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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023105940
(43)【公開日】2023-08-01
(54)【発明の名称】窓ガラス制振部材
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/689 20150101AFI20230725BHJP
   B60J 1/17 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
E05F15/689
B60J1/17 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022006977
(22)【出願日】2022-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120765
【弁理士】
【氏名又は名称】小滝 正宏
(74)【代理人】
【識別番号】100097076
【弁理士】
【氏名又は名称】糟谷 敬彦
(72)【発明者】
【氏名】石黒 輔
(72)【発明者】
【氏名】野尻 昌利
【テーマコード(参考)】
2E052
3D127
【Fターム(参考)】
2E052AA09
2E052EA14
2E052KA10
2E052KA16
3D127BB01
3D127CB05
3D127CC05
3D127DF18
3D127DF26
3D127EE04
(57)【要約】
【課題】自動車等の車両において、特に車内の騒音を抑制する効果を高めた窓ガラス制振部材を提供する。
【課題を解決するための手段】昇降可能な自動車等の車両の窓ガラス20の下辺部に取付けられる窓ガラス制振部材40であって、窓ガラス制振部材40は、剛性部材の略U字形状のチャンネル50が粘弾性部材41を介して窓ガラス20の下辺部を挟持し、粘弾性部材41は、窓ガラス20の車外側側面に当接する車外側側面部41と、窓ガラス20の車内側側面に当接する車内側側面部42と、車外側側面部41及び車内側側面部42と連結し、窓ガラスの底面22に当接する下面部44で形成される溝部45を有し、溝部45の深さhは、2.5mmから10mmである。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降可能な自動車等の車両の窓ガラスの下辺部に取付けられる窓ガラス制振部材であって、
前記窓ガラス制振部材は、剛性部材の略U字形状のチャンネルが粘弾性部材を介して前記窓ガラスの下辺部を挟持し、
前記粘弾性部材は、前記窓ガラスの車外側側面に当接する車外側側面部と、
前記窓ガラスの車内側側面に当接する車内側側面部と、
前記車外側側面部及び前記車内側側面部と連結し、前記窓ガラスの底面に当接する下面部で形成される溝部を有し、
前記溝部の深さは、2.5mmから10mmであることを特徴とする窓ガラス制振部材。
【請求項2】
前記チャンネルの前記窓ガラスの車外側及び車内側には、前記粘弾性部材の前記車外側側面部及び前記車内側側面部を押圧する突条部が、前記窓ガラスの前記下面部より上方に形成されている請求項1に記載の窓ガラス制振部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両において、特に車内の騒音を抑制する効果を高めた窓ガラス制振部材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両においては、ユーザーの要求の一つとして高い静粛性がある。騒音の発生源は数多くあるが、ドアに取付けられた窓ガラスやその周辺もその一つであり、例えば、走行時における車体の振動により、窓ガラスが振動し、この振動により騒音を発生している場合がある。
【0003】
この振動による騒音の軽減対策として、以下の特許文献1の技術がある。図9に示すように、窓ガラス20の下辺部には窓ガラス制振部材40が取付けられている。窓ガラス制振部材40は、ゴム部材である粘弾性部材41を介して金属製のU字型のチャンネル50が、窓ガラス20の下辺部を挟持する構造をなしている。粘弾性部材41であるゴム部材は、窓ガラス20の厚みと粘弾性部材41への挿入深さに対応する溝部45を有している。
