対応付けて設けられ、第二排気ファン2Bによる排気の微粒子濃度値を検出する。第二微粒子センサ12Bは、第二排気ファン2Bによる排気の微粒子濃度値を検出可能な場所に設けられれば良く、例えば、第二屋内側排気口9Bに設けられる。第二微粒子センサ12Bの構成は第一微粒子センサ12Aと同じため詳細な説明は省略する。つまり換気システムは、複数の排気ファンそれぞれに対応付けて設けられ排気の微粒子濃度値を検出する複数の微粒子センサを備える。
【0028】
また、換気システムは給気ファン1と第一排気ファン2Aと第二排気ファン2Bとを制御する制御部8を備える。
【0029】
制御部8は給気ファン制御部7と第一排気ファン制御部13Aと第二排気ファン制御部13Bとを備える。給気ファン制御部7が給気ファン1の制御を行い、第一排気ファン制御部13Aが第一排気ファン2Aの制御を行い、第二排気ファン制御部13Bが第二排気ファン2Bの制御を行うが、制御内容の詳細は後述する。給気ファン制御部7、第一排気ファン制御部13Aおよび第二排気ファン制御部13Bは有線または無線通信により通信可能に接続されている。
【0030】
次いで、図2を参照して、本発明の実施の形態に係る制御部8の各機能について説明する。図2は制御部8及び周辺部の概略機能ブロック図である。
【0031】
第一排気ファン制御部13Aは、第一微粒子濃度取得部17Aと第一排気ファン指示部15Aと第一排気ファン動作制御部16Aとを備える。
【0032】
第一微粒子濃度取得部17Aは、第一微粒子センサ12Aにより検出された第一微粒子濃度値を取得する。第一微粒子濃度取得部17Aは、取得した第一微粒子濃度値を第一排気ファン指示部15Aに送る。
【0033】
第一排気ファン指示部15Aは、第一微粒子濃度取得部17Aにより取得された第一微粒子濃度値に基づいて第一排気ファン2Aの排気風量を決定する。
【0034】
ここで、第一排気ファン指示部15Aが第一微粒子濃度値に基づいて第一排気ファン2Aの排気風量をどのように決定するかについて図3を用いて説明する。図3は、制御部8の図示しない記憶部であるメモリに記憶されている排気風量テーブルのデータ構造を示す図であり、排気風量テーブルの一例である。排気風量テーブルには、所定の微粒子濃度値に対応する所定の排気風量が複数格納されている。
【0035】
本実施の形態では一例として、微粒子濃度値が35[マイクログラム/立法メートル]未満であれば、排気風量は50[立方メートル/h]となる。また、微粒子濃度値が35[マイクログラム/立法メートル]以上50[マイクログラム/立法メートル]未満であれば、排気風量は70[立方メートル/h]となる。また、微粒子濃度値が50[マイクログラム/立法メートル]以上70[マイクログラム/立法メートル]未満であれは、排気風量は150[立方メートル/h]となる。また、微粒子濃度値が70[マイクログラム/立法メートル]以上であれば、排気風量は200[立方メートル/h]となる。排気風量テーブルは、微粒子濃度値が大きいほど対応する排気風量が大きい。
【0036】
第一排気ファン指示部15Aは、第一微粒子センサ12Aにより検出された第一微粒子濃度値と排気風量テーブルとに基づいて第一排気ファン2Aの排気風量を決定する。具体的に説明すると、第一微粒子センサ12Aにより検出された第一微粒子濃度値が60[マイクログラム/立法メートル]である場合、排気風量テーブルから第一排気ファン2Aの排気風量として150[立方メートル/h]を決定する。第一排気ファン指示部15Aは、決定した第一排気ファン2Aの排気風量を第一排気ファン動作制御部16Aに指示する。
【0037】
第一排気ファン動作制御部16Aは、第一排気ファン2Aの排気風量が第一排気ファン指示部15Aにより指示された排気風量になるように第一排気ファン2Aの制御を行う。
【0038】
第二排気ファン制御部13Bは、第二微粒子濃度取得部17Bと第二排気ファン指示部15Bと第二排気ファン動作制御部16Bとを備える。
【0039】
第二微粒子濃度取得部17Bは、第二微粒子センサ12Bにより検出された第二微粒子濃度値を取得する。第二微粒子濃度取得部17Bは、取得した第二微粒子濃度値を第二排気ファン指示部15Bに送る。
