(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023106001
(43)【公開日】2023-08-01
(54)【発明の名称】カラビナ
(51)【国際特許分類】
F16B 45/02 20060101AFI20230725BHJP
【FI】
F16B45/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022007085
(22)【出願日】2022-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006828
【氏名又は名称】YKK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095430
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 勲
(72)【発明者】
【氏名】吉江 謙一
【テーマコード(参考)】
3J038
【Fターム(参考)】
3J038AA01
3J038BA02
3J038BA08
3J038BC02
(57)【要約】
【課題】簡単に組み立てることができ、確実に物品を吊り下げて不用意に開くことを防ぎ、また外観が良好なカラビナを提供する。
【解決手段】複数の開口部28を有する本体16と、複数の開口部28を閉鎖する揺動部材40とから成る。本体16は、各々開口部28が形成された第1フック部12と第2フック部14、及び第1フック部12と第2フック部14を一体に連結するとともに揺動部材40の一部を保持した接続部18から成る。揺動部材40は、本体16の開口部28を閉鎖する閉鎖部42と、閉鎖部42を付勢するバネ部44とを一体に備える。揺動部材40は、本体16の接続部18に保持されている。バネ部44は湾曲部44bを有し、湾曲部44bの一端が閉鎖部42に連続し、他端側が本体16の接続部18に保持されている。本体16及び揺動部材40は、本体16の接続部18の中心に対して対称の形状に設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の開口部(28)を有する本体(16)と、複数の前記開口部(28)を閉鎖する揺動部材(40)とから成るカラビナ(10)であって、
前記本体(16)は、各々前記開口部(28)が形成された第1フック部(12)と第2フック部(14)、及び前記第1フック部(12)と前記第2フック部(14)を一体に連結するとともに前記揺動部材(40)の一部を保持した接続部(18)から成り、
前記揺動部材(40)は、前記本体(16)の前記開口部(28)を閉鎖する閉鎖部(42)と、前記閉鎖部(42)を付勢するバネ部(44)とを一体に備えて、前記揺動部材(40)が前記本体(16)の前記接続部(18)に保持されていることを特徴とするカラビナ。
【請求項2】
前記バネ部(44)は湾曲部(44b)を有し、前記湾曲部(44b)の一端が前記閉鎖部(42)に連続し、他端側が前記本体(16)の前記接続部(18)に保持されている請求項1記載のカラビナ。
【請求項3】
前記本体(16)及び前記揺動部材(40)は、前記本体(16)の前記接続部(18)の中心に対して対称の形状に設けられている請求項2記載のカラビナ。
【請求項4】
前記バネ部(44)は一方向に長いバネであり、前記揺動部材(40)は、1つの前記バネ部(44)を有し、前記バネ部(44)の両端部に前記閉鎖部(42)が前記湾曲部(44b)を介して一体に設けられ、前記各閉鎖部(42)の前記湾曲部(44b)とは反対側の先端部(42d)には被係止部(52)が設けられ、
前記揺動部材(40)は、前記バネ部(44)の長手方向の中間で、前記バネ部(44)の撓み方向に沿う面に交差する中心軸に対して、点対称の形状に設けられ、
前記第1フック部(12)及び/又は前記第2フック部(14)の先端部(12b,14b)には突起部(36)が設けられ、
前記閉鎖部(42)の先端部(42d)と、前記第1フック部(12)及び/又は前記第2フック部(14)の先端部(12b,14b)は、前記被係止部(52)と、前記突起部(36)が係合する請求項3記載のカラビナ。
