(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023105895
(43)【公開日】2023-08-01
(54)【発明の名称】作業機械向け養生シートおよびその連結体
(51)【国際特許分類】
E02F 9/00 20060101AFI20230725BHJP
H01F 7/02 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
E02F9/00
H01F7/02 F
H01F7/02 Z
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022006912
(22)【出願日】2022-01-20
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】516247971
【氏名又は名称】フジ・チーテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池ヶ谷 忠男
(72)【発明者】
【氏名】池ヶ谷 智秋
(57)【要約】
【課題】固定手段である複数の磁石が、隣り合う磁石同士で吸着して集合したり所定の距離以下に近接したりすることなく配置された状態で、作業機械における様々な取付場所の形状に応じてしっかりと吸着することが可能な作業機械向け養生シートおよびその連結体を提供する。
【解決手段】作業機械向け養生シート3において、シート本体31と、シート本体31を着脱可能に取り付ける複数の平板状磁石32と、を備え、シート本体31は、第1シート部311と、第1シート部311と対になる第2シート部312と、を有し、第1シート部311と第2シート部312との間には、複数の平板状磁石32が収容された収容空間313が形成され、複数の平板状磁石32は、収容空間313内を移動可能であって、かつ、第1シート部311と対向する面が一の極となり、第2シート部312と対向する面が他の極となって配置されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械に対して用いられる作業機械向け養生シートにおいて、
柔軟性を有するシート材料により形成されたシート本体と、
前記作業機械を構成する複数の構成部材のうち磁性を有する磁性部材に前記シート本体を着脱可能に取り付ける複数の平板状磁石と、を備え、
前記シート本体は、
第1シート部と、
前記第1シート部の少なくとも周縁領域において前記第1シート部と厚み方向に重なり一部が接合されて対になる第2シート部と、を有し、
前記第1シート部と前記第2シート部との間には、
前記複数の平板状磁石を収容する収容空間が前記シート本体の周縁に沿って形成され、
前記複数の平板状磁石はいずれも、
前記収容空間内を前記シート本体の周縁に沿って移動可能であって、かつ、前記第1シート部と対向する厚み方向の一側の面が一の極となり、前記第2シート部と対向する厚み方向の他側の面が他の極となって配置されている
ことを特徴とする作業機械向け養生シート。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械向け養生シートにおいて、
前記複数の平板状磁石を保護する複数のブラケットをさらに備え、
前記複数のブラケットはそれぞれ、
前記一側の面に接する基部と、
前記基部の両端から前記磁性部材との吸着面となる前記他側の面の側に向かって立設する一対の立設部と、を有し、
前記一対の立設部の高さはそれぞれ、前記複数の平板状磁石のそれぞれにおける厚みよりも高く形成されている
ことを特徴とする作業機械向け養生シート。
【請求項3】
請求項2に記載の作業機械向け養生シートにおいて、
前記複数のブラケットはそれぞれ、
軟磁性体で形成された磁気シールド部材である
ことを特徴とする作業機械向け養生シート。
【請求項4】
請求項1に記載の作業機械向け養生シートにおいて、
前記シート本体は、四辺を有して形成され、
前記収容空間は、
前記シート本体の前記四辺に沿って延伸する4つの延伸部と、
前記シート本体の四隅において隣り合う前記延伸部の間に介在する4つの介在部と、を含み、
4つの前記延伸部と4つの前記介在部とはそれぞれ、前記第1シート部と前記第2シート部との接合部分によって隔離されており、
4つの前記介在部はそれぞれ、
前記四辺のうちの一の辺に沿って延出する第1延出領域と、
前記四辺のうちの前記一の辺に交差する他の辺に沿って延出する第2延出領域と、
前記第1延出領域と前記第2延出領域とを接続する接続領域と、を有し、
前記複数の平板状磁石は、
4つの平板状磁石が4つの前記介在部に、残りの平板状磁石が4つの前記延伸部に、それぞれ分散して配置され、
4つの前記介在部に配置された平板状磁石はそれぞれ、
前記第1延出領域から前記接続領域に亘る第1位置と前記第2延出領域から前記接続領域に亘る第2位置との間を移動可能に配置されている
ことを特徴とする作業機械向け養生シート。
【請求項5】
請求項1に記載の作業機械向け養生シートにおいて、
前記シート本体は、四辺を有して形成され、
前記収容空間は、
前記シート本体の前記四辺のそれぞれに沿って延伸する4つの延伸部を含み、
前記複数の平板状磁石はそれぞれ、
対向する一対の長辺と、
前記一対の長辺に対して交差する一対の短辺と、を有し、
4つの前記延伸部に配置された平板状磁石はそれぞれ、
前記一対の長辺が4つの前記延伸部のそれぞれの延伸方向に沿って配置され、
4つの前記延伸部はそれぞれ、
その延伸方向および前記シート本体の厚み方向のそれぞれに交差する幅方向の寸法が、前記一対の短辺の長さよりも長く、かつ、前記複数の平板状磁石のそれぞれの対角線の長さよりも短く設定されている
ことを特徴とする作業機械向け養生シート。
【請求項6】
