(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023105906
(43)【公開日】2023-08-01
(54)【発明の名称】広域火災警報システム
(51)【国際特許分類】
G08B 25/00 20060101AFI20230725BHJP
G08B 17/00 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
G08B25/00 520A
G08B17/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022006928
(22)【出願日】2022-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】外村 賢昭
【テーマコード(参考)】
5C087
5G405
【Fターム(参考)】
5C087AA02
5C087AA03
5C087AA09
5C087AA10
5C087AA19
5C087AA37
5C087AA44
5C087BB02
5C087BB20
5C087BB74
5C087DD04
5C087DD20
5C087DD24
5C087DD49
5C087EE20
5C087FF01
5C087FF02
5C087FF03
5C087FF04
5C087FF16
5C087GG08
5C087GG52
5C087GG65
5C087GG66
5C087GG70
5C087GG84
5G405AA06
5G405AA08
5G405AB01
5G405AB02
5G405AB03
5G405AD06
5G405AD07
5G405BA01
5G405BA07
5G405CA26
5G405CA60
(57)【要約】 (修正有)
【課題】監視対象地域の住戸に設定した警報器の信号送受信に必要な各種の情報の設定が簡単且つ容易にできると共に警報器の広域的な監視と運用管理を可能とする広域火災警報システムを提供する。
【解決手段】広域火災警報システムでは、監視対象地域に存在する複数の住戸12の各々に無線連動型の警報器10が配置され、通信ネットワークを介してサーバ20に接続される。サーバ20は、警報器10が火災を検出した場合に、火災を検出した住戸の警報動作を中心として時間の経過に伴い他の住戸の警報器による警報動作が波紋状に広がるように火災連動信号を中継送信させる送信電力と中継遅延時間を警報器に遠隔設定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視対象地域に存在する複数の住戸の各々に設置された警報器と、
前記警報器と通信ネットワークを介して接続され、前記警報器が火災を検出した場合に、火災を検出した住戸の警報動作を中心として時間の経過に伴い他の住戸の警報器による警報動作が波紋状に広がるように火災連動信号を中継送信させる送信電力と中継遅延時間を前記警報器に設定する上位装置と、
が設けられたことを特徴とする広域火災警報システム。
【請求項2】
請求項1記載の広域火災警報システムに於いて、
前記上位装置は、
前記住戸に設置された前記警報器が火災を検出した場合に送信する前記火災連動信号の通信可能エリアに、当該住戸の周囲に隣接する他の複数の住戸に設置された他の警報器が入るように前記警報器に前記送信電力を設定し、
前記警報器が設置された住戸の周囲に隣接する他の複数の住戸に設置された前記警報器が、前記火災連動信号を受信してから中継送信するまでの時間が相互に異なるように前記警報器に前記中継遅延時間を設定することを特徴とする広域火災警報システム。
【請求項3】
請求項2記載の広域火災警報システムに於いて、
前記上位装置は、前記監視対象地域に存在する住戸を、所定数の住戸単位の住戸グループに分割し、前記住戸グループの各住戸の警報器に、相互に異なる前記中継遅延時間を所定の順番に従って設定することを特徴とする広域火災警報システム。
【請求項4】
請求項3記載の広域火災警報システムに於いて、
前記上位装置は、前記住戸グループが前記所定数の住戸未満の場合、各住戸の警報器に、相互に異なる前記中継遅延時間を一部間引きされた所定の順番に従って設定することを特徴とする広域火災警報システム。
【請求項5】
請求項2記載の広域火災警報システムに於いて、
前記警報器は、火災を検出して火災警報を出力した場合、又は他の警報器から前記火災連動信号を受信して他住戸の火災を示す火災警報を出力した場合、火災警報通知信号を前記上位装置に送信し、
前記上位装置は、前記警報器から前記火災警報通知信号を受信した場合に、前記火災警報を出力した住戸の火災警報動作を表示させることを特徴とする広域火災警報システム。
【請求項6】
請求項5記載の広域火災警報システムに於いて、
前記警報器は、火災を検出した後に警報停止又は火災復旧が行われた場合に、前記上位装置に警報停止通知信号又は火災復旧通知信号を送信し、
前記上位装置は、前記警報器から前記警報停止通知信号又は前記火災復旧通知信号を受信した場合に、警報停止又は火災復旧が行われた住戸の火災警報動作の表示を消去することを特徴とする広域火災警報システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物が密集した市街地で発生する飲食店や住宅の火災を監視して警報する広域火災警報システムに関する。
【背景技術】
【0002】
消防白書によれば、建物の焼損面積が33,000m2(1万坪)以上の火災を「大火」としているが、平常時の市街地延焼火災としての大火は、昭和51年(1976年)の酒田大火を最後に発生していない。
【0003】
しかしながら、市街地の木造密集地域は、道路幅が狭く、老朽化した建物もあり、このため火災が発生した場合に消防車両や消防隊員が進入しにくく、更に、火災時の風向き等の気象条件が加わると、広域の市街地火災となる虞がある。
【0004】
一方、近年にあっては、住宅における火災を検出して警報する住宅用の火災警報器が普及している。以下、「火災警報器」を単に「警報器」という。
【0005】
このような警報器にあっては、警報器内にセンサ部と警報部を一体に備え、煙あるいは熱等により火災を検出すると火災警報を出すようにしており、警報器単体で火災監視と警報ができることから、設置が簡単でコスト的にも安価であり、一般住宅での設置義務化に伴い広く普及している。
【0006】
また、複数の警報器間で相互に通信を行うことによって、任意の警報器で火災警報音が出力されると、他の警報器でも連動して火災警報音が出力されるようにした無線式連動型の火災警報システムが実用化され、普及している。
【0007】
しかし、このような従来の無線連動型の火災警報システムにあっては、ある警報器が他の警報器からの無線信号を受信する際に、同じ通信周波数を使用する複数の無線信号が同時に到来して信号衝突を起こす場合があり、信号衝突の発生頻度は警戒エリアに設置する警報器の台数が増加するほど高くなり、そのため1つの警戒エリアに設置できる警報器の台数が制約される。
【0008】
この問題を解決するため、複数の警報器からなるグループを形成し、グループ毎に使用する通信周波数を異ならせ、更に、グループを形成するにあたって、信号衝突の頻度が高くならないよう警報器の最大台数を設定し、このように形成した複数のグループ間に中継器を配置して連動させるグループ連動を行う火災警報システムが知られている(特許文献2)。
【0009】
このようにグループ毎に通信周波数を異ならせてグループ連動を行う火災警報システムにあっては、警戒エリア内で複数のグループを連動させることで、全体として連動する警報器の台数を増やすことができ、グループが異なると警報器の通信周波数が異なるため、あるグループの警報器に当該グループ内の警報器からの信号と他のグループの警報器からの信号が同時に到来しても、信号衝突は発生せず、信号の送受信を確実に行うことができる。
【0010】
グループ連動を行う警報システムは、火災報知設備の設置義務のない、床面積が3000平米未満の施設、例えば高齢者や知的障害者の家事支援などを行うグループホーム等に設置することで、信号衝突の問題を回避しつつグループホーム全体で連動する警報器の台数を必要にして十分な数に増やし、実質的に火災報知設備を設置したと同等の火災監視機能を低コストで提供可能としている。
【0011】
