(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023105866
(43)【公開日】2023-08-01
(54)【発明の名称】トラック用積荷搬送装置及びトラック
(51)【国際特許分類】
B60P 1/00 20060101AFI20230725BHJP
【FI】
B60P1/00 G
B60P1/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022006861
(22)【出願日】2022-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】517043505
【氏名又は名称】株式会社オートグランド スーパーセブン
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【弁理士】
【氏名又は名称】黒住 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100220892
【弁理士】
【氏名又は名称】舘 佳耶
(74)【代理人】
【識別番号】100205589
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 和将
(74)【代理人】
【識別番号】100194478
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 文彦
(72)【発明者】
【氏名】谷本 達哉
(57)【要約】
【課題】
トラックに大幅な変更を加えることなく、荷台上で積荷を搬送できるようにするトラック用積荷搬送装置を提供する。
【解決手段】
トラック2の荷台21上の積荷3を、荷台21の一側から他側へ搬送するトラック用積荷搬送装置1を、荷台21上に敷設される搬送シート11と、搬送シート11の一側を引き上げることで、搬送シート11を荷台21の一側から傾斜させていくシート引き上げ手段12と、を備えたものとし、シート引き上げ手段12で搬送シート11の一側を引き上げていき、搬送シート11の傾斜部分αを荷台21の一側から他側に拡大させていくことで、積荷3が荷台21の他側に移動するようにした。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラックの荷台上の積荷を、荷台の一側から他側へ搬送するトラック用積荷搬送装置であって、
荷台上に敷設される搬送シートと、
搬送シートの一側を引き上げることで、搬送シートを荷台の一側から傾斜させていくシート引き上げ手段と、
を備え、
シート引き上げ手段で搬送シートの一側を引き上げていき、搬送シートの傾斜部分を荷台の一側から他側に拡大させていくことで、積荷が荷台の他側に移動するようにした
ことを特徴とするトラック用積荷搬送装置。
【請求項2】
シート引き上げ手段が、
搬送シートの一側を巻き取ることで引き上げるシート巻き取りローラと、
シート巻き取りローラを支持する支持部材と
を備えた請求項1記載のトラック用積荷搬送装置。
【請求項3】
シート引き上げ手段が、シート巻き取りローラよりも高い位置で前記支持部材に支持される上側ガイドローラをさらに備え、
上側ガイドローラに搬送シートを掛け回すことで、搬送シートが、上側ガイドローラの高さまで引き上げられた後に、シート巻き取りローラに巻き取られるようにした
請求項1又は2記載のトラック用積荷搬送装置。
【請求項4】
搬送シートにおける積荷が載置される部分に、保護シートを重ね合わせた請求項1~3いずれか記載のトラック用積荷搬送装置。
【請求項5】
請求項1~4いずれか記載のトラック用積荷搬送装置が組み付けられたトラック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラックの荷台上の積荷を、荷台の一側から他側へ搬送するトラック用積荷搬送装置と、そのトラック用積荷搬送装置を組み付けたトラックとに関する。
【背景技術】
【0002】
農家では、土や肥料や穀粒等の粉粒物を軽トラックで運ぶことがある。しかし、軽トラックには、通常、ダンプ機能(荷台を傾けて、その斜面に沿って積荷を滑り下ろす機能)が設けられていないため、紛粒物の荷降ろしは、農家にとって手間のかかる作業となっている。
【0003】
このような実情に鑑みてか、これまでには、トラックにダンプ機能を後から付加する技術が提案されている。例えば、特許文献1の
