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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023105942
(43)【公開日】2023-08-01
(54)【発明の名称】包装用容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/34 20060101AFI20230725BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
B65D1/34
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022006980
(22)【出願日】2022-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】396000422
【氏名又は名称】リスパック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】杉村 知則
【テーマコード(参考)】
3E033
3E086
【Fターム(参考)】
3E033AA10
3E033BA17
3E033BB08
3E033CA20
3E033FA01
3E033GA03
3E086AA21
3E086AB01
3E086AD05
3E086BA04
3E086BA15
3E086BB22
3E086BB85
3E086BB90
3E086CA01
(57)【要約】
【課題】-30度の耐寒性を確保することができる包装用容器を提供する。
【解決手段】包装用容器10は、底壁11と、底壁11から立ち上った周壁12と、を備えている。底壁11および周壁12は、二軸延伸させて形成されたポリエステルシート20によって形成されている。ポリエステルシート20は、-30度の耐寒性を有している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁と、
前記底壁から立ち上った周壁と、
を備え、
前記底壁および前記周壁は、二軸延伸させて形成されたポリエステルシートによって形成され、
前記ポリエステルシートは、-30度の耐寒性を有している、包装用容器。
【請求項2】
-30度の耐寒性として、質量m[g]の錘を入れた前記包装用容器を床面から高さh[m]の位置から落下させる落下試験を行う場合に、前記包装用容器の前記底壁の前記床面に対する接触面積をS[mm]、重力加速度をg[m/s]としたときに、
mgh/S=0.147g、かつ、温度が-30度の条件において、前記底壁および前記周壁に割れが発生しない性質を有している、請求項1に記載された包装用容器。
【請求項3】
前記ポリエステルシートは、
前記包装用容器の内側に配置される内層と、
前記包装用容器の外側に配置される外層と、
前記内層と前記外層との間に配置される中間層と、
を有し、
前記内層と前記外層は、バージンポリエステル層であり、
前記中間層は、再生ポリエステル層である、請求項1または2に記載された包装用容器。
【請求項4】
前記ポリエステルシートは、透明性を有している、請求項1から3までの何れか1つに記載された包装用容器。
【請求項5】
前記ポリエステルシートに対するヘーズ値は、3%以下である、請求項4に記載された包装用容器。
【請求項6】
前記再生ポリエステル層には、不純物が含まれており、
前記再生ポリエステル層の全質量に対する前記不純物の含有量は、0ppmより大きく、かつ、100ppm以下である、請求項3に記載された包装用容器。
【請求項7】
前記ポリエステルシートは、前記再生ポリエステル層の表面において、200m当たり0.7mm以上のサイズの欠点数が5個以下の前記不純物を有する、請求項6に記載された包装用容器。
【請求項8】
