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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023105957
(43)【公開日】2023-08-01
(54)【発明の名称】制振装置
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/02 20060101AFI20230725BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20230725BHJP
   F16F 15/023 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
E04H9/02 351
F16F15/02 L
F16F15/023 A
F16F15/02 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022007023
(22)【出願日】2022-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】小松原 知将
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 康人
【テーマコード(参考)】
2E139
3J048
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139AB03
2E139AB11
2E139AC19
2E139BA12
2E139BA19
2E139BC02
2E139BD24
3J048AA06
3J048AB01
3J048AC01
3J048AC04
3J048BE03
3J048BE12
3J048CB21
3J048EA38
(57)【要約】
【課題】柱梁架構内に窓や出入口などの開口部を簡単に設ける上で有利な制振装置を提供すること。
【解決手段】下側の梁B1に対して上側の梁B2が水平方向に変位すると、第2アーム10Bが上部ピン22と第2長溝1006を介してリンク支軸18を支点として揺動することから、ダンパーピン20と第1長溝1004を介してこの揺動と一体に第1アーム10Aが揺動し、ピストンロッド802がシリンダケース801に対して出没する。すなわち、下側の梁B1に対して上側の梁B2が水平方向に変位する振動をリンク10により鉛直方向に変換し、ピストンロッド802を鉛直方向に移動させ、オイルダンパー8Aを伸縮させる。そしてこのオイルダンパー8Aの伸縮により上側の梁B2の振動が抑制され、建物の耐震性能が確保される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱梁架構内に配置される制振装置であって、
第1部材に対して第2部材が変位することで伸縮しエネルギーを吸収する制振ダンパーと、
前記柱梁架構を構成する下側の梁または前記柱梁架構内の少なくとも一部を閉塞する一対の壁で揺動可能に支持されたリンクと、を備え、
前記リンクは、前記リンクを挿通するリンク支軸によって上側の梁と前記下側の梁が連結され、
前記第1部材は、前記第2部材を上方に向けて前記下側の梁で鉛直方向に支持され、
前記リンクの一端は前記第2部材の上端に連結され、
前記リンクの他端は前記柱梁架構を構成する前記上側の梁に連結され、
前記下側の梁に対して前記上側の梁が水平方向に変位すると、前記リンク支軸を中心として前記リンクは揺動し前記制振ダンパーを伸縮させる、
ことを特徴とする制振装置。
【請求項2】
前記下側の梁上に前記第1部材を支持するダンパー支持部と一対のリンク支持部が設けられ、
前記ダンパー支持部は、一対のリンク支持部の間に設けられ、
前記上側の梁には下方に突出し前記リンクの他端が連結される上架台が設けられ、
前記一対のリンク支持部と前記ダンパー支持部と前記上架台は、平面視した場合、重ならない位置に配置され、
前記一対のリンク支持部と前記リンクは、側面視した場合、一部が重なる位置に配置され、
前記上架台と前記リンクは、側面視した場合、一部が重なる位置に配置される、
ことを特徴とする請求項1記載の制振装置。
【請求項3】
前記一対のリンク支持部は、形状が向かい合うように設けられ、
前記一対のリンク支持部の内側には、形状が向かい合うように一対の前記リンクが設けられ、
前記一対のリンクの内側には、前記第2部材の先端と前記上架台が設けられ、
ダンパーピンは、前記一対のリンク支持部、前記一対のリンク、前記第2部材の先端を挿通し、
上部ピンは、前記一対のリンク支持部、前記一対のリンク、前記記上架台を挿通し、
前記リンク支軸を中心として前記上部ピンが前記リンクを揺動可能に支持することで前記リンクは揺動しダンパーピンを介して前記制振ダンパーを伸縮させる、
ことを特徴とする請求項1または2記載の制振装置。
【請求項4】
前記リンクの一端と前記第2部材の先端との連結は、前記第2部材の先端に挿通されたダンパーピンが前記リンクに設けられた第1長溝にこの第1長溝の長手方向に移動可能に挿通されることでなされ、
前記リンクの他端と前記上側の梁との連結は、前記上架台に挿通された上部ピンが前記リンクに設けられた第2長溝にこの第2長溝の長手方向に移動可能に挿通されることでなされている、
ことを特徴とする請求項1~3の何れか1項記載の制振装置。
【請求項5】
前記第2部材の下端はダンパー支軸に揺動可能に支持されている、
ことを特徴とする請求項1~3記載の制振装置。
【請求項6】
前記一対のリンクと前記上架台の間に弾性部材が設けられている、
ことを特徴とする請求項3記載の制振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の柱梁架構内に設置される制振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の柱梁架構内に設置される制振装置として、伸縮することでエネルギーを吸収する制振ダンパーを備えるものが種々提供されており、この制振装置により地震時や強風時に生じる建物の揺れを抑制するようにしている。しかしながら、従来の制振装置では、制振ダンパーの長手方向を柱梁架構の対角線上に沿わせたり、あるいは、制振ダンパーの長手方向を水平方向に延在させて制振装置を設置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-32015号公報
【特許文献2】特開2010-242381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そのため、従来の制振装置では、柱梁架構内で制振ダンパーが斜めや水平方向に延在するため、柱梁架構内での制振ダンパーが占有するスペースが大きくなり、柱梁架構内に窓や出入口などの開口部を簡単に設けることができない課題があった。本発明は、前記課題に鑑み案出されたものであって、柱梁架構内に窓や出入口などの開口部を簡単に設ける上で有利な制振装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した目的を達成するために、本発明の一実施の形態は、柱梁架構内に配置される制振装置であって、第1部材に対して第2部材が変位することで伸縮しエネルギーを吸収する制振ダンパーと、前記柱梁架構を構成する下側の梁または前記柱梁架構内の少なくとも一部を閉塞する一対の壁で揺動可能に支持されたリンクと、を備え、前記リンクは、前記リンクを挿通するリンク支軸によって上側の梁と前記下側の梁が連結され、前記第1部材は、前記第2部材を上方に向けて前記下側の梁で鉛直方向に支持され、前記リンクの一端は前記第2部材の上端に連結され、前記リンクの他端は前記柱梁架構を構成する前記上側の梁に連結され、前記下側の梁に対して前記上側の梁が水平方向に変位すると、前記リンク支軸を中心として前記リンクは揺動し前記制振ダンパーを伸縮させることを特徴とする。
【0006】
また、本発明の一実施の形態は、前記下側の梁上に前記第1部材を支持するダンパー支持部と一対のリンク支持部が設けられ、前記ダンパー支持部は、一対のリンク支持部の間に設けられ、前記上側の梁には下方に突出し前記リンクの他端が連結される上架台が設けられ、前記一対のリンク支持部と前記ダンパー支持部と前記上架台は、平面視した場合、重ならない位置に配置され、前記一対のリンク支持部と前記リンクは、側面視した場合、一部が重なる位置に配置され、前記上架台と前記リンクは、側面視した場合、一部が重なる位置に配置されることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の一実施の形態は、前記一対のリンク支持部は、形状が向かい合うように設けられ、前記一対のリンク支持部の内側には、形状が向かい合うように一対の前記リンクが設けられ、前記一対のリンクの内側には、前記第2部材の先端と前記上架台が設けられ、ダンパーピンは、前記一対のリンク支持部、前記一対のリンク、前記第2部材の先端を挿通し、上部ピンは、前記一対のリンク支持部、前記一対のリンク、前記記上架台を挿通し、前記リンク支軸を中心として前記上部ピンが前記リンクを揺動可能に支持することで前記リンクは揺動しダンパーピンを介して前記制振ダンパーを伸縮させることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の一実施の形態は、前記リンクの一端と前記第2部材の先端との連結は、前記第2部材の先端に挿通されたダンパーピンが前記リンクに設けられた第1長溝にこの第1長溝の長手方向に移動可能に挿通されることでなされ、前記リンクの他端と前記上側の梁との連結は、前記上架台に挿通された上部ピンが前記リンクに設けられた第2長溝にこの第2長溝の長手方向に移動可能に挿通されることでなされていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の一実施の形態は、前記第2部材の下端は前記ダンパー支軸に揺動可能に支持されていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の一実施の形態は、前記一対のリンクと前記上架台の間に弾性部材が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一実施の形態によれば、制振ダンパーを鉛直方向に延在させて配置するので、柱梁架構内で制振ダンパーが水平方向に占有する面積は極めて小さい。そのため、柱梁架構内に省スペースで制振装置を設置でき、柱梁架構内に窓や出入口などの開口部を簡単に設ける上で有利となる。また、複数の制振ダンパーを柱梁架構内に斜めや水平方向に延在させる従来の制振装置に比べ、本発明の一実施の形態である制振装置をより多く配置することが可能となる。一対のリンク支持部は下側の梁に設けてもよく、一対の壁に設けてもよいが、一対のリンク支持部と上架台を、下側の梁の幅方向においてそれらの少なくとも一部が重なるように配置すると、制振装置の設置面積を小さくする上で有利となる。
【0012】
また、ダンパー支持部と一対のリンク支持部を下側の梁上に設け、上架台を上側の梁に設けることで、制振装置を柱梁架構内に簡単に設置できる。また、リンクを一対設けることで、リンクを介して上側の梁の水平方向の振動を円滑にオイルダンパーに伝える上で有利となる。また、第1長溝内をダンパーピンが移動し、第2長溝内を上部ピンが移動することでリンクはリンク支軸を中心として揺動し、水平方向の振動を鉛直方向に変えオイルダンパーに円滑に伝えることができる。また、ダンパー支軸により第2の部材の下端を揺動可能に支持すると、上側の梁がその延在方向と直交する方向に変位した場合、リンクの倒れに追従して制振ダンパーも倒れることができ、制振装置の各所の損傷を防止し、制振装置の耐久性を高める上で有利となる。この場合、一対のリンクと前記上架台との間に弾性部材を設けておくと、リンクが倒れて上架台に衝突する際の衝撃を弾性部材で緩和でき、制振装置の耐久性を高める上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1の実施の形態の制振装置の側面図である。
図2】第1の実施の形態の制振装置の正面図であり、リンク支持部と支軸とリンクとの関係を明瞭にするため、第1アームを削除した図である。
図3】下側の梁に対して上側の梁が水平方向で上架台がダンパー支持部に近づく方向に変位した状態の第1の実施の形態の制振装置の側面図である。
図4】下側の梁に対して上側の梁が水平方向で上架台がダンパー支持部から離れる方向に変位した状態の第1の実施の形態の制振装置の側面図である。
図5】下側の梁に対して上側の梁が梁の幅方向に変位した状態の第1の実施の形態の制振装置の正面図である。
図6】第2の実施の形態の制振装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図示例と共に説明する。まず、図1図5を参照して第1の実施の形態から説明する。第1の実施の形態の制振装置4が適用される建物は、柱と梁からなるラーメン構造であり、各階には、図1に示すように、下側の梁B1と、上側の梁B2と、左右の不図示の柱とにより柱梁架構Sが1つもしくは複数設けられている。制振装置4は柱梁架構S内に設置され、図2に示すように、柱梁架構S内の少なくとも制振装置4が設置された箇所の両側に一対の壁Wが設けられ、一対の壁Wを介して制振装置4を外部から見えないようにしている。
【0015】
