(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023105852
(43)【公開日】2023-08-01
(54)【発明の名称】変速機
(51)【国際特許分類】
F16H 9/14 20060101AFI20230725BHJP
【FI】
F16H9/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022006839
(22)【出願日】2022-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 敏也
【テーマコード(参考)】
3J050
【Fターム(参考)】
3J050AA01
3J050AB07
3J050BA03
3J050BB05
3J050CC02
3J050CD03
3J050DA01
(57)【要約】
【課題】変速機側と被駆動側とで駆動源を共用すること。
【解決手段】変速機1は、回転可能に設けられた駆動軸3bと、駆動軸と平行に配置されて回転可能に設けられた駆動伝達軸4と、駆動軸に固定された固定プーリ5と、駆動伝達軸に設けられて軸方向で接近離隔移動が可能に設けられた1対の可動プーリ片6a,6bからなる可変プーリ6と、固定プーリおよび可変プーリに掛け回された環状ベルト7と、駆動軸を回転駆動する駆動部3と、駆動伝達軸の回転を許容または停止する制動部8と、制動部によって駆動伝達軸の回転が停止されている状態で、駆動軸の回転が環状ベルトを介して可変プーリに伝達された場合に各可動プーリ片を接近または離隔する一方、制動部によって駆動伝達軸の回転が許容されている状態で、駆動軸の回転を環状ベルトおよび可変プーリを介して駆動伝達軸に伝達する可変機構11と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に設けられた第一軸と、
前記第一軸と平行に配置されて回転可能に設けられた第二軸と、
前記第一軸に固定された固定プーリと、
前記第二軸に設けられて軸方向で接近離隔移動が可能に設けられた1対の可動プーリ片からなる可変プーリと、
前記固定プーリおよび前記可変プーリに掛け回された環状ベルトと、
前記第一軸を回転駆動する駆動部と、
前記第二軸の回転を許容または停止する制動部と、
前記制動部によって前記第二軸の回転が停止されている状態で、前記第一軸の回転が前記環状ベルトを介して前記可変プーリに伝達された場合に各前記可動プーリ片を接近または離隔する一方、前記制動部によって前記第二軸の回転が許容されている状態で、前記第一軸の回転を前記環状ベルトおよび前記可変プーリを介して前記第二軸に伝達する可変機構と、
を含む、変速機。
【請求項2】
前記可変機構は、前記第二軸に正ネジと逆ネジとが軸方向に並んで形成され、前記可変プーリの一方の可動プーリ片が前記正ネジに螺合し、他方の可動プーリ片が前記逆ネジに螺合してなる、請求項1に記載の変速機。
【請求項3】
前記正ネジおよび前記逆ネジが台形ネジで形成される、請求項2に記載の変速機。
【請求項4】
前記環状ベルトに張力を付与する支持機構をさらに含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の変速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、車輪で走行する小型の車両にとって、段差や階段は大きな障害で比較的大きいパワー(トルク)を要するが、平地を走行する際は段差や階段ほどパワーを必要としない。そこで、階段や段差を踏破するための仕様で減速比を決定したとする。しかし、平地での走行速度と段差を踏破するためのパワーを満たす減速比は両立できないこともあり、車輪に変速機を組み込む必要性がある。
【0003】
従来の変速機として、例えば、特許文献1,2には、固定側と移動側とで対をなす可変プーリを有し、固定側に対して移動側をネジ軸の軸方向に移動させることで、可変プーリに巻き付けられる環状ベルトの巻き径を変える変速機が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3-265747号公報
【特許文献2】特開2007-263268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1,2に示される変速機は、環状ベルトの反力によって可変プーリの移動側が押されて固定側から離れるようにネジ軸に回転力が生じる。このため、ネジ軸を回転させる駆動モータに掛かる負荷を低減するように、移動側によるネジ軸への作用を抑えるセルフロック機構が採用される。