【0004】
そして、実車の窓ガラス20の下辺部に上記の窓ガラス制振部材40を取付け、時速100kmでの定常走行時における車内の騒音を測定した結果、窓ガラス制振部材40を取付けていない場合に比べて、約1.0dB音圧が低下し、特に1~4kHzの周波数帯において音圧が低下したことを確認した旨が記載されている。なお、特許文献1において、溝部45の深さに関する言及はされていない。又、流通されている自動車に使用されている窓ガラス制振部材の溝部45の深さは、概ね14mmから16mmの範囲である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-321526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、車両の電動化の普及等に伴い、さらなる静粛性向上が求められており、ドアに取付けられた窓ガラスやその周辺においてもその要求は高い。なお、窓ガラスを厚くして窓ガラスの剛性を上げることにより、静粛性を向上させることは可能であるが、窓ガラスを厚くすることはキログラム単位の重量増となり、他方で要請されている車体の軽量化に応えることができない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、窓ガラスの振動による騒音を更に低減して、更なる静粛性向上に応えるべく、窓ガラスの下辺部が挿入される窓ガラス制振部材の粘弾性部材の溝部の深さに着目し、車内騒音を低減する窓ガラス制振部材を提供することを目的とする。
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1の本発明は、昇降可能な自動車等の車両の窓ガラスの下辺部に取付けられる窓ガラス制振部材であって、窓ガラス制振部材は、剛性部材の略U字形状のチャンネルが粘弾性部材を介して窓ガラスの下辺部を挟持し、粘弾性部材は、窓ガラスの車外側側面に当接する車外側側面部と、窓ガラスの車内側側面に当接する車内側側面部と、車外側側面部及び車内側側面部と連結し、窓ガラスの底面に当接する下面部で形成される溝部を有し、溝部の深さは、2.5mmから10mmであることを特徴とする窓ガラス制振部材である。
【0009】
請求項1の本発明では、窓ガラス制振部材は、剛性部材の略U字形状のチャンネルが粘弾性部材を介して窓ガラスの下辺部を挟持し、粘弾性部材は、窓ガラスの車外側側面に当接する車外側側面部と、窓ガラスの車内側側面に当接する車内側側面部と、車外側側面部及び車内側側面部と連結し、窓ガラスの底面に当接する下面部で形成される溝部を有し、溝部の深さは、2.5mmから10mmであるので、走行時における車体の振動により、窓ガラスが振動する際に窓ガラスと窓ガラス制振部材との間の振動における位相のずれに基づく相殺効果を利用し、窓ガラスの振動エネルギーを小さくすることができる。その結果、騒音の発生を低減することができる。
【0010】
なお、窓ガラス制振部材の溝部の深さが2.5mm未満の場合は、窓ガラス制振部材によって窓ガラスの下辺部を挟持することが難しいので好ましくない。又、窓ガラス制振部材の溝部の深さが10mmを越える場合は、窓ガラス制振部材による騒音の低減効果の度合いが低下する。
【0011】
請求項2の本発明は、請求項1の発明において、チャンネルの窓ガラスの車外側及び車内側には、粘弾性部材の車外側側面部及び車内側側面部を押圧する突条部が、窓ガラスの下面部より上方に形成されている窓ガラス制振部材である。
【0012】
請求項2の本発明では、チャンネルの窓ガラスの車外側及び車内側には、粘弾性部材の車外側側面部及び車内側側面部を押圧する突条部が、窓ガラスの下面部より上方に形成されているので、窓ガラス制振部材を窓ガラスの下方の所定の位置に確実に挟持させることができる。
【発明の効果】
【0013】
