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特開2023-105862異常検知機及び異常検知機監視システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023105862
(43)【公開日】2023-08-01
(54)【発明の名称】異常検知機及び異常検知機監視システム
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20230725BHJP
   G08B 17/00 20060101ALI20230725BHJP
   G08B 17/10 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
G05B23/02 V
G08B17/00 M
G08B17/10 G
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022006856
(22)【出願日】2022-01-20
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000146238
【氏名又は名称】株式会社マツシマメジャテック
(74)【代理人】
【識別番号】100104776
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100119194
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 明夫
(72)【発明者】
【氏名】重枝 季伸
(72)【発明者】
【氏名】岩本 隆志
(72)【発明者】
【氏名】村井 則夫
【テーマコード(参考)】
3C223
5C085
5G405
【Fターム(参考)】
3C223AA04
3C223AA05
3C223BA01
3C223EA04
3C223FF06
3C223FF35
3C223FF45
3C223FF47
3C223GG01
3C223HH29
5C085AA01
5C085AA03
5C085AA07
5C085AA18
5C085AB09
5C085CA04
5C085CA18
5G405AA01
5G405AA06
5G405AB01
5G405AB03
5G405AB08
5G405AC07
5G405CA05
5G405CA18
5G405CA44
(57)【要約】
【課題】複数のセンサを備えた異常検知機及び複数の異常検知機を監視する異常検知機監視システムを提供する。
【解決手段】複数のセンサと、複数のセンサを制御するとともに、複数のセンサから情報を取得する制御部と、を備えてなる、所定の電気機器に設置する異常検知機であって、制御部は、複数のセンサが取得した情報に基づいて急変状態を検出する急変検出部と、急変状態を検出した後に、警報設定値を超えるかどうかを判定する判定部と、判定部が、複数のセンサのうち少なくとも1つのセンサが取得した情報が警報設定値を超えると判定した場合に、所定の電気機器内において異常が発生していることを示す異常信号を発する信号発生部とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセンサと、
前記複数のセンサを制御するとともに、前記複数のセンサから情報を取得する制御部と、を備えてなる、所定の電気機器に設置する異常検知機であって、
前記制御部は、前記複数のセンサが取得した情報に基づいて急変状態を検出する急変検出部と、
該急変検出部が急変状態を検出した後に、警報設定値を超えているかどうかを判定する判定部と、
該判定部が、前記複数のセンサのうち少なくとも1つのセンサが取得した情報が前記警報設定値を超えていると判定した場合に、前記所定の電気機器内において異常が発生していることを示す異常信号を発する信号発生部と、
を備えることを特徴とする異常検知機。
【請求項2】
前記複数のセンサが、臭気に関する情報を取得する臭気センサと、
二酸化炭素に関する情報を取得する二酸化炭素センサと、
温度及び/又は湿度に関する情報を取得する温湿度センサと、
であることを特徴とする請求項1に記載の異常検知機。
【請求項3】
前記複数のセンサのうちの1つが臭気センサであって、
該臭気センサが取得した前記所定の電気機器内の異臭ガスに関する情報が警報設定値を超えているときに、前記信号発生部が異常信号を発する
ことを特徴とする請求項1に記載の異常検知機。
【請求項4】
前記複数のセンサのうちの1つが二酸化炭素センサであって、
該二酸化炭素センサが取得した前記所定の電気機器内の二酸化炭素ガスに関する情報が警報設定値を超えているときに、前記信号発生部が異常信号を発する
ことを特徴とする請求項1に記載の異常検知機。
【請求項5】
前記複数のセンサのうちの1つが温湿度センサであって、