図1図2に示すように、制振装置4は、制振ダンパー8、リンク10、ダンパー支持部12、リンク支持部14、上架台16、リンク支軸18、ダンパーピン20、上部ピン22を含んで構成されている。ダンパー支持部12、リンク支持部14、上架台16は、コンクリートブロックまたは鋼材製のブロックであり、リンク10、リンク支軸18、ダンパーピン20、上部ピン22は鋼材製である。
【0016】
図1図2に示すように、本実施の形態では、制振ダンパー8としてオイルダンパー8Aを用いた場合について説明するが、エネルギーを吸収するものであれば摩擦ダンパーなどの従来公知の様々な形式のダンパーが採用可能であり、制振ダンパー8はオイルダンパー8Aに限定されない。オイルダンパー8Aは、シリンダケース801と、シリンダケース801に往復直線移動可能に組み込まれた不図示のピストンと、ピストンに連結されシリンダケース801から突出するピストンロッド802とを備える。ピストンロッド802がシリンダケース801に対して変位することでオイルダンパー8Aが伸縮し、エネルギーを吸収する。本実施の形態では、制振ダンパー8の第1部材がシリンダケース801で構成され、第2部材がピストンロッド802で構成されている。シリンダケース801の下端にケースフランジ804が突設され、ピストンロッド802の上端にブラケット806が突設されている。
【0017】
一例として、図1図2に示すように、ダンパー支持部12は鋼材製で、制振装置4の幅方向の中央で、かつ下側の梁B1の上面に突設されている。ダンパー支持部12は、下側の梁B1の上面に取り付けられる取り付け板部1202と、取り付け板部1202から突出するフランジ部1204とを有している。フランジ部1204には、下側の梁B1の延在方向と直交する方向にダンパー支軸810が支持されている。ダンパー支軸810はシリンダケース801の下端のケースフランジ804に挿通されている。したがって、オイルダンパー8Aのシリンダケース801は、ダンパー支持部12を介して下側の梁B1に支持され、ピストンロッド802はシリンダケース801の上方でシリンダケース801に対して出没するように配置される。本実施の形態では、ケースフランジ804がダンパー支軸810により揺動可能に支持され、オイルダンパー8Aは、静止状態(初期状態)においてダンパー支軸810を中心とし揺動可能に配置されている。下側の梁B1に対して上側の梁B2が変位していない建物の静止時、図1図2に示すようにオイルダンパー8Aは鉛直方向に延在している。
【0018】
図1に示すように、リンク支持部14は鋼材製で、ダンパー支持部12と異なる位置で下側の梁B1にリンク10を揺動可能に支持する。図2に示すように、リンク支持部14は、ダンパー支持部12を挟み込む位置に形状が向かい合うように一対設けられ、それら一対のリンク支持部14の上端でリンク支軸18が支持されている。リンク支持部14は、下側の梁B1の上面に取り付けられる取り付け板部1410と、取り付け板部1410から突出するフランジ部1412とを有している。リンク支軸18はその長手方向の両端がフランジ部1412の上端でその長手方向に移動不能に支持されている。リンク支軸18は水平方向で、平面視した場合、下側の梁B1の延在方向と直交する方向に延在している。また、図2に示すように、一対のリンク支持部14から突出するリンク支軸18の端部に、不図示のワッシャ、ナット1802などが取り付けられ、一対のリンク支持部14からのリンク支軸18の抜落が阻止されている。
【0019】
図1に示すように、上架台16は、平面視した場合、下側の梁B1の延在方向においてダンパー支持部12と位置が異なる上側の梁B2の箇所に下方に向けて突設されている。図2に示すように、上架台16は、平面視した場合、一対のリンク支持部と重ならない位置に配置されている。また、上架台16は、平面視した場合、制振装置4の幅方向の中央に設けられる。図2に示すように、上部ピン22は、上架台16の下部に挿通して設けられ、水平方向に延在し、かつ平面視した場合、上側の梁B2の延在方向と平行する方向に延在している。本実施の形態では、上架台16は、図2に示すように正面視した場合、リンク支持部14との間に隙間を確保して設けられている。上部ピン22の長手方向に沿った上架台16の幅は、一対のリンク支持部14の間の寸法よりも小さい寸法で設けられている。上部ピン22の長手方向の両側部は上架台16の幅方向の両端から突出している。ダンパーピン20とリンク支軸18と上部ピン22とは互いに平行して水平方向に延在し、ダンパーピン20と上部ピン22とはほぼ同一の長さで設けられ、リンク支軸18は、ダンパーピン20と上部ピン22よりも大きな寸法で設けられている。
