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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023105850
(43)【公開日】2023-08-01
(54)【発明の名称】雌型端子およびコネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/15 20060101AFI20230725BHJP
   H01R 13/10 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
H01R13/15 A
H01R13/10 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022006835
(22)【出願日】2022-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000227995
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクスジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(72)【発明者】
【氏名】本目 英貴
(57)【要約】
【課題】経済性を担保しつつ、小型化を図りながら、必要なバネの反力を確保することが可能な雌型端子、および当該雌型端子を備えるコネクタを提供すること。
【解決手段】雌型端子1は、前側Fから後側Rに向けて挿入される相手端子(4)を収容する収容部Cと、収容部Cの前側Fから後側Rに向けて延び、相手端子(4)に接触する接点部110を含む第1バネ11と、収容部Cの後側Rから前側Fに向けて延び、第1バネ11を相手端子(4)に向けて加圧可能に構成されている第2バネ12と、を備える。第1バネ11は、少なくとも相手端子(4)の挿入過程において、接点部110よりも後側Rで第2バネ12に当接する第1当接部101を含む。第2バネ12は、少なくとも相手端子(4)の挿入過程において、第1当接部101よりも前側Fで第1バネ11に当接する第2当接部102を含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前側から後側に向けて挿入される相手端子を収容する収容部と、
前記収容部の前記前側から前記後側に向けて延び、前記相手端子に接触する接点部を含む第1バネと、
前記収容部の前記後側から前記前側に向けて延び、前記第1バネを前記相手端子に向けて加圧可能に構成されている第2バネと、を備え、
前記第1バネは、少なくとも前記相手端子の挿入過程において、前記接点部よりも前記後側で前記第2バネに当接する第1当接部を含み、
前記第2バネは、少なくとも前記相手端子の挿入過程において、前記第1当接部よりも前記前側で前記第1バネに当接する第2当接部を含む、雌型端子。
【請求項2】
前記第1当接部は、前記相手端子の挿入による前記接点部の変位に伴い、前記第2バネに当接し、
前記第2当接部は、前記第1当接部の前記第2バネへの当接に続いて、前記第1バネに当接する、
請求項1に記載の雌型端子。
【請求項3】
前記第1当接部は、前記第2バネに向けて凸の向きに湾曲して形成され、
前記第2当接部は、前記第1バネに向けて凸の向きに湾曲して形成され、
前記第1当接部の頂点は、前記第2当接部の頂点よりも前記後側に、所定の距離だけ離れている、
請求項1または2に記載の雌型端子。
【請求項4】
前記相手端子の挿入後における前記距離は、前記相手端子の挿入前における前記距離よりも大きい、
請求項3に記載の雌型端子。
【請求項5】
前記第1当接部と前記第2バネとの間、および前記第2当接部と前記第1バネとの間にはそれぞれ、前記相手端子の挿入前において間隙が存在する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の雌型端子。
【請求項6】
前記収容部は、前記第1バネに対向し、前記第1バネとの間に前記相手端子を受け入れる対向壁を備え、
前記対向壁には、前記第1バネの前記接点部に対向する接点領域と、前記接点領域よりも前記前側で前記相手端子を案内するガイド領域とが、前記第1バネに向けて突出して形成されている、
