(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023105965
(43)【公開日】2023-08-01
(54)【発明の名称】電池状態推定システム及び電池状態推定方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/48 20060101AFI20230725BHJP
G01R 31/392 20190101ALI20230725BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20230725BHJP
H01M 10/42 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
H01M10/48 P
G01R31/392
H02J7/00 Y
H02J7/00 P
H01M10/42 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022007033
(22)【出願日】2022-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊田 光徳
【テーマコード(参考)】
2G216
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
2G216AB01
2G216BA29
2G216BA30
2G216BA33
2G216CB31
2G216CB51
5G503BA01
5G503BB01
5G503BB02
5G503DA04
5G503EA08
5G503FA06
5G503GD03
5G503GD06
5H030AA09
5H030AS08
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
(57)【要約】 (修正有)
【課題】車両から送信するデータ容量を抑制する電池状態推定システム及び方法を提供する。
【解決手段】電池状態推定システムは、車両の実際の走行イベントから実走行情報を抽出するの抽出部と、二次電池の劣化状態を推定する状態推定部と、複数の車両から予め取得された走行情報に基づき走行イベント特徴量のカテゴリに属する走行イベントの中の代表走行イベントを規定し、代表走行イベント特徴量をプロファイルとして格納するデータベースとを備える。状態推定部は、実走行情報に含まれる実特徴量と類似する特徴量をデータベースから抽出し、特徴量に対応する代表走行イベントを特定し、代表走行イベントから二次電池3の推定出力を演算し、実走行情報から二次電池の実出力を演算し、実出力と推定出力との差分が出力閾値以上である場合、差分に相当する補正出力を推定出力に加えて二次電池の出力を補正し、補正した出力に基づき二次電池の劣化状態を推定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された二次電池の劣化状態を推定する電池状態推定システムであって、
前記車両の実際の走行イベントから実走行情報を抽出する抽出部と、
前記二次電池の劣化状態を推定する状態推定部と、
複数の車両から予め取得された走行情報に基づき走行イベントの特徴量をカテゴリ化して、カテゴリに属する走行イベントの中で代表となる代表走行イベントを規定し、前記代表走行イベントの特徴量をプロファイルとして格納するデータベースとを備え、
前記状態推定部は、
前記実走行情報に含まれる実特徴量と類似する特徴量を、前記データベースから抽出し、
抽出された前記特徴量に対応する前記代表走行イベントを特定し、
前記代表走行イベントから、前記二次電池の推定出力を演算し、
前記実走行情報から、前記二次電池の実際の出力である実出力を演算し、
前記実出力と前記推定出力との差分が出力閾値以上である場合には、前記差分に相当する補正出力を前記推定出力に加えることで前記二次電池の出力を補正し、
補正された出力に基づき、前記二次電池の劣化状態を推定する電池状態推定システム。
【請求項2】
請求項1記載の電池状態推定システムにおいて、
前記二次電池の出力は、前記車両の駆動エネルギーとして消費される駆動電力と、前記車両の補機類を動作させるために消費した補機消費電力を含み、
前記状態推定部は、前記補機消費電力に前記補正出力を加えることで、前記二次電池の出力を補正する電池状態推定システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の電池状態推定システムにおいて、
前記実際の走行イベントにおける、イベント時間、走行距離、又は前記二次電池の平均出力のうち、少なくとも1つの値が所定閾値以下である場合には、前記補正出力に基づく前記二次電池の出力の補正処理を実行しない電池状態推定システム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の電池状態推定システムにおいて、
前記データベースは、
前記代表走行イベントで前記車両を走行させた場合の前記二次電池の出力を前記推定出力として格納し、
前記状態推定部は、
前記代表走行イベントから前記二次電池の前記推定出力を演算する代わりに、前記データベースに格納された前記推定出力を使用する電池状態推定システム。