請求項1に記載の作業機械向け養生シートにおいて、
前記第1シート部は、
前記複数の平板状磁石のそれぞれにおける前記一側の面に対向する対向面領域と、
前記対向面領域から前記第2シート部に向かって前記複数の平板状磁石の厚み方向に沿いながら延在する側面領域と、有する
ことを特徴とする作業機械向け養生シート。
【請求項7】
請求項1に記載の作業機械向け養生シートにおいて、
前記シート本体は、
1枚の前記シート材料の端部が折り返されることで前記第1シート部と前記第2シート部とが形成されており、
前記第2シート部のうち対向する領域の一方は、前記第1シート部の厚み方向の一側の面に重なり、
前記第2シート部のうち対向する領域の他方は、前記第1シート部の厚み方向の他側の面に重なっている
ことを特徴とする作業機械向け養生シート。
【請求項8】
作業機械に対して用いられる作業機械向け養生シートの連結体において、
平面上に複数並べられた請求項1に記載の作業機械向け養生シートを有し、
隣り合う前記作業機械向け養生シートは、
対向する端部同士が厚み方向に重なり合い、当該重なり合った領域における前記収容空間内に配置された前記複数の平板状磁石が互いに吸着し合って連結されている
ことを特徴とする作業機械向け養生シートの連結体。
【請求項9】
作業機械に対して用いられる作業機械向け養生シートの連結体において、
平面上に複数並べられた請求項7に記載の作業機械向け養生シートを有し、
隣り合う前記作業機械向け養生シートは、
対向する端部同士が、前記第2シート部が対向した状態で厚み方向に重なり合い、当該重なり合った領域における前記収容空間内に配置された前記複数の平板状磁石が、互いに吸着し合って連結されている
ことを特徴とする作業機械向け養生シートの連結体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械に対して用いられる作業機械向け養生シートおよびその連結体に関する。
【背景技術】
【0002】
工場の作業場や工事現場などでは、作業を行うにあたって、作業対象に対して現在作業を行っている領域の周辺部や作業を終えた部分などを傷や汚れから保護するための養生シートが用いられる。養生シートは、作業中においては簡単に剥がれてしまわないように作業対象に固定される一方で、作業が終わると不要となって作業対象から取り外される。そのため、作業対象に対してしっかりと固定されつつも着脱作業が容易であることが養生シートに対して求められる。この要求に応える養生シートとして、例えば、磁石を用いて作業対象に着脱可能に固定されるものがある。
【0003】
ここで、例えば油圧ショベルなどの作業機械は一般に、主に鉄板によってボディが形成されていることから、作業対象が作業機械である場合には、磁石を用いて養生シートをボディに着脱可能に固定することができる。例えば、特許文献1には、可撓性材料で折曲自在に連結された複数の平板状磁石が開示されており、これら複数の平板状磁石を養生シートの固定に用いれば、養生シートを作業機械のボディの曲面に沿わせて所望の取付場所に固定させることが可能となる。
【0004】
ただし、作業機械には、フロント作業装置のように湾曲した部分や搭載された機器類の形状によってなる凸凹した場所などが、乗用車などの一般的な自動車よりも多く存在するため、養生シートの取付場所によっては、折曲自在に連結された複数の平板状磁石をボディの形状に沿わせて所望の取付場所に養生シートを固定することが難しいことがある。また、特許文献1に記載のものは、複数の平板状磁石が等間隔に配置されているため、養生シートの取付場所によってはボディに吸着しない磁石が出てきてしまう場合がある。
【0005】
一方、特許文献2には、複数の平板状磁石を配列した1または2以上の磁石プレートを取り外し自在に、かつ、移動可能な状態で配置してなる磁気ベルトが開示されている。そこで、特許文献1に記載の技術と特許文献2に記載の技術とを組み合わせて、可撓性材料で折曲自在に連結されると共に、取り外し自在に、かつ、移動可能な状態で配置された複数の平板状磁石を養生シートの固定に用いれば、複数の平板状磁石の全てを所望の取付場所の形状に沿って強固に吸着させることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9-306725号公報
【特許文献2】特開平10-179770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1および特許文献2のいずれにおいても、隣り合う磁石の磁極の配置関係について何ら開示も示唆もされていないため、実際には、隣り合う磁石同士が吸着し合って、一体化した1つの磁石として1カ所に集合してしまう可能性がある。この場合、養生シートの取付場所の形状によっては、作業機械のボディに吸着しない磁石が出てきたり、養生シートのうち固定されない部分が出てきたりするおそれがある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、固定手段である複数の磁石が、隣り合う磁石同士で吸着して集合したり所定の距離以下に近接したりすることなく配置された状態で、作業機械における様々な取付場所の形状に応じてしっかりと吸着することが可能な作業機械向け養生シートおよびその連結体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は、作業機械に対して用いられる作業機械向け養生シートにおいて、柔軟性を有するシート材料により形成されたシート本体と、前記作業機械を構成する複数の構成部材のうち磁性を有する磁性部材に前記シート本体を着脱可能に取り付ける複数の平板状磁石と、を備え、前記シート本体は、第1シート部と、前記第1シート部の少なくとも周縁領域において、前記第1シート部と厚み方向に重なって一部が接