(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023105857
(43)【公開日】2023-08-01
(54)【発明の名称】橋梁防護板
(51)【国際特許分類】
E01D 19/08 20060101AFI20230725BHJP
E01D 22/00 20060101ALI20230725BHJP
E01F 8/00 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
E01D19/08
E01D22/00 A
E01F8/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022006847
(22)【出願日】2022-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】500538715
【氏名又は名称】日軽エンジニアリング株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】508036743
【氏名又は名称】株式会社横河ブリッジ
(74)【代理人】
【識別番号】100096644
【弁理士】
【氏名又は名称】中本 菊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100083998
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 丈夫
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 圭介
(72)【発明者】
【氏名】冨岡 仁計
(72)【発明者】
【氏名】永田 考
(72)【発明者】
【氏名】三木 英二
【テーマコード(参考)】
2D001
2D059
【Fターム(参考)】
2D001AA01
2D001BA03
2D001BB01
2D001CB02
2D059AA05
2D059EE02
2D059GG39
(57)【要約】
【課題】高強度と吸音材の交換容易性を両立させた状態で吸音材を配置させた橋梁防護板を提供する。
【解決手段】少なくとも下面が平坦状のアルミニウム製押出形材にて形成される防護板基材10を橋梁の桁間に当該桁の長手方向と直角に配置すると共に、防護板基材10の幅方向端部が互いに連結された状態で橋梁の桁間に配置される橋梁防護板1において、防護板基材10の下面12に長手方向に沿って設けられた係合凹凸条17に係合された状態で固定される筐体20を具備する。筐体20は、該筐体20の下面に複数の空気孔24を有すると共に、該筐体20の内部に吸音材30の収納部20aを具備する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも下面が平坦状のアルミニウム製押出形材にて形成される防護板基材を橋梁の桁間に当該桁の長手方向と直角に配置すると共に、前記防護板基材の幅方向端部が互いに連結された状態で前記橋梁の前記桁間に配置される橋梁防護板であって、
前記防護板基材の下面に長手方向に沿って設けられた係合凹凸条に係合された状態で固定される筐体を具備し、
前記筐体は、該筐体の下面に複数の空気孔を有すると共に、該筐体の内部に吸音材の収納部を具備している、
ことを特徴とする橋梁防護板。
【請求項2】
請求項1に記載の橋梁防護板において、
前記筐体は、前記防護板基材の下面に係合された状態で固定される一対の上部材と、前記上部材の下端に係合される一対の中間枠材と、前記中間枠材の下端に係合され、前記吸音材を載置する下面材とからなり、前記下面材に前記複数の空気孔が設けられている、ことを特徴とする橋梁防護板。
【請求項3】
請求項2に記載の橋梁防護板において、
前記上部材は、前記筐体の側壁を形成している、ことを特徴とする橋梁防護板。
【請求項4】
請求項2に記載の橋梁防護板において、
前記筐体は、該筐体の小口を塞ぐ小口蓋材と、前記上部材及び中間枠材と前記小口蓋材の接合部を塞ぐコーナー材とを更に具備し、前記上部材及び前記中間枠材はアルミニウム製押出形材にて形成され、前記上部材及び前記中間枠材のうちの少なくとも一方には、長手方向に沿ってビスポケットが設けられ、前記コーナー材は、前記上部材及び前記中間枠材と前記小口蓋材間の隙間を塞ぐ外側片と、前記外側片に対して直交方向に略クランク状に延在し、前記ビスポケットにねじ部材にて固定される第1の固定片及び締結部材にて前記ねじ部材の頭部を覆う前記小口蓋材を固定する第2の固定片とを有する、ことを特徴とする橋梁防護板。