【請求項5】
請求項4に記載の電池状態推定システムにおいて、
前記データベースは、前記推定出力をユーザ毎のデータとして格納する電池状態推定システム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の電池状態推定システムにおいて、
前記状態推定部は、
前記代表走行イベントのプロファイルを入力とし、前記走行イベントで前記二次電池に加わる負荷のプロファイルである電池負荷プロファイルを出力とする車両モデルにより、前記実特徴量のプロファイルから前記電池負荷プロファイルを演算し、
前記補正出力に基づき前記電池負荷プロファイルを補正し、
前記二次電池に加わる負荷を入力として、前記二次電池の劣化状態を出力とする電池モデルにより、前記補正された電池負荷プロファイルから前記二次電池の劣化状態を推定する電池状態推定システム。
【請求項7】
コントローラにより実行される、車両に搭載された二次電池の劣化状態を推定する電池状態推定方法において、
前記車両の実際の走行イベントから実走行情報を抽出し、
複数の車両から予め取得された走行情報に基づき走行イベントの特徴量がカテゴリ化され、カテゴリに属する走行イベントの中で代表となる代表走行イベントが規定され、前記代表走行イベントの特徴量がプロファイルとして格納されているデータベースから、前記実走行情報に含まれる実特徴量と類似する特徴量を抽出し、
抽出された前記特徴量に対応する前記代表走行イベントを特定し、
前記代表走行イベントから、前記二次電池の推定出力を演算し、
前記実走行情報から、前記二次電池の実際の出力である実出力を演算し、
前記実出力と前記推定出力との差分が出力閾値以上である場合には、前記差分に相当する補正出力を前記推定出力に加えることで前記二次電池の出力を補正し、
補正された出力に基づき、前記二次電池の劣化状態を推定する電池状態推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の劣化状態を推定する電池状態推定システム及び電池状態推定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、予め取得された正極及び負極の起電力カーブを容量方向に相対的に変化させて両極の起電力カーブの差分を二次電池の起電力カーブにフィッティングさせる構成の回路を備え、容量劣化を推定する容量劣化推定装置が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の容量劣化推定装置は、二次電池を回路に接続した状態で、正負極の起電力カーブを回路内の記憶領域から読み出す構成を基本構成としている。また、特許文献1には、当該回路を有した演算装置をインターネット上のサーバとしてもよい旨が記載されているが、扱う情報が同じであり、推定の精度向上は見込めない。
【0005】
そして、特許文献1記載の容量劣化推定装置において、当該回路を有した演算装置をインターネット上のサーバへ実装することで、推定の精度を高めるには、例えば、クラウドに時系列データを送り複雑なシミュレーションを行う事も考えられる。しかしながら、時系列データのデータ容量が大規模になるという問題がある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、車両から送信されるデータ容量を抑制できる電池状態推定システム及び電池状態推定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、複数の車両から予め取得された走行情報に基づき走行イベントの特徴量をカテゴリ化して、カテゴリに属する走行イベントの中で代表となる代表走行イベントを規定し、代表走行イベントの特徴量をプロファイルとして格納するデータベースを備え、実走行情報に含まれる実特徴量と類似する特徴量を、データベースから抽出し、抽出された特徴量に対応する代表走行イベントを特定し、代表走行イベントから二次電池の推定出力を演算し、実走行情報から二次電池の実際の出力である実出力を演算し、実出力と推定出力との差分が出力閾値以上である場合には、差分に相当する補正出力を推定出力に加えることで二次電池3の出力を補正し、補正された出力に基づき二次電池の劣化状態を推定することにより、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車両から送信されるデータ容量を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の一実施の形態に係る電池状態推定システムを示すブロック図である。
【
図2】
図2(а)は実データの特徴量を走行イベント毎でリスト化した表であり、
図2(b)はカテゴリ化された、走行イベントの実データのリストを表す表である。
【
図3】
図3は、代表走行イベントの特徴量のデータを座標空間で示したデータの概念図である。
【
図4】