前記ポリエステルシートの厚みは、0.15mm~0.25mmである、請求項1から7までの何れか1つに記載された包装用容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題を背景に、食品用の容器などを回収して再利用することにより、資源を有効活用することが知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、食品用の容器を回収して再利用することで得られた包装用容器が開示されている。この包装用容器は、ポリエステル層と再生ポリエステル層が積層された積層ポリエステルによって形成されている。ポリエステル層は、未利用の(言い換えると、再利用されていない)ポリエステルによって形成された層である。再生ポリエステル層は、使用済みのポリエステル製容器を再利用することで得られる層である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5-278739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示された包装用容器は、例えば食品用の容器として使用される。包装用容器は、食品を収容した状態で冷凍庫に入れられることがあり得る。例えば包装用容器は、業務用の冷凍庫に入れられることがあり、業務用の冷凍庫の場合には、冷凍庫内が-30度程度になることがあり得る。そのため、包装用容器は、業務用の冷凍庫に入れても耐えられる程度の耐寒性を有していることが好ましい。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、業務用の冷凍庫に保管可能な十分な耐寒性を有する包装用容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る包装用容器は、底壁と、前記底壁から立ち上った周壁と、を備えている。前記底壁および前記周壁は、二軸延伸させて形成されたポリエステルシートによって形成されている。前記ポリエステルシートは、-30度の耐寒性を有している。
【0008】
前記包装用容器によれば、底壁および周壁は、二軸延伸させて形成されたポリエステルシートによって形成されている。ポリエステルシートが二軸延伸させて形成されることによって、ポリエステルシートに対して-30度の耐寒性を確保することができる。よって、包装用容器に対して、-30度の耐寒性を確保することができる。
【0009】
本発明の好ましい一態様によれば、-30度の耐寒性として、質量m[g]の錘を入れた前記包装用容器を床面から高さh[m]の位置から落下させる落下試験を行う場合に、前記包装用容器の前記底壁の前記床面に対する接触面積をS[mm]、重力加速度をg[m/s]としたときに、mgh/S=0.147g、かつ、温度が-30度の条件において、前記底壁および前記周壁に割れが発生しない性質を有している。
【0010】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記ポリエステルシートは、前記包装用容器の内側に配置される内層と、前記包装用容器の外側に配置される外層と、前記内層と前記外層との間に配置される中間層と、を有している。前記内層と前記外層は、バージンポリエステル層である。前記中間層は、再生ポリエステル層である。
【0011】
上記態様によれば、包装用容器のうち、包装用容器に収容された食品が直接触れる内層を、バージンポリエステル層で形成することができる。また、包装用容器のうち、手でつかんだときに手が直接触れる外層を、バージンポリエステル層で形成することができる。
【0012】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記ポリエステルシートは、透明性を有している。例えば、ポリエステルシートに対するヘーズ値は、3%以下である。
【0013】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記再生ポリエステル層には、不純物が含まれている。前記再生ポリエステル層の全質量に対する前記不純物の含有量は、0ppmよりも大きく、かつ、100ppm以下である。前記ポリエステルシートは、前記再生ポリエステル層の表面において、200mm当たり0.7mm以上のサイズの欠点数が5個以下の前記不純物を有する。
【0014】
上記態様によれば、再生ポリエステル層に含まれる不純物の割合を上記のようにすることで、ポリエステルシートの透明の度合いを高めることができる。
【0015】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記ポリエステルシートの厚みは、0.15mm~0.25mmである。
【0016】
