(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023105954
(43)【公開日】2023-08-01
(54)【発明の名称】ホース及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
F16L 11/12 20060101AFI20230725BHJP
A62C 33/00 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
F16L11/12 J
A62C33/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022007020
(22)【出願日】2022-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000215822
【氏名又は名称】帝国繊維株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】得能 進
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一則
(72)【発明者】
【氏名】水谷 誠惇輝
【テーマコード(参考)】
2E189
3H111
【Fターム(参考)】
2E189LA01
3H111AA02
3H111DA21
3H111DB04
(57)【要約】
【課題】ホース本来の性能を低下させることなく、ホース表面の表示体の耐久性及び視認性を改善したホース及びその製造方法を提供する。
【解決手段】織物からなるジャケット2とこのジャケット2の内周面を被覆する内側被覆層3とを備え、ジャケット2がレーザーマーキングにより形成された表示体10を有し、表示体10の色とジャケット2の色が互いに異なっている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
織物からなるジャケットとこのジャケットの内周面を被覆する内側被覆層とを備え、前記ジャケットがレーザーマーキングにより形成された表示体を有し、この表示体の色と前記ジャケットの色が互いに異なることを特徴とするホース。
【請求項2】
織物からなるジャケットとこのジャケットの内周面を被覆する内側被覆層と前記ジャケットの外周面を被覆する外側被覆層とを備え、この外側被覆層がレーザーマーキングにより形成された表示体を有し、この表示体の色と前記外側被覆層の色が互いに異なることを特徴とするホース。
【請求項3】
前記表示体が白色であって前記外側被覆層が黒色である、又は前記表示体が灰色であって前記外側被覆層が水色であることを特徴とする請求項2に記載のホース。
【請求項4】
前記外側被覆層が樹脂からなり、この樹脂の硬度Aが75~90の範囲にあることを特徴とする請求項2又は3に記載のホース。
【請求項5】
前記ホースの内径が38mm~600mmの範囲にあり、前記ホースが消防用ホース又は大量送水用ホースであることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のホース。
【請求項6】
織物からなるジャケットとこのジャケットの内周面を被覆する内側被覆層とを備えるホースの製造方法であって、前記ジャケットにレーザーマーキングを施して表示体を形成し、この表示体の色と前記ジャケットの色を互いに異ならせることを特徴とするホースの製造方法。
【請求項7】
前記ジャケットにレーザーマーキングを施す際にUVレーザー光、FAYbレーザー光、又は、YVO4とFiberの複合レーザー光のいずれかを照射することを特徴とする請求項6に記載のホースの製造方法。
【請求項8】
織物からなるジャケットとこのジャケットの内周面を被覆する内側被覆層と前記ジャケットの外周面を被覆する外側被覆層とを備えるホースの製造方法であって、前記外側被覆層にレーザーマーキングを施して表示体を形成し、この表示体の色と前記外側被覆層の色を互いに異ならせることを特徴とするホースの製造方法。
【請求項9】
前記表示体が白色であって前記外側被覆層が黒色である、又は前記表示体が灰色であって前記外側被覆層が水色であることを特徴とする請求項8に記載のホースの製造方法。
【請求項10】
前記外側被覆層が樹脂からなり、この樹脂の硬度Aが75~90の範囲にあることを特徴とする請求項8又は9に記載のホースの製造方法。
【請求項11】
前記外側被覆層にレーザーマーキングを施す際にUVレーザー光、FAYbレーザー光、又はYVO4とFiberの複合レーザー光のいずれかを照射することを特徴とする請求項8~10のいずれかに記載のホースの製造方法。
【請求項12】