請求項1から5のいずれか一項に記載の雌型端子。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の雌型端子と、
前記雌型端子を保持するハウジングと、を備える、コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雌型端子、および当該雌型端子を備える電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
雌型端子は、金属板材から形成され、雄型端子に接触する接点部を有した片持ち梁状のバネ片を備えている。ある種の雌型端子は、接点部を有した主バネと、主バネよりも後方に配置され、主バネを雄型端子に向けて加圧する補助バネとを備えている(特許文献1~3)。主バネは、雄型端子が挿入される挿入口の近傍から後方へと、補助バネの先端部の位置まで延びている。補助バネは、雄型端子を収容する空間の後側から前側に向けて延びている。
特許文献1~3に記載の端子金具においては、主バネの先端部と補助バネの先端部とが重なって互いに当接している状態で、収容空間に前方から雄型端子が挿入される。雄型端子の挿入に伴い、主バネと補助バネとは、それぞれの先端部が当接した状態を保ちながら変位する。このとき、主バネおよび補助バネは、それぞれの先端部のみで接触し、それ以外の部位では接触していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-002871号公報
【特許文献2】特開2014-232701号公報
【特許文献3】特開2017-041338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、例えば自動車搭載機器の用途においてコネクタの小型化が促進されており、それに伴い、雌型端子にもより一層の小型化が要請されている。小型化により、雌型端子の内部に備わるバネの寸法も小さくなり、また、板厚は薄くなる。そのため、雌型端子を小型化しようとすると、所定の接圧の実現に必要なバネによる反力を接点部に得ることが難しい。
特許文献1~3のように主バネおよび補助バネを備える場合も同様である。小型化により、主バネおよび補助バネのそれぞれの反力が低下してしまう。小型化されていても反力を得るために、より物性の良い材料を使用するとコストアップの要因となり、バネを断面積の大きい複雑な形状にすると、生産性に劣る。
そこで、本発明は、経済性を担保しつつ、小型化を図りながら、必要なバネの反力を確保することが可能な雌型端子、および当該雌型端子を備えるコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の雌型端子は、前側から後側に向けて挿入される相手端子を収容する収容部と、収容部の前側から後側に向けて延び、相手端子に接触する接点部を含む第1バネと、収容部の後側から前側に向けて延び、第1バネを相手端子に向けて加圧可能に構成されている第2バネと、を備える。
第1バネは、少なくとも相手端子の挿入過程において、接点部よりも後側で第2バネに当接する第1当接部を含む。
第2バネは、少なくとも相手端子の挿入過程において、第1当接部よりも前側で第1バネに当接する第2当接部を含む。
【0006】
本発明の雌型端子において、第1当接部は、相手端子の挿入による接点部の変位に伴い、第2バネに当接し、第2当接部は、第1当接部の第2バネへの当接に続いて、第1バネに当接することが好ましい。
【0007】
本発明の雌型端子において、第1当接部は、第2バネに向けて凸の向きに湾曲して形成され、第2当接部は、第1バネに向けて凸の向きに湾曲して形成され、第1当接部の頂点は、第2当接部の頂点よりも後側に、所定の距離だけ離れていることが好ましい。
【0008】
本発明の雌型端子において、相手端子の挿入後における距離は、相手端子の挿入前における距離よりも大きいことが好ましい。
【0009】
本発明の雌型端子において、第1当接部と第2バネとの間、および第2当接部と第1バネとの間にはそれぞれ、相手端子の挿入前において間隙が存在することが好ましい。
【0010】