このため木造密集地域となる市街地を対象に火災監視を行う広域火災警報システムにも、従来のグループ連動を行う火災警報システムを適用することが考えられる。これにより監視対象とする市街地等の住戸を、信号衝突の頻度が高くならないように制限したグループ構成可能な警報器の最大数、例えば15台に対応した15住戸単位にグループ分けを行って異なる通信周波数の警報器グループを形成し、更に、グループ間の連動を行うために火災連動信号の周波数変換を行う中継器をグループの間に設置することになる。
【0012】
このような従来のグループ連動を行う警報システムを、市街地を対象とした広域火災警報システムに適用した場合、ある住戸の警報器が火災を検出して警報すると、同じグループ内の他の住戸の警報器及び他の全てのグループの住戸に配置した警報器から火災警報を出力させることができる。
【0013】
しかしながら、広域火災警報システムで1住戸の火災に対し全グループの住戸の警報器、即ち監視対象地域となる全住戸の警報器から一斉に火災警報を出力させることは、火災が発生した住戸から相当離れた場所に位置する火災の緊急度が低いグループの住戸でも火災警報が出力され、火災警報の出力により不要な混乱を招く恐れがあり、また非火災報や誤報の場合には迷惑が拡大してしまう問題がある。
【0014】
また、監視対象地域の住戸のグループ分けは、火災の相互監視という住民の合意が前提であり、町内会等の地域住民の近隣関係を十分に考慮して行う必要があり、地図情報等による一義的な住戸のグループ分けができないことから、住戸のグループ分けに多くの手間と時間がかかる問題もある。
【0015】
この問題を解決するため本願出願人は、監視対象地域に存在する複数の住戸の各々に無線連動型の警報器を設置し、火災が発生した場合には、火災が発生した火災住戸の警報器の警報動作を中心として、時間の経過に伴い他の住戸の警報器による火災警報動作が監視対象地域で波紋状に広がるように火災連動信号を中継送信するようにした広域火災警報システムを提案している(特許文献1)。
【0016】
このため警報器には、自住戸の周囲に隣接する他の住戸に設置された複数の警報器が通信可能エリアに入るように火災連動信号を送信する送信電力が設定され、また、火災を検出した住戸の周囲に隣接する他住戸に設置された複数の警報器には、火災連動信号を受信してから中継送信するまでの中継遅延時間を相互に異なるように設定し、波紋状に火災連動信号を中継送信する場合の信号衝突による通信エラーを抑制するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2021-99675号公報
【特許文献2】特開2010-33236号公報
【特許文献3】特開2011-034373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、このような広域火災警報システムにあっては、市街地等の住宅や商店が密集した監視対象地域に存在する多数の住戸に対し送信電力と中継遅延時間の設定を個別に行う必要があり、警報器の設定操作に手間と時間がかかる問題がある。
【0019】
また、監視対象地域で火災が発生すると、火災が発生した住戸の警報器の警報動作を中心として、時間の経過に伴い他の住戸の警報器による火災警報動作が監視対象地域で波紋状に広がっていくが、このような警報動作の様子は火災監視対象地域にいても把握することができず、多数の警報器の運用管理が全て現場対応となり、監視対象地域の全体像を把握したシステム的な運用管理が望まれる。
【0020】
本発明は、監視対象地域の住戸に設定した警報器の信号送受信に必要な各種の情報の設定が簡単且つ容易にできるとともに警報器の広域的な監視と運用管理を可能とする広域火災警報システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
(広域火災警報システム)
本発明は、広域火災警報システムに於いて、
監視対象地域に存在する複数の住戸の各々に設置された警報器と、
警報器と通信ネットワークを介して接続され、警報器が火災を検出した場合に、火災を検出した住戸の警報動作を中心として時間の経過に伴い他の住戸の警報器による警報動作が波紋状に広がるように火災連動信号を中継送信させる送信電力と中継遅延時間を警報器に設定する上位装置と、
が設けられたことを特徴とする。
【0022】
(送信電力と中継遅延時間の設定詳細)
上位装置は、
住戸に設置された警報器が火災を検出した場合に送信する火災連動信号の通信可能エリアに、当該住戸の周囲に隣接する他の複数の住戸に設置された他の警報器が入るように警報器に送信電力を設定し、
警報器が設置された住戸の周囲に隣接する他の複数の住戸に設置された警報器が、火災連動信号を受信してから中継送信するまでの時間が相互に異なるように警報器に中継遅延時間を設定する。
【0023】
(住戸グループに対する中継遅延時間の設定)
上位装置は、監視対象地域に存在する住戸を、所定数の住戸単位の住戸グループに分割し、住戸グループの各住戸の警報器に、相互に異なる中継遅延時間を所定の順番に従って設定する。
【0024】
(中継遅延時間の間引き設定)
上位装置は、住戸グループが所定数の住戸未満の場合、各住戸の警報器に、相互に異なる中継遅延時間を一部間引きされた所定の順番に従って設定とする。
【0025】
(上位装置による火災警報住戸の表示)
警報器は、火災を検出して火災警報を出力した場合、又は、他の警報器から火災連動信号を受信して他住戸の火災を示す火災警報を出力した場合、火災警報通知信号を上位装置に送信し、
上位装置は、警報器から火災警報通知信号を受信した場合に、火災警報を出力した住戸の火災警報動作を表示させる。
【0026】
(警報停止又は火災復旧による火災警報住戸の表示消去)
警報器は、火災を検出した後に警報停止又は火災復旧が行われた場合に、上位装置に警報停止通知信号又は火災復旧通知信号を送信し、
上位装置は、警報器から警報停止通知信号又は火災復旧通知信号を受信した場合に、警報停止又は火災復旧が行われた住戸の火災警報動作の表示を消去させる。
【発明の効果】
【0027】
(基本的な効果)
本発明は、広域火災警報システムに於いて、監視対象地域に存在する複数の住戸の各々に設置された警報器と、警報器と通信ネットワークを介して接続され、警報器が火災を検出した場合に、火災を検出した住戸の警報動作を中心として時間の経過に伴い他の住戸の警報器による警報動作が波紋状に広がるように火災連動信号を中継送信させる送信電力と中継遅延時間を警報器に設定する上位装置とが設けられたため、火災を検出した住戸の警報動作を中心として時間の経過に伴い他の住戸の警報器による警報動作が波紋状に広がるようにする警報器に対する送信電力と中継遅延時間の設定がサーバ等の上位装置から遠隔的に行うことができ、監視対象地域に数百から数千といった多数の住戸が存在しても、送信電力と中継遅延時間の設定を効率良く行うことができる。
【0028】
(送信電力と中継遅延時間の設定詳細による効果)
また、上位装置は、住戸に設置された警報器が火災を検出した場合に送信する火災連動信号の通信可能エリアに、当該住戸の周囲に隣接する他の複数の住戸に設置された他の警報器が入るように警報器に前記送信電力を設定し、警報器が設置された住戸の周囲に隣接する他の複数の住戸に設置された警報器が、火災連動信号を受信してから中継送信するまでの時間が相互に異なるように警報器に中継遅延時間を設定するようにしたため、火災が発生した住戸の警報器が送信した火災連動信号は少なくとも隣接する住戸の警報器で受信されて警報動作が行われるが、火災連動信号の中継送信は、次の火災連動信号の受信した場合に、異なる中継遅延時間後に行われることから、警報器間の通信にキャリアセンスなしの通信方式を使用していても、中継送信した火災連動信号の信号衝突による通信エラーが十分に抑制され、これにより火災発生住戸を中心に波紋が広がって行くように、住戸の警報器による警報動作が広域的に行われる。
【0029】
(住戸グループに対する中継遅延時間の設定による効果)
また、上位装置は、監視対象地域に存在する住戸を、所定数の住戸単位の住戸グループに分割し、住戸グループの各住戸の警報器に、相互に異なる中継遅延時間を所定の順番に従って設定するようにしたため、中継遅延時間を設定するための住戸のグループ分けは、監視対象地域の地図情報に基づき一義的に行うことができ、住戸のグループ分けによる中継遅延時間の設定が簡単且つ容易にできる。
【0030】
(中継遅延時間の間引き設定による効果)
