(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023105896
(43)【公開日】2023-08-01
(54)【発明の名称】乾燥藻体含有乾燥食品の製造方法、食品の製造方法、及び従属栄養性微細藻類の風味の改善方法
(51)【国際特許分類】
A23L 33/10 20160101AFI20230725BHJP
A23L 27/10 20160101ALI20230725BHJP
A23L 27/00 20160101ALI20230725BHJP
A23L 27/40 20160101ALI20230725BHJP
C12N 1/12 20060101ALN20230725BHJP
【FI】
A23L33/10
A23L27/10 G
A23L27/10 Z
A23L27/00 Z
A23L27/40
C12N1/12 C
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022006913
(22)【出願日】2022-01-20
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】522027079
【氏名又は名称】株式会社AlgaleX
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(72)【発明者】
【氏名】多田 清志
(72)【発明者】
【氏名】高田 大地
(72)【発明者】
【氏名】日高 英祐
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 順子
【テーマコード(参考)】
4B018
4B047
4B065
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB03
4B018LB05
4B018LB06
4B018LB08
4B018LB09
4B018LB10
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4B047LF10
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4B047LP07
4B047LP08
4B047LP20
4B065AA83X
4B065CA41
(57)【要約】
【課題】従属栄養性微細藻類自体のにおい及び味を改善する技術を提供すること。
【解決手段】本発明は、泡盛蒸留粕中の液体に由来する成分を含む培地中で従属栄養性微細藻類を培養する工程と、前記培養された前記従属栄養性微細藻類を乾燥する工程と、を含む、乾燥藻体含有乾燥食品の製造方法を提供する。本発明は、当該乾燥藻体含有食品を用いることを含む、食品の製造方法も提供する。本発明は、泡盛蒸留粕中の液体に由来する成分を含む培地中で従属栄養性微細藻類を培養する工程と、前記培養された前記従属栄養性微細藻類を乾燥する工程と、を含む、従属栄養性微細藻類の風味の改善方法も提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
泡盛蒸留粕中の液体に由来する成分を含む培地中で従属栄養性微細藻類を培養する工程と、
前記培養された前記従属栄養性微細藻類を乾燥する工程と、を含む、
乾燥藻体含有乾燥食品の製造方法。
【請求項2】
前記従属栄養性微細藻類が、ヤブレツボカビ類(Thraustochytriales)に属する微細藻類を含む、請求項1に記載の乾燥藻体含有乾燥食品の製造方法。
【請求項3】
前記従属栄養性微細藻類が、オーランチオキトリウム属(Aurantiochytrium)に属する微細藻類を含む、請求項1又は2に記載の乾燥藻体含有乾燥食品の製造方法。
【請求項4】
前記従属栄養性微細藻類が、オーランチオキトリウム リマシナム(Aurantiochytrium limacinum)に属する微細藻類を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の乾燥藻体含有乾燥食品の製造方法。
【請求項5】
前記泡盛蒸留粕中の液体に由来する成分が、前記泡盛蒸留粕を固液分離して得られた液体に由来する成分である、請求項1から4のいずれか一項に記載の乾燥藻体含有乾燥食品の製造方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の製造方法によって製造された乾燥藻体含有乾燥食品を用いることを含む、食品の製造方法。
【請求項7】
泡盛蒸留粕中の液体に由来する成分を含む培地中で従属栄養性微細藻類を培養する工程と、
前記培養された前記従属栄養性微細藻類を乾燥する工程と、を含む、
従属栄養性微細藻類の風味の改善方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥藻体含有乾燥食品の製造方法、食品の製造方法、及び従属栄養性微細藻類の風味の改善方法に関する。
【背景技術】
【0002】
