(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023105863
(43)【公開日】2023-08-01
(54)【発明の名称】誘導案内杖
(51)【国際特許分類】
G01C 21/26 20060101AFI20230725BHJP
G08G 1/005 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
G01C21/26 P
G08G1/005
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022006857
(22)【出願日】2022-01-20
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】522027644
【氏名又は名称】近藤 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100211719
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 和真
(72)【発明者】
【氏名】近藤 直子
【テーマコード(参考)】
2F129
5H181
【Fターム(参考)】
2F129AA02
2F129BB03
2F129CC03
2F129CC16
2F129DD34
2F129DD66
2F129EE43
2F129EE52
2F129EE54
2F129EE81
2F129GG05
2F129GG11
2F129GG17
5H181AA22
5H181BB04
5H181CC04
5H181CC12
5H181FF05
5H181FF17
5H181FF25
5H181FF27
5H181LL01
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】ユーザが容易に操作できるとともに、各ユーザにとって好適な歩行ルートで誘導案内することができる誘導案内杖を提供する。
【解決手段】本開示の誘導案内杖1は、ユーザが把持するグリップ10と、車輪20と、グリップ10と車輪20とを連結するシャフト30と、車輪20の駆動制御を実行する制御装置300と、を備え、制御装置300が車輪20を駆動させる指令を出すことで自律移動を行い、ユーザの歩行を誘導案内する。そして、グリップ10は、人体の接触を感知するとオンされるスイッチとして構成され、且つ該スイッチがオンされた場合に点灯し、制御装置300は、ユーザからのリクエスト又は予め定められたメニューに基づいて歩行ルートを取得し、スイッチがオンされた場合に該歩行ルートに沿って誘導案内杖1が自律移動するように車輪20の駆動制御を実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが把持するグリップと、車輪と、前記グリップと前記車輪とを連結するシャフトと、前記車輪の駆動制御を実行する制御装置と、を備え、前記制御装置が前記車輪を駆動させる指令を出すことで自律移動を行い、前記ユーザの歩行を誘導案内する誘導案内杖であって、
前記グリップは、人体の接触を感知するとオンされるスイッチとして構成され、且つ該スイッチがオンされた場合に点灯し、
前記制御装置は、前記ユーザからのリクエスト又は予め定められたメニューに基づいて歩行ルートを取得し、前記スイッチがオンされた場合に該歩行ルートに沿って前記誘導案内杖が自律移動するように前記車輪の駆動制御を実行する、
誘導案内杖。
【請求項2】
前記メニューは、運動案内メニュー、又は歩行訓練案内メニュー、又は所定の地域情報を含んだ生活情報案内メニュー、又は観光情報案内メニューである、
請求項1に記載の誘導案内杖。
【請求項3】
前記メニューが、前記生活情報案内メニュー、又は前記観光情報案内メニューである場合、
前記歩行ルートは、前記ユーザに対する生活情報の案内又は観光情報の案内の後の該ユーザのスケジュールに基づいて定められる、
請求項2に記載の誘導案内杖。
【請求項4】
前記メニューが、前記生活情報案内メニュー、又は前記観光情報案内メニューである場合、
前記歩行ルートは、ソーシャル・ネットワーキング・サービスに係るコンテンツの中から、前記ユーザの現在位置周辺の生活情報又は観光情報に関連する所定のタグが付けられたコンテンツに基づいて定められる、
請求項2に記載の誘導案内杖。
【請求項5】
前記グリップは、前記ユーザの掌で把持可能な大きさの球状に形成される、
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の誘導案内杖。
【請求項6】
前記制御装置は、前記グリップが所定の力以上の強さで把持された場合に、前記車輪の回転を停止させる駆動制御を実行する、
