(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023105955
(43)【公開日】2023-08-01
(54)【発明の名称】線状部材張力制御装置
(51)【国際特許分類】
B65H 59/10 20060101AFI20230725BHJP
D03J 5/24 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
B65H59/10 A
D03J5/24 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022007021
(22)【出願日】2022-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】大西 郷
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅春
【テーマコード(参考)】
3F111
【Fターム(参考)】
3F111BC07
3F111BD05
(57)【要約】
【課題】線状部材の張力の変動を抑える。
【解決手段】本開示に係る線状部材張力制御装置10は、導電性材料103aを巻回可能に形成され、所定方向に延びる回転軸CLを中心として支持部材13に回転可能に支持されるボビン11と、ボビン11から上記所定方向の外側へ離間する位置に配置され、ボビン11に向かってエアーを噴出可能なエアーノズル12と、を備え、ボビン11は、回転軸CLの周囲に配置されて上記所定方向に対して傾斜した状態で外側を向く傾斜面21を有し、ボビン11の傾斜面21は、エアーノズル12から噴出されるエアーからの圧力がボビン11に対して、導電性材料103aを繰り出す回転方向とは反対方向に作用するように上記所定方向に対して傾斜している。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状部材を巻回可能に形成され、所定方向に延びる回転軸を中心として支持部材に回転可能に支持されるボビンと、
前記ボビンから前記所定方向の一側へ離間する位置に配置され、前記ボビンに向かってエアーを噴出可能なエアー噴出部と、を備え、
前記ボビンは、前記回転軸の周囲に配置されて前記所定方向に対して傾斜した状態で前記一側を向く傾斜面を有し、
前記ボビンの前記傾斜面は、前記エアー噴出部から噴出されるエアーからの圧力が前記ボビンに対して、前記線状部材を繰り出す回転方向とは反対方向に作用するように前記所定方向に対して傾斜している
ことを特徴とする線状部材張力制御装置。
【請求項2】
前記ボビンの前記傾斜面は、平面状に形成され、前記回転軸を中心として前記回転軸の周囲に周方向に並ぶように複数設けられる
ことを特徴とする請求項1に記載の線状部材張力制御装置。
【請求項3】
前記ボビンは、前記回転軸を中心として前記回転軸の周囲に周方向に並んで配置される複数の羽根部を有し、
前記ボビンの前記傾斜面は、前記複数の羽根部の前記一側の面である
ことを特徴とする請求項2に記載の線状部材張力制御装置。
【請求項4】
前記ボビンは、少なくとも前記一側へ開口する空間を前記回転軸の周囲に有し、
前記傾斜面は、前記空間内に配置される
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の線状部材張力制御装置。
【請求項5】
前記ボビンは、軸受を介して前記支持部材に回転可能に支持される
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の線状部材張力制御装置。
【請求項6】
前記ボビンは、プラスチック製である
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の線状部材張力制御装置。
【請求項7】
前記ボビンの前記傾斜面の表面粗さRaが、1μm以上である
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の線状部材張力制御装置。
【請求項8】
複数の前記ボビンと、
複数の前記ボビンのそれぞれに対応する複数の前記エアー噴出部と、を備え、
複数の前記エアー噴出部は、共通のエアー供給源からエアーの供給を受ける
ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の線状部材張力制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、線状部材の張力を制御する線状部材張力制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ボビンの過剰な糸巻き出しを抑制する糸張力装置が記載されている。この糸張力装置のボビンは、糸巻き出し部と鍔で仕切られたボビン回転体の周囲に、翼が回転軸と平行な面を形成するように設けられている。翼は、スワイベルボビンのボビン回転体の周囲に、等間隔に4~6枚設けられている。また、スワイベルボビンの糸の巻き出し回転方向とは逆方向に、翼に風圧を付与する空気噴出し部が設けられている。空気噴出し部から空気が噴出されると、翼に風圧がかかり、スワイベルボビンの回転軸を中心にモーメントが発生し、スワイベルボビンから過剰に巻き出された糸をスワイベルボビンの糸巻き出し部に巻き戻し、スワイベル糸に一定の糸張力を持たせる。なお、同公報には、スワイベルボビンのボビン回転体の翼に対して、ボビン回転体の周方向に空気を噴出している状態が図示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の糸張力装置では、スワイベルボビンのボビン回転体の翼に対して、ボビン回転体の周方向に空気を噴出しているので、翼に対して空気が当たる角度は、ボビンの回転角度によって異なる。このため、空気噴出し部から翼までの距離のみならず、翼に対して空気が当たる角度がボビンの回転によって変化するので、翼に対する風圧が変動し易く、糸(線状部材)の張力も変動し易い。
【0005】
そこで、本開示は、線状部材の張力の変動を抑えることが可能な線状部材張力制御装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様の線状部材張力制御装置は、線状部材を巻回可能に形成され、所定方向に延びる回転軸を中心として支持部材に回転可能に支持されるボビンと、前記ボビンから前記所定方向の一側へ離間する位置に配置され、前記ボビンに向かってエアーを噴出可能なエアー噴出部と、を備え、前記ボビンは、前記回転軸の周囲に配置されて前記所定方向に対して傾斜した状態で前記一側を向く傾斜面を有し、前記ボビンの前記傾斜面は、前記エアー噴出部から噴出されるエアーからの圧力が前記ボビンに対して、前記線状部材を繰り出す回転方向とは反対方向に作用するように前記所定方向に対して傾斜している。
【0007】
本発明の第2の態様は、上記第1の態様の線状部材張力制御装置であって、前記ボビンの前記傾斜面は、平面状に形成され、前記回転軸を中心として前記回転軸の周囲に周方向に並ぶように複数設けられる。
【0008】
本発明の第3の態様は、上記第2の態様の線状部材張力制御装置であって、前記ボビンは、前記回転軸を中心として前記回転軸の周囲に周方向に並んで配置される複数の羽根部を有し、前記ボビンの前記傾斜面は、前記複数の羽根部の前記一側の面である。
【0009】
本発明の第4の態様は、上記第1の態様から上記第3の態様のいずれかの線状部材張力制御装置であって、前記ボビンは、少なくとも前記一側へ開口する空間を前記回転軸の周囲に有し、前記傾斜面は、前記空間内に配置される。
【0010】
本発明の第5の態様は、上記第1の態様から上記第4の態様のいずれかの線状部材張力制御装置であって、前記ボビンは、軸受を介して前記支持部材に回転可能に支持される。
【0011】
本発明の第6の態様は、上記第1の態様から上記第5の態様のいずれかの線状部材張力制御装置であって、前記ボビンは、プラスチック製である。
【0012】
本発明の第7の態様は、上記第1の態様から上記第6の態様のいずれかの線状部材張力制御装置であって、前記ボビンの前記傾斜面の表面粗さRaが、1μm以上である。
【0013】
本発明の第8の態様は、上記第1の態様から上記第7の態様のいずれかの線状部材張力制御装置であって、複数の前記ボビンと、複数の前記ボビンのそれぞれに対応する複数の前記エアー噴出部と、を備え、複数の前記エアー噴出部は、共通のエアー供給源からエアーの供給を受ける。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、線状部材の張力の変動を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】導電性構造体製造装置によって製造される導電性構造体の説明図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る線状部材張力制御装置を含む導電性構造体製造装置の概略図である。
【
図3】
図2を矢印III方向から視た線状部材張力制御装置の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において、UPは上方を示し、一点鎖線CLはボビン11の回転軸(軸心)を示す。
【0017】