【0040】
第二排気ファン指示部15Bは、第二微粒子濃度取得部17Bにより取得された第二微粒子濃度値に基づいて第二排気ファン2Bの排気風量を決定する。第二排気ファン指示部15Bは、決定した第二排気ファン2Bの排気風量を第二排気ファン動作制御部16Bに指示する。第二排気ファン指示部15Bが第二微粒子濃度値に基づいて第二排気ファン2Bの排気風量をどのように決定するかについては第一排気ファン指示部15Aと同様であり、排気風量テーブルを用いて決定する。
【0041】
第二排気ファン指示部15Bは、第二微粒子センサ12Bにより検出された第二微粒子濃度値と排気風量テーブルとに基づいて第二排気ファン2Bの排気風量を決定する。具体的に説明すると、第二微粒子センサ12Bにより検出された第二微粒子濃度値が40[マイクログラム/立法メートル]である場合、排気風量テーブルから第二排気ファン2Bの排気風量として70[立方メートル/h]を決定する。第二排気ファン指示部15Bは、決定した第二排気ファン2Bの排気風量を第二排気ファン動作制御部16Bに指示する。
【0042】
第二排気ファン動作制御部16Bは、第二排気ファン2Bの排気風量が第二排気ファン指示部15Bにより指示された排気風量になるように第二排気ファン2Bの制御を行う。
【0043】
つまり、複数の排気ファン(第一排気ファン2Aおよび第二排気ファン2B)は、対応する微粒子センサが検出した微粒子濃度値に基づいてそれぞれ独立して排気風量を制御している。
【0044】
給気ファン制御部7は、処理部20と給気ファン指示部18と給気ファン動作制御部19とを備える。
【0045】
処理部20は、複数の排気ファンの総排気風量と給気ファン1の給気風量が同じになるように給気ファン1の給気風量を決定する。具体的に説明すると、第一排気ファン2Aの排気風量が150[立方メートル/h]で、第二排気ファン2Bの排気風量が70[立方メートル/h]であれば、総排気風量は220[立方メートル/h]となる。処理部20は、給気ファン1の給気風量を総排気風量と同じ220[立方メートル/h]に決定する。処理部20は、決定した給気ファン1の給気風量を給気ファン指示部18に送る。
【0046】
給気ファン指示部18は、処理部20により決定した給気ファン1の給気風量を給気ファン動作制御部19に指示する。
【0047】
給気ファン動作制御部19は、給気ファン1の給気風量が給気ファン指示部18により指示された給気風量になるように給気ファン1の制御を行う。これにより、屋内の負圧を防止することができる。つまり制御部8は、複数の排気ファンの総排気風量と給気ファンの給気風量が同じになるように給気ファンの風量制御を行う。ただし、複数の排気ファンの総排気風量と給気ファンの給気風量が100%同じではなく、ある程度の近い範囲であっても同じとする。これは、100%同じになるような制御は技術的ハードルが高いためである。
【0048】
以上が制御部8の基本的な制御内容である。
【0049】
次いで、処理部20により決定した給気ファン1の給気風量が、給気ファン動作制御部19により制御可能な最大風量よりも大きい場合の制御部8の制御内容について説明する。給気ファン動作制御部19により制御可能な給気風量には上限があり、処理部20により決定した給気ファン1の給気風量が給気ファン動作制御部19により制御可能な最大風量よりも大きい場合は、処理部20は、給気ファン動作制御部19により制御可能な最大風量を給気ファン1の給気風量に決定する。
【0050】
具体的に説明すると、第一排気ファン2Aの排気風量が200[立方メートル/h]で、第二排気ファン2Bの排気風量が150[立方メートル/h]であれば、総排気風量は350[立方メートル/h]となる。しかし、給気ファン動作制御部19により制御可能な最大風量が300[立方メートル/h]であれば、処理部20は、給気ファン1の給気風量を300[立方メートル/h]に決定する。これにより、給気ファン1の給気風量が、最大風量かつ総排気風量よりも小さくなる。給気ファン1の給気風量が、最大風量かつ総排気風量よりも小さくなるということは屋内が負圧になるということである。そこで制御部8は負圧を解消するための制御を行う。