また、上位装置は、住戸グループが所定数の住戸未満の場合、各住戸の警報器に、相互に異なる中継遅延時間を一部間引きされた所定の順番に従って設定するようにしたため、実際の地図情報からは、所定数の住戸単位で住戸グループを形成しようとしても、場所によっては一部の住戸が存在しない場合があり、この場合には、存在する住戸に対応した中継遅延時間を設定し、存在しない住戸に対応した中継遅延時間は間引きして使用しないようにする。
【0031】
(上位装置による火災警報住戸の表示による効果)
また、警報器は、火災を検出して火災警報を出力した場合、又は、他の警報器から火災連動信号を受信して他住戸の火災を示す火災警報を出力した場合、火災警報通知信号を上位装置に送信し、上位装置は、警報器から火災警報通知信号を受信した場合に、火災警報を出力した住戸の火災警報動作を表示させるようにしたため、例えば上位装置に監視対象地域の住戸を示した監視マップを表示し、火災警報通知信号を受信した住戸を、例えば、赤表示することで、火災発生住戸を中心に波紋が広がって行くように増加する住戸の警報器による警報動作を視覚的にとらえることができる。
【0032】
また、上位装置により警報器に送信電力と中継遅延時間を設定した後に、警報器に発報試験信号を送信して試験発報することで、最初に試験発報した住戸を中心に、新たに試験発報する住戸が波紋状に広がって行く監視対象地域の警報試験動作が確認でき、その中に、試験発報が行われない失報住戸が存在した場合には、失報住戸に対し中心側に隣接した住戸の送信電力を上位装置からの指示により増加させ、再度発報試験により正常に試験発報が行われることを確認する、といった警報器の送信電力の調整を簡単且つ容易に行うことを可能とする。
【0033】
(警報停止又火災復旧による火災警報住戸の表示消去による効果)
また、警報器は、火災を検出した後に警報停止又は火災復旧が行われた場合に、上位装置に警報停止通知信号又は火災復旧通知信号を送信し、上位装置は、警報器から警報停止通知信号又は火災復旧通知信号を受信した場合に、警報停止又は火災復旧が行われた住戸の火災警報動作の表示を消去するようにしたため、例えば上位装置に監視対象地域の住戸を示した監視マップに火災警報通知信号を受信した住戸の警報動作を表示した場合、警報停止や火災復旧により警報器の警報動作が停止していく様子を簡単且つ容易に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】無線連動型の警報器と上位装置としてのサーバが設けられた広域火災警報システムの概略を示した説明図である。
【
図2】広域火災警報システムで監視対象とする住戸と警報器を配置した住戸マップを示した説明図である。
【
図3】広域火災警報システムの基本単位となる縦横3×3の9住戸で構成される住戸グループと警報器の配置を示した説明図である。
【
図4】
図3の住戸グループの警報器に設定される中継遅延時間を示したタイムチャートである。
【
図5】広域火災警報システムで用いる無線式連動型の警報器の実施形態を示したブロック図である。
【
図6】監視対象地域の中継遅延時間の設定に用いる中継遅延マップを示した説明図である。
【
図7】監視対象区域の住戸に対する
図6の中継遅延マップに基づく中継送信時間の設定を示した説明図である。
【
図8】火災が発生した住戸を中心に火災警報動作が波紋状に広がる様子を示した説明図である。
【
図9】
図1に示したサーバの制御動作を示したフローチャートである。
【
図10】
図5に示した警報器の制御動作を示したフローチャートである。
【
図11】
図10のステップS26における火災発報制御の詳細を示したフローチャートである。
【
図12】
図10のステップS28における連動受信制御の詳細を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に、本発明に係る広域火災警報システムの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態により、本発明が限定されるものではない。
【0036】
[実施形態の基本的な概念]
まず、実施形態の基本的概念について説明する。実施形態は、概略的に、監視対象地域に存在する複数の住戸の各々に設置された警報器と、警報器と通信ネットワークを介して接続される上位装置とで構成される広域火災警報システムに関するものである。
【0037】
ここで、「警報器」とは、監視対象地域に存在する複数の住戸の各々に設置され、火災を検出して警報動作を行うとともに火災連動信号を他住戸の警報器へ送信して警報動作を行わせるものであり、また、他の警報器から送信された火災連動信号を送信して警報動作を行うものである。
【0038】
また、「監視対象地域」とは、警報器の設置により火災を監視する多数の住戸が存在する地域であり、地域の広さは任意であるが、例えば、市町村等の所定の行政区域で分けられる広い地域となる広域を含む概念である。
【0039】
また、「上位装置」とは、警報器と通信ネットワークを介して接続されることにより、複数の警報器を集中的に管理し制御する上位の装置であり、通信機能を備えたコンピュータ装置で構成されるものであり、例えば、サーバであり、さらに、中央装置、センター装置、中央監視装置などを含む概念である。
【0040】
また、「通信ネットワーク」とは、上位装置と複数の警報器を通信回線により接続する通信網であり、無線通信回線、有線通信回線又は両者を組み合わせた通信回線を含み、例えば、インターネット、公衆無線LAN通信網、携帯電話網を含み、更に、警報器については、426MHz帯の特定小電力無線局の標準規格のSTD-30に準拠したキャリアセンスを必要としない無線通信網を含むものである。なお、「キャリアセンス」とは、信号電波の衝突(干渉)を解消するため、信号電波(搬送波=キャリア)の送信に先立ち同じ周波数帯域の信号電波の受信を確認し、同じ周波数帯域の信号電波が受信された場合に信号電波を送信せず、同じ周波数帯域の信号電波が受信されない場合に信号電波を送信する仕組みをいう。
【0041】
本実施形態の上位装置は、警報器が火災を検出した場合に、火災を検出した住戸の警報動作を中心として時間の経過に伴い他の住戸の警報器による警報動作が波紋状に広がるように火災連動信号を中継送信させる送信電力と中継遅延時間を警報器に設定するものである。
【0042】
ここで、「上位装置による警報器の送信電力の設定」とは、住戸12に設置された警報器が火災を検出した場合に送信する火災連動信号の通信可能エリアに、住戸12の周囲に隣接する他の複数の住戸に設置された他の警報器が入るように、送信電力を設定するものである。
【0043】
また、「上位装置による警報器の中継遅延時間の設定」とは、警報器が設置された住戸の周囲に隣接する他の複数の住戸に設置された他の警報器が、火災連動信号を受信してから中継送信を開始するまでの時間が相互に異なるように遅延時間を設定するものである。
【0044】
また、上位装置は、監視対象地域に存在する住戸を、所定数の住戸単位の住戸グループに分割し、住戸グループの各住戸の警報器に、相互に異なる中継遅延時間を所定の順番に従って設定するものである。この場合、住戸グループが所定数の住戸未満の場合、各住戸の警報器に、相互に異なる中継遅延時間を一部間引きされた所定の順番に従って設定するものである。
【0045】
また、上位装置は、警報器から火災警報動作に伴う火災警報通知信号を受信した場合に、火災警報を出力した住戸の火災警報動作を表示させ、火災発生住戸を中心に波紋状に広がって行く警報器の火災警報動作を視覚的に確認可能とするものである。この場合、上位装置は、警報器の警報停止又は火災復旧に伴う警報停止通知信号又は火災復旧通知信号を受信した場合に、対応する住戸の火災警報動作の表示を消去し、警報器の火災警報動作が停止して行く様子を簡単且つ容易に把握することを可能とするものである。
【0046】
以下、具体的な実施形態を説明する。以下に示す具体的な実施形態では、「上位装置」が「サーバ」であり、警報器が「無線連動型の警報器」であり、「通信ネットワーク」が「426MHz帯の特定小電力無線局の標準規格のSTD-30」、「公衆無線LAN通信網」及び「インターネット」を組み合わせた通信網であり、「住戸グループ」が「縦横3×3の9戸単位の住戸グループ」である場合について説明する。
【0047】
[実施形態の具体的内容]
広域火災警報システムについて、より詳細に説明する。その内容については以下のように分けて説明する。