沖縄を代表するお酒である泡盛の生産工程で発生する泡盛蒸留粕は、泡盛1Lに対して約2L程度発生する。泡盛蒸留粕の有効利用として、泡盛蒸留粕を固液分離して得られた液体が「もろみ酢」として市販されている。しかし、独特な風味を持つことから敬遠されることも多く、出荷量は低下してきている。そのため、多くは伝統的な家畜用飼料や農作物の肥料として利用され、それでも捌ききれない場合は産業廃棄物として処分されている。特に沖縄は離島という事もあり、本土より産廃処理コストが高く、生産者の収益性を大きく損ねている。
【0003】
新たに付加価値を付けて泡盛蒸留粕を有効利用する方法が探索されており、下記特許文献1には、もろみ酢を乳酸発酵して得られる泡盛もろみ酢発酵飲料が記載されている。
【0004】
ユーグレナやクロレラで知られる微細藻類は、多様な栄養成分を含有している。微細藻類の中には従属栄養性を示すものがあり、ドコサヘキサエン酸(docosahexaenoic acid:DHA)及びエイコサペンタエン酸(eicosapentaenoic acid:EPA)といった多価不飽和脂肪酸、又はスクアレンなどの付加価値の高い脂質を産生するヤブレツボカビ類が含まれる。このような微細藻類から抽出された脂質は、有用成分摂取量を高める目的で、食品、サプリメント、医薬品、及び飼料などに配合される。例えば、下記特許文献2には、藻類抽出油と、動物性または植物性タンパク質と、乳化剤とを含有することを特徴とする飲食物が記載されている。
【0005】
また、下記特許文献3には、従属栄養性微細藻類に含まれるオーランチオキトリウム属微生物を用いて、焼酎カスを処理すると共に、不飽和脂肪酸を同時に製造する技術が開示されている。特許文献3には、オーランチオキトリウム属微生物が水産餌料や家畜飼料として利用される旨、及び、オーランチオキトリウム属微生物から分離された脂肪酸が健康食品(サプリメント)として利用される旨の開示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-116511号公報
【特許文献2】特開2016-67340号公報
【特許文献3】特開2016-16362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献2及び3に記載されている技術は、従属栄養性微細藻類から抽出された成分を食品に配合するもの、又は、従属栄養性微細藻類を水産餌料若しくは家畜飼料に配合するものである。上記特許文献には、従属栄養性微細藻類そのものを食用とする(すなわち、人が食べるために用いる)ことについては記載されていない。
【0008】
本発明者らは、従属栄養性微細藻類自体を食用として活用しようと考えた。しかしながら、従属栄養性微細藻類自体をそのまま食すると、独特の魚臭さがあって美味しくない。
【0009】
そこで、本発明は、従属栄養性微細藻類自体のにおい及び味を改善する技術を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、従属栄養性微細藻類自体のにおい及び味を改善する技術について鋭意検討を行った。その結果、本発明者らは、特定の培地で培養した後に乾燥させることによって、におい及び味が改善された従属栄養性微細藻類が得られることを見出した。そして、本発明者らは、従属栄養性微細藻類自体を食品として提供する技術を確立し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、泡盛蒸留粕中の液体に由来する成分を含む培地中で従属栄養性微細藻類を培養する工程と、前記培養された前記従属栄養性微細藻類を乾燥する工程と、を含む、乾燥藻体含有乾燥食品の製造方法を提供する。
前記従属栄養性微細藻類は、ヤブレツボカビ類(Thraustochytriales)に属する微細藻類を含んでいてよい。
前記従属栄養性微細藻類は、オーランチオキトリウム属(Aurantiochytrium)に属する微細藻類を含んでいてよい。
前記従属栄養性微細藻類は、オーランチオキトリウム リマシナム(Aurantiochytrium limacinum)に属する微細藻類を含んでいてよい。
前記泡盛蒸留粕中の液体に由来する成分は、前記泡盛蒸留粕を固液分離して得られた液体に由来する成分であってよい。
また、本発明は、前記製造方法によって製造された乾燥藻体含有乾燥食品を用いることを含む、食品の製造方法も提供する。
また、本発明は、泡盛蒸留粕中の液体に由来する成分を含む培地中で従属栄養性微細藻類を培養する工程と、前記培養された前記従属栄養性微細藻類を乾燥する工程と、を含む、従属栄養性微細藻類の風味の改善方法も提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、従属栄養性微細藻類自体のにおい及び味を改善する技術が提供される。なお、本発明の効果は、ここに記載された効果に限定されず、本明細書内に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための好適な形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態を示したものであり、本発明の範囲がこれらの実施形態のみに限定されることはない。