本発明の雌型端子において、収容部は、第1バネに対向し、第1バネとの間に相手端子を受け入れる対向壁を備え、対向壁には、第1バネの接点部に対向する接点領域と、接点領域よりも前側で相手端子を案内するガイド領域とが、第1バネに向けて突出して形成されていることが好ましい。
【0011】
本発明のコネクタは、上述の雌型端子と、雌型端子を保持するハウジングと、を備える。
【発明の効果】
【0012】
第1バネと第2バネとが、第1当接部と第2当接部との二点間に亘り重なる状態で当接することにより、第1バネと第2バネとは一体的に挙動する。そうすると、二点間の距離に亘りバネの厚さが2倍となるので、第1バネと第2バネとが1箇所のみで当接する場合と比べ、第1バネおよび第2バネの弾性変形により得られる反力を増加させることができる。
本発明によれば、小型化しつつ、バネの反力を確保するにあたり、物性が良い材料を使用する必要はない。また、小型化のために板厚を薄くせざるを得ない場合であっても、バネを断面積の大きい複雑な形状に折り曲げ加工する必要はない。
【0013】
本発明によれば、第1バネと第2バネとが重なる距離に充当する分だけ、第1バネおよび第2バネの少なくとも一方を延長すればよいから、物性の良い材料を用いる場合と比べて材料コストを抑えることができ、また、複雑な形状に加工する場合と比べて生産性を向上させることができる。
つまり、経済性を担保しつつ、小型化を図りながら、必要な反力を確保することが可能となるので、小型であり、強固な端子接触に基づいて振動、衝撃等の外力に対して抜け防止の図られた、接続信頼性の高い雌型端子を安価に提供することができる。雌型端子の小型化、およびそれによる軽量化は、1つ以上の雌型端子を備えるコネクタの小型化および軽量化にも貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る雌型端子およびハウジングを備えるコネクタを示す斜視図である。
図2】(a)は、図1に示す雌型端子の斜視図である。(b)は、(a)のIIb矢視による正面図である。
図3】(a)は、雌型端子の一部を破断した状態の斜視図である。(b)は、雌型端子の一部縦断面図である。
図4】は、雌型端子に雄型端子が挿入された状態を示す一部縦断面図である。
図5】(a)~(c)は、雌型端子に雄型端子が挿入される過程を示す一部縦断面図である。
図6】(a)は、比較例に係る雌型端子の一部縦断面図である。(b)は、(a)のXIb矢視による正面図である。
図7】本発明の変形例に係る雌型端子の一部縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。
図1に示すコネクタ100は、複数の雌型端子1と、雌型端子1を保持するハウジング2とを備えている。図1には、複数の雌型端子1のうちの1つのみを示している。雌型端子1にはそれぞれ、電線3が接合される。
ハウジング2には、複数の雌型端子1を個別に収容する複数の図示しないキャビティが形成されている。雌型端子1は、キャビティに挿入されると、ハウジング2に備わるランス2A(図3(b))によりハウジング2に係止される。
【0016】
コネクタ100は、例えば、自動車に搭載される機器に組み込まれ、図示しない相手コネクタと嵌合される。雌型端子1は、相手コネクタに備わる相手端子としての雄型端子4(図4)と電気的に接続される。
【0017】
雌型端子1は、図2に示すように、相手端子4と電気的に接続される端子部10と、電線3が圧着される圧着部20とを備えている。圧着部20は、電線3(図1)の芯線に圧着される芯線圧着部21と、芯線を覆う被覆31に圧着される被覆圧着部22とからなる。芯線圧着部21と端子部10との間には、連結部25が介在している。
【0018】
主に図2図4を参照し、端子部10の構成の一例を説明する。端子部10は、銅合金等の金属板材からの打ち抜きおよび折り曲げの加工により、一体に形成されている。
端子部10は、前側Fから後側Rに向けて挿入されるタブ状の雄型端子4を収容する収容部Cと、雄型端子4に接触する接点部110を含む第1バネ11と、第1バネ11を雄型端子4に向けて加圧可能に構成されている第2バネ12とを備えている。
【0019】