【0006】
この特許文献1,2に示される変速機では、可変プーリは、固定側がネジ軸と同軸上に配置された別の軸に固定され、移動側がネジ軸を介して軸方向に移動可能に設けられる。この可変プーリは、さらに他の軸に固定された固定プーリと環状ベルトを介して連結され、移動側の移動によって、固定プーリから環状ベルトを介して被駆動側に伝達されるトルクを変化させる。
【0007】
しかし、特許文献1,2に示される変速機は、ネジ軸を回転させて可変プーリを移動させるための駆動モータと、環状ベルトを介してトルクを被駆動側に伝達するための駆動源と、がそれぞれ必要である。このため、特許文献1,2に示される変速機では、変速機側と被駆動側とを合わせた装置全体の大型化が懸念される。
【0008】
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、変速機側と被駆動側とで駆動源を共用することのできる変速機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本開示の一態様の変速機は、回転可能に設けられた第一軸と、前記第一軸と平行に配置されて回転可能に設けられた第二軸と、前記第一軸に固定された固定プーリと、前記第二軸に設けられて軸方向で接近離隔移動が可能に設けられた1対の可動プーリ片からなる可変プーリと、前記固定プーリおよび前記可変プーリに掛け回された環状ベルトと、前記第一軸を回転駆動する駆動部と、前記第二軸の回転を許容または停止する制動部と、前記制動部によって前記第二軸の回転が停止されている状態で、前記第一軸の回転が前記環状ベルトを介して前記可変プーリに伝達された場合に各前記可動プーリ片を接近または離隔する一方、前記制動部によって前記第二軸の回転が許容されている状態で、前記第一軸の回転を前記環状ベルトおよび前記可変プーリを介して前記第二軸に伝達する可変機構と、を含む。
【0010】
上記変速機の望ましい態様として、前記可変機構は、前記第二軸に正ネジと逆ネジとが軸方向に並んで形成され、前記可変プーリの一方の可動プーリ片が前記正ネジに螺合し、他方の可動プーリ片が前記逆ネジに螺合してなる。
【0011】
上記変速機の望ましい態様として、前記正ネジおよび前記逆ネジが台形ネジで形成される。
【0012】
上記変速機の望ましい態様として、前記環状ベルトに張力を付与する支持機構をさらに含む。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、変速機側と被駆動側とで駆動源を共用できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、変速機の構成例を表す斜視図である。
【
図2】
図2は、変速機の構成例を表す断面図である。
【
図3】
図3は、変速機における被駆動軸を表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、発明を実施するための形態につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の形態により本発明が限定されるものではない。また、下記形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0016】
実施形態の変速機は、被駆動側に伝達するトルクを変化させるもので、例えば、無人搬送車もしくは無人搬送ロボットなどのAGV(Automatic Guided Vehicle)や、宅配ロボットや、搬送用カートや、車のような機器に適用される。
【0017】
図1、
図2、
図4および
図5に示すように、変速機1は、基部2と、駆動部3と、駆動伝達軸4と、固定プーリ5と、可変プーリ6と、環状ベルト7と、制動部8と、支持機構9と、を含む。
【0018】
基部2は、機器側に固定される。基部2は、実施形態では、上下方向(
図1、
図2、
図4および
図5の矢印A方向)に延びる長円形の板状に形成される。
【0019】