図4は、電池状態推定システムのサーバ側のコントローラで実行される、電池劣化状態推定方法の制御手順を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、イベント時間に対する二次電池3の容量劣化量の特性を示すグラフ(а)と、イベント時間に対する時間閾値の特性を示すグラフ(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る二次電池の劣化状態を推定するための電池状態推定システム及び電池状態推定方法の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る電池状態推定システムを示すブロック図である。本実施形態に係る電池状態推定システムは、サーバ(クラウド)上で、車両モデル及び電池モデルを用いて、車両に搭載された二次電池の劣化状態を推定するシステムである。
図1に示すように、電池状態推定システムは車両1及びサーバ100を備えている。
【0011】
車両1は、車両コントローラ2及び二次電池3を備えている。車両1は、車両コントローラ2及び二次電池3の他に、車両の走行状態を検出するためのセンサ(車速センサ、アクセル開度センサ等)、二次電池3の状態を検出するためのセンサ(電圧/電流センサ、温度センサ等)、サーバ100と通信するための通信機、車両の駆動源となるモータ、補機類等を備えている。
【0012】
車両コントローラ2は、車両全体を制御する制御装置であり、車載センサ等とCAN通信網で接続されている。なお、車両1に搭載されるコントローラ(プロセッサ)は、複数のECUで構成されるが、本実施形態では説明を容易にするために1つのコントローラとしている。車両コントローラ2は、走行イベント毎に、車両1の走行情報を時系列データとして取得する。走行イベントは、車両1のメインスイッチ(イグニッションスイッチ)をオンしてからオフするまでの期間、及び/又は、二次電池3を外部充電する際の充電開始から充放終了までの期間を単位として、車両の走行状態を時系列データで示したものである。車両コントローラ2は、走行イベント毎に、車両1の実走行情報を管理する。実走行情報は、車両1の状態を示す車両状態情報、及び、二次電池3の電池状態情報を含む。車両状態情報は、車両の走行をパラメータで表現する特徴量に相当し、例えば、走行距離、車速、走行時間、標高差、平均車速、平均負荷、及び最大負荷等である。電池状態情報は、二次電池3の劣化演算に使用される情報であり、例えば、バッテリ電圧/電流、SOC、バッテリ温度などである。車両コントローラ2は、実走行情報をエンコードして、サーバ100にアップロードする。車両コントローラ2は、例えば1秒間隔で取得される車速プロファイルに対して平均車速を算出し、算出された平均車速を代表統計量として符号化することで、実走行情報をエンコードする。なお、エンコードされる実走行情報は車速情報に限らず他の情報でもよい。
車両コントローラ2は、走行イベント毎に実走行情報をサーバ100に送信するため、送信データの容量を抑制できる。
【0013】
二次電池3は、たとえばリチウムイオン二次電池であり、車両1に搭載されている。この種の二次電池3は、負極活物質として、リチウムイオンの挿入・脱離に伴って充放電電位が段階的に変化する複数の充放電領域を有する活物質を用いたものを例示することができる。このようなリチウムイオンの挿入・脱離に伴って充放電電位が段階的に変化する複数の充放電領域を有する活物質として、グラファイト構造を含有するグラファイト系活物質が好適である。なお、二次電池3は、電解液リチウムイオン電池に限らず、全固体リチウムイオン二次電池でもよい。また、二次電池3は、リチウムイオン電池に限らず、鉛電池などの他種の電池でもよい。
【0014】
サーバ100はコントローラ10とデータベース20を備えている。コントローラ10は、車両1から、実走行情報を含むデータを受信し、プロファイル(時系列データ)にデコードして、シミュレーションにより、二次電池3の劣化状態を推定する。シミュレーションには、データベース20に格納されたデータと、デコードして得た実走行情報のプロファイルと、車両/電池モデルが使用される。なお、デコードは車両1から取得したデータの復号に限らず、演算による統計処理(統計演算処理)を含めてよい。データベース20は、複数の他車両から予め取得された走行情報に基づき走行イベントの特徴量をカテゴリ化しており、カテゴリに属する走行イベントの中で代表となる代表走行イベントを規定し、代表走行イベントの特徴量をプロファイルとして格納している。つまり、データベース20は、他車両のデータや、車両の過去データから構築されている。
【0015】
コントローラ10は、車両1の実際の走行イベントから実走行情報を抽出し、実走行情報に含まれる実特徴量と類似する特徴量を、データベース20から抽出する。そして、コントローラ10は、抽出された特徴量に対応する代表走行イベントを特定する。代表走行イベントは、カテゴリ化された走行イベントの中で、代表となる車両走行を示した特徴量のプロファイル(代表走行プロファイル)によって表される。つまり、代表走行イベントの取得とは、走行を表現する特徴量に基づいて類似度の高いデータを採用することで、過去の走行イベントのプロファイルを仮想的に取得することに相当する。コントローラ10は、代表走行イベントの取得後、二次電池3への負荷入力をシミュレーションし、シミュレーション結果から、二次電池3の劣化状態(状態量)を推定する。
【0016】