【0051】
処理部20は、微粒子センサ(第一微粒子センサ12Aおよび第二微粒子センサ12B)が検出した微粒子濃度値が小さいものから優先して当該微粒子センサに対応する排気ファンの排気風量を小さくし、総排気風量と給気風量を同じにする処理を行う。例えば、第一微粒子センサ12Aが検出した第一微粒子濃度が100[マイクログラム/立法メートル]で、第二微粒子センサ12Bが検出した第二微粒子濃度値が70[マイクログラム/立法メートル]とする。処理部20は、微粒子濃度値が小さい第二微粒子濃度値を検出する第二微粒子センサ12Bに対応する第二排気ファン2Bの排気風量を小さくすることを決定する。総排気風量と給気風量を同じにするためには、総排気風量を350[立方メートル/h]-300[立方メートル/h]=50[立方メートル/h]小さくすればよい。処理部20は、微粒子濃度値が小さい第二微粒子濃度値を検出する第二微粒子センサ12Bに対応する第二排気ファン2Bの排気風量を50[立方メートル/h]小さくすることを決定する。処理部20は、決定した内容を第二排気ファン指示部15Bに送る。
【0052】
第二排気ファン指示部15Bは、処理部20により決定した第二排気ファン2Bの排気風量を50[立方メートル/h]小さくすることを第二排気ファン動作制御部16Bに指示する。
【0053】
第二排気ファン動作制御部16Bは、第二排気ファン2Bの排気風量が50[立方メートル/h]小さくなるように第二排気ファン2Bの制御を行う。つまり、第二排気ファン2Bの排気風量は150[立方メートル/h]-50[立方メートル/h]=100[立方メートル/h]となる。微粒子センサが検出した微粒子濃度値が小さいものから優先して当該微粒子センサに対応する排気ファンの排気風量を小さくし、総排気風量と給気風量を同じにすることにより、屋内の負圧を防止しつつ効率良く屋内の微粒子除去を行うことができる。
【0054】
上記実施例では、複数の微粒子センサの中で最も微粒子濃度値が小さい微粒子センサに対応する排気ファンの排気風量を小さくし、総排気風量と給気風量を同じにした。しかし、微粒子センサが検出した微粒子濃度値が小さいものから優先して当該微粒子センサに対応する排気ファンの排気風量を小さくできれば他の方法でも良い。例えば、最も微粒子濃度値が小さい第二微粒子センサ12Bに対応する第二排気ファン2Bの排気風量を40[立方メートル/h]小さくなるようにし、二番目に微粒子濃度値が小さい第一微粒子センサ12Aに対応する第一排気ファン2Aの排気風量を10[立方メートル/h]小さくなるようにしてもよい。
【0055】
ここで、制御部8の各機能ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPU(CentralProcessing Unit)をはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組み合わせによって様々な形で実現することができる。
【0056】
上記構成による換気システムの動作を説明する。図4は、本実施の形態に係る制御部8の制御を示すフローチャートである。ここで、フローチャートではSを頭文字にして番号を割り振った。例えばS1などは処理ステップを指す。但し、処理ステップを示す数値の大小と処理順序は関係しない。
【0057】
まず、第一排気ファン制御部13Aは、初期設定の排気風量となるように第一排気ファン2Aの排気風量を制御する。また、第二排気ファン制御部13Bは、初期設定の排気風量となるように第二排気ファン2Bの排気風量を制御する。ここで、初期設定の排気風量は任意に設定可能であり例えば記憶部に記憶されている。本実施の形態では一例として、初期設定の排気風量を50[立方メートル/h]とする。
【0058】
第一微粒子濃度取得部17Aは、第一微粒子濃度値を取得する。また、第二微粒子濃度取得部17Bは、第二微粒子濃度値を取得する(S1)。
【0059】