【請求項5】
前記被係止部(52)は、前記各閉鎖部(42)の先端部(42d)に鉤部(52a)を有し、前記第1フック部(12)及び/又は前記第2フック部(14)の前記突起部(36)は、先端部(12b,14b)に鉤部収容凹部(38)を有する請求項4記載のカラビナ。
【請求項6】
前記カラビナは、前記本体(16)と前記揺動部材(40)との2部材から成り、前記揺動部材(40)は樹脂製である請求項4又は5記載のカラビナ。
【請求項7】
前記本体(16)の前記接続部(18)には、前記揺動部材(40)の前記バネ部(44)を収容して保持する収容空間(22)を備える請求項1又は3記載のカラビナ。
【請求項8】
前記揺動部材(40)は、前記本体(16)の前記接続部(18)に支持される揺動中心軸(46)を有し、前記揺動中心軸(46)は前記揺動部材(40)の前記バネ部(44)の長手方向の延長線に対して、所定間隔離れた位置に設けられている請求項1又は3記載のカラビナ。
【請求項9】
1以上のフック部(12,14)によって規定される1以上の開口部(28)を有する本体(16)と、前記開口部(28)を閉鎖する揺動部材(40)とから成るカラビナ(10)であって、
前記揺動部材(40)は、前記本体(16)の前記開口部(28)を閉鎖する閉鎖部(42)と、前記閉鎖部(42)を付勢するバネ部(44)とを一体に備え、
前記バネ部(44)は湾曲部を有し、前記湾曲部の一端が前記閉鎖部(42)に連続し、他端側が前記本体(16)に一体に設けられ、
前記本体(16)は、前記揺動部材(40)の前記バネ部(44)を保持する収容空間(22)を備え、
前記揺動部材(40)は、前記本体(16)に支持される揺動中心軸(46)を有し、前記揺動中心軸(46)は、前記揺動部材(40)の前記バネ部(44)の長手方向の延長線に対して、所定間隔離れた位置に設けられ、
前記閉鎖部(42)の先端部(42d)と前記フック部(12,14)の先端部(12b,14b)は、凹凸によって係合されることを特徴とするカラビナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、物品を吊り下げるフック部を有し、物品を取り付けるフック部の開口部に、開放と閉鎖を弾性的に切り替える揺動部材が設けられたカラビナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物品を吊り下げるカラビナには、いろいろな形状のものがあり、例えば物品を吊り下げるフック部の開口部に、開放と閉鎖を弾性的に切り替えるバネ部が設けられているものがある。
【0003】
例えば、特許文献1のロック式ダブルカラビナは、本体と、本体の第1および第2の側で配向された第1および第2のフックが設けられている。さらに、本体に取り付けられかつ第1のフックを閉じるように配向された第1のゲートと、第2のフックを閉じるように配向された第2のゲートが設けられている。第1および第2のゲートには摺動ロックが設けられている。摺動ロックは、本体にある切欠き部内に位置決めされるロック位置と、切り欠き部から遠い位置に位置決めされるロック解除位置を有している。このロック式ダブルカラビナは、本体の第1および第2のフックに各々物品を入れ、各々ゲートを閉じ、更に摺動ロックを切欠き部内のロック位置に摺動させる。これにより、ゲートが不用意に開くことを防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記背景技術の場合、ゲートは、金属製の棒を細長いコの字形に折り曲げ、両端部を短いL字形に折り曲げて形成され、L字形に折り曲げた両端部を、本体に形成された取付孔に差し込んで取り付けられている。このため、取付孔が目立ち、外観が良くない。ゲートはループ状のバネであり、ループに何かが引っ掛かって強い力が加えられると不用意に外れることがある。また、ゲートの厚みが、本体より大きく凹凸となり、他のものに引っ掛かりやすいという問題もある。さらに、摺動ロックもゲートに摺動可能に取り付けられ、目立つものである。その他、本体と、2つのゲートとの3点から成り、コスト高である。