該温湿度センサが取得した前記所定の電気機器内の温度又は湿度に関する情報が警報設定値を超えているときに、前記信号発生部が異常信号を発する
ことを特徴とする請求項1に記載の異常検知機。
【請求項6】
前記温湿度センサが取得する湿度に関する情報が第一の値よりも低いとき、又は前記湿度に関する情報が前記第一の値よりも湿度の値が高い第二の値よりも高いとき、前記制御部は、該制御部が前記複数のセンサから情報を取得する周期を短く設定する
ことを特徴とする請求項2又は請求項5のいずれかに記載の異常検知機。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の異常検知機が複数存在し、複数存在する前記異常検知機を監視する監視装置を備える異常検知機監視システムであって、
前記監視装置は、該監視装置と、前記複数の異常検知機との間でネットワークにより接続されており、前記複数の異常検知機のいずれかから異常信号が発せられたときに、該異常信号を受信する受信部を備える
ことを特徴とする異常検知機監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のセンサを備えた異常検知機及び複数の異常検知機を監視する異常検知機監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
発電所や変電所、製造工場等において機械を稼働させるための電気設備において、機械を制御するために数多くの電気機器(たとえば、制御盤、特高・高圧盤、配電盤など)が稼働している。電気機器には様々な材質の絶縁物が使用され、絶縁物の異常過熱によって発生するガスを早期に検知する技術が開示されている(たとえば、特許文献1)。
【0003】
また、センサを用いて正常時の濃度を測定し、一定期間の平均値と標準偏差を求め、求めた標準偏差で上限値と下限値をさらに求め、測定した濃度が上下限値内に属するか否かにより異常を判定する技術が開示されている(たとえば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-98085号公報
【特許文献2】特開2021-15575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された技術では、絶縁物が異常過熱によってフェノール系有機物やイソシアヌル酸トリアリル等のガス成分が発生するが、発生したガスの成分を分析する装置や特定のガス成分を検出する検出器は高価であるため、多数の電気機器を有する製造業においては多大な設備投資が必要となり、企業の規模によっては高価な装置や機器を備えることは必ずしも現実的であるとは言えない。
【0006】
また、特許文献2に開示された技術では、臭気成分である揮発性有機化合物(たとえば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、総揮発性有機化合物など)を検出するセンサ(臭気センサ)から得られた信号に対して上限値と下限値を設定し、臭気センサが出力した信号が上限値と下限値の範囲に含まれているか否かで異常判定を行っている。しかしながら、たとえば、鉄鋼業、石油業や火力発電所の焼却炉を有するプラントにおいて様々なガスが発生しており、操業の状況や周囲の環境などによっては、電気機器の異常過熱が発生したとしても、臭気センサにより得られた信号が上限値と下限値の範囲に含まれているか否かだけによって正確に異常を判定することは困難である。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、複数のセンサを組み合わせ、複数のセンサのうち少なくとも1つのセンサから得られた情報が警報設定値を超えていた場合に、所定の電気機器内に異常が発生していると判定する異常検知機及び異常検知機監視システムを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、複数のセンサと、前記複数のセンサを制御するとともに、前記複数のセンサから情報を取得する制御部と、を備えてなる、所定の電気機器に設置する異常検知機であって、前記制御部は、前記複数のセンサが取得した情報に基づいて急変状態を検出する急変検出部と、該急変検出部が急変状態を検出した後に、警報設定値を超えているかどうかを判定する判定部と、該判定部が、前記複数のセンサのうち少なくとも1つのセンサが取得した情報が警報設定値を超えると判定した場合に、前記所定の電気機器内において異常が発生していることを示す異常信号を発する信号発生部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加えて、前記複数のセンサが、臭気に関する情報を取得する臭気センサと、二酸化炭素に関する情報を取得する二酸化炭素センサと、温度及び/又は湿度に関する情報を取得する温湿度センサと、であることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加えて、前記複数のセンサのうちの1つが臭気センサであって、該臭気センサが取得した前記所定の電気機器内の異臭ガスに関する情報が警報設定値を超えているときに、前記信号発生部が異常信号を発することを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加えて、前記複数のセンサのうちの1つが二酸化炭素センサであって、該二酸化炭素センサが取得した前記所定の電気機器内の二酸化炭素ガスに関する情報が警報設定値を超えているときに、前記信号発生部が異常信号を発することを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加えて、前記複数のセンサのうちの1つが温湿度センサであって、該温湿度センサが取得した前記所定の電気機器内の温度又は湿度に関する情報が警報設定値を超えているときに、前記信号発生部が異常信号を発することを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項2又は請求項5のいずれかに記載の構成に加えて、前記温湿度センサが取得する湿度に関する情報が第一の値よりも低いとき、又は前記湿度に関する情報が前記第一の値よりも湿度の値が高い第二の値よりも高いとき、前記制御部は、該制御部が複数のセンサから情報を取得する周期を短く設定することを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の異常検知機が複数存在し、複数存在する前記異常検知機を監視する監視装置を備える異常検知機監視システムであって、前記監視装置は、該監視装置と前記複数の異常検知機との間でネットワークにより接続されており、前記複数の異常検知機のいずれかから異常信号が発せられたときに、該異常信号を受信する受信部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、複数のセンサが用いられており、そのうち少なくとも1つのセンサが取得した情報に基づいて急変状態を検出し、急変状態を検出した後に、警報設定値を超えると判定したときに電気機器内で異常が発生していることを示すので、安価な装置であるにもかかわらず、高い精度で異常を検知することができる。
【0016】
請求項2の発明によれば、臭気センサが取得する臭気に関する情報と、二酸化炭素センサが取得する二酸化炭素に関する情報と、温湿度センサが取得する温度及び/又は湿度に関する情報とに基づいて、電気機器内で異常が発生しているかどうか判定するため、より高い精度で異常を検知することができる。
【0017】
請求項3の発明によれば、複数のセンサのうち臭気センサが取得する異臭ガスに関する情報が警報設定値を超えたときに異常信号を発するため、たとえば、絶縁物等の異常過熱による異臭ガスの検知により、早期に異常を検知することができる。
【0018】
請求項4の発明によれば、複数のセンサのうち二酸化炭素センサが取得する二酸化炭素ガスに関する情報が警報設定値を超えたときに異常信号を発するため、たとえば、小動物が電気機器内に侵入した際にも、早期に異常を検知することができる。
【0019】
請求項5の発明によれば、複数のセンサのうち温湿度センサが取得する温度及び/又は湿度に関する情報が警報設定値を超えたときに異常信号を発するため、たとえば、電気機器内で異常な高温になったり、湿度が異常に低く、又は異常に高くなった際に、早期に異常を検知することができる。
【0020】
請求項6の発明によれば、温湿度センサが取得する湿度に関する情報が異常に低くなったり、又は異常に高くなった場合に、制御部が複数のセンサから情報を取得する周期が短くなるため、精緻に異常の有無を判定することができる。
【0021】
請求項7の発明によれば、監視装置が複数の異常検知機を監視するため、監視装置によって異常検知機を集中管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】この発明の実施の形態に係る異常検知機1の構成を示すブロック図である。
図2】この発明の実施の形態に係る制御部2の構成を示すブロック図である。
図3】この発明の実施の形態に係る異常検知機1が取得した複数のセンサの検出値の波形の例を示す図である。
図4】この発明の実施の形態に係る異常検知監視システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
この発明の実施の形態について、図1から図4までを用いて説明する。
【0024】
図1は、この発明の実施の形態に係る異常検知機1の構成を示すブロック図である。
【0025】