【0014】
1.乾燥藻体含有乾燥食品の製造方法
【0015】
本発明の一実施形態に係る乾燥藻体含有乾燥食品の製造方法は、泡盛蒸留粕中の液体に由来する成分を含む培地中で従属栄養性微細藻類を培養する工程(以下「培養工程」ともいう。)と、培養された従属栄養性微細藻類を乾燥する工程(以下「乾燥工程」ともいう。)と、を含む。本実施形態に係る製造方法により、乾燥藻体を含有する乾燥食品が得られる。以下、当該製造方法に含まれうる各工程について説明する。
【0016】
1-1.従属栄養性微細藻類の培養
【0017】
1-1-1.従属栄養性微細藻類
【0018】
培養工程において、従属栄養性微細藻類が培養される。当該従属栄養性微細藻類としては、例えば、ヤブレツボカビ類(Thraustochytriales)又はラビリンチュラ類(Labyrinthulids)に属する微細藻類が挙げられる。
【0019】
上記ヤブレツボカビ類に属する微細藻類としては、例えば、オーランチオキトリウム属(Aurantiochytrium)、シゾキトリウム属(Schizochytrium)、スラウストキトリウム属(Thraustochytrium)、パリエティキトリウム属(Parietichytrium)、又はウルケニア属(Ulkenia)に属する微細藻類が挙げられる。
【0020】
上記ラビリンチュラ類に属する微細藻類としては、例えば、ラビリンチュラ属(Labyrinthula)に属する微細藻類が挙げられる。
【0021】
上記オーランチオキトリウム属に属する微細藻類としては、例えば、オーランチオキトリウム リマシナム(Aurantiochytrium limacinum)又はオーランチオキトリウム マングローベイ(Aurantiochytrium mangrovei)に属する微細藻類が挙げられる。オーランチオキトリウム リマシナムの株としては、例えば、SR-21株、4W-1b株、NIES3737株、ATCC MYA-1381株、mh0186株、及びF29-b株が挙げられる。オーランチオキトリウム マングローベイの株としては、例えば、18W-13a株、RCC893株、MP2株、BL10株、及びFB3株が挙げられる。
【0022】
本実施形態において用いられる従属栄養性微細藻類は、1種又は2種以上の組み合わせであってよい。当該従属栄養性微細藻類は、好ましくはヤブレツボカビ類に属する微細藻類を含み、より好ましくはオーランチオキトリウム属に属する微細藻類を含み、さらにより好ましくはオーランチオキトリウム リマシナムに属する微細藻類を含む。
【0023】
1-1-2.培地
【0024】
培養工程において、泡盛蒸留粕中の液体に由来する成分を含む培地が用いられる。「泡盛蒸留粕」とは、泡盛の製造工程において生じる蒸留残渣である。一般的な泡盛の製造工程の概要は次のとおりである。まず、タイ米と黒麹を用いて得られた米麹に、水と酵母を加え、もろみを得る。次に、もろみをアルコール発酵させて熟成もろみを得る。最後に、熟成もろみを蒸留することにより、泡盛を得る。熟成もろみの蒸留において生じる蒸留残渣が、泡盛蒸留粕である。泡盛蒸留粕は、スラリー状であり、アミノ酸及びクエン酸などの有機酸並びにミネラル及びビタミンなどを含有する液体と、タンパク質及び食物繊維などを含有する固体と、を含む。
【0025】
泡盛蒸留粕中の液体に由来する成分を含む培地は、泡盛蒸留粕中の液体に由来する成分を少なくとも含んでいればよく、泡盛蒸留粕中の固体に由来する成分を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。
【0026】
泡盛蒸留粕中の液体に由来する成分を含む培地は、当該培地を調製する工程において調製されうる。したがって、本実施形態に係る製造方法は、泡盛蒸留粕中の液体に由来する成分を含む培地を調製する工程(以下「培地調製工程」ともいう。)を含んでいてよい。培地調製工程においては、上述した泡盛蒸留粕が用いられる。培地調製工程において、泡盛蒸留粕は、例えば、固液分離されてもよく、されなくてもよい。以下、泡盛蒸留粕が固液分離される例と固液分離されない例を挙げて、培地調製工程について説明する。
【0027】
まず、一例として、培地調製工程は、泡盛蒸留粕を固液分離することを含む工程であってよい。具体的には、培地調製工程は、泡盛蒸留粕を固液分離して得られた液体に由来する成分を含む培地を調製する工程であってよい。
【0028】
固液分離される泡盛蒸留粕は、例えば、熟成もろみの蒸留において生じた泡盛蒸留粕(蒸留残渣)そのものであってよい。すなわち、培地調製工程において、未処理の泡盛蒸留粕を固液分離してよい。
【0029】