図2には、積荷(穀粒)を収容する穀粒ホッパー3の後端側を、ヒンジ34を介して荷台10に取り付けたトラック1が開示されている。同文献のトラック1では、穀粒ホッパー3の前端側に連結されたチェーン40を、支柱21に設けられたチェーンブロック4で巻き上げることで、穀粒ホッパー3が傾けられる(同文献の段落0012及び
図4)。また、特許文献2の
図1には、荷台5の下側に転がり装置6を設けるとともに、その荷台5にチェーン3を連結した構造の簡易ダンプ装置が開示されている。同文献の簡易ダンプ装置では、荷台5に設けられた取っ手7を掴んで荷台5を引き出すことによって、荷台5が傾けられる(同文献の段落0013及び
図2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平6-014097号公報
【特許文献2】特開2018-079910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のトラックや特許文献2の簡易ダンプ装置では、荷台周辺に大幅な変更を加える必要があった。また、特許文献1のトラックや特許文献2の簡易ダンプ装置では、穀粒ホッパーや荷台を傾けると積荷も一緒に傾くため、苗ポットを入れた苗トレイなど、傾けることが好ましくない積荷に対しては利用しづらかった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、トラックに大幅な変更を加えることなく、荷台上の積荷を搬送できるようにするトラック用積荷搬送装置を提供するものである。また、積荷を傾けることなく、搬送することができるトラック用積荷搬送装置を提供することも本発明の目的である。さらに、このトラック用積荷搬送装置を組み付けたトラックを提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、
トラックの荷台上の積荷を、荷台の一側から他側へ搬送するトラック用積荷搬送装置であって、
荷台上に敷設される搬送シートと、
搬送シートの一側を引き上げることで、搬送シートを荷台の一側から傾斜させていくシート引き上げ手段と、
を備え、
シート引き上げ手段で搬送シートの一側を引き上げていき、搬送シートの傾斜部分を荷台の一側から他側に拡大させていくことで、積荷が荷台の他側に移動するようにした
ことを特徴とするトラック用積荷搬送装置
を提供することによって解決される。
【0008】
本発明のトラック用積荷搬送装置は、荷台上に搬送シートを敷設し、その搬送シートの一側を引き上げる機構(シート引き上げ手段)を設けるだけで設置することができる。このため、トラックに大幅な変更を加える必要がない。また、本発明のトラック用積荷搬送装置では、後掲する
図3に示すように、搬送シート(同図における符号11)における、荷台(同図における符号21)の一側から他側に拡大していく傾斜部分(同図における符号α)が積荷(同図における符号3)を押すことによって、その積荷が荷台上を一側から他側に移動していく。その間、積荷は、荷台の上面と略平行(略水平)な状態を保っている。このため、積荷を傾けたくない場合でも、本発明のトラック用積荷搬送装置を使用することができる。
【0009】
本発明のトラック用積荷搬送装置においては、シート引き上げ手段を、搬送シートの一側を巻き取ることで引き上げるシート巻き取りローラと、シート巻き取りローラを支持する支持部材とを備えたものとすることが好ましい。これにより、搬送シートの一側における余った部分をシワのない綺麗な状態で巻き取りながら、搬送シートの一側を引き上げていくことができる。
【0010】
このとき、シート引き上げ手段を、シート巻き取りローラよりも高い位置で前記支持部材に支持される上側ガイドローラをさらに備えたものとし、上側ガイドローラに搬送シートを掛け回すことで、搬送シートが、上側ガイドローラの高さまで引き上げられた後に、シート巻き取りローラに巻き取られるようにすることがさらに好ましい。これにより、シート巻き取りローラを低い位置に設けることができる。このため、シート巻き取りローラが手動式の場合には、シート巻き取りローラを手動で操作しやすくなる。また、シート巻き取りローラが自動式の場合には、その駆動手段(例えば電気モータ)のメンテナンスがしやすくなる。
【0011】