上記態様によれば、包装用容器の底壁および周壁を薄くしつつ、-30度の耐寒性を実現することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、業務用の冷凍庫に保管可能な十分な耐寒性を有する包装用容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係る包装用容器の斜視図である。
図2図1のII-II断面における包装用容器の断面図である。
図3】ポリエステルシートの断面図である。
図4】二軸延伸されるMD方向とTD方向を示すポリエステルシートの図である。
図5】包装用容器を作製する手順を示すフローチャートである。
図6】押出成形で使用される押出装置を模式的に示した図である。
図7】熱成形で使用される金型およびプラグを模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る包装用容器の実施形態について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0020】
図1は、本実施形態に係る包装用容器10の斜視図である。図2は、図1のII-II断面における包装用容器10の断面図である。本実施形態に係る包装用容器10は、例えば食品が収容される容器である。包装用容器10は、例えば食品のうち冷凍食品が収容される容器である。包装用容器10は、冷凍食品が収容され、保冷車の冷凍庫に入れられて輸送される容器であり、いわゆる冷凍輸送用包装用容器である。ただし、包装用容器10に収容されるものは、食品に限定されない。
【0021】
図1に示すように、包装用容器10は、底壁11と、底壁11から立ち上った周壁12とを備えている。周壁12は、例えば底壁11の端から上方に向かって延びている。周壁12は、平面視において底壁11を囲むようにして配置されている。なお、周壁12は、底壁11に対して垂直に立ち上ってもよいし、図2に示すように、底壁11に対して斜め上方に延びるものであってもよい。周壁12は、底壁11から離れるに従って、底壁11の外方に向かうように傾斜していてもよい。底壁11および周壁12は、平らな面を有していてもよいし、強度を確保するための凸部(図示せず)が設けられてもよい。ここでは、底壁11と周壁12とに囲まれた空間に、食品などが収容される。
【0022】
本実施形態では、包装用容器10の底壁11は、四角形状である。ただし、底壁11の形状は特に限定されず、例えば、円形等であってもよい。包装用容器10の形状も特に限定されるものではない。ここでは、包装用容器10は、底壁11と周壁12によって容器状に形成されている。周壁12の上縁により、周壁12に囲まれた開口13が形成されている。開口13は、上方に向かって開口している。なお、包装用容器10は、開口13を開閉自在な蓋(図示せず)を備えていてもよい。蓋は、周壁12の上端に装着されることによって、開口13を閉鎖する。本実施形態に係る包装用容器10は、上下反転させて、蓋として使用することが可能である。
【0023】
本実施形態では、底壁11および周壁12は、ポリエステルシート20によって形成されている。上記蓋は、ポリエステル以外のシートにより形成されていてもよく、ポリエステルシート20によって形成されてもよい。ポリエステルシート20とは、ポリエステルによって形成されたシートである。例えばポリエステルシート20は、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETともいう。)によって形成されている。ただし、ポリエステルシート20の材料は、PETに限定されず、例えばポリ乳酸(以下、PLAともいう。)であってもよい。ここで、PLAは、トウモロコシ、芋、サトウキビ、ビートなどの農産物を原料とする生分解性プラスチックの一種である。
【0024】
図3は、ポリエステルシート20の断面図である。ポリエステルシート20は、1つの層から形成されてもよいが、図3に示すように、ここでは複数の層から形成されている。なお、ポリエステルシート20を構成する層の数は、特に限定されないが、本実施形態では3つである。ポリエステルシート20は、内層21と、外層22と、中間層23とを有している。図2に示すように、内層21は、ポリエステルシート20によって底壁11および周壁12を形成したときに、最も内側に配置される層であり、包装用容器10の内周面を構成する層である。内層21は、包装用容器10に食品を収容した状態において、食品が直接触れる層である。外層22は、ポリエステルシート20によって底壁11および周壁12を形成したときに、最も外側に配置される層であり、包装用容器10の外周面を構成する層である。外層22は、例えば利用者が包装用容器10を手で持ったときに、手が直接触れる層である。