第1バネ11および第2バネ12のいずれも、片持ち梁に相当する。図4に示すように、雄型端子4が収容部Cにおける規定の位置まで挿入された状態で作用する第1バネ11および第2バネ12の反力F1により、雄型端子4と端子部10とが所定の接圧で接触する。
なお、図4および後述する図5(a)~(c)においては、図3(b)に示す構造(バネ11,12を含む)と同寸の構造の変形を想定している。
【0020】
収容部Cは、前後方向に延在する角筒状に形成され、略矩形状の横断面を呈する。収容部Cは、上下方向に対向する上壁13および下壁14と、左右方向に対向する左壁15および右壁16とを備えている。
上壁13には、ランス2Aが配置される開口131と、ランス2Aにより係止される係止部132とが形成されている。ランス2Aおよび係止部132により、雌型端子1がハウジング2から後方へ抜け出ることが防止される。
上壁13は、開口131よりも前側Fに位置する前上壁13Fと、開口131よりも後側Rに位置する後上壁13Rとを備えている。後上壁13Rは、前上壁13Fよりも若干上方に位置している。
【0021】
第1バネ11は、前上壁13Fの内側に重ねられている内壁133から後側Rに連なり、後方に向けて延びている。収容部Cの前端に位置する挿入口17から、第1バネ11と、第1バネ11に対向する下壁14との間に雄型端子4が挿入される。
雄型端子4が挿入される前における第1バネ11の形状として、第1バネ11は、図3(b)に示すように、前上壁13Fにより支持されている支持端11Aから接点部110までの第1区間S1に亘り次第に下壁14に近接しつつ後側Rに向けて延びている。第1バネ11の接点部110は、下壁14に向けて膨らんでいる。接点部110は、平面視において例えば円形状に形成されている。
【0022】
第1バネ11における接点部110から自由端11Bまでの第2区間S2には、第2バネ12に当接する第1当接部101が含まれている。第2区間S2は、第2バネ12の自由端12Bを超えて後方へ延びている。本実施形態の第1当接部101は、第1バネ11の自由端11Bに相当する。
第1当接部101は、雄型端子4が挿入される過程において、接点部110よりも後側Rで第2バネ12に当接する。この第1当接部101よりも前側Fで、第2バネ12は、雄型端子4の挿入過程において第1バネ11に当接する。
【0023】
なお、第1当接部101は、第1バネ11の自由端でなくてもよい。例えば、第1当接部101から後方へ、第2バネ12から下方へ離れる向きに、自由端としての非当接部が延びていてもよい。第2当接部102についても同様である。
【0024】
第2区間S2は、より詳細には、接点部110から後方へ下壁14に対してほぼ平行に延びている延出部11Cと、第1当接部101とを含んでいる。
第1当接部101は、延出部11Cから上方へ延びつつ、より上方に位置する第2バネ12に向けて、凸の向きに湾曲して形成されている。
【0025】
第2バネ12は、第1バネ11に当接する第2当接部102を備えている。第2バネ12は、第2当接部102により第1バネ11を雄型端子4に向けて加圧することで、反力F1の確保に寄与する。
第2バネ12は、図3(b)に示すように、後上壁13Rの内側に重ねられている内壁134から前側Fに向けて、次第に下壁14に近接しつつ、第1バネ11の上方を延びている。この第2バネ12は、後上壁13Rにより支持されている支持端12Aから自由端12Bまで延びている。
【0026】
第2バネ12は、第1当接部101の位置を超えて前方へ延びている。本実施形態の第2バネ12の第2当接部102は、第2バネ12の自由端12Bに相当し、接点部110の近傍に位置している。第2当接部102は、下方に位置する第1バネ11に向けて、凸の向きに湾曲して形成されている。
第2当接部102と接点部110とのそれぞれの前後方向における位置は、雄型端子4の挿入による第1バネ11および第2バネ12の変位により第2当接部102が上方へ変位した際に第2当接部102がランス2Aと干渉せず、接点部110と接点領域141との間に雄型端子4がスムーズに挿入されるように決められている。
【0027】
雄型端子4の挿入前において、第1バネ11と第2バネ12とは必ずしも当接していない。本実施形態においては、第1当接部101と第2バネ12との間に間隙G1を設定し、間隙G1を公差の範囲内に管理している。つまり、雄型端子4の挿入前において、第1当接部101は第2バネ12に当接しておらず、接点部110は接点領域141に当接していない。