【0048】
a.広域火災警報システム
a1.システムの概要
a2.サーバの機能構成
b.サーバにより警報器に設定される中継遅延時間
b1.住戸グループの基本単位
b2.中継送信による信号衝突の回避
b3.中継遅延時間
c.警報器
c1.警報器の構成
c2.火災制御機能
c3.中継制御機能
d.サーバによる監視対象地域の警報器に対する中継遅延時間の設定
d1.中継遅延マップ
d2.監視対象地域の警報器に対する実際の中継遅延時間の設定
e.広域火災警報動作
f.広域火災警報システムの制御動作
f1.サーバによる監視制御
f2.警報器の制御動作
f3.火災発報制御
f4.連動信号の受信制御
g.本発明の変形例
【0049】
[a.広域火災警報システム]
広域火災警報システムについて、より詳細に説明する。当該説明にあっては、無線連動型の警報器と上位装置としてのサーバが設けられた広域火災警報システムの概略を示した
図1、及び、広域火災警報システムで監視対象とする住戸と警報器を配置した住戸マップを示した
図2を参照する。
【0050】
(a1.システムの概要)
図1に示すように、本実施形態の広域火災警報システムにあっては、監視対象地域に存在する複数の住戸12には無線連動型の警報器10が設置されている。
【0051】
図2は監視対象地域を示した住戸マップ14の一例であり、住宅や店舗が密集した市街地等の監視対象地域に存在する複数の住戸12の各々には警報器10が設置されている。なお、
図2にあっては、警報器10は住戸内に丸印により示しており、警報器10と住戸12の符号は1住戸についてのみ示し、他は省略している。
【0052】
警報器10は、火災を検出した場合に住戸内での火災発生を示す火災警報を出力するとともに、他の住戸12の警報器10に火災連動信号を送信して他住戸での火災発生を示す火災警報を出力させる。なお、警報器10が火災を検出した場合に出力する火災警報を「連動元警報」といい、他の警報器から火災連動信号を受信した場合に出力する火災警報を「連動先警報」という場合がある。
【0053】
また、火災を検出した警報器10は火災警報中に警報停止操作が行われるか又は火災復旧が検出されると、火災警報を停止すると共に警報停止連動信号又は火災復旧連動信号を他住戸の警報器に送信して火災警報を停止させる。
【0054】
警報器10は、例えば426MHz帯の特定小電力無線局の標準規格として知られたSTD-30(小電力セキュリティシステム無線局の無線設備標準規格)に準拠したキャリアセンスを必要としない通信プロトコルにより信号を送受信する。
【0055】
警報器10は、住戸12に設置された通信アダプタ16、WiFi等の公衆無線LAN通信網28及びインターネット26による構成される通信ネットワークを介して上位装置として機能するサーバ20に通信接続され、サーバ20との間でパケット信号を送受信する。
【0056】
通信アダプタ16は、警報器10から426MHz帯の特定小電力無線により送信された信号を公衆無線LAN通信網28のパケット信号にプロトコル変換して無線送信し、また、公衆無線LAN通信網28を介して受信したパケット信号を426MHz帯の特定小電力無線の信号に変換して無線送信する。
【0057】
なお、通信アダプタ16は公衆無線LAN通信機能に代えて携帯電話通信プロトコルに従った携帯電話通信機能を設けても良いし、公衆無線LAN通信機能と携帯電話通信機能の両方を設け、公衆無線LAN通信網のサービスエリアであれば公衆無線LAN通信機能に切り替え、携帯電話網のサービスエリアであれば携帯電話通信機能に切り替え、また両方のサービスエリアであれば、例えば利用料金や通信速度などを考慮していずれか一方に切り替えるようにしても良い。
【0058】
(a2.サーバの機能構成)
サーバの機能構成について、より詳細に説明する。
図1に示すサーバ20は、CPU、メモリ、各種の入出力ポートを備えたコンピュータ回路で構成され、CPUによるプログラムの実行により火災監視制御部22とデータベース24の機能が実現されている。
【0059】
サーバ20の火災監視制御部22は、監視対象地域の住戸12に設置された警報器10が火災を検出した場合に、火災を検出した住戸の警報動作を中心として時間の経過に伴い他の住戸の警報器による警報動作が波紋状に広がるように火災連動信号を中継送信させるための送信電力Pと中継遅延時間Tdを各住戸12の警報器10に遠隔操作により設定する制御を行う。
【0060】
ここで、サーバ20の火災監視制御部22は、送信電力Pの設定制御として、住戸12に設置された警報器10が火災を検出した場合に送信する火災連動信号の通信可能エリアに、住戸12の周囲に隣接する他の複数の住戸に設置された警報器が入るように、送信電力Pを設定する。
【0061】
サーバ20からの指示による警報器10の送信電力の設定は、例えば警報器10の送信電力Pを大、中、小の3段階の送信電力Pmax、Pmid,Pminに分け、必要とする通信可能エリアが得られるように切替え設定される。なお、警報器10に対する送信電力の設定は、3段階以上の多段階設定としても良いし、連続的な設定変更としても良い。
【0062】
また、サーバ20の火災監視制御部22は、中継遅延時間Tdの設定制御として、警報器10が設置された住戸12の周囲に隣接する他の複数の住戸に設置された警報器が、火災連動信号を受信してから中継送信するまでの時間が相互に異なるように、各住戸12の警報器10に中継遅延時間Tdを設定する制御を行う。
【0063】
サーバ20のデータベース24には、監視対象地域の住戸を示した
図2に示した住戸マップ24などの地図情報、住戸毎に割り当てられる住戸アドレス、住戸毎に設定される送信電力と中継遅延時間、住戸毎に割り当てられるIPアドレス等のネットワークアドレスを含む火災監視に必要な各種の設定情報が格納されている。
【0064】
[b.サーバにより警報器に設定される中継遅延時間]
サーバにより警報器に設定される中継遅延時間について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、広域火災警報システムの基本単位となる縦横3×3の9住戸で構成される住戸グループと警報器の配置を示した
図3を参照する。
【0065】
(b1.住戸グループの基本単位)
住戸グループの基本単位について、より詳細に説明する。
図1に示したサーバ20の火災監視制御部22は、
図3に示すように、監視対象地域に存在する複数の住戸を、縦横3×3の9住戸単位の住戸グループに分割し、住戸グループの住戸12(12-1)~12(12-9)に設置された警報器10(10-1)~10(10-9)の各々には、住戸に固有な住戸アドレスと、相互に異なる中継遅延時間Td1~Td9を所定の順番となるように設定する
【0066】
また、住戸12(12-1)~12(12-9)に設置された警報器10(10-1)~10(10-9)は、他の警報器から火災連動信号を受信してから中継送信を行うタイミングが重ならないようにするため、サーバ20の火災監視制御部22は、相互に異なる中継遅延時間Td1~Td9を設定する。
【0067】
ここで、住戸12(12-1)~12(12-8)には1台の警報器10(10-1)~10(10-8)が設置されているが、中央の住戸12(12-9)には、例えば、部屋ごとに分けて、例えば、3台の警報器10(10-9)が設置され、住戸内で連動警報を行うようにしている。
【0068】
このように同じ住戸12(12-9)内に複数台の警報器10(10-9)が設置された場合、火災を検出した警報器10(10-9)は住戸に固有な住戸アドレスを含めた火災連動信号を送信し、住戸内の他の警報器10(10-9)は火災連動信号の住戸アドレスが自己の住戸アドレスに一致することから、この場合は住戸内の火災を示す火災連動警報を出力するが、他の住戸の警報器10(10-1)~10(10-8)に対する中継送信は行わないようにする。
【0069】
また、住戸12(12-9)に設置された3台の警報器10(10-9)は、他の住戸から中継を必要とする火災連動信号を受信した場合は、各々が火災連動信号を中継送信するが、相互に異なる中継遅延時間の設定により、中継送信のタイミングが重ならないようにする。なお、以下の説明は、各住戸に警報器10が一台設置されている場合を例にとって説明する。
【0070】
(b2.中継送信による信号衝突の回避)
