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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023105956
(43)【公開日】2023-08-01
(54)【発明の名称】バイオセンサ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/28 20060101AFI20230725BHJP
【FI】
G01N27/28 301Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022007022
(22)【出願日】2022-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141955
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100085419
【弁理士】
【氏名又は名称】大垣 孝
(72)【発明者】
【氏名】小野 英輝
(57)【要約】
【課題】小型化、低価格化が容易な、半導体CMOSプロセスで製造可能である、バイオセンサを提供する。
【解決手段】支持層と、第1凹部22及び第2凹部24を有する、支持層上に形成された絶縁層20と、第1凹部の底面上、及び、絶縁層内に、第1凹部から第2凹部にわたって形成された光触媒層30と、第1凹部内に、光触媒層と分離して形成された第1電極42と、第2凹部内に、光触媒層と接触して形成された第2電極44とを備えて構成される。第1凹部内に生体試料が充填され、光触媒層に、特定の波長の光が入射され、入射された光による電荷分離により生じる第1電極及び第2電極間の電流又は電位差が測定される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持層と、
互いに離間した領域に形成された第1凹部及び第2凹部を有する、前記支持層上に形成された絶縁層と、
前記第1凹部の底面上、及び、前記絶縁層内に、前記第1凹部から前記第2凹部にわたって形成された光触媒層と、
前記第1凹部内に、前記光触媒層と分離して形成された第1電極と、
前記第2凹部内に、前記光触媒層と接触して形成された第2電極と
を備え、
前記第1凹部内に生体試料が充填され、
前記光触媒層に、特定の波長の光が入射され、
前記第1電極及び第2電極間の電流又は電位差が測定される
ことを特徴とするバイオセンサ。
【請求項2】
前記光触媒層が、多孔質性である
ことを特徴とする請求項1に記載のバイオセンサ。
【請求項3】
前記特定の波長の光が、前記第1凹部の上方から、前記光触媒層に入射される
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のバイオセンサ。
【請求項4】
前記特定の波長の光が、
前記第1凹部が形成された領域外の上方から前記絶縁層に入射され、
前記絶縁層と前記支持層の境界で反射して、
前記第1凹部の下方から、前記光触媒層に入射される
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のバイオセンサ。
【請求項5】
前記特定の波長の光が、前記第1凹部の下方から、前記支持層及び前記絶縁層を経て、光触媒層に入射される
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のバイオセンサ。
【請求項6】
前記支持層と、前記支持層上に形成された第1絶縁層を備える支持基板の上面上の一部領域に、光触媒層を形成する工程と、
前記支持基板の上面に、前記光触媒層を覆う第2絶縁層を形成する工程と、
前記第1絶縁層及び前記第2絶縁層からなる絶縁層に、前記光触媒層の一部領域が底面上に露出した第1凹部と、前記第1凹部とは離間した領域に前記光触媒層の一部領域が露出した第2凹部を形成する工程と、
前記第1凹部内に、前記光触媒層と分離した第1電極を形成する工程と、
前記第2凹部内に、前記光触媒層と接触した第2電極を形成する工程と
を備えることを特徴とするバイオセンサの製造方法。
【請求項7】
さらに、
前記光触媒層を陽極酸化する工程
を備えることを特徴とする請求項6に記載のバイオセンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バイオセンサ、特に半導体製造プロセスで製造可能なバイオセンサ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
唾液、汗、尿、血液等の生体試料に含まれている特定の成分について迅速かつ簡便に濃度等を定量するセンサとして、酵素反応と電気化学反応を組み合わせて利用するバイオセンサが広く用いられている。このようなバイオセンサの一例として、電気化学反応を用いて血液中のグルコース濃度を測定するグルコースセンサがある。
