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特開2023-10589導電性組成物及びその製造方法、導電性画像の記録方法、並びに導電性画像
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023010589
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】導電性組成物及びその製造方法、導電性画像の記録方法、並びに導電性画像
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/22 20060101AFI20230113BHJP
   H01B 1/00 20060101ALI20230113BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20230113BHJP
   B22F 9/00 20060101ALI20230113BHJP
   B22F 1/102 20220101ALI20230113BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20230113BHJP
   B22F 9/24 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
H01B1/22 A
H01B1/00 E
H01B13/00 Z
H01B13/00 503D
B22F9/00 B
B22F1/102
B22F1/00 K
B22F9/24 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089685
(22)【出願日】2022-06-01
(31)【優先権主張番号】P 2021113076
(32)【優先日】2021-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021113077
(32)【優先日】2021-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021113078
(32)【優先日】2021-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021113079
(32)【優先日】2021-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520449345
【氏名又は名称】キヤノンバージニア, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Canon Virginia, Inc.
【住所又は居所原語表記】12000 Canon Blvd., Newport News, Virginia, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100168033
【弁理士】
【氏名又は名称】竹山 圭太
(72)【発明者】
【氏名】関 真範
(72)【発明者】
【氏名】渡部 大輝
(72)【発明者】
【氏名】小林 遊磨
(72)【発明者】
【氏名】田邊 浩
【テーマコード(参考)】
4K017
4K018
5G301
5G323
【Fターム(参考)】
4K017AA08
4K017CA07
4K017CA08
4K017DA07
4K018BA01
4K018BA02
4K018BB04
4K018BB05
4K018BC29
4K018BD04
4K018KA33
5G301DA02
5G301DA03
5G301DA05
5G301DA42
5G301DD02
5G301DE01
5G323CA05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】簡易な後処理を行うだけでも導電性に優れた導電性画像を容易に記録することが可能な導電性組成物、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】金属粒子、及び金属粒子を被覆するための処理剤を含有する導電性組成物である。処理剤が、一般式(1)~(7)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種である。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粒子、及び前記金属粒子を被覆するための処理剤を含有する導電性組成物であって、
前記処理剤が、下記一般式(1)で表される化合物、下記一般式(2)で表される化合物、下記一般式(3)で表される化合物、下記一般式(4)で表される化合物、下記一般式(5)で表される化合物、下記一般式(6)で表される化合物、及び下記一般式(7)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする導電性組成物。
(前記一般式(1)中、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、酸エステル基、又は親水性基を表し、R~Rの少なくとも1つは前記親水性基であり、残りのすべてが同時に水素原子となることはない。前記親水性基は、(i)複素芳香族基;(ii)ヒドロキシ基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、3級アルキルアミノ基、及び複素芳香族基からなる群より選択される少なくとも1種の親水性官能基が結合した芳香族基;又は(iii)前記親水性官能基が、ヘテロ原子、アミド結合、若しくはエステル結合を含んでいてもよい脂肪族基を介して結合した芳香族基;である)
(前記一般式(2)中、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、酸エステル基、又は親水性基を表し、R~Rの少なくとも1つは前記親水性基であり、残りのすべてが同時に水素原子となることはない。前記親水性基は、(i)複素芳香族基;(ii)ヒドロキシ基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、3級アルキルアミノ基、及び複素芳香族基からなる群より選択される少なくとも1種の親水性官能基が結合した芳香族基;又は(iii)前記親水性官能基が、ヘテロ原子、アミド結合、若しくはエステル結合を含んでいてもよい脂肪族基を介して結合した芳香族基;である)
(前記一般式(3)中、R及びRは、それぞれ独立に、芳香族基又は親水性基を表し、R及びRの少なくとも1つは前記親水性基である。前記親水性基は、(i)複素芳香族基;(ii)ヒドロキシ基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、3級アルキルアミノ基、及び複素芳香族基からなる群より選択される少なくとも1種の親水性官能基が結合した芳香族基;又は(iii)前記親水性官能基が、ヘテロ原子、アミド結合、若しくはエステル結合を含んでいてもよい脂肪族基を介して結合した芳香族基;である)
(前記一般式(4)中、R及びRは、それぞれ独立に、芳香族基又は親水性基を表し、R及びRの少なくとも1つは前記親水性基である。前記親水性基は、(i)複素芳香族基;(ii)ヒドロキシ基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、3級アルキルアミノ基、及び複素芳香族基からなる群より選択される少なくとも1種の親水性官能基が結合した芳香族基;又は(iii)前記親水性官能基が、ヘテロ原子、アミド結合、若しくはエステル結合を含んでいてもよい脂肪族基を介して結合した芳香族基;である)
(前記一般式(5)中、Rは、親水性基を表す。前記親水性基は、(i)複素芳香族基;(ii)ヒドロキシ基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、3級アルキルアミノ基、及び複素芳香族基からなる群より選択される少なくとも1種の親水性官能基が結合した芳香族基;又は(iii)前記親水性官能基が、ヘテロ原子、アミド結合、若しくはエステル結合を含んでいてもよい脂肪族基を介して結合した芳香族基;である)
(前記一般式(6)中、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、酸エステル基、又は親水性基を表し、R~Rの少なくとも1つは前記親水性基である。前記親水性基は、(i)ヒドロキシ基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、3級アルキルアミノ基、及び複素芳香族基からなる群より選択されるいずれかの親水性官能基;又は(ii)前記親水性官能基が結合した、ヘテロ原子、アミド結合、若しくはエステル結合を含んでいてもよい脂肪族基;である)
(前記一般式(7)中、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、酸エステル基、又は親水性基を表し、R~Rの少なくとも1つは前記親水性基である。前記親水性基は、(i)ヒドロキシ基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、3級アルキルアミノ基、及び複素芳香族基からなる群より選択されるいずれかの親水性官能基;又は(ii)前記親水性官能基が結合した、ヘテロ原子、アミド結合、若しくはエステル結合を含んでいてもよい脂肪族基;である)
【請求項2】
前記一般式(1)中の前記親水性基、前記一般式(2)中の前記親水性基、前記一般式(3)中の前記親水性基、前記一般式(4)中の前記親水性基、及び前記一般式(5)中の前記親水性基が、それぞれ独立に、(ii)前記親水性官能基が結合したフェニル基;又は(iii)前記親水性官能基が、ヘテロ原子、アミド結合、若しくはエステル結合を含んでいてもよい脂肪族基を介して結合したフェニル基;である請求項1に記載の導電性組成物。
【請求項3】
前記親水性基が、カルボン酸基及びスルホン酸基の少なくとも一方が結合したフェニル基である請求項2に記載の導電性組成物。
【請求項4】
前記フェニル基に結合したカルボン酸基及びスルホン酸基の合計数が、2又は3である請求項3に記載の導電性組成物。
【請求項5】
前記一般式(1)中の前記親水性基及び前記一般式(2)中の前記親水性基が、それぞれ独立に、(i)ピリダジル基、ピラジル基、ピリミジル基、及びトリアジル基からなる群より選択されるいずれかの複素芳香族基である請求項1に記載の導電性組成物。
【請求項6】
前記一般式(6)中の前記親水性基及び前記一般式(7)中の前記親水性基が、それぞれ独立に、下記一般式(8)で表される基である請求項1に記載の導電性組成物。
(前記一般式(8)中、R及びRは、それぞれ独立にアルキル基を表し、Rは、アルキレン基を表す)
【請求項7】
前記金属粒子が、銀、及び金からなる群より選択される少なくとも1種の金属で形成されている請求項1乃至6のいずれか1項に記載の導電性組成物。
【請求項8】
前記金属粒子の体積基準の累積50%粒子径が、5nm以上100nm以下である請求項1乃至6のいずれか1項に記載の導電性組成物。
【請求項9】
さらに、水性媒体を含有する請求項1乃至6のいずれか1項に記載の導電性組成物。
【請求項10】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の導電性組成物の製造方法であって、
水性媒体中で金属塩を還元して前記金属粒子を形成する第1工程と、
形成した前記金属粒子と、前記処理剤を接触させる第2工程と、を有することを特徴とする導電性組成物の製造方法。
【請求項11】
前記金属塩として、金属廃液から回収された回収金属塩を用いる請求項10に記載の導電性組成物の製造方法。
【請求項12】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の導電性組成物を基材に付与する工程を有することを特徴とする導電性画像の記録方法。
【請求項13】
前記導電性組成物をインクジェット法により前記基材に付与する請求項12に記載の導電性画像の記録方法。
【請求項14】
さらに、前記基材に付与した前記導電性組成物を20℃以上50℃以下の温度で乾燥させる工程を有する請求項12に記載の導電性画像の記録方法。
【請求項15】
基材と、前記基材に形成された導電層と、を有する導電性画像であって、