コントローラ10は、代表走行イベントで表される車両走行と、実際の走行とのずれを吸収するために、代表走行イベントのプロファイルを補正した上で、二次電池3の劣化状態(状態量)を推定する。
【0017】
コントローラ10は、二次電池3の劣化状態を推定するための機能ブロックとして、抽出部11と状態推定部12を有している。抽出部11は、車両1の実際の走行イベントから実走行情報を抽出する。状態推定部12は、抽出部11で抽出した実走行情報、データベース20に格納されているプロファイル等に基づき、二次電池3の劣化状態を推定する。
【0018】
図2及び
図3を参照しつつ、データベース20に格納されている、代表走行プロファイルのデータ構造について説明する。コントローラ10は、車両1の走行情報の実データを予め取得して、データベース20を構築する。実データは,車両1が実際に走行した時の走行情報のデータに限定されるものではなく、車両1のユーザやその他ユーザの過去データ、実験的にあらかじめ取得していたデータでもよい。走行情報は、車両の走行を表現した特徴量を示す。以下の説明では、特徴量は少なくとも「走行距離(km)」及び「最高速度km/h」を含んでいる。なお、「走行距離(km)」及び「最高速度km/h」は特徴量の指標の一例にすぎず、「走行時間」等を含んでもよい。
【0019】
図2(а)は、実データの特徴量を走行イベント毎でリスト化した表である。実データは、走行イベント毎にインデックス(Idx)が付与されている。
図2(а)の例では、Idx「1」~「3」の走行イベントの特徴量が示されている。コントローラ10は、実データに対して特徴量に応じてカテゴリ化して、走行イベント毎にデータを集約する。
図2(b)は、カテゴリ化された、走行イベントの実データのリストを表す表である。例えば、コントローラ10は、走行距離を5km刻み、及び、最高速度を10km刻みのビンでカテゴリ化する。
図2(b)では、走行距離10~15km及び最高速度30~40km/hのビンに含まれる走行イベントの実データを表している。つまり、
図2(а)でリスト化された実データのうち、走行距離10~15km及び最高速度30~40km/hの範囲に該当するデータ(
図2(b)ではIdx「6、661、894」のデータ)が集約される。
【0020】
コントローラ10は、特徴量の所定のビンでカテゴリ化されたデータに対して、データの重心を、カテゴリごとに演算する。データの重心は、特徴量の各種指標の平均、カテゴリ中心、又は、特徴量の中央値に相当する。コントローラ10は、
図2(b)のカテゴリ化された走行イベントの実データのうち、最も中心に近い実データを、そのカテゴリの代表データとする。例えば、
図2(b)の例では、データの重心は、走行距離11.1km、最高速度38.9km/hと仮定すると、コントローラ10は、Idx「661」のデータが、走行距離10~15km及び最高速度30~40km/hのカテゴリの代表データ(代表値)となる。そして、コントローラ10は、Idx「661」のデータの走行イベントが、代表走行イベントとして規定する。これにより、コントローラ10は、走行距離10~15km及び最高速度30~40km/hのカテゴリに属する走行イベントの中で代表となる走行イベントを規定する。さらに、コントローラ10は、Idx「661」の時系列データが、代表走行イベントにおける特徴量のプロファイルとなる。コントローラ10は、他のカテゴリについても、同様に代表走行イベントを規定する。
【0021】
コントローラ10は、代表走行イベントの実データ以外のデータを削除した上で、代表走行イベントの特徴量をプロファイルとしてデータベースに格納する。
図2(b)の例では、Idx「661」の時系列データがデータベースに格納され、Idx「6」及び「894」の時系列データは削除される。コントローラ10は、他のカテゴリについても、同様に代表走行イベントを規定し、代表走行イベントに該当しない時系列データを削除する。
図3は、代表走行イベントの特徴量のデータを座標空間で示したデータの概念図である。
図3の例では、走行距離及び最高速度を横軸及び縦軸にとり、丸印は、カテゴリ毎の代表走行イベントのプロファイルを表している。すなわち、データベース20は、
図3の丸印に相当するプロファイルを格納する。このように、コントローラ10は、あらかじめ実験などで取得した走行イベントのプロファイルに対して,データベース20に格納する分を選定(クラスタリング)した上で、代表走行イベントのデータベースを構築する。なお、代表走行イベントのプロファイルは、必ずしも実データに限らず、一般的な類似度計算を行える時系列クラスタリング処置で演算されたデータや、正規化したデータでもよい。
【0022】
また、コントローラ10は、後述するように、二次電池3の劣化状態を推定するために、車両1から走行イベントの実走行情報(プロファイル)を取得するが、実走行情報に含まれる特徴量が、データベース20で規定された各カテゴリに属さない場合には、実走行情報のデータをデータベース20に格納することで、データベース20を更新してもよい。以下、データベース20の更新について説明する。
【0023】
データベース20で規定された各カテゴリに属さないデータは、
図3の丸印で示されるデータから外れた外れ値データ(特異データ)となる。