窓ガラス制振部材は、剛性部材の略U字形状のチャンネルが粘弾性部材を介して窓ガラスの下辺部を挟持し、粘弾性部材は、窓ガラスの車外側側面に当接する車外側側面部と、窓ガラスの車内側側面に当接する車内側側面部と、車外側側面部及び車内側側面部と連結し、窓ガラスの底面に当接する下面部で形成される溝部を有し、窓ガラスが窓ガラス制振部材の溝部に挿入される深さは、2.5mmから10mmであるので、走行時における車体の振動により、窓ガラスが振動する際に窓ガラスと窓ガラス制振部材との間の振動における位相のずれに基づく相殺効果を利用し、窓ガラスの振動エネルギーを小さくすることができる。その結果、騒音の発生を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に用いる自動車のドアガラス構造の概略透視図である。
図2】本発明の実施形態に用いる窓ガラス制振部材の断面図である。
図3】騒音測定を説明する図である。
図4】(a)は、本発明の実施形態の騒音測定の結果のグラフであり、(b)は、本発明の実施形態の効果の程度を示すグラフである。
図5】窓ガラスと窓ガラス制振部材の振動に関する加速度と時間との関係を測定する方法を説明する図である。
図6】本発明の実施形態であり、窓ガラスが窓ガラス制振部材の溝部に挿入される深さhが5mmの時の時間と加速度との関係を示すグラフである。
図7】本発明の実施形態であり、窓ガラスが窓ガラス制振部材の溝部に挿入される深さhが4mmの時の時間と加速度との関係を示すグラフである。
図8】本発明の実施形態であり、窓ガラスが窓ガラス制振部材の溝部に挿入される深さhが3mmの時の時間と加速度との関係を示すグラフである。
図9】従来の窓ガラス制振部材の断面図である。(特許文献1)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の実施形態に用いる自動車のドアガラス構造の概略透視図であり、窓ガラス20の昇降機構として、ワイヤータイプのドアウインドウレギュレータ60を使用したドアガラス構造である。本実施形態では、車両のフロントドアを例に説明する。なお、背景技術と同じ部位については、同一名称及び同一符号を付して記載する。
【0016】
(ドアガラス構造)
ドア1は、インナパネル(図示せず)とアウタパネル12とからなり、窓ガラス20が下降したときにそれを収納するドア本体13と、その上部に窓ガラス20が上昇したときにそれを支持する窓サッシュ14が一体に形成されている。自動車のドア1のドア本体13の内部の両側には、窓ガラス20が昇降する時の、車両前後の端部をガイドする一対のランチャンネル16、17が設けられている。このランチャンネル16、17の間に位置して、センタガイドレール61が固定されている。このセンタガイドレール61には、キャリアプレート62が上下移動可能に取り付けられている。窓ガラス20は、その下辺部に設けられた連結用穴21、21(図3)とキャリアプレート62とが、連結ボルト64,64によってネジ止めされることにより、ドアウインドウレギュレータ60に連結されている。本発明の実施形態では、厚さ4mmの窓ガラス20を使用した。
【0017】
又、キャリアプレート62は、ワイヤケーブル63を介して駆動モータ30が連結されており、この駆動モータ30によりワイヤケーブル63を牽引することにより、キャリアプレート62および窓ガラス20を昇降させることができる。
【0018】
なお、図1において、2点鎖線で示した窓ガラス20の位置は、窓ガラス20がドア本体13の内部に完全に引き込まれた状態、すなわち、窓ガラス20の全開の状態を示している。
【0019】
(窓ガラス制振部材40)
図1に示すように、窓ガラス20の下辺部分には、2個の窓ガラス制振部材40が取り付けられている。これは、窓ガラス20の下辺部分の中央部分で、連結用穴21、21が連結ボルト64,64によってドアウインドウレギュレータ60に連結されるドアガラス構造の制約によるものである。窓ガラス制振部材40は、車前後方向の長さが100mmのものを2個使用した。なお、長さは100mmには限定されない。又、車両前後方向で異なる長さの窓ガラス制振部材40を用いてもよい。
【0020】
又、窓ガラス制振部材40は、窓ガラス20の下辺部分を覆う領域が広いほど振動低減の効果が高いので、長い窓ガラス制振部材を使用してもよく、長さが短いもの、例えば、50mmの窓ガラス制振部材を複数個使用してもよい。要するに、ドアウインドウレギュレータ60との位置関係、周辺部品との間のスペースを考慮して取付けることができる。
【0021】