ところで、搬送シートにおける積荷が載置される部分は、摩耗するなど劣化しやすい箇所となっている。また、積荷が砂利などである場合には、搬送シートが傷つくおそれもある。さらに、積荷が泥などである場合には、搬送シートが汚れるおそれもある。このため、本発明のトラック用積荷搬送装置においては、搬送シートにおける積荷が載置される部分に、保護シートを重ね合わせることが好ましい。これにより、搬送シートを摩耗や傷や汚れから保護することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によって、トラックに大幅な変更を加えることなく、荷台上の積荷を搬送できるようにするトラック用積荷搬送装置を提供することが可能になる。また、積荷を傾けることなく、搬送することができるトラック用積荷搬送装置を提供することも可能になる。さらに、このトラック用積荷搬送装置を組み付けたトラックを提供することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明のトラック用積荷搬送装置を組み付けたトラックの斜視図であって、搬送シートが初期状態にあるときを示した図である。
【
図2】本発明のトラック用積荷搬送装置を組み付けたトラックの斜視図であって、搬送シートが傾斜状態にあるときを示した図である。
【
図3】本発明のトラック用積荷搬送装置で積荷を搬送している様子を示した図である。
【
図4】本発明のトラック用積荷搬送装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のトラック用積荷搬送装置(以下、単に「積荷搬送装置」と表記することがある。)の好適な実施形態について、図面を用いてより具体的に説明する。以下で説明する構成は、あくまで実施例に過ぎず、本発明の積荷搬送装置の技術的範囲は、以下で説明する構成に限定されない。以下で説明する積荷搬送装置には、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更を施すことができる。
【0015】
1.トラック用積荷搬送装置の概要
図1及び
図2は、本発明の積荷搬送装置1を組み付けたトラック2の斜視図である。
図1には、搬送シート11が初期状態にあるときを示し、
図2には、搬送シート11が傾斜状態にあるときを示す。また、
図3は、本発明の積荷搬送装置1で積荷3を搬送している様子を示した図である。
図3(a)には、搬送シートが初期状態にあるときを示し、
図3(b)には、
図3(a)の初期状態から搬送シート11の前側を引き上げていき、搬送シート11の前側を傾斜(同図における傾斜部分α)させたときを示し、
図3(c)には、
図3(b)に示す状態から搬送シート11の前側をさらに引き上げていき、搬送シート11の傾斜部分αを荷台21の後端付近まで拡大させたときを示す。
図3では、積荷搬送装置1周辺のみを断面(ハッチング)で示し、その他の部分を破線で示している。
【0016】
本発明の積荷搬送装置1は、
図1に示すように、トラック2に組み付けられた状態で用いられる。この積荷搬送装置1は、トラック2の荷台21上の積荷3を、荷台21の一側から他側へと搬送するものである。積荷搬送装置1における積荷3の搬送方向は、特に限定されない。積荷搬送装置1は、荷台21の前側(一側)から後側(他側)に向かって積荷3を搬送するものであってもよいし、荷台21の左側(一側)から右側(他側)に向かって積荷3を搬送するものであってもよいし、荷台21の右側(一側)から左側(他側)に向かって積荷3を搬送するものであってもよい。積荷3の搬送方向は、後述する搬送シート11及びシート引き上げ手段12の配置を変えることで変更することが可能である。とは言え、トラック2に載せられた積荷3は、荷台21の後方から搬出されることが多く、積荷3を荷台21の前側から後側に搬送できるようにしておいたほうが便利なことが多い。本実施形態においても、
図1における矢印A
1に示すように、荷台21の前側から後側に積荷3を搬送する場合(「一側」が荷台21の前側となり、「他側」が荷台21の後側となる場合)を例に挙げて、積荷搬送装置1を説明する。
【0017】
本発明の積荷搬送装置1は、搬送シート11と、シート引き上げ手段12とで構成される。搬送シート11は、荷台21の上面に敷設される。積荷3は、この搬送シート11の上側に載せられ、後述するように、この搬送シート11が傾斜することによって搬送される。