または、固液分離される泡盛蒸留粕は、例えば、熟成もろみの蒸留において生じた泡盛蒸留粕(蒸留残渣)に少なくとも1つの処理が施されたものであってもよい。当該少なくとも1つの処理は、例えば、冷蔵、冷凍、加熱、濃縮、及び滅菌から選択されてよい。すなわち、培地調製工程において、少なくとも1つの処理(例えば、冷蔵、冷凍、加熱、濃縮、及び滅菌から選択される少なくとも1つの処理)が施された泡盛蒸留粕を固液分離してもよい。
【0030】
上記固液分離は、例えば、遠心分離、沈降分離、ろ過分離、圧搾、及び市販の固液分離機などの既知の手段によって行われてよい。
【0031】
固液分離して得られた液体は、例えば、そのまま用いられてよい。すなわち、培地調製工程において、固液分離して得られた液体そのものを用いて培地を調製してよい。例えば、当該液体と後述する添加物とを混合して、培地を調製してもよい。
【0032】
または、固液分離して得られた液体は、例えば、少なくとも1つの処理が施された後に用いられてもよい。当該少なくとも1つの処理は、例えば、冷蔵、冷凍、加熱、濃縮、滅菌、及び乾燥から選択されてよい。すなわち、培地調製工程において、固液分離して得られた液体に少なくとも1つの処理(例えば、冷蔵、冷凍、加熱、濃縮、滅菌、及び乾燥から選択される少なくとも1つの処理)が施されたものを用いて培地を調製してもよい。例えば、固液分離して得られた液体に乾燥処理を施して乾燥物を作製し、その後、当該乾燥物と後述する添加物と水とを混合して培地を調製してもよい。
【0033】
次に、他の一例として、培地調製工程は、泡盛蒸留粕を固液分離することを含まない工程であってもよい。具体的には、培地調製工程は、泡盛蒸留粕を固液分離せずに用いて当該泡盛蒸留粕中の液体に由来する成分を含む培地を調製する工程であってもよい。
【0034】
固液分離せずに用いられる泡盛蒸留粕は、例えば、熟成もろみの蒸留において生じた泡盛蒸留粕(蒸留残渣)そのものであってよい。すなわち、培地調製工程において、未処理の泡盛蒸留粕を用いて培地を調製してもよい。例えば、未処理の泡盛蒸留粕と後述する添加物と水とを混合して培地を調製してもよい。
【0035】
または、固液分離せずに用いられる泡盛蒸留粕は、例えば、熟成もろみの蒸留において生じた泡盛蒸留粕(蒸留残渣)に固液分離以外の少なくとも1つの処理が施されたものであってもよい。当該少なくとも1つの処理は、例えば、冷蔵、冷凍、加熱、濃縮、滅菌、及び乾燥から選択されてよい。すなわち、培地調製工程において、固液分離以外の少なくとも1つの処理(例えば、冷蔵、冷凍、加熱、濃縮、滅菌、及び乾燥から選択される少なくとも1つの処理)が施された泡盛蒸留粕を用いて培地を調製してもよい。例えば、泡盛蒸留粕に乾燥処理を施して乾燥物を作製し、その後、当該乾燥物と後述する添加物と水とを混合して培地を調製してもよい。
【0036】
培地調製工程において調製される培地は、泡盛蒸留粕中の液体に由来する成分以外に、添加物を含んでいてよい。すなわち、培地調製工程は、泡盛蒸留粕中の液体に由来する成分と、添加物と、を含む培地を調製する工程であってよい。
【0037】
上記添加物としては、例えば、糖類、ミネラル成分(天然海水及び人工海水を含む)、有機酸、無機酸、有機塩基、無機塩基、ビタミン、アミノ酸、ペプチド、及びタンパク質が挙げられる。培地に含まれる添加物の種類は、培養される従属栄養性微細藻類の種類に応じて当業者によって適宜選択されてよい。
【0038】
上記糖類としては、例えば、グルコース、ガラクトース、フルクトース、マルトース、シュクロース、ラクトース、オリゴ糖、及び糖アルコール(グリセロールなど)から選択される少なくとも1つの糖類が挙げられる。培地中の糖類の量は、培養される従属栄養性微細藻類の種類に応じて当業者によって適宜調整されてよい。
【0039】
上記ミネラル成分としては、例えば、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸鉄、硫酸アンモニウム、硫酸銅、硫酸ニッケル、及び硫酸亜鉛などの硫酸塩;リン酸カリウムなどのリン酸塩;炭酸カルシウムなどの炭酸塩;塩化コバルト、塩化マンガン、塩化ナトリウム、及び塩化カルシウムなどの塩化物;アルカリ金属酸化物;モリブデン酸ナトリウムなどのモリブデン酸塩;亜セレン酸ナトリウムなどの亜セレン酸塩;臭化カリウム及びヨウ化カリウムなどのハロゲン化物;天然海水塩;レッドシーソルト(Red Sea Salt)などの人工海水塩;から選択される少なくとも1つのミネラル成分が挙げられる。培地中のミネラル成分の量は、培養される従属栄養性微細藻類の種類に応じて当業者によって適宜調整されてよい。
【0040】
培地調製工程において、泡盛蒸留粕中の液体に由来する成分を含む培地のpHは、必要に応じて調整されてよい。例えば、培地調製工程において、上記添加物を添加する前及び/又は後において、酸又は塩基を添加してpHを調整してもよい。当該pHは、培養される従属栄養性微細藻類の種類に応じて当業者によって適宜調整されてよい。
【0041】