中継送信による信号衝突の回避について、より詳細に説明する。本実施形態にあっては、ある住戸の警報器が火災を検出した場合、火災を検出した住戸の警報器の警報動作を中心として時間の経過に伴い他の住戸の警報器による警報動作が波紋状に広がるように火災連動信号を中継送信する警報制御を行うが、これを実現するためには、複数の警報器が他の住戸からの火災連動信号を受信して中継送信する場合に、信号衝突を回避することが重要となる。
【0071】
このような火災連動信号の中継送信による信号衝突を回避するため、
図1に示したサーバ20の火災監視制御部22は、
図3に示した住戸グループの住戸12(12-1)~12(12-9)に設置された警報器10(10-1)~10(10-9)が、他の警報器から連動信号を受信してから中継送信を開始するまでの時間が相互に異なるように中継遅延時間Td1~Td9を設定している。
【0072】
また、住戸グループの警報器10(10-1)~10(10-9)は、自住戸の火災を検出した場合に、住戸に固有な住戸アドレス、送信回数を示すシーケンス番号SN及び送信回数に応じて初期値0から1回ずつ増加する中継回数RNを含めた火災連動信号を所定の時間間隔で複数回送信する。
【0073】
また、住戸グループの警報器10(10-1)~10(10-9)は、自己の住戸アドレスと異なる住戸アドレスの火災連動信号を受信した場合、他の住戸の警報器から火災連動信号の受信と判別して中継送信制御を行う。この中継送信制御は、中継回数RNが1以上のときは、受信した中継回数RNを1回減少した中継回数「RN-1」を含む火災連動信号を中継送信し、中継回数RNがRN=0のときは火災連動信号を中継送信しない。
【0074】
なお、以下の説明で、他の住戸から受信した火災連動信号とは、自己の住戸アドレスと異なる住戸アドレスの火災連動信号を受信したことを意味する。
【0075】
更に、住戸グループの警報器10(10-1)~10(10-9)は、他の住戸から火災連動信号を受信した場合に、受信したシーケンス番号(SN)が既に受信したシーケンス番号と同じときは、火災連動信号を中継送信しない。
【0076】
このように警報器10(10-1)~10(10-9)は、中継遅延時間の設定、中継回数(RN)、及びシーケンス番号(SN)に基づく中継制御により、キャリアセンスを必要としないSTD-30に準拠した通信プロトコルであっても、中継送信する火災連動信号の信号衝突を極力回避する制御を行う。
【0077】
(b3.中継遅延時間)
中継遅延時間について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、
図3の住戸グループの警報器に設定される中継遅延時間を示した
図4を参照する。
【0078】
ここで、
図4は、
図3の中央に配置した警報器10(10-9)が火災を検出して火災連動信号を2回送信した場合の周囲8台の警報器10(10-1)~10(10-8)による中継送信を示したタイムチャートであり、警報器10(10-9)は送信Tを示し、警報器10(10-1)~10(10-8)は受信Rと送信Tを示している。
【0079】
図4に示すように、
図3の中央に配置した警報器10(10-9)が時刻t1で1回目の火災連動信号18(18-1)を送信する。1回目の火災連動信号18(18-1)のシーケンス番号SNはSN=1、また中継回数RNはRN=0となる。
【0080】
警報器10(10-9)が送信した1回目の火災連動信号18(18-1)は、周囲8台の警報器10(10-1)~10(10-8)で受信されるが、中継回数RN=0であることから中継送信は行われない。
【0081】
続いて、警報器10(10-9)が時刻t2でシーケンス番号SN=2、中継回数RN=1とした2回目の火災連動信号18(18-2)を送信し、これが周囲8台の警報器10(10-1)~10(10-8)で受信される。2回目の火災連動信号18(18-2)の中継回数RN=1であることから警報器10(10-1)~10(10-8)は中継制御を開始し、2回目の受信終了時刻t3から異なる中継遅延時間Td1~Td8が経過した異なるタイミングで中継回数RNをRN=1-1=0とした火災連動信号を中継送信する。
【0082】
更に、時刻t4で警報器10(10-9)はシーケンス番号SN=3、中継回数RN=2とした3回目の火災連動信号18(18-3)を送信することになる。このように中継送信のタイミングが中継遅延時間Td1~Td8に応じてずらされることで、信号衝突を回避することができる。なお、警報器10(10-9)の中継遅延時間Td9は、Td1~Td8以外の時間が設定される。
【0083】
[c.警報器]
警報器について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、広域火災警報システムで用いる無線式連動型の警報器の実施形態を示した
図5を参照する。
【0084】
(c1.警報器の構成)
警報器の構成について、より詳細に説明する。
図5に示すように、警報器10はワンチップCPUとして知られたプロセッサ40を備え、プロセッサ40に対しては火災センサ部として機能する検煙部32、操作部として機能する警報停止スイッチ34、表示部として機能する駆動回路を含むLED36、音響報知部として機能する駆動回路を含むスピーカ38、及びアンテナ44を接続した通信部42が設けられている。
【0085】
プロセッサ40には、CPU46が設けられ、CPU46からのバス62に、制御ロジック48、ROM50、RAM52、AD変換ポート54、入力ポート56、出力ポート58、音声出力ポート60及び通信ポート64が接続されている。なお、制御ロジック48はCPU46の制御処理に伴うバス制御などの各種のハードウェア機能を実現する。
【0086】
AD変換ポート54には検煙部32が接続され、入力ポート56には警報停止スイッチ34が接続され、出力ポート58にはLED36が接続され、音声出力ポート60にはスピーカ38が接続され、通信ポート64には通信部42が接続されている。
【0087】
検煙部32は、公知の散乱光式検煙構造をもち、所定周期で赤外LEDを用いた発光部を間欠的に発光駆動し、フォトダイオードなどの受光部で受光した散乱光の受光信号を増幅し、煙濃度検出信号を出力する。なお、検煙部32に代えて温度検出部を設ける場合もあり、温度検出部は、温度検出素子として例えばサーミスタを使用し、この場合、温度による抵抗値の変化に対応した電圧信号となる温度検出信号を出力する。
【0088】
通信部42は、他の警報器との間で所定の通信プロトコルに従って火災等の連動信号を送受信する。この通信プロトコルは、日本国内の場合には、例えば426MHz帯の特定小電力無線局の標準規格として知られたSTD-30(小電力セキュリティシステム無線局の無線設備標準規格)に準拠し、キャリアセンスを必要としない通信が許容されている。
【0089】
また通信部42には送信部と受信部が設けられているが、送信部に対しては、
図1に示したサーバ20の火災監視制御部22からの指示により、例えばSTD-30の最大送信電力10mWを上限として、例えば大、中、小の3段階の送信電力Pmax、Pmid,Pminの切替えを可能としており、自住戸に隣接した他住戸が通信可能エリアに入るように送信電力を調整可能としている。
【0090】
CPU46にはプログラムの実行により実現される機能として、火災制御部66と中継制御部68が設けられている。
【0091】
(c2.火災制御機能)
警報器の火災制御機能について、より詳細に説明する。警報器10の火災制御部66による火災警報制御は次のようになる。火災制御部66は、検煙部32から出力された煙濃度の検出信号をAD変換ポート54から読み込み、煙濃度がそのとき設定されている火災検出感度に対応した所定の閾値以上の場合に火災を検出し、自住戸火災を示す火災警報を出力させる制御を行う。
【0092】
この場合の火災警報として、火災制御部66は、スピーカ38から例えば「ウーウー 火災警報器が作動しました 確認してください」といった自住戸火災を示す警報音を繰り返し出力させると共に、LED36を例えば点灯して自住戸火災を示す警報表示を行なわせる。
【0093】
火災制御部66は、火災警報を出力させた場合、自己の住戸アドレス、シーケンス番号SN=1、中継回数RN=0、コマンドを「火災」に設定した所定の通信プロトコルに従った形式の火災連動信号を生成し、通信部42に指示し、他の住戸の警報器へ火災連動信号を送信させる制御を行い、当該火災連動信号を受信した他の住戸の警報器で火災警報を出力させる。