駆動部3は、変速機1および機器の駆動源となるもので、例えば、モータによって構成される。モータからなる駆動部3は、駆動本体3aと、駆動本体3aから延びる駆動軸3bとを有する。駆動軸3bは、第一軸ともいう。この駆動部3は、基部2に取り付けられる。即ち、駆動軸3bは、基部2に対して回転可能に設けられる。基部2に取り付けられた駆動部3は、駆動軸3bが基部2を貫通して基部2の板面から突出するように設けられる。なお、第一軸である駆動軸3bは、モータからなる駆動部3の一部として設けられず、基部2に対して回転可能に設けられて駆動部3によって回転駆動される構成であってもよい。
【0020】
駆動伝達軸4は、第二軸ともいい、駆動部3の駆動軸3bと平行に配置され、基部2に対して軸受10を介して回転可能に設けられる。駆動伝達軸4は、その回転が伝達される被駆動部12が取り付けられる。被駆動部12は、例えば、車輪や、歯車などがある。
【0021】
固定プーリ5は、第一軸である駆動軸3bに固定される。固定プーリ5は、駆動軸3bと同心の円形状に形成される。従って、固定プーリ5は、駆動部3で駆動される駆動軸3bの回転に伴って回転する。固定プーリ5は、周方向に連続するV字形状の溝5aを有する。
【0022】
可変プーリ6は、駆動伝達軸4に設けられる。可変プーリ6は、駆動伝達軸4と同心の円形状に形成される。可変プーリ6は、1対の可動プーリ片6a,6bによって構成される。各可動プーリ片6a,6bは、駆動伝達軸4が延在する軸方向で対向して設けられ、対向する相互によってV字形状の溝6cを形成する。
【0023】
可変プーリ6の各可動プーリ片6a,6bは、駆動伝達軸4の軸方向で相互に接近離隔移動が可能に設けられる。具体的に、駆動伝達軸4は、
図3に示すように、正ネジ4aと逆ネジ4bとが軸方向に並んで形成される。正ネジ4aおよび逆ネジ4bは、断面が台形状の台形ネジとして形成される。各可動プーリ片6a,6bは、
図2および
図5に示すように、一方の可動プーリ片6aに雌ネジ6aaが形成されて正ネジ4aに螺合し、他方の可動プーリ片6bに雌ネジ6baが形成されて逆ネジ4bに螺合して設けられる。従って、可変プーリ6は、駆動伝達軸4と各可動プーリ片6a,6bとが相対的に回転し、当該回転方向が正逆異なることで、
図1および
図2、または
図4および
図5に示すように、各可動プーリ片6a,6bが接近移動または離隔移動する。これにより、可変プーリ6は、V字形状の溝6cが軸方向で近づいて狭まる、または軸方向で遠ざかって広がる。なお、また、正ネジ4aおよび逆ネジ4bの相反する軸方向の端部にフランジ状のストッパ4cが形成されており、各可動プーリ片6a,6bは、最も離隔した状態でそれぞれストッパ4cに当接してネジからの脱落を防止される。また、正ネジ4aおよび逆ネジ4bの境目に軸方向に若干の隙間4dが形成されており、各可動プーリ片6a,6bは、互いに接近した状態でいずれかが軸方向に偏った場合でも隙間4dによって他側のネジに干渉することが防止される。この隙間4dに代えて正ネジ4aおよび逆ネジ4bの境目にストッパ4cと同様のフランジ状のストッパを設けて他側のネジに干渉することを防止してもよい。
【0024】
環状ベルト7は、無端状(リング状)に形成され、固定プーリ5および可変プーリ6に掛け回される。環状ベルト7は、
図2および
図5に示すように、断面が略二等辺三角形状に形成され、固定プーリ5および可変プーリ6におけるV字形状の溝5a,6cに嵌る。環状ベルト7は、可変プーリ6の各可動プーリ片6a,6bが接近移動または離隔移動した場合、断面略二等辺三角形状の二等辺の各傾斜面が、V字形状の溝6cの両斜面に当接して可変プーリ6の溝6cに嵌る。従って、環状ベルト7は、固定プーリ5が駆動軸3bの回転に伴って回転することで可変プーリ6に回転を伝達する。
【0025】
制動部8は、第二軸である駆動伝達軸4の回転を許容または停止する。制動部8は、いわゆるブレーキ装置であり、図では簡略化しているが、例えば、油圧や空気圧で作動するディスクブレーキや、磁力によって作動する電磁ブレーキがある。
【0026】