間隙G1の公差は、例えば、雌型端子1の軸線方向の一端側からレーザーを出射し、軸線方向の他端側におけるレーザーの入射状態に基づいて管理することができる。
一方、第2当接部102と第1バネ11との間の間隙G2は、必ずしも管理される必要がなく、公差範囲内に管理されていないのならば、間隙G2がある場合とない場合とがある。
【0028】
第1当接部101と第2バネ12との間に間隙G1を公差内に管理することによれば接点部110と接点領域141との間に雄型端子4をスムーズに挿入可能な隙間を与えるとともに、第1バネ11と第2バネ12とを決まった位置で当接させて、第1バネ11および第2バネ12から一定の反力F1を安定して得ることができる。
間隙G1,G2の設定は必ずしも必要ではなく、雄型端子4の挿入前において第1バネ11と第2バネ12とが当接(接触)していることは許容される。つまり、第1当接部101は、少なくとも雄型端子4の挿入過程において第2バネ12に当接し、第2当接部102も、少なくとも雄型端子4の挿入過程において第1バネ11に当接する。
【0029】
第1当接部101の湾曲の外周側の第1頂点101Tと、第2当接部102の湾曲の外周側の第2頂点102Tとは、雄型端子4の挿入前において、前後方向に所定の距離Xだけ離れている。
また、雄型端子4の挿入前において、第1頂点101Tは、第2頂点102Tよりも上方に位置している。このとき、第1頂点101Tと第2頂点102Tとは、上下方向に所定の距離Zだけ離れている。雄型端子4の挿入後(図4)においても、第1頂点101Tは、第2頂点102Tよりも上方に位置している。
【0030】
第1バネ11と第2バネ12とは、第1頂点101Tから第2頂点102Tまでの範囲に亘り、上下方向に並びつつ前後方向に延びている。
図4に示すように、雄型端子4が収容部Cの規定位置まで挿入されると、第1バネ11および第2バネ12は、上方へ変位しつつ、第1当接部101は後方へ、第2当接部102は前方へと変位する。それに伴い、図3(b)に示す距離X図4に示す距離Xへと増加する。
構造設計に基づき、反力F1をより十分に確保する観点から、第2バネ12の長さの概ね半分の位置に第1当接部101が当接することが好ましい。
【0031】
下壁14には、第1バネ11の接点部110に対向する接点領域141と、接点領域141よりも前側Fで雄型端子4の姿勢を整えて接点部110と接点領域141との間に案内するガイド領域142とが形成されている。接点領域141およびガイド領域142はそれぞれ、第1バネ11に向けて所定の突出量で形成されている。接点領域141およびガイド領域142は、平面視において例えば矩形状に形成されている。下壁14からのガイド領域142の突出量は、下壁14からの接点領域141の突出量よりも低い。こうしたガイド領域142が接点領域141よりも前側Fに形成されていることで、雄型端子4を収容部Cに挿入する際における挿入荷重の最大値を低減することができる。
【0032】
図5(a)~(c)を参照し、雄型端子4が収容部Cに挿入される過程における第1バネ11および第2バネ12の変位の挙動の一例を説明する。
図5(a)に示すように、雄型端子4により接点部110が押されて上方へ変位すると、第1当接部101も上方へ変位する(矢印参照)。第1当接部101が第2バネ12の平坦な領域に当接すると、第1当接部101が第2バネ12の決まった位置に安定して当接するので好ましい。これは、第1バネ11および第2バネ12から一定の反力F1を安定して得ることに繋がる。
【0033】
雄型端子4がより後方へ移動したことで、図5(b)に示すように、第1バネ11がより上方へ変位すると(矢印参照)、第2当接部102が第1バネ11に当接する。第1当接部101と同様、第2当接部102も、第1バネ11の平坦な領域に当接することで、第1バネ11の決まった位置に安定して当接すると好ましい。このとき第1当接部101は第2バネ12に当接した状態に維持されている。
【0034】
雄型端子4が後方へ移動するにつれて、第1バネ11および第2バネ12のいずれもより上方へと撓みつつ、第1当接部101と第2当接部102とが前後方向に離れていくので、第1頂点101Tと第2頂点102Tとの前後方向の距離は増加する。