【0094】
また、火災制御部66は、検煙部32からの煙濃度検出信号による火災検出が継続している場合、最初の火災連動信号の送信から所定時間Tが経過する毎に、予め定めた複数回に達するまで、シーケンス番号SN及び中継回数RNを1つずつ増加させながら火災連動信号を繰り返し送信する制御を行う。
【0095】
このように2回目以降の火災連動信号を送信する時間間隔は任意であるが、火災発生住戸を中心に波紋状に広がっていく警報動作の広がり速度を決めることから、例えば、一定の時間間隔としても良いし、送信回数の増加に応じて時間間隔を長くするようにしても良い。なお、火災検出が継続している場合の火災連動信号の送信回数は、警報動作が波紋状に広がる度合を決めるものであり、任意であるが、火災が発生した住戸に対し火災の危険性が高い距離に対応した所定の送信回数、例えば、数回程度とする。
【0096】
また、火災制御部66は、同じ住戸内の他の警報器が送信した同じ住戸アドレスの火災連動信号を受信した場合、警報中でなければ、スピーカ38から例えば「ウーウー 別の火災警報器が作動しました 確認してください」といった音声警報を繰り返し出力させるとともに、LED36を例えば明滅して住戸内の他の警報器の火災検出を示す警報を出力させる制御を行う。
【0097】
また、火災制御部66は、住戸アドレスの異なる他の住戸の警報器が送信した火災連動信号を受信した場合、警報中でなければ、スピーカ38から例えば「ウーウー 別の住戸の火災警報器が作動しました 確認してください」といった他住戸火災を示す音声警報を繰り返し出力させると共に、LED36を例えば点滅して他住戸火災を示す警報表示させる制御を行う。
【0098】
この場合、他住戸の住戸アドレスに対応して住戸名を予め登録しておくことにより、例えば「ウーウー Aさん宅の火災警報器が作動しました 確認してください」といった他住戸の火災を示す音声警報を繰り返し出力させることもできる。
【0099】
また、火災制御部66は、警報停止制御、火災復旧制御についても、火災連動制御の場合と同様に、警報停止連動信号及び火災復旧連動信号の送信を行う。
【0100】
(c3.中継制御機能)
警報器の中継制御機能について、より詳細に説明する。警報器10の中継制御部68による火災連動信号の中継制御は次のようになる。中継制御部68は、他の住戸から受信した火災連動信号に含まれる中継回数RNがRN=0の場合、受信した火災連動信号を中継送信しない制御を行う。
【0101】
また、中継制御部68は、他の住戸から受信した火災連動信号に含まれる中継回数RNがRN=1以上の場合、受信した中継回数RNを1つ減らして中継回数(RN-1)とした火災連動信号を生成し、
図1に示したサーバ20の火災監視制御部22の指示により予め設定された所定の中継遅延時間Tdが経過した後に中継送信する制御を行う。
【0102】
また、中継制御部68は、前回受信した火災連動信号に含まれるシーケンス番号SNを記憶しており、新たに受信した火災連動信号のシーケンス番号SNが前回と同じ場合、既に中継済みであることから、受信した火災連動信号を中継送信しない制御を行う。
【0103】
また、中継制御部68は、自住戸内の他の警報器から同じ住戸アドレスの火災連動信号を受信した場合は、受信した火災連動信号を中継送信しない制御を行う。
【0104】
また、中継制御部68は、火災警報停止、火災復旧の連動信号についても、火災連動信号と同様な中継送信制御を行う。
【0105】
[d.サーバによる監視対象地域の警報器に対する中継遅延時間の設定]
サーバによる監視対象地域の警報器に対する中継遅延時間の設定について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、監視対象地域の中継遅延時間を設定する中継遅延マップを示した
図6を参照する。
【0106】
(d1.中継遅延マップ)
中継遅延マップについて、より詳細に説明する。中継遅延マップは、
図1に示したサーバ20のデータベース24に記憶されている。
図6に示すように、中継遅延マップ70は、監視対象地域の住戸を仮想的に2次元マトリクスで表現したものであり、矩形の住戸内には、住戸に設置された警報器に設定される中継遅延時間Tdを示す1~9の遅延番号が示されている。ここで遅延番号1~9は、例えば
図4に示した中継送信遅延時間Td1~Td9の各々を示している。
【0107】
なお、中継遅延マップ70の縦横サイズは任意であり、また、マトリクスを構成する矩形のサイズは、監視対象地域の地図における住戸のサイズに概ね合わせたサイズとすることが望ましい。
【0108】
中継遅延マップ70は、遅延番号に丸印を付した左上隅に示すように、
図3に示した縦横3×3の9住戸の住戸グループを基本単位とし、中央の住戸を囲む周囲8住戸について、例えば、左上隅を起点に右回り遅延番号1~8を設定し、中央に遅延番号9を設定している。
【0109】
続いて、遅延番号1~9を設定した縦横3×3の住戸グループを基本単位として、水平及び垂直方向に配置することにより、中継遅延マップ70が作成される。
【0110】
この中継遅延マップ70の特徴は、中心住戸をどこに選択しても、中心住戸の周囲を囲む8住戸の遅延番号は必ず異なった番号の配列となり、同じ番号が複数存在しないという性質を持つ。
【0111】
例えば、遅延番号5を中心とすると、その周囲8住戸の遅延番号は(9-4-8-7-1-3-2-6)の並びとなる。また、任意の遅延番号7を中心とすると、その周囲8住戸の遅延番号は(4-8-9-6-2-1-3-5)の並びとなる。
【0112】
このような中継遅延マップ70の性質を利用すると、遅延番号に丸印を付した
図6の中央の7×7の領域に示すように、中心に位置する遅延番号9の住戸の火災検出により警報器が1回目の火災連動信号(中継回数RN=0)を送信すると、その周囲8住戸の警報器が火災連動信号を受信して火災警報を出力する。この1回目の火災連動信号の送信による周囲8住戸の警報器による警報を第1ループの警報又は警報動作という。
【0113】
続いて、同じ遅延番号9の住戸の警報器が2回目の火災連動信号(中継回数RN=1)の火災連動信号を送信すると、その周囲8住戸の警報器が火災連動信号を受信し、遅延番号(1-2-3-4-5-6-7-8)の順番に火災連動信号(中継回数RN=1-1=0)を中継送信し、その外側を囲む16住戸の警報器が火災警報を出力する。この周囲16住戸の警報器による火災警報を第2ループの警報又は警報動作という。
【0114】
同様にして3回目の火災連動信号の送信では、第2ループの警報の外側を囲む24住戸の警報器による第3ループの警報が行われる。
【0115】
即ち、火災を検出した住戸の警報器からの火災連動信号の送信の繰り返しに応じて、火災発生住戸を中心に火災警報が第1ループの警報、第2ループの警報、第3ループの警報というにように、外側に向かって波紋状に広がっていく警報動作が行われ、波紋状に警報動作の広がりは、火災を検出している警報器からの送信回数を決めることで任意に設定可能となる。
【0116】
また、最初の火災が発生した住戸からの飛び火により別の住戸で火災となった場合には、新たに火災となった住戸の警報器を中心に、外側に向かって波紋状に広がっていく警報動作が多重的に行われることになる。
【0117】
(d2.監視対象地域の警報器に対する実際の中継遅延時間の設定)
監視対象地域の警報器に対する実際の中継遅延時間の設定について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、監視対象地域の住戸に対する
図6の中継遅延マップに基づく中継遅延時間の設定を示した
図7を参照する。
【0118】
図1に示したサーバ20の火災監視制御部22は、次の手順で中継遅延時間を監視対象地域の警報器に設定する。
【0119】
(1) 周囲が他の複数の住戸に囲まれた任意の住戸を選択し、遅延番号9を設定する。
(2) 遅延番号9を中心として周囲を囲む8住戸に、左上隅を起点に右回りに遅延番号(1-2-3-4-5-6-7-8)を設定する。ここで、該当する住戸が存在しない場合は、番号を飛ばして空き番号とする。
(3) 以下、前記(1)(2)と同様に遅延番号1~9を設定し、全ての住戸に遅延番号が設定させるまで、これを繰り返す。
【0120】
このような監視対象地域の警報器に対する中継遅延マップ50に基づいた遅延番号の設定は、サーバ20のディスプレイ上に監視対象地域の住戸を示す