支持機構9は、固定プーリ5を支持する。支持機構9は、実施形態では固定プーリ5を伴って駆動部3を支持する。支持機構9は、固定部9aと、スライド支持部9bと、スライダ9cと、移動部材9dと、付勢部材9eと、を含む。固定部9aは、駆動軸3bが突出する基部2の板面に固定される。固定部9aは、上下方向で対向して配置される。スライド支持部9bは、上下方向に延びる棒状部材であり、対向する固定部9aに上下端が固定される。スライダ9cは、スライド支持部9bに取り付けられ、スライド支持部9bの延びる方向に沿って上下移動が可能に設けられる。これら、固定部9a、スライド支持部9b、およびスライダ9cは、駆動軸3bを間において左右方向(矢印A方向に直交する方向)にそれぞれ設けられる。移動部材9dは、各スライダ9cが固定される。移動部材9dは、固定部9aが設けられた基部2の反対側の板面に沿う板状に形成され、駆動軸3b(実施形態では駆動部3の駆動本体3a)が取り付けられる。即ち、支持機構9は、駆動軸3b(駆動部3)を伴う移動部材9dが、各スライダ9cを介してスライド支持部9bに沿って上下方向に移動可能に設けられる。付勢部材9eは、スライド支持部9bに巻き付けられた圧縮コイルバネとして構成され、スライダ9cを上方に付勢する。この構成により、支持機構9は、駆動軸3bに固定された固定プーリ5を常に上方に付勢して支持し、環状ベルト7に張力を付与する。なお、上記支持機構9を構成するにあたり、基部2は、駆動軸3bを貫通させつつ駆動軸3bの移動を許容する孔部2aと、スライダ9cを貫通させつつスライダ9cの移動を許容する孔部2bと、移動部材9dの移動を案内する凹部2cと、が形成される。なお、実施形態の支持機構9は、駆動軸3bに固定された固定プーリ5を常に上方に付勢するため、駆動軸3bを有する駆動部3の駆動本体3aを上下に移動可能に支持しているがこの限りではない。例えば、支持機構9によって常に上方に付勢される駆動軸3bが上下方向に移動しても、回転が伝達できるように駆動部3が構成されていればよい。
【0027】
上述した変速機1において、制動部8によって第二軸である駆動伝達軸4の回転が停止された状態にある場合を説明する。この場合、変速機1は、駆動部3によって第一軸である駆動軸3bが回転され、固定プーリ5から環状ベルト7を介して可変プーリ6に回転が伝達される。すると、変速機1は、駆動伝達軸4が停止されているため可変プーリ6のみが回転するため、駆動伝達軸4の正ネジ4aに螺合する一方の可動プーリ片6aと、逆ネジ4bに螺合する他方の可動プーリ片6bとが、駆動部3による可変プーリ6の回転方向に応じて接近または離隔する。これにより、変速機1は、可変プーリ6に対する環状ベルト7の巻き径が変化することとなる。具体的に、変速機1は、
図2に示すように、各可動プーリ片6a,6bが接近した場合、環状ベルト7の断面略二等辺三角形状の二等辺の各傾斜面が各可動プーリ片6a,6bのV字形状の溝6cの両斜面によって径方向外側に押し出されて可変プーリ6の半径方向外側で環状ベルト7が掛け回されることとなり、比較的大きな巻き径Raになる。また、変速機1は、
図5に示すように、各可動プーリ片6a,6bが離隔した場合、環状ベルト7の断面略二等辺三角形状の二等辺の各傾斜面が各可動プーリ片6a,6bのV字形状の溝6cの両斜面に案内されつつ張力によって径方向内側に縮径して可変プーリ6の半径方向内側で環状ベルト7が掛け回されることとなり、比較的小さな巻き径Rbになる。
【0028】
一方、上述した変速機1において、制動部8によって第二軸である駆動伝達軸4の回転が許容された状態にある場合を説明する。この場合、変速機1は、駆動部3によって第一軸である駆動軸3bが回転され、固定プーリ5から環状ベルト7を介して可変プーリ6に回転が伝達される。すると、変速機1は、駆動伝達軸4が回転を許容されているため、可変プーリ6の回転が駆動伝達軸4に伝達される。このとき、可変プーリ6は、一方の可動プーリ片6aと正ネジ4aとの螺合、および他方の可動プーリ片6bと逆ネジ4bとの螺合の摩擦力によってセルフロック状態となり各可動プーリ片6a,6bの接近や離隔の動作が生じることを阻止される。このセルフロックは、正ネジ4aおよび逆ネジ4bを台形ネジとして構成することで、摩擦力を増大させてより顕著に得ることができる。このように、変速機1は、セルフロックによって、上述したように変化した可変プーリ6への環状ベルト7の巻き径のままで駆動伝達軸4に可変プーリ6の回転が伝達される。具体的に、変速機1は、
図2に示すように、環状ベルト7が比較的大きな巻き径Raの場合、駆動伝達軸4に比較的回転数が少なくトルクの大きい回転が伝達される。一方、変速機1は、
図5に示すように、環状ベルト7が比較的小さな巻き径Rbの場合、駆動伝達軸4に比較的回転数が多くトルクの小さい回転が伝達される。また、変速機1は、環状ベルト7の巻き径を
図2と
図5の間の任意の大きさとして上記の間の任意の回転数およびトルクの回転を駆動伝達軸4に伝達することができる。
【0029】