図2は、本発明の実施形態の窓ガラス制振部材40の断面図である。なお、図2は、窓ガラス20、窓ガラス制振部材40である粘弾性部材41と略U字形状のチャンネル50の各々の形状及びその位置関係を示したものであり、窓ガラス制振部材40を窓ガラス20に装着した時の形状を示すものではない。
【0022】
窓ガラス制振部材40は、窓ガラス20の車外側側面に当接する車外側側面部42と、窓ガラス20の車内側側面に当接する車内側側面部43と、車外側側面部42及び車内側側面部43と連結する下面部44を有し、車外側側面部42と車内側側面部43と下面部44によって深さhの溝部45が形成された粘弾性部材41と、粘弾性部材41の外側側面を覆う略U字形状のチャンネル50によって構成され、このチャンネル50によって窓ガラス20の下辺部を挟持する構造になっている。
【0023】
粘弾性部材41は、ブチルゴムで形成し、車外側側面部42及び車内側側面部43の厚さは、同じで1.5mm、下面部44の厚さは4.0mmである。なお、車外側側面部42及び車内側側面部43の厚さは、1.5mmには限定されず、下面部44の厚さは、4.0mmには限定されない。
【0024】
下面部44の厚さは、振動の減衰効果の観点では、8mmまでは直線的に減衰効果が現れ、8mmより厚くなるとその低下の度合いは徐々に小さくなり、14mm付近でサチュレート傾向となり、100mm程度までは、振動の減衰効果を維持していることが確認された。したがって、下面部44の厚さは、特に、振動の減衰効果、周辺部品との干渉防止及び窓ガラス制振部材全体の重量増の観点において、4mmから14mmとすることが好ましい。下面部44の厚さについては、後述する周波数と加速度(dB)との関係について、1kHzを越える周波数領域において全体的に加速度の値が減少し、特に4kHzから6kHz(少し高音域)の領域で顕著な減少が得られる。
【0025】
下面部44の厚さについては、走行時における車体の振動により、窓ガラス20が振動した時、窓ガラス20は曲げ変形を受ける。その際に窓ガラス20と一体化されている剛性部材であるチャンネル50が、曲げ変形による窓ガラス20表面の伸縮を拘束する。そして、その時に、窓ガラス制振部材40には剪断応力が発生するが、この剪断応力自体は粘弾性部材41が吸収することができ、窓ガラス制振部材40の下面部44が厚くなるにつれて、振動エネルギーの吸収の程度が増加し、振動をより減衰させることができると考えられる。
【0026】
又、下面部44の窓ガラス20の底面22側に、断面が二等辺三角形、半円、又は台形等であり、高さが1mmから2.5mmの底面22から上方に突出する上方突起部を形成してもよい。この場合は、周波数と加速度(dB)との関係について、特に2kHzにおいて、顕著な振動の減衰効果が得られる。これは、窓ガラス20の底面22が、粘弾性部材41の下面部44の上方に形成された上方突起部49を押し潰すように当接して装着されるので、押し潰されることにより歪みが発生し、その歪みによって窓ガラス20が振動して発生する振動エネルギーを熱に変換し、特定の周波数(帯域)の振動を減衰させ、騒音の発生を低減したものと考えられる。
【0027】
なお、粘弾性部材41としては、ゴムや合成樹脂が好適に使用される。使用可能なゴム材料としては特に限定されないが、ブチルゴム以外には、ブタジエンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ネオプレンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどが挙げられる。又、合成樹脂材料としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、スチレン熱系などの可塑性エラストマーなどが挙げられる。
【0028】
一方、チャンネル50は、金属製であり、本第1の実施形態では、素材として溶融亜鉛めっき鋼板を使用した。なお、チャンネル50は、上記の通り、窓ガラス20の下辺部を粘弾性部材41と共に挟持、すなわち、拘束する必要があるので、高剛性が求められる。材質としては、粘弾性部材41を拘束可能であれば特に限定されないが、具体的には、金属製やFRP等が挙げられる。金属材料としては、コストと加工のし易さから、スチールが好適に使用される。本実施形態では、チャンネル50の板厚は1.2mmである。なお、チャンネル50の板厚は、窓ガラス20の下辺部を粘弾性部材41と共に挟持する観点から、0.5mmから2.0mmが望ましい。