図3の四角で示されるデータPが外れ値データとなる。コントローラ10は、車両1から走行イベントの実走行情報を取得すると、データベース20を参照して、当該特徴量に最も近い、代表走行イベントにおける特徴量を特定する。
図3の例では、データQが、最も近いデータとなる。そして、コントローラ10は、外れ値データPの座標点からデータQの座標点までの距離(特徴量空間における距離)を演算する。この距離は、ユークリッド距離あるいはマハラノビス距離としてもよい。
【0024】
コントローラ10は、演算された距離が所定の距離以上である場合には、外れ値データに相当するプロファイルをデータベース20に格納する。一方、コントローラ10は、演算された距離が所定の距離未満である場合には、外れ値データに相当するプロファイルをデータベース20に格納しない。これにより、代表走行イベントに該当しない走行イベントに基づく実データが、サーバ100にアップロードされた場合には、コントローラ10はデータベース20に外れ値の実データを追加する。なお、外れ値データに基づくデータベース20の更新の要否は、特徴量空間における距離に加えて、二次電池3の劣化演算への影響度の高い特徴量の指標に基づき、判定されてもよい。例えば、外れ値データで示される走行距離が長い場合、あるいは、環境温度が代表走行イベントにおける温度と大きく異なる場合には、データベース20に追加してもよい。
【0025】
なお、車両1は、サーバ100に送信した実データが外れ値データに該当するとサーバ100側で判定された場合に、一時的に車両コントローラ2に保存したプロファイルをサーバにアップロードすればよい。これにより、車両コントローラ2の記憶容量を抑えつつ、車両1とサーバ100間の通信負荷を抑えることができる。
【0026】
次に、
図4を参照して、コントローラ10による、二次電池3の劣化状態を推定する処理フローを説明する。
図4は、コントローラ10で実行される、電池劣化状態推定方法の制御手順を示すフローチャートである。なお、
図4に示す電池劣化状態推定の制御フローは、車両が実際の走行イベントを終えて実走行情報を含む信号をサーバ100に送信し、サーバ100が当該信号を受信したことをトリガに実行される。
【0027】
ステップS1にて、抽出部11は、車両1の実際の走行イベントから実走行情報を抽出することで、実走行情報を取得する。ステップS2にて、状態推定部12は、データベース20に含まれる代表走行イベントの特徴量のうち、実走行情報に含まれる実特徴量と類似する類似特徴量をデータベース20から取得する。具体的には、例えば
図2及び
図3の例では、状態推定部12は、特徴量空間において、実特徴量の座標点に対して最も近い特徴量のデータを特定し、特定されたデータで示される代表走行イベントの特徴量を類似特徴量として取得する。
【0028】
ステップS3にて、状態推定部12は、データベース20上で類似特徴量に対応する代表走行イベントを特定する。ステップS4にて、状態推定部12は、特定された代表走行イベントから二次電池3の推定出力を演算する。状態推定部12は、走行イベントのプロファイルを入力とし、電池負荷プロファイルを出力とする車両モデルを有している。車両モデルは、演算式で表され、入力される走行イベントで車両を走行させた場合に、二次電池に加わる負荷をモデル化したものである。電池モデルの入力は、ステップS3で特定された代表走行イベントのプロファイル(代表走行プロファイル)であって、実特徴量のプロファイルに相当する。電池モデルの出力は、代表走行イベントで車両を走行させた場合に、二次電池3で消費される消費電力を時系列データで示したものとなる。二次電池3の消費電力が二次電池3の推定出力に相当し、消費電力のプロファイルが電池負荷プロファイルに相当する。例えば、代表走行イベントのプロファイルが、車速(実特徴量の一例)の時系列データとした場合には、状態推定部12は、車両1が時系列データの車速に沿って走行した時に二次電池3が消費する電力のプロファイル(電池負荷プロファイル)を、電池モデルを用いて演算する。これにより、状態推定部12は、車両モデルにより、実特徴量のプロファイルから電池負荷プロファイルを演算する。さらに、状態推定部12は、電池負荷プロファイルから二次電池3の推定出力を演算する。推定電力は、走行イベントにおいて二次電池3で消費される電力又は電力量に相当する。推定電力を電力量とする場合には、例えば、電池負荷プロファイルで示される消費電力に対して、プロファイルの時間要素で積分することで演算できる。推定電力を電力とする場合には、電池負荷プロファイルで示される消費電力の平均値、中央値等とすればよい。
【0029】
ステップS5にて、状態推定部12は、実走行情報から、二次電池3の実際の出力である実出力を演算する。実出力は、走行イベントにおいて二次電池3で消費された実際の消費電力又は消費電力量に相当し、補機類を動作させるために消費した電力又は電力量(補機消費電力)と、駆動エネルギーとして消費される電力又は電力量(駆動消費電力)とを加算した電力に相当する。一方、上記の車両モデルを用いて演算された二次電池3の推定出力(初期値)は、シミュレーションで演算された駆動消費電力であり、補機消費電力を含んでいない。
【0030】