【0025】
中間層23は、内層21と外層22との間に配置された層である。図3に示すように、中間層23は、内層21と外層22とによって囲まれているため、食品や利用者が直接触れない層である。なお、内層21、外層22、中間層23は、それぞれ単層であってもよいし、複数の層が積層されて形成されてもよい。
【0026】
本実施形態では、ポリエステルシート20の厚みは、0.1mm~1.00mm、好ましくは0.15mm~0.25mm、より好ましくは0.16mm~0.20mmであり、例えば0.18mmである。ポリエステルシート20の内層21、外層22および中間層23のうち、中間層23の厚みが最も大きい。例えば内層21と、外層22と、中間層23の厚みの比率は、内層:中間層:外層=10:80:10~4:92:4である。すなわち、ポリエステルシート20の全体の厚みに対する中間層23の厚みの割合は、80%~92%である。ポリエステルシート20の全体に対する内層21の厚みの割合、および、ポリエステルシート20の全体に対する外層22の厚みの割合は、それぞれ4%~10%である。なお、図2では、内層21と、外層22と、中間層23の厚みを同じように図示しているが、実際には、それらの厚みは上記のような割合となるような厚みである。
【0027】
本実施形態では、包装用容器10、言い換えると底壁11および周壁12の少なくとも一部は、再利用されたポリエステルによって形成されている。言い換えると、ポリエステルシート20の少なくとも一部は、再利用されたポリエステルによって形成されている。
【0028】
本実施形態では、ポリエステルシート20を構成する内層21、外層22および中間層23のうち、内層21および外層22は、バージンポリエステル層である。ここで、バージンポリエステル層とは、未利用の(言い換えると再利用されていない)ポリエステル(例えばPET)で形成された層のことである。ここでは、再利用されていないポリエステルのことを、バージンポリエステルという。
【0029】
ポリエステルシート20を構成する内層21、外層22および中間層23のうち、中間層23は、再生ポリエステル層である。ここで、再生ポリエステル層とは、上記のバージンポリエステル層とは異なり、再利用されたポリエステル(例えばPET)で形成された層のことである。再利用されたポリエステルとは、例えば市場から回収した使用済みのPETトレイやPETボトルなどの使用済みPET容器から作製されたものをいう。ここでは、再利用されたポリエステルのことを、再生ポリエステルという。なお、本実施形態では、再生ポリエステル層とは、少なくとも一部に再生ポリエステルが含まれた層のことを言う。再生ポリエステル層には、再生ポリエステルと共に、バージンポリエステルが含まれていてもよい。再生ポリエステル層は、再生ポリエステルとバージンポリエステルが混ざった層であってもよい。
【0030】
本実施形態では、ポリエステルシート20は、二軸延伸させて形成されたシートである。図4は、二軸延伸されるMD方向とTD方向を示すポリエステルシート20の図である。ここでは、図4に示すように、ポリエステルシート20の長手方向、短手方向を、それぞれMD方向、TD方向と定義する。TD方向は、MD方向に対して垂直な方向である。MD方向とTD方向とは直交している。ここでの二軸延伸とは、ポリエステルシート20を、MD方向とTD方向に延伸させることをいう。ただし、ポリエステルシート20に対する二軸延伸の方向は、MD方向とTD方向に限定される訳ではない。
【0031】
二軸延伸は、同時二軸延伸であってもよいし、逐次二軸延伸であってもよい。ここで、同時二軸延伸とは、ポリエステルシート20を、MD方向とTD方向の両方向に同時に延伸させることをいう。逐次二軸延伸とは、ポリエステルシート20を、MD方向とTD方向のうちの一方の方向に延伸させ、その後、他方の方向に延伸させることをいう。例えば逐次二軸延伸では、ポリエステルシート20を、MD方向に延伸させた後にTD方向に延伸させる、または、TD方向に延伸させた後にMD方向に延伸させる。
【0032】