【0003】
グルコースセンサは、作用極及びその対極を備える電極系と、酵素及び電子受容体の基材系とを基本構成としている。酵素は、血液中のグルコースを選択的に酸化してグルコン酸を生成し、同時に電子受容体を還元して還元体を生じさせる。この還元体に対して電極系から一定の電圧を印加して、還元体を再び酸化することで、外部回路へ電流を出力させることができる。この出力される電流が血液中のグルコース濃度に依存することから、血液中のグルコース濃度を同定することができる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
上述のバイオセンサは、特許文献1に記載されているように、第1の基材の絶縁性を有する表面上に接着層を形成し、接着層に金属箔を貼合し、金属箔をパターニングして下部電極層と、下部電極層に一体で構成された配線部とを形成し、下部電極層の上部表面にカーボンを含む上部電極層を形成して、作用極及び対極を含む電極系を形成することにより作製されている。このような製造方法は、半導体集積回路の製造に用いられているCMOS(Complementary-Metal-Oxide-Semiconducor)プロセスに則っていない。このため、上述した従来のバイオセンサは半導体集積回路のように小型化して大量に安価に生産することは困難である。
【0005】
一方、半導体製造プロセスで製造されているセンサとして、ガスセンサが広く研究され、実用化が進められている(例えば、非特許文献1参照)。非特許文献1に記載のガスセンサは、スパッタリングにより石英基板上にチタン薄膜を堆積し、チタン薄膜をフォトリソグラフィによりパターニングすることによりTi金属薄膜細線を形成し、そのTi金属薄膜細線の一部領域以外をSiO膜で保護し、SiO膜のない領域のみを局所的に陽極酸化し、多孔質光触媒層を形成することにより作製されている。このガスセンサでは、陽極酸化されていない部分が対向する電極となる。多孔質光触媒層の抵抗値を両電極間で測定し、多孔質光触媒層部へのガス吸着による膜抵抗変化からガスを検知する仕組みになっている。上述したガスセンサでは、スパッタリング、フォトリソグラフィ、SiO膜堆積、陽極酸化と、全て一般的な半導体製造プロセスで製造が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012-58168号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】表面技術,Vol.69,No.12,2018,pp.605-608
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように従来のバイオセンサは酵素反応と電気化学反応を用いたものがほとんどで半導体CMOSプロセスを整合せず、小型化、低価格化が困難だった。一方、半導体CMOSプロセスで製造可能なセンサは、TiO光触媒作用を利用したガスセンサがほとんどである。このため、半導体CMOSプロセスで製造可能なバイオセンサが求められていた。
【0009】
この発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものである。この発明の目的は、半導体CMOSプロセスで製造可能なバイオセンサ及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した目的を達成するために、この発明のバイオセンサは、支持層と、互いに離間した領域に形成された第1凹部及び第2凹部を有する、支持層上に形成された絶縁層と、第1凹部の底面上、及び、絶縁層内に、第1凹部から第2凹部にわたって形成された光触媒層と、第1凹部内に、光触媒層と分離して形成された第1電極と、第2凹部内に、光触媒層と接触して形成された第2電極とを備えて構成される。第1凹部内に生体試料が充填され、光触媒層に、特定の波長の光が入射され、入射された光による電荷分離により生じる第1電極及び第2電極間の電流又は電位差が測定される。
【0011】
この発明のバイオセンサの好適実施形態によれば、光触媒層が、多孔質性である。なお、この発明のバイオセンサの実施に当たり、特定の波長の光が、第1凹部の上方から、光触媒層に入射される構成にすることができる。また、特定の波長の光が、第1凹部が形成された領域外の上方から絶縁層に入射され、絶縁層と支持層の境界で反射して、第1凹部の下方から、光触媒層に入射される構成にすることができる。また、特定の波長の光が、第1凹部の下方から、支持層及び絶縁層を経て、光触媒層に入射される構成にすることもできる。