第一排気ファン指示部15Aは、第一微粒子濃度値と排気風量テーブルとに基づいて第一排気ファン2Aの排気風量を決定し、決定した第一排気ファン2Aの排気風量を第一排気ファン動作制御部16Aに指示する。第一排気ファン動作制御部16Aは、第一排気ファン2Aの排気風量が第一排気ファン指示部15Aにより指示された排気風量になるように第一排気ファン2Aの制御を行う。
【0060】
第二排気ファン指示部15Bは、第二微粒子濃度値と排気風量テーブルとに基づいて第二排気ファン2Bの排気風量を決定し、決定した第二排気ファン2Bの排気風量を第二排気ファン動作制御部16Bに指示する。第二排気ファン動作制御部16Bは、第二排気ファン2Bの排気風量が第二排気ファン指示部15Bにより指示された排気風量になるように第二排気ファン2Bの制御を行う(S2)。これにより、微粒子濃度値が大きい屋内の場所ほど排気風量が大きくなり、効率的に微粒子を除去することができる。
【0061】
処理部20は、複数の排気ファンの総排気風量と給気ファン1の給気風量が同じになるように給気風量を決定し、給気ファン指示部18は、決定した給気風量を給気ファン動作制御部19に指示する。これにより、屋内の負圧を防止することができる。ただし、処理部20により決定した給気風量が給気ファン動作制御部19により制御可能な最大風量よりも大きい場合は、処理部20は、給気ファン動作制御部19により制御可能な最大風量を給気風量に決定する。給気ファン動作制御部19は、給気風量が指示された給気風量になるように給気ファン1の制御を行う。
【0062】
処理部20は、給気風量が、最大かつ総排気風量よりも小さいか否かを判定する(S4)。処理部20は、給気風量が総排気風量よりも小さくなければ、ステップS1に戻る(S4Yes→S1)。これにより、屋内の負圧を継続的に防止することができる。
【0063】
処理部20は、給気風量が、最大風量かつ総排気風量よりも小さい場合、第一微粒子濃度値と第二微粒子濃度値とを比較する(S4Yes→S5)。処理部20は、第一微粒子濃度値が第二微粒子濃度値よりも小さければ、給気風量と総排気風量が同じになるように、第一排気ファン2Aの風量を小さくすることを決定する。処理部20は、決定した内容を第一排気ファン指示部15Aに送る。第一排気ファン指示部15Aは、決定した第一排気ファン2Aの排気風量を第一排気ファン動作制御部16Aに指示し、第一排気ファン動作制御部16Aは、第一排気ファン2Aの排気風量を指示された排気風量に制御する(S5Yes→S6)。
【0064】
また、処理部20は、第一微粒子濃度値が第二微粒子濃度値以上であれば、給気風量と総排気風量が同じになるように、第二排気ファン2Bの風量を小さくすることを決定する。処理部20は、決定した内容を第二排気ファン指示部15Bに送る。第二排気ファン指示部15Bは、決定した第二排気ファン2Bの排気風量を第二排気ファン動作制御部16Bに指示し、第二排気ファン動作制御部16Bは、第二排気ファン2Bの排気風量を指示された排気風量に制御する(S5No→S7)。つまり、微粒子センサが検出した微粒子濃度値が小さいものから優先して当該微粒子センサに対応する排気ファンの排気風量を小さくし、総排気風量と給気風量を同じにすることができるので、屋内の負圧を防止しつつ効率良く屋内の微粒子除去を行うことができる。
【0065】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0066】
例えば、本実施の形態では排気ファンが2つであったが、3つ以上においても本発明は有効である。この場合、制御部8は、複数の微粒子センサの中で最も微粒子濃度値が小さい微粒子センサに対応する排気ファンの排気風量を小さくし、総排気風量と給気風量を同じにする。これにより、微粒子センサが検出した微粒子濃度値が小さいものから優先して当該微粒子センサに対応する排気ファンの排気風量を小さくし、総排気風量と給気風量を同じにすることができるので、屋内の負圧を防止しつつ効率良く屋内の微粒子除去を行うことができる。
【0067】