合されて対になる第2シート部と、を有し、前記第1シート部と前記第2シート部との間には、前記複数の平板状磁石を収容する収容空間が前記シート本体の周縁に沿って形成され、前記複数の平板状磁石はいずれも、前記収容空間内を前記シート本体の周縁に沿って移動可能であって、かつ、前記第1シート部と対向する厚み方向の一側の面が一の極となり、前記第2シート部と対向する厚み方向の他側の面が他の極となるように配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、固定手段である複数の磁石が、隣り合う磁石同士で吸着して集合したり所定の距離以下に近接したりすることなく配置された状態で、作業機械における様々な取付場所の形状に応じてしっかりと吸着することができる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の各実施形態に係る養生シートが適用される油圧ショベルの一構成例を示す外観斜視図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る養生シートの一構成例を示す平面図である。
【
図3A】養生シートの上延伸部に配置された平板状磁石を第1シート部側から見た場合の図である。
【
図3B】養生シートの上延伸部に配置された平板状磁石を第2シート部側から見た場合の図である。
【
図4A】
図3Aに示す平板状磁石の寸法と養生シートの上延伸部の幅との関係について説明する図である。
【
図4B】養生シートの左延伸部に配置された平板状磁石の寸法と延伸部の幅との関係について説明する図である。
【
図6】油圧ショベルの後端部に固定された養生シートの様子を示す図である。
【
図7】本発明の第1実施形態の変形例1に係る平板状磁石およびブラケットの一構成例を示す斜視図である。
【
図8】
図7のVIII矢視図であって、ブラケットが磁気シールド部材となっていることを説明する図である。
【
図9A】本発明の第1実施形態の変形例2に係るシート本体の一構成例であって、
図2におけるVA-VA線断面に相当する図である。
【
図9B】本発明の第1実施形態の変形例2に係るシート本体の一構成例であって、
図2におけるVB-VB線断面に相当する図である。
【
図10】本発明の第2実施形態に係る養生シートの一構成例を示す平面図である。
【
図12A】第1位置に配置された平板状磁石を示す斜視図である。
【
図12B】第1位置に配置された平板状磁石が湾曲面に吸着している様子を示す図である。
【
図12C】第2位置に配置された平板状磁石を示す斜視図である。
【
図12D】第2位置に配置された平板状磁石が湾曲面に吸着している様子を示す図である。
【
図13】本発明の第3実施形態に係る収容空間を示す斜視図である。
【
図15】本発明の第4実施形態に係る養生シートの一構成例であって、縦方向に切断した場合の断面を模式的に示す模式図である。
【
図16】
図15に示す養生シートの連結体の一構成例を模式的に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の各実施形態に係る養生シートは、例えば油圧ショベルやホイールローダなどの作業機械に対して用いられる作業機械向け養生シートである。以下では、養生シートを油圧ショベルに対して用いる場合について説明する。
【0013】
<油圧ショベル1の概略構成>
油圧ショベル1の概略構成について、
図1を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明の各実施形態に係る養生シートが適用される油圧ショベル1の一構成例を示す外観斜視図である。
【0015】
油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の走行体11と、走行体11の上方に旋回可能に取り付けられた旋回体12と、旋回体12の前部に取り付けられて掘削などの作業を行う油圧駆動式のフロント作業装置13と、を備えている。
【0016】
旋回体12は、旋回フレーム21と、旋回フレーム21上に載置されてオペレータが着席する運転席22と、運転席22の後側に配置されてエンジンや油圧ポンプなどの各機器を内部に収容する機械室23と、旋回フレーム21の後部に取り付けられて車体が傾倒しないようにフロント作業装置13とのバランスを保つためのカウンタウェイト24と、を有している。
【0017】
油圧ショベル1を構成する複数の構成部材のうち、特にカバー部材やフレーム部材は、主に鉄板などの磁性を有する磁性部材Mによって形成されている。そのため、油圧ショベル1に適用される養生シートとしては、磁石によって着脱可能に固定されるものを選択することができる。固定手段が磁石である養生シートでは、取付場所に対して磁力により確実に固定することが可能であり、かつ、不要になった場合には引っ張ることで取付場所から取り外することができるため、例えば固定手段が紐やロープなどである養生シートに比べて取り外し作業が簡易である。
【0018】
例えば、養生シートは、油圧ショベル1を塗装する場合に、塗装作業を行う場所の周辺部に取り付けられる。これにより、塗装を行わない場所を塗装による汚れから保護することができる。また、養生シートは、作業員が歩く場所に敷かれることもある。これにより、製品である油圧ショベル1を傷から保護することができる。以下、油圧ショベル1に適用される養生シートの構成について実施形態ごとに説明する。
【0019】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係る養生シート3について、
図2~6を参照して説明する。
【0020】
(養生シート3の構成)
まず、養生シート3の具体的な構成について、
図2~5を参照して説明する。
【0021】