図1は、導電性構造体製造装置1によって製造される導電性構造体100の説明図である。
【0018】
図1に示すように、導電性構造体製造装置1によって製造される導電性構造体100は、基材101と、基材101の表面に積層された粘着層102と、粘着層102の表面上に配置された導電性線状体103とを含む。導電性構造体100は、基材101と粘着層102とから構成される積層体104の表面上に、導電性線状体103が配置されている。
【0019】
導電性構造体100は、複数の導電性線状体103が、互いに所定の配置間隔Pをもって配列された構造とすることができる。
図1では、4本の導電性線状体103が配列された場合を例示している。導電性線状体103は、それぞれが、導電性構造体100の長手方向Y(後述する搬送方向)に沿って配列されている。そして、導電性構造体100の幅方向X(長手方向Yと直交する方向)において、導電性線状体103は、所定の配置間隔Pで複数本配列されている。導電性線状体103の配列形状(パターニング)は、特に限定されず、
図1に示すように、上面視において波形状であってもよいし、或いは長手方向Yに沿った直線状であってもよい。
【0020】
積層体104は、基材101及び粘着層102を含むものであり、長尺のシート状とすることができる。シート状の積層体104であることにより、搬送装置上を搬送しながら導電性構造体100を配置することが容易である。積層体104の層構造は、導電性線状体103を粘着層102の表面上に配置する観点から、少なくともその最表面が粘着層102であればよく、2層に限定されものではない。例えば、3層以上であってもよい。例えば、基材101が複数層からなるものであってもよいし、基材101と粘着層102との間に、各種機能層を中間層として有していてもよい。
【0021】
基材101としては、例えば、合成樹脂フィルム、紙、金属箔、不織布、布、及びガラスフィルム等が挙げられる。この基材101により、導電性構造体100を、直接的又は間接的に支持できる。また、基材101は、伸縮性基材であることが好ましい。なお、「フィルム」は「シート」等と呼ばれることもある。
【0022】
粘着層102は、粘着性を有する層であり、導電性線状体103を固着できるものであればよい。例えば、粘着層102は、樹脂を含む層である。この粘着層102により、導電性線状体103を、直接的又は間接的に支持できる。
【0023】
導電性線状体103の材料等については、特に限定されないが、金属ワイヤーを含む線状体(「金属ワイヤー線状体」等と呼ばれることもある。)であることが好ましい。金属ワイヤーは、高い熱伝導性、高い電気伝導性、高いハンドリング性、及び汎用性を有する。そのため、導電性線状体103として金属ワイヤー線状体を適用すると、導電性構造体100の抵抗値を低減しつつ、光線透過性が向上しやすくなる。例えば、導電性線状体103の導電性が高いほど、線の太さを細く(直径を小さく)することもできるため、その結果、シート内を透過する光の透過面積を増やすことができ、光線透過性を向上させることができる。また、導電性構造体100を発熱体等として適用した場合には、速やかな発熱が実現されやすくなる。さらに、直径が小さい、細径の線状体を得られやすい。
【0024】
なお、導電性線状体103としては、金属ワイヤー線状体の他に、カーボンナノチューブを含む線状体、及び、糸に導電性被覆が施された線状体が挙げられる。
【0025】
金属ワイヤーとしては、例えば、銅、アルミニウム、タングステン、鉄、モリブデン、ニッケル、チタン、銀、金等の金属、又は、金属を2種以上含む合金(例えば、ステンレス鋼、炭素鋼等の鋼鉄、真鍮、りん青銅、ジルコニウム-銅合金、ベリリウム-銅合金、鉄-ニッケル合金、ニクロム、ニッケル-チタン合金、鉄-クロム-アルミ合金、ニッケル-モリブテン-クロム合金、及びレニウム-タングステン合金等)を含むワイヤーが挙げられる。また、金属ワイヤーは、錫、亜鉛、銀、ニッケル、クロム、ニッケル-クロム合金、又は、はんだ等でめっきされたものであってもよく、炭素材料又はポリマーにより表面が被覆されたものであってもよい。
【0026】
導電性線状体103の断面の形状は、特に限定されず、例えば、円形、楕円形、多角形、矩形、扁平形等であってもよいが、後述するように、ノズルを用いて製造することから、円形、楕円形であることが好ましく、円形であることがより好ましい。
【0027】
図2は、本発明の一実施形態に係る線状部材張力制御装置10を含む導電性構造体製造装置1の概略図である。
【0028】
図2に示すように、本実施形態に係る線状部材張力制御装置10は、導電性構造体100を製造する導電性構造体製造装置1に含まれる。
図1及び