培地調製工程において、泡盛蒸留粕中の液体に由来する成分を含む培地は、好ましくは滅菌される。すなわち、培地調製工程は、好ましくは、泡盛蒸留粕中の液体に由来する成分を含む培地を調製及び滅菌する工程である。当該滅菌は、オートクレーブ滅菌、濾過滅菌、煮沸滅菌、及び放射線滅菌などの既知の手段によって行われてよい。
【0042】
例えば、泡盛蒸留粕の固体部分が培地中に残存している場合、高温下で当該培地を滅菌することにより、培地中の固体部分の一部又は全部が可溶化することがある。このように、滅菌する処理が、培地に含まれる泡盛蒸留粕由来の固体部分を可溶化させる処理を兼ねていてもよい。
【0043】
泡盛蒸留粕中の液体に由来する成分を含む培地は、液体培地でもよく固体培地でもよい。従属栄養性微細藻類を大量培養する場合には、固体培地よりも液体培地の方が適している。
【0044】
1-1-3.培養条件
【0045】
培養工程において、従属栄養性微細藻類は、泡盛蒸留粕中の液体に由来する成分を含む培地中で培養される。泡盛蒸留粕中の液体に由来する成分は、好ましくは、泡盛蒸留粕を固液分離して得られた液体に由来する成分である。培養工程における培養温度、培養期間、及び培養法などの培養条件は、従属栄養性微細藻類を培養可能な条件であればよい。例えば、温度は5~40℃、好ましくは10~35℃、より好ましくは20~25℃、さらにより好ましくは25℃±1℃にて、通常1~10日間、好ましくは3~7日間、例えば4~5日間培養を行い、通気攪拌培養、振とう培養又は静置培養で行うことができる。
【0046】
本実施形態で使用される従属栄養性微細藻類を大量培養する場合、培養工程は、好ましくは、種培養と本培養とに分けて行われる。具体的には、培養工程は、種培養用の培地中で従属栄養性微細藻類を培養して種藻を得た後に、泡盛蒸留粕中の液体に由来する成分を含む本培養用の培地中で当該種藻を培養することによって、従属栄養性微細藻類を培養する工程であることが好ましい。種培養用の培地は、例えば、従属栄養性微細藻類を培養する培地として既知の培地であってもよく、泡盛蒸留粕中の液体に由来する成分を含む培地であってもよい。効率的に大量培養するためには、種培養用の培地は、従属栄養性微細藻類を培養する培地として既知の培地であることが好ましい。種培養用の培地として泡盛蒸留粕中の液体に由来する成分を含む培地を用いる場合、種培養用の培地の成分組成は、本培養用の培地と同一でもよく、異なってもよい。
【0047】
本実施形態で使用される従属栄養性微細藻類は、適当な細胞培養手段を有する培養装置で培養されてよい。「細胞培養手段」とは、細胞を培養するためのあらゆる機能を有する手段を意味し、例えば、培養槽である。当該培養槽は、攪拌装置、振動装置、温度制御装置、pH調節装置、濁度測定装置、光制御装置、O2、CO2などの定気体濃度測定装置、及び圧力測定装置から選択される1又は複数の装置を有してもよい。当該培養槽は濃縮・分離槽と同一の槽であっても、濃縮・分離槽とは別の槽であってもよい。濃縮・分離槽と別の槽である場合、適切な手段、例えば流路等により連結されていてもよい。
【0048】
1-2.従属栄養性微細藻類の乾燥
【0049】
本実施形態に係る製造方法において、培養工程の後に乾燥工程が行われる。乾燥工程において、培養された従属栄養性微細藻類が乾燥され、当該従属栄養性微細藻類は乾燥藻体となる。
【0050】
培養工程後に乾燥工程を行わずに得られた従属栄養性微細藻類のにおい及び味は、食品として好ましくない。培養工程と乾燥工程の両方を行うことにより、食品に適した従属栄養性微細藻類が得られる。
【0051】
乾燥される従属栄養性微細藻類は、例えば、培地から分離された従属栄養性微細藻類であってもよく、従属栄養性微細藻類と培地との混合物であってもよい。乾燥を効率的に行うためには、乾燥される従属栄養性微細藻類は、培地から分離された従属栄養性微細藻類であることが好ましい。すなわち、本実施形態に係る製造方法は、好ましくは、乾燥工程の前に、培養された従属栄養性微細藻類を培地から分離する工程(以下「分離工程」ともいう。)を含んでいてよい。分離工程が行われる場合、乾燥工程は、分離によって得られた培養された従属栄養性微細藻類を乾燥する工程であってよい。分離工程において、培地と従属栄養性微細藻類との分離は、例えば、遠心分離又は濾過などの既知の手段によって行われてよい。
【0052】
また、例えば、乾燥される従属栄養性微細藻類には、調味料が添加されてもよい。すなわち、乾燥工程は、培地から分離された従属栄養性微細藻類又は従属栄養性微細藻類と培地との混合物と、調味料と、を乾燥する工程であってもよい。このような工程により、調味された乾燥藻体含有乾燥食品が得られうる。添加される調味料は、既知の調味料であってよい。当該調味料の形態は、例えば、液体状、固体状、半固体状、ペースト状、顆粒状、又は粉末状などであってよい。当該調味料は、例えば、水又は水溶液などの液体と混合されてから従属栄養性微細藻類に添加されてもよい。
【0053】
上記乾燥は、食品分野において既知の手段によって行われてよい。例えば、当該乾燥は、加熱乾燥、低温乾燥、通風乾燥、減圧乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥、自然乾燥、及び市販の乾燥装置などから選択される少なくとも1つによって行われてよい。