前記導電層が、金属粒子、及び前記金属粒子を被覆するための処理剤を含有し、
前記処理剤が、下記一般式(1)で表される化合物、下記一般式(2)で表される化合物、下記一般式(3)で表される化合物、下記一般式(4)で表される化合物、下記一般式(5)で表される化合物、下記一般式(6)で表される化合物、及び下記一般式(7)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする導電性画像。
(前記一般式(1)中、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、酸エステル基、又は親水性基を表し、R~Rの少なくとも1つは前記親水性基であり、残りのすべてが同時に水素原子となることはない。前記親水性基は、(i)複素芳香族基;(ii)ヒドロキシ基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、3級アルキルアミノ基、及び複素芳香族基からなる群より選択される少なくとも1種の親水性官能基が結合した芳香族基;又は(iii)前記親水性官能基が、ヘテロ原子、アミド結合、若しくはエステル結合を含んでいてもよい脂肪族基を介して結合した芳香族基;である)
(前記一般式(2)中、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、酸エステル基、又は親水性基を表し、R~Rの少なくとも1つは前記親水性基であり、残りのすべてが同時に水素原子となることはない。前記親水性基は、(i)複素芳香族基;(ii)ヒドロキシ基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、3級アルキルアミノ基、及び複素芳香族基からなる群より選択される少なくとも1種の親水性官能基が結合した芳香族基;又は(iii)前記親水性官能基が、ヘテロ原子、アミド結合、若しくはエステル結合を含んでいてもよい脂肪族基を介して結合した芳香族基;である)
(前記一般式(3)中、R及びRは、それぞれ独立に、芳香族基又は親水性基を表し、R及びRの少なくとも1つは前記親水性基である。前記親水性基は、(i)複素芳香族基;(ii)ヒドロキシ基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、3級アルキルアミノ基、及び複素芳香族基からなる群より選択される少なくとも1種の親水性官能基が結合した芳香族基;又は(iii)前記親水性官能基が、ヘテロ原子、アミド結合、若しくはエステル結合を含んでいてもよい脂肪族基を介して結合した芳香族基;である)
(前記一般式(4)中、R及びRは、それぞれ独立に、芳香族基又は親水性基を表し、R及びRの少なくとも1つは前記親水性基である。前記親水性基は、(i)複素芳香族基;(ii)ヒドロキシ基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、3級アルキルアミノ基、及び複素芳香族基からなる群より選択される少なくとも1種の親水性官能基が結合した芳香族基;又は(iii)前記親水性官能基が、ヘテロ原子、アミド結合、若しくはエステル結合を含んでいてもよい脂肪族基を介して結合した芳香族基;である)
(前記一般式(5)中、Rは、親水性基を表す。前記親水性基は、(i)複素芳香族基;(ii)ヒドロキシ基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、3級アルキルアミノ基、及び複素芳香族基からなる群より選択される少なくとも1種の親水性官能基が結合した芳香族基;又は(iii)前記親水性官能基が、ヘテロ原子、アミド結合、若しくはエステル結合を含んでいてもよい脂肪族基を介して結合した芳香族基;である)
(前記一般式(6)中、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、酸エステル基、又は親水性基を表し、R~Rの少なくとも1つは前記親水性基である。前記親水性基は、(i)ヒドロキシ基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、3級アルキルアミノ基、及び複素芳香族基からなる群より選択されるいずれかの親水性官能基;又は(ii)前記親水性官能基が結合した、ヘテロ原子、アミド結合、若しくはエステル結合を含んでいてもよい脂肪族基;である)
(前記一般式(7)中、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、酸エステル基、又は親水性基を表し、R~Rの少なくとも1つは前記親水性基である。前記親水性基は、(i)ヒドロキシ基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、3級アルキルアミノ基、及び複素芳香族基からなる群より選択されるいずれかの親水性官能基;又は(ii)前記親水性官能基が結合した、ヘテロ原子、アミド結合、若しくはエステル結合を含んでいてもよい脂肪族基;である)
【請求項16】
基材に記録される導電性画像であって、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の導電性組成物で形成されたことを特徴とする導電性画像。
【請求項17】
前記基材が、ガラス、紙、又は樹脂材料である請求項16に記載の導電性画像。
【請求項18】
前記樹脂材料が、生体適合性材料である請求項17に記載の導電性画像。
【請求項19】
前記生体適合性材料が、ゼラチン、セルロース、キトサン、コラーゲン、及びフィブロインからなる群より選択される少なくとも1種である請求項18に記載の導電性画像。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性組成物及びその製造方法、導電性画像の記録方法、並びに導電性画像に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性を示すパターンや回路などの膜状の導電性画像を記録及び形成する材料として、金属粒子を含有する液状の導電性組成物が用いられている。このような導電性組成物中で金属粒子を安定して分散させるには、金属粒子に吸着しうる修飾剤を用いる必要がある。但し、このような修飾剤は導電性に寄与しない成分であることから、高温での焼成処理や溶剤を用いた洗浄処理などを施すことで、記録された導電性画像から除去する必要があった。しかし、導電性画像を記録する基材の多様化に伴い、高温での焼成処理を必要としない導電性組成物が求められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、導電性粒子及びイオン性液体を含有する、導電性パターンを形成するための導電性インクが提案されている(特許文献1)。また、金属粒子、この金属粒子の表面に吸着してミセル構造を形成しうる有機成分、及び安定化剤として作用するアミン化合物を含有する、導電性被膜を形成するための導電性インクが提案されている(特許文献2)。さらに、金属粒子、及びこの金属粒子にπ接合するフタロシアニンなどの有機π共役系配位子を含有する、導電性膜を形成するためのナノインク組成物が提案されている(特許文献3)。また、金属粒子、樹脂バインダ、及びヒドラゾン化合物を含有する加熱水蒸気処理用の導電性ペーストが提案されている(特許文献4)。特許文献4には、ペーストをスクリーン印刷した後、加熱水蒸気処理を行うことでヒドラゾン化合物から、還元性を持つヒドラジン化合物を生成させ、金属酸化物を金属に還元することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-335995号公報
【特許文献2】特開2014-240491号公報
【特許文献3】特開2016-026237号公報
【特許文献4】特開2015-076233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1~4で提案された導電性インクなどでは、基材への付与後に高温で焼成せず、乾燥させるといった簡易な後処理を行うだけでは導電性に寄与しない成分を十分に除去することができず、導電性に優れた画像を記録することは困難であった。
【0006】
したがって、本発明の目的は、簡易な後処理を行うだけでも導電性に優れた導電性画像を容易に記録することが可能な導電性組成物を提供することにある。また、本発明の別の目的は、この導電性組成物の製造方法、この導電性組成物を用いた導電性画像の記録方法、及び導電性画像を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明によれば、金属粒子、及び前記金属粒子を被覆するための処理剤を含有する導電性組成物であって、前記処理剤が、下記一般式(1)で表される化合物、下記一般式(2)で表される化合物、下記一般式(3)で表される化合物、下記一般式(4)で表される化合物、下記一般式(5)で表される化合物、下記一般式(6)で表される化合物、及び下記一般式(7)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする導電性組成物が提供される。
【0008】
(前記一般式(1)中、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、酸エステル基、又は親水性基を表し、R~Rの少なくとも1つは前記親水性基であり、残りのすべてが同時に水素原子となることはない。前記親水性基は、(i)複素芳香族基;(ii)ヒドロキシ基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、3級アルキルアミノ基、及び複素芳香族基からなる群より選択される少なくとも1種の親水性官能基が結合した芳香族基;又は(iii)前記親水性官能基が、ヘテロ原子、アミド結合、若しくはエステル結合を含んでいてもよい脂肪族基を介して結合した芳香族基;である)
【0009】
(前記一般式(2)中、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、酸エステル基、又は親水性基を表し、R~Rの少なくとも1つは前記親水性基であり、残りのすべてが同時に水素原子となることはない。前記親水性基は、(i)複素芳香族基;(ii)ヒドロキシ基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、3級アルキルアミノ基、及び複素芳香族基からなる群より選択される少なくとも1種の親水性官能基が結合した芳香族基;又は(iii)前記親水性官能基が、ヘテロ原子、アミド結合、若しくはエステル結合を含んでいてもよい脂肪族基を介して結合した芳香族基;である)
【0010】
(前記一般式(3)中、R及びRは、それぞれ独立に、芳香族基又は親水性基を表し、R及びRの少なくとも1つは前記親水性基である。前記親水性基は、(i)複素芳香族基;(ii)ヒドロキシ基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、3級アルキルアミノ基、及び複素芳香族基からなる群より選択される少なくとも1種の親水性官能基が結合した芳香族基;又は(iii)前記親水性官能基が、ヘテロ原子、アミド結合、若しくはエステル結合を含んでいてもよい脂肪族基を介して結合した芳香族基;である)
【0011】
(前記一般式(4)中、R及びRは、それぞれ独立に、芳香族基又は親水性基を表し、R及びRの少なくとも1つは前記親水性基である。前記親水性基は、(i)複素芳香族基;(ii)ヒドロキシ基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、3級アルキルアミノ基、及び複素芳香族基からなる群より選択される少なくとも1種の親水性官能基が結合した芳香族基;又は(iii)前記親水性官能基が、ヘテロ原子、アミド結合、若しくはエステル結合を含んでいてもよい脂肪族基を介して結合した芳香族基;である)
【0012】
(前記一般式(5)中、Rは、親水性基を表す。前記親水性基は、(i)複素芳香族基;(ii)ヒドロキシ基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、3級アルキルアミノ基、及び複素芳香族基からなる群より選択される少なくとも1種の親水性官能基が結合した芳香族基;又は(iii)前記親水性官能基が、ヘテロ原子、アミド結合、若しくはエステル結合を含んでいてもよい脂肪族基を介して結合した芳香族基;である)
【0013】