ステップS6にて、状態推定部12は、電池負荷プロファイルと前回値から、二次電池3の劣化状態を推定する。前回値は、コントローラ10による電池劣化状態推定の演算フローで取得した情報あるいは演算結果から与えられる劣化情報のパラメータであって、これまでに進んだ、二次電池の劣化状態に関するパラメータを表している。前回値は、例えば、SEIの形成量、電池容量、バッテリ温度、バッテリ電圧/電流、SOC等である。状態推定部12は、二次電池3に加わる負荷から、二次電池3の劣化状態を演算する。状態推定部12は、二次電池3に加わる負荷を入力として、二次電池3の劣化状態を出力とする電池モデルを有している。電池モデルは、演算式で表され、二次電池3の現在の状態に対して、電池負荷プロファイルで示される消費電力を二次電池3で消費した場合に、二次電池3の劣化状態の進み具合をモデル化したものである。つまり、電池負荷プロファイルが二次電池3に加わる負荷を表している。二次電池3の現在の状態は前回値により示される。そして、状態推定部12は、電池モデルを用いて、前回値と電池負荷プロファイルに基づき二次電池3の劣化状態を推定する。二次電池3の劣化状態は、二次電池3の状態量、劣化度等で示される。これにより、状態推定部12は、プロファイル(代表走行プロファイル及び電池負荷プロファイル)を利用したシミュレーションを通じて、二次電池3の劣化状態を推定する。
【0031】
ステップS7にて、状態推定部12は、実出力と推定出力との差分が出力閾値以上であるか否か判定する。具体的には、状態推定部12は、実出力から推定出力を差し引いて、絶対値をとる。実出力と推定出力との差分は、消費電力の差分又は消費電力量の差分のいずれでもよい。出力閾値は、シミュレーションから推定された推定出力の補正要否を決めるための閾値であって、求められる劣化状態の推定精度、コントローラ10の演算能力等により予め決められる値である。実出力と推定出力との差分が出力閾値以上である場合には、コントローラ10は、ステップS8の制御フローを実行する。推定出力は、代表走行イベントで車両を走行させた時に二次電池3に加わる負荷を示したものであり、実際の走行により二次電池3により加わる負荷と異なっている。また実出力は、補機類の動作に使われた電力も含んでいるため、その電力分も、実出力と推定出力との差分に現れる。そのため、本実施形態では、実出力と推定出力との差分が出力閾値以上である場合には、後述するステップで二次電池3の推定出力を補正し、補正された推定出力に基づき、二次電池3の劣化状態を推定している。一方、実出力と推定出力との差分が出力閾値未満である場合には、コントローラ10は、電池劣化状態推定の制御フローを終了する。また、コントローラは、ステップS6の制御フローで推定された二次電池3の劣化状態を、シミュレーション結果として出力する。
【0032】
実出力と推定出力との差分が出力閾値以上である場合には、ステップS8にて、状態推定部12は、イベント時間が時間閾値以上であるか否か判定する。イベント時間は、走行イベントの継続時間であって、例えば車両1のメインスイッチがオンしてからオフになるまでの時間に相当する。コントローラ10は実走行情報からイベント時間を抽出する。時間閾値は、二次電池3の劣化状態の推定に影響のある走行シーンに限り、後述する推定電力の補正を行うようにするために設定される閾値である。そして、イベント時間が時間閾値以上である場合には、後述するステップS9にて、二次電池3の出力を補正する。一方、イベント時間が時間閾値未満である場合には、二次電池3の出力の補正は行わず、電池劣化状態推定の制御フローを終了する。
【0033】
また状態推定部12は、イベント時間に応じて時間閾値を設定する。
図5は、イベント時間に対する二次電池3の容量劣化量の特性を示すグラフ(а)と、イベント時間に対する時間閾値の特性を示すグラフ(b)である。
図5(а)に示すように、イベント時間が長いほど、容量劣化量(電池劣化率)は大きくなる。二次電池3の特性として、経過時間のルート則で劣化が進行することが知られている。そのため、例えば1分未満の経過時間のように、イベント時間が短い場合には、劣化進行は軽微なため、二次電池3の劣化状態への影響も小さい。そのため、
図5(b)に示すように、イベント時間が短い場合には、状態推定部12は、時間閾値を高い値に設定して、走行イベントにおけるイベント時間が短い時には、二次電池3の出力補正を行わないようにする。一方、状態推定部12は、イベント時間が長くなるほど時間閾値を低い値に設定して、走行イベントにおけるイベント時間が短い時には、二次電池3の出力補正を行う。
【0034】
なお、状態推定部12は、イベント時間に応じて出力閾値(ステップS7の制御フローの判定で使用される閾値)を設定してもよい。イベント時間に対する出力閾値の特性は
図5(b)に示す特性と同様にすればよい。すなわち、イベント時間が短い場合には、出力閾値は高い値に設定される。そのため、実出力と推定出力との差分が大きい場合でも、車両から入力された走行イベントにおいて、二次電池3の劣化状態への影響は小さいため、二次電池3の出力補正は行わない。一方、イベント時間が長いほど、出力閾値は低い値に設定される。そのため、実出力と推定出力との差分が小さい場合でも、イベント時間が長いときには、二次電池3の劣化状態への影響は大きいため、二次電池3の出力補正が実行される。
【0035】