請求項5に記載の誘導案内杖。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザの歩行を誘導案内する誘導案内杖に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン等の携帯端末を用いて、歩行者を目的地まで誘導することが可能となっている。しかしながら、スマートフォン等の携帯端末のディスプレイを見ながら歩く所謂「歩きスマホ」は、ユーザ本人にとってのみならず、周囲の人々にとっても危険で迷惑な行為となり得る。
【0003】
一方で、目の不自由な人に対して、音声により目的地までの経路を誘導案内する技術が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、経路を音声案内する音声案内手段を備えた盲人用誘導案内装置と、盲人用杖との組み合わせからなる盲人用誘導案内システムが開示されている。この技術では、盲人用誘導案内装置がショルダーバッグ又はリュックサック等の携帯鞄類に収納されており、盲人用杖が障害物センサーを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術によれば、ユーザが初めて訪れる場所であっても、比較的安全にユーザを目的地まで誘導できるようにも思われる。しかしながら、ユーザは、障害物センサーを有する盲人用杖を頻繁に動かす必要があり、且つ盲人用誘導案内装置が収納された鞄類を携帯する必要があるため、ユーザの負担が大きくなる。また、この技術では、音声によって経路や危険個所が案内されるため、例えば、周囲の騒音によって、ユーザが音声案内を聞き逃してしまう事態が生じ得る。
【0007】
一方で、杖は、ユーザの歩行の補助または訓練にも使用され得るものである。近年の高齢化社会においては、寝たきり状態になる前段階からの体力維持と積極的な健康管理への取り組みが推奨されており、特に、1日に20分間の歩行が推奨されている。そして、杖は、このような歩行の補助として用いられ得る。しかしながら、ユーザは、自身の力のみで杖を操作する必要があるため、やはりユーザの負担が大きくなる。また、毎日同じルートを歩行していると、そのルートを歩行することにユーザの飽きが生じてしまい、歩行の習慣が失われてしまう虞がある。
【0008】
本開示の目的は、ユーザが容易に操作できるとともに、各ユーザにとって好適な歩行ルートで誘導案内することができる誘導案内杖を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の誘導案内杖は、ユーザが把持するグリップと、車輪と、前記グリップと前記車輪とを連結するシャフトと、前記車輪の駆動制御を実行する制御装置と、を備え、前記制御装置が前記車輪を駆動させる指令を出すことで自律移動を行い、前記ユーザの歩行を誘導案内する誘導案内杖である。この誘導案内杖において、前記グリップは、人体の接触を感知するとオンされるスイッチとして構成され、且つ該スイッチがオンされた場合に点灯し、前記制御装置は、前記ユーザからのリクエスト又は予め定められたメニューに基づいて歩行ルートを取得し、前記スイッチがオンされた場合に該歩行ルートに沿って前記誘導案内杖が自律移動するように前記車輪の駆動制御を実行する。
【0010】
上記の誘導案内杖では、ユーザによってグリップが把持されスイッチがオンされた場合に、制御装置が誘導案内杖を自律移動させるためのスタンバイ状態となる。このとき、グリップが点灯することになるため、ユーザは、制御装置のスタンバイ状態を容易に確認することができる。そして、制御装置は、歩行ルートを取得すると、該歩行ルートに沿って誘導案内杖が自律移動するように車輪の駆動制御を実行する。これにより、ユーザの歩行の誘導案内が開始されることになる。このとき、制御装置は、スイッチがオンされた場合、即ち、ユーザによってグリップが把持された場合に、上記の歩行ルートに沿って誘導案内杖が自律移動するように車輪の駆動制御を実行する、言い換えれば、誘導案内杖によるユーザの歩行の誘導案内中に該ユーザの手がグリップから離されると、制御装置が車輪の駆動を停止させてもよい。そうすると、誘導案内杖がユーザから離れて移動してしまう事態を抑制することができるため、誘導案内杖の操作性が向上する。そして、このような誘導案内杖を用いると、ユーザは、例えば、地域情報を考慮した好適な歩行ルートで希望する目的地等に向かうことができる。
【0011】