(前記一般式(6)中、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、酸エステル基、又は親水性基を表し、R~Rの少なくとも1つは前記親水性基である。前記親水性基は、(i)ヒドロキシ基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、3級アルキルアミノ基、及び複素芳香族基からなる群より選択されるいずれかの親水性官能基;又は(ii)前記親水性官能基が結合した、ヘテロ原子、アミド結合、若しくはエステル結合を含んでいてもよい脂肪族基;である)
【0014】
(前記一般式(7)中、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、酸エステル基、又は親水性基を表し、R~Rの少なくとも1つは前記親水性基である。前記親水性基は、(i)ヒドロキシ基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、3級アルキルアミノ基、及び複素芳香族基からなる群より選択されるいずれかの親水性官能基;又は(ii)前記親水性官能基が結合した、ヘテロ原子、アミド結合、若しくはエステル結合を含んでいてもよい脂肪族基;である)
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡易な後処理を行うだけでも導電性に優れた導電性画像を容易に記録することが可能な導電性組成物を提供することができる。また、本発明によれば、この導電性組成物の製造方法、この導電性組成物を用いた導電性画像の記録方法、及び導電性画像を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、さらに本発明を詳細に説明する。本発明において、化合物が塩である場合は、組成物中では塩はイオンに解離して存在しているが、便宜上、「塩を含有する」と表現する。本発明においては、導電性組成物のことを、単に「組成物」又は「インク」と記載することがある。また、本発明における「画像」とは、文字、写真、線画、配線、パターンなどを含むものであり、基材に所望の「画像」を表現することを「記録」「形成」と記載する。物性値は、特に断りのない限り、常温(25℃)における値である。
【0017】
種々検討した結果、本発明者らは、金属粒子への吸着部位として機能するヒドラジン構造と、金属粒子を分散させるための親水性基と、を有する低分子化合物を金属粒子の修飾剤として用いることが有効であることを見出した。すなわち、金属粒子と、ヒドラジン構造及び親水性基を有する特定の低分子化合物とを併用することで、乾燥などの簡易な後処理を行うだけで導電性に優れた導電性画像を記録しうることを見出し、本発明に至った。
【0018】
<導電性組成物>
本発明の導電性組成物は、金属粒子、及び金属粒子を被覆するための処理剤を含有する。以下、導電性組成物を構成する各成分について、それぞれ説明する。
【0019】
(金属粒子)
導電性組成物は金属粒子を含有する。金属粒子は、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、及び金からなる群より選択される少なくとも1種の金属で形成されていることが好ましい。なかでも、金属粒子を形成する材料としては、白金、銅、銀、金が好ましく、銀、金が特に好ましい。
【0020】
金属粒子は、その粒子表面の少なくとも一部が、後述する処理剤によって被覆されている。処理剤が金属粒子と相互作用することで、金属粒子の表面に処理剤が付着し、固定化される。金属粒子と処理剤との相互作用には、物理吸着及び化学吸着がある。物理吸着の場合、ファンデルワールス相互作用とイオン吸着の混合であり、平衡状態にあると考えられる。一方、化学吸着の場合、金属粒子に含まれる金属原子と、処理剤に含まれる窒素原子とが化学結合(共有結合)を形成していると考えられる。処理剤による金属粒子の被覆は、物理吸着及び化学吸着のいずれであってもよい。
【0021】
金属粒子の処理剤として用いる後述する化合物は、いずれも、窒素原子が金属粒子と相互作用して金属粒子を被覆するとともに、親水性基が、金属粒子を分散させるための分散基として機能すると考えられる。このような特定の低分子化合物を用いることで、水性媒体などの液媒体中に分散しにくかった金属粒子を安定して分散させることができる。これに加えて、乾燥などの簡易な後処理を行うだけでも導電性に優れた導電性画像を容易に形成しうる導電性組成物とすることができる。
【0022】
金属粒子の表面の少なくとも一部が処理剤で被覆されているか否かについては、金属粒子のゼータ電位より確認することができる。処理剤によって被覆されていない金属粒子のゼータ(ζ)電位は、通常、0mV以上である、すなわち、ゼータ電位はゼロか、プラスで絶対値の小さい値(0~+3mV程度の値)を示す。これに対し、処理剤によってその粒子表面の少なくとも一部が被覆された金属粒子のゼータ電位は、処理剤の親水性基に応じて変化する。処理剤の親水性基がアニオン性である場合、処理剤によって被覆された金属粒子のゼータ電位は、被覆されていない金属粒子のゼータ電位よりも低い値(主には、マイナスの値、具体的には、-1mV以下の値)を示す。一方、処理剤の親水性基が複素芳香族基や3級アルキルアミノ基である場合、処理剤によって被覆された金属粒子のゼータ電位は、被覆されていない金属粒子のゼータ電位よりも高い値(主には、プラスで絶対値の大きい値、具体的には、+5mV以上の値)を示す。
【0023】
ゼータ電位は、ゼータ電位測定装置により測定することができる。ゼータ電位の測定に当たっては、金属粒子を被覆していない処理剤を除外するため、導電性組成物について遠心分離処理を行って上澄みを除去することでウェットケーキを得た後、液媒体(水など)で希釈して調製した試料を用いることが好ましい。
【0024】
導電性組成物の製造過程では、金属粒子の表面の少なくとも一部が処理剤で被覆されているか否かについては、金属粒子と接触させる前後におけるこれらの化合物の量を追跡することでも確認することができる。例えば、金属粒子と処理剤を接触させた後、遠心分離して固液分離し、得られる上澄み液中の処理剤を定量分析することで、金属粒子の表面の一部又は全部が処理剤で被覆されているか否かを検証することができる。金属粒子と接触させる前後における処理剤の量を追跡する方法(分析方法)としては、高速液体クロマトグラフ(HPLC)やガスクロマトグラフ(GC)を使用する方法などを挙げることができる。
【0025】
金属粒子は、分散した状態で導電性組成物中に存在する。導電性組成物中の金属粒子の体積基準の累積50%粒子径は、保存安定性の観点から、5nm以上100nm以下であることが好ましい。以下、「体積基準の累積50%粒子径」のことを、単に「平均粒子径」とも記す。金属粒子の平均粒子径が5nm未満であると、導電性組成物中で凝集しやすくなる場合がある。一方、金属粒子の平均粒子径が100nm超であると、導電性組成物中で沈降しやすくなる場合がある。金属粒子の体積基準の累積50%粒子径(平均粒子径)は、動的光散乱法により測定することができる。金属粒子が金又は銀で形成されている場合には、紫外-可視吸収スペクトルを測定することで、金属粒子の粒子径の違いを簡便に判断することができる。
【0026】
(処理剤)
導電性組成物は、金属粒子を被覆するための処理剤として、下記一般式(1)~(7)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含有する。処理剤は、無色の化合物(360~830nmの波長領域に吸収極大を有しない化合物)であることが好ましい。すなわち、処理剤は、いわゆる「色材」ではない。処理剤の分子量は、1,000以下であることが好ましく、600以下であることがさらに好ましく、500以下であることが特に好ましく、また、100以上であることが好ましい。処理剤の分子量は、アニオン性基は酸型、カチオン性基は塩基型、とした構造についてのものである。
【0027】
【0028】
一般式(1)中、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、酸エステル基、又は親水性基を表し、R~Rの少なくとも1つは親水性基であり、残りのすべてが同時に水素原子となることはない。親水性基は、(i)複素芳香族基;(ii)ヒドロキシ基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、3級アルキルアミノ基、及び複素芳香族基からなる群より選択される少なくとも1種の親水性官能基が結合した芳香族基;又は(iii)親水性官能基が、ヘテロ原子、アミド結合、若しくはエステル結合を含んでいてもよい脂肪族基を介して結合した芳香族基;である。一般式(1)で表される化合物は、ヒドラジン化合物とも称することができる。
【0029】
【0030】
一般式(2)中、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、酸エステル基、又は親水性基を表し、R~Rの少なくとも1つは親水性基であり、残りのすべてが同時に水素原子となることはない。親水性基は、(i)複素芳香族基;(ii)ヒドロキシ基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、3級アルキルアミノ基、及び複素芳香族基からなる群より選択される少なくとも1種の親水性官能基が結合した芳香族基;又は(iii)親水性官能基が、ヘテロ原子、アミド結合、若しくはエステル結合を含んでいてもよい脂肪族基を介して結合した芳香族基;である。一般式(2)で表される化合物は、ヒドラゾン化合物とも称することができる。
【0031】
一般式(3)中、R及びRは、それぞれ独立に、芳香族基又は親水性基を表し、R及びRの少なくとも1つは前記親水性基である。親水性基は、(i)複素芳香族基;(ii)ヒドロキシ基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、3級アルキルアミノ基、及び複素芳香族基からなる群より選択される少なくとも1種の親水性官能基が結合した芳香族基;又は(iii)親水性官能基が、ヘテロ原子、アミド結合、若しくはエステル結合を含んでいてもよい脂肪族基を介して結合した芳香族基;である。
【0032】
一般式(4)中、R及びRは、それぞれ独立に、芳香族基又は親水性基を表し、R及びRの少なくとも1つは前記親水性基である。親水性基は、(i)複素芳香族基;(ii)ヒドロキシ基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、3級アルキルアミノ基、及び複素芳香族基からなる群より選択される少なくとも1種の親水性官能基が結合した芳香族基;又は(iii)親水性官能基が、ヘテロ原子、アミド結合、若しくはエステル結合を含んでいてもよい脂肪族基を介して結合した芳香族基;である。
【0033】
一般式(5)中、Rは、親水性基を表す。親水性基は、(i)複素芳香族基;(ii)ヒドロキシ基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、3級アルキルアミノ基、及び複素芳香族基からなる群より選択される少なくとも1種の親水性官能基が結合した芳香族基;又は(iii)親水性官能基が、ヘテロ原子、アミド結合、若しくはエステル結合を含んでいてもよい脂肪族基を介して結合した芳香族基;である。
【0034】
一般式(6)中、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、酸エステル基、又は親水性基を表し、R~Rの少なくとも1つは親水性基である。親水性基は、(i)ヒドロキシ基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、3級アルキルアミノ基、及び複素芳香族基からなる群より選択されるいずれかの親水性官能基;又は(ii)親水性官能基が結合した、ヘテロ原子、アミド結合、若しくはエステル結合を含んでいてもよい脂肪族基;である。
【0035】
一般式(7)中、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、酸エステル基、又は親水性基を表し、R~Rの少なくとも1つは親水性基である。親水性基は、(i)ヒドロキシ基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、3級アルキルアミノ基、及び複素芳香族基からなる群より選択されるいずれかの親水性官能基;又は(ii)親水性官能基が結合した、ヘテロ原子、アミド結合、若しくはエステル結合を含んでいてもよい脂肪族基;である。