【0012】
また、この発明のバイオセンサの製造方法は、以下の工程を備えて構成される。先ず、支持層と、支持層上に形成された第1絶縁層を備える支持基板の上面上の一部領域に、光触媒層を形成する。次に、支持基板の上面に、光触媒層を覆う第2絶縁層を形成する。次に、第1絶縁層及び第2絶縁層からなる絶縁層に、光触媒層の一部領域が底面上に露出した第1凹部と、第1凹部とは離間した領域に光触媒層の一部領域が露出した第2凹部を形成する。次に、第1凹部内に、光触媒層と分離した第1電極を形成し、第2凹部内に、光触媒層と接触した第2電極を形成する。
【0013】
この発明のバイオセンサの製造法の好適実施形態によれば、さらに、光触媒層を陽極酸化して多孔質性に改変する工程を有する。
【発明の効果】
【0014】
この発明のバイオセンサは、小型化、低価格化が容易な、半導体CMOSプロセスで製造可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1バイオセンサを上方からみた、模式的な平面図である。
図2図1のA-A線及びB-B線に沿って切った切断端面を示す図である。
図3】第1バイオセンサの動作を説明するための模式図である。
図4】第1バイオセンサの製造方法を説明するための概略図である。
図5】第2バイオセンサの製造方法を説明するための概略図である。
図6】第3バイオセンサの動作を説明するための模式図である。
図7】第4バイオセンサの動作を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図を参照して、この発明の実施の形態について説明するが、各構成要素の形状、大きさ及び配置関係については、この発明が理解できる程度に概略的に示したものに過ぎない。また、以下、この発明の好適な構成例につき説明するが、各構成要素の材質及び数値的条件などは、単なる好適例にすぎない。従って、この発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、この発明の構成の範囲を逸脱せずにこの発明の効果を達成できる多くの変更又は変形を行うことができる。
【0017】
(第1実施形態)
図1及び2を参照して、この発明の第1実施形態に係るバイオセンサ(以下、第1バイオセンサとも称する。)の構成を説明する。図1は、第1バイオセンサを上方からみた、模式的な平面図である。図2(A)は、図1のA-A線に沿って切った切断端面を示す図である。また、図2(B)は、図1のB-B線に沿って切った切断端面を示す図である。
【0018】
第1バイオセンサは、支持層10、絶縁層20、光触媒層30、第1電極42及び第2電極44を備えて構成される。
【0019】
支持層10として、例えば、厚さ775μmのシリコン(Si)基板を用いることができる。
【0020】
絶縁層20は、支持層10の上面全面上に形成されている。絶縁層20は、例えば、厚さ5μmの酸化シリコン(SiO)で形成されたSiO層である。絶縁層20には、互いに離間した領域に、第1凹部22及び第2凹部24が形成されている。第1凹部22及び第2凹部24の深さは、例えば、500nmである。
【0021】
光触媒層30は、第1凹部22の底面20a上に形成されている。光触媒層30は、第1凹部22の底面20a上だけでなく、絶縁層20内に、第1凹部22から第2凹部24にわたって形成されている。
【0022】
ここでは、光触媒層30を形成する材料として酸化チタン(TiO)を用いる例を説明するが、光触媒層30の材料はTiOに限定されない。光触媒層30の材料として、酸化タングステン(WO)を使用することもできる。
【0023】
第1電極42は、第1凹部22内に露出して形成されている。また、第1電極42は、光触媒層30と分離して形成されている。第1電極42の材料として、例えば、アルミニウム(Al)を用いることができる。この第1電極42は、正極として機能する。第1電極42は、絶縁層20の上面20bから露出して形成されていて、外部電気回路と電気的に接続可能である。
【0024】
第2電極44は、第2凹部24内に形成されている。また、第2電極44は、光触媒層30と接触して形成されている。第2電極44の材料として、第1電極42と同様に、例えば、アルミニウム(Al)を用いることができる。この第2電極42は、負極として機能する。第2電極44は、絶縁層20の上面20bから露出して形成されていて、外部電気回路と電気的に接続可能である。
【0025】
図3を参照して、第1バイオセンサの動作について説明する。図3は、第1バイオセンサの動作を説明するための模式図である。第1バイオセンサの基本的な動作原理は、一般に、光燃料電池と呼ばれるデバイスと同様である。
【0026】
第1電極42と第2電極44は、外部電気回路90に電気的に接続されている。