図5(c)に示すように、雄型端子4が収容部Cの規定の位置まで挿入されると、上方へ撓んだ第1バネ11および第2バネ12の下方への反力F1により、雄型端子4が接点部110および接点領域141に所定の接圧で押圧される。雄型端子4と、接点部110および接点領域141とは、図5(c)に示すように、例えば面接触している。
【0035】
このとき、第1バネ11と第2バネ12とは、第1当接部101の第1頂点101Tと第2当接部102の第2頂点102Tとの少なくとも二点で当接している。二点間の範囲の大部分に亘り、第1バネ11と第2バネ12とは当接している。二点間の範囲において、第1バネ11と第2バネ12との間に僅かな隙間が存在することは許容される。その隙間は、雄型端子4の挿入前における間隙G1,G2と比べて十分に小さい。
【0036】
第1バネ11と第2バネ12とが二点間の距離Xに亘り、重なった状態で当接していると、第1バネ11と第2バネ12とは一体的に挙動する。そうすると、距離Xに亘り、バネの板厚方向の寸法が2倍となるので、第1バネ11と第2バネ12とが第2当接部102により1箇所のみで当接する場合と比べ、第1バネ11と第2バネ12との弾性変形により得られる反力F1を増加させることができる。
【0037】
つまり、第1バネ11を第2当接部102により加圧する第2バネ12を備えていることのみならず、第2当接部102よりも後方で第1バネ11の第1当接部101を第2バネ12に当接させ、当接する二点間の距離Xに亘り第1バネ11と第2バネ12とをバネの挙動として一体化させることによれば、雌型端子1の小型化を為しつつ、所定の接圧に必要な反力F1を確保することができる。
【0038】
第1バネ11および第2バネ12の具体的な寸法形状、位置関係等に応じて、雄型端子4の挿入過程におけるバネ11,12の変位の状態は変わる。そのため、必ずしも、図5(a)~(c)に示す挿入過程と同様に、第1当接部101が第2バネ12に当接し、続いて第2当接部102が第1バネ11に当接するとは限らない。第1当接部101が第2バネ12に当接するよりも先に、第2当接部102が第1バネ11に当接したり、第1当接部101第2バネ12に当接するのと同時に、第2当接部102が第1バネ11に当接したりしてもよい。そうした場合でも、第1バネ11と第2バネ12とが、第1当接部101と第2当接部102との二点間に亘り重なる状態で当接することで、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0039】
図6(a)および(b)に示す比較例の雌型端子9は、接点部910を有した第1バネ91と、第1バネ91を雄型端子に向けて加圧可能に構成されている第2バネ92とを備えている。図示しない雄型端子が収容部に挿入される過程において、第1バネ91が上方へ変位すると第2バネ92の第2当接部902が第1バネ91に当接する。
こうした構造においては、第1バネ91と第2バネ92とは、1箇所のみ、つまり、各バネ91,92の自由端のごく限られた範囲で当接するに過ぎない。各バネ91,92の自由端にそれぞれ設定した頂点901T,902Tは、前後方向においてほとんど同じ位置にあり、頂点901T,902T間の距離Xは、実質的に0である。バネ91,92の変位に伴い、距離Xが僅かばかり増加したとしても、バネ91,92の反力を十分に増加させる効果は得られない。
比較例に対する本実施形態の反力増加効果は、解析により算出されている。
【0040】
本実施形態によれば、雌型端子1を小型化しつつ、バネ11,12の反力を確保するにあたり、弾性率等の物性が良い材料を使用する必要はない。また、端子部10にバネ11,12を内蔵する構造上、小型化のために板厚を薄くせざるを得ない場合であっても、板厚の薄さによる反力不足を補うためにバネ11,12を断面積の大きい複雑な形状に折り曲げ加工する必要はない。本実施形態によれば、距離Xに充当する分だけ第1バネ11を後方へ延長して第1バネ11に第1当接部101を与えれば足りるから、物性の良い材料を用いる場合と比べて材料コストを抑えることができ、また、複雑な形状に加工する場合と比べて生産性を向上させることができる。