【0006】
この発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたものであり、簡単に組み立てることができ、確実に物品を吊り下げて不用意に開くことがなく、また外観が良好なカラビナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、複数の開口部を有する本体と、複数の前記開口部を閉鎖する揺動部材とから成るカラビナであって、前記本体は、各々前記開口部が形成された第1フック部と第2フック部、及び前記第1フック部と前記第2フック部を一体に連結するとともに前記揺動部材の一部を保持した接続部から成り、前記揺動部材は、前記本体の前記開口部を閉鎖する閉鎖部と、前記閉鎖部を付勢するバネ部とを一体に備えて、前記バネ部が前記本体の前記接続部に保持されているカラビナである。
【0008】
前記バネ部は湾曲部を有し、前記湾曲部の一端が前記閉鎖部に連続し、他端側が前記本体の前記接続部に保持されている。前記本体及び前記揺動部材は、前記本体の前記接続部の中心に対して対称の形状に設けられている。
【0009】
前記バネ部は一方向に長いバネであり、前記揺動部材は、1つの前記バネ部を有し、前記バネ部の両端部に前記閉鎖部が前記湾曲部を介して一体に設けられ、前記各閉鎖部の前記湾曲部とは反対側の先端部には被係止部が設けられ、前記揺動部材は、前記バネ部の長手方向の中間で、前記バネ部の撓み方向に沿う面に交差する中心軸に対して、点対称の形状に設けられ、前記第1フック部及び/又は前記第2フック部の先端部には突起部が設けられ、前記閉鎖部の先端部と、前記第1フック部及び/又は前記第2フック部の先端部は、前記被係止部と前記突起部が組み合わされ係合する。
【0010】
前記被係止部は、前記各閉鎖部の先端部に鉤部を有し、前記第1フック部及び/又は前記第2フック部の前記突起部は、先端部に鉤部収容凹部を有する。さらに、前記カラビナは、前記本体と前記揺動部材との2部材から成り、前記揺動部材は樹脂製である。
【0011】
前記本体の前記接続部には、前記揺動部材の前記バネ部を収容して保持する収容空間を備える。また、前記揺動部材は、前記本体の前記接続部に支持される揺動中心軸を有し、前記揺動中心軸は前記揺動部材の前記バネ部の長手方向の延長線に対して、所定間隔離れた位置に設けられている。
【0012】
また本発明は、1以上のフック部によって規定される1以上の開口部を有する本体と、前記開口部を閉鎖する揺動部材とから成るカラビナであって、前記揺動部材は、前記本体の前記開口部を閉鎖する閉鎖部と、前記閉鎖部を付勢するバネ部とを一体に備え、前記バネ部は湾曲部を有し、前記湾曲部の一端が前記閉鎖部に連続し、他端側が前記本体に一体に設けられ、前記本体は、前記揺動部材の前記バネ部を保持する収容空間を備え、前記揺動部材は、前記本体に支持される揺動中心軸を有し、前記揺動中心軸は、前記揺動部材の前記バネ部の長手方向の延長線に対して、所定間隔離れた位置に設けられ、前記閉鎖部の先端部と前記フック部の先端部は、凹凸によって係合されるカラビナである。
【発明の効果】
【0013】
本発明のカラビナは、本体と、本体の開口部の開放と閉鎖を弾性的に切り替える揺動部材とから成り、部品構成が簡素であり、簡単に組み立てることができ、コストも低減される。また確実に物品を吊り下げることができ、不用意に開くこともない。さらに、揺動部材の、開放と閉鎖を弾性的に切り替えるバネ部を本体に収容することにより、揺動部材等が不用意に外れることがなく、本体の表面の外観が良好となり、本体の表面に文字や絵柄を設けることができ、意匠性が高い構成にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】この発明の一実施形態のカラビナの斜視図である。
【
図2】この実施形態のカラビナの平面図(a)と正面図(b)、右側面図(c)である。
【
図7】この実施形態のカラビナの本体の平面図(a)と正面図(b)、右側面図(c)である。
【