【0054】
本実施形態における製造方法において、上述した乾燥工程を行うことにより、乾燥藻体含有乾燥食品が製造されうる。乾燥藻体含有乾燥食品は、乾燥藻体のみからなる乾燥食品、及び、乾燥藻体を含有する(乾燥藻体以外の成分も含有する)乾燥食品の両方を意味する。例えば、従属栄養性微細藻類と調味料とを乾燥して得られた乾燥食品は、乾燥藻体を含有する(乾燥藻体以外の成分も含有する)乾燥食品に該当する。
【0055】
本実施形態に係る製造方法は、上記で説明した工程以外に、従属栄養性微細藻類を粉砕する工程(以下「粉砕工程」ともいう。)を含んでいてよい。粉砕工程は、例えば、上記分離工程の後且つ上記乾燥工程の前、又は、上記乾燥工程の後に行われてよい。粉砕工程は、好ましくは、上記乾燥工程の後に行われる。乾燥工程後の従属栄養性微細藻類(乾燥藻体)は、水分量が低下しているため、粉砕が容易であり、また、小さい粒度となるように粉砕することもできる。当該粉砕は、既知の粉砕手段によって行われてよい。
【0056】
粉砕工程を行うことで、得られる乾燥藻体の粒度を低減できる。これにより、乾燥藻体含有乾燥食品の口当たりを向上させたり、乾燥藻体含有乾燥食品を他の食品に配合した場合の分散性を向上させたりすることが可能である。
【0057】
1-3.乾燥藻体含有乾燥食品
【0058】
本実施形態に係る製造方法によって、乾燥藻体含有乾燥食品が得られる。本明細書において「食品」とは、人が食べるために直接使用できる、食用可能な状態のものをいう。飼料及び餌料などの人以外の動物に与えられる食物は、本明細書に記載されている「食品」に該当しない。
【0059】
上記乾燥藻体含有乾燥食品は、上述のとおり、従属栄養性微細藻類の乾燥藻体のみからなる又は従属栄養性微細藻類の乾燥藻体を含有する乾燥食品である。当該従属栄養性微細藻類の乾燥藻体は、それ自体が食品に適したにおい及び味を有している。そのため、乾燥藻体含有乾燥食品は、乾燥藻体以外の成分を含有していなくてもよい。一方で、乾燥藻体含有食品は、例えばにおい又は味のさらなる改善のために、乾燥藻体以外の成分を含有していてもよい。
【0060】
乾燥藻体含有乾燥食品は、例えば、それ単独で食されてもよく、乾燥調味料若しくはりかけなどとして他の食品とともに食されてもよい。また、乾燥藻体含有乾燥食品は、他の食品の原料として用いられてもよい。
【0061】
一般的な培養環境下で培養された従属栄養性微細藻類は、独特の魚臭さがあって美味しくない。従来、従属栄養性微細藻類に含まれる成分(例えば多価不飽和脂肪酸)を抽出して食品に配合する技術は知られているが、従属栄養性微細藻類自体のにおい及び味を改善して食品として提供する技術は提案されていない。
【0062】
一方、本実施形態に係る製造方法は、従属栄養性微細藻類自体のにおい及び味を改善できるため、従属栄養性微細藻類自体を食品として提供することを可能とする。本実施形態において得られる従属栄養性微細藻類の乾燥藻体は、魚と昆布との中間のような風味を有しており、且つ、従来の従属栄養性微細藻類が持つ独特の魚臭さを有していない。
【0063】
2.乾燥藻体含有乾燥食品を含む食品の製造方法
【0064】
上記乾燥藻体含有乾燥食品は、上述のとおり、他の食品の原料として用いられてよい。したがって、本発明は、上記乾燥藻体含有乾燥食品の製造方法によって製造された乾燥藻体含有乾燥食品を用いることを含む、食品の製造方法も提供する。本発明の一実施形態に係る食品の製造方法において用いられる乾燥藻体含有乾燥食品及びその製造方法は、上記「1.乾燥藻体含有乾燥食品の製造方法」において説明したとおりであり、当該説明が本実施形態にも当てはまる。
【0065】
本実施形態に係る食品の製造方法は、例えば、上記乾燥藻体含有乾燥食品と、食品として許容される1以上の他の成分と、を用いることを含む製造方法であってよい。本実施形態において行われる工程は、当業者によって適宜選択されてよい。
【0066】
本実施形態によって得られる食品の形態としては、例えば、液体状、固体状、半固体状、ペースト状、顆粒状、及び粉末状などが挙げられるが、特に限定されない。
【0067】
本実施形態によって得られる食品の種類としては、例えば、肉加工品、水産加工品、乳加工品、野菜加工品、果実加工品、油脂食品、嗜好食品、調味料、菓子類、冷凍食品、レトルト食品、缶詰食品、びん詰め食品、及びインスタント食品などが挙げられるが、特に限定されない。
【0068】
3.従属栄養性微細藻類の風味の改善方法
【0069】
上記乾燥藻体含有乾燥食品の製造方法は、上述のとおり、従属栄養性微細藻類自体のにおい及び味を改善できる。したがって、本発明は、従属栄養性微細藻類の風味の改善方法も提供する。本明細書において「風味」とは、喫食によって感じられるにおい及び味を意味する。本実施形態に係る方法によって、風味が改善された従属栄養性微細藻類が得られる。「風味が改善された」とは、一般的な培養環境下で培養された従属栄養性微細藻類体と比較して風味が改善されたことを意味する。