本実施形態では、二軸延伸させて形成されたポリエステルシート20は、-30度の耐寒性を有している。言い換えると、二軸延伸させて形成されたポリエステルシート20で底壁11および周壁12を形成することにより、包装用容器10は、-30度の耐寒性を有している。ここで、「-30度の耐寒性を有する」とは、少なくとも-30度において耐寒性を有することを意味する。-30度の耐寒性を有する包装用容器10は、-30度よりも高い温度(例えば-20度や-10度)においても耐寒性を有する。なお、耐寒性とは、低温環境化にあっても、必要とされる本来の特性(耐衝撃性等)を失わないことを言う。
【0033】
本実施形態では、ポリエステルシート20は、透明性を有している。言い換えると、包装用容器10は透明性を有し、底壁11および周壁12は透明性を有している。なお、透明には、半透明が含まれるものとする。ここでは、ヘーズ値(Haze、単位:%)を用いて透明性を表すことができる。ヘーズ値は、JIS-K7136に準拠した方法で測定することができる。例えば日本電食株式会社製ヘーズメーターNDH-7000SPを使用して、試験片(例えば50mm×50mmの大きさにカットしたポリエステルシート20)を上記ヘーズメーターの測定部に挟むことで、ポリエステルシート20のヘーズ値を自動測定することができる。ここで、ヘーズ値が小さいほど透明性は高くなる。本実施形態では、「透明性を有する」とは、ヘーズ値が、3%以下、好ましくは2%以下、特に好ましくは1%以下のことをいう。
【0034】
本実施形態では、再生ポリエステル層には、不純物が含まれる。この不純物とは、ポリエステル以外のものであり、例えば使用済みPET容器に含まれるラベル樹脂、インキ等である。不純物のうち、特にインキは少量でも再生ペレット全体が着色するという問題がある。そのため、不純物は、より少ない方が好ましい。ポリエステルシート20の透明性は、再生ポリエステル層に含まれる不純物の割合に応じて決定され、不純物の割合が高いほど、色調等の品質を低下させることがある。例えば再生ポリエステル層に含まれる不純物の割合が少ないほど、ポリエステルシート20の透明の度合いが高いと言える。本実施形態では、再生ポリエステル層の全質量に対する不純物の含有量は、0ppmより大きく、かつ、100ppm以下である。ポリエステルシート20は、再生ポリエステル層の表面において、光学欠点検出装置により不純物を検出して、200m当たり(例えばシート幅1000mm、巻長200m当たり)で0.7mm以上のサイズの欠点数が5個以下の不純物を有することが好ましい。この0.7mm以上のサイズの不純物は少ないほど好ましく、0個が最も好ましい。
【0035】
次に、本実施形態に係る包装用容器10を作製する手順について説明する。図5は、包装用容器10を作製する手順を示すフローチャートである。本実施形態では、図5のフローチャートに示すように、押出成形(ステップS101)、二軸延伸(ステップS103)、熱成形(ステップS105)の順に処理を行うことで、包装用容器10を作製することができる。
【0036】
ここでは、図5のステップS101の押出成形の前において、ペレットを用意する。ペレットとして、バージンポリエステルで形成されたバージンペレットと、再生ポリエステルで形成された再生ペレットとを用意する。再生ペレットは、例えば市場から回収した使用済みのポリエステル系樹脂成型品(例えば使用済みPETトレイやPETボトルなどの使用済みPET容器)から作製される。ここでは、回収した使用済みのポリエステル系樹脂成型品を粉砕し、異物を除去し、洗浄し、乾燥させることで、再生ペレットが作製される。
【0037】
ステップS101では、バージンペレットと、再生ペレットを押出成形することで、ポリエステルシート20を作製する。図6は、押出成形で使用される押出装置50を模式的に示した図である。本実施形態では、押出成形として、図6に示す押出装置50を使用する。図6に示すように、押出装置50は、第1ホッパー51Aと、第1スクリュー52Aと、第2ホッパー51Bと、第2スクリュー52Bと、フィードブロック58と、合流ダイ53と、冷却ローラ54と、巻取機55とを有している。
【0038】
本実施形態では、第1ホッパー51Aと、第1スクリュー52Aは、バージンペレット用(以下、バージン用という。)である。第2ホッパー51Bと、第2スクリュー52Bは、再生ペレット用(以下、再生用という。)である。第1ホッパー51Aは、第1スクリュー52Aに接続されており、第1スクリュー52Aの周囲には第1ヒータ57Aが設けられている。第2ホッパー51Bは、第2スクリュー52Bに接続されており、第2スクリュー52Bの周囲には第2ヒータ57Bが設けられている。また、第1スクリュー52Aおよび第2スクリュー52Bは、フィードブロック58に接続され、フィードブロック58は合流ダイ53に接続されている。