図2は、本発明の第1実施形態に係る養生シート3の一構成例を示す平面図である。
図3Aは、養生シート3の上延伸部314Aに配置された平板状磁石32を第1シート部311側から見た図である。
図3Bは、養生シート3の上延伸部314Aに配置された平板状磁石32を第2シート部312側から見た図である。
図4Aは、
図3Aに示す平板状磁石32の寸法と養生シート3の上延伸部314Aの幅との関係について説明する図である。
図4Bは、養生シート3の左延伸部314Bに配置された平板状磁石32の寸法と左延伸部314Bの幅との関係について説明する図である。
図5Aは、
図2におけるVA-VA線断面図である。
図5Bは、
図2におけるVB-VB線断面図である。
【0022】
養生シート3は、柔軟性を有するシート本体31と、油圧ショベル1を構成する複数の構成部材のうちの磁性部材M(例えばカバー部材やフレーム部材)に対してシート本体31を着脱可能に取り付ける複数の平板状磁石32と、を備える。
【0023】
シート本体31は、例えば合成樹脂素材やビニール素材の防水性のシート材料により、4辺を有する矩形状に形成されている。なお、作業員が歩く場所に敷く用として養生シート3を用いる場合には、特に、養生シート3によって隠れる部分の状態(足場の状態)が目視できるように透過性を有したシート材料で形成されていることが望ましい。
【0024】
図5Aおよび
図5Bに示すように、シート本体31は、養生シート3を取り付ける際に表面側となる第1シート部311と、裏面側(取付面側)となる第2シート部312と、を有している。第2シート部312は、第1シート部311の少なくとも周縁領域において当該第1シート部311と厚み方向に重なり一部が接合されて対になっている。本実施形態では、シート本体31は1枚のシート材料からなり、この1枚のシート材料をシート本体31の周縁領域に相当する部分において折り返すことによって、第1シート部311と第2シート部312とが形成されている。
【0025】
第1シート部311と第2シート部312とは、シート本体31の外周に沿うように一部が縫合により接合されており、接合されていない部分における第1シート部311と第2シート部312との間には、複数の平板状磁石32が収容された収容空間313が形成されている。なお、
図2では、第1シート部311と第2シート部312との縫合部分を二点鎖線で、複数の平板状磁石32を破線で、それぞれ示している。
【0026】
収容空間313内における複数の平板状磁石32はそれぞれ、油圧ショベル1における磁性部材Mとの吸着面320が第2シート部312側に面して配置されている。なお、吸着面320は、必ずしも第2シート部312側に面している必要はなく、養生シート3の仕様や適用状況などによっては第1シート部311側に面していてもよい。この場合、養生シート3を取り付ける際には、第2シート部312が表面側となり、第1シート部311が裏面側(取付面側)となる。
【0027】
収容空間313は、本実施形態では、シート本体31の4辺のそれぞれに沿って延伸する延伸部314が組み合わされて構成されている。
図2において上下に示された横方向に延伸する一対の延伸部314を「上下延伸部314A」とし、
図2において左右に示された縦方向に延伸する一対の延伸部314を「左右延伸部314B」とすると、上下延伸部314Aはそれぞれ左端部から右端部に亘って、左右延伸部314Bはそれぞれ上下延伸部314Aの間に亘って、それぞれ延伸している。
【0028】
図2では、上下延伸部314Aに8つの平板状磁石32が、左右延伸部314Bに7つの平板状磁石32が、それぞれ配置されている。なお、養生シート3に備わる平板状磁石32の個数は、シート本体31の大きさに応じて適宜変更可能であり、
図2に示す個数に限られない。
【0029】
各平板状磁石32は、吸着面320が、油圧ショベル1における磁性部材Mとの間に第2シート部312(シート本体31)を挟んだ状態で、磁性部材Mに吸着されることにより、シート本体31を磁性部材Mに取り付ける。
【0030】
各平板状磁石32は、一対の長辺と、一対の長辺に対して交差(直交)する一対の短辺と、を有し、四隅の角が取れた矩形状に形成され、一対の長辺が各延伸部314の延伸方向に沿った状態で収容空間313内に配置されている。なお、各平板状磁石32は、必ずしも四隅の角が取れた矩形状に形成されている必要はなく、円盤状や小判状に形成されていてもよい。
【0031】
また、各平板状磁石32は、シート本体31に接着されておらず、各延伸部314(収容空間313)内を移動することが可能となっている。
【0032】
例えば、上延伸部314Aに配置された8つの平板状磁石32はいずれも、
図3Aおよび
図3Bに示すように、第1シート部311と対向する面がN極となり、第2シート部312と対向する面がS極となっている。同様に、下延伸部314Aおよび左右延伸部314Bに配置された各平板状磁石32についても、第1シート部311と対向する面がN極となり、第2シート部312と対向する面がS極となっている。
【0033】
なお、各平板状磁石32は、必ずしも第1シート部311と対向する面がN極となり、第2シート部312と対向する面がS極となるように収容空間313内に配置されている必要はなく、第1シート部311と対向する面がS極となり、第2シート部312と対向する面がN極となっていてもよい。
【0034】
すなわち、複数の平板状磁石32はいずれも、第1シート部311と対向する厚み方向の一側の面が一の極(N極あるいはS極)となり、第2シート部312と対向する厚み方向の他側の面が他の極(S極あるいはN極)となって、収容空間313内に配置されている。
【0035】