【0018】
シート引き上げ手段12は、搬送シート11の前側(一側)を引き上げることで、搬送シート11を前側から傾斜させていくためのものである。シート引き上げ手段12の具体的な構造は、特に限定されない。例えば、搬送シート11の前側を取り付けるためのシート取付体と、このシート取付体を上下方向に昇降させる昇降機構とを備えたものとしてもよい。しかし、この場合には、シート取付体を昇降させるためのワイヤやシート取付体を上下方向に案内するためのガイドレール等が必要になるなど、シート引き上げ手段12の構造が複雑になりやすい。このため、本実施形態においては、シート引き上げ手段12として、搬送シート11の前側をシート巻き取りローラ12aで巻き取る機構を採用している。具体的には、手動又は自動(例えばモータ等)で、シート巻き取りローラ12aを順方向に回転させると、搬送シート11がシート巻き取りローラ12aに巻き取られ、シート巻き取りローラ12aを逆方向に回転させると、搬送シート11が繰り出されるようになっている。
【0019】
上記の積荷搬送装置1は、以下の原理で積荷3を搬送する。すなわち、
図1に示した初期状態から、シート引き上げ手段12で搬送シート11の前側を徐々に引き上げていくと、最終的には、
図2に示すように、その略全体(
図2における傾斜部分α)が傾斜した状態となる。ただし、搬送シート11は、その略全体が当初から一斉に傾斜するのではなく、
図3に示すように、搬送シート11の前側から徐々に浮き上がりながら傾斜していく。換言すると、シート引き上げ手段12で搬送シート11の前側を引き上げていくにつれて、搬送シート11の傾斜部分αが前側から後側に拡大していく。この後側に拡大していく傾斜部分αに押されて、積荷3は、荷台21の上面と略平行(略水平)な状態を保ちながら後側に移動していく。苗ポッドを収容した苗トレイなどは、傾けずに、搬送することが好ましいところ、本発明の積荷搬送装置1では、積荷3を、傾けずに、荷台21上で搬送することができる。
【0020】
ただし、積荷搬送装置1の搬送対象となる積荷3は、傾けることが好ましくないものに限定されない。積荷搬送装置1は、様々な種類や形態の積荷3を搬送することができる。例えば、積荷3が土や肥料や穀粒などの紛粒物である場合も、積荷搬送装置1で適切に搬送することができる。この場合にも、搬送シート11の傾斜部分αが拡大するにつれて、その積荷3(紛粒物)が、荷台21の後側に搬送される。
【0021】
このように、本発明の積荷搬送装置1では、積荷3を、搬送シート11の傾斜部分αで押すことにより荷台21の後側に移動させる。しかし、積荷3が軽いと傾斜部分αに押されずに、積荷3が傾斜部分αに載って、側アオリ21b
L,21b
R(
図1参照)よりも高い位置まで持ち上げられることがある。また、積荷3が紛粒物である場合には、傾斜部分αが後側に拡大していくにつれて、前側の紛粒物が後側の紛粒物の上に堆積していき、紛粒物が側アオリ21b
L,21b
Rよりも高い位置まで盛り上がることもある。これらの場合には、積荷3が荷台21の側方から落下するおそれがある。このため、荷台21の側アオリ21b
L,21b
Rの上側に、延長パネルを取り付けて、側アオリ21b
L,21b
Rを高くしてもよい。
【0022】
以上では、積荷3を搬送する場合について説明したが、本発明の積荷搬送装置1は、それ以外の用途で使用することもできる。例えば、トラック2を屋外に駐車していると、その荷台21に砂埃や雪が積もることがある。このような場合に、積荷搬送装置1を駆動することで、砂埃や雪を荷台21から取り除くことができる。具体的には、搬送シート11を傾けることで、砂埃や雪を滑り落とすことが可能である。
【0023】
2.トラック用積荷搬送装置の具体的な構成
図4は、トラック2に組み付けられたときの積荷搬送装置1の断面図である。以下、
図4を参照しながら、積荷搬送装置1の構造をより詳しく説明する。
図4でも、
図3と同様に、積荷搬送装置1周辺のみを断面(ハッチング)で示し、その他の部分を破線で示している。
【0024】
2.1 搬送シート