【0070】
本発明の一実施形態に係る従属栄養性微細藻類の風味の改善方法は、泡盛蒸留粕中の液体に由来する成分を含む培地中で従属栄養性微細藻類を培養する工程と、前記培養された前記従属栄養性微細藻類を乾燥する工程と、を含む。これらの工程の詳細は、上記「1.乾燥藻体含有乾燥食品の製造方法」において説明したとおりであり、当該説明が本実施形態にも当てはまる。本実施形態に係る方法は、当該1.において説明した工程以外の工程を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。
【実施例0071】
以下で実施例を参照して本発明をより詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0072】
<試験例1>
【0073】
試験例1では、実施例の乾燥藻体含有乾燥食品、並びに、比較例及び参考例の食品を製造し、評価した。
【0074】
(1)食品の製造
【0075】
[実施例1]
【0076】
a)泡盛蒸留粕中の液体に由来する成分を含む培地の調製
【0077】
泡盛製造工場から入手した泡盛蒸留粕(蒸留残渣)を冷凍保存した。泡盛蒸留粕を室温(25℃)で12時間自然解凍した後、6000×gで10分間遠心分離した。得られた液体(上清)をpH6に調整した。液体1Lに対して、グルコース40g、及びレッドシーソルト(Red Sea Salt)16.7gを添加した。これにより、泡盛蒸留粕中の液体に由来する成分を含む培地(以下「泡盛残留粕含有培地」ともいう。)を得た。
【0078】
b)GTY培地の調製
【0079】
蒸留水1Lに対して、グルコース20g、酵母エキス5g、トリプトン10g、及びレッドシーソルト(Red Sea Salt)16.7gを添加した。これにより、GTY培地を得た。
【0080】
c)種培養
【0081】
NITE(独立行政法人製品評価技術基盤機構)から分譲されたオーランチオキトリウム リマシナムSR-21株(FERM BP-5034)を、GTY培地で3日間振とう培養し、種藻を得た。
【0082】
d)本培養
【0083】
泡盛残留粕含有培地を120℃で20分間オートクレーブ滅菌し、当該泡盛残留粕含有培地1Lに対して種藻を含むGTY培地10mLを播種し、72時間振とう培養した。
【0084】
e)分離、乾燥、及び粉砕
【0085】
本培養後の培地を遠心分離し、培養されたオーランチオキトリウム リマシナム(藻体)を培地から分離した。分離された藻体を、ドラムドライヤーを用いて150℃で1分間乾燥して、乾燥藻体を得た。その後、乾燥藻体を、微細粉砕機(増幸産業株式会社:スーパーマスコロイダー)及び電動コーヒーミル(株式会社泰成商事)を用いて粉砕した。これにより、実施例1の乾燥藻体含有乾燥食品を得た。
【0086】
[実施例2]
【0087】
乾燥工程において、藻体を、熱風乾燥機を用いて60℃で8時間乾燥させた後、凍結乾燥機を用いて10時間乾燥した。これ以外は、実施例1と同一の手順で、実施例2の乾燥藻体含有乾燥食品を得た。
【0088】
[比較例1]
【0089】
本培養工程において、GTY培地を120℃で20分間オートクレーブ滅菌し、当該GTY培地1Lに対して種藻を含むGTY培地10mLを播種した。これ以外は、実施例2と同一の手順で、比較例1の乾燥藻体含有乾燥食品を得た。
【0090】
[比較例2]
【0091】
本培養後の泡盛残留粕含有培地から藻体を分離した後に、乾燥及び粉砕を行わなかった以外は、実施例1と同一の手順で、比較例2の乾燥前藻体を得た。
【0092】
[比較例3]
【0093】
本培養のGTY培地から藻体を分離した後に、乾燥及び粉砕を行わなかったこと以外は、比較例1と同一の手順で、比較例3の乾燥前藻体を得た。
【0094】
[参考例]
【0095】
実施例1において培地の調製に用いられた冷凍保存後の泡盛蒸留粕(蒸留残渣)を、解凍した後、ドラムドライヤーを用いて150℃で1分間乾燥した。これにより、参考例の泡盛蒸留粕乾燥物を得た。
【0096】
(2)食品の評価
【0097】
パネル(5名)が、上記(1)で得られた各食品を喫食し、下記表1に示される評価基準に従って各評価項目について評価し点数をつけた。5名がつけた点数の平均値を算出し、小数点第2位を四捨五入して得られた数値を、各評価項目の評価点とした。
【0098】
【0099】
上記評価項目に示されているにおい及び味は、点数が高いほど食品として好ましい。したがって、上記(1)で得られた食品は、各評価項目の評価点が高いほど、好ましい風味を有していると判断されうる。
【0100】
上記評価項目に示されている「味」について、「脂っこい」、「旨味」、及び「えぐみ」は食品を口の中に含んでいる時に感じるにおい及び味であり、「後味(コク・美味しい)」及び「後味(不味い)」は食品を飲み込んだ後に感じる味(後味)である。
【0101】