このように、複数の平板状磁石32は、吸着面側が一の極となって互いに同極であり、吸着面とは反対の面側が他の極となって互いに同極であるため、隣り合う平板状磁石32同士が反発し合うことから、隣り合う平板状磁石32同士が吸着して一箇所に集合したり接近したりする事態が生じることなく、所定の距離を保って分散される。なお、
図2に示すように、複数の平板状磁石32は、必ずしも等間隔で配置されている必要はない。
【0036】
また、本実施形態では、
図4Aおよび
図4Bならびに
図5Aおよび
図5Bに示すように、各延伸部314は、延伸方向およびシート本体31の厚み方向のそれぞれに交差(直交)する幅方向(
図4Aおよび
図5Aでは縦方向、
図4Bおよび
図5Bでは横方向)の寸法W1が、各平板状磁石32の短辺の長さW2よりも長く(W1>W2)、かつ、各平板状磁石32の対角線の長さDよりも短く(W1<D)設定されている(W2<W1<D)。
【0037】
仮に、各延伸部314における幅方向の寸法W1が、各平板状磁石32の対角線の長さD以上である場合(W1≧D)、各平板状磁石32は、一対の対角線が交わる中心点を通る軸を中心軸として各延伸部314(収容空間313)内で回転しやすくなる。その場合、前述した各延伸部314内における磁極の配列が変わって、隣り合う平板状磁石32の吸着面の極が異極(N極とS極)となり、隣り合う平板状磁石32同士が吸着してしまう可能性がある。
【0038】
しかしながら、本実施形態のように、各延伸部314における幅方向の寸法W1が、各平板状磁石32の対角線の長さDよりも短く(W1<D)設定されていることで、各延伸部314(収容空間313)内における各平板状磁石32の回転を抑制し、前述した各延伸部314内における磁極の配列の状態を維持することが可能となる。
【0039】
(養生シート3の固定方法)
次に、養生シート3の取付場所への固定方法について、
図6を参照して説明する。
【0040】
図6は、油圧ショベル1の後端部に固定された養生シート3の様子を示す図である。
【0041】
油圧ショベル1は、特に自重が10トン以下の小型車両(いわゆるミニショベル)である場合、小回りが利くようにカウンタウェイト24の背面(旋回体12の後端部)が弧状に湾曲している。このような湾曲部分を有する取付場所に対して養生シート3を固定する場合、きつい湾曲位置では平板状磁石32が吸着しにくく、シート本体31を取付場所に対してしっかりと固定させることが難しいことがある。
【0042】
この場合において、養生シート3は、複数の平板状磁石32が収容空間313内を延伸方向に自由に移動することができるため、きつい湾曲位置に配置された平板状磁石32を平らな位置まで移動させた上で吸着させることが可能となり、シート本体31を取付場所にしっかりと固定させることができる。
【0043】
このとき、作業員は、自らの手で直接的に平板状磁石32を動かしてもよいし、動かしたい平板状磁石32に隣接する平板状磁石32の対向部を動かしたい平板状磁石32の対向部に近づけることにより、磁極による反発力を利用して動かすことも可能である。
【0044】
このように、養生シート3では、シート本体31を固定する固定手段である複数の平板状磁石32が、隣り合う平板状磁石32同士で吸着して集合したり所定の距離以下に近接したりすることなく収容空間313内に配置された状態で、油圧ショベル1における様々な取付場所の形状に応じてしっかりと吸着することができる。
【0045】
<変形例1>
次に、本発明の第1実施形態の変形例1に係る平板状磁石32について、
図7および
図8を参照して説明する。
【0046】
図7は、本発明の第1実施形態の変形例1に係る平板状磁石32およびブラケット33の一構成例を示す斜視図である。
図8は、
図7のVIII矢視図であって、ブラケット33が磁気シールド部材となっていることを説明する図である。なお、
図7および
図8において、第1実施形態に係る養生シート3について説明したものと共通する構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。以下、変形例2、第2実施形態、第3実施形態、および第4実施形態についてもそれぞれ同様とする。
【0047】
本変形例1では、複数の平板状磁石32にはそれぞれ、保護部材としてのブラケット33が取り付けられている。ブラケット33は、平板状磁石32の一側の面に接する長方形状の基部331と、基部331の短辺方向の両端から平板状磁石32の吸着面320となる他側の面の側に向かって立設された長方形状の一対の立設部332,333と、を有している。
【0048】
図7に示すように、一対の立設部332,333はそれぞれ、高さ(立設方向の寸法)Hが、平板状磁石32の厚みDよりも高く設定されている(H>D)。換言すれば、平板状磁石32は、吸着面320の位置が一対の立設部332,333の先端の位置よりも低くなるように厚みDが設定されている。
【0049】
これにより、養生シート3を磁性部材Mに取り付ける際において、平板状磁石32の吸着面320に代わって、ブラケット33の一対の立設部332,333が、磁性部材Mと衝突することになるため、平板状磁石32の吸着面320が受ける衝撃が緩和されて、平板状磁石32が割れてしまうことを抑制することができる。
【0050】
また、このブラケット33は、軟磁性体である鉄の板を屈曲加工して形成されており、保護部材としての機能の他に、磁気シールド部材としての機能を有する。この場合、ブラケット33は、基部331が、平板状磁石32の一側の面(吸着面320とは反対側の面)に磁力によって吸着する。
【0051】
例えば、平板状磁石32の一側の面がN極である場合、
図8に示すように、ブラケット33の内部では、基部331から一対の立設部332,333のそれぞれに向かって磁束が流れ、一対の立設部332,333の先端にはN極が着磁することになる。この場合、平板状磁石32の一側の面から流れ出た磁束は、ブラケット33に沿って流れて吸着面320に入ることになる。