図2に示した住戸マップ14を表示させた状態での人為的な操作で行っても良いし、住戸マップ14を対象に縦横3×3の9住戸をグループ化して異なる遅延番号1~9を自動的に割り当てるプログラム制御で行っても良い。
【0121】
[e.広域火災警報動作]
広域火災警報動作について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、火災が発生した住戸を中心に火災警報動作が波紋状に広がる様子を示した
図8を参照する。
【0122】
図8に示すように、監視対象地域に存在する住戸80(以下「火災発生住戸」という)で火災が発生したとすると、火災発生住戸80に設置している遅延番号9で示す警報器が火災を検出し、シーケンス番号SN=1、中継番号RN=0を含む1回目の火災連動信号を送信する。
【0123】
火災発生住戸80から送信された火災連動信号は、火災発生住戸80の周囲に隣接して存在するハッチングで示す8棟の住戸62で受信され、第1ループの火災警報が一斉に出力される。
【0124】
続いて、火災発生住戸80の警報器は所定時間経過後に、シーケンス番号SN=2、中継番号RN=1を含む2回目の火災連動信号を送信し、火災発生住戸80の周囲に隣接して存在するハッチングで示す8棟の住戸82で受信される。
【0125】
住戸82の警報器は、受信した中継回数RNがRN=1であることから、中継回数RNを1つ減らしたRN=1-1=0とした火災連動信号を中継送信する。この場合、8棟の住戸82の警報器は、遅延番号1~8に対応した中継遅延時間Td1~td8が経過した異なるタイミングで火災連動信号を中継送信する。8棟の住戸82で中継送信された2回目の火災連動信号は、その周囲に隣接して存在する砂地で示す12棟の住戸84で受信され、第2ループの火災警報が一斉に出力される。
【0126】
更に、火災発生住戸80の警報器がシーケンス番号SN=3、中継番号RN=2を含む3回目の火災連動信号を送信すると、火災連動信号は住戸84を囲む外側の住戸の警報器まで中継送信され、第3ループの火災警報が行われることになる。
【0127】
[f.広域火災警報システムの制御動作]
広域火災警報システムの制御動作について、より詳細に説明する。
【0128】
(f1.サーバによる監視制御)
まず、サーバによる監視制御について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、
図1に示したサーバによる制御動作を示した
図9のフローチャートを参照する。なお、サーバによる監視制御は、
図1のサーバ20の火災監視制御部22による制御動作となる。
【0129】
図9に示すように、サーバ20の火災監視制御部22は、ステップS1~S12により監視対象区域の住戸に設置した警報器に対する送信電力及び中継遅延時間等のパラメータの設定と調整制御を行う。なお、警報器における送信電力は、大・中・小の3段階にわけた内の最小電力Pminがデフォルトとして設定されているものとする。
【0130】
火災監視制御部22は、ステップS1でデータベース24に格納されている例えば
図2に示したような監視対象地域の住戸マップ14を読み込んでディスプレイ上に表示し、続いてステップS2で
図7に点線で結んで示したように、縦横3×3の9住戸を基本とした住戸グループを設定し、ステップS3で遅延番号1~9を設定し、ステップS4で住戸アドレスに対応した遅延番号のリストを生成する。このステップS2~S4の処理はステップS5で全住戸終了が判別されるまで繰り返される。
【0131】
続いて、火災監視制御部22は、ステップS6に進み、住戸アドレス及び遅延番号を含む遅延時間設定信号を生成して住戸側に送信することで、各住戸の警報器に遅延番号を設定する制御を行い、警報器はサーバ20により指示された遅延番号に対応した中継遅延時間Tdの設定を行う。なお、ステップS6では、遅延番号の代わりに対応する中継遅延時間を含む遅延時間設定信号を送信して警報器に中継遅延時間を設定するようにしてもよい。
【0132】
続いて、火災監視制御部22は、ステップS7で全住戸に対する遅延番号の設定終了を判別すると、ステップS8に進み、住戸アドレスを指定した試験発報信号を住戸の警報器に送信し、試験発報を指示する。この試験発報の指示を受けた住戸の警報器は、火災警報を出力することなく試験発報動作を行って試験発報による火災連動信号を送信し、火災警報通知信号がサーバ20に送信される。
【0133】
続いて、火災監視制御部22はステップS9に進み、試験発報により受信した火災警報通知信号から連動警報の動作が行われた試験発報住戸を示す住戸マップの表示を行い、ステップS10で連動警報が行われていない失報住戸の存在を判別した場合は、ステップS11に進んで失報住戸に対し中心側に隣接して火災連動信号を送信している住戸のアドレスを指定して、送信電力変更信号を送信し、送信電力をデフォルトの最小電力Pminから中電力Pmidに増加させる設定変更を行わせる。
【0134】
続いて、火災監視制御部22は、ステップS8に戻って同じ住戸アドレスを指定した試験発報指示を行ってステップS9で連動警報の動作を示す住戸マップを表示し、送信電力の設定変更によりステップS10で失報住戸の存在が判別されなければ、送信電力は適切に調整されたと判断してステップS12に進み、全住戸の発報試験の終了が判別されるまでステップS8からの処理を繰り返す。
【0135】
続いて、火災監視制御部22は、ステップS12で全住戸の発報試験の終了が判別されるとステップS13に進んで運用監視に移行し、運用監視中にステップS14で警報器から火災警報通知信号の受信を判別するとステップS15に進んで火災警報動作が行われた住戸の表示色を例えば赤に変更することで住戸マップに火災発生住戸を表示し、火災発生に伴う警報動作の伸展状況、即ち、火災発生住戸が増加する延焼状況を監視対象地域の住戸マップ上に表示させる。
【0136】
なお、ステップS15で火災警報動作を住戸マップに表示した後に、警報停止通知信号や火災復旧通知信号を受信した場合には、赤に変更して火災警報動作を示しているマップ上の火災発生住戸の表示を、元の表示色に戻して警報動作の表示を消去させる制御を行うが、この点の図示は省略している。
【0137】
(f2.警報器の制御動作)
次に、警報器の制御動作について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、
図5に示した警報器の制御動作を示した
図10のフローチャートを参照する。なお、警報器制御動作は、警報器10のCPU46に設けられた火災制御部66及び中継制御部68による制御動作となる。
【0138】
図10に示すように、警報器10の火災制御部66は、ステップS21でサーバ20から送信された遅延番号設定信号の受信を判別するとステップS22に進み、遅延番号に対応して予め記憶している中継遅延時間Tdを読出して設定する。
【0139】
続いて、ステップS23に進み、火災制御部66は、サーバ20から送信された送信電力設定信号の受信を判別するとステップS24に進み、デフォルトとして設定している送信電力をサーバ22から指示された送信電力に設定変更する。
【0140】
なお、ステップS23,S24の送信電力設定信号の受信による送信電力の設定変更は、サーバ20による警報器の試験発報で失報となった警報器が存在した場合の隣接住戸の警報器に対する送信電力設定信号を受信した場合の処理となるが、図示は省略している。
【0141】
このようなステップS21~S24の中継遅延時間及び送信電力の設定が済むと、火災制御部66はステップS25に進んで火災発報の有無を監視しており、ステップS25で検煙部32の煙濃度検出信号から火災発報ありを検出するとステップS26に進み、火災発報制御を行う。また、火災制御部66はステップS27で他の住戸の警報器からの火災連動信号の受信を判別するとステップS28に進み、連動信号受信制御を行う。
【0142】
また、火災制御部66は火災警報中にステップS29で警報停止スイッチ34による警報停止操作を検出すると、ステップS30に進んで警報停止を行った後に、ステップS31で他の住戸の警報器に警報停止連動信号を送信すると共に、サーバ20に警報停止通知信号を送信して住戸マップに警報動作を示す赤色表示としている住戸を元の表示色に戻して警報動作表示を消去させる。
【0143】