ここで、本開示の誘導案内杖では、上記の構成において、前記メニューは、運動案内メニュー、又は歩行訓練案内メニュー、又は所定の地域情報を含んだ生活情報案内メニュー、又は観光情報案内メニューであってもよい。そして、前記メニューが、前記生活情報案内メニュー、又は前記観光情報案内メニューである場合、前記歩行ルートは、前記ユーザに対する生活情報の案内又は観光情報の案内の後の該ユーザのスケジュールに基づいて定められてもよい。また、前記メニューが、前記生活情報案内メニュー、又は前記観光情報案内メニューである場合、前記歩行ルートは、ソーシャル・ネットワーキング・サービスに係るコンテンツの中から、前記ユーザの現在位置周辺の生活情報又は観光情報に関連する所定のタグが付けられたコンテンツに基づいて定められてもよい。
【0012】
そして、以上の誘導案内杖において、前記グリップは、前記ユーザの掌で把持可能な大きさの球状に形成されてもよい。これによれば、ユーザが負担なくグリップを把持できるとともに、球状のグリップが点灯することになるため、該グリップの点灯を確認し易くなり、以て、ユーザによる容易な操作が可能になる。そして、この場合、前記制御装置は、前記グリップが所定の力以上の強さで把持された場合に、前記車輪の回転を停止させる駆動制御を実行してもよい。これによれば、ユーザは、誘導案内杖による誘導案内中の周囲状況の変化に即座に対応することができ、以て、誘導案内杖の操作性が向上する。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、ユーザが容易に操作できるとともに、各ユーザにとって好適な歩行ルートで誘導案内することができる誘導案内杖を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態における誘導案内杖の概略構成を示す図である。
【
図2】誘導案内杖の作動状態に応じて変化するグリップの点灯について説明するための図である。
【
図3】第1実施形態の変形例において誘導案内される歩行ルートを例示する図である。
【
図4】観光情報に関連する所定のタグが付けられたコンテンツを説明するための図である。
【
図5】SNSに投稿された所定のコンテンツに対する自動返答の投稿を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づいて、本開示の実施の形態を説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本開示は実施形態の構成に限定されない。
【0016】
<第1実施形態>
第1実施形態における誘導案内杖について、
図1を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態における誘導案内杖の概略構成を示す図である。本実施形態に係る誘導案内杖1は、ユーザが把持するグリップ10と、車輪20と、グリップ10と車輪20とを連結するシャフト30と、車輪20の駆動制御を実行する制御装置300と、を備え、制御装置300が車輪20を駆動させる指令を出すことで自律移動を行い、ユーザの歩行を誘導案内する誘導案内杖である。なお、本実施形態では、ユーザからのリクエストに基づいて歩行ルートが取得される場合を例にして、以下に説明する。
【0017】
そして、このような誘導案内杖1が備える上記のシャフト30は、
図1(a)に示すように、その一端がグリップ10に接続され該一端から車輪20に向かって延在する円柱状の棒部30aと、棒部30aに接続される側から車輪20に向かって円錐状に延在するカバー部30bと、を含んで構成される。そして、このカバー部30bに制御装置300が内蔵される。
【0018】
ここで、制御装置300は、データの取得、生成、更新等の演算処理及び加工処理のための処理能力を有し、車輪20の駆動状態等を制御する電子機器である。この制御装置300には、グリップ10に設けられる各種センサーや車輪20が電気的に接続されている。
【0019】
そして、制御装置300は、機能部として通信部301、記憶部302、制御部303、入出力部304を有しており、記憶部302に格納されたプログラムの実行を通じて所定の目的に合致した各機能を実現することができる。ただし、一部または全部の機能はASICやFPGAのようなハードウェア回路によって実現されてもよい。
【0020】
ここで、通信部301は、制御装置300をネットワークに接続するための通信インタフェースである。通信部301は、例えば、ネットワークインタフェースボードや、無線通信のための無線通信回路を含んで構成される。制御装置300は、通信部301を介して、その他の外部装置と通信可能に接続される。なお、ネットワークは、例えば、IPネットワークである。ネットワークは、IPネットワークであれば、無線であっても有線であっても無線と有線の組み合わせであってもよい。また、ネットワークは、これらの例に限られず、例えば、公衆交換電話網や、光回線、ADSL回線、衛星通信網などであってもよい。
【0021】