図1に示すとおり、異常検知機1は、制御部2と、記憶部3と、出力部4と、複数のセンサとして、臭気センサ11と、二酸化炭素センサ12と、温湿度センサ13とを備える。
【0026】
異常検知機1は、鉄鋼業、石油業や火力発電所の焼却炉を有するプラントなどで使用されている制御盤や電源盤などの電気機器に取り付けられる。制御盤は、制御や遠隔操作を行うための種々の電気的な操作スイッチ、計器類を1か所に集めた機器である。電源盤は、電力を供給するための機器を組み込んだものであり、変圧器、交流器、遮断器、監視装置などが納められている。異常検知機1は、電気機器の内側でも、電気機器の外側でも、どちらにも取り付けられるよう磁石を備えていても良い。もっとも、異常検知機1は、複数のセンサ11、12、13が適切に情報を取得することができよう、電気機器の内側に取り付けられた方が好ましい。また、電気機器の内側が隔壁によって分かれている場合には、それぞれの空間に異常検知機1を取り付けることが好ましい。
【0027】
異常検知機1が電気機器の内側に取り付けられる場合には、たとえば、電気機器は、縦が2320mm程度、横が1600mm程度、奥行きが1600mm程度の大きさであり、異常検知機1は、縦が150mm程度、横が95mm程度、奥行きが40mm程度の大きさである。異常検知機1は、電気機器に取り付けることができる大きさであれば、異常検知機1の大きさは問わない。
【0028】
制御部2は、急変検出部21と、判定部22と、信号発生部23とを備えており、図2がこの発明の実施の形態に係る制御部2の構成を示すブロック図である。
【0029】
急変検出部21は、複数のセンサ11、12、13が取得した情報(臭気、二酸化炭素ガス、温度、湿度など)から変換された各数値が急変判定値を超えているかどうかを判定し、少なくとも1つの数値が急変判定値を超えている場合には、複数のセンサ11、12、13が取得した情報のうちいずれかに急変が生じていると判定し、急変状態として検出する。少なくとも1つの数値が急変判定値を超えているときが、電気機器内で急変が発生している状態である。
【0030】
判定部22は、急変検出部21によって急変状態が生じていると検出された後に、急変が生じた少なくとも1つの数値がさらに警報設定値を超えているときに、電気機器内で異常が発生していると判定する。急変状態として検出された後に、少なくとも1つの数値が警報設定値を超えているときが、電気機器内で異常が発生している状態である。詳細については、後述する。
【0031】
信号発生部23は、複数のセンサ11、12、13から取得した情報から変換された各数値に基づいて、急変検出部21が電気機器内に急変が生じているとして急変状態を検出した後に、判定部22が電気機器内に異常が発生していると判定したときに、異常信号を発する。信号発生部23が発した異常信号は、出力部4を通じて、伝送されることにより出力され、異常が発生していることを認識させることができる。
【0032】
制御部2は、複数のセンサ11、12、13の稼働を管理し制御するほか、複数のセンサ11、12、13から各種の情報を取得する。制御部2は、複数のセンサ11、12、13が取得した情報を数値に変換して、出力し、出力した数値に基づいて急変検出部21に急変状態の検出をさせ、急変検出部21が急変状態として検出した後に、判定部22に異常の判定を行わせる。制御部2は、正常時は予め設定された周期(たとえば20秒周期)で複数のセンサ11、12、13から取得した情報を数値に変換し、変換された数値のうちいずれかが上記のように急変状態と検出された場合に、変換された数値に基づいて判定部22に異常の判定を行わせる。たとえば、温湿度センサ13が取得した情報及び変換された数値から電気機器内の湿度が50%以下であることが判明した場合、電気機器内において部分放電の発生が懸念される。また、たとえば、温湿度センサ13が取得した情報及び変換された数値から電気機器内の湿度が80%以上であることが判明した場合、電気機器内に付着した粉塵の吸湿等による漏電を理由として局部的な加熱が懸念される。これらの場合には、異常が発生することが懸念されるため、より短い周期で監視することができるよう、制御部2は、複数のセンサ11、12、13から情報を取得する周期をたとえば1秒周期に短縮して、急変検出部21に急変状態を検出させる。複数のセンサ11、12、13から情報を取得する周期を短縮することによって、より精緻に判定部21に異常の判定を行わせることができる。
【0033】