【0020】
図2に示すように、リンク10は、一対のリンク支持部14の間で、ピストンロッド802の上端のブラケット806の両側と上架台16の両側とにわたって形状が向かい合うように一対設けられている。図1に示すように、リンク10は支軸挿通孔1002を有し、支軸挿通孔1002はリンク10に組み込まれた不図示の軸受の内周面で形成されている。一対のリンク10の支軸挿通孔1002にリンク支軸18が挿通され、一対のリンク10は形状が向かい合いように配置されリンク支軸18を中心に揺動可能に配置されている。
【0021】
本実施の形態では、図3で示すように、リンク10は互いに直交する方向に延在する第1アーム10Aと第2アーム10Bとを備えている。第1アーム10Aと第2アーム10Bとが交差する箇所に支軸挿通孔1002が設けられ、第1アーム10Aの先部に第1長溝1004が設けられ、第2アーム10Bの先部に第2長溝1006が設けられている。第1長溝1004の中心線と、第2長溝1006の中心線とはリンク支軸18(支軸挿通孔1002)の中心において交差し、それら中心線が交差する角度は略直角である。当該角度を、略直角にすることで、リンク10の大きさを、機能を劣化させることなく最小限の大きさで形成することができる。第1長溝1004に、第1長溝1004の長手方向に移動可能にダンパーピン20が挿通され、第1長溝1004から突出するダンパーピン20の端部に、不図示のワッシャ、ナットが取り付けられ、ダンパーピン20からの第1アーム10Aの抜落が阻止されている。第2長溝1006に、第2長溝1006の長手方向に移動可能に上部ピン22が挿通され、図2に示すように、第2長溝1006から突出する上部ピン22の端部に、不図示のワッシャ、ナット2202が取り付けられ、上部ピン22からの第2アーム10Bの抜落が阻止されている。
【0022】
したがってリンク10は、リンク10を挿通するリンク支軸18によって上側の梁B2と下側の梁Bとを連結しており、図1に示すように、下側の梁B1に対して上側の梁B2が変位していない建物の静止時におけるリンク10の姿勢をリンク10の初期位置とすると、リンク10の初期位置では、第1アーム10Aは水平方向に延在し、第2アーム10Bは鉛直方向に延在している。この状態で、ダンパーピン20の中心とリンク支軸18の中心とを結んだ想像線は水平方向に延在し、上部ピン22の中心とリンク支軸18の中心とを結んだ想像線は鉛直方向に延在している。
【0023】
図3図4に示すように、地震などの振動により下側の梁B1に対して上側の梁B2が、リンク支軸18の揺動(回転)可能方向に変位すると、リンク10は、リンク支軸18を支点として揺動(回転)する。詳細に説明すると、第2長溝1006内を上部ピン22が移動しながらリンク支軸18を支点として第2アーム10Bを揺動することで、第1長溝1004内をダンパーピン20が移動しながら第1アーム10Aを揺動する。言い換えると、リンク支軸18を中心として上部ピン22がリンク10を揺動可能に支持することでリンク10は揺動しダンパーピン20を介して制振ダンパー8を伸縮させることができる。
【0024】
その結果、ピストンロッド802がシリンダケース801に対して出没する。すなわち、下側の梁B1に対して上側の梁B2が水平方向に変位する振動をリンク10により鉛直方向に変換し、ピストンロッド802を鉛直方向に移動させ、オイルダンパー8Aを伸縮させる。そしてこのオイルダンパー8Aの伸縮により上側の梁B2の振動が抑制され、建物の耐震性能が確保される。
【0025】
また、図2に示すように、上架台16は上部ピン22の長手方向の中央に配置され、一対のリンク10と上架台16の幅方向の両端との間の上部ピン22の箇所に、弾性部材24が装着されている。弾性部材26には、ゴムなどの弾性材料が使用可能である。
【0026】
本実施の形態によれば、オイルダンパー8Aを鉛直方向に延在させて配置するので、柱梁架構S内でオイルダンパー8Aが水平方向に占有する面積は極めて小さい。そのため、オイルダンパー8Aを配置するに際して従来のように斜めや水平にオイルダンパー8Aを配設する場合に比べ水平方向に長いスペースが不要となり、オイルダンパー8Aを用いた制振装置4を省スペースで配設することが可能となる。そのため、柱梁架構S内に入口や窓などの開口部を簡単に設けることができ、さらに壁に埋め込むことができる。また専有面積が小さいということは、柱梁架構S内に、制振装置4を設けても、配管およびケーブルを配置することが可能となり有利となる。また、オイルダンパー8Aが水平方向に占有する面積が小さいため、より多くの制振装置4を配置することが可能となる。