【0036】
一般式(1)中のR~R、一般式(2)中のR~R、一般式(6)中のR~R、及び一般式(7)中のR~Rで表される脂肪族基としては、アルキル基及びアルケニル基を挙げることができる。アルキル基及びアルケニル基は、直鎖、分岐鎖、及び環状のいずれであってもよく、炭素数は1乃至12であることが好ましい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、s-ペンチル基、t-ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などを挙げることができる。アルケニル基としては、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基などを挙げることができる。脂肪族基を構成する少なくとも一部の水素原子は、フッ素原子、塩素原子、及び臭素原子などのハロゲン原子や、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子などのヘテロ原子で置換されていてもよい。
【0037】
一般式(1)中のR~R、一般式(2)中のR~R、一般式(3)中のR及びR、一般式(4)中のR及びR、一般式(6)中のR~R、並びに一般式(7)中のR~Rで表される芳香族基としては、アリール基及びヘテロアリール基を挙げることができる。アリール基及びヘテロアリール基は、単環及び複合環のいずれであってもよく、環を構成する原子数は3乃至10であることが好ましい。ヘテロアリール基を構成するヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子を挙げることができる。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ビフェニル基などを挙げることができる。ヘテロアリール基としては、ピリジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジニル基、チエニル基、チアゾリル基などを挙げることができる。これらのなかでも、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ビフェニル基、ピリジニル基が好ましく、フェニル基がさらに好ましい。
【0038】
一般式(1)中のR~R、一般式(2)中のR~R、一般式(6)中のR~R、及び一般式(7)中のR~Rで表される酸エステル基は、カルボン酸のエステル結合-C(=O)-O-に、上述の脂肪族基又は芳香族基が結合した基である。酸エステル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロポキシカルボニル基、i-プロポキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、t-ブトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基などを挙げることができる。
【0039】
一般式(1)中のR~Rは、少なくとも1つが親水性基であり、残りのすべてが同時に水素原子となることはない。一般式(2)中のR~Rは、少なくとも1つが親水性基であり、残りのすべてが同時に水素原子となることはない。一般式(1)中のR~R及び一般式(2)中のR~Rのうち、親水性基以外の基のすべてを水素原子とせず、親水性基以外の置換基を有する構造とすることで、反応活性部位であるヒドラジン構造の反応性を低下させることができる。これにより、還元による金属粒子の凝集を抑制することができる。また、一般式(3)中のR及びRの少なくとも1つは親水性基である。一般式(4)中のR及びRの少なくとも1つは親水性基である。一般式(5)中のRは親水性基である。
【0040】
一般式(1)中のR~R、一般式(2)中のR~R、一般式(3)中のR及びR、一般式(4)中のR及びR、並びに一般式(5)中のRで表される親水性基は、以下に示す(i)~(iii)のいずれかである。
(i)複素芳香族基
(ii)ヒドロキシ基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、3級アルキルアミノ基、及び複素芳香族基からなる群より選択される少なくとも1種の親水性官能基が結合した芳香族基
(iii)ヒドロキシ基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、3級アルキルアミノ基、及び複素芳香族基からなる群より選択される少なくとも1種の親水性官能基が、ヘテロ原子、アミド結合、又はエステル結合を含んでいてもよい脂肪族基を介して結合した芳香族基
【0041】
(i)複素芳香族基を構成するヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子を挙げることができる。複素芳香族基としては、ピリジル基、ピリダジル基、ピラジル基、ピリミジル基、トリアジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジニル基、チエニル基、チアゾリル基、フラニル基などを挙げることができる。なかでも、ピリダジル基、ピラジル基、ピリミジル基、トリアジル基が好ましい。すなわち、一般式(1)中の親水性基及び一般式(2)中の親水性基は、それぞれ独立に、(i)ピリダジル基、ピラジル基、ピリミジル基、及びトリアジル基からなる群より選択されるいずれかの複素芳香族基であることが好ましい。
【0042】
(ii)ヒドロキシ基などの親水性官能基が結合した芳香族基としては、アリール基及びヘテロアリール基を挙げることができる。アリール基及びヘテロアリール基は単環及び複合環のいずれであってもよく、環を構成する原子数は3乃至10であることが好ましい。ヘテロアリール基を構成するヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子を挙げることができる。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ビフェニル基などを挙げることができる。ヘテロアリール基としては、ピリジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジニル基、チエニル基、チアゾリル基などを挙げることができる。これらのなかでも、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ビフェニル基、ピリジニル基が好ましく、フェニル基がさらに好ましい。
【0043】
(iii)ヒドロキシ基などの親水性官能基が、ヘテロ原子、アミド結合、又はエステル結合を含んでいてもよい脂肪族基を介して結合した芳香族基としては、アリール基及びヘテロアリール基を挙げることができる。アリール基及びヘテロアリール基は単環及び複合環のいずれであってもよく、環を構成する原子数は3乃至10であることが好ましい。ヘテロアリール基を構成するヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子を挙げることができる。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ビフェニル基などを挙げることができる。ヘテロアリール基としては、ピリジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジニル基、チエニル基、チアゾリル基などを挙げることができる。これらのなかでも、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ビフェニル基、ピリジニル基が好ましく、フェニル基がさらに好ましい。脂肪族基としては、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、i-プロピレン基、ブチレン基、プロピレン基、へキシレン基などの炭素数1乃至6のアルキレン基などを挙げることができる。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子を挙げることができる。
【0044】
一般式(1)~(5)中の親水性基は、それぞれ独立に、以下の(ii)又は(iii)であることが好ましい。すなわち、(ii)親水性官能基が結合したフェニル基;又は(iii)親水性官能基が、ヘテロ原子、アミド結合、若しくはエステル結合を含んでいてもよい脂肪族基を介して結合したフェニル基;であることが好ましい。また、親水性基は、カルボン酸基及びスルホン酸基の少なくとも一方が結合したフェニル基であることがさらに好ましい。そして、フェニル基に結合したカルボン酸基及びスルホン酸基の合計数は、親水性及び入手容易性などの観点から、2又は3であることが好ましい。
【0045】
一般式(6)中のR~Rの少なくとも1つは親水性基である。一般式(7)中のR~Rの少なくとも1つは親水性基である。一般式(6)中のR~R、一般式(7)中のR~Rで表される親水性基は、以下に示す(i)又は(ii)である。
(i)ヒドロキシ基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、3級アルキルアミノ基、及び複素芳香族基からなる群より選択されるいずれかの親水性官能基
(ii)ヒドロキシ基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、3級アルキルアミノ基、及び複素芳香族基からなる群より選択されるいずれかの親水性官能基が結合した、ヘテロ原子、アミド結合、又はエステル結合を含んでいてもよい脂肪族基
【0046】
複素芳香族基を構成するヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子を挙げることができる。複素芳香族基としては、ピリジル基、ピリダジル基、ピラジル基、ピリミジル基、トリアジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジニル基、チエニル基、チアゾリル基、フラニル基などを挙げることができる。なかでも、ピリダジル基、ピラジル基、ピリミジル基、トリアジル基が好ましい。
【0047】
脂肪族基としては、メチレン基、エチレン基、メチルメチレン基、n-プロピレン基、i-プロピレン基、ブチレン基、プロピレン基、へキシレン基などの炭素数1乃至6のアルキレン基などを挙げることができる。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子を挙げることができる。
【0048】
一般式(6)中の親水性基及び一般式(7)中の親水性基は、それぞれ独立に、下記一般式(8)で表される基であることが好ましい。
【0049】
【0050】
一般式(8)中、R及びRは、それぞれ独立にアルキル基を表し、Rは、アルキレン基を表す。一般式(8)中、R及びRで表されるアルキル基は、直鎖、分岐鎖、及び環状のいずれであってもよく、炭素数は1乃至12であることが好ましい。環状のアルキル基は、単環及び複合環のいずれであってもよく、環を構成する炭素数は3乃至10であることが好ましい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、s-ペンチル基、t-ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などを挙げることができる。
【0051】
一般式(8)中、Rで表されるアルキレン基は、直鎖状及び環状のいずれであってもよく、炭素数1乃至6のアルキレン基が好ましい。直鎖状のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、i-プロピレン基、ブチレン基、プロピレン基、へキシレン基などを挙げることができる。環状のアルキレン基としては、1,2-シクロブチレン基、1,2-シクロペンチレン基、1,2-シクロヘキシレン基、1,2-シクロオクチレン基、1,2-シクロデシレン基などを挙げることができる。
【0052】
