(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023105904
(43)【公開日】2023-08-01
(54)【発明の名称】フレキシブルケーブル及び電線引き込み構造
(51)【国際特許分類】
H01B 7/08 20060101AFI20230725BHJP
B60R 13/07 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
H01B7/08
B60R13/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022006924
(22)【出願日】2022-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】391021226
【氏名又は名称】株式会社カーメイト
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】谷田部 一美
【テーマコード(参考)】
3D024
5G311
【Fターム(参考)】
3D024AB01
5G311CA05
5G311CB01
5G311CB02
5G311CC01
5G311CD03
5G311CD10
(57)【要約】
【課題】ウェザーストリップ配置部分の気密性を確保し、かつ車両のボディや樹脂部に加工を施す事無く車両の内外に電線を引き回す事のできる電線引き込み構造を提供する。
【解決手段】車両におけるアウターパネル30とインナーパネル32の接合部34がウェザーストリップ36により覆われている部位から電線を引き込む構造であって、接合部34を跨いでアウターパネル30とインナーパネル32とに電線を引き回す際、前記電線を接合部34とウェザーストリップ36との間に通す構造とし、前記電線を通電層12と、通電層12を覆う樹脂層とを有するフレキシブルケーブル10とし、外表層22に耐紫外線特性を持たせたことを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電層と、前記通電層を覆う樹脂層とを有するフレキシブルケーブルであって、
外表層に耐紫外線特性を持たせたことを特徴とするフレキシブルケーブル。
【請求項2】
前記外表層は、前記樹脂層に貼付する樹脂フィルムであることを特徴とする請求項1に記載のフレキシブルケーブル。
【請求項3】
前記外表層は、前記樹脂層に塗布する塗料により構成される塗膜であることを特徴とする請求項1に記載のフレキシブルケーブル。
【請求項4】
車両におけるアウターパネルとインナーパネルの接合部がウェザーストリップにより覆われている部位から電線を引き込む構造であって、
前記接合部を跨いで前記アウターパネルと前記インナーパネルとに電線を引き回す際、前記電線を前記接合部と前記ウェザーストリップとの間に通す構造とし、
前記電線を請求項1乃至3のいずれか1項に記載のフレキシブルケーブルとしたことを特徴とする電線引き込み構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の内外に配置された電装品を電気的に接続するための技術に係り、特に、車両内外の引き込み(引き出し)に適したフレキシブルケーブル、及びこのフレキシブルケーブルを用いた電線引き込み構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の外に電装品を後付けする場合、電源の確保や電装品の制御を車内から行う事を目的として、車両の内部への電線の引き込みが行われる。このような配線の引き込みは従来、乗降用のドアやリアハッチなどの開閉部を介して行うか、車両のボディに穴を開け、その穴から車内への引き込みを行うという方法が採られていた。しかし、ドアやハッチ部分に電線を通す場合、ドアやハッチの封止部に設けられたウェザーストリップを電線が跨ぐこととなり、車内の密閉性を低下させると共に、ドアやハッチが閉まり難くなる(いわゆる半ドアになる確率が上がる)といった問題があった。また、ボディに穴を開けるなどの加工は、専門知識が必要になると共に、車両価値の低下を招くこととなりかねないといったリスクがあった。
【0003】
このような実状を鑑み、車両の気密性を損なわず、かつ車両に手を加える事なく車両の内外に配置された電装品を電気的に接続する方法が特許文献1に開示されている。特許文献1に開示されている方法は、車体とウインドウガラスとの間に配置されたパッキングに挿通孔を設け、この挿通孔を介して車両の内外にフレキシブルケーブルを挿通させるというものである。
【0004】
確かに、特許文献1に開示されているような方法によれば、ウェザーストリップ部分における気密性を損なう事は無く、また、ボディに穴を開ける必要も無い。しかし、パッキング自体には挿通孔を形成する必要がある事に変わりは無いと共に、フレキシブルケーブルの特性から、実現性に乏しいという実状がある。具体的には、一般的に知られているフレキシブルケーブルは銅箔などにより構成される通電層を覆う樹脂層に、絶縁性や耐熱性が良好なポリイミド等を用いている。しかし、ポリイミド等による樹脂層は紫外線に弱く、車両外部への引き回しに利用した場合には、劣化による不具合が生じやすいといった問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明では、上記問題を解決し、車両の内外への引き回しを実現する事のできるフレキシブルケーブルと、このフレキシブルケーブルを用い、ウェザーストリップ配置部分の気密性を確保し、かつ車両のボディや樹脂部に加工を施す事無く車両の内外に電線を引き回す事のできる電線引き込み構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係るフレキシブルケーブルは、通電層と、前記通電層を覆う樹脂層とを有するフレキシブルケーブルであって、外表層に耐紫外線特性を持たせたことを特徴とする。