また変形例として、状態推定部12は、イベント時間の代わりに、走行イベントにおける走行距離に応じて距離閾値を設定し、走行距離が距離閾値以上である場合に限り、二次電池3の出力補正を行ってもよい。なお、走行距離に対する距離閾値の特性は
図5(b)に示す特性と同様にすればよい。
【0036】
さらに変形例として、状態推定部12は、イベント時間及び走行距離の代わりに、二次電池3の平均出力に応じて平均出力閾値を設定し、平均出力が平均出力閾値以上である場合に限り、二次電池3の出力補正を行ってもよい。二次電池3の平均出力は、走行イベントにおいて二次電池3から出力された電力の平均値である。二次電池3の平均出力は、実走行情報から演算された実出力の平均、又は、電池負荷プロファイルから演算された推定出の平均とすればよい。平均出力に対する平均出力閾値の特性は
図5(b)に示す特性と同様にすればよい。二次電池3の特性として、サイクル数が多くなるほど、容量劣化量(電池劣化率)は進行する。そして、平均出力が低い場合には、サイクル数も少ないため、劣化進行は軽微なものとなる。そのため、変形例では、二次電池3の平均出力が低い場合には、状態推定部12は、平均出力閾値を高い値に設定して、二次電池3の出力補正を行わないようにする。一方、状態推定部12は、平均出力が高くなるほど平均出力閾値を低い値に設定して、走行イベントにおけるサイクル数が多い時には、二次電池3の出力補正を行う。なお、状態推定部12は、二次電池3の平均出力の代わりに、最高速度、平均車速、平均勾配などでもよい。
【0037】
さらに、上記変形例において、状態推定部12は、走行距離、平均出力、最高速度、平均車速、又は平均勾配に応じて、出力閾値を設定してもよい。各指標に対する出力閾値の特性は
図5(b)に示す特性と同様にすればよい。さらに状態推定部12は、イベント時間、走行距離等の指標を組み合わせて、二次電池3の出力補正を行うか否か判定してもよい。
【0038】
ステップS9にて、状態推定部12は、実出力と推定出力との差分に相当する補正出力を推定出力に加えることで、二次電池3の出力を補正する。補正出力は、二次電池3の電力(補正電力:P
adjust)に相当し、下記式(1)及び(2)で演算される。
【数1】
【数2】
【0039】
上記の要領で補正電力を演算した後、状態推定部12は、推定電力に補正電力を加えることで、二次電池3の出力を補正する。式(1)より、補正電力は実電力量から推定電力量を差し引いた値に基づき演算される値であり、補正電力が負の値になる場合もある。補正電力が負の値である場合には、推定電力が補正電力で減算されることになる。
【0040】
また、式(1)より、補正電力は、実出力と推定出力との差分に相当する値である。そして、実出力と推定出力との差分は、実出力に含まれる補機消費電力の違いによって生じる。つまり、状態推定部12は、補機消費電力に補正出力を加えることで、二次電池の出力を補正してもよい。補機消費電力に補正出力を加える補正は、下記式(3)で表すことができる。
【数3】
【0041】
ステップS9の制御処理で、二次電池3の出力が補正された場合には、制御フローのループが、ステップS6に戻り、状態推定部6は、二次電池3の補正された出力に基づき二次電池3の劣化状態を推定する。二次電池3の出力補正は、電池負荷プロファイルに反映させてもよく、あるいは、ニ次電池モデルを用いた演算結果に対して反映させてよい。
【0042】
このように、本実施形態では、コントローラ10は、シミュレーション実施後、二次電池3の実際の消費電力とシミュレーション結果から得られる電力との乖離に応じて補正出力(補正電力)を演算する。さらに、コントローラ10は、補正出力をプロファイルに加算した上で、再度シミュレーションを行い、最終的な二次電池3の劣化状態を推定する。これにより、乖離量に応じた補正を行うことで、二次電池3の劣化に影響を与えるバッテリ負荷エネルギーを精度よく演算できる。
【0043】
上記のとおり本実施形態において電池状態推定システムは、複数の車両1から予め取得された走行情報に基づき走行イベントの特徴量をカテゴリ化して、カテゴリに属する走行イベントの中で代表となる代表走行イベントを規定し、代表走行イベントの特徴量をプロファイルとして格納するデータベース20を備えている。そして、コントローラ10は、実走行情報に含まれる実特徴量と類似する特徴量を、データベース20から抽出し、抽出された特徴量に対応する代表走行イベントを特定し、代表走行イベントから二次電池3の推定出力を演算し、実走行情報から二次電池の実際の出力である実出力を演算し、実出力と推定出力との差分が出力閾値以上である場合には、差分に相当する補正出力を推定出力に加えることで二次電池3の出力を補正し、補正された出力に基づき二次電池3の劣化状態を推定する。すなわち、コントローラ10は、データベース20から特徴量を介して代表走行イベントのプロファイルを参照し、当該プロファイルを用いた劣化状態の推定演算を実行する。さらに、コントローラ10は、実電力と推定消費電力との差分、又は、実電力量と推定消費電力量との差分に応じた補正出力を加減算した走行イベントを生成して劣化状態の演算を行う。これにより、車両1からの通信情報を最小限(特徴量に応じたデータサイズ)にとどめることが可能となる。また、未知となる実際の車両走行プロファイルを再現できる。さらに、実走行とシミュレーションとの乖離を容易に補正可能である。その結果として、車両1からサーバ100に送信されるデータ容量を抑制しつつ、二次電池3の劣化状態を高い精度で推定できる。