急変判定値を定める方法について、説明をする。急変判定値は、急変検出部21が電気機器内において急激な変化が生じている状態かどうかを検出する際の基準となる値である。臭気や二酸化炭素、温度、湿度に関する急変判定値を定める際には、たとえば、正常時の値と異常時の値との間にどれくらいの乖離があるかなど、正常時の値を考慮して所定値を任意に定めることができる。具体的には、急変判定値は、図1に示す記憶部3に正常時の臭気、二酸化炭素、温度及び湿度に関する値を記憶させておき、記憶部3が記憶している正常時の値から一定の変化があった際の数値とすることができる。一定の変化があった際の数値は、電気機器が設置されている場所、環境、状況など、電気機器以外の外部の影響(たとえば、自動車などの排気ガス)の有無やその程度を考慮して、任意に定めることができる。
【0034】
なお、電気機器が備えられている施設の周りの環境、たとえば、施設の横に高速道路がある場合には、自動車などの排気ガスの影響も踏まえて、急変判定値を設定することが好ましい。
【0035】
記憶部3は、臭気センサ11が取得した臭気に関する情報と、二酸化炭素センサ12が取得した二酸化炭素に関する情報と、温湿度センサ13が取得した温度及び湿度に関する情報と、これらの情報が変換された数値を記憶する。記憶部3がこれらの情報及び数値を記憶している期間は、任意に定めることができる。
【0036】
出力部4は、記憶部3が記憶している臭気に関する情報と、二酸化炭素に関する情報と、温度及び湿度に関する情報と、これらの情報が変換された数値、信号発生部23が発する異常信号を出力する。出力部4が出力する方法としては、たとえば、これらの情報や数値を、SDカードやUSBメモリなどの記録媒体へ記憶させることにより出力したり、情報や数値を伝送させることにより出力をしても良い。
【0037】
次に、異常検知機1が複数のセンサ11、12、13を備えている理由について説明をする。電気機器には様々な材質で製造された絶縁物が用いられており、絶縁物にはそれぞれの耐熱温度が定められている。異常過熱によって耐熱温度を超えた場合、絶縁物は熱分解を起こし熱分解ガス(可燃性ガスを含む臭気ガス)が急激に増加し、熱分解ガスに着火又は引火すると燃焼状態となり、燃焼による熱によってさらに熱分解ガスが増加し燃焼状態が継続することになる。一方で、熱分解が進行した絶縁物は分解されない炭素が残る、いわゆる炭化状態となる。炭素の過熱による温度上昇や熱分解ガスの燃焼状態による熱で炭素の燃焼が始まり二酸化炭素ガスが急激に増加し、温度が上昇し、湿度は下降する。そこで、異常検知機1は、複数の情報を用いて正確に異常を検知することができるよう、複数のセンサとして臭気センサ11と、二酸化炭素センサ12と、温湿度センサ13とを備えている。
【0038】
臭気センサ11は、ケーブルや被覆が加熱したり延焼したりする際に発生する熱分解ガスを検知して熱分解ガスに関する情報を取得し、取得した情報を数値化するセンサである。本発明の実施の形態の例として、臭気センサ11は、電気機器に用いられている絶縁物の異常過熱により発生する熱分解ガスや臭気ガスを検知する。
【0039】
二酸化炭素センサ12は、二酸化炭素ガスを検出、計測し、検出、計測した二酸化炭素ガスの濃度を数値化するセンサである。本発明の実施の形態の例として、上記のとおり、二酸化炭素センサ12は、電気機器内におけるケーブルなどの燃焼や、火災の原因となり得る小動物(たとえば、ネズミ、猫、タヌキ、ハクビシンなど)の侵入(呼気)により発生する二酸化炭素を検知する。
【0040】
温湿度センサ13は、温度を計測する温度センサと、湿度を計測する湿度センサの両者の機能を備えたセンサである。本発明の実施の形態の例として、温湿度センサ13は、電気機器内における温度や湿度の変化を検知する。温湿度センサ13が取得する情報及び変換された数値は、上記のとおり電気機器内の監視の周期を短縮させるだけでなく、臭気センサ11と二酸化炭素センサ12が取得する情報に基づいて異常の判定をする際に、判定の精度向上に資する。なお、温湿度センサ13は、温度センサと湿度センサのように2つのセンサに分けても良い。
【0041】
臭気センサ11、二酸化炭素センサ12、温湿度センサ13は、適切に情報を取得することができる機能を有していれば、いずれも公知のセンサで良い。
【0042】
本発明の実施の形態の例として、電気機器の異常過熱によって臭気ガスや二酸化炭素ガスが急激に増加するという事象に注目し、正常時にあっても臭気ガスや二酸化炭素ガスは操業状態や周辺環境の変化によって変化をするが、その急変状態を検出して異臭ガスや二酸化炭素ガスの急変として抽出する。抽出した異臭ガスや二酸化炭素ガスの数値が予め設定した急変判定値を超えると、急変検出部21は、急変が発生しているとして急変状態として検出し、急変状態として検出された後に、さらに異臭ガスや二酸化炭素ガスの数値が増加して警報設定値を超えると、判定部22は、電気機器内に異常が発生していると判定し、信号発生部23は、異常信号を発する。なお、異臭ガスとは、たとえば、絶縁物の異常過熱によって発生する、揮発性ガス(フェノール系有機化合物等)や特定のガス(イソシアヌル酸トリアリル)が該当する。
【0043】