【0029】
チャンネル50の上方には、チャンネル50の側面部に、内側に張り出す突条部51、52が形成され、突条部51、52の上方、チャンネル50の開口部は、窓ガラス20から離れる方向に広がる傾斜部53、54が形成されている。本実施形態では、チャンネル50の上端部から突条部51、52の屈曲部分までの距離は2.5mmである。なお、チャンネル50の上端部から突条部51、52の屈曲部分までの距離は2.5mmには限定されない。但し、チャンネル50によって窓ガラス20の下辺部を挟持するためには、チャンネル50の上端部から突条部51、52の屈曲部分までの距離は、1.5mm以上とすることが望ましい。又、粘弾性部材41の溝部45において、チャンネル50の突条部51、52の屈曲部分より下方の深さは、1.5mm以上とすることが望ましい。
【0030】
なお、突条部51、52は形成しなくても窓ガラス20をチャンネル50内の粘弾性部材41の溝部45に挿入することは可能であるが、本発明では、溝部45の深さhが浅いので、突条部51、52を形成しない場合は、窓ガラス20の下辺部分を挟持するために、接着剤等を用いて窓ガラス20の下辺部と粘弾性部材41固定する。
【0031】
(窓ガラス制振部材40の取付け)
窓ガラス制振部材40は、窓ガラス20の下辺部分を粘弾性部材41の溝部45に挿入した後、粘弾性部材41が取付けられた窓ガラス20をチャンネル50に挿入することによって取付けられる。
【0032】
図2に示すように、チャンネル50の開口部は、窓ガラス20から離れる方向に広がる傾斜部53、54が形成されているので、粘弾性部材41が取付けられた窓ガラス20をチャンネル50にスムーズに挿入することができる。又、チャンネル50は、突条部51、52が窓ガラス20とは反対方向に広がることにより、粘弾性部材41を受け容れる。
【0033】
又、図2から明らかなように、チャンネル50の突条部51、52の下方は、粘弾性部材41の車外側側面部42及び車内側側面部43との間に隙間Sが形成されるので、粘弾性部材41が取付けられた窓ガラス20は、チャンネル50内を下方に容易に移動することができる。なお、隙間Sは、車外側側面部42側、車内側側面部43側の片方のみに形成してもよく、隙間Sを形成しない場合であってもよい。
【0034】
そして、窓ガラス20の底面22が、粘弾性部材41の下面部44の上面に当接することにより窓ガラス制振部材40の取付けが完了する。
【0035】
なお、図2では、チャンネル50の上端部と粘弾性部材41の車外側側面部42、車内側側面部43の上端部が一致して描かれているが、粘弾性部材41の車外側側面部42、車内側側面部43の上端部は、チャンネル50の上端部より下方に位置していてもよく、又、上方に位置していてもよい。
【0036】
(効果の確認;騒音測定方法)
図3は、騒音測定を説明する図である。車両の室内における人間の耳の位置(図3の破線の円)に音源70を設置する。窓ガラス20の車外側に、窓ガラス20の振動を受信する加速度ピックアップ71(振動レベル計)を20箇所貼り付けた。加速度ピックアップ71は振動レベル計のセンサ部分であり、振動加速度に比例した電気信号を出力する。
【0037】
人間の耳に感じる周波数特性が等比的であるため、分析はオクターブ分析を使用した。騒音に対して可聴周波数の周波数範囲において、1/3 オクターブの規格に定められたバンドパスフィルタを通して各々の帯域毎の音圧レベルを測定する。なお、バンドパスフォルタの特性などはJIS C 1513:2002を参照されたい。
【0038】
(効果の確認;騒音測定結果)
図4(a)は、騒音測定の結果のグラフであり、窓ガラス20のみ(窓ガラス制振部材40を装着しない)の場合(■+破線)、本発明の窓ガラス制振部材40を取付けた場合であり、◆は溝部45の深さhが10mmの場合、▼は溝部45の深さhが5mmの場合、●は溝部45の深さhが3mmの場合の測定結果である。なお、図4(a)においては、加速度(dB)の値が小さくなるほど窓ガラス20の振動が抑えられていることを示す。