【0052】
このように、ブラケット33が鉄板で形成されている場合には、磁気シールド効果を奏することによって、平板状磁石32にブラケット33が取り付けられていない場合(平板状磁石32単体の場合)と比べて、一側の面(N極)の側からの磁束が周囲に漏れ出す量を低減することができる。これにより、一側の面の側の吸着力を抑制して、例えば工具などが不用意に吸着されてしまうといった事態を防ぐことができる。また、隣り合う平板状磁石32との間の磁力の影響を抑制することができるため、表裏反転(一側の面と他側の面とが反転)してしまうことの抑制にもつながる。
【0053】
なお、本変形例1では、平板状磁石32の吸着面320からブラケット33を取り外しやすくするため、ブラケット33は、平板状磁石32よりも大きめに形成されている。具体的には、基部331および一対の立設部332,333のそれぞれにおける長辺方向の長さが平板状磁石32の長辺よりも長く、基部331の短辺方向の長さが平板状磁石32の短辺よりも長く、それぞれ設定されている。
【0054】
また、本変形例1では、ブラケット33は、軟磁性体として鉄板を用いて形成されていたが、これに限らず、磁気シールド効果を奏する軟磁性体であればその種類は特に限定されない。さらに、ブラケット33が、磁気シールド部材としての機能を有さず、保護部材としての機能のみを有している場合には、ブラケット33の素材によってはブラケット33が吸着面320に対して磁力で吸着されないこともある。その場合、ブラケット33は、例えば接着剤などを用いて平板状磁石32に取り付けられていてもよい。
【0055】
<変形例2>
次に、本発明の第1実施形態の変形例2に係るシート本体31Aについて、
図9Aおよび
図9Bを参照して説明する。
【0056】
図9Aは、本発明の第1実施形態の変形例2に係るシート本体31の一構成例であって、
図2におけるVA-VA線断面に相当する図である。
図9Bは、本発明の第1実施形態の変形例2に係るシート本体31の一構成例であって、
図2におけるVB-VB線断面に相当する図である。
【0057】
本変形例2では、シート本体31Aは、2枚のシート材料からなり、これら2枚のシート材料を厚み方向に重ね合わせて縫合により接合することによって周縁領域が形成されている。すなわち、第1シート部311と第2シート部312とは、別々のシート材料からなる。
【0058】
図9Aおよび
図9Bに示すように、シート本体31Aは、外周端が、開放端となっており、第1実施形態に係るシート本体31のように折り返し部となっていない。このように、第1シート部311と第2シート部312とは、必ずしも1枚のシート材料を折り返すことにより形成されている必要はなく、2枚のシート材料を重ね合わせることにより形成されていてもよい。
【0059】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る養生シート3Aについて、
図10~12を参照して説明する。
【0060】
図10は、本発明の第2実施形態に係る養生シート3Aの一構成例を示す平面図である。
図11は、
図10におけるX部拡大図である。
図12Aは、第1位置に配置された平板状磁石32を示す斜視図である。
図12Bは、第1位置に配置された平板状磁石32が湾曲面に吸着している様子を示す図である。
図12Cは、第2位置に配置された平板状磁石32を示す斜視図である。
図12Dは、第2位置に配置された平板状磁石32が湾曲面に吸着している様子を示す図である。
【0061】
本実施形態に係る養生シート3Aは、収容空間313Aの構成が第1実施形態における収容空間313の構成と異なる。具体的には、収容空間313Aは、
図10に示すように、シート本体31の四辺のそれぞれに沿って延伸する4つの延伸部314(上下延伸部314Aおよび左右延伸部314B)と、シート本体31の四隅のそれぞれにおいて隣り合う延伸部314の間に介在する4つの介在部315と、を含む。
【0062】
4つの介在部315は、上延伸部314Aと左延伸部314Bとの間に介在する第1介在部315Aと、上延伸部314Aと右延伸部314Bとの間に介在する第2介在部315Bと、右延伸部314Bと下延伸部314Aとの間に介在する第3介在部315Cと、下延伸部314Aと左延伸部314Bとの間に介在する第4介在部315Dと、を有する。
【0063】
各延伸部314と各介在部315とは、第1シート部311と第2シート部312との接合部分(縫合部分)によって隔離されている。
図10では、
図2と同様に、第1シート部311と第2シート部312との接合部分を二点鎖線で示している。
【0064】
図11において第1介在部315Aを例に挙げて拡大して示すように、各介在部315は、シート本体31の四辺のうちの一の辺(
図11では上辺)に沿って延出する第1延出領域316Aと、シート本体31の一の辺に交差(直交)する他の辺(
図11では左辺)に沿って延出する第2延出領域316Bと、第1延出領域316Aと第2延出領域316Bとを接続する接続領域316Cと、を有している。
【0065】
本実施形態では、複数の平板状磁石32は、4つの平板状磁石32が第1~第4介在部315A~315Dに、残りの平板状磁石32が4つの延伸部314(上下延伸部314Aおよび左右延伸部314B)に、それぞれ分散して配置されている。
【0066】
第1~第4介在部315A~315Dのそれぞれに配置された平板状磁石32についても、4つの延伸部314のそれぞれに配置された平板状磁石32と同様に、シート本体31に接着されておらず、第1~第4介在部315A~315D内でそれぞれ移動することが可能となっている。
【0067】
具体的には、