警報設定値の求め方について説明をする。警報設定値は、急変検出部21が急変状態を検出した後に、判定部22が電気機器内で異常が発生しているかどうか判定する際に基準となる値である。たとえば、[1]予め設定した診断周期で複数のセンサ11、12、13から情報を取得する。[2]t0(現在の時刻)でセンサ出力V0を取得するとともに、それ以前に一定期間(たとえば60秒間)の平均値Ave60を算出する。[3]平均値Ave60に対して取得したV0の偏差値DEVgas(=V0―Ave60)を算出して異臭ガス又は二酸化炭素ガスの急変として抽出する。[4]偏差値DEVgasが予め設定した急変検知判定の急変判定値Drefを超えた場合に、急変検知として急変状態を検出するとともに、その時の平均値Vave60をVaveT0として記憶する。[5]急変状態を検出してから、偏差値DEVgasの演算をDEVgas=V0-AveT0として、センサ出力V0がAveT0に戻るまで継続する。[6]急変状態を検出した後の新たな偏差値の演算(DEVgas=V0―AveT0)の結果が予め設定した異常判定の警報設定値ALrefを超えたときに、信号発生部23は、異常信号を発する。
【0044】
急変状態の検出と異常信号を発する具体的な例としては、上記のとおりであるが、急変状態を検出の急変判定値Dref及び異常判定の警報設定値ALrefは、対象となる電気機器の設置状況やその周辺環境に応じて設定するが、急変判定値Drefは4~10、警報設定値ALrefは10~20とすることが好ましい。
【0045】
なお、温湿度センサ13が取得した情報及び変換された数値から電気機器内の湿度が第一の値である50%以下である場合や、第二の値である80%以上である場合には、電気機器内に異常が発生することが懸念される。そのため、第一の値を下回っていたり、第二の値を上回っていると、電気機器内に異常が発生する懸念が強まり、場合によっては、すでに電気機器内に異常が発生している可能性がある。そこで、これらのような異常が発生している可能性が高い値を、信号発生部23が異常信号を発する警報設定値として定めてもよい。
【0046】
また、たとえば、予め設定された周期(たとえば20秒周期)で各センサ11、12、13が情報を取得し、取得した情報から変換された数値について同様に予め設定された時間(たとえば3分間)の平均値を求め、取得した各センサ11、12、13の情報から変換された数値と、平均値との偏差を求めることで異臭ガスの量を算出し、判定部22は、異臭ガスの量が警報設定値を超えていれば電気機器内で異常が発生していると判定し、信号発生部23は、判定部22の判定結果に基づいて、異常信号を発する。異臭ガスの量を用いて判定するのと同様に、二酸化炭素ガスや、温度、湿度についても、異常が発生しているかどうか判定することができる。たとえば、急激に二酸化炭素ガスが増加した場合には、電気機器内で燃焼が発生した可能性が高いことを把握することができるほか、上記のような小動物の呼気によって、小動物が電気機器内に侵入した可能性が高いことを把握することができ、電気機器内は異常状態であると判定することができる。また、たとえば、正常時と異なる温度や湿度の場合には、電気機器内で放電や漏電を起こしやすい環境になっていることを示すので、定常状態(正常な状態)ではなく、異常状態という判定をすることができる。
【0047】
なお、急変判定値を設定する際に考慮するのと同様に、電気機器が備えられている施設の周りの環境、たとえば、施設の横に高速道路がある場合には、自動車などの排気ガスの影響も踏まえて、警報設定値を設定することが好ましい。
【0048】
上記のとおり、各センサ11、12、13が取得する情報から変換された数値のいずれかが警報設定値を超えた際に、判定部22は、電気機器内に異常が発生していると判定をする。各センサ11、12、13が取得した情報から変換された、異臭ガス、二酸化炭素、温度又は湿度のいずれかの数値のみを用いて異常が発生しているかどうか判定をすることは可能であるが、より確実に電気機器内で異常が発生していることを判定することができるよう、異常検知機1は、複数のセンサ11、12、13が取得した情報の複数を組み合わせて、異常が発生したかどうか判定する。複数のセンサ11、12、13が取得した情報の複数を組み合わせて異常の有無を判定するため、より高い精度で、異常を検知することができる。
【0049】
複数のセンサ11、12、13によって検知される異臭ガスの量による異常判定について、説明する。臭気センサ11、二酸化炭素センサ12、温湿度センサ13がそれぞれ取得する情報と情報から変換された数値を組み合わせて、制御部2は、電気機器に用いられる絶縁物が異常過熱によって生じるガスが異臭ガスに該当するかどうか判断する。判定部22は、異常過熱によって生じたガスが異臭ガスに該当する場合には、異臭ガスの量によって、異常が発生しているかどうか判定する。