【0039】
押出成形では、まずバージン用ペレット40Aを第1ホッパー51Aに入れる。第1ホッパー51Aに入れられたバージン用ペレット40Aは、第1スクリュー52Aに流され、第1ヒータ57Aによって加熱されながら、第1スクリュー52Aで混ぜ合わされる。第1スクリュー52Aで混ぜ合わされたバージン用ペレット40Aは、幅の狭いフィードブロック58に向かって流される。同様に、再生用ペレット40Bを第2ホッパー51Bに入れる。第2ホッパー51Bに入れられた再生用ペレット40Bは、第2スクリュー52Bに流され、第2ヒータ57Bによって加熱されながら、第2スクリュー52Bで混ぜ合わされる。第2スクリュー52Aで混ぜ合わされた再生用ペレット40Bは、フィードブロック58に向かって流される。
【0040】
フィードブロック58では、バージン用ペレット40Aと、再生用ペレット40Bとが合流し、合流ダイ53に流される。合流ダイ53では、バージン用ペレット40Aの層と、再生用ペレット40Bの層となって、フィードブロック58によって押し出されて(共押出されて)排出される。ここで、フィードブロック58を通じて合流ダイ53から押し出されたバージン用ペレット40Aの層が、バージンポリエステル層になる。フィードブロック58を通じて合流ダイ53から押し出された再生用ペレット40Bの層が、再生ポリエステル層になる。
【0041】
本実施形態では、詳しい図示は省略するが、加熱された状態で、バージンポリエステル層、再生ポリエステル層、および、バージンポリエステル層は順に重ねられてシート状になって排出される。このとき、バージンポリエステル層と再生ポリエステル層が接着し、ポリエステルシート20となる。ここでは、重ねられたバージンポリエステル層、再生ポリエステル層、バージンポリエステル層は、それぞれ図3に示す内層21、中間層23、外層22となる。
【0042】
ここでのポリエステルシート20は、加熱された状態であるため、冷却ローラ54を通過することで冷却される。ポリエステルシート20は、冷却ローラ54によって巻取機55に向かって搬送され、巻取機55によってロール状に巻き取られる。以上の手順で、ポリエステルシート20が作製される。
【0043】
次に図5のステップS103において、ロール状のポリエステルシート20を二軸延伸させる。上述のように、二軸延伸は、同時二軸延伸であってもよいし、逐次二軸延伸であってもよい。ここでは、図4に示すように、MD方向とTD方向にポリエステルシート20を延伸させることで、二軸延伸を行う。
【0044】
次に図5のステップS105において、二軸延伸させて形成されたポリエステルシート20を熱成形することで、包装用容器10を作製する。ここで、熱成形は、真空成形または圧空成形とも言い換えられる。図7は、熱成形で使用される金型60およびプラグ65を模式的に示した図である。熱成形では、図7に示すような金型60と、プラグ65が使用される。金型60には、凹部61が形成されている。プラグ65には、凹部61に挿入される凸部66が形成されている。ここでは、熱成形のとき、凹部61と凸部66が向かい合うように、金型60とプラグ65を離間させた状態で配置する。その後、加熱されたポリエステルシート20を、金型60とプラグ65との間に配置する。このとき、ポリエステルシート20の内層21(図3参照)がプラグ65側に位置し、外層22(図3参照)が金型60側に位置するように、ポリエステルシート20を配置する。
【0045】
その後、図7の矢印のように、金型60またはプラグ65を移動させ、金型60の凹部61に、プラグ65の凸部66を挿入する。このことで、ポリエステルシート20は、凹部61と凸部66との間で、凹部61と凸部66の形状に沿って成形される。熱成形されたポリエステルシート20を適宜カットすることで、包装用容器10が作製される。
【0046】
次に、本実施形態に係る包装用容器10が耐寒性を有していることを確かめるために、耐寒落下試験を行った。ここでは、耐寒落下試験として、単品落下試験と箱詰め落下試験を行った。単品落下試験と箱詰め落下試験については後述する。
【0047】
ここでは、耐寒落下試験を行うにあたり、以下のサンプル1とサンプル2の包装用容器を用意した。