図11に示すように、第1~第4介在部315A~315Dのそれぞれに配置された平板状磁石32は、第1延出領域316Aから接続領域316Cに亘る第1位置(
図11において破線で示した平板状磁石32の位置)と、第2延出領域316Bから接続領域316Cに亘る第2位置(
図11において実線で示した平板状磁石32の位置)との間を移動可能に配置されている。
【0068】
すなわち、第1~第4介在部315A~315Dのそれぞれに配置された平板状磁石32は、第1位置では長辺方向が上下延伸部314Aの延伸方向に沿い、第2位置では長辺方向が左右延伸部314Bの延伸方向に沿う。
【0069】
例えば、第1~第4介在部315A~315Dのそれぞれに配置された平板状磁石32が第1位置に配置された状態で養生シート3Aを油圧ショベル1のカウンタウェイト24の背面に取り付ける場合、
図12Aにおいて砂地で示すように、吸着面320のうちの中央部に位置する狭い領域のみがカウンタウェイト24の湾曲した背面に吸着された状態となる。したがって、
図12Bに示すように、吸着面320のうちの長辺方向の両端側はカウンタウェイト24の背面に吸着(接触)せず、隙間が空いた状態となる。
【0070】
一方、第1~第4介在部315A~315Dのそれぞれに配置された平板状磁石32が第2位置に配置された状態で養生シート3Aを油圧ショベル1のカウンタウェイト24の背面に取り付ける場合、
図12Cにおいて砂地で示すように、吸着面320の全領域がカウンタウェイト24の背面に吸着された状態となる。したがって、
図12Dに示すように、吸着面320とカウンタウェイト24の背面との間に隙間が空いていない状態となる。
【0071】
このように、作業員が第1~第4介在部315A~315Dのそれぞれに配置された平板状磁石32を第1位置から第2位置に移動(90°回転)させることにより、養生シート3Aの取付場所が湾曲形状であっても馴染みやすくなり、湾曲形状の取付場所に対して養生シート3Aをより確実に固定させることができる。
【0072】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態に係る養生シート3Bについて、
図13および
図14を参照して説明する。
【0073】
図13は、本発明の第3実施形態に係る収容空間313Bを示す斜視図である。
図14は、
図13におけるXIV-XIV線断面図である。
【0074】
本実施形態では、収容空間313Bの構成が、第1実施形態における収容空間313の構成と異なる。シート本体31Bは、第1シート部311Bが、複数の平板状磁石32の一側の面(吸着面320とは反対側の面)に対向する対向面領域317と、対向面領域317から第2シート部312に向かって複数の平板状磁石32の厚み方向に沿いながら延在する側面領域318,319と、を有している。
【0075】
そして、収容空間313Bは、第2シート部312と対向面領域317と側面領域318,319とで囲まれた、断面長方形状の空間に形成されている。すなわち、収容空間313Bを形成する周壁は、収容された複数の平板状磁石32それぞれの外周面の形状に沿って設けられている。
【0076】
このように、各平板状磁石32の形状に即した形状に収容空間313Bが形成されているため、各平板状磁石32が収容空間313B内にフィットした状態となり、各平板状磁石32が、一対の対角線の交点を通って厚み方向に延びる軸を中心軸として回転したり、各平板状磁石32の長辺方向に延びる軸を中心軸として回転したりするといった事態をより抑制することができる。
【0077】
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態に係る養生シート3Cについて、
図15および
図16を参照して説明する。
【0078】
図15は、本発明の第4実施形態に係る養生シート3Cの一構成例であって、縦方向に切断した場合の断面を模式的に示す模式図である。
図16は、
図15に示す養生シート3Cの連結体300Cの一構成例を模式的に示す模式図である。
【0079】
本実施形態に係る養生シート3Cでは、シート本体31Cは、第1実施形態と同様に、1枚のシート材料の端部が折り返されることで第1シート部311Cと第2シート部312Cとが形成されている。ただし、シート本体31Cでは、第1シート部311Cと第2シート部312Cとの重なり方が、第1実施形態のシート本体31と異なる。
【0080】
具体的には、第2シート部312Cのうち対向する領域の一方は、第1シート部311Cの厚み方向の一側の面に重なり、第2シート部312Cのうち対向する領域の他方は、第1シート部311Cの厚み方向の他側の面に重なっている。
【0081】
すなわち、シート本体31Cを形成するにあたって、1枚のシート材料の各端部のうち対向する両端部では折り返し方向が反対になっており、一端部が第1シート部311Cとなる領域の表面側に、他端部が第1シート部311Cとなる領域の裏面側に、それぞれ折り返される。
【0082】
したがって、
図15に示すように、例えば、上延伸部314Aは、第1シート部311Cの一側の面(
図15では左側に位置する面)に形成される一方で、下延伸部314Aは、第1シート部311Cの他側の面(
図15では右側に位置する面)に形成されている。
【0083】
そして、上延伸部314Aに配置される複数の平板状磁石32は、第1シート部311Cに対向する面が吸着面320となるS極の面となり、第2シート部312Cに対向する面がN極の面となっている。他方、下延伸部314Aに配置される複数の平板状磁石32は、第1シート部311Cに対向する面がN極の面となり、第2シート部312Cに対向する面が吸着面320となるS極の面となっている。
【0084】