各一般式における、ヒドロキシ基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、3級アルキルアミノ基、及び複素芳香族基などの親水性官能基は、塩を形成していてもよい。塩を形成するカチオンとしては、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、及び有機アンモニウムイオンなどを挙げることができる。アルカリ金属イオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのイオンを挙げることができる。有機アンモニウムイオンとしては、アルキルアミン、アルカノールアミンなどのイオンを挙げることができる。塩を形成するアニオンとしては、水酸化物イオン、ハロゲン化物イオンなどを挙げることができる。ハロゲン化物イオンとしては、ヨウ素、臭素、塩素などのイオンを挙げることができる。
【0053】
導電性組成物が水性媒体をさらに含有する場合には、水性媒体のpHに応じて親水性基を選択することができる。例えば、水性媒体のpHが酸性(pH<7)である場合には、3級アルキルアミノ基や複素芳香族基が塩を形成しやすくなる。一方、水性媒体のpHがアルカリ性(pH>7)である場合には、ヒドロキシ基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、及びホスホン酸基が塩を形成しやすくなる。
【0054】
各一般式で表される化合物例を、酸性基は酸型、塩基性基は塩基型として、表1-1、1-2、2-1~2-4、及び3~7に示す。勿論、本発明においては、各一般式の構造及びその定義に包含されるものであれば、各一般式で表される化合物は、以下に示す各化合物例に限定されない。表1-1、1-2、2-1~2-4、及び3~7中、略称は、Me:メチル基、Et:エチル基、Ph:フェニル基、tBu:t-ブチル基、2Py:2-ピリジル基である。
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
一般式(1)~(7)で表される化合物はいずれも、金属粒子を被覆するための処理剤として用いることで、金属粒子を液媒体中に安定に分散させることができる。なかでも、金属粒子の分散安定性及び処理剤の安定性に優れるため、一般式(1)、(2)、(6)、及び(7)で表される化合物が好ましく、一般式(1)及び(2)で表される化合物がさらに好ましい。一方、一般式(3)~(5)で表される化合物は、処理剤のなかでも、被覆粒子のゼータ電位(絶対値)が若干小さくなるものがあり、分散安定性が相対的に低くなりやすい傾向にある。また、一般式(3)~(5)で表される化合物は、処理剤の安定性が相対的に低くなりやすいため、一般式(1)、(2)、(6)及び(7)で表される化合物のほうがより好ましい。
【0067】
(液媒体)
導電性組成物は、さらに、液媒体を含有してもよい。液媒体としては、非水性媒体及び水性媒体のいずれも用いることができる。非水性媒体としては、ヘプタン、石油エーテルなどの有機溶剤で構成される液媒体を挙げることができる。非水性媒体は水を含有しない。水性媒体は、水を含み、さらに各種の有機溶剤を含んでもよい。導電性組成物は、さらに、水性媒体を含有することが好ましい。
【0068】
水性媒体は、水、又は水を主成分としてプロトン性有機溶剤や非プロトン性有機溶剤を併用した混合媒体である。有機溶剤としては、任意の割合で水と混和するもの(水混和性有機溶剤)、又は任意の割合で水に溶解するもの(水溶性有機溶剤)を用いることが好ましい。なかでも、水を50質量%以上含有する均一な混合媒体を水性媒体として用いることが好ましい。水としては、脱イオン水(イオン交換水)や超純水を用いることが好ましい。
【0069】
プロトン性有機溶剤は、酸素原子や窒素原子に結合した水素原子(酸性水素原子)を有する有機溶剤である。非プロトン性有機溶剤は、酸性水素原子を有しない有機溶剤である。有機溶剤としては、アルコール類、(ポリ)アルキレングリコール類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルエステル類、カルボン酸アミド類、ケトン類、ケトアルコール類、環状エーテル類、含窒素溶剤類、及び含硫黄溶剤類などを挙げることができる。
【0070】
水性媒体としては、水、水/アルコールの混合溶媒、水/(ポリ)アルキレングリコールの混合溶媒、及び水/含窒素溶剤類の混合溶媒などを挙げることができる。導電性組成物中の水の含有量(質量%)は、導電性組成物全質量を基準として、10.0質量%以上90.0質量%以下であることが好ましく、50.0質量%以上90.0質量%以下であることがさらに好ましい。
【0071】
導電性組成物中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、導電性組成物全質量を基準として、5.0質量%以上90.0質量%以下であることが好ましく、10.0質量%以上50.0質量%以下であることがさらに好ましい。
【0072】
(その他の添加剤)
導電性組成物は、必要に応じて、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどの多価アルコール類;尿素、エチレン尿素などの尿素誘導体;などの、水溶性有機化合物をさらに含有してもよい。また、導電性組成物は、必要に応じて、界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤、及び樹脂などの種々の添加剤をさらに含有してもよい。
【0073】
界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、及びノニオン性などの界面活性剤を用いることができる。導電性組成物中の界面活性剤の含有量(質量%)は、導電性組成物全質量を基準として、0.1質量%以上5.0質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上2.0質量%以下であることがさらに好ましい。
【0074】
界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロック共重合体、及びアセチレングリコール系化合物などのノニオン性界面活性剤を用いることが好ましい。
【0075】
<導電性組成物の製造方法>
次に、上述の導電性組成物を製造する方法について説明する。本発明の導電性組成物の製造方法は、水性媒体中で金属塩を還元して金属粒子を形成する第1工程、形成した金属粒子と、処理剤とを接触させる第2工程、を有する。
【0076】
(第1工程)
第1工程では、水性媒体中で金属塩を還元して金属粒子を形成する。水性媒体としては、導電性組成物に含有させうる前述の水性媒体を用いることができる。金属塩としては、金属イオンと無機アニオン種で構成される金属塩、金属イオンと有機アニオン種で構成される金属塩、及び金属イオンと無機有機アニオン種で構成される金属塩を挙げることができる。金属イオンとしては、金属粒子を形成しうる、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、及び金などの金属のイオンを用いることができる。無機アニオン種としては、酸化物、ハロゲン、炭酸、硝酸などのアニオンを挙げることができる。有機アニオン種としては、ギ酸、酢酸などのカルボン酸のアニオンを挙げることができる。
【0077】
金属塩の具体例としては、塩化ニッケル(II)、硝酸ニッケル(II)などのニッケル化合物;塩化パラジウム(II)、酢酸パラジウム(II)、酸化パラジウム(II)などのパラジウム化合物;塩化白金(II)、酸化白金(IV)などの白金化合物;塩化銅(I)、塩化銅(II)、酸化銅(I)、酸化銅(II)などの銅化合物;塩化銀(I)、硝酸銀、酸化銀、酢酸銀などの銀化合物;酸化金(III)、塩化金(I)、八塩化四金、塩化金(III)、臭化金(III)、フッ化金(III)、フッ化金(V)、水酸化金(I)、水酸化金(III)などの金化合物;などを挙げることができる。
【0078】
近年、電子機器などに用いられている貴金属やレアメタルなどの材料は、このまま使い続けると数十年のうちに資源が枯渇する可能性が指摘されている。このような材料はクリティカルマテリアルと呼ばれており、資源を枯渇させないため、使用済みの貴金属製品や廃電子機器からこれらの資源を回収して再資源化する取り組みが各国で行われている。なかでも、白金、金、銀などの貴金属の再資源化は他の資源と比較して進んでおり、再生技術も確立されつつある。金の再生方法としては、回収した廃製品から他の金属を除去し、王水や有機溶媒で金を溶解・浸出した後、還元剤で金を再結晶化して純度を高め、さらに融解して有機物を除去した塊にする方法などがある。回収した貴金属を製品として再利用する場合には純度保証が必要となる。例えば、金の場合には99.99%の高い純度を保証する必要がある。
【0079】
このような観点から、金属塩として、金属廃液から回収された回収金属塩を用いることも好ましい。例えば、金属粒子として金粒子を含有する導電性組成物を製造する場合、回収した金を利用した塩化金(III)酸を用いることができる。塩化金(III)酸は、上記の金の再生方法の途中で生成する金-王水溶液を乾燥することで調製することができる。
【0080】
金属粒子として金粒子を含有する導電性組成物を製造する場合、出発原料の1つとして、再生した塩化金(III)酸を用いることができる。金は還元性が高いことから、再生した塩化金(III)酸に他の金属不純物が含まれていても、金粒子が優先的に形成される。このため、再生した塩化金(III)酸について、高い純度保証は不要である。塩化金(III)酸の純度は、90%以上であることが好ましく、95%以上あることがさらに好ましい。金の再生過程で、純度保証に関連する工程を省略して原材料コストを抑制することができる。
【0081】
また、金属粒子として銀粒子を含有する導電性組成物を製造する場合、出発原料の1つとして使用しうる硝酸銀(I)について、高い純度保証は不要である。硝酸銀(I)の純度は、90%以上であることが好ましく、95%以上であることがさらに好ましい。銀の再生過程で、純度保証に関連する工程を省略して原材料コストを抑制することができる。
【0082】
廃棄物からは、公知の方法にしたがって硝酸銀(I)を回収することができる。例えば、銀を含有する廃液に硝酸を加えて酸性とし、沈殿物を分離して得たろ液に重クロム酸塩を添加すれば、重クロム酸銀の沈殿が生成する。重クロム酸銀の沈殿物を熱希硝酸に溶解した後、NO型陰イオン交換樹脂で処理することで、硝酸銀(I)を回収することができる。
【0083】
金属塩を還元するには、還元剤を用いることが好ましい。還元剤としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、エチレングリコールなどの1級ヒドロキシ基を有するアルコール類;2-プロパノール、2-ブタノールなどの2級ヒドロキシ基を有するアルコール類;グリセリンなどの1級ヒドロキシ基及び2級ヒドロキシ基を有するアルコール類;チオール類;ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドなどのアルデヒド類;グルコース、フルクトース、グリセルアルデヒド、ラクトース、アラビノース、マルトースなどの糖類;クエン酸、タンニン酸、アスコルビン酸などの有機酸類及びその塩;水素化ホウ素類及びその塩;ヒドラジン、アルキルヒドラジン、硫酸ヒドラジンなどのヒドラジン類;などを挙げることができる。有機酸類や水素化ホウ素類の塩を形成するアニオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属のイオン、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属のイオン、アンモニウムイオン、有機アンモニウムイオンなどを挙げることができる。
【0084】
還元剤としては、有機酸類やその塩を用いることが好ましい。有機酸類やその塩は、金属塩を還元するとともに、形成される金属粒子の表面に付着して、金属粒子同士の凝集や合一が生じない程度の斥力を生じさせることができる。有機酸類やその塩としては、アスコルビン酸やその塩、クエン酸やその塩などが好ましい。なかでも、アスコルビン酸塩、クエン酸塩などがさらに好ましい。
【0085】
また、還元剤として、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、デンプン、デキストリン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロースなどの化合物を用いることができる。これらの化合物も、上記の有機酸類やその塩と同様に、金属塩を還元するとともに、形成される金属粒子の表面に付着して、金属粒子の凝集や合一が生じない程度の斥力を生じさせることができる。