【0050】
以下、複数のセンサ11、12、13が取得した情報の複数を組み合わせて異常を検知する例について、図3を用いて説明をする。
【0051】
図3は、この発明の実施の形態に係る異常検知機1が取得した複数のセンサ11、12、13の検出値の波形の例を示す図である。図3の2つのグラフは、横軸が時間を示している。上段のグラフAは、縦軸に異臭ガスの量を示し、臭気センサ11が異臭ガスを抽出した際の波形を表している。下段のグラフBは、縦軸に急変検出部21が検出する急変状態に関する信号の波形を表している。2つのグラフに跨るように縦長の略長方形の点線で表している部分Cが電気機器に異常過熱が発生したことを表している。
【0052】
グラフAが示す臭気センサ11が異臭ガスを検知した際の波形は、定常状態(正常な状態)でも異臭ガスを検知して緩やかな波形になっているが、異常過熱が発生している点線部分Cにおいて、急激に上部に反応している。グラフAは、点線部分Cにおいて急激に異臭ガスが発生し、臭気センサ11が異臭ガスを検知したことを示している。
【0053】
グラフBが示す急変検出部21が急変状態を検出した際の波形は、定常状態(正常な状態)では横軸にほぼ重なっているが、グラフAと同様に、異常過熱が発生している点線部分Cにおいて、急激に上部に反応している。グラフBは、点線部分Cにおいて急変検出部21が複数のセンサ11、12、13のいずれかで急激な変化を検出したことを示している。グラフBを確認すると、点線部分Cにおいて何らかの急激な変化が発生したことがわかるが、グラフAの波形とグラフBの波形を組み合わせて判定することによって、点線部分Cにおいて何らかの異常が発生した確度が高まる。このように、複数のセンサ11、12、13が取得する情報を組み合わせて異常の有無を判定することによって、異常検知機1は、高感度で信頼性の高い異常検知をすることができる。なお、上記のとおり熱分解ガスに着火し燃焼すると、二酸化炭素濃度が高まるため、二酸化炭素センサ12が取得する二酸化炭素に関する情報の波形を用いることによって、異常検知機1による異常検知の信頼性や精度は、さらに高くなる。
【0054】
図4は、この発明の実施の形態に係る異常検知監視システムの構成を示す図である。図4に示すとおり、監視装置31は、ネットワーク32を介して、複数の異常検知機1と接続されている。上記と同様に、通常では異常過熱が発生することは稀であることから、予め設定した周期(たとえば20秒周期)でそれぞれの異常検知機1から各センサが取得した情報及び変換された数値を取得する。上記のように一定の湿度になった際には、部分放電が発生する懸念や、付着した粉塵の吸湿等による漏電により局部的な加熱の懸念があるため、異常検知機1から情報や数値を取得する周期(たとえば1秒周期)を短縮し、精緻に監視することができる。監視装置31が複数の異常検知機1から情報や数値を取得する周期を調整することができるので、正常時の通信量の削減を図ることができる。
【0055】
監視装置31は、受信部41を備えており、受信部41は、ネットワーク32を介して、信号発生部23が発した異常信号を受信する。受信部41が異常信号を受信した際には、監視装置31によって、どの異常検知機1でどのような異常が発生しているのか把握することができるとともに、異常に関する情報を表示部(図示せず)に表示させることができる。
【0056】
通常、電気機器は無人の電気室等に設置されていることが多いため、監視装置31は、ネットワーク32を介して、人が常駐している場所に設置することが好ましい。また、異常が発生した際に早期に対応することができるようにするため、監視装置31が受信した異常信号を、電気機器を備えている施設を管理する者の携帯電話、スマートフォン端末、タブレット端末、パーソナルコンピュータなどの端末にさらに受信をさせても良い。
【0057】
ネットワーク32は、イーサネットのような有線ネットワークや、光ファイバーによる光通信、Wi-Fi(登録商標)等による無線通信など、監視装置31と、複数の異常検知機1との間において、各種の情報や信号の送受信ができれば、回線の種類は問わない。
【0058】
図4において監視装置31は、1台のみの記載であるが、たとえば、複数の拠点において複数の異常検知機1を監視する場合には、監視装置31は、複数台あっても良い。
【0059】
本発明は、電気機器に用いられている電線被覆や絶縁物等の異常過熱による異臭ガスの発生など異常を簡便で精度よく検出することができる。そのため、膨大な設備を有する発電所や変電所、各種工場における電気機器の異常過熱による電気火災の早期発見をすることができるだけでなく、電気機器等の異常過熱を早い段階で検知することによって加熱による電気火災を未然に防ぐことができるため、火災による損失を大幅に回避できる効果が見込まれる。
【0060】