【請求項5】
請求項2に記載の橋梁防護板において、
前記下面材は、該下面材の幅方向の端部に、前記中間枠材の下端部に長手方向に沿って設けられた狭隘開口溝に対して摺動のみ可能な係合突部を有すると共に、前記中間枠材に係脱可能に形成されている、ことを特徴とする橋梁防護板。
【請求項6】
請求項2又は5に記載の橋梁防護板において、
前記下面材は、並行状に配置された複数の肉厚部と、隣接する前記肉厚部同士を長手方向に連結すると共に、千鳥状配置に空気孔が形成される肉薄部とを有するアルミニウム製亀甲模様面格子部材にて形成されている、ことを特徴とする橋梁防護板。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の橋梁防護板において、
前記防護板基材の幅方向の一端に凸状段部が形成され、幅方向の他端に凹状段部が形成され、前記凹状段部に前記凸状段部を載置した状態で、連結ねじにて連結される、ことを特徴とする橋梁防護板。
【請求項8】
少なくとも下面が平坦状のアルミニウム製押出形材にて形成される防護板基材を橋梁の桁に固定された吊り部材の下端に前記桁の長手方向に沿って固定された補助桁と直角に配置すると共に、前記防護板基材の幅方向端部が互いに連結された状態で前記橋梁の前記桁間に配置される橋梁防護板であって、
前記防護板基材の下面に長手方向に沿って設けられた係合凹凸条に係合された状態で固定される筐体を具備し、
前記筐体は、該筐体の下面に複数の空気孔を有すると共に、該筐体の内部に吸音材の収納部を具備している、
ことを特徴とする橋梁防護板。
【請求項9】
請求項8に記載の橋梁防護板において、
前記吊り部材の上端は前記桁の高さ方向中間に配置されたブラケットにより固定された水平支持部材により固定されている、ことを特徴とする橋梁防護板。
【請求項10】
請求項8に記載の橋梁防護板において、
前記防護板基材は、前記補助桁の下フランジに配置された状態で支持機構によって固定され、前記支持機構は、前記補助桁の垂直基部に設けられた連結部と、前記連結部と前記防護板基材とを連結する支持部材とで構成され、前記支持部材は、前記連結部及び前記防護板基材の連結状態において、前記防護板基材を下方に押圧すべく弾性変形可能に形成されている、ことを特徴とする橋梁防護板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、橋梁の桁間に配置される橋梁防護板に関するもので、更に詳細には、吸音機能を備えた橋梁防護板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、道路や歩行者用に設けられた橋梁の下部は、長年にわたり海水等に由来する飛来塩分や排気ガス等の腐食成分に晒されることとなる。これが起因にて、鋼製の橋梁の桁間の腐食が問題となっている。
【0003】
この問題を解決するために、特許文献1にある橋梁の新設、既設を問わず橋梁下部の桁間に防護板を配置する技術が提案されている。
【0004】
ところで、この種の防護板は橋梁の桁間の腐食防止や点検作業者の歩行の安全性のための強度を有する以外に、橋梁下からの騒音を吸収する吸音板としての機能も求められている。これらについて特許文献2,3には、壁面や天井面に吸音材を配置する技術が開示されている。
【0005】
特許文献2には、多孔板からなる表面板、背面板及び側板からなる扁平箱体内に間隔を形成して吸音材を装填した吸音材が開示されている。また、特許文献3には、躯体側に固定されるパネル材と、一対の側壁と表壁を有する共鳴器本体材とを備え、パネル材と共鳴器本体材とで形成された内部空間を区画する隔壁部により区画されたスペースのうちの少なくとも1つが、ヘルムホルツ共鳴器として機能する吸音構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6124403号公報
【特許文献2】特開2001-142467号公報
【特許文献3】特開2018-87481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、橋梁防護板に配置される吸音材は落下を防ぐため高い強度が要求される。また、吸音材は経年劣化等により交換する必要があり、吸音材の交換が容易であることも求められており、特許文献2,3に開示されている技術ではそれぞれ強度や交換容易性に懸念がある。
【0008】