【0008】
また、上記のような特徴を有するフレキシブルケーブルにおいて前記外表層は、前記樹脂層に貼付する樹脂フィルムとすることができる。このような特徴を有する事によれば、対候性や擦過性など、フレキシブルケーブルの表面に所望する付加特性に合わせて外表層の選択をすることが可能となる。
【0009】
また、上記のような特徴を有するフレキシブルケーブルにおいて前記外表層は、前記樹脂層に塗布する塗料により構成される塗膜とすることもできる。このような特徴を有する事によれば、フィルムの貼り付けよりも容易に外表層を構成することが可能となる。
【0010】
また、上記目的を達成するための本発明に係る電線引き込み構造は、車両におけるアウターパネルとインナーパネルの接合部がウェザーストリップにより覆われている部位から電線を引き込む構造であって、前記接合部を跨いで前記アウターパネルと前記インナーパネルとに電線を引き回す際、前記電線を前記接合部と前記ウェザーストリップとの間に通す構造とし、前記電線を上記特徴を有するいずれかのフレキシブルケーブルとしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
上記のような特徴を有する電線引き込み構造によれば、ウェザーストリップ配置部分の気密性を確保し、かつ車両のボディや樹脂部に加工を施す事無く車両の内外に電線を引き回す事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態に係るフレキシブルケーブルの構造を説明するための図である。
【
図2】実施形態に係る電線引き込み構造を説明するための概略図である。
【
図3】実施形態に係る電線引き込み構造の手順を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のフレキシブルケーブル及び電線引き込み構造に係る実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態は、本発明を実施するための一部の形態であり、その効果を奏する限りにおいて、構成の一部、あるいは適用箇所に変更を加えたとしても、本発明の一部とみなすことができる。
【0014】
[構成:フレキシブルケーブル]
まず、
図1を参照して実施形態に係るフレキシブルケーブル10の構成について説明する。本実施形態に係るフレキシブルケーブル10は、通電層12と樹脂層(カバーレイ16、ベースフィルム18)、および外表層22を有する可撓性薄膜状電線である。通電層12は、銅やアルミ、金、あるいはこれらの金属を含む合金などの導電性金属から成る箔材から構成されるものであれば良い。
【0015】
また、樹脂層は、絶縁性や耐熱性を有する可撓性の樹脂であれば良く、例えばPI(ポリイミド)やPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PE(ポリエステル)、PET(ポリエチレンテレフタレート)等を挙げることができる。フレキシブルケーブル10の場合樹脂層は、通電層12の表側を覆うカバーレイ16と、裏側を覆うベースフィルム18とから成る。カバーレイ16とベースフィルム18の接合は、通電層12や、フレキシブルケーブル10を平面視した際にカバーレイ16とベースフィルム18が対面する部位に接着剤14を介在させて熱融着させる(
図1に示す形態)他、熱と圧力によりカバーレイ16とベースフィルム18を直接熱溶着するといった手法であれば良い。なお、
図1においては説明を解りやすくするために、通電層12の周囲が接着剤14で覆われているように示しているが実際には、通電層12が配置されている部分以外では、カバーレイ16とベースフィルム18とが近接することとなる。
【0016】
また、外表層22は、カバーレイ16を覆う要素であり、耐紫外線特性を有し、樹脂層の可撓性に追従可能な素材であれば良い。本実施形態では、粘着剤20を介してカバーレイ16に、塩化ビニル系のフィルムを貼付することで外表層22を構成している。外表層22をフィルムとすることで、耐紫外線特性以外の特性、例えば対候性や耐油性、耐薬品性、及び擦過性など、フレキシブルケーブル10の表面に所望する特性に合わせて外表層22を選ぶことが可能となる。なお、粘着剤20の代わりに接着剤を用いても良い事はいうまでもない。
【0017】
また、本実施形態では外表層22の一例として、フィルムを貼付する例を挙げているが、本願における外表層22とは塗装により構成される塗膜であっても良い。弾性樹脂を成分として含有する塗料や、定着粒子を超微粒子とした塗料などであれば、塗膜を破損させる事無く上述した樹脂層の可撓性に追従することができるからである。外表層22を塗膜により構成する場合、フィルムを貼り付ける手間が不要となり、量産性を向上させることが可能となる。
【0018】
また、本実施形態に係るフレキシブルケーブル10では、ベースフィルム18の裏側(通電層12と対向する面と反対の面)に、接着層24を備える構成としている。接着層24を有することで、フレキシブルケーブル10を設置面に安定して配置、固定することが可能となるからである。なお、接着層24としては、ベースフィルム18に対して粘着剤を付着させるといったものであれば良い。