また、火災制御部66は火災警報中にステップS32で検煙部32からの煙濃度検出信号が所定の閾値以下に低下する火災復旧を判別すると、ステップS33に進んで警報を停止し、続いてステップS34に進み、他の住戸の警報器に火災復旧連動信号を送信すると共に、サーバ20に火災復旧通知信号を送信してステップS31と同様に住戸マップの表示に反映させる。
【0144】
(f3.火災発報制御)
次に
図10のステップS26における火災発報制御について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、
図10のステップS26における火災発報制御の詳細を示した
図11のフローチャートを参照する。
【0145】
警報器10の火災制御部66は、
図10のステップS25で火災発報を検出した場合に
図11の火災発報制御に進み、ステップS41で自住戸内での火災発生を示す火災警報を出力した後、ステップS42に進み、サーバ20に火災警報通知信号を送信し、住戸マップ上の火災発生住戸を例えば赤色に表示させる。
【0146】
続いて、火災制御部66は、ステップS43に進み、シーケンス番号SNを1回目の送信を示すSN=1とし、また、中継回数RNをRN=0の初期値とし、ステップS44でSN=1、RN=0、自己の住戸アドレス、コマンドを火災とした1回目の火災連動信号を送信する。
【0147】
続いて、火災制御部66はステップS45で所定時間の経過を判別するとステップS46に進み、シーケンス番号SNが所定の最終値(最大送信回数)未満であればステップS47に進み、シーケンス番号SN及び中継回数RNを1つずつ増加させ、ステップS44でSN=2、RN=1、自己の住戸アドレス、コマンドを火災とした2回目の火災連動信号を送信し、ステップS46でシーケンス番号SNの最終値(最大送信回数)への到達が判別されると
図10の制御にリターンする。
【0148】
(f4.連動信号の受信制御)
次に、
図10のステップS28における連動信号の受信制御について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、
図10のステップS28における連動信号受信制御の詳細を示した
図12のフローチャートを参照する。
【0149】
火災制御部66は、
図10のステップS27で他の警報器からの連動信号の受信を判別すると、
図12の連動信号受信制御に進み、ステップS51で受信した火災連動信号からシーケンス番号SN及び中継回数RNに加え、住戸アドレスAiとコマンドを取得する。
【0150】
続いて、火災制御部66は、ステップS52に進んでコマンドが火災連動であることを判別するとステップS53に進み、連動警報中でないことを判別するとステップS54で受信した住戸アドレスが自己の住戸アドレスと比較し、一致を判別した場合はステップS55に進み、自住戸内の火災を示す火災連動警報を出力させ、不一致を判別した場合はステップS56進み、他住戸の火災を示す火災連動警報を出力させ、続いてステップS57に進んでサーバ20に火災警報通知信号を送信し、住戸マップ上の連動警報を出力した住戸を例えば赤色に表示させる。
【0151】
火災制御部66は、ステップS52でコマンドが火災連動でないことを判別した場合はステップS58に進み、コマンドが火災警報連動停止又は火災復旧を判別するとステップS59に進んで火災連動警報を停止する。この火災連動警報の停止は、後に警報器の動作を確認するため、音声警報の出力は停止し、警報表示は所定時間のあいだ残しておくようにしても良い。
【0152】
続いて、中継制御部68が動作してステップS60に進み、受信した住戸アドレスが他住戸の住戸アドレスであることを判別すると、ステップS61に進んでシーケンス番号SNが既に受信済か否か判別し、受信済でないことを判別するとステップS62に進んで中継回数RN=0か否か判別し、RN=0でないことを判別した場合は、ステップS63で中継回数RNを1つ減らして(RN-1)とし、ステップ64で予め設定された中継遅延時間Td後に、火災連動信号を中継送信する。
【0153】
これに対しステップS60で受信住戸アドレスが自己アドレスに一致することを判別した場合、ステップS61でシーケンス番号SNが既に受信済みであることを判別した場合、又は、ステップS62で中継回数RN=0を判別した場合には、ステップS63,S64をスキップし、火災連動信号の中継送信は行わないようにしている。
【0154】
[g.本発明の変形例]
本発明による広域火災監視システムの変形例について説明する。本発明の広域火災監視システムは、上記の実施形態以外に、以下の変形を含むものである。
【0155】
(火災発生住戸の表示)
上記の実施形態にあっては、サーバ20は、火災警報動作を行った警報器10から火災警報通知信号を受信した場合に、火災警報を出力した火災警報住戸を住戸マップ上に表示しているが、火災警報住戸の中の火災発生住戸を識別表示するようにしてもよい。
【0156】
サーバ20による火災警報住戸と火災発生住戸の表示は任意であるが、例えば、警報器は、火災を検出して連動元の火災警報動作を行った場合に、サーバ20に連動元警報通知信号を送信し、他の住戸の警報器から火災連動信号を受信して連動先の火災警報を行った場合にサーバ20に連動先警報通知信号を送信し、これに対応してサーバ20は、警報器から連動元警報通知信号を受信した場合に住戸マップ上に火災発生住戸を赤表示させ、警報器から連動先報通知信号を受信した場合に住戸マップ上に連動警報住戸を橙表示させるようにする。このため、火災発生住戸を中心に連動警報住戸が波紋状に広がって行く様子を視覚的に把握可能とし、また、火災発生住戸が増加する表示から火災の延焼状況等を視覚的に把握可能とする。
【0157】
また、警報器は火災を検出した後に火災復旧が行われた場合に火災復旧信号をサーバへ送信して火災発生住戸の表示を消去することで、消防活動による火災の鎮火や鎮圧の様子を視覚的に把握可能とする。
【0158】
(通信ネット―ワーク)
各住戸の警報器とサーバとを通信接続する通信ネットワークとしては、上記の実施形態に示した以外に、サーバにより住戸に設置されたガスメータの自動検針を行うガス検針システムや、サーバにより住戸に設置された電力スマートメータの自動検針を行う電力検針システムで用いられている通信ネットワークを使用して住戸の警報器とサーバを通信接続するようにしても良い。
【0159】
また、各住戸の警報器とサーバとを通信接続するネットワークとしては、無線ネットワーク以外に、有線の通信ネットワークとしてもよい。この有線の通信ネットワークは、住戸毎にゲートウェイ装置を配置してインターネットと信号線接続すると共にゲートウェイ装置に警報器と通信する無線通信部を設けるようにすればよい。
【0160】
(親子方式)
上記の実施形態は、住戸内に複数の警報器を設置する場合、親機/子機の区別が無くそれぞれの警報器が相互に通信するものであるが、親機と複数の子機を設け、親機に中継器の機能を持たせ、異なる住戸の親機同士の間で連動警報のための通信を行うようにしても良い。
【0161】
(警報器)
上記の実施形態は、火災を検知して警報する警報器を例にとるものであったが、ガス漏れ警報器、CO警報器、各種の防犯用警報器を配置した警報システムやそれら警報器を複合的に含むシステムについても同様に適用できる。
【0162】
また、上記の実施形態は警報器にセンサ部と警報出力処理部を一体に設けた場合を例にとるが、他の実施形態として、センサ部と警報出力処理部を別体とした警報器であってもよい。
【0163】
(その他)
また本発明は上記の実施形態に限定されず、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0164】
10,10(10-1)~10(10-9):警報器
12(12-1)~12(12-9),82,84:住戸
14:住戸マップ
16:通信アダプタ
20:サーバ
22:火災監視制御部
24:データベース
26:インターネット
28:公衆無線LAN通信網
30:アクセスポイント
32:検煙部
34:警報停止スイッチ
36:LED
38:スピーカ
40:プロセッサ
42:通信部
46:CPU
48:制御ロジック
50:ROM
52:RAM
54:AD変換ポート
56:入力ポート
58:出力ポート
60:音声出力ポート
64:通信ポート
66:火災制御部
68:中継制御部
70:中継遅延マップ
80:火災発生住戸