記憶部302は、主記憶装置と補助記憶装置を含んで構成される。主記憶装置は、制御部303によって実行されるプログラムや、当該制御プログラムが利用するデータが展開されるメモリである。補助記憶装置は、制御部303において実行されるプログラムや、当該制御プログラムが利用するデータが記憶される装置である。また、記憶部302は、その他の外部装置等から送信されたデータを記憶する。なお、制御装置300は、通信部301を介して上記の外部装置等から送信されたデータを取得し、詳しくは、記憶部302には、後述する歩行ルートが記憶される。
【0022】
制御部303は、制御装置300が行う制御を司る機能部である。制御部303は、CPUなどの演算処理装置によって実現することができる。制御部303は、所定の目的に合致した各機能を実現する機能部を有して構成され、各機能部は、記憶されたプログラムをCPUによって実行することで実現してもよい。
【0023】
入出力部304は、画像・音声入出力部を有している。この画像・音声入出力部は、静止画や動画等の画像の入力を受け付ける機能を有し、具体的には、Charged-Coupled Devices(CCD)、Metal-oxide-semiconductor(MOS)あるいはComplementary Metal-Oxide-Semiconductor(CMOS)等のイメージセンサを用いたカメラにより実現される。また、画像・音声入出力部は、音声の入出力を受け付ける機能を有し、具体的には、マイクやスピーカーにより実現される。
【0024】
また、制御装置300は、位置情報取得部を機能部として有する。この位置情報取得部は、誘導案内杖1の現在位置を取得する手段であり、典型的には、GPS衛星信号を受信して位置情報を求めるGPS(Global Positioning System)装置である。
【0025】
ここで、本実施形態の誘導案内杖1が備えるグリップ10は、人体の接触を感知するとオンされるスイッチとして構成される。なお、このスイッチは、静電タッチセンサーや圧力センサーなどの電子スイッチである。そして、グリップ10に含まれるこのような電子スイッチは、制御装置300に電気的に接続されている。そうすると、スイッチがオンされた場合に、制御装置300が、誘導案内杖1を自律移動させるためのスタンバイ状態となる。
【0026】
そして、制御装置300は、上記のスタンバイ状態において後述する歩行ルートを取得すると、車輪20の駆動制御を実行することで誘導案内杖1を自律移動させる。そうすると、ユーザは、
図1(b)に示すように、自律移動する誘導案内杖1のグリップ10を把持することで、その歩行が誘導案内されることになる。なお、本実施形態では、
図1(a)に示すように、誘導案内杖1が3つの車輪20を備えるが、これに限定する意図はない。また、誘導案内杖1は、バッテリやモータを備えていて、制御装置300は、モータに制御指令を出すことで車輪20の駆動制御を実行する。
【0027】
更に、本実施形態の誘導案内杖1が備えるグリップ10は、上記のスイッチがオンされた場合に点灯する。詳しくは、グリップ10は、ライトを含んで構成され、上記のスイッチがオンされた場合に該ライトが点灯する。これにより、ユーザは、制御装置300のスタンバイ状態を確認することができ、以て、ユーザによる容易な操作が可能になる。
【0028】
また、グリップ10の点灯は、誘導案内杖1の作動状態に応じて変化してもよい。これについて、
図2に基づいて説明する。
図2は、誘導案内杖1の作動状態に応じて変化するグリップ10の点灯について説明するための図である。グリップ10は、ユーザによって把持されずにスイッチがオフされている場合、消灯する(
図2(a))。そして、ユーザによって把持されることで人体の接触を感知するとスイッチがオンされ、誘導案内杖1がスタンバイ状態となり、
図2(b)に示すように、グリップ10は白色点灯する。更に、後述する歩行ルートに沿ってユーザを歩行誘導中には、
図2(c)に示すように、グリップ10は青色点灯する。このように、誘導案内杖1の作動状態に応じてグリップ10の点灯色が変化することで、ユーザは、誘導案内杖1の作動状態を簡単に認識することができる。なお、上記のグリップ10の点灯色はあくまで一例であって、これらに限定する意図はない。
【0029】
また、このようなグリップ10は、ユーザの掌で把持可能な大きさの球状に形成されてもよい。これによれば、ユーザが負担なくグリップ10を把持できるとともに、球状のグリップ10が点灯することになるため、該グリップ10の点灯を確認し易くなる。
【0030】