前記ホースの内径が38mm~600mmの範囲にあり、前記ホースが消防用ホース又は大量送水用ホースであることを特徴とする請求項6~11のいずれかに記載のホースの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は消防用ホース又は大量送水用ホースとして好適なホース及びその製造方法に関し、詳しくは、ホース本来の性能を低下させることなく、ホース表面の表示体の耐久性及び視認性を改善したホース及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、消防用ホースとして、織物からなるジャケットとこのジャケットの内周面を被覆する内側被覆層とを備えたホースが使用されている。このような消防用ホースの表面には、そのホースの品名やメーカー名、製造年月日等の製品に関する情報が表示されている(例えば、特許文献1参照)。この表示された情報は、ホースを引き摺った際にホース表面が損傷すること等によって、薄くなったり、削れたりするという問題がある。また、ホース表面に印字する際にスプレー等を用いた場合、その印字された表示物は、ホース表面の凹凸等により鮮明に印字されず、視認性が高いとは言えない。このようにホース表面の表示物の耐久性や視認性を向上させることには改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、ホース本来の性能を低下させることなく、ホース表面の表示体の耐久性及び視認性を改善したホース及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため本発明のホースは、織物からなるジャケットとこのジャケットの内周面を被覆する内側被覆層とを備え、前記ジャケットがレーザーマーキングにより形成された表示体を有し、この表示体の色と前記ジャケットの色が互いに異なることを特徴とする。
【0006】
また、本発明のホースは、織物からなるジャケットとこのジャケットの内周面を被覆する内側被覆層と前記ジャケットの外周面を被覆する外側被覆層とを備え、この外側被覆層がレーザーマーキングにより形成された表示体を有し、この表示体の色と前記外側被覆層の色が互いに異なることを特徴とする。
【0007】
本発明のホースの製造方法は、織物からなるジャケットとこのジャケットの内周面を被覆する内側被覆層とを備えるホースの製造方法であって、前記ジャケットにレーザーマーキングを施して表示体を形成し、この表示体の色と前記ジャケットの色を互いに異ならせることを特徴とする。
【0008】
また、本発明のホースの製造方法は、織物からなるジャケットとこのジャケットの内周面を被覆する内側被覆層と前記ジャケットの外周面を被覆する外側被覆層とを備えるホースの製造方法であって、前記外側被覆層にレーザーマーキングを施して表示体を形成し、この表示体の色と前記外側被覆層の色を互いに異ならせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、レーザーマーキングはジャケットを損傷することなくジャケットに対して表示体を形成することができるので、ホース本来の性能を低下させることがない。そして、レーザーマーキングにより形成された表示体は、従来のスプレー等による表示物に比べて耐久性が高く、かつ優れた視認性を有している。更に、表示体の色とジャケットの色が互いに異なっているので、表示体の視認性を向上させることができる。
【0010】
また、本発明では、レーザーマーキングは外側被覆層を損傷することなく外側被覆層に対して表示体を形成することができるので、ホース本来の性能を低下させることがない。ジャケットが外側被覆層により被覆されているのでホース表面が平滑になるため、織物が表出して表面に凹凸があるホースに対してレーザーマーキングを施す場合に比べて、レーザー光の分散を抑制することができるので加工時間を短縮でき、生産性の観点から好適である。また、レーザーマーキングにより形成された表示体は、従来のスプレー等による表示物に比べて耐久性が高く、かつ優れた視認性を有している。更に、表示体の色と外側被覆層の色が互いに異なっているので、表示体の視認性を向上させることができる。
【0011】
本発明のホース及びホースの製造方法において、表示体が白色であって外側被覆層が黒色である、又は前記表示体が灰色であって前記外側被覆層が水色であることが好ましい。これにより、表示体の視認性を更に向上させることができる。
【0012】
外側被覆層は樹脂からなり、この樹脂の硬度Aは75~90の範囲にあることが好ましい。本発明者は、ホース表面に対してレーザーマーキングにより表示体を形成するにあたって樹脂の好適な硬度を知見し、このような硬度を有する樹脂を用いることで、表示体の耐久性及び視認性に対する改善効果を十分に得ることができる。
【0013】