【0019】
[作用・効果:フレキシブルケーブル]
このような構成のフレキシブルケーブル10は、薄膜状に構成することができるため、折り曲げ性が良好となる。また、外表層22を備えることで紫外線に対する耐性が向上するため、屋外使用時における早期劣化を防ぐことができる。
【0020】
なお、上記実施形態では外表層22として、耐紫外線特性を有するフィルムや塗膜を挙げているが、カバーレイ16自体に耐紫外線特性を持たせた場合には、カバーレイ16自体を外表層としても良い。具体的には、カバーレイ16として、耐紫外線特性ポリエチレンなどを採用すれば良い。
【0021】
[構成:電線引き込み構造]
次に、
図2、
図3を参照して、上記実施形態に係るフレキシブルケーブル10を用いた電線引き込み構造について説明する。
本実施形態に係る電線引き込み構造は、ルーフやサイドパネル、リアパネルなどに設けられるドア開口部やリアハッチ開口部を介して車両の内部と外部に電線を引き回すことを基本とする。
【0022】
上記開口部には
図2に示すように、車両の外表面を構成するアウターパネル30と、車両内部のベースとなるインナーパネル32との接合部34が表れる。そして、この2枚のパネルの接合部34は、開口部(ドア開口部やリアハッチ開口部)を封止する際の密閉性や遮音性を向上するための要素であるウェザーストリップ36で覆われている。ウェザーストリップ36は、ゴムやウレタンなどの弾性樹脂で構成されており、コ字状、あるいはU字状に形成された溝部36aにアウターパネル30とインナーパネル32の接合部34を介入させることで車両に固定されている。このためウェザーストリップ36は、接合部34の端部から引き揚げる方向(
図3(B)に示す矢印Aの方向)に力を加えることで、車両から引き剥がすことができる。
【0023】
本実施形態に係る電線引き込み構造は、ウェザーストリップ36と接合部34との間にフレキシブルケーブル10を配置することで、アウターパネル30からインナーパネル32へ電線を引き込む構造、換言すると、インナーパネル32からアウターパネル30へ電線を引き出す構造である。
【0024】
なお、インナーパネル32側に配したフレキシブルケーブル10は、車内に設けられる内装パネル38の内側(インナーパネル32と内装パネル38の間)に引き回すことで、車内での配線を目立たなくさせることができる。
【0025】
このような構成の電線引き込み構造は、次のような手順で実施すればよい。まず、
図3(A)に示すように、接合部34に配置されているウェザーストリップ36を接合部34から引き抜き、
図3(B)に示すような状態とする。次に、
図3(C)に示すように、ウェザーストリップ36を剥がした接合部34に沿ってフレキシブルケーブル10を配置する。ここで、フレキシブルケーブル10の配置は、ベースフィルム18の裏面に配置した接着層24によるアウターパネル30とインナーパネル32(接合部34を含む)への貼り付けであれば良い。フレキシブルケーブル10は、薄膜状で可撓性を有するため、接合部34のように折り曲げ角度が大きくなる場合(例えば鋭角に折り返すような場合)でも、その形状に沿って配置することができる。
【0026】
フレキシブルケーブル10の配置が終了した後、
図3(D)に示すように、接合部34から引き抜いたウェザーストリップ36を元に戻す。具体的には、ウェザーストリップ36の溝部36aに接合部34を嵌め込むように、ウェザーストリップ36を接合部34へ押し付ければ良い(
図3(D)に矢印Bで示す方向へ押し付ける)。こうすることで、ウェザーストリップ36と接合部34との間にフレキシブルケーブル10が配置され、車両の外部側から内部側へと電線が引き込まれたこととなる。
【0027】
なお、車両の内外にそれぞれ配置されることとなるフレキシブルケーブル10の端部には、それぞれ電子機器や電気機器、その制御装置、あるいは電源装置などを含む電装品が接続される。
【0028】
[作用・効果:電線引き込み構造]
上記のような電線引き込み構造によれば、ウェザーストリップ36が配されている部分の気密性を確保し、かつ車両のボディや樹脂部に加工を施す事無く車両の内外に電線(配線)を引き回す事が可能となる。また、フレキシブルケーブル10には、耐紫外線特性を有する外表層22が備えられているため、車両の外部に配置した場合であっても樹脂層が早期に劣化してしまう恐れがない。このため、車外に配置されるフレキシブルケーブル10に対して、保護カバー等を設ける必要が無く、車外の配線を目立たないようにすることができる。また、外表層22を構成するフィルムをボディーカラーに合わせることで、より配線を目立たないようにすることも可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
上記実施形態では、実施形態に係るフレキシブルケーブル10は、車両の外部から内部への電線の引き込みに用いるように説明しているが、本発明に係るフレキシブルケーブル10の適用範囲は車両に限定されるものでは無い。すなわち、屋内外を問わず、専用、汎用のカバーを用いる事なく、電子機器、電気機器等の接続用配線として使用することができる。
【符号の説明】
【0030】
10………フレキシブルケーブル、12………通電層、14………接着剤、16………カバーレイ(樹脂層)、18………ベースフィルム(樹脂層)、20………粘着剤、22………外表層、24………接着層、30………アウターパネル、32………インナーパネル、34………接合部、36………ウェザーストリップ、36a………溝部、38………内装パネル。