【0044】
また本実施形態において、コントローラ10の状態推定部12は補機消費電力に補正出力を加えることで二次電池の出力を補正する。すなわち、状態推定部12は、劣化状態の推定演算に用いた補機消費電力に対して補正出力を加える。これにより、補正出力を一律加算することで演算負荷を軽減でき、既存の演算モデルの修正規模を最小限に抑制できる。
【0045】
また本実施形態において、コントローラ10の状態推定部12は、実際の走行イベントにおける、イベント時間、走行距離、又は二次電池3の平均出力のうち、少なくとも1つの値が所定閾値以下である場合には、補正出力に基づく二次電池3の出力の補正処理を実行しない。すなわち、劣化推定量にインパクトのあるシーンでのみ補正を行う。これにより、演算負荷を軽減できる。
【0046】
また本実施形態において、コントローラ10の状態推定部12は、車両モデルにより実特徴量のプロファイルから電池負荷プロファイルを演算し、補正出力に基づき前記電池負荷プロファイルを補正し、電池モデルにより、補正された電池負荷プロファイルから二次電池の劣化状態を推定する。すなわち、補正出力に基づく再シミュレーション時における演算は、電池負荷プロファイルのオフセット演算で補正成分を加える。これにより演算負荷を軽減できる。
【0047】
本実施形態の変形例として、データベース20は、代表走行イベントで車両1を走行させた場合の二次電池3の出力を推定出力として格納し、状態推定部12は、代表走行イベントから二次電池3の推定出力を演算する代わりに、データベース20に格納された推定出力を使用してもよい。本実施形態では、代表走行イベントのプロファイルを車両モデルに入力して電池負荷プロファイルを演算し、その演算結果から二次電池3の推定出力を演算したが、変形例では、車両1のスペック、二次電池3のスペック,代表的な環境条件下における走行イベントを考慮して、代表走行イベントの各Idxにおける二次電池3の推定電力を予め演算し、各Idxと対応させてデータベース20に格納する。
【0048】
例えば、
図2の例では、データベース20に格納されるIdx「661」のデータに対して、推定電力の演算値を格納する。推定電力は、Idx「661」の代表走行イベントで車両を走行させた時に、二次電池3で消費される消費電力又は消費電力量に相当する。推定電力の演算は、上記と同様に、車両モデルを用いて演算でもよい。そして、データベース20に格納された他の代表走行イベントに対しても、同様に、各代表走行イベントに対応する推定電力を予め演算し、各代表走行イベントのIdxのデータに対して、推定電力の演算値を格納する。そして、状態推定部12は、ステップS3の制御フローにおける演算処理の代わりに、特定された代表走行イベントに対応する推定出力をデータベース20から抽出する。これにより、演算負荷を軽減できる。
【0049】
また本実施形態の変形例として、データベース20は、二次電池3の推定出力をユーザ毎のデータとして格納してもよい。データベース20で規定される代表走行イベントは、ユーザの走行イベントを統計的に代表とした走行イベントとしている。変形例では、上記のシミュレーションを通じて、個々のユーザ毎に実際の走行イベントを取得しつつ、取得した走行イベントに対する、二次電池3の推定出力を推定している。そして、本変形例では、代表走行イベントのデータに対して、ユーザ毎に更新させる。ユーザ毎の更新は、データベース20に格納される特徴量に限らず、上記変形例において、各代表走行イベントのデータに対して格納された推定電力の演算値に対して、実行されてもよい。そして、データの更新は、例えば走行イベント毎に行ってもよい。なお、データの更新にあたって、特徴量の平均値、最終値、中央値になるよう、特徴量のパラメータ又は推定電力を更新してもよい。またユーザ個々に限らず、例えば年齢、性別、地域などで分類された複数のユーザ間の代表値で、特徴量のパラメータ又は推定電力を更新してもよい。なお、複数のユーザ間の代表値でデータ更新する場合には、分布を保持しておいてもよい。これにより、個々人の使われ方(履歴)を反映した補正出力を、シミュレーションにおける初期値で使用できるため、再シミュレーションを回避できる。その結果として、演算負荷を軽減しつつ、演算精度を向上させることができる。
【0050】
なお、本実施形態において、電池劣化状態推定方法の制御手順を示す各制御フロー(
図4に示すフロー)を全て実行する必要はなく、例えばステップS8の制御フローを省いてもよい。また、各制御フローの実行順は
図4に示す順序に限定しない。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明したが、これらの実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【符号の説明】
【0052】
1…車両
2…車両コントローラ
3…二次電池
10…コントローラ
11…抽出部
12…状態推定部
20…データベース
100…サーバ