【0086】
還元剤の使用量は、金属の種類、金属塩の濃度、形成しようとする金属粒子の大きさ(粒子径)、還元剤を添加する際の温度や撹拌力などに応じて適宜設定すればよい。第1工程では、激しく撹拌しながら金属塩を還元することが好ましい。また、第1工程では、加熱条件下で金属塩を還元することが好ましく、水性媒体を還流させながら金属塩を還元することがさらに好ましい。例えば、水性媒体として水を使用する場合、温度を115℃以上、また、200℃以下に設定することが好ましい。温度の調整は反応容器を加熱するためのオイルバスの温度により行うことができる。
【0087】
還元剤によって還元されただけでも、処理剤で被覆されていない金属粒子は、還元剤の種類に応じたゼータ電位の値を示す。例えば、後述する実施例では、還元剤としてクエン酸を用いて金粒子を形成している。クエン酸が付着した金粒子のゼータ電位は-40mV程度である。但し、クエン酸などの還元剤は金属粒子への付着力が弱いため、金属粒子が継続して安定に分散された導電性組成物とはならない。
【0088】
(第2工程)
第2工程では、第1工程で形成した金属粒子と、処理剤とを接触させる。具体的には、金属粒子と、処理剤とを、水性媒体中で混合すればよい。これにより、目的とする導電性組成物を得ることができる。処理剤の量を、すべての金属粒子の表面を一様に覆う程度の量としたい場合(過剰な量にしたくない場合)には、以下の方法にしたがっておおよその量を把握することができる。
【0089】
金属粒子の粒子径が決まれば、金属粒子1個当たりの表面積を算出することができる。したがって、処理剤の1分子当たりの占有面積を概算することができれば、金属粒子1個の表面を被覆するための分子の個数を算出することができる。占有面積は、原子の直径を1.5Åとして断面積を算出し、処理剤の原子の個数を掛けて概算値としてもよい。
【0090】
また、金属粒子を被覆する飽和吸着量を概算し、それを目安の添加量としてもよい。具体的には、処理剤の添加量に対して、吸着量をプロットする。得られたプロット(吸着等温線)がラングミュア型の吸着等温線に則った曲線である場合、添加量を増加しても吸着量が増加せず、飽和する領域が存在するため、この領域の吸着量を飽和吸着量とみなすことができる。第2工程では、20℃以上50℃以下に加熱しながら、金属粒子と処理剤とを接触させることが好ましい。第1工程で用いた還元剤の残渣が金属粒子表面に不純物として付着していることがある。20℃以上50℃以下に加熱することで、不純物を除去しながら、より相互作用の強い処理剤との置き換えが進行すると考えられる。
【0091】
<導電性画像の記録方法>
次に、導電性画像を記録する方法について説明する。本発明の導電性画像の記録方法は、上述の導電性組成物を基材に付与する工程を有する。導電性組成物を基材に付与することで、所望とする導電性画像を得ることができる。導電性組成物を基材に付与する方法としては、インクジェット法、フレキソ法、スピンコーティング法などを挙げることができる。なかでも、インクジェット法によって導電性組成物を基材に付与することが好ましい。インクジェット法は、導電性組成物をインクジェット方式の吐出ヘッドから吐出して記録媒体などの基材に付与する方法である。導電性組成物を吐出ヘッドから吐出する方式としては、導電性組成物に力学的エネルギーを付与する方式や、導電性組成物に熱エネルギーを付与する方式などがある。上述の導電性組成物を用いること以外、インクジェット法によって導電性組成物を基材に付与する方法は公知の方法とすればよい。
【0092】
導電性組成物をインクジェット方式の吐出ヘッドから吐出して基材に付与し、導電性画像を記録(形成)する場合、その表面張力や粘度を適切に制御した導電性組成物を用いることが好ましい。具体的には、導電性組成物中の金属粒子の含有量(質量%)は、組成物全質量を基準として、5.0質量%以上20.0質量%以下であることが好ましい。導電性組成物中の金属粒子の含有量が5.0質量%未満であると、膜状の導電性画像を形成するために要する導電性組成物の量が多くなりすぎる場合がある。一方、導電性組成物中の金属粒子の含有量が20.0質量%超であると、吐出ヘッドの吐出口が詰まりやすくなる場合がある。
【0093】
25℃における導電性組成物の表面張力は、10mN/m以上60mN/m以下であることが好ましく、20mN/m以上60mN/m以下であることがさらに好ましく、30mN/m以上50mN/m以下であることが特に好ましい。25℃における導電性組成物の粘度は、1.0mPa・s以上10mPa・sであることが好ましく、1.0mPa・s以上5mPa・s以下であることがさらに好ましい。25℃における導電性組成物のpHは、5.0以上9.0以下であることが好ましい。
【0094】
導電性画像の記録方法は、さらに、基材に付与した導電性組成物を乾燥させる工程を有してもよい。上述の導電性組成物を用いれば、例えば100℃以上の高温で乾燥させなくても、常温(25℃)などの低温で乾燥させるだけで、優れた導電性を有する導電性画像を形成することができる。基材に付与した導電性組成物は、送風や加熱などによって乾燥させてもよいが、これらの手法を利用しないで乾燥、すなわち、自然乾燥させればよい。基材に付与した導電性組成物を乾燥させる温度は、20℃以上120℃以下とすることが好ましく、20℃以上50℃以下とすることがさらに好ましい。乾燥温度が20℃未満であると、乾燥に要する時間がより長くなる場合がある。乾燥時間を短くすることで、記録される導電性画像の導電性が高くなりやすい。基材の耐熱温度が高い場合には、耐熱温度まで乾燥温度を上げることも可能である。本発明の記録方法では、導電性組成物を基材に付与した後、加熱や焼結する工程、活性エネルギー線などの照射により硬化する工程は実施しなくてもよい。
【0095】
<導電性画像>
本発明の導電性画像は、基材と、基材に形成された導電層と、を有する導電性画像であり、導電層が、上述の処理剤によってその粒子表面の少なくとも一部が被覆された金属粒子を含有するものである。好適には、本発明の導電性画像は、基材に記録される導電性画像であり、上述の導電性組成物によって形成された画像である。
【0096】
(基材)
基材は、付与された導電性組成物を乾燥などさせて導電性画像を形成しうるものであればよい。導電性組成物は低温での乾燥でも導電性を発現するため、耐熱温度の低い基材を用いることもできる。基材としては、ガラス、紙、樹脂材料、セラミックス、及びシリコンなどを用いることが好ましい。
【0097】
樹脂材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリエチレングリコールなどの合成樹脂類;ポリヒドロキシ酪酸、ポリシアノアクリレート、ポリ無水物、ポリケトン、ポリ(オルトエステル)、ポリ-ε-カプロラクトン、ポリアセタール、ポリ(α-ヒドロキシエステル)、ポリカーボネート、ポリ(イミノカーボネート)、ポリフォスファゼン、ポリ(β-ヒドロキシエステル)、ポリペプチド、ゼラチン、セルロース、キトサン、コラーゲン、フィブロインなどの生体適合性を有する、合成樹脂類又は天然樹脂類を挙げることができる。樹脂材料はシート状であることが好ましい。
【0098】
樹脂材料としては、生体適合性材料を用いることが好ましい。生体適合性材料としては、ポリヒドロキシ酪酸、ポリシアノアクリレート、ポリ無水物、ポリケトン、ポリ(オルトエステル)、ポリ-ε-カプロラクトン、ポリアセタール、ポリ(α-ヒドロキシエステル)、ポリカーボネート、ポリ(イミノカーボネート)、ポリフォスファゼン、ポリ(β-ヒドロキシエステル)、ポリペプチド、ゼラチン、セルロース、キトサン、コラーゲン、フィブロインなどの樹脂で形成されたシート状の材料が好ましい。なかでも、ゼラチン、セルロース、キトサン、コラーゲン、及びフィブロインからなる群より選択される少なくとも1種の天然高分子で形成された生体適合性材料が好ましい。
【実施例0099】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。成分量に関して「部」及び「%」と記載しているものは特に断らない限り質量基準である。
【0100】
<処理剤の合成>
処理剤のうち、試薬として市販されていないものは、以下の文献に記載された公知の方法にしたがって合成した。また、合成例を記載したもの以外の処理剤は、対応する構造を有する出発物質に変更すること以外は同様にして合成した。合成した化合物の構造は、液体クロマトグラフィー/マススペクトロメトリー(LC/MS)(商品名「LC/MSD TOF」、Agilent Technologies製))により分析して同定した。イオン化法としては、エレクトロスプレーイオン化法(ESI)を用いた。
・Journal of the American Chemical Society,2007年,第129巻,34号,p.10320-10321
・Tetrahedron Letters,2007年,第48巻,48号,p.8409-8412
・Nature Chemistry,2017年,第9巻,3号,p.234-243
【0101】
(例示化合物1-1)
1,1-ジメチルヒドラジン0.94g、Pd(dba)・CHCl(富士フイルム和光純薬製)220mg、P(t-Bu)・HBF(東京化成工業製)140mg、及び炭酸セシウム8.1gをトルエン100mLに添加して懸濁液を得た。アルゴン雰囲気下、4-ブロモ安息香酸エチル2.4gを懸濁液に添加し、100℃で12時間加熱還流した。室温まで冷却した後、水を加え、トルエンで抽出した。トルエン層をロータリーエバポレーターで濃縮し、得られた成分をカラムクロマトグラフィーで精製して、(2,2-ジメチルヒドラジニル)安息香酸エチル0.9gを得た。水酸化ナトリウム水溶液を加えて25℃で3時間撹拌した。塩酸を加えて生成した固体をろ取し、例示化合物1-1 0.8gを得た(m/z=180.1、収率37%)。
【0102】
(例示化合物2-1)
4-ヒドラジノ安息香酸1.5gのエタノール20mL溶液にアセトアルデヒド0.6gを加え、70℃で5時間撹拌した。25℃まで冷却した後、ロータリーエバポレーターを使用して液体を除去し、例示化合物2-1 1.4gを得た(m/z=178.1、収率80%)。
【0103】
(例示化合物3-1)
4-ニトロ安息香酸0.5mmol、4-アミノ安息香酸5mmol、水酸化カリウム5mmol、メタノール6mL、及び水7mLを耐圧性のガラス瓶に入れ、アルミニウムクリンキャップで封じた。100℃のオイルバス中で24時間加熱撹拌した後、25℃まで冷却した。エバポレーターを使用して溶剤を除去し、冷メタノールで抽出した後、ろ過して固体を得た。得られた固体をジクロロメタンに溶解し、濃塩酸20mL及び無水酢酸20mLを加えて25℃で24時間撹拌した。水100mL及びジクロロメタン50mLを入れ、有機層を抽出して抽出物を得た。得られた抽出物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィーによって精製し、例示化合物3-1を得た(m/z=270.1、収率37%)。
【0104】
(例示化合物4-1)
4-アミノ安息香酸0.18mol、濃塩酸5g、及びメタノール150mLを300mLナスフラスコに入れ、氷浴中で撹拌しながら0℃まで冷却した。精製水25mLに溶解させた亜硝酸ナトリウム0.2molを、容器内の温度を5℃以下に抑えながらゆっくりと滴下して撹拌し、ジアゾニウム塩を含むベージュ色の懸濁液を得た。4-アミノ安息香酸0.2mol、酢酸ナトリウム0.6mol、及びメタノール300mLを1Lナスフラスコに入れ、氷浴中で撹拌しながら0℃まで冷却して懸濁液を調製した。調製した懸濁液に、先に調製したジアゾニウム塩を含む懸濁液をゆっくりと添加し、25℃で15時間撹拌した。反応物を吸引ろ過し、水500g及びメタノール100gで固形分を洗浄した後、真空乾燥して例示化合物4-1を得た(m/z=285.1、収率56%)。
【0105】
(例示化合物4-11)
4-アミノ安息香酸0.18mol、濃塩酸5g、及びメタノール150mLを300mLナスフラスコに入れ、氷浴中で撹拌しながら0℃まで冷却した。精製水25mLに溶解させた亜硝酸ナトリウム0.2molを、容器内の温度を5℃以下に抑えながらゆっくりと滴下して撹拌し、ジアゾニウム塩を含むベージュ色の懸濁液を得た。4-アミノピリジン0.2mol、酢酸ナトリウム0.6mol、及びメタノール300mLを1Lナスフラスコに入れ、氷浴中で撹拌しながら0℃まで冷却して懸濁液を調製した。調製した懸濁液に、先に調製したジアゾニウム塩を含む懸濁液をゆっくりと添加し、25℃で15時間撹拌した。反応物を吸引ろ過し、水500g及びメタノール100gで固形分を洗浄した後、真空乾燥して例示化合物4-11を得た(m/z=94.1、収率38%)。