ホースの内径は38mm~600mmの範囲にあり、ホースは消防用ホース又は大量送水用ホースであるとよい。
【0014】
また、本発明のホースの製造方法において、ジャケットにレーザーマーキングを施す際にUVレーザー光、FAYbレーザー光、又はYVO4とFiberの複合レーザー光のいずれかを照射することが好ましい。これらのレーザー光によれば、ジャケットに対して大きなダメージを与えることなく加工することができる。
【0015】
外側被覆層にレーザーマーキングを施す際にUVレーザー光、FAYbレーザー光、又はYVO4とFiberの複合レーザー光のいずれかを照射することが好ましい。これらのレーザー光によれば、外側被覆層に対して大きなダメージを与えることなく加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】
図1のホースの一部を拡大して示す断面図である。
【
図3】ホースの他の実施形態を例示する斜視図である。
【
図4】
図3のホースの一部を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のホースの実施形態を添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に例示するように、本発明のホース1は、筒状に織成した織物からなるジャケット2と、ジャケット2の内周面を被覆する内側被覆層3とを有している。このホース1は全体として2層構造である。
【0018】
ジャケット2は経糸2aと緯糸2bから織成される。
図2に例示するように、ジャケット2は、ホース長さ方向に配される経糸2aとホース長さ方向の中心軸周りに螺旋状に配される緯糸2bとで筒状に形成される。経糸2a及び緯糸2bとして、例えばポリエステルのフィラメント糸や紡績糸を使用することができる。これら経糸2aと緯糸2bにより織成されたジャケット2は表面に凹凸を有している。
【0019】
図2において、このジャケット2は、緯糸2bが2本の経糸2aの内側と外側を交互に交錯するように織られた織組織を有しているが、これに限定されるものではない。その他、緯糸2bが1本の経糸2aの内側と外側を交互に交錯するように織られていてもよい。また、ジャケット2の織組織は平織り又は綾織りとすることができる。
【0020】
ホース1の内周面が内側被覆層3により被覆されていることで、織物の織組織に基づく凹凸がなく、滑らかに形成されている。これにより、ホース1の内部において通水時の圧力損失が低減される。また、内側被覆層3の材料は、特に限定されるものではないが、ゴム又は合成樹脂を用いることが好ましい。合成樹脂として、例えばポリウレタンを用いることが好ましい。
【0021】
上記ホースにおいて、ジャケット2の表面には、レーザーマーキングにより表示体10が形成されている。この表示体10は、文字、数字、記号又は図形からなる標章であり、特定のマークや二次元バーコード等を含むこともできる。この表示体10の色とジャケット2の色とは互いに異なっている。例えば、表示体10を黒色とし、ジャケット2を白色として構成することができ、互いのコントラストがはっきりするように両者の色を組み合わせることが望ましい。また、表示体10は、視認性を高めるために、ホース周方向及びホース長さ方向の長さがそれぞれ15mm以上であることが好ましい。
【0022】
レーザーマーキングは、対象物に対してレーザー光を照射して標章等を形成することができる加工技術である。このレーザーマーキングにより、織物(ジャケット2)が表出し、表面に凹凸があるホース1に対しても表示体10を鮮明に形成することができる。表示体10は、ホースのように長尺で、かつ曲面を有する対象物に対しても加工可能なレーザーマーカーによりホース1の表面に形成される。このようなレーザーマーカーにより照射されたレーザー光によってジャケット2の織組織を構成する糸が光分解し、この糸が発色する(例えば白色から黒色になる)ことにより、ジャケット2の表面に表示体10が形成される。
【0023】
ホース1の表面には、レーザーマーキングにより形成された表示体10によって製品に関する情報が表示されている。例えば、ホース1が消防ホースの場合、製品情報として品名、メーカー名、製造年月日、識別番号等を例示することができる。その他にも、ユーザーである所属消防署名等の任意の情報を含むように形成することができる。なお、ホース1の表面に表示される全ての情報をレーザーマーキングにより形成された表示体10で構成してもよく、或いは、その一部の情報のみをレーザーマーキングにより形成された表示体10で構成してもよい。
【0024】