【0048】
<サンプル1>
サンプル1は、本実施形態に係る包装用容器10であり、二軸延伸されたポリエステルシート20を熱成形して作製された包装用容器である。サンプル1において、ポリエステルシート20では、バージンPETで形成されたバージンポリエステル層で内層21および外層22が作製され、再生PETで形成された再生ポリエステル層で中間層23が作製されている。
【0049】
<サンプル2>
サンプル2は、ポリエステルシートが二軸延伸されていないこと以外は、サンプル1と同様の構成の包装用容器である。
【0050】
なお、サンプル1およびサンプル2における、1つの包装用容器における重量(以下、単重ともいう。)、ポリエステルシートの厚み(シート肉厚)、IV値、包装用容器の厚み(容器肉厚)は、下記の表1の通りである。なお、包装用容器の厚みとして、底壁の厚み、周壁の厚みを測定し、かつ、サンプル1および2では、底壁に凸部が設けられているため、底壁の凸部(底壁凸)の厚みを測定した。
【0051】
【表1】
【0052】
以上のように作製したサンプル1およびサンプル2の包装用容器に対して、耐寒落下試験を行った。ここでは、まずサンプル1およびサンプル2の包装用容器に対して、単品落下試験を行った。単品落下試験では、まずサンプル1およびサンプル2の包装用容器の中に、200gの錘を入れた。ここでは、錘として、袋に入った200gのペレットを使用した。次に、200gの錘を入れた包装用容器を-30度に設定した恒温室で、一昼夜静置させた。その後、-30度の環境下で静置させたサンプル1およびサンプル2の包装用容器を、1mの高さから鉄板に向けて自由落下させた。このときに、包装用容器に割れが発生したか否かを調査した。このように、-30度の環境下で静置させたサンプル1およびサンプル2の包装用容器に対して、5回ずつの単品落下試験を行った。同様に、上記の温度を-30度から-20度に変更した単品落下試験を、サンプル1およびサンプル2の包装用容器に対して、それぞれ5回ずつ行った。サンプル1およびサンプル2の包装用容器に対する単品落下試験の結果を、下記の表2に示す。
【0053】
【表2】
【0054】
次に、サンプル1およびサンプル2の包装用容器に対して、箱詰め落下試験を行った。箱詰め落下試験では、まずサンプル1およびサンプル2の包装用容器の中に、200gの錘(ここでは、袋に入った200gのペレット)を入れた。次に、200gの錘を入れた包装用容器を-30度に設定した恒温室で、一昼夜静置させた。その後、-30度の環境下で静置させたサンプル1の包装用容器を、2列4段になるように段ボール箱に入れ、蓋をした。そして、サンプル1の包装用容器が入れられた段ボール箱を、1mの高さから鉄板に向けて自由落下させた。このときに、段ボール箱に入れられたサンプル1の包装用容器に割れが発生したか否かを調査した。同様に、-30度の環境下で静置させたサンプル2の包装容器を別の段ボール箱に入れ、蓋をした。そして、サンプル2の包装用容器が入れられた段ボール箱を、1mの高さから鉄板に向けて自由落下させた。このとき、段ボール箱に入れられたサンプル2の包装用容器に割れが発生したか否かを調査した。ここでは、-30度の環境下で静置させたサンプル1およびサンプル2の包装用容器に対して、8回ずつの箱詰め落下試験を行った。
【0055】
同様に、上記の温度を-30度から-20度に変更した箱詰め落下試験を、サンプル1およびサンプル2の包装用容器に対して、それぞれ8回ずつ行った。サンプル1およびサンプル2の包装用容器に対する箱詰め落下試験の結果を、下記の表3に示す。
【0056】
【表3】
【0057】
上記の表2に示すように、-20度における単品落下試験および-30度における単品落下試験では、サンプル1の包装用容器に対して割れが発生しなかった。一方、サンプル2の包装用容器に対して、-20度における単品落下試験では、5回中2回で割れが発生し、-30度の単品落下試験では、5回中3回で割れが発生した。上記の表3に示すように、-20度における箱詰め落下試験および-30度における箱詰め落下試験では、サンプル1の包装用容器に対して割れが発生しなかった。一方、サンプル2の包装用容器に対して、-20度における箱詰め落下試験では、割れが発生しなかったが、-30度における箱詰め落下試験では、8回中1回で割れが発生した。
【0058】