以上に述べた誘導案内杖1において、本実施形態では、制御装置300が、ユーザからのリクエストに基づいて歩行ルートを取得する。上述したように、制御装置300の入出力部304は、画像・音声入出力部を有している。そのため、ユーザは、目的地等を音声によりリクエストすることができる。そうすると、制御装置300は、マイクから入力された音声情報と、位置情報取得部により取得された誘導案内杖1の現在位置と、に基づいて、ユーザからリクエストされた目的地等への歩行ルートを取得する。なお、歩行ルートは、周知のナビゲーションシステムに用いられる技術に基づいて定められ得るが、このとき、現在位置周辺の地域情報を考慮して歩行ルートが定められる。ここで、地域情報とは、例えば、地形や高低差、路面傾斜などの地理的情報や、道路工事や交通規制などの交通情報であって、これら情報は、例えば、地域の自治体によって提供され得る。そうすると、制御装置300は、目的地までの最短ルートや目的地までの身体的負担が最も少ないルート等の中から、ユーザが希望する歩行ルートを取得することができる。なお、ユーザが希望する歩行ルートは、ユーザからの音声入力によりリクエストされてもよいし、該ユーザが有するユーザ端末に設定された登録情報から自動で取得されてもよい。
【0031】
そして、歩行ルートが決定すると、制御装置300が、該歩行ルートに沿って誘導案内杖1が自律移動するように車輪20の駆動制御を実行することで、ユーザの歩行の誘導案内が開始される。このとき、制御装置300は、スイッチがオンされた場合、即ち、ユーザによってグリップ10が把持された場合に、上記の歩行ルートに沿って誘導案内杖1が自律移動するように車輪20の駆動制御を実行する。なお、誘導案内杖1によるユーザの歩行の誘導案内中に該ユーザの手がグリップ10から離されると、制御装置300が車輪20の駆動を停止させることで該誘導案内杖1の自律移動が停止され、誘導案内杖1がフリーズ状態となる。そして、フリーズ状態となってから例えば3~10分経過すると、スイッチがオフされグリップ10が消灯する。そうすると、誘導案内杖1がユーザから離れて移動してしまう事態を抑制することができるため、誘導案内杖1の操作性が向上する。
【0032】
また、ユーザによる歩行ルートの変更リクエストは、現在の歩行ルートをリセットしたうえで再度リクエストすることができる。この場合、ユーザは、例えば、グリップ10を連続して2回タッチすることで、現在の歩行ルートをリセットすることができる。なお、現在の歩行ルートがリセットされると、グリップ10が青色点灯から白色点灯に変化する。そして、ユーザは、グリップ10を把持した状態で目的地等を音声により再度リクエストすることができる。そして、歩行ルートが決定すると、グリップ10が白色点灯から青色点灯に変化する。なお、歩行ルートの選択中は、グリップ10が白色点滅するようにしてもよい。また、誘導案内杖1によるユーザの歩行の誘導案内が終了すると、グリップ10が青色点灯から白色点灯に変化する。
【0033】
ここで、制御装置300は、誘導案内杖1による誘導案内中において、ユーザの歩行を積極的にアシストするように車輪20の駆動制御を実行してもよい。例えば、ユーザが上り坂を歩行中には、制御装置300は、車輪20の駆動力を増大させる制御を実行することでユーザの歩行をアシストすることができる。また、例えば、ユーザが下り坂を歩行中には、制御装置300は、車輪20の駆動に緩やかなブレーキが作用するように制御を実行することでユーザの歩行をアシストすることができる。
【0034】
更に、制御装置300は、グリップ10が所定の力以上の強さで把持された場合に、車輪20の回転を停止させる駆動制御を実行してもよい。ここで、制御装置300は、誘導案内杖1による誘導案内中にユーザと障害物等との接触を回避するために、上述したカメラからの画像情報に基づいて車輪20の駆動に自動でブレーキを作用させることができるが、画像情報に基づく制御では、人の急な飛び出し等には適切に対応できない場合がある。一方で、ユーザは、周囲状況の変化を即座に認識することができ、例えば、人の急な飛び出し等による接触といった身の危険を感じると、筋肉が収縮する傾向にある。つまり、このような場合、ユーザは、グリップ10を強く握る傾向にある。そこで、制御装置300は、人が身の危険を感じたときの筋肉の収縮による力以上の強さでグリップ10が把持された場合に、車輪20の駆動にブレーキを作用させ該車輪20の回転を停止させる。これによれば、ユーザは、誘導案内杖1による誘導案内中の周囲状況の変化に即座に対応することができ、以て、誘導案内杖1の操作性が向上する。なお、グリップ10が所定の力以上の強さで把持された場合の車輪20に対するブレーキの作用については、上記の例に限定されない。例えば、ユーザは、通常歩行時に把持する力以上の強さでグリップ10を把持することで、車輪20にブレーキを作用させ誘導案内杖1の移動速度を調節することができる。この場合、制御装置300は、グリップ10が把持される力の強さに応じて、車輪20に対するブレーキの作用の程度を制御してもよい。
【0035】