したがって、本実施形態に係る養生シート3Cでは、複数の平板状磁石32のうちいくつかの平板状磁石32は、吸着面320(S極の面)と油圧ショベル1の磁性部材Mとの間に第1シート部311Cを挟んだ状態で、残りの平板状磁石32は、吸着面320(S極の面)と油圧ショベル1の磁性部材Mとの間に第2シート部312Cを挟んだ状態で、それぞれ磁性部材Mに吸着されることになる。
【0085】
ここで、養生シート3Cが適用される油圧ショベル1がミニショベルである場合には、養生シート3Cの一辺の長さを半間(=約91cm)とすることが好ましい。これは、ミニショベルが家屋の内部工事に使用されることがあり、間口半間の柱や梁の間を走行する必要性から、車体寸法が半間に対応した大きさに設定されていることによる。
【0086】
一方、一辺の長さが半間に設定された養生シート3Cを中型や大型の油圧ショベル1に適用する場合には、1枚の養生シート3Cでは足りないことになる。また、油圧ショベル1内を作業員が歩く場所に敷く用として養生シート3Cを用いる場合には、養生シート3Cの一辺の長さは約30~45cm程度にすれば足りる。しかしながら、養生シート3Cの大きさを、養生シート3Cが適用される油圧ショベル1の大きさや場所に応じて変更するのではパフォーマンスが低下する。
【0087】
そこで、本実施形態では、平面上に並べた複数の養生シート3Cを互いに連結して養生シート連結体300Cを形成することにより、油圧ショベル1の大きさや場所に適宜対応させている。養生シート連結体300Cにおいて、隣り合う養生シート3Cは、対向する端部同士が厚み方向に重なり合い、当該重なり合った領域における収容空間313内に配置された複数の平板状磁石32が互いに吸着し合って連結されている。
【0088】
例えば、養生シート連結体300Cの縦方向の連結については、
図16に示すように、隣り合う養生シート3Cのうち、一方の養生シート3Cの下延伸部314A側の端部と他方の養生シート3Cの上延伸部314A側の端部とが厚み方向に重なり合い、一方の養生シート3Cの下延伸部314A内の平板状磁石32と他方の養生シート3Cの上延伸部314A内の平板状磁石32とが互いに吸着し合うことによりなる。なお、養生シート連結体300Cの横方向の連結についても同様である。
【0089】
この場合において、本実施形態では、
図16において拡大して示すように、一方の養生シート3Cの下延伸部314A側の端部と他方の養生シート3Cの上延伸部314A側の端部と(対向する端部同士)が、第2シート部312Cが対向した状態で厚み方向に重なり合うことが望ましい。
【0090】
これにより、各養生シート3Cは、下延伸部314A側における第1シート部311Cと第2シート部312Cとの接合部分(縫い合わせ部分)が、磁性部材Mと第1シート部311Cとの間、すなわち磁性部材Mの吸着面側に位置するため、当該接合部分からの雨水の侵入を防ぐことができる。
【0091】
また、上延伸部314A側における第1シート部311Cと第2シート部312Cとの接合部分(縫い合わせ部分)は、表に露出することになるが、下側を指向する(換言すれば、折り返し部分Pが上に位置する)ことになるため、こちらも同様に雨水の侵入を防ぐことが可能となっている。
【0092】
なお、養生シート連結体300Cは、必ずしも本実施形態に係る養生シート3Cを連結させて形成する必要はなく、第1~第3実施形態に係る養生シート3,3A,3Bを連結させて形成してもよい。
【0093】
以上、本発明の実施形態について説明した。なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、本実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、本実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。またさらに、本実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0094】
例えば、上記実施形態では、第1シート部311,311Bと第2シート部312との接合は縫合によりなされていたが、必ずしも縫合である必要はなく、例えば接着剤などを用いた接合手段であってもよい。
【0095】
また、上記実施形態では、養生シート3,3A,3B,3Cが適用される作業機械として油圧ショベル1を例に挙げて説明したが、これに限らず、例えばホイールローダやダンプトラックなどの他の作業機械であってもよい。
【0096】
また、上記実施形態では、複数の平板状磁石32は、角の取れた矩形状に形成されていたが、これに限らず、他に、例えば円盤状や小判状などであってもよく、平板状の磁石であればその形状については特に制限はない。
【0097】
また、上記実施形態では、養生シート3,3A,3B,3Cは、シート本体31,31A,31B,31Cの周縁領域のみにおいて第1シート部311,311B,311Cと第2シート部312,312Cとを有していたが、これに限らず、シート本体31,31A,31B,31Cの全体において第1シート部311,311B,311Cと第2シート部312,312Cとを有する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0098】
1:油圧ショベル(作業機械)
3,3A,3B,3C:養生シート
31,31A,31B,31C:シート本体
32:平板状磁石
33:ブラケット
300C:養生シート連結体
311,311B,311C:第1シート部
312,312C:第2シート部
313,313B:収容空間
314,314A,314B:延伸部
315,315A,315B,315C,315D:介在部
316A:第1延出領域
316B:第2延出領域
316C:接続領域
317:対向面領域
318,319:側面領域
320:吸着面
M:磁性部材