上述した変速機1は、一方の可動プーリ片6aと正ネジ4aとの螺合、および他方の可動プーリ片6bと逆ネジ4bとの螺合によって可変機構11が構成される。可変機構11は、上述したように、制動部8によって駆動伝達軸4の回転が停止されている状態で、駆動軸3bの回転が環状ベルト7を介して可変プーリ6に伝達された場合に各可動プーリ片6a、6bを接近または離隔する一方、制動部8によって駆動伝達軸4の回転が許容されている状態で、駆動軸3bの回転を環状ベルト7および可変プーリ6を介して駆動伝達軸4に伝達する。ここで、被駆動部12側に外力などによって生じた負荷が駆動伝達軸4に作用する場合があり、この負荷よりも上記のセルフロックを生じさせる螺合の摩擦力が大きくなるように台形ネジを採用することで、駆動伝達軸4の回転を止めることなく被駆動部12側に回転を伝達させることができる。
【0030】
また、上述した変速機1は、
図5に示すように、環状ベルト7が比較的小さい巻き径Rbに近づくにつれ、固定プーリ5および可変プーリ6へ掛け回される環状ベルト7の張力に緩みが生じる可能性がある。これに対し、実施形態の変速機1は、支持機構9によって駆動軸3bに固定された固定プーリ5を常に上方に付勢して支持し、環状ベルト7に張力を付与することから、環状ベルト7が緩む事態を防ぎ、駆動伝達軸4への回転の伝達を確実に行うことができる。
【0031】
なお、実施形態の変速機1では、
図2および
図5に示すように、駆動伝達軸4の回転が伝達される被駆動部12が接続された手前側であって、実施形態では駆動伝達軸4における制動部8と被駆動部12との間に、動力を伝達または遮断するクラッチ13を設けることが好ましい。クラッチ13を含むことで変速機1は、クラッチ13で被駆動部12への動力を遮断しているときに、制動部8によって駆動伝達軸4の回転を停止させれば、被駆動部12の動作を止めることなく、可変プーリ6を変化させることができる。
【0032】
このように、実施形態の変速機1は、回転可能に設けられた駆動軸(第一軸)3bと、駆動軸3bと平行に配置されて回転可能に設けられた駆動伝達軸(第二軸)4と、駆動軸3bに固定された固定プーリ5と、駆動伝達軸4に設けられて軸方向で接近離隔移動が可能に設けられた1対の可動プーリ片6a,6bからなる可変プーリ6と、固定プーリ5および可変プーリ6に掛け回された環状ベルト7と、駆動軸3bを回転駆動する駆動部3と、駆動伝達軸4の回転を許容または停止する制動部8と、制動部8によって駆動伝達軸4の回転が停止されている状態で、駆動軸3bの回転が環状ベルト7を介して可変プーリ6に伝達された場合に各可動プーリ片6a、6bを接近または離隔する一方、制動部8によって駆動伝達軸4の回転が許容されている状態で、駆動軸3bの回転を環状ベルト7および可変プーリ6を介して駆動伝達軸4に伝達する可変機構11と、を含む。
【0033】
従って、実施形態の変速機1によれば、変速機1側における変速の駆動源を駆動部3とし、駆動伝達軸4の回転が伝達される被駆動側である被駆動部12の駆動源を駆動部3とすることができ、変速機1側と被駆動部12側とで駆動源を共用することができる。この結果、実施形態の変速機1によれば、変速機1側と被駆動部12側とを合わせた装置全体の小型化を図れる。
【0034】
また、実施形態の変速機1では、可変機構11は、駆動伝達軸4に正ネジ4aと逆ネジ4bとが軸方向に並んで形成され、可変プーリ6の一方の可動プーリ片6aが正ネジ4aに螺合し、他方の可動プーリ片6bが逆ネジ4bに螺合してなる。従って、実施形態の変速機1は、上述した可変プーリ6の変化を適宜実施できる。
【0035】
また、実施形態の変速機1では、正ネジ4aおよび逆ネジ4bが台形ネジで形成される。従って、実施形態の変速機1は、台形ネジの適用によって、制動部8によって駆動伝達軸4の回転が許容され駆動伝達軸4が回転する場合に、摩擦力によるセルフロックによって各可動プーリ片6a、6bの接近離隔移動を抑止しつつ、駆動伝達軸4に回転を確実に伝達できる。
【0036】
また、実施形態の変速機1では、環状ベルト7に張力を付与する支持機構9をさらに含む。従って、実施形態の変速機1は、可変プーリ6の変化に伴って環状ベルト7が緩む事態を防ぎ、駆動伝達軸4への回転の伝達を確実に行うことができる。
【符号の説明】
【0037】
1 変速機
3 駆動部
3b 駆動軸(第一軸)
4 駆動伝達軸(第二軸)
4a 正ネジ
4b 逆ネジ
5 固定プーリ
6 可変プーリ
6a,6b 可動プーリ片
7 環状ベルト
8 制動部
11 可変機構