この発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、高強度と吸音材の交換容易性を両立させた状態で吸音材を配置させた橋梁防護板を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を達成するために、この発明は、少なくとも下面が平坦状のアルミニウム製押出形材にて形成される防護板基材を橋梁の桁間に当該桁の長手方向と直角に配置すると共に、前記防護板基材の幅方向端部が互いに連結された状態で前記橋梁の前記桁間に配置される橋梁防護板であって、前記防護板基材の下面に長手方向に沿って設けられた係合凹凸条に係合された状態で固定される筐体を具備し、前記筐体は、該筐体の下面に複数の空気孔を有すると共に、該筐体の内部に吸音材の収納部を具備している、ことを特徴とする(請求項1)。ここで、アルミニウムとは、アルミニウム合金を含む意味である。
【0010】
このように構成することにより、吸音材を収納する筐体を橋梁の桁間に配置される防護板基材の下面に設けられた係合凹凸条に係合された状態で固定することができる。また、防護板基材同士の連結を解除して、防護板基材と吸音材を収納した筐体とからなる特定のユニット1つのみを交換することができる。
【0011】
この発明において、前記筐体は、前記防護板基材の下面に係合された状態で固定される一対の上部材と、前記上部材の下端に係合される一対の中間枠材と、前記中間枠材の下端に係合され、前記吸音材を載置する下面材とからなり、前記下面材に前記複数の空気孔が設けられているのが好ましい(請求項2)。この場合、前記上部材は、前記筐体の側壁を形成しているのが好ましい(請求項3)。
【0012】
このように構成することにより、防護板基材の下面に係合された状態で固定される上部材に中間枠材を係合させ、中間枠材の下端に下面材を係合させて、防護板基材の下面に吸音材を収納する筐体を配置することができる。
【0013】
また、この発明において、前記筐体は、該筐体の小口を塞ぐ小口蓋材と、前記上部材及び中間枠材と前記小口蓋材の接合部を塞ぐコーナー材とを更に具備し、前記上部材及び前記中間枠材はアルミニウム製押出形材にて形成され、前記上部材及び前記中間枠材のうちの少なくとも一方には、長手方向に沿ってビスポケットが設けられ、前記コーナー材は、前記上部材及び前記中間枠材と前記小口蓋材間の隙間を塞ぐ外側片と、前記外側片に対して直交方向に略クランク状に延在し、前記ビスポケットにねじ部材にて固定される第1の固定片及び締結部材にて前記ねじ部材の頭部を覆う前記小口蓋材を固定する第2の固定片とを有するのが好ましい(請求項4)。
【0014】
このように構成することにより、コーナー材を介して筐体の小口に小口蓋材を固定することができ、コーナー材によって上部材と中間枠材の係合部の長手方向端部側とねじ部材が表層に露出するのを防止することができる。
【0015】
また、この発明において、前記下面材は、該下面材の幅方向の端部に、前記中間枠材の下端部に長手方向に沿って設けられた狭隘開口溝に対して摺動のみ可能な係合突部を有すると共に、前記中間枠材に係脱可能に形成されているのが好ましい(請求項5)。
【0016】
このように構成することにより、下面材を中間枠材に設けられた狭隘開口溝に摺動させて取り付け、取り外すことができ、筐体の下部を開放させた状態で吸音材を収納することができる。また、下面材は中間枠材に対して摺動のみ可能に取り付けられているので、不用意に中間枠材から脱落する虞はない。
【0017】
また、この発明において、前記下面材は、複数の空気孔が設けられていれば多孔板やエキスパンドメタル等であっても差し支えないが、好ましくは並行状に配置された複数の肉厚部と、隣接する肉厚部同士を長手方向に連結すると共に、千鳥状配置に空気孔が形成される肉薄部とを有するアルミニウム製亀甲模様面格子部材にて形成されているがよい(請求項6)。
【0018】
このように構成することにより、均一な空気孔を有する下面材を容易に作製することができると共に、下面材に強度と適切な開口を持たせることができ、かつ肉厚部を介して中間枠材と下面材の係合を強固にすることができる。
【0019】
また、この発明において、前記防護板基材の幅方向の一端に凸状段部が形成され、幅方向の他端に凹状段部が形成され、前記凹状段部に前記凸状段部を載置した状態で、連結ねじにて連結されるのが好ましい(請求項7)。
【0020】
このように構成することにより、隣接する一方の防護板基材に形成された凹状段部に他方の防護板基材に形成された凸状段部を載置した状態で連結することで、防護板基材同士の連結を容易かつ確実にすることができる。
【0021】