また、誘導案内杖1による誘導案内中に、ユーザが転倒してしまう事態が生じ得る。この場合、制御装置300は、ユーザに非常事態が生じたとして、誘導案内杖1の現在位置の位置情報を外部装置に送信してもよい。そうすると、上記のユーザの家族や誘導案内杖1の貸し出し元、消防、警察等の所定の機関が、この情報を取得し、ユーザに非常事態が生じた旨を認識することができる。なお、このとき、グリップ10を赤色点滅させることにより、周囲に非常事態を報知するようにしてもよい。
【0036】
そして、このような誘導案内杖1を用いると、ユーザは、希望する目的地等に、地域情報を考慮した好適な歩行ルートで向かうことができる。また、地域情報に住民同士の交流の場の情報が含まれる場合には、例えば、憩いの公園等を経由するように歩行ルートが定められることで、ユーザは、誘導案内杖1による誘導案内を介して居住地域への理解を深めることができる。そして、このような誘導案内杖1は、地域の自治体によって、その地域の新しい居住者や日本語がわからない外国人に対して貸し出すこともできる。
【0037】
以上に述べた誘導案内杖1によれば、ユーザが容易に操作できるとともに、各ユーザにとって好適な歩行ルートで誘導案内することができる。
【0038】
なお、誘導案内杖1のカバー部30bには、所定の装飾が施されてもよい。これによれば、誘導案内杖1のデザイン性をより高めることができ、高齢者が持つ杖というイメージを払拭することができる。
【0039】
<第1実施形態の変形例>
第1実施形態の変形例について、
図3に基づいて説明する。本変形例では、予め定められたメニューに基づいて歩行ルートが取得される。ここで、上記のメニューは、運動案内メニュー、又は歩行訓練案内メニューである。なお、本変形例では、リハビリテーションの従事者によって作成された運動案内メニューに基づいて歩行ルートが取得される場合を例にして、以下に説明する。
【0040】
そして、
図3は、本変形例において誘導案内される歩行ルートを例示する図である。
図3に示す歩行ルートの例では、例えば、ユーザの脚力の回復を促すために、地域情報を考慮して、平坦な道ではなく上り坂を含んだルートが定められる。このように、本変形例における歩行ルートは、地形や高低差、路面傾斜などの地理的情報を用いて、ユーザのリハビリテーションに好適に作用する歩行ルートが定められる。なお、ユーザが上り坂を歩行するときには、ユーザの身体的状態に応じた運動負荷となるように、制御装置300が車輪20の駆動力を調整する制御を実行してもよい。また、上記の地域情報は、例えば、地域の自治体によって提供され得る。
【0041】
また、
図3に示す歩行ルートの例では、例えば、ユーザが社会との隔たりを感じてしまう事態を抑制するために、地域情報を考慮して、公園を経由するルートが定められる。また、ユーザのリハビリテーションには適さない経路(例えば、細い路地の歩行など)は、歩行ルートには含まれない。
【0042】
このような誘導案内では、ユーザは、上述したように誘導案内杖1を容易に操作しながら、リハビリテーションに好適に作用するルートで歩行することができる。そしてこのような誘導案内によれば、ユーザは、飽きることなくリハビリテーションを行うことができる。
【0043】
そして、以上に述べた誘導案内杖1によっても、ユーザが容易に操作できるとともに、各ユーザにとって好適な歩行ルートで誘導案内することができる。
【0044】
<第2実施形態>
第2実施形態について、
図4および
図5に基づいて説明する。本実施形態では、予め定められたメニューに基づいて歩行ルートが取得される。ここで、上記のメニューは、所定の地域情報を含んだ生活情報案内メニュー、又は観光情報案内メニューである。そして、本実施形態では、歩行ルートが、ソーシャル・ネットワーキング・サービスに係るコンテンツの中から、ユーザの現在位置周辺の生活情報又は観光情報に関連する所定のタグが付けられたコンテンツに基づいて定められる。
【0045】
例えば、観光案内を行う事業者は、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)に係るコンテンツの中から、ユーザの現在位置周辺の観光情報に関連する所定のタグが付けられたコンテンツを取得する。そして、取得したコンテンツに基づいて観光情報案内メニューを生成する。なお、上記のSNSは、Twitter(登録商標)、Facebook(登録商標)、Instagram(登録商標)等であるが、本実施形態では、Twitter(登録商標)を用いた例について、以下に説明する。
【0046】
ここで、
図4は、観光情報に関連する所定のタグが付けられたコンテンツを説明するための図である。
図4に例示する画面SC1は、SNSに投稿されたコンテンツを例示する図であって、画面SC1には、ツイートSC11、および該ツイートに含まれるタグ情報SC12が示される。