上述したホースでは、レーザーマーキングはジャケット2を損傷することなくジャケット2に対して表示体10を形成することができるので、ホース1の本来の性能を低下させることがない。そして、レーザーマーキングにより形成された表示体10は、従来のスプレー等による表示物に比べて耐久性が高く、かつ優れた視認性を有している。更に、表示体10の色とジャケット2の色が互いに異なっているので、表示体10の視認性を向上させることができる。
【0025】
図3に例示するホース1の別の実施形態は、筒状に織成した織物からなるジャケット2と、ジャケット2の内周面を被覆する内側被覆層3と、ジャケット2の外周面を被覆する外側被覆層4とを有している。このホース1は全体として3層構造である。
れている。
【0026】
ジャケット2は、
図4に例示するように、ホース長さ方向に配される経糸2aと、ホース長さ方向の中心軸周りに螺旋状に配される緯糸2bとで筒状に形成される。経糸2a及び緯糸2bとして、例えば、ポリエステルのフィラメント糸や紡績糸を使用することができる。これら経糸2aと緯糸2bにより織成されたジャケット2は表面に凹凸を有する。
【0027】
ホース1の内周面及び外周面が内側被覆層3及び外側被覆層4により被覆されていることで、織物の織組織に基づく凹凸がなく、滑らかに形成されている。これにより、ホース1の内部では通水時の圧力損失が低減される一方で、ホース1の外部では地面等との摩擦を低減できるため、織物(ジャケット2)が表出しているホースに比べて取扱い性に優れている。
【0028】
内側被覆層3はゴム又は合成樹脂からなり、外側被覆層4はゴム又は合成樹脂からなる。外側被覆層4の色は、特に限定されるものではないが、例えば、黒色、橙色、水色とすることができる。なお、内側被覆層3と外側被覆層4の色は、互いに同色であってもよく、異色であってもよい。
【0029】
また、内側被覆層3及び外側被覆層4は、双方が合成樹脂からなることが好ましい。その際、内側被覆層3及び外側被覆層4は、製造上の観点から同種の材料で構成されることが好ましいが、異種の材料で構成することもできる。特に、内側被覆層3及び外側被覆層4を同種の合成樹脂で構成し、その合成樹脂として軟質のポリウレタンを用いることが好ましい。合成樹脂の硬度Aは、75~90の範囲にあることが好ましい。なお、合成樹脂の硬度Aは、JIS K 6253(デュロメータ:タイプA)に準拠した方法により測定されたものである。
【0030】
上記ホースにおいて、外側被覆層4の表面には、レーザーマーキングにより表示体10が形成されている。具体的には、レーザーマーカーにより照射されたレーザー光が外側被覆層4を構成する樹脂に吸収され、外側被覆層4の分子が光分解し、樹脂が発色する(例えば黒色から白色になる)ことにより、外側被覆層4の表面に表示体10が形成される。この表示体10の色と外側被覆層4の色とは互いに異なっている。例えば、表示体10を白色として外側被覆層4を黒色とする、或いは、表示体10を灰色として外側被覆層4を水色として構成することができ、互いのコントラストがはっきりするように両者の色を組み合わせることが望ましい。このように両者の色を特定の組み合わせにすることにより、表示体10の視認性の更なる向上に寄与する。
【0031】
例えば、外側被覆層4を黒色とするために、外側被覆層4にカーボンブラックを含有させることができる。このように外側被覆層4にカーボンブラックを含有させることで、外側被覆層4の色を黒色に着色することができると共に、レーザーマーキングを施した際にはカーボンブラックがレーザー光吸収剤として機能する。このカーボンブラックを含む外側被覆層4の表面に対して白色の表示体10を形成することは視認性の向上の観点で好適である。
【0032】
上述したホースでは、レーザーマーキングは外側被覆層4を損傷することなく外側被覆層4に対して表示体10を形成することができるので、ホース1の本来の性能を低下させることがない。ジャケット2が外側被覆層4により被覆されているのでホース表面が平滑になるため、織物が表出して表面に凹凸があるホースに対してレーザーマーキングを施す場合に比べて、レーザー光の分散を抑制することができるので加工時間を短縮でき、生産性の観点から好適である。また、レーザーマーキングにより形成された表示体10は、従来のスプレー等による表示物に比べて耐久性が高く、かつ優れた視認性を有している。更に、表示体10の色と外側被覆層4の色が互いに異なっているので、表示体10の視認性を向上させることができる。
【0033】
特に、外側被覆層4が樹脂からなり、この樹脂の硬度Aは75~90の範囲にあるとよい。本発明者は、ホース表面に対してレーザーマーキングにより表示体10を形成する際の樹脂の好適な硬度を知見した。そのため、このような硬度を有する樹脂を用いることで、表示体10の耐久性及び視認性に対する改善効果を十分に得ることができる。
【0034】