また、制御部8は、動作中の排気ファンに対応する複数の微粒子センサの中で最も微粒子濃度値が小さい微粒子センサに対応する排気ファンを停止しても給気風量が総排気風量よりも小さい場合、さらに停止した排気ファンを除いた動作中の排気ファンに対応する複数の微粒子センサの中で最も微粒子濃度値が小さい微粒子センサに対応する排気ファンの排気風量を順次小さくすることで、総排気風量と給気ファンの給気風量を同じにしてもよい。例えば本実施の形態において、第一微粒子濃度値が第二微粒子濃度値よりも小さく第一排気ファン2Aを停止(風量ゼロ)しても給気風量が総排気風量よりも小さい場合、制御部8は第二排気ファン2Bの風量を小さくすることで総排気風量と給気風量とを同じにする。これにより、屋内の負圧を防止しつつ効率良く屋内の微粒子除去を行うことができる。
【0068】
また、本実施の形態では給気ファン制御部7が処理部20を備えていたが必ずしも給気ファン制御部7が処理部20を備えなくても良く、制御部8、第一排気ファン制御部13A、または第二排気ファン制御部13Bが処理部20を備えても良い。
【0069】
(発明の概要)
本発明に係る換気システムは、屋外の空気を屋内に給気する給気ファンと、屋内の空気を屋外に排気する複数の排気ファンと、複数の排気ファンそれぞれに対応付けて設けられ排気の微粒子濃度値を検出する複数の微粒子センサと、給気ファンと排気ファンの制御を行う制御部と、を備え、複数の排気ファンは、対応する微粒子センサが検出した微粒子濃度値に基づいてそれぞれ独立して排気風量を制御し、制御部は、複数の排気ファンの総排気風量と給気ファンの給気風量が同じになるように給気ファンの風量制御を行う。これにより、効率的に微粒子を除去しながらも屋内の負圧を防止することができる。
【0070】
また、排気ファンは、微粒子センサが検出した微粒子濃度値が大きいほど、当該微粒子センサに対応する排気ファンの排気風量を大きくし、制御部は、給気ファンの給気風量が、最大風量かつ総排気風量よりも小さい場合、微粒子センサが検出した微粒子濃度値が小さいものから優先して当該微粒子センサに対応する排気ファンの排気風量を小さくし、総排気風量と給気風量を同じにしてもよい。これにより、微粒子濃度値が大きい屋内の場所ほど排気風量が大きくなり、効率的に微粒子を除去することができ、さらに屋内の負圧を防止することができる。
【0071】
また、制御部は、複数の微粒子センサの中で最も微粒子濃度値が小さい微粒子センサに対応する排気ファンの排気風量を小さくし、総排気風量と給気風量を同じにしてもよい。これにより、屋内の負圧を防止しつつ効率良く屋内の微粒子除去を行うことができる。
【0072】
また、制御部は、動作中の排気ファンに対応する複数の微粒子センサの中で最も微粒子濃度値が小さい微粒子センサに対応する排気ファンを停止しても給気風量が総排気風量よりも小さい場合、さらに停止した排気ファンを除いた動作中の排気ファンに対応する複数の微粒子センサの中で最も微粒子濃度値が小さい微粒子センサに対応する排気ファンの排気風量を順次小さくすることで、総排気風量と給気ファンの給気風量を同じにしてもよい。
【0073】
これにより、動作中の排気ファンに対応する複数の微粒子センサの中で最も微粒子濃度値が小さい微粒子センサに対応する排気ファンを停止しても給気風量が総排気風量よりも小さい場合においても、屋内の負圧を防止しつつ効率良く屋内の微粒子除去を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、建物の換気に使用される換気システムとして有用である。
【符号の説明】
【0075】
1 給気ファン
2A 第一排気ファン
2B 第二排気ファン
3 屋外側給気口
4 屋内側給気口
5 屋外側給気風路
6 屋内側給気風路
7 給気ファン制御部
8 制御部
9A 第一屋内側排気口
9B 第二屋内側排気口
10 屋外側排気口
11 排気風路
12A 第一微粒子センサ
12B 第二微粒子センサ
13A 第一排気ファン制御部
13B 第二排気ファン制御部
15A 第一排気ファン指示部
15B 第二排気ファン指示部
16A 第一排気ファン動作制御部
16B 第二排気ファン動作制御部
17A 第一微粒子濃度取得部
17B 第二微粒子濃度取得部
18 給気ファン指示部
19 給気ファン動作制御部
20 処理部
図1
図2
図3
図4