搬送シート11は、積荷3を搬送するためのものである。この搬送シート11は、樹脂製シートや布生地(織生地だけでなく、編生地や不織布を含むものとする。)など、各種のシート素材で形成することができる。しかし、樹脂製シート単体では、搬送シート11の強度や耐久性を確保しにくい。一方、布生地を搬送シート11として用いると、搬送シート11が雨に濡れて重くなり、シート引き上げ手段12の動作に悪影響が及ぶおそれがある。この点、布生地など(基布)からなる高強度層の両側に、耐候性樹脂からなる防水層を配した複層シート素材を搬送シート11に用いると、搬送シート11の強度や耐久性を高めるだけでなく、搬送シート11に水が染み込みにくくなる。上記の複層シート素材の基布は、フラットヤーンなど、延伸して強度を高めたもので形成すると、より好ましい。本実施形態においては、ポリエチレン製フラットヤーンを織製した基布の両面に、ポリエチレンをコーティングした複層シート素材を搬送シート11として用いている。このほか、ターポリンなども、搬送シート11として好適に用いることができる。
【0025】
搬送シート11の厚さは、その素材などに応じて適宜決定される。しかし、搬送シート11が薄すぎると、破断しやすくなる。このため、搬送シート11の厚さは、0.1mm以上とすることが好ましい。搬送シート11の厚さは、0.2mm以上とすることがより好ましく、0.3mm以上とすることがさらに好ましい。ただし、搬送シート11が厚すぎると、重量が増えてしまう。また、搬送シート11の柔軟性が低くなって、搬送シート11をシート巻き取りローラ12aで巻き取りにくくなる。このため、搬送シート11の厚さは、2mm以下とすることが好ましい。搬送シート11の厚さは、1.5mm以下とすることがより好ましく、1mm以下とすることがさらに好ましい。本実施形態では、搬送シート11の厚さを、約0.4mmとしている。
【0026】
搬送シート11の寸法は、荷台21の寸法などに応じて適宜決定される。搬送シート11は、荷台21の上面の一部のみを覆う寸法とすることもできるが、荷台21の上面の略全体を覆う寸法とすることが好ましい。これにより、荷台21におけるどの場所に積荷3が置かれても、その積荷3を搬送シート11で搬送することが可能である。したがって、搬送シート11の横幅は、荷台21の横幅と同程度(トラック2が軽トラックである場合には、概ね1.3~1.5mの範囲、トラック2が2トントラックである場合には、概ね1.5~2mの範囲)とすることが好ましい。また、搬送シート11の長さは、荷台21の前後長と同程度(トラック2が軽トラックである場合には、概ね1.8~2.5mの範囲、トラック2が2トントラックである場合には、概ね2.5~4.5mの範囲)か、それよりも長くすることが好ましい。本実施形態においては、後述するように、搬送シート11の前側をシート巻き取りローラ12aで巻き取る構造を採用しているため、搬送シートの長さを、荷台21の前後長よりもある程度長め(トラック2が軽トラックである場合には、概ね3~4.5mの範囲、トラック2が2トントラックである場合には、概ね4~6mの範囲)に設定し、巻き取りしろを確保している。
【0027】
搬送シート11の前端部は、シート引き上げ手段12のシート巻き取りローラ12aに固定される。一方、搬送シートの後端部は、荷台21などに取り付けずに、荷台21上に置いただけの状態としてもよい。しかし、この場合には、搬送シート11をシート巻き取りローラ12aで巻き取っていく際に、搬送シート11における積荷3が載置される積荷載置部分(
図4における点P
1と点P
2との間の区間P
1P
2)までもが荷台21上を前方に移動して、その積荷載置部分が、積荷3の下側を前方にすり抜けてしまい、積荷3が元の場所から殆ど動かないおそれがある。このときには、搬送シート11の傾斜部分α(
図3)は、後側に殆ど拡大しない。この状況は、積荷3が軽量で、積荷3による搬送シート11の押さえが効きにくい場合に生じやすい。このため、搬送シート11の後端部は、荷台21の後端部近傍に固定することが好ましい。これにより、積荷3が軽量である場合でも、搬送シート11をシート巻き取りローラ12aで巻き取る際に、搬送シート11の積荷載置部分を前方に移動させることなく、搬送シート11の傾斜部分αを後側に拡大させていくことが可能となる。
【0028】
本実施形態においては、搬送シート11の後端部を、荷台21の後アオリ21aの上端部(後アオリが上向きに起立した状態にあるときの上端部。以下同じ。)に固定している。積荷3を荷台21から降ろす際には、
図4の矢印A
2に示すように、後アオリ21aが後側に倒され、後アオリ21aの上端部が下側を向いた反転状態となる。この点、搬送シート11の後端部を、荷台21の後アオリ21aの上端部に固定しておくと、後アオリ21aを反転状態としたときに、搬送シート11の積荷載置部分(区間P