また、この発明は、少なくとも下面が平坦状のアルミニウム製押出形材にて形成される防護板基材を橋梁の桁に固定された吊り部材の下端に前記桁の長手方向に沿って固定された補助桁と直角に配置すると共に、前記防護板基材の幅方向端部が互いに連結された状態で前記橋梁の前記桁間に配置される橋梁防護板であって、前記防護板基材の下面に長手方向に沿って設けられた係合凹凸条に係合された状態で固定される筐体を具備し、前記筐体は、該筐体の下面に複数の空気孔を有すると共に、該筐体の内部に吸音材の収納部を具備している、ことを特徴とする(請求項8)。
この場合、前記吊り部材の上端は前記桁の高さ方向中間に配置されたブラケットにより固定された水平支持部材により固定されているのが好ましい(請求項9)。
【0022】
このように構成することにより、橋梁の下部に十分な高さ空間を確保して防護板を配置することができ、吸音材を収納する筐体を橋梁の桁に固定された吊り部材の下端に固定された補助桁間に配置される防護板基材の下面に設けられた係合凹凸条に係合された状態で固定することができる。また、防護板基材同士の連結を解除して、防護板基材と吸音材を収納した筐体とからなる特定のユニット1つのみを交換することができる。
【0023】
この発明において、前記防護板基材は、前記補助桁の下フランジに配置された状態で支持機構によって固定され、前記支持機構は、前記補助桁の垂直基部に設けられた連結部と、前記連結部と前記防護板基材とを連結する支持部材とで構成され、前記支持部材は、前記連結部及び前記防護板基材の連結状態において、前記防護板基材を下方に押圧すべく弾性変形可能に形成されているのが好ましい(請求項10)。
【0024】
このように構成することにより、支持部材を防護板基材に固定すると共に、補助桁に連結することで、支持部材が弾性変形して、防護板基材を下方に押圧することができる。
【発明の効果】
【0025】
この発明によれば、前記のように構成されているので、以下のような顕著な効果が得られる。
【0026】
(1)請求項1~3に記載の発明によれば、吸音材を収納する筐体は橋梁の桁間に配置される防護板基材の下面に長手方向に沿って設けられた係合凹凸条に係合された状態で固定
することができ、また、防護板基材同士の連結を解除して、防護板基材と吸音材を収納した筐体とからなる特定のユニット1つのみを交換することができる。したがって、橋梁防護板を高強度にすると共に、吸音材の交換容易性を両立させることができる。
【0027】
(2)請求項4に記載の発明によれば、前記(1)に加えて、更にコーナー材によって上部材と中間枠材の係合部とねじ部材が表層に露出するのを防止することができると共に、ねじ部材の緩みを防止することができる。
【0028】
(3)請求項5に記載の発明によれば、下面材を中間枠材に設けられた狭隘開口溝に摺動させて取り付け、取り外すことができ、筐体の下部を開放させた状態で吸音材を収納することができるので、前記(1),(2)に加えて、更に吸音材の収納を容易にすることができる。また、下面材は中間枠材に対して摺動のみ可能に係合されているので、下面材が不用意に脱落する虞がなく、吸音材を安全に保持することができる。
【0029】
(4)請求項6に記載の発明によれば、前記(1),(3)に加えて、更に均一な空気孔を有する下面材を容易に作製することができると共に、下面材に強度と適切な開口を持たせることができ、かつ肉厚部を介して中間枠材と下面材の係合を強固にすることができる。
【0030】
(5)請求項7に記載の発明によれば、隣接する一方の防護板基材に形成された凹状段部に他方の防護板基材に形成された凸状段部を載置した状態で連結することができるので、前記(1)~(4)に加えて、更に防護板基材同士の連結を容易かつ確実にすることができる。
【0031】
(6)請求項8,9に記載の発明によれば、橋梁の下部に十分な高さ空間を確保して防護板を配置することができ、吸音材を収納する筐体は橋梁の桁に固定された吊り部材の下端に固定された補助桁間に配置される防護板基材の下面に長手方向に沿って設けられた係合凹凸条に係合された状態で固定することができる。また、防護板基材同士の連結を解除して、防護板基材と吸音材を収納した筐体とからなる特定のユニット1つのみを交換することができる。したがって、橋梁防護板を高強度にすると共に、吸音材の交換容易性を両立させることができる。
【0032】
(7)請求項10に記載の発明によれば、支持部材を防護板基材に固定すると共に、補助桁に連結することで、支持部材が弾性変形して、防護板基材を下方に押圧することができるので、前記(6)に加えて、更に防護板基材を安定して保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】この発明に係る橋梁防護板の第1実施形態の使用状態を示す概略側面図である。