図4に示す例では、お花見に関する情報がツイートされている(SC11)。ここで、上記のタグ情報SC12は、このような観光情報を発信するための予め定められた任意の標識であって、例えば、観光スポットである。
図4に示す例では、タグ情報SC12が、観光スポットである公園を表している。
【0047】
このようなコンテンツを取得した事業者の情報端末は、取得した該コンテンツに基づいて、観光情報案内メニューを含んだ歩行ルートを生成することができる。この場合、観光情報案内メニューは、例えば、SNSに投稿された観光スポットを含んだ観光情報案内であって、上記の情報端末は、これを含んで所定の距離(1km、2km、3km等)を歩行する歩行ルートを生成することができる。また、SNSに投稿された話題のカフェを観光情報として案内する、カフェ巡りルートを歩行ルートとして生成してもよい。これらによれば、観光案内を行う事業者は、地域の魅力を好適に発信することができる。そして、このような場合、観光情報案内を行う誘導案内杖1が、上記の事業者から貸し出され得る。
【0048】
また、このようにコンテンツに基づいて定められる歩行ルートは、地域情報を含んだ生活情報案内メニューを含んだものであってもよい。この場合、生活情報案内メニューは、例えば、SNSに投稿された地域のクチコミを含んだ生活情報案内であって、このようなコンテンツを取得した事業者の情報端末は、これを含んで歩行する歩行ルートを生成することができる。なお、この場合の事業者は、地域の自治体であってもよい。
【0049】
そして、予め定められた生活情報案内メニュー又は観光情報案内メニューに基づいて歩行ルートが取得される場合、該歩行ルートは、ユーザに対する生活情報の案内又は観光情報の案内の後の該ユーザのスケジュールに基づいて定められてもよい。例えば、観光情報案内を含んで歩行する歩行ルートが生成されるとき、誘導案内杖1によって誘導案内されるユーザが別の地域へ移動するための出発時間が決められている場合、この出発時間に間に合う歩行時間となるように歩行ルートが定められ得る。これによれば、ユーザの立場からみると、時間に安心感をもって歩行でき、事業者の立場からみると、誘導案内杖1の貸し出しスケジュールを管理し易くなる。
【0050】
更に、事業者の情報端末は、SNSに投稿された所定のコンテンツに対して自動で返答を投稿してもよい。ここで、
図5は、SNSに投稿された所定のコンテンツに対する自動返答の投稿を説明するための図である。
図5に例示する画面SC2には、ツイートSC21、および該ツイートに含まれるタグ情報SC22に加えて、事業者の情報端末により自動投稿されたツイートであって、誘導案内杖1による誘導案内の情報を表すウェブページを通知するツイートSC23が示される。事業者の情報端末やそのサーバは、例えば、Twitter(登録商標)の各種データを取得するTwitter(登録商標) APIを用いて、ツイートSC21に対する返答として、このようなウェブページ通知ツイートを自動投稿することができる。これにより、事業者は、誘導案内杖1による誘導案内を好適に発信することができる。
【0051】
また、誘導案内杖1のカバー部30bには、デジタルサイネージによる広告が表示されてもよい。これによれば、グリップ10、車輪20、およびシャフト30の形状に起因するデザイン性により注目を集める誘導案内杖1に広告が電子表示されることになるため、該広告を好適に宣伝することができる。
【0052】
そして、以上に述べた誘導案内杖1によっても、ユーザが容易に操作できるとともに、各ユーザにとって好適な歩行ルートで誘導案内することができる。
【符号の説明】
【0053】
1・・・・・誘導案内杖
10・・・・グリップ
20・・・・車輪
30・・・・シャフト
300・・・制御装置
【手続補正書】
【提出日】2022-06-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが把持するグリップと、車輪と、前記グリップと前記車輪とを連結するシャフトと、前記車輪の駆動制御を実行する制御装置と、を備え、前記制御装置が前記車輪を駆動させる指令を出すことで自律移動を行い、前記ユーザの歩行を誘導案内する誘導案内杖であって、
前記グリップは、人体の接触を感知するとオンされるスイッチとして構成され、且つ該スイッチがオンされた場合に点灯し、
前記制御装置は、前記ユーザからのリクエストに基づいて歩行ルートを取得し、前記スイッチがオンされた場合に該歩行ルートに沿って前記誘導案内杖が自律移動するように前記車輪の駆動制御を実行し、
前記グリップは、前記ユーザの掌で把持可能な大きさの球状に形成され、
前記制御装置は、前記グリップが所定の力以上の強さで把持された場合に、前記車輪の回転を停止させる駆動制御を実行する、
誘導案内杖。