1P
2)が張った状態となり、積荷載置部分の上面が平坦になるため、積荷載置部分の上側を積荷3が後側に移動しやすくなる。
【0029】
荷台21に対する搬送シート11の固定方法は、特に限定されず、接着剤や粘着テープやボルトなどを用いて固定することもできる。しかし、接着剤で固定すると、搬送シート11を交換する際などに、搬送シート11を荷台21から取り外しにくくなる。また、粘着テープでは、しっかりと固定することが難しい。さらに、ボルトで固定すると、荷台21にボルト孔を設ける必要がある。このため、本実施形態においては、断面C字状のクリップ13を用いて搬送シート11を後アオリ21aの上端部に固定している。これにより、クリップ13の弾性力によって、搬送シート11の後端部を荷台21にしっかりと固定しながらも、搬送シート11を取り外す必要があるときには、その固定を簡単に外すことができる。また、後アオリ21aにボルト孔を設ける必要もない。
【0030】
ところで、搬送シート11の積荷載置部分(区間P1P2)は、積荷3との摩擦などで摩耗しやすい箇所となっている。また、積荷が砂利などである場合には、搬送シートが傷付くおそれもある。さらに、積荷が泥などである場合には、搬送シートが汚れるおそれもある。このため、本実施形態においては、搬送シート11の積荷載置部分に、保護シート11aを重ねている。
【0031】
保護シート11aとしては、各種のシート素材を用いることができる。例えば、ゴム製シートや樹脂製シートを保護シート11aとして用いることができる。しかし、一般的なゴム製シートは、滑りが悪いため、その上側に載せられた積荷3が、移動しにくくなるし、低摩擦なゴム製シートは、高価である。これに対し、樹脂製シートは、滑りがよいものが多い。このため、保護シート11aとしては、樹脂製シートを好適に用いることができる。低摩擦な樹脂としては、ポリ塩化ビニルや、ポリプロピレンや、ナイロンや、フッ素樹脂などが例示される。本実施形態においては、ポリ塩化ビニル製シートを保護シート11aとして用いている。ポリ塩化ビニルは、安価でありながらも、強度や耐候性や耐水性に優れるという利点を有している。
【0032】
また、保護シート11aには、緩衝性もある程度要求されるところ、保護シート11aを厚めに形成することで、保護シート11aに緩衝性を付与することができる。保護シート11aの厚さは、1mm以上とすることが好ましく、2mm以上とすることがより好ましい。ただし、保護シート11aを厚くしすぎると、保護シート11aが重くなるだけでなく、保護シート11aの柔軟性が低下してしまう。このため、保護シート11aの厚さは、10mm以下とすることが好ましく、5mm以下とすることがより好ましい。本実施形態においては、保護シート11aの厚さを3mmとしている。
【0033】
保護シート11aの上面には、低摩擦加工を施すこともできる。これにより、保護シート11aの上面を積荷3がより移動しやすくなる。低摩擦加工としては、保護シート11aの上面を低摩擦材料でコーティングするコーティング加工や、保護シート11aの上面に多数の凹凸を形成するエンボス加工(保護シート11aと積荷3との接触面積を減らす加工)が挙げられる。しかし、コーティング加工では、積荷3との摩擦でコーティング膜が剥離するおそれがある。このため、本実施形態においては、保護シート11aの上面にエンボス加工を施すことで、保護シート11aの上面に織地状の凹凸を形成している。
【0034】
この保護シート11aは、搬送シート11の動き(傾斜等)に追従するように、搬送シート11に対して固定される。保護シート11aは、その略全体を保護シート11aに固定してもよいが、その一部のみを搬送シート11に固定することが好ましい。これにより、保護シート11aの固定に要する手間を軽減することができる。この点、保護シート11aの少なくとも前側(一側)を搬送シート11に固定しておけば、保護シート11aを搬送シート11の動きに追従させることができる。このため、本実施形態においては、保護シート11aの前側の縁部に沿った箇所のみを搬送シート11に固定している。
【0035】