図2に示すように、導電性構造体製造装置1では、基材101と粘着層102とを含む積層体104を搬送しながら(
図2に示す矢印a方向に搬送しながら)、積層体104の粘着層102の表面上に、導電性線状体103となる導電性材料(線状部材)103aを射出ノズル2から射出することによって、導電性線状体103を粘着層102の表面上に形成する。
【0029】
積層体104は、例えば、抑えローラー(バックローラー)3やガイドローラー4,5等の複数のローラーに支持された状態で搬送される。導電性材料103aは、積層体104のうち抑えローラー3に支持される領域に向かって射出ノズル2から射出される。なお、抑えローラー3に代えて抑えプレート(バックプレート)を設け、係る抑えプレート上で搬送されている積層体104に向かって導電性材料103aを射出ノズル2から射出してもよい。
【0030】
射出ノズル2を積層体104の幅方向(
図1に矢印Xで示す方向)に沿って移動させながら、積層体104の粘着層102の表面上に向けて、導電性材料103aを射出ノズル2から射出することによって、粘着層102の表面上に波形状の導電性線状体103を形成させることが好ましい。射出ノズル2を積層体104の幅方向Xに往復又は摺動させることにより、波形状の導電性線状体103を粘着層102の表面上に形成することができる。
【0031】
射出ノズル2から射出される導電性材料103aは、導電性を有する線状部材(線状の部材)であって、積層体104の粘着層102の表面上に配置されることにより導電性線状体103となる。導電性材料103aは、線状部材張力制御装置10側から繰出しローラー6によって繰り出されて(
図2に示す矢印b方向に繰り出されて)射出ノズル2側へ案内される。導電性材料103aの断面視における直径(外径)は、0.005mm以上0.2mm以下であることが好ましい。なお、本実施形態では、導電性材料103aを繰出しローラー6によって繰り出す構成としたが、これに限定されるものではなく、例えば、導電性材料103aを粘着層102によって固着した状態で抑えローラー3を駆動することによって、導電性材料103aを搬送しても(繰り出しても)よい。
【0032】
図3は、
図2を矢印III方向から視た線状部材張力制御装置10の上面図である。
図4は、線状部材張力制御装置10の斜視図である。
図5は、ボビン11の側面図である。
図6は、ボビン11の斜視図である。
図7は、
図5のVII-VII矢視断面図である。
【0033】
図2~
図7に示すように、線状部材張力制御装置10は、射出ノズル2側へ繰り出される導電性材料103aの張力を制御可能な装置であって、複数(本実施形態では4つ)のボビン11と、各ボビン11に対応する複数(本実施形態では4つ)のエアーノズル(エアー噴出部)12とを備える。すなわち、線状部材張力制御装置10は、複数組(本実施形態では4組)のボビン11及びエアーノズル12を備える。複数のエアーノズル12には、1つの共通のエアー供給源17からエアーが供給される。本実施形態では、線状部材張力制御装置10は、ボビン11と繰出しローラー6との間の導電性材料103aの張力が0.1N以上1.0N以下となるように、導電性材料103aの張力を制御する。なお、複数組のボビン11及びエアーノズル12はそれぞれ略同じ構成を有するので、以下では一組のボビン11及びエアーノズル12について説明し、残りのボビン11及びエアーノズル12の説明を省略する。
【0034】
図4~
図7に示すように、ボビン11は、射出ノズル2側へ繰り出される前の導電性材料103aを巻き付けておくための部材であって、支持部材13の所定方向に延びる軸棒13aに回転可能に支持される。すなわち、本実施形態では、支持部材13の軸棒13aの軸心が、ボビン11の所定方向に延びる回転軸CLとなる。ボビン11は、導電性材料103aを巻回可能に形成される。ボビン11を整形する材料としては、金属やプラスチック等が挙げられる。特に、軽量化の観点から、ボビン11は、プラスチック製であることが好ましく、炭素繊維(カーボンファイバー)を強化材として加えた炭素繊維強化プラスチック製であることが更に好ましい。
【0035】
ボビン11は、回転軸CLを中心として支持部材13の軸棒13aに回転可能に支持される略円筒状のボビン軸部14と、ボビン軸部14よりも大径の略筒状に形成されてボビン軸部14の径方向の外側に配置されるボビン外筒部15と、ボビン外筒部15の径方向の内側に配置される複数(本実施形態では6つ)の羽根部16とを一体的に有する。
【0036】
ボビン軸部14は、略円筒状に形成され、その内径部分には、支持部材13の軸棒13aが挿通している。ボビン軸部14は、回転し易さの観点から、軸受24(