上述したように本発明に係るホースによれば、ホース表面に凹凸が多い場合(
図1,2参照)とホース表面に凹凸が少ない場合(
図3,4参照)のいずれにおいても、ホース本来の性能を低下させることなく、ホース表面に表示された表示体10の耐久性及び視認性を改善することができる。
【0035】
次に本発明のホースの製造方法について説明する。
図1に例示したホースを製造する場合、サーキュラー(円型)織機を用いてジャケット2を構成する筒状の織物を織成する。そして、この織物(ジャケット2)に対して、内側被覆層3を内周面側から張りつける。その後、レーザーマーカーを用いてジャケット2の表面に対してレーザーマーキングを施し、所望の表示体10を形成する。その際、表示体10の色とジャケット2の色とが互いに異なるようにレーザー光の出力を調整した上で、レーザー光を照射して所望の色の表示体10を形成する。
【0036】
特に、ジャケット2の表面に対してレーザーマーキングを施す際、例えば、UVレーザー光、FAYbレーザー光、又はYVO4とFiberの複合レーザー光のいずれかを用いるとよい。波長が1064nmであるFAYbレーザー光又はYVO4とFiberの複合レーザー光を用いても良いが、特に、波長が355nmであるUVレーザー光を用いることが最も好ましい。このUVレーザー光は波長10nm~400nmの光であるが、波長が短いほど加工精度が向上する傾向がある。UVレーザー光は、レーザー光の中でも波長が短いため、ジャケット2の表面に対して大きなダメージを与えることなく加工することができる。
【0037】
一方、
図3に例示したホースを製造する場合、サーキュラー(円型)織機を用いてジャケット2を構成する筒状の織物を織成する。そして、この織物(ジャケット2)に対して、内側被覆層3を内周面側から張りつけると共に、外側被覆層4を外周面側から張りつける。或いは、1圧入工程による方法(ワンショット押出成形法)により内側被覆層3及び外側被覆層4を形成することもできる。具体的には、ジャケット2の外周面側から内周面側に向けて、熱可塑性樹脂をジャケット2内に圧入することにより、内側被覆層3及び外側被覆層4を形成する。このワンショット押出成形法により内側被覆層3及び外側被覆層4を形成した場合、熱可塑性樹脂が外周面側から内周面側までジャケット2の内部を貫通して一体的に存在するようになるため、全体で強固な一体構造となる。これにより、ホースが折れ曲がってキンクが発生することを効果的に抑制することができる。
【0038】
上述したいずれかの方法で形成された外側被覆層4の表面に対して、レーザーマーカーを用いてレーザーマーキングを施し、所望の表示体10を形成する。その際、表示体10の色と外側被覆層4の色とが互いに異なるようにレーザー光の出力を調整した上で、レーザー光を照射して所望の色の表示体10を形成する。
【0039】
特に、外側被覆層4の表面に対してレーザーマーキングを施す際、例えば、UVレーザー光、FAYbレーザー光、又はYVO4とFiberの複合レーザー光のいずれかを用いるとよい。波長が1064nmであるFAYbレーザー光又はYVO4とFiberの複合レーザー光を用いても良いが、特に、波長が355nmであるUVレーザー光を用いることが最も好ましい。このようなUVレーザー光は、レーザー光の中でも波長が短いため、外側被覆層4の表面に対して大きなダメージを与えることなく加工することができる。
【0040】
また、ホース1を移動する際や、ホース1の表面(ジャケット2又は外側被覆層4の表面)に対してレーザーマーキングを施す際、助力装置を使用するとよい。この助力装置は、重いレーザーマーカーの移動や保持する際に作業者を補助するための装置である。これにより、ホース1の表面へのレーザーマーキングの作業を人力で容易に行うことができる。
【0041】
本発明のホースの口径(図示の内径D)は、特に限定されるものではないが、口径を38mm~600mmの範囲とするとよい。特に、口径が100mm~600mmであるホースは、大量送水用ホースとして用いられる。また、本発明のホースの用途は、特に限定されるものではないが、消防用ホース又は大量送水用ホースであることが好ましい。これらのホースの場合、ホース1の両端部にはそれぞれ差込式の連結金具が取り付けられ、この連結金具は一対の金属製の雄継手と雌継手から構成される。一方のホースの雄継手を他方のホースの雌継手に差し込むことによって、雄継手と雌継手とが嵌合し、一方のホースと他方のホースとを連結することができる。このような連結作業を繰り返し行なうことで複数本のホースを1本の連続したホースとして使用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 ホース
2 ジャケット
3 内側被覆層
4 外側被覆層
10 表示体