これらの耐寒落下試験の結果から、二軸延伸させて形成されたポリエステルシート20によって形成された包装用容器10(サンプル1の包装用容器)は、-30度の耐寒性を有していることが分かった。よって、本実施形態のように、ポリエステルシート20が二軸延伸させて形成されることで、ポリエステルシート20に対して-30度の耐寒性を確保することができる。したがって、-30度の耐寒性を有するポリエステルシート20で、包装用容器10の底壁11や周壁12を形成することにより、包装用容器10に対して、-30度の耐寒性を確保することができる。
【0059】
本実施形態では、上記の耐寒落下試験の単品落下試験において、サンプル1の包装用容器10を、200gの錘を入れて1mの高さから鉄板(言い換えると床面)に落下させることとし、包装用容器10の底壁11の床面に対する接触面積は1360mmであった。-30度の環境下で静置させた包装用容器10について、底壁11の床面との接触面積が1360mm、錘の質量が200g、床面からの落下高さが1mのときに、底壁11および周壁12に割れが発生しないことに基づいて、-30度の耐寒性を有することを特定することとした。
【0060】
ところで、落下試験に基づく耐寒性は、落下時に包装用容器10が受ける衝撃のエネルギーに基づいて評価することができる。上述の単品落下試験において、底壁11の床面に対する接触面積をS[mm]、錘の質量をm[g]、床面からの高さをh[m]としたとき、落下時に底壁11が受ける衝撃のエネルギーは、落下前の位置エネルギー=mgh(なお、gは重力加速度[m/s]である)と等価である。なお、包装用容器10自体の質量は錘の質量に比べて小さいため、ここでは無視することとする。そのため、落下時に包装用容器10が受ける単位面積当たりの衝撃のエネルギーは、mgh/Sと見なすことができる。上述の落下試験では、mgh/S=200[g]×g×1[m]/1360[mm]=0.147g、かつ、温度が-30度の条件において、底壁11および周壁12に割れが発生しないことに基づいて、-30度の耐寒性を有することを特定した。サンプル1以外の包装用容器についても同様に、mgh/S=0.147g、かつ、温度が-30度の条件の落下試験の結果、底壁および周壁に割れが発生しないことをもって、-30度の耐寒性があることを特定することができる。よって、上記のようにして、-30度の耐寒性を定義することができる。
【0061】
本実施形態では、図2に示すように、ポリエステルシート20は、包装用容器10の内側に配置される内層21と、包装用容器10の外側に配置される外層22と、内層21と外層22との間に配置される中間層23と、を有している。内層21と外層22は、バージンポリエステル層である。中間層23は、再生ポリエステル層である。このことによって、包装用容器10のうち、包装用容器10に収容された食品が直接触れる内層21を、バージンポリエステル層で形成することができる。また、包装用容器10のうち、包装用容器10を手でつかんだときに手が直接触れる外層22を、バージンポリエステル層で形成することができる。
【0062】
本実施形態では、ポリエステルシート20は、透明性を有している。ポリエステルシート20に対するヘーズ値は、3%以下である。このように、ポリエステルシート20のヘーズ値を3%以下にすることで、ポリエステルシート20を透明にすることができる。そして、透明性を有するポリエステルシート20で底壁11および周壁12を形成することで、包装用容器10の底壁11および周壁12を透明にすることができる。
【0063】
本実施形態では、再生ポリエステル層の全質量に対する不純物の含有量は、0ppmより大きく、かつ、100ppm以下である。再生ポリエステル層の表面において、200m当たり0.7mm以上のサイズの欠点数が5個以下の前記不純物を有する。再生ポリエステル層に含まれる不純物の割合を上記のようにすることで、ポリエステルシート20の透明の度合いを高めることができる。
【0064】
本実施形態では、ポリエステルシート20の厚みは、0.15mm~0.25mmである。このことによって、包装用容器10の底壁11および周壁12を薄くしつつ、-30度の耐寒性を実現することができる。
【符号の説明】
【0065】
10 包装用容器
11 底壁
12 周壁
20 ポリエステルシート
21 内層
22 外層
23 中間層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7