搬送シート11に対する保護シート11aの固定方法は、特に限定されない。本実施形態においては、手軽さを重視して、両面接着テープを用いて保護シート11aを搬送シート11に固定しているが、これ以外の方法を採用することも可能である。例えば、接着剤で接着する方法や、紐やワイヤなどの線材を用いて結び付ける方法や、糸で縫い付ける方法を採用することもできる。また、スナップボタンを用いる方法や、面ファスナを用いる方法や、クリップを用いる方法を採用することもできる。
【0036】
2.2 シート引き上げ手段
既に述べたように、本実施形態においては、シート引き上げ手段12として、搬送シート11の前側をシート巻き取りローラ12aで巻き取ることで引き上げる構造を採用している。このシート引き上げ手段12は、
図4に示すように、シート巻き取りローラ12aのほかにも、上側ガイドローラ12bと、下側ガイドローラ12cとを備えている。上側ガイドローラ12bは、シート巻き取りローラ12aよりも高い位置に配されており、下側ガイドローラ12cは、シート巻き取りローラ12aよりも低い位置に配されている。これらのローラ12a,12b,12cは、柱状を為す左右一対の支持部材12d
L,12d
R(
図1参照)の間に軸支されている。支持部材12d
L,12d
Rの下部は、荷台21における左右の側アオリ21b
L,21b
Rの前側にそれぞれ固定されている。
【0037】
このシート引き上げ手段12によって、搬送シート11の前側が高さh
1(
図4)まで引き上げられ、その後、シート巻き取りローラ12aに巻き取られる。これにより、
図3(b),(c)に示すように、搬送シート11の傾斜部分αが後側に拡大していき、積荷3が後方に移動する。この搬送シート11の引き上げ高さh
1は、ある程度高く設定する必要がある。というのも、搬送シート11の引き上げ高さh
1が低いと、傾斜部分αの角度θ(
図3(b))が小さくなり、積荷3が傾斜部分αに押されにくくなるからである。このため、搬送シート11の引き上げ高さh
1は、80cm以上とすることが好ましく、100cm以上とすることがより好ましい。
【0038】
ただし、搬送シート11の引き上げ高さh1を高くしすぎると、支持部材12dL,12dRの安定性を確保しにくくなる。また、トラック2の全高が法令で定められた範囲(軽トラックの場合で全高2.0m)を越え、トラック2が公道を走れなくなる。このため、搬送シート11の引き上げ高さh1は、150cm以下とすることが好ましく、130cm以下とすることがより好ましい。本実施形態においては、搬送シート11の引き上げ高さh1を約120cmに設定している。
【0039】
シート巻き取りローラ12aは、図示省略のローラ回転機構によって、その中心線L
1回りに回転させることが可能となっている。シート巻き取りローラ12aが順方向に回転(
図4で時計回りに回転)すると、搬送シート11がシート巻き取りローラ12aに巻き取られる。これに対し、シート巻き取りローラ12aが逆方向に回転(
図4で反時計回りに回転)すると、搬送シート11がシート巻き取りローラ12aから繰り出される。搬送シート11における区間P
3P
5は、搬送シート11における区間P
2P
3の重量によって上側に引っ張られているため、シート巻き取りローラ12aが逆方向に回転しても、区間P
3P
5の搬送シート11がだぶつかないようになっている。
【0040】
上記のローラ回転機構は、手動式としてもよいし、自動式としてもよい。手動式のローラ回転機構としては、シート巻き取りローラ12aと同軸に取り付けたハンドル等が例示される。自動式のローラ回転機構としては、シート巻き取りローラ12aと同軸に取り付けたモータ等が例示される。手動式のローラ回転機構には、ローラ回転機構をシンプルで安価に実現できるという利点があり、自動式のローラ回転機構には、作業者の肉体的な負担を軽減できるという利点がある。本実施形態においては、コストを重視して、手動式のローラ回転機構を採用している。
【0041】
シート巻き取りローラ12aは、搬送シート11の引き上げ高さh
1(
図4)と略同じ高さに配してもよい。しかし、既に述べたように、搬送シート11の引き上げ高さh
1は、ある程度確保することが好ましいところ、そのような高い位置にシート巻き取りローラ12aを設置すると、それを操作するハンドル等の位置も高くなり、ハンドル等を操作しにくくなる(ハンドル等の操作は、通常、荷台21脇の地面に立った状態で行う。)また、シート巻き取りローラ12aをモータ等で回転させる場合にも、モータ等のメンテナンスが行いにくくなる。この点、本実施形態では、上記の上側ガイドローラ12bを設けたことによって、搬送シート11の引き上げ高さh