【0106】
(例示化合物5-27)
アルゴン雰囲気下、4-シアノベンゾイルクロライド1.0gのクロロホルム20mL溶液に、N,N-ジメチルエチレンジアミン0.8gを添加し、25℃で5時間撹拌して反応させた。ロータリーエバポレーターを使用して濃縮し、得られた成分をカラムクロマトグラフィーで精製して、例示化合物5-27 1.3gを得た(m/z=217.1、収率99%)。
【0107】
(例示化合物7-12)
窒素ラインを備えた300mLのナスフラスコに、無水テトラヒドロフラン50mL、ジメチルアミノエタンチオール9.3mmol、及び水素化ナトリウム10mmolを入れ、氷浴中で0℃に維持しながら撹拌した。2-ブロモフェナントロリン8.4mmolを無水テトラヒドロフラン10mLに溶解させた溶液を滴下し、ゆっくりと25℃まで昇温させて72時間撹拌した。エバポレーターを使用して溶剤を除去し、冷メタノールで抽出した後、ろ過して固体を得た。得られた固体をジクロロメタンに溶解し、シリカゲルのカラムクロマトグラフィーで精製して、例示化合物7-12を得た(m/z=283.1、収率24%)。
【0108】
(例示化合物7-15)
窒素ラインを備えた300mLのナスフラスコに、無水テトラヒドロフラン50mL、ジメチルアミノエタンチオール9.3mmol、及び水素化ナトリウム10mmolを投入れ、氷浴中で0℃に維持しながら撹拌した。2,9-ジブロモフェナントロリン4.2mmolを無水テトラヒドロフラン100mLに溶解させた溶液を滴下し、ゆっくりと25℃まで昇温させて72時間撹拌した。エバポレーターを使用して溶剤を除去し、冷メタノールで抽出した後、ろ過して固体を得た。得られた固体をジクロロメタンに溶解し、シリカゲルのカラムクロマトグラフィーで精製して、例示化合物7-15を得た(m/z=386.2、収率15%)。
【0109】
<回収金属塩の調製>
基板から回収した金を原料として、回収金属塩を調製した。金メッキのついた基材を切り取り、化学処理しやすくするために5mm×5mm程度の大きさに破砕して破砕片を得た。得られた破砕片を10%希硝酸に2時間浸漬し、銅とニッケルを溶解して金メッキ箔を基材から浮かせた後、ろ紙を敷いたろ過機に希硝酸を通じて、金メッキ箔を分離した。希硝酸は、銅とニッケルが溶解した青緑色を呈していた。ろ紙上の金メッキ箔に希硝酸を加え、金メッキ箔表面に残った銅やニッケルを洗い流した。得られた金メッキ箔をろ紙ごと別の容器に移し、35%塩酸及び60%硝酸を3:1(体積比)で混合した王水溶液を少しずつ滴下して金を溶解させた。金が溶解した時点でろ紙を取り出し、得られた金-王水溶液をろ過して基材の破片を除去した。耐酸性のロータリーエバポレーターを使用してろ液を加温しながら減圧蒸留し、硝酸、塩酸、水の順に除去して、塩化金(III)酸・4水和物を得た。
【0110】
<導電性組成物(分散液)の製造>
以下に示す方法により導電性組成物(分散液)を製造した。製造した導電性組成物中の金属粒子の平均粒子径(体積基準の累積50%粒子径、D50)は、小角X線散乱装置(商品名「Nano-Viewer」、リガク製)により測定した。この際の測定条件は、波長(λ):0.154nm、入射角:1.7°とした。また、導電性組成物中の金属粒子のゼータ電位は、ゼータ電位計(商品名「ゼータサイザーナノ」、マルバーン製)により測定した。この際、製造した導電性組成物について、遠心分離処理を行って上澄みを除去することでウェットケーキを得た後、測定に適した濃度となるように超純水で希釈して調製した試料を測定対象とした。なお、塩化金(III)・4水和物及び硝酸銀(I)(いずれもキシダ化学製)を、クエン酸三ナトリウム・2水和物により還元して生成した金粒子及び銀粒子のゼータ電位は、それぞれ1mV及び0mVであった。
【0111】
(金粒子を用いた導電性組成物)
表8~14に示す使用量の塩化金(III)酸・4水和物、及び超純水1,300mLを加熱還流し、表8~14に示す使用量のクエン酸三ナトリウム・2水和物を添加して、内温を100℃に保ち、2時間撹拌した。表中、塩化金(III)酸・4水和物を「塩化金(III)酸」、クエン酸三ナトリウム・2水和物を「クエン酸」と表記した。25℃まで冷却した後、必要に応じて、0.1mol/Lの塩酸を用いて液体のpHを5に調整し、表8~14に示す種類の処理剤3mmolを添加して15時間撹拌し、各導電性組成物を得た。表8~14中、金属粒子の欄に「Au(回収)」と示したものは、上述の「回収金属塩の調製」で得た塩化金(III)・4水和物を用いた。
【0112】
(銀粒子を用いた導電性組成物)
表8~14に示す使用量の硝酸銀(I)(キシダ化学製)、及び表8~14に示す使用量のクエン酸三ナトリウム・2水和物を超純水1,000mLに溶解し、氷冷しながら30分間撹拌して水溶液を得た。得られた水溶液に、水素化ホウ素ナトリウム33mgをイオン交換水1gに溶解した溶液を添加し、さらに30分間氷冷撹拌して、褐色透明の分散液を得た。得られた分散液を25℃まで冷却した後、必要に応じて、0.1mol/Lの塩酸を用いて液体のpHを3に調整し、撹拌しながら表8~14に示す種類の処理剤3mmolを添加した。さらに25℃で30分間撹拌して、各導電性組成物を得た。
【0113】
(導電性組成物D1)
以下に示す方法により、導電性組成物D1を製造した(比較例)。処理剤として4,5-ビス[(2-N,N-ジメチルアミノエチル)チオ]フタロニトリル(フタロシアニン誘導体)を用いたこと以外は、前述の金粒子を用いた導電性組成物〔分散液〕の製造と同様にして、導電性組成物D1を得た。得られた導電性組成物D1中の金属粒子の平均粒子径は20nm、金属粒子のゼータ電位は39mVであった。4,5-ビス[(2-N,N-ジメチルアミノエチル)チオ]フタロニトリルは、4,5-ジクロロフタロニトリル(東京化成工業製)を原料として使用し、以下の文献に記載された公知の方法にしたがって合成した。導電性組成物D1の詳細を表15に示す。
・Journal of Medicinal Chemistry,2015年,第58巻,4号,p.1736-1749
【0114】
(導電性組成物D2)
以下に示す方法により、導電性組成物D2を製造した(比較例)。塩化金(III)酸・4水和物(キシダ化学製)1g、及び超純水1,300mLを加熱還流し、クエン酸三ナトリウム・2水和物1.75gを添加して2時間撹拌した。25℃まで冷却して、導電性組成物D2を得た。得られた導電性組成物D2中の金属粒子の平均粒子径は20nm、金属粒子のゼータ電位は-38mVであった。導電性組成物D2の詳細を表15に示す。
【0115】
(導電性組成物D3)
以下に示す方法により、導電性組成物D3を製造した(比較例)。特許文献4中、「実施例4」に記載された「分散ペースト4」の調製方法に準じて、以下に示す組成の導電性組成物D3を得た。得られた導電性組成物D3中の金属粒子のゼータ電位は28mVであった。導電性組成物D3の詳細を表15に示す。
・銅微粒子:20部
・共重合ポリエステル:0.875部
・n-ブチルカルビトールアセテート:1.625部
・4-(ジエチルアミノ)ベンズアルデヒド-1,1―ジフェニルヒドラゾン:1部
・エチルカルビトールアセテート:4部
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
<導電性組成物(インク)の製造>
上記で調製した各導電性組成物(分散液)を用い、以下に示す方法により、水性媒体及び界面活性剤を含有する水性のインク(導電性組成物)を製造した。得られたインク中の金属粒子の平均粒子径は、いずれも、原料として用いた導電性組成物(分散液)中の金属粒子の平均粒子径±1nmの範囲内であった。このことから、金属粒子は導電性組成物(分散液)及びインク中で安定して分散していることがわかった。
【0125】
遠心分離機(商品名「CR22N」、エッペンドルフ・ハイマック・テクノロジーズ製)を使用し、8,000rpm、30分間の条件で各導電性組成物(分散液)を遠心分離処理し、上澄みを除去して濃縮物を得た。この濃縮物10.0部(インク中の金属粒子の含有量が10.0%となる量)を含む、以下に示す各成分を混合して、各インクを得た。界面活性剤としては、アセチレングリコール系界面活性剤(商品名「オルフィンPD-005」、日信化学工業製)を用いた。表16~23中の水溶性有機溶剤は、EG:エチレングリコール、BDO:1,3-ブタンジオール、を表す。
・導電性組成物(表16~23の左側に示す種類)の濃縮物:10.0部
・水溶性有機溶剤(表16~23の左側に示す種類):20.0部
・界面活性剤:0.1部
・超純水:69.9部
【0126】
<導電性画像の製造>
インク(導電性組成物)をインクカートリッジに充填し、表16~23の中央に示す吐出方式の記録ヘッドを搭載するインクジェット記録装置にセットした。本実施例においては、1/600インチ×1/600インチの単位領域に、1滴当たり2.5pLのインク滴を8滴付与して記録したベタ画像の記録デューティを「100%」と定義する。このインクジェット記録装置を使用し、温度25℃、相対湿度50%の環境下、表16~23の中央に示す基材に記録デューティが100%である、2mm×3cmのベタ画像を記録して記録物を得た。得られた記録物を表16~23の中央に示す乾燥温度及び乾燥時間の条件で乾燥させて、各導電性画像を得た。
【0127】
表16~23に記載の吐出方式、及びこの吐出方式での吐出に用いたインクジェット記録装置の詳細を以下に示す。
・サーマル:熱エネルギーの作用により記録ヘッドからインクを吐出するインクジェット記録装置(商品名「PIXUS iP7230」、キヤノン製)
・ピエゾ:力学的エネルギーの作用により記録ヘッドからインクを吐出するインクジェット記録装置(商品名「LaboJet-500」、MicroJet製)
【0128】
表16~23に記載の基材の詳細を以下に示す。
・PET:商品名「パナクレアACX」、パナック製
・光沢紙:商品名「光沢紙スタンダードSD-201」、キヤノン製
・ガラス:商品名「カバーガラスNEO」、松浪硝子工業製
・ゼラチンシート:富士フイルム和光純薬製の0.1%ゼラチン溶液を、バーコーターを用いて上記PETに塗布して乾燥させたもの
・フィブロインシート:ミリポアシグマ製の5%フィブロイン水溶液を、バーコーターを用いて上記PETに塗布して乾燥させたもの
【0129】
<導電性評価>
触針式膜厚計(Tencor製)を使用して得られた導電性画像の膜厚を測定した。測定した膜厚から導電性画像の断面積を算出し、4端針法によって体積抵抗率を測定及び算出した。測定及び算出した体積抵抗率を表16~23の右側に示す。また、以下に示す評価基準にしたがって導電性画像の導電性を評価した。以下に示す評価基準において、「A」を許容できる範囲とし、「B」を許容できない範囲とした。結果を表16~23の右側に示す。
A:体積抵抗率が1×10-4Ω・cm以下であった。
B:体積抵抗率が1×10-4Ω・cmを超えていたか、導電性を示さなかった。
【0130】
【0131】
【0132】
【0133】
【0134】
【0135】
【0136】
【0137】
【0138】
本実施形態の開示は、以下の構成及び方法を含む。
(構成1)金属粒子、及び前記金属粒子を被覆するための処理剤を含有する導電性組成物であって、
前記処理剤が、下記一般式(1)で表される化合物、下記一般式(2)で表される化合物、下記一般式(3)で表される化合物、下記一般式(4)で表される化合物、下記一般式(5)で表される化合物、下記一般式(6)で表される化合物、及び下記一般式(7)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする導電性組成物。
【0139】
(前記一般式(1)中、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、酸エステル基、又は親水性基を表し、R~Rの少なくとも1つは前記親水性基であり、残りのすべてが同時に水素原子となることはない。前記親水性基は、(i)複素芳香族基;(ii)ヒドロキシ基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、3級アルキルアミノ基、及び複素芳香族基からなる群より選択される少なくとも1種の親水性官能基が結合した芳香族基;又は(iii)前記親水性官能基が、ヘテロ原子、アミド結合、若しくはエステル結合を含んでいてもよい脂肪族基を介して結合した芳香族基;である)