図7参照)を介して支持部材13の軸棒13aに回転可能に支持される。
【0037】
ボビン外筒部15は、導電性材料103aを巻回可能な外周面15aを有し、ボビン軸部14と同軸となるように配置され、ボビン軸部14に対して固定的に設けられる。ボビン外筒部15は、上記所定方向の両側に開口18を有する。図面には一方の開口18のみが図示されている。ボビン外筒部15の内径側には、開口18から上記所定方向の内側へ延びる内周面19によって空間20が区画される。ボビン外筒部15の内径側の空間20(以下、単に「ボビン外筒部15の空間20」という。)は、ボビン軸部14の周囲に設けられ、開口18によって上記所定方向の外側(一側)へ開口している。ボビン外筒部15のうち導電性材料103aを巻回する領域の外径は、特に限定されないが、5mm以上200mm以下であることが好ましい。なお、上記所定方向の内側とは、ボビン11の上記所定方向の中心へ向かう方向を意味し、上記所定方向の外側とは、ボビン11の上記所定方向の中心から離間する方向を意味する。
【0038】
複数の羽根部16は、ボビン外筒部15の空間20のうちボビン軸部14の周囲に配置される。すなわち、複数の羽根部16は、回転軸CLの周囲に配置される。複数の羽根部16としては、ピッチドパドル型やプロペラ型の羽根部16が挙げられる。本実施形態では、プロペラ型の羽根部16について説明する。
【0039】
複数の羽根部16は、扇形の平板状にそれぞれ形成される。本実施形態では、複数の羽根部16は、ボビン外筒部15の空間20のうち上記所定方向の外端部に配置される。複数の羽根部16の径方向の外側には、ボビン外筒部15の上記所定方向の外端縁部22が全周域に亘って設けられる。複数の羽根部16は、回転軸CLを中心として回転軸CLの周囲に周方向に並んで配置される。各羽根部16の間にはエアーが上記所定方向の内側へ抜けることが可能な隙間23が設けられる(
図6参照)。複数の羽根部16の上記所定方向の外側の外側面(一側の面)は、平面状に形成され、上記所定方向に対して傾斜する傾斜面(外側面)21となっている。すなわち、本実施形態では、ボビン11は、回転軸CLの周囲に配置されて上記所定方向に対して傾斜した状態で上記所定方向の外側(一側)を向く傾斜面21を有し、係る傾斜面21は、平面状に形成されて、空間20内に配置され、回転軸CLを中心として回転軸CLの周囲に周方向に並ぶように複数設けられる。複数の羽根部16は、それぞれ周方向の同じ方向に向かって傾斜している。複数の羽根部16の傾斜面21の傾斜方向は、周方向の所定の位置から、導電性材料103aを射出ノズル2側(矢印b側)へ繰り出す際のボビン11の回転方向(矢印cの方向)へ向かうほど上記所定方向の内側に位置するように傾斜している。すなわち、複数の羽根部16の傾斜面21は、後述するエアーノズル12からエアーを受けた際に、エアーからの圧力がボビン11に対して、導電性材料103aを繰り出す回転方向とは反対方向(白抜き矢印dの方向)に作用するように上記所定方向に対して傾斜している。
【0040】
複数の羽根部16の数は、特に限定されないが、3枚以上6枚以下であることが好ましい。
【0041】
回転軸CLに直交する面に対する複数の羽根部16の傾斜面21の角度は、特に限定されないが、15deg以上60deg以下であることが好ましく、それぞれ同じ角度に設定される。
【0042】
複数の羽根部16の傾斜面21の表面粗さRa(JIS B 0601(2001)で規定される算術平均粗さ(Ra))は、1μm以上であることが好ましい。
【0043】
エアーノズル12は、ボビン11に対して上記所定方向の外側からエアーを噴出可能なノズルであって、ボビン11から上記所定方向の外側へ離間した位置に配置される。エアーノズル12には、エアー供給源17からエアーが供給される。エアーノズル12に供給されたエアーは、エアーノズル12から上記所定方向の内側のボビン11の外側面に向かって噴出される。本実施形態では、エアーは、エアーノズル12から回転軸CLの軸方向に沿って上記所定方向の内側へ噴出される。
【0044】
ボビン11の外側面のうちエアーノズル12の先端が対向する位置は、特に限定されないが、ボビン11の回転軸CLよりも径方向の外側、かつボビン11の外周縁部よりも径方向の内側が好ましい。本実施形態では、ボビン11の外側面のうちエアーノズル12の先端が対向する位置は、ボビン軸部14よりも径方向の外側、かつボビン11の外周縁部よりも径方向の内側に配置される(
図2参照)。これにより、複数の羽根部16の傾斜面21にエアーを吹き付けることができるとともに、導電性材料103aへのエアーの当たりを抑えることができる。
【0045】