なお、上記評価を実施する前に、パネルによる評価の精度を高めるため、パネル間で評価基準のすり合わせを行った。その結果、一部を除く評価項目について、特定の食品を喫食した時に感じられる風味を基準(基準点:2点又は3点)とし、当該特定の食品以外の食品については当該基準と対比して評価した。具体的には、「香ばしさ」及び「脂っこい」については、実施例2の風味を基準(基準点:2点)とした。「生臭さ」については、比較例1の風味を基準(基準点:3点)とした。「油の酸化臭」については、比較例1の風味を基準(基準点:2点)とした。「旨味」、「後味(コク・美味しい)」、及び「後味(不味い)」については、実施例1の風味を基準(評価点:3点)とした。
【0102】
実施例、比較例、及び参考例の評価結果を、下記表2に示す。
【0103】
【0104】
実施例1、2は、比較例1~3よりも評価点の高い評価項目が多く、食品に適した風味を有していた。実施例1、2は、魚と昆布との中間のような風味を有し、旨味を感じられ、後味も良かった。実施例1は、実施例2よりも評価点の高い評価項目が多く、食品により適した風味を有していた。比較例1~3はいずれも、食品に適した風味を有しているとはいえないものであった。乾燥工程を行わなかった比較例2、3は、非常に生臭く味がとても悪かった。
【0105】
実施例1、2と比較例2との対比、及び、比較例1と比較例3との対比から、食品に適した藻体を得るためには、特定の培地を用いる培養工程と乾燥工程との両方を行うことが必要であることが分かる。また、藻体を乾燥することによって、特に「生臭さ」、「油の酸化臭」、及び「発酵臭」が、効果的に抑制されていることが分かる。
【0106】
「えぐみ」という味は、参考例の泡盛蒸留粕乾燥物において強く感じられたが、実施例1、2及び比較例1~3ではほぼ感じられなかった。この結果から、泡盛蒸留粕そのものの風味が、培養後又は乾燥後の藻体の風味に付加されたのではないと考えられる。
【0107】
<試験例2>
【0108】
試験例2では、実施例1、2の乾燥藻体含有乾燥食品、又は比較例1の食品を含む調味料を製造し、評価した。
【0109】
(1)調味料の製造
【0110】
塩と実施例1の乾燥藻体含有乾燥食品とを10:1の重量割合で混合し(塩:実施例1=10:1)、調味料(以下「実施例1の調味料」ともいう。)を得た。実施例2及び比較例1についても同一の手順で調味料(以下それぞれ「実施例2の調味料」及び「比較例1の調味料」ともいう。)を得た。
【0111】
(2)調味料の評価
【0112】
上記試験例1と同一の手順によって、実施例1、2及び比較例1の調味料を評価した。評価結果を下記表3に示す。
【0113】
【0114】
実施例1、2の調味料は、比較例1の調味料よりも評価点の高い評価項目が多く、におい及び味が良好であった。特に、実施例1、2の調味料は、比較例1の調味料と比べて油の酸化臭が低下し、旨味が増して後味も良かった。実施例1の調味料は、実施例2の調味料よりも評価点の高い評価項目が多く、調味料としてより好ましい風味を有していた。
【0115】
<試験例3>
【0116】
試験例3では、実施例1、2の乾燥藻体含有乾燥食品、又は比較例1の食品を含むすまし汁を製造し、評価した。
【0117】
(1)すまし汁の製造
【0118】
試験例2で得られた実施例1の調味料0.8gと湯100mLとを混合し、すまし汁(以下「実施例1のすまし汁」ともいう。)を得た。実施例2及び比較例1の調味料についても同一の手順ですまし汁(以下それぞれ「実施例2のすまし汁」及び「比較例1のすまし汁」ともいう。)を得た。
【0119】
(2)すまし汁の評価
【0120】
上記試験例1と同一の手順によって、実施例1、2及び比較例1のすまし汁を評価した。評価結果を下記表4に示す。
【0121】
【0122】
実施例1、2のすまし汁は、比較例1のすまし汁よりも評価点の高い評価項目が多く、におい及び味が良好であった。特に、実施例1、2のすまし汁は、比較例1のすまし汁よりも香ばしい香りが際立ち、旨味が増して後味も良かった。実施例1のすまし汁は、実施例2のすまし汁よりも評価点の高い評価項目が多く、すまし汁としてより好ましい風味を有していた。
前記従属栄養性微細藻類が、ヤブレツボカビ類(Thraustochytriales)に属する微細藻類を含む、請求項1に記載の乾燥藻体含有乾燥食品の製造方法。
前記従属栄養性微細藻類が、オーランチオキトリウム属(Aurantiochytrium)に属する微細藻類を含む、請求項1又は2に記載の乾燥藻体含有乾燥食品の製造方法。
前記従属栄養性微細藻類が、オーランチオキトリウム リマシナム(Aurantiochytrium limacinum)に属する微細藻類を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の乾燥藻体含有乾燥食品の製造方法。
前記泡盛蒸留粕中の液体に由来する成分が、前記泡盛蒸留粕を固液分離して得られた液体に由来する成分である、請求項1から4のいずれか一項に記載の乾燥藻体含有乾燥食品の製造方法。