【0140】
(前記一般式(2)中、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、酸エステル基、又は親水性基を表し、R~Rの少なくとも1つは前記親水性基であり、残りのすべてが同時に水素原子となることはない。前記親水性基は、(i)複素芳香族基;(ii)ヒドロキシ基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、3級アルキルアミノ基、及び複素芳香族基からなる群より選択される少なくとも1種の親水性官能基が結合した芳香族基;又は(iii)前記親水性官能基が、ヘテロ原子、アミド結合、若しくはエステル結合を含んでいてもよい脂肪族基を介して結合した芳香族基;である)
【0141】
(前記一般式(3)中、R及びRは、それぞれ独立に、芳香族基又は親水性基を表し、R及びRの少なくとも1つは前記親水性基である。前記親水性基は、(i)複素芳香族基;(ii)ヒドロキシ基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、3級アルキルアミノ基、及び複素芳香族基からなる群より選択される少なくとも1種の親水性官能基が結合した芳香族基;又は(iii)前記親水性官能基が、ヘテロ原子、アミド結合、若しくはエステル結合を含んでいてもよい脂肪族基を介して結合した芳香族基;である)
【0142】
(前記一般式(4)中、R及びRは、それぞれ独立に、芳香族基又は親水性基を表し、R及びRの少なくとも1つは前記親水性基である。前記親水性基は、(i)複素芳香族基;(ii)ヒドロキシ基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、3級アルキルアミノ基、及び複素芳香族基からなる群より選択される少なくとも1種の親水性官能基が結合した芳香族基;又は(iii)前記親水性官能基が、ヘテロ原子、アミド結合、若しくはエステル結合を含んでいてもよい脂肪族基を介して結合した芳香族基;である)
【0143】
(前記一般式(5)中、Rは、親水性基を表す。前記親水性基は、(i)複素芳香族基;(ii)ヒドロキシ基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、3級アルキルアミノ基、及び複素芳香族基からなる群より選択される少なくとも1種の親水性官能基が結合した芳香族基;又は(iii)前記親水性官能基が、ヘテロ原子、アミド結合、若しくはエステル結合を含んでいてもよい脂肪族基を介して結合した芳香族基;である)
【0144】
(前記一般式(6)中、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、酸エステル基、又は親水性基を表し、R~Rの少なくとも1つは前記親水性基である。前記親水性基は、(i)ヒドロキシ基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、3級アルキルアミノ基、及び複素芳香族基からなる群より選択されるいずれかの親水性官能基;又は(ii)前記親水性官能基が結合した、ヘテロ原子、アミド結合、若しくはエステル結合を含んでいてもよい脂肪族基;である)
【0145】
(前記一般式(7)中、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、酸エステル基、又は親水性基を表し、R~Rの少なくとも1つは前記親水性基である。前記親水性基は、(i)ヒドロキシ基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、3級アルキルアミノ基、及び複素芳香族基からなる群より選択されるいずれかの親水性官能基;又は(ii)前記親水性官能基が結合した、ヘテロ原子、アミド結合、若しくはエステル結合を含んでいてもよい脂肪族基;である)
【0146】
(構成2)前記一般式(1)中の前記親水性基、前記一般式(2)中の前記親水性基、前記一般式(3)中の前記親水性基、前記一般式(4)中の前記親水性基、及び前記一般式(5)中の前記親水性基が、それぞれ独立に、(ii)前記親水性官能基が結合したフェニル基;又は(iii)前記親水性官能基が、ヘテロ原子、アミド結合、若しくはエステル結合を含んでいてもよい脂肪族基を介して結合したフェニル基;である構成1に記載の導電性組成物。
(構成3)前記親水性基が、カルボン酸基及びスルホン酸基の少なくとも一方が結合したフェニル基である構成2に記載の導電性組成物。
(構成4)前記フェニル基に結合したカルボン酸基及びスルホン酸基の合計数が、2又は3である構成3に記載の導電性組成物。
(構成5)前記一般式(1)中の前記親水性基及び前記一般式(2)中の前記親水性基が、それぞれ独立に、(i)ピリダジル基、ピラジル基、ピリミジル基、及びトリアジル基からなる群より選択されるいずれかの複素芳香族基である構成1に記載の導電性組成物。
(構成6)前記一般式(6)中の前記親水性基及び前記一般式(7)中の前記親水性基が、それぞれ独立に、下記一般式(8)で表される基である構成1に記載の導電性組成物。
【0147】
(前記一般式(8)中、R及びRは、それぞれ独立にアルキル基を表し、Rは、アルキレン基を表す)
【0148】
(構成7)前記金属粒子が、銀、及び金からなる群より選択される少なくとも1種の金属で形成されている構成1乃至6のいずれか1項に記載の導電性組成物。
(構成8)前記金属粒子の体積基準の累積50%粒子径が、5nm以上100nm以下である構成1乃至7のいずれか1項に記載の導電性組成物。
(構成9)さらに、水性媒体を含有する構成1乃至8のいずれか1項に記載の導電性組成物。
【0149】
(方法1)構成1乃至9のいずれか1項に記載の導電性組成物の製造方法であって、
水性媒体中で金属塩を還元して前記金属粒子を形成する第1工程と、
形成した前記金属粒子と、前記処理剤を接触させる第2工程と、を有することを特徴とする導電性組成物の製造方法。
(方法2)前記金属塩として、金属廃液から回収された回収金属塩を用いる方法1に記載の導電性組成物の製造方法。
【0150】
(方法3)構成1乃至9のいずれか1項に記載の導電性組成物を基材に付与する工程を有することを特徴とする導電性画像の記録方法。
(方法4)前記導電性組成物をインクジェット法により前記基材に付与する方法3に記載の導電性画像の記録方法。
(方法5)さらに、前記基材に付与した前記導電性組成物を20℃以上50℃以下の温度で乾燥させる工程を有する方法3又は4に記載の導電性画像の記録方法。
【0151】
(構成10)基材と、前記基材に形成された導電層と、を有する導電性画像であって、
前記導電層が、金属粒子、及び前記金属粒子を被覆するための処理剤を含有し、
前記処理剤が、下記一般式(1)で表される化合物、下記一般式(2)で表される化合物、下記一般式(3)で表される化合物、下記一般式(4)で表される化合物、下記一般式(5)で表される化合物、下記一般式(6)で表される化合物、及び下記一般式(7)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする導電性画像。
【0152】
(前記一般式(1)中、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、酸エステル基、又は親水性基を表し、R~Rの少なくとも1つは前記親水性基であり、残りのすべてが同時に水素原子となることはない。前記親水性基は、(i)複素芳香族基;(ii)ヒドロキシ基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、3級アルキルアミノ基、及び複素芳香族基からなる群より選択される少なくとも1種の親水性官能基が結合した芳香族基;又は(iii)前記親水性官能基が、ヘテロ原子、アミド結合、若しくはエステル結合を含んでいてもよい脂肪族基を介して結合した芳香族基;である)
【0153】
(前記一般式(2)中、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、酸エステル基、又は親水性基を表し、R~Rの少なくとも1つは前記親水性基であり、残りのすべてが同時に水素原子となることはない。前記親水性基は、(i)複素芳香族基;(ii)ヒドロキシ基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、3級アルキルアミノ基、及び複素芳香族基からなる群より選択される少なくとも1種の親水性官能基が結合した芳香族基;又は(iii)前記親水性官能基が、ヘテロ原子、アミド結合、若しくはエステル結合を含んでいてもよい脂肪族基を介して結合した芳香族基;である)
【0154】
(前記一般式(3)中、R及びRは、それぞれ独立に、芳香族基又は親水性基を表し、R及びRの少なくとも1つは前記親水性基である。前記親水性基は、(i)複素芳香族基;(ii)ヒドロキシ基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、3級アルキルアミノ基、及び複素芳香族基からなる群より選択される少なくとも1種の親水性官能基が結合した芳香族基;又は(iii)前記親水性官能基が、ヘテロ原子、アミド結合、若しくはエステル結合を含んでいてもよい脂肪族基を介して結合した芳香族基;である)
【0155】
(前記一般式(4)中、R及びRは、それぞれ独立に、芳香族基又は親水性基を表し、R及びRの少なくとも1つは前記親水性基である。前記親水性基は、(i)複素芳香族基;(ii)ヒドロキシ基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、3級アルキルアミノ基、及び複素芳香族基からなる群より選択される少なくとも1種の親水性官能基が結合した芳香族基;又は(iii)前記親水性官能基が、ヘテロ原子、アミド結合、若しくはエステル結合を含んでいてもよい脂肪族基を介して結合した芳香族基;である)
【0156】
(前記一般式(5)中、Rは、親水性基を表す。前記親水性基は、(i)複素芳香族基;(ii)ヒドロキシ基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、3級アルキルアミノ基、及び複素芳香族基からなる群より選択される少なくとも1種の親水性官能基が結合した芳香族基;又は(iii)前記親水性官能基が、ヘテロ原子、アミド結合、若しくはエステル結合を含んでいてもよい脂肪族基を介して結合した芳香族基;である)
【0157】
(前記一般式(6)中、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、酸エステル基、又は親水性基を表し、R~Rの少なくとも1つは前記親水性基である。前記親水性基は、(i)ヒドロキシ基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、3級アルキルアミノ基、及び複素芳香族基からなる群より選択されるいずれかの親水性官能基;又は(ii)前記親水性官能基が結合した、ヘテロ原子、アミド結合、若しくはエステル結合を含んでいてもよい脂肪族基;である)
【0158】
(前記一般式(7)中、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、酸エステル基、又は親水性基を表し、R~Rの少なくとも1つは前記親水性基である。前記親水性基は、(i)ヒドロキシ基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、3級アルキルアミノ基、及び複素芳香族基からなる群より選択されるいずれかの親水性官能基;又は(ii)前記親水性官能基が結合した、ヘテロ原子、アミド結合、若しくはエステル結合を含んでいてもよい脂肪族基;である)
【0159】
(構成11)基材に記録される導電性画像であって、
構成1乃至9のいずれか1項に記載の導電性組成物で形成されたことを特徴とする導電性画像。
(構成12)前記基材が、ガラス、紙、又は樹脂材料である構成11に記載の導電性画像。
(構成13)前記樹脂材料が、生体適合性材料である構成12に記載の導電性画像。
(構成14)前記生体適合性材料が、ゼラチン、セルロース、キトサン、コラーゲン、及びフィブロインからなる群より選択される少なくとも1種である構成13に記載の導電性画像。