つまり、本実施形態によれば、経済性を担保しつつ、小型化を図りながら、必要な反力F1を確保することが可能となる。
【0041】
本実施形態の雌型端子1は、比較例の雌型端子9に対し、同一の材料、同一の板厚、および同一の反力の条件下において、小型化することができる。雌型端子1の端子部10の幅Y(図2(b))は、比較例の雌型端子9の端子部の幅Y図6(b))よりも狭い。
このように雌型端子1が小型化されることによれば、単一または複数の雌型端子1と、それを保持するハウジング2とを備えたコネクタ100の小型化および軽量化を促進することができる。
【0042】
反力F1を増加させる観点からは、第1バネ11と第2バネ12とが重なった状態で前後方向に延びている距離Xが長いほど好ましい。距離Xを長くするためには、例えば、本実施形態の第1バネ11を後方へ延長し、第1バネ11の後端に第1当接部101を移動させたり、本実施形態の第2バネ12を前方へ延長し、第2バネ12の前端に第2当接部102を移動させたりするとよい。第1バネ11および第2バネ12の両方を延長して第1当接部101と第2当接部102との距離Xを増加させることも可能である。
【0043】
但し、距離Xは、第1バネ11および第2バネ12のそれぞれの強度を担保することが可能な限度で設定するとよい。例えば、第1バネ11が第2バネ12の支持端12Aの近傍に至るまで長く、その後端に第1当接部101が与えられているならば、第1当接部101により第2バネ12の変位が規制されるので、第2バネ12の応力が過大となりかねない。その場合は、第2バネ12の撓みが第1バネ11により規制されるので、距離Xに亘りバネ11,12が重なっていることで反力F1を増加させる効果が低下してしまう。
【0044】
第1バネ11および第2バネ12のそれぞれの長さや位置関係によっては、第2当接部102が第1バネに当接することで第1バネ11に生じる応力を考慮して、距離Xを決めるとよい。
【0045】
図7は、変形例に係る雌型端子5を示す。第2バネ12が接点部110の真上の位置まで、あるいは接点部110を前側Fに超える位置まで前方へ延びていることにより、第1バネ11と第2バネ12とが重なる範囲には、上記実施形態における距離Xよりも長い距離Xが与えられている。本例においては、第2バネ12とランス2A(図3(b))との干渉を避けるため、ハウジング2には、端子部10の後端の段差10Sを係止するランス2Bが形成されている。
【0046】
第1バネ11および第2バネ12の寸法形状、位置関係等に応じて、第1バネ11と第2バネ12とが重なる範囲を前後方向の適宜な位置に設定することができる。図6(a)に示す比較例を改変する場合は、例えば、第1当接部901の位置を変えずに、第2バネ92を第1当接部901の位置よりも前方へ延長し、その前端に第2当接部902を移動させるとよい。そうすることで、第1バネ91と第2バネ92とが重なる範囲には、上記実施形態の距離Xと同等の距離を与えることができる。
【0047】
上記以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0048】
1,5,9 雌型端子
2 ハウジング
2A,2B ランス
3 電線
4 雄型端子(相手端子)
10 端子部
10S 段差
11 第1バネ
11A 支持端
11B 自由端
11C 延出部
12 第2バネ
12A 支持端
12B 自由端
13 上壁
13F 前上壁
13R 後上壁
14 下壁(対向壁)
15 左壁
16 右壁
17 挿入口
20 圧着部
21 芯線圧着部
22 被覆圧着部
25 連結部
31 被覆
91 第1バネ
92 第2バネ
100 コネクタ
101 第1当接部
101T 第1頂点
102 第2当接部
102T 第2頂点
110 接点部
131 開口
132 係止部
133,134 内壁
141 接点領域
142 ガイド領域
901 第1当接部
901T 頂点
902 第2当接部
902T 頂点
910 接点部
C 収容部
F 前側
F1 反力
G1,G2 間隙
R 後側
S1 第1区間
S2 第2区間
X,X,X,X 距離
Y,Y
距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7