【0027】
第1凹部22に、唾液、汗、尿、血液等の生体試料80を充填し、第1凹部22の上部から紫外線波長帯の入射光100を入射する。入射光100は、生体試料80を透過して光触媒層30に入射される。
【0028】
光触媒層30では、紫外線の入射による電荷分離により、正孔(h+)と電子(e-)が生成される。
【0029】
正孔(h+)は、第1凹部22内の生体試料80中に溶解している、電子供与体である被測定物質82などを酸化的に分解する。
【0030】
一方、電子(e-)は光触媒層30から負極である第2電極44を経由して外部電気回路90を通って正極である第1電極42に移動し、生体試料80中の酸素を水に還元する。
【0031】
これにより、正極である第1電極42と負極である第2電極44の間に起電力が生じ、第1電極42と第2電極44を電気的に接続する外部電気回路90に電流が流れる。外部電気回路90を流れる電流や、第1電極42と第2電極44の間の電位差を測定することで、第1凹部22に充填した生体試料80の被測定物質82の濃度を定量できる。
【0032】
図4を参照して、第1バイオセンサの製造方法の一例を説明する。図4は、第1バイオセンサの製造方法の一例を説明するための概略図である。図4は、図1のA-A線に沿って切った切断端面に対応する面を示している。
【0033】
先ず、支持層10と、支持層10上に形成された第1絶縁層26を備える支持基板の上面上の一部領域に、光触媒層を形成する。
【0034】
ここでは、支持層10がSi層であり、第1絶縁層26がSiO層である例を示している。支持基板は、Si基板を熱酸化して形成してもよいし、例えば化学気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)法によりSi基板上にSiOを堆積させて形成してもよい。
【0035】
支持基板が備える第1絶縁層26の上面上に、Ti膜を例えばスパッタリングにより成膜する。その後、Ti膜をフォトリソグラフィ及びウェットエッチングによりパターニングして、支持基板の上面上の一部領域に、Ti膜30aを残存させる(図4(A)参照)。
【0036】
次に、例えば、酸素雰囲気中にて400℃でアニールすることで、Ti膜30aを光触媒層30に変化させる(図4(B))。
【0037】
次に、支持基板の上面に、光触媒層30を覆う第2絶縁層27を形成する。第2絶縁層27は、第1絶縁層27上に、CVD法によりSiOを堆積させて形成される。第1絶縁層26及び第2絶縁層27が、第1バイオセンサの絶縁層20を構成する。
【0038】
次に、例えば、フォトリソグラフィとドライエッチングにより絶縁層をパターニングして、第1凹部22と第2凹部24を形成する(図4(C))。第1凹部22と第2凹部24は、離間した領域に形成される。第1凹部22の底面上の一部領域には、光触媒層30の一部領域が露出している。また、第2凹部24の底面上には、光触媒層30の一部領域が露出している。なお、第2凹部24については、その後、第2凹部24内に光触媒層30に接触して第2電極が形成できるように光触媒層30が露出されればよい。各図では、
第2凹部24の底面全体にわたって、光触媒層30が形成されている例を示しているが、光触媒層30は第2凹部24の底面上に形成されていなくてもよい。例えば、光触媒層30が第2凹部24の側面に露出して形成されてもよい。この第2凹部24は、いわゆる、コンタクトホールである。
【0039】
次に、第1凹部22内に、光触媒層30と分離した第1電極42を形成し、第2凹部24内に、光触媒層30と接触した第2電極44を形成する(図4(D))。第1電極42及び第2電極44は、例えば、Alをスパッタリングにより成膜したのち、フォトリソグラフィとウェットエッチングによりパターニングすることにより形成される。
【0040】
以上説明した工程により、第1バイオセンサを製造することができる。なお、ここで説明した製造方法は一例であり、これに限定されない。第1バイオセンサは、任意好適な従来公知の技術を用いて製造することもできる。
【0041】
以上説明したように、第1バイオセンサは、半導体CMOSプロセスにより製造可能である。このため、バイオセンサの小型化、低価格化が期待できる。
【0042】
(第2実施形態)
この発明の第2実施形態に係るバイオセンサ(以下、第2バイオセンサとも称する。)について説明する。第2バイオセンサは、第1バイオセンサと比較して、光触媒層が多孔質性になっていることが異なる。その他の構成及び動作は、第1バイオセンサと同じであるので、説明を省略する。
【0043】