【0027】
また、リンク10を単一としてもよいが、本実施の形態のように一対設けると、リンク10を介して上側の梁B2の水平方向の振動を円滑にオイルダンパー8Aに伝える上で有利となる。また、第1アーム10Aの第1長溝1004内をダンパーピン20が移動し、第2アーム10Bの第2長溝1006内を上部ピン22が移動することでリンク10はリンク支軸18を中心に揺動し、水平方向の振動をリンク10により鉛直方向に変えて円滑にオイルダンパー8Aに伝えることができる。
【0028】
また、ダンパー支持部12によりオイルダンパー8A(シリンダケース801)を鉛直方向に固定した状態で支持してもよいが、本実施の形態のように、下側の梁B1上に設けられたダンパー支軸810によりオイルダンパー8Aを揺動可能に支持すると、図5に示すように、上側の梁B2がリンク支軸18の回転可能方向でない方向に変位した場合、リンク10の倒れに追従してオイルダンパー8Aも倒れることができ、制振装置4の各所の損傷を防止し、制振装置4の耐久性を高める上で有利となる。なお、上側の梁B2がリンク支軸18の回転可能方向でない方向に変位した場合、制振装置4とは異なる向きに設置された他の制振装置4が振動を吸収するように設置されてもよい。
【0029】
また、一対のリンク10と上架台16の幅方向の両端との間の上部ピン22の箇所に、弾性部材24を装着しておくと、上述のように変位した場合、リンク10が倒れて上架台16に衝突する際の衝撃を弾性部材24で緩和でき、制振装置4の耐久性を高める上で有利となる。この場合、リンク支持部14のリンク支軸18の支軸挿通孔1002の内周面とリンク支軸18の外周面との間に多少の隙間を持たせ、さらに、第1長溝1004、第2長溝1006に挿通されるダンパーピン20、上部ピン22の外周面との間に多少の隙間を持たせると、上述のように変位した場合、リンク10の倒れを許容できることから制振装置4の耐久性を高める上で有利となる。
【0030】
次に、図6を参照して第2の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態では、第1の実施の形態と同一の部材、箇所に同一の符号を付してその説明を省略または簡略し、第1の実施の形態と異なった箇所を重点的に説明する。第2の実施の形態では、リンク支持部34の構成が第1の実施の形態と異なっている。
【0031】
第2の実施の形態では、一対のリンク支持部34は、下側の梁B1の延在方向においてダンパー支持部12と位置が異なる向かい合う壁Wの箇所に設けられている。リンク支持部34が設けられる壁Wの箇所は、例えば、下側の梁B1から壁Wに沿って起立された形鋼や鋼板からなる補強部材36により補強されている。リンク支軸18は一対のリンク支持部34の軸受孔3402で支持され、リンク支軸18の両端の大径部1810は、壁Wに設けられたカバー1820で隠されている。第1の実施の形態と同様に、一対のリンク支持部34と上架台16とは、下側の梁B1の幅方向においてそれらの少なくとも一部が重なる箇所に設けられている。このような第2の実施の形態によっても第1の実施の形態とほぼ同様な効果が奏される。
【0032】
なお、本実施の形態では、リンク10を互いに直交する第1アーム10Aと第2アーム10Bとで構成されている場合について説明したが、リンク10の形状は任意であり、例えば、三角形状に形成してもよく、あるいは、互いに直交する2つの半径で形どられた1/4の円形にするなど任意であるが、実施の形態のようにすると、軽量化を図る上で有利となる。
【符号の説明】
【0033】
4 制振装置
8 制振ダンパー
8A オイルダンパー
801 シリンダケース
802 ピストンロッド
804 ケースフランジ
806 ブラケット
810 ダンパー支軸
10 リンク
10A 第1アーム
10B 第2アーム
1002 支軸挿通孔
1004 第1長溝
1006 第2長溝
12 ダンパー支持部
1202 取り付け板部
1204 フランジ
1206 孔
14 リンク支持部
1410 取り付け板部
1412 フランジ
16 上架台
18 リンク支軸
1802 ナット
1810 大径部
1820 カバー
20 ダンパーピン
22 上部ピン
2202 ナット
34 リンク支持部
3402 軸受孔
36 補強部材
S 架構
B1 下側の梁
B2 上側の梁
W 壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6