1を確保しながら、ハンドルの操作等を行いやすい高さにシート巻き取りローラ12aを配することが可能となっている。上側ガイドローラ12bを設けた場合、シート巻き取りローラ12aの設置高さh
2は、通常、50~100cmに設定される。
【0042】
上側ガイドローラ12bは、シート巻き取りローラ12aに巻き取られる搬送シート11を、その前段で、シート巻き取りローラ12aよりも高い位置に案内するためのものである。搬送シート11は、上側ガイドローラ12bの上側(点P3)に掛け回されることで、高さh1まで引き上げられる。上側ガイドローラ12bを設けることで、シート巻き取りローラ12aを低い位置(操作やメンテナンス等しやすい高さ)に設置しながら、搬送シート11の引き上げ高さh1を確保することが可能となる。
【0043】
下側ガイドローラ12cは、シート巻き取りローラ12aと上側ガイドローラ12bとの間の搬送シート11を、シート巻き取りローラ12aよりも低い位置に案内するためのものである。搬送シート11は、下側ガイドローラ12cの下側(点P4)に掛け回される。下側ガイドローラ12cを設けることで、搬送シート11に抵抗が付与され、シート巻き取りローラ12aを回転させていないときに、搬送シート11が勝手に繰り出されにくくすることができる。
【0044】
3.トラック用積荷搬送装置の使用方法
図3を参照して、本発明の積荷搬送装置1の使用方法について説明する。本発明の積荷搬送装置1を備えたトラック2の荷台21に積荷3を載せるときには、
図3(a)に示すように、搬送シート11における水平部分(保護シート11aの水平部分)に積荷3を載せる。所定の積荷3を荷台21に載せたら、トラック2を目的地まで運転する。
【0045】
トラック2が目的地に到着すると、後アオリ21aを開けて下向きにし、積荷3を荷台21の後側から降ろす。このとき、
図3(a)に示すように、積荷3が荷台21の前側にあると、荷台21の後側からでは積荷3に手が届かない。このような場合に、本発明の積荷搬送装置1を好適に使用することができる。
【0046】
すなわち、シート巻き取りローラ12aを順方向に回転させ、
図3(b)に示すように、搬送シート11の傾斜部分αを荷台21の後側に拡大させていく。これにより、積荷3が傾斜部分αに押されて後側に移動していく。積荷3の移動速度は、シート巻き取りローラ12aの回転速度を変化させることにより、調節することができる。積荷3が倒すことができないものである場合や、荷台21から落下すると破損するおそれがあるものである場合には、積荷3の状態を見ながらゆっくりとシート巻き取りローラ12aを回転させる。
【0047】
図3(c)に示すように、積荷3が荷台21の後端部まで移動すると、シート巻き取りローラ12aの回転を停止し、積荷3を降ろす。ただし、積荷3が土や肥料や穀粒等の紛粒物であり、地面に野積み状態に降ろしたい場合には、積荷3が荷台21の後端部まで移動しても、シート巻き取りローラ12aの回転を停止することなく、シート巻き取りローラ12aを回転し続ける。これにより、積荷3は、荷台21の後方から地面上に落下し続ける。
【0048】
全ての積荷3を降ろし終えたら、積荷搬送装置1を初期状態に戻す。すなわち、後アオリ21aを閉じて上向きにするとともに、シート巻き取りローラ12aを逆方向に回転させる。これにより、荷台21の後端部付近まで拡大していた傾斜部分αが、後側から荷台21上に寝ていく。搬送シート11が
図3(a)に示す状態となったら、シート巻き取りローラ12aの回転を停止する。
【0049】
このように、本発明の積荷搬送装置1は、荷台21上で手が届きにくい箇所に載せた積荷3を、手が届きやすい箇所に搬送したり、荷台21から降ろしたりできるものとなっている。
【符号の説明】
【0050】
1 トラック用積荷搬送装置(積荷搬送装置)
11 搬送シート
11a 保護シート
12 シート引き上げ手段
12a シート巻き取りローラ
12b 上側ガイドローラ
12c 下側ガイドローラ
12dL 左側支持部材
12dR 右側支持部材
13 クリップ
2 トラック
21 荷台
21a 後アオリ
21bL 左側アオリ
21bR 右側アオリ
3 積荷
A1 矢印(積荷の搬送方向)
A2 矢印(後アオリの開放方向)
α 搬送シートの傾斜部分