図5を参照して、この発明の第2実施形態に係るバイオセンサ(以下、第2バイオセンサとも称する。)の製造方法を説明する。図5は、第2バイオセンサの製造方法の一例を説明するための工程図である。図5は、図1のA-A線に沿って切った切断端面に対応する面を示している。
【0044】
第2バイオセンサの製造方法は、図4を参照して説明した第1バイオセンサの製造方法に続いて、光触媒層を多孔質性に改変する構成を備える。
【0045】
先ず、図4を参照した製造方法により製造された第1バイオセンサに対して、第1電極42及び第2電極44をフォトレジスト110で覆う(図5(A))。
【0046】
次に、露出した光触媒層30に対して陽極酸化を実施する。これにより、光触媒層30が多孔質性の光触媒層32に改変される。その後、第1電極42及び第2電極44を覆うフォトレジスト110を除去する(図5(B))。
【0047】
以上説明した工程により、第2バイオセンサを製造することができる。
【0048】
第2バイオセンサによれば、第1バイオセンサと同様の効果が得られる。また、第2バイオセンサでは、光触媒層32が多孔質性であることにより、光触媒層32の表面積が増える。このため、第1バイオセンサよりも多くの被測定物質が吸着するようになる。この結果、第2バイオセンサは、第1バイオセンサよりも大きな起電力を、第1電極42と第2電極44の間に効率良く発生させることができる。さらに、陽極酸化の条件によっては、光触媒層32に規則正しく配列された直径数nmのナノホールを形成することができる。このため、ナノホールの直径の大きさに合った分子を選択的に吸着することができるようになる。この結果、酵素反応を利用したバイオセンサと同等の物質選択性を有することができ、生体試料の特定の成分だけの濃度を定量することができるようになる。
【0049】
(第3実施形態)
この発明の第3実施形態に係るバイオセンサ(以下、第3バイオセンサとも称する。)について説明する。第3バイオセンサは、第1バイオセンサと比較して、入射光の経路が異なっている。その他の構成、製造方法及び動作は、第1バイオセンサと同様であるので、重複する説明を省略することもある。
【0050】
図6を参照して、第3バイオセンサの動作について説明する。図6は、第3バイオセンサの動作を説明するための模式図である。第3バイオセンサの基本的な動作原理は、第1バイオセンサと同じである。図6(A)は、第1バイオセンサを示し、図6(B)は、第3バイオセンサを示している。
【0051】
第1バイオセンサでは、入射光100は、第1凹部22の上部から、生体試料80を透過して光触媒層30に入射される(図6(A))。
【0052】
これに対し、第3バイオセンサでは、入射光101は、第1凹部22が形成されている領域外の絶縁層20の上面20bから入射される(図6(B))。入射光101は、絶縁層20と支持層10の境界、すなわち、支持層10の上側表面で反射して、第1凹部22の下方から、光触媒層30に入射される。
【0053】
第3バイオセンサによれば、第1バイオセンサと同様の効果が得られる。また、第3バイオセンサでは、入射光101が第1凹部22の底面上に形成されている光触媒層30の下側から入射する。このため、生体試料80が紫外線領域で不透明な材料である場合でも光触媒である光触媒層30へ効率的に入射光を入射することができ、より正確に生体試料の成分濃度を定量することができる。
【0054】
また、第2バイオセンサについて、第3バイオセンサと同様の方向から入射光を入射させる構成にすることもできる。
【0055】
(第4実施形態)
この発明の第4実施形態に係るバイオセンサ(以下、第4バイオセンサとも称する。)について説明する。構成、動作及び製造方法について、第1バイオセンサと重複する説明を省略することもある。
【0056】
図7を参照して、第4バイオセンサの動作について説明する。図7は、第4バイオセンサの動作を説明するための模式図である。第4バイオセンサの基本的な動作原理は、第1バイオセンサと同じである。
【0057】
第4バイオセンサでは、入射光102は、第1凹部22が形成されている領域の下側から、支持層11及び絶縁層20を経て入射される。この場合、支持層11を構成する材料として、Siではなく、紫外線を透過するガラスなどが用いられる。
【0058】
第4バイオセンサによれば、第3バイオセンサと同様の効果が得られる。また、第2バイオセンサについて、第4バイオセンサと同様の方向から入射光を入射させる構成にすることもできる。
【符号の説明】
【0059】
10 支持層
20 絶縁層
22 第1凹部
24 第2凹部
26 第1絶縁層
27 第2絶縁層
30、32 光触媒層
30a Ti膜
42 第1電極
44 第2電極
80 生体試料
82 被測定物質
90 外部電気回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7