【
図2】前記橋梁防護板の平面図(a)及び(a)のI部拡大図(b)である。
【
図3】前記橋梁防護板の側面図(a)及び(a)のII部拡大図(b)である。
【
図4】前記橋梁防護板の底面図(a)及び(a)のV部拡大図(b)である。
【
図5】
図3のIII-III線に沿う拡大矢視図である。
【
図6】
図5のVI部拡大図(a)、VII部拡大図(b)及びVIII部拡大図(c)である。
【
図7】
図3のIV-IV線に沿う拡大断面図である。
【
図9】この発明における筐体、小口蓋材及びコーナー材を示す分解斜視図である。
【
図10】前記橋梁防護板の取り付け、取り外し状態を示す概略側面図である。
【
図11】前記橋梁防護板の連結状態の一部を断面で示す側面図である。
【
図12】この発明に係る橋梁防護板の第2実施形態の使用状態を示す概略側面図である。
【
図15】
図14のXIII部の一部を断面で示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に、この発明を実施するための形態について、添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0035】
<第1実施形態>
この発明に係る橋梁防護板1(以下に防護板1という)は、橋梁2の桁3間に桁3の長手方向と直角に配置される少なくとも下面12が平坦状のアルミニウム製押出形材にて形成される防護板基材10と、防護板基材10の下面12に長手方向に沿って設けられた係合凹凸条17に係合された状態で固定される筐体20を具備する。筐体20は、該筐体20の下面に複数の空気孔24を有すると共に、内部に吸音材30の収納部20aを具備する。また、筐体20の長手方向の小口側にはコーナー材50を介して小口蓋材40が取り付けられている。
【0036】
防護板基材10は、中空部13を有する上面11及び下面12が平坦状に形成されており、幅方向の一端に形成された凸状段部15を、幅方向の他端に形成された凹状段部16に載置した状態で、連結部材例えば連結ねじ18によって連結され、防護板基材10の上面11及び下面12が同一平面状に形成されている。なお、防護板基材10の上面11に微小な高さの滑り止め用の凹凸条を設けてもよい。
【0037】
防護板基材10は、
図5及び
図6に示すように、上面11と下面12を連結する補強リブ14によって区画された矩形状の中空部13を有する一体成形された基材単体10aの幅方向の下面側に設けられた円弧状の凹凸嵌合部10b,10cを嵌合すると共に、上面側に設けられた下方段付き水平片10dと上方水平片10eをブラインドリベット80aにて固定してなる。このようにして、接合された複数(例えば4つ)の基材単体10aにて一体的に形成されている。ここでは、防護板基材10は4つの基材単体10aで形成されているが、基材単体10aの数は4以外の任意の数であってもよい。
【0038】
防護板基材10において、幅方向の一端に形成された凸状段部15は、上面から外方に延在する上部水平片15aと端部側壁15bと筐体20の側壁とで凸状に形成されている。なお、上部水平片15aには防護板基材10の幅方向に沿う長孔15cが設けられている。また、幅方向の他端に形成された凹状段部16は、下面から外方に延在する下部水平片16aと端部側壁16bと筐体20の側壁とで凹状に形成されている。
【0039】
また、防護板基材10の下面12における幅方向の両側には長手方向に沿って係合凹凸条17が設けられている。この係合凹凸条17に筐体20が係合された状態で、固定部材であるブラインドリベット80によって固定される。
【0040】
筐体20は、
図7ないし
図8Aに示すように、防護板基材10の下面12に係合された状態で固定される一対の上部材21と、上部材21の下端に係合される一対の中間枠材22と、中間枠材22の下端に係合される複数の空気孔24を有する下面材23とで構成されている。
【0041】
上部材21は、アルミニウム製押出形材にて形成されており、防護板基材10の下面12に固定される上部片21aと筐体20の側壁を形成する側片21bとが直角に形成され、上部片21aの上部には、防護板基材10に設けられた係合凹凸条17に係合する凹凸条21cが突設されている。また、側片21bの下端側には、外方に向かって開口する凹溝部21dの下端に係合凹凸条21eが設けられている。なお、側片21bの内方側には上部ビスポケット25が長手方向に沿って形成されている。
【0042】