エアーノズル12の先端直径は、特に限定されないが、0.5mm以上20mm以下であることが好ましい。ここでいうエアーノズル12の先端直径とは、エアーノズル12の先端の最大外径をいう。
【0046】
エアーノズル12からのエアーの風速は、特に限定されないが、0.1m/s以上500m/s以下であることが好ましい。
【0047】
上記のように構成された線状部材張力制御装置10では、エアーノズル12からボビン11に向かってエアーを噴出すると、エアーがボビン11の傾斜面21に当たり、エアーからの圧力がボビン11に対して、導電性材料103aを繰り出す回転方向とは反対方向に作用する。このため、ボビン11と繰出しローラー6との間の導電性材料103aの張力が低下しそうになっても、エアーからの圧力が導電性材料103aを繰り出す回転方向とは反対方向にボビン11に作用しているので、ボビン11と繰出しローラー6との間の導電性材料103aの張力の低下を抑えることができる。
【0048】
また、ボビン11には、回転軸CLの周囲に配置されて上記所定方向の外側を向く傾斜面21(複数の羽根部16の外側面)が設けられ、係る傾斜面21は、エアーノズル12からエアーを受けた際に、エアーからの圧力がボビン11に対して、導電性材料103aを繰り出す回転方向とは反対方向に作用するように上記所定方向に対して傾斜している。このため、エアーによってボビン11に微小なトルクを与えて、導電性材料103aを微小な張力で制御することができるので、導電性材料103aの張力の急激な上昇を抑えることができ、導電性材料103aの破断を防止することができる。例えば、導電性材料103aの張力を、ダンサロールによって制御する場合や、モータ等によるボビン11のトルク調節によって制御する場合とは異なり、ダンサロールの慣性抵抗や、ボビン11のブレーキ等による導電性材料103aの張力の瞬間的な上昇を回避することができ、エアーによって導電性材料103aを微小な張力で制御して、導電性材料103aの破断を防止することができる。
【0049】
また、導電性材料103aの張力をエアーによって制御するので、仮に導電性材料103aの張力が瞬間的に上昇する場合であっても、エアーによる緩やかな応答がクッションとなり、導電性材料103aの破断を抑えることができる。
【0050】
また、ボビン11に設けた傾斜面21が上記所定方向(回転軸CLの軸方向)の外側を向いており、係る傾斜面21に向かって回転軸CLの軸方向に沿ってエアーを噴出する。このため、回転軸CLに直交する面に対する複数の羽根部16の傾斜面21の角度を同じ角度にするなどして、エアーを受ける部分のエアーを受ける方向(回転軸CLの軸方向)に対する傾斜面21の角度を略同じ角度にすることができる。これにより、ボビン11に与える圧力の変動を抑えることができ、導電性材料103aの張力の変動を抑えることができる。
【0051】
また、ボビン11に設けた傾斜面21は、平面状に形成されるので、エアーを受ける部分のエアーを受ける方向に対する傾斜面21の角度を同じ角度にすることができ、ボビン11に与える圧力の変動を抑えて、導電性材料103aの張力の変動を抑えることができる。
【0052】
このように、本実施形態によれば、導電性材料103aの張力の変動を抑えることができる。
【0053】
また、複数の羽根部16をボビン11に設け、複数の羽根部16の上記所定方向の外側面をボビン11の傾斜面21としている。このため、例えば、ボビン11のボビン外筒部15の開口18を塞ぐ閉止板を設け、係る係止板の外側面に傾斜面を形成する場合とは異なり、複数の羽根部16をボビン11に設けるという簡単な構成で、ボビン11に傾斜面21を設けることができる。
【0054】
また、ボビン11の傾斜面21は、ボビン外筒部15の空間20内に配置されるので、傾斜面21をボビン外筒部15の空間20よりも上記所定方向の外側に配置する場合とは異なり、ボビン11の上記所定方向の長さを抑えることができ、ボビン11をコンパクトにすることができる。
【0055】
また、各羽根部16の間にはエアーが上記所定方向の内側へ抜けることが可能な隙間23が設けられるので、羽根部16に当たったエアーの上記所定方向の外側への戻りを抑えることができる。このため、エアーを効率よく利用して、導電性材料103aの張力の制御を行うことができる。
【0056】
また、複数の羽根部16の径方向の外側には、ボビン外筒部15の上記所定方向の外端縁部22が全周域に亘って設けられるので、径方向の外側へのエアーの抜けを防止することができる。このため、エアーを効率よく利用して、導電性材料103aの張力の制御を行うことができる。
【0057】