上記実施の形態は本発明の例示であり、本発明が上記実施の形態のみに限定されることを意味するものではないことは、いうまでもない。
【符号の説明】
【0061】
1・・・異常検知機
2・・・制御部
3・・・記憶部
4・・・出力部
11・・・臭気センサ
12・・・二酸化炭素センサ
13・・・温湿度センサ
21・・・急変検出部
22・・・判定部
23・・・信号発生部
31・・・監視装置
32・・・ネットワーク
41・・・受信部

図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2022-06-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセンサと、
前記複数のセンサを制御するとともに、前記複数のセンサから情報を取得する制御部と、を備えてなる、所定の電気機器に設置する異常検知機であって、
前記制御部は、
該制御部が前記複数のセンサのうちの1つのセンサの出力値を取得した時点から過去の一定期間における前記1つのセンサの出力値の平均値に対する、前記取得した時点における前記1つのセンサの出力値の偏差値が、急変判定値を超えたときに急変状態を検出する急変検出部と、
該急変検出部が急変状態を検出した後に、前記1つのセンサの出力値の偏差値が、前記急変判定値を所定値超えた警報設定値を超えているかどうかを判定する判定部と、
該判定部が、前記1つのセンサの出力値の偏差値が前記急変判定値を所定値超えた前記警報設定値を超えていると判定した場合に、前記所定の電気機器内において異常が発生していることを示す異常信号を発する信号発生部と、
を備えることを特徴とする異常検知機。
【請求項2】
前記複数のセンサが、臭気に関する情報を取得する臭気センサと、
二酸化炭素に関する情報を取得する二酸化炭素センサと、
温度及び/又は湿度に関する情報を取得する温湿度センサと、
であることを特徴とする請求項1に記載の異常検知機。
【請求項3】
前記複数のセンサのうちの1つが臭気センサであって、
該臭気センサが取得した前記所定の電気機器内の異臭ガスに関する情報が前記警報設定値を超えているときに、前記信号発生部が異常信号を発する
ことを特徴とする請求項1に記載の異常検知機。
【請求項4】
前記複数のセンサのうちの1つが二酸化炭素センサであって、
該二酸化炭素センサが取得した前記所定の電気機器内の二酸化炭素ガスに関する情報が前記警報設定値を超えているときに、前記信号発生部が異常信号を発する
ことを特徴とする請求項1に記載の異常検知機。
【請求項5】
前記複数のセンサのうちの1つが温湿度センサであって、
該温湿度センサが取得した前記所定の電気機器内の温度又は湿度に関する情報が前記警報設定値を超えているときに、前記信号発生部が異常信号を発する
ことを特徴とする請求項1に記載の異常検知機。
【請求項6】
前記温湿度センサが取得する湿度に関する情報が第一の値よりも低いとき、又は前記湿度に関する情報が前記第一の値よりも湿度の値が高い第二の値よりも高いとき、前記制御部は、該制御部が前記複数のセンサから情報を取得する周期を短く設定する
ことを特徴とする請求項2又は請求項5のいずれかに記載の異常検知機。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の異常検知機が複数存在し、複数存在する前記異常検知機を監視する監視装置を備える異常検知機監視システムであって、
前記監視装置は、該監視装置と、前記複数の異常検知機との間でネットワークにより接続されており、前記複数の異常検知機のいずれかから異常信号が発せられたときに、該異常信号を受信する受信部を備える
ことを特徴とする異常検知機監視システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
かかる課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、複数のセンサと、前記複数のセンサを制御するとともに、前記複数のセンサから情報を取得する制御部と、を備えてなる、所定の電気機器に設置する異常検知機であって、前記制御部は、該制御部が前記複数のセンサのうちの1つのセンサの出力値を取得した時点から過去の一定期間における前記1つのセンサの出力値の平均値に対する、前記取得した時点における前記1つのセンサの出力値の偏差値が、急変判定値を超えたときに急変状態を検出する急変検出部と、該急変検出部が急変状態を検出した後に、前記1つのセンサの出力値の偏差値が、前記急変判定値を所定値超えた警報設定値を超えているかどうかを判定する判定部と、該判定部が、前記1つのセンサの出力値の偏差値が前記急変判定値を所定値超えた前記警報設定値を超えていると判定した場合に、前記所定の電気機器内において異常が発生していることを示す異常信号を発する信号発生部と、を備えることを特徴としている。