このように形成される上部材21は、防護板基材10の係合凹凸条17に凹凸条21cが係合された状態で、固定部材であるブラインドリベット80によって防護板基材10の下面12に固定される。したがって、上部材21は防護板基材10に強固に固定される。
【0043】
中間枠材22は、アルミニウム製押出形材にて形成されており、上部には上部材21に設けられた凹溝部21d内に配置される係合片22aと係合片22aの下部に形成されて係合凹凸条21eに係合する凹凸条22bが形成されている。また、中間枠材22の下部側には筐体20の側壁を形成する中間側片22cが形成され、中間側片22cの下端部には狭隘開口溝22dが形成されている。なお、中間側片22cの内方側には下部ビスポケット25bが長手方向に沿って形成されている。
【0044】
このように形成される中間枠材22は、上部材21の係合凹凸条21eに凹凸条22bが係合され、係合片22aの外側に当接して凹溝部21d内に配置されるアルミニウム製押出形材にて形成される断面略L字型のスペーサ26によって保持された状態で、ブラインドリベット80bによって固定される。したがって、中間枠材22は上部材21に強固に連結される。
【0045】
下面材23は、並行状に配置された複数の肉厚部23aと、隣接する前記肉厚部23a同士を長手方向に連結すると共に、千鳥状配置に空気孔24が形成される肉薄部23bとを有するアルミニウム製亀甲模様面格子部材にて形成されている。
【0046】
このように形成される下面材23の幅方向の端部は断面略H字型の係合突部23cが形成されており、係合突部23cが中間枠材22の狭隘開口溝22dに摺動のみ可能に係合されている。したがって、下面材23は中間枠材22への取り付け、取り外しが容易であり、橋梁2の振動等によって不用意に脱落する虞がない。
【0047】
吸音材30は、例えばブロック状のポリエステル製部材にて形成されており、筐体20の小口側から収納部20a内に収納される。なお、吸音材30は必ずしもポリエステル製部材でなくてもよく、グラスファイバーやアルミニウム製形材からなるヘルムホルツ吸音器であってもよい。
【0048】
筐体20の小口を塞ぐ小口蓋材40は、
図4及び
図9に示すように、筐体20の小口側端部面とほぼ同じ大きさの小口蓋材本体41と、小口蓋材本体41の下端から小口蓋材本体41に対して直角に屈曲されて下面材23の端部下面を覆う折曲片42とが一体に形成されたアルミニウム製板材にて形成されている。小口蓋材40はコーナー材50を介して筐体20の小口に取り付けられる。
【0049】
コーナー材50は、アルミニウム製押出形材にて形成されており、
図4(b)及び
図9に示すように、筐体20を構成する上部材21及び中間枠材22と小口蓋材40間の隙間を塞ぐ外側片51と、外側片51に対して直交方向に略クランク状に延在し、上部材21及び中間枠材22に設けられたビスポケット25a,25bにねじ部材例えばタッピングねじ60にて固定される第1の固定片52及びコーナー材用の締結部材例えばブラインドリベット61にてタッピングねじ60の頭部を覆う小口蓋材40を固定する第2の固定片53とで形成されている。なお、第1の固定片52にはタッピングねじ60が貫通する貫通孔52aが設けられている。また、第2の固定片53にはブラインドリベット61が貫通する貫通孔53aが設けられている。ブラインドリベット61は小口蓋材本体41に設けられた貫通孔43と第2の固定片53に設けられた貫通孔53aを介して小口蓋材40をコーナー材50の第2の固定片53に固定する。
【0050】
なお、防護板基材10の長手方向の両端部の上面における幅方向の一端側には落下防止金具70がブラインドリベット71によって固定されている。落下防止金具70は、落下防止ワイヤーの通し枠として使用される。また、落下防止金具70と対向する幅方向の他端側には、ブラインドナット72が開口部を残して埋設されている。このブラインドナット72にはアイボルト73が着脱可能にねじ結合される。
【0051】
上記のように構成される防護板基材10は、
図1に示すように、桁3の下フランジ3aの上面に立設されたスタッドボルト4とナット5によって桁3間に固定される。なお、鋼製の桁3とアルミニウム製の防護板基材10との接触部に防食用の絶縁材(図示せず)が介在されている。これによって鋼とアルミニウムの自然電位差による腐食を防止することができる。
【0052】
防護板基材10同士の連結は、