また、ボビン11(本実施形態ではボビン軸部14)は軸受24を介して支持部材13の軸棒13aに回転可能に支持される。このため、軸受24を介さない場合とは異なり、エアーによる導電性材料103aの張力の応答性を向上させることができる。
【0058】
また、ボビン11がプラスチック製であるので、金属製である場合とは異なり、ボビン11の軽量化を図ることができ、エアーによる導電性材料103aの張力の応答性を向上させることができる。ボビン11が炭素繊維強化プラスチック製である場合には、更にボビン11の軽量化を図ることができ、エアーによる導電性材料103aの張力の応答性を向上させることができる。
【0059】
また、ボビン11の傾斜面21の表面粗さRaを、1μm以上にすることによって、複数の羽根部16の摩擦抵抗を増やすことができるので、エアーを効率よく利用して、導電性材料103aの張力の制御を行うことができる。
【0060】
また、複数のボビン11のそれぞれに対して対応する複数のエアーノズル12を設け、複数のエアーノズル12には、1つの共通のエアー供給源17からエアーが供給される。このため、共通のエアー供給源17から複数のボビン11の導電性材料103aに対して張力を与えることができるので、各ボビン11毎にモータ等のアクチュエータを設けて配線を行う場合とは異なり、簡単な構成で効率よく複数のボビン11の導電性材料103aの張力を制御することができる。
【0061】
また、ボビン11の外径を、5mm以上200mm以下にすることによって、導電性材料103aに十分な張力を与えるために必要な風速を、エアー供給源17で制御し易い範囲に抑えることができる。
【0062】
また、羽根部16の枚数を3枚以上6枚以下にすることによって、上記所定方向の内側へエアーが抜けることが可能な隙間23を各羽根部16の間に確保しつつ、ボビン11に与えられるトルクを安定させることができる。
【0063】
また、羽根部16の傾斜面21の角度を15deg以上60deg以下にすることによって、エアーが羽根部16に与える圧力を、ボビン11を回転させるトルクへと効率的に伝達することができる。
【0064】
また、エアーノズル12の先端直径を0.5mm以上20mm以下にすることによって、エアー供給源17から供給されるエアーの風速を適度な範囲に維持しつつ、ボビン外筒部15の空間20に限定してエアーを噴出することができる。
【0065】
また、エアーの風速を0.1m/s以上500m/s以下にすることによって、ボビン11の慣性抵抗や、ボビン11と軸部14との摩擦抵抗によるトルクの損失を抑えつつ、また、導電性材料103aを破断せずに繰り出すことができる。
【0066】
なお、本実施形態では、支持部材13に軸棒13aを設けたが、支持部材13はこれに限定されるものではなく、ボビン11を回転可能に支持するものであれば、他の構成であってもよい。
【0067】
また、本実施形態では、ボビン11を、ボビン軸部14とボビン外筒部15と複数の羽根部16とによって構成したが、ボビン11の構成はこれに限定されるものではなく、少なくとも、導電性材料103aを巻回可能であり、エアーを受けた際にエアーからの圧力をボビン11に対して導電性材料103aを繰り出す回転方向とは反対方向に作用させる傾斜面21を有していればよい。
【0068】
また、本実施形態では、複数の羽根部16を扇形に形成したプロペラ型の羽根部16としたが、これに限定されるものではなく、例えば、矩形状に形成したピッチドパドル型の羽根部16としてもよい。
【0069】
また、本実施形態では、ボビン11に複数の羽根部16を設け、複数の羽根部16の上記所定方向の外側面を傾斜面21として機能させたが、これに限定されるものではなく、複数の羽根部16を設けることなく、ボビン11に傾斜面21を設けてもよい。例えば、上述したように、ボビン11のボビン外筒部15の開口18を塞ぐ閉止板を設け、係る係止板の外側面に傾斜面を形成してもよい。
【0070】
また、本実施形態では、ボビン11に複数の傾斜面21を設けたが、これに限定されるものではなく、例えば、ボビン軸部14の周囲の空間20の周方向の所定の位置から、導電性材料103aを繰り出す回転方向へ向かうほど上記所定方向の内側へ延び、ボビン軸部14の周囲を1回転する1つの傾斜面を設けてもよい。
【0071】
以上、本発明について、上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではなく、当然に本発明を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0072】
10:線状部材張力制御装置
11:ボビン
12:エアーノズル(エアー噴出部)
13:支持部材
16:複数の羽根部
17:エアー供給源
20:空間
21:傾斜面
24:軸受