【0039】
図4(a)から明らかなように、窓ガラス制振部材40を装着することにより、更に、溝部45の深さhが10mm→5mm→3mmと浅くなるにしたがい、1kHzを越える周波数領域において全体的に加速度(dB)の値が減少しており、特に2.5kHzから5kHzの領域において顕著な振動の減衰効果が得られていることが観測された。
【0040】
図4(b)は、本発明の実施形態の効果の程度を示すグラフであり、具体的には、周波数4kHzにおける溝部45の深さhに関する振動の減衰効果の程度を示すグラフである。又、図4(b)では、左端部(窓ガラスのみ)に対して右側に行くほど効果が大きいことを示す。図4(b)から明らかなように、溝部45の深さhが10mm→8mm→5mm→4mm→3mmと浅くなるにしたがい、効果は大きくなる。なお、図4(b)は、周波数4kHzにおける結果を示すものであるが、2.5kHzから5kHzの周波数領域においても図4(a)と同様な傾向、すなわち、溝部45の深さhが浅くなるにしたがい、効果は大きくなることが観測されている。
【0041】
図5は、窓ガラス20と窓ガラス制振部材40の振動に関する加速度と時間との関係を測定する方法を説明する図である。音源70は、図3と同様に室内における人間の耳の位置に設置した。加速度ピックアップ71(振動レベル計)は、窓ガラス制振部材40の車外側と、ベルトラインモール18を挟んで、上方10mmの位置の窓ガラス20の車外側に貼り付けた。
【0042】
図6から図8は、時間と加速度との関係を示すグラフであり、図6は、窓ガラス制振部材40の溝部45の深さhが5mmの時、図7は、4mmの時、図8は、3mmのときの各測定点を直線で結んだグラフである。又、実線は窓ガラス制振部材40、一点鎖線は窓ガラス20の測定結果を示している。
【0043】
窓ガラス制振部材40の溝部45の深さhが5mmの場合(図6)では、時間軸(横軸)において、窓ガラス20と窓ガラス制振部材40の波形は逆位相に近くなっている。一方、窓ガラス20が窓ガラス制振部材40の溝部45の深さhが3mmの場合(図8)では、位相がかなりずれていることが観測された。又、加速度軸(縦軸)に見られる振動の大きさは、3mmの場合の方が5mmの場合より小さくなっていることが観測された。
【0044】
この位相のずれと振動の大きさに関する傾向は、5mm(図6)→4mm(図7)→3mm(図8)になるにしたがって観測されているので、窓ガラス制振部材40の溝部45の深さhが浅くなるにしたがい、窓ガラス20と窓ガラス制振部材40の振動に関する時間と加速度との関係における位相がずれ、その位相のずれに基づく相殺効果により振動が抑えられると考える。
【0045】
本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0046】
例えば、上記の第1及び第2の実施形態では、窓ガラス制振部材40を窓ガラス20の昇降機構として、ワイヤータイプのドアウインドウレギュレータ60を使用したドアガラス構造に適用したが、他のタイプ、例えば、X型ドアウインドウレギュレータを使用したドアガラス構造に適用することも可能である。
【0047】
例えば、上記の実施形態の下面部44をさらに厚く形成する、又は/及び下面部44の窓ガラス20の底面22に弾接する上方突起部49を形成してもよい。この場合は、上記の実施形態の効果に、上記の下面部44を厚く形成する効果、又は/及び上記の上方突起部49を形成する効果が加わり、より窓ガラス20の振動を抑制することができる。
【0048】
例えば、上記の実施形態では、車両の前後方向の2箇所に窓ガラス制振部材40を取付けたが、どちらか一方であってもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 ドア
20 窓ガラス
22 底面
40 窓ガラス制振部材
41 粘弾性部材
42 車外側側面
43 車内側側面
44 下面部
45 溝部
50 チャンネル
51、52 突条部
53、54 傾斜部
60 ドアウインドウレギュレータ
70 音源
71 加速度ピックアップ
h 溝部の深さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9