図11に示すように、連結する一方の防護板基材10の幅方向の端部に形成された凸状段部15を、連結する他方の幅方向の防護板基材10の幅方向の端部に形成された凹状段部16に載置した状態、すなわち、凸状段部15の端部側壁15bと凹状段部16の端部側壁16bを当接すると共に、凸状段部15の上部水平片15aを連結する他方の防護板基材10の上面11に当接した状態で、上部水平片15aに設けられた長孔15cを介して凹状段部16の上面11に埋設されたブラインドナット72に連結ねじ18をねじ結合することによって連結する。
【0053】
防護板基材10を取り外す場合は、
図10に示すように、連結ねじ18の締結を解除した状態で、連結された一方の防護板基材10の幅方向の一端側を上方に持ち上げた状態で、連結された他方の防護板基材10を斜め上方に引き上げて取り外すことができる。この際、作業者は落下防止金具70とブラインドナット72にねじ結合されたアイボルト73を持って防護板基材10を取り外すことができる。このようにして、防護板基材10を取り外すことによって、防護板基材10と吸音材30を収納した筐体20とからなる特定のユニット1つのみを交換することができる。
【0054】
防護板基材10を取り付ける場合は、上記動作と逆の動作によって防護板基材10を取り付けることができる。すなわち、先に配置された一方の防護板基材10の幅方向の一端側を上方に持ち上げた状態で、連結する他方の防護板基材10を斜め上方から一方の防護板基材10の凸状段部15の下方側に差し込んで、凸状段部15に他方の防護板基材10の凹状段部16を係合させ、連結ねじ18をブラインドナット72にねじ結合して連結する。
【0055】
なお、上記実施形態では、筐体20を構成する上部材21と中間枠材22の双方にビスポケット25a,25bを設け、両ビスポケット25a,25bにタッピングねじ60をねじ結合してコーナー材50を固定する場合について説明したが、ビスポケット25a,25bは少なくとも上部材21と中間枠材22の一方に設けてもよい。
【0056】
<第2実施形態>
第1実施形態では、防護板基材10を橋梁2の桁3の下フランジ3aに載置してスタッドボルト4とナット5によって固定したが、第2実施形態では、後述する支持機構90を用いて防護板基材10を固定している。
【0057】
なお、第2実施形態においては、橋梁2の4本の桁3にそれぞれ固定されるブラケット6に水平支持部材7の一端が固定され、水平支持部材7の他端に固定される吊り部材8の下端部に補助桁3Aが固定されている。吊り部材8の下端部に固定される補助桁3A間に防護板基材10を配置することで、橋梁2の下部に十分な高さ空間を確保することができる。
【0058】
補助桁3Aは、吊り部材8に固定される垂直基部3bの下端に下フランジ3aが設けられ、垂直基部3bと、垂直基部3bの中間部に設けられる連結部91と、連結部91と防護板基材10とを連結する支持部材92とで支持機構90が構成されている。
【0059】
連結部91は、中空状に形成されており、垂直基部3bから両側に突出して設けられ、外方側に平面状の端面91aを有する。端面91aは上部から下部にかけて垂直基部3b側に傾斜している。連結部91の中空部に連結ボルト95の頭部95aが配置されて、連結ボルト95は連結部91の中空部から外方側に貫通するように配置され、連結ボルト95及びナット96を介して支持部材92が連結される。
【0060】
支持部材92は、防護板側連結部93と、桁側連結部94とを有する。防護板側連結部93は、防護板基材10に設けられたブラインドナット98にねじ結合する固定ボルト97によって防護板基材10に固定され、下フランジ3aとの間で防護板基材10を挟持する。桁側連結部94は、防護板側連結部93に対して上端が外方側すなわち補助桁3Aから離れる方向に折り曲げられた状態に設けられている。なお、桁側連結部94は、連結部91の端面91aに接触する傾斜平坦面94aを有する。また、桁側連結部94には、長孔94bが上下方向に開設されている。この長孔94bに連結ボルト95が遊貫する。また、桁側連結部94における防護板連結部91と交差する根元部分に凹部94cが設けられている。この凹部94cにより、桁側連結部94が根元部分を支点として弾性変形するようになっている。
【0061】
このように形成される支持部材92は、防護板側連結部93が防護板基材10に設けられたブラインドナット98にねじ結合する固定ボルト97によって防護板基材10に固定され、桁側連結部94が傾斜平坦面94aを連結部91の端面91aに接触させた状態で、連結ボルト95及びナット96を介して連結部91に連結される。この状態において、桁側連結部94は、根元部分を支点として外方側すなわち補助桁3Aから離れる方向に弾性変形した状態となっている。この桁側連結部94の弾性変形によって生じた弾性力は、防護板基材10を下方に押圧する力となって防護板側連結部93に伝達される。これにより、防護板基材が安定して保持される。なお、鋼製の補助桁3Aとアルミニウム製の防護板基材10との接触部に防食用の絶縁材100が介在されている。これによって鋼とアルミニウムの自然電位差による腐食を防止することができる。
【0062】
第2実施形態において、防護板基材10を補助桁3Aから取り外す場合は、連結ボルト95とナット96との締結を解除すると共に、固定ボルト97とブラインドナット98の締結を解除する。なお、第2実施形態において、その他の部分は第1実施形態と同じであるので、同一部分には同一符号を付して説明は省略する。
【0063】
上記実施形態では、橋梁2の桁間に配置される防護板基材10は、橋梁2の桁3,補助桁3Aの下フランジ3aに載置されているが、防護板基材10を載置する場所は桁3,補助桁3Aに限らず、同様な形状の他の鋼材あるいはアルミニウム製形材によるフランジに載置するようにしてもよい。
【0064】
実施形態の橋梁防護板によれば、筐体20は防護板基材10の下面に長手方向に沿って設けられた係合凹凸条17に係合された状態で、ブラインドリベット80によって固定されるので、防護板基材10の下面に筐体20を強固に固定することができる。また、連結ねじ18の締結を解除して、防護板基材10同士の連結を解除することで、防護板基材10と吸音材30を収納した筐体20とからなる特定のユニット1つのみを交換することができる。したがって、橋梁防護板1を高強度にすると共に、吸音材30の交換容易性を両立させることができる。
【0065】
また、コーナー材50によって上部材21と中間枠材22の係合部の長手方向端部側とタッピングねじ60が表層に露出するのを防止することができると共に、タッピングねじ60の緩みを防止することができる。
【0066】
また、下面材23を中間枠材22に設けられた狭隘開口溝22dに摺動させて取り付け、取り外すことができ、筐体の下部を開放させた状態で吸音材を収納することができるので、更に吸音材30の収納を容易にすることができる。
【0067】
また、下面材23を並行状に配置された複数の肉厚部23aと、隣接する肉厚部23a同士を長手方向に連結すると共に、千鳥状配置に空気孔24が形成される肉薄部23bとを有するアルミニウム製亀甲模様面格子部材にて形成することにより、均一な空気孔24を有する下面材23を容易に作製することができると共に、下面材23に強度と適切な開口を持たせることができ、かつ肉厚部を介して中間枠材と下面材の係合を強固にすることができる。
【0068】
更に、隣接する一方の防護板基材10に形成された凹状段部16に他方の防護板基材10に形成された凸状段部15を載置した状態で連結ねじ18によって連結することができるので、防護板基材10同士の連結を容易かつ確実にすることができる。
【符号の説明】
【0069】
1…橋梁防護板、2…橋梁、3…桁、3A…補助桁、3a,3Aa…下フランジ、3b…垂直基部、4…スタッドボルト、5…ナット、6…ブラケット、7…水平支持部材、8…吊り部材、10…防護板基材、10a…基材単体、10b,10c…凹凸嵌合部、10d…下方段付き水平片、10e…上方水平片、11…上面、12…下面、13…中空部、14…補強リブ、15…凸状段部、15a…上部水平片、15b…端部側壁、15c…長孔、16…凹状段部、16a…下部水平片、16b…端部側壁、17…係合凹凸条、18…連結ねじ、20…筐体、20a…収納部、21…上部材、21a…上部片、21b…側片、21c…凹凸条、21d…凹溝部、21e…係合凹凸条、22…中間枠材、22a…係合片、22b…凹凸条、22c…中間側片、22d…狭隘開口溝、23…下面材、23a…肉厚部、23b…肉薄部、23c…係合突部、24…空気孔、25a,25b…ビスポケット、26…スペーサ、30…吸音材、40…小口蓋材、41…小口蓋材本体、42…折曲片、43…貫通孔、50…コーナー材、51…外側片、52…第1の固定片、52a…貫通孔、53a…貫通孔、53…第2の固定片、60…タッピングねじ(ねじ部材)、61…ブラインドリベット(締結部材)、70…落下防止金具、71…ブラインドリベット、72…ブラインドナット、73…アイボルト、80…ブラインドリベット、80a…ブラインドリベット、80b…ブラインドリベット、90…支持機構、91…連結部、91a…端面、92…支持部材、93…防護板側連結部、93a…傾斜平坦面、93b…長孔、93c…凹部、94…桁側連結部、95…連結ボルト、96…ナット、97…固定ボルト、98…ブラインドナット、100…絶縁材。