図9】この実施形態のカラビナの揺動部材の平面図(a)と正面図(b)、右側面図(c)である。
【
図10】この実施形態のカラビナの揺動部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1~
図10はこの発明の一実施形態を示すもので、この実施形態のカラビナ10は、物品を取り付ける第1フック部12と第2フック部14とを備えた本体16が設けられている。本体16は、例えば合成樹脂で一体に成形されている。なお、後述する揺動部材40に、バネ性のある樹脂を採用すれば、本体16の材料選定は自由にすることができ、バネ性を持たない材料でも良く、金属や樹脂のリサイクル材料等、何でも良い。
【0016】
本体16について、
図7、
図8に基づいて説明する。本体16は、第1フック部12と第2フック部14を一体に連結するとともに後述する揺動部材40の一部を保持する接続部18が設けられている。本体16の接続部18は、平行四辺形の板状に形成され、互いに平行な一対の辺を有し、短い一対の辺である側縁部18a,18bと、それよりも例えば2倍程度の長さを有する一対の辺である側縁部18c,18dで形成されている。
【0017】
接続部18は、同形状の2つの平行四辺形の板体が所定間隔開けて互いに平行に設けられて形成されている。各側縁部18a,18b,18c,18dは、互いに所定間隔を開けて対向している。側縁部18aと側縁部18cで囲まれた角部と、側縁部18bと側縁部18dで囲まれた角部が鋭角となり、この鋭角の角部付近は、一対の板体の間の間隔を埋める厚みを有して一対の板体を連結する連結部20となる。一対の板体の間の所定間隔の空間は、後述する揺動部材40を収容する収容空間22であり、連結部20以外の側縁部18a,18b,18c,18dは、収容空間22に連通して開口する。なお、接続部18の板体の厚み方向を、本体16の厚み方向とする。本体16は、後述するように、接続部18を厚み方向に貫通する仮想の中心軸に対して点対称に形成されている。
【0018】
接続部18は、側縁部18aと側縁部18dで囲まれた角部と、側縁部18bと側縁部18cで囲まれた角部が、鈍角となり、この鈍角の角部付近には、収容空間22側の内側面18eに、所定の厚みで突出する一対の保持部24が各々形成されている。保持部24の、内側面18eに対して平行な外形状は略矩形である。
【0019】
一対の保持部24のうち、一方の側縁部18aと側縁部18dで囲まれた角部に設けられた保持部24aは、側縁部18aと、側縁部18dと、側縁部18aの角部から少し離れた位置に略直角に交差する一辺と、側縁部18dの角部から少し離れた位置に交差し側縁部18aに対して略平行な一辺で囲まれた外形状である。保持部24aの、内側面18eに対して略平行な面には、軸受け凹部26が所定の深さで設けられている。軸受け凹部26は、側縁部18aに対して略直角に連通する溝形状であり、本体16の外側に開放されている。軸受け凹部26の、側縁部18aとは反対側の端部は側縁部18aとは反対側に膨出する半円形状である。軸受け凹部26の、側縁部18aに連通する部分は、内側面18e側に幅広くなり、内側面18eにも連通する。保持部24aは、接続部18を形成する一対の板体に各々形成され、収容空間22内で互いに対面している。
【0020】
他方の側縁部18bと側縁部18cで囲まれた角部に設けられた保持部24bは、保持部24aと同形状であり、側縁部18bと、側縁部18cと、側縁部18bの角部から少し離れた位置に略直角に交差する一辺と、側縁部18cの角部から少し離れた位置に交差し側縁部18bに対して略平行な一辺で囲まれた外形状である。保持部24bにも、軸受け凹部26が所定の深さで設けられている。軸受け凹部26は、側縁部18bに対して略直角に連通する溝形状であり、側縁部18bとは反対側の端部は側縁部18bとは反対側に膨出する半円形状である。軸受け凹部26の、側縁部18bに連通する部分は、側縁部18c側に幅広くなり、側縁部18cにも連通する。保持部24bも、保持部24aと同様に、接続部18を形成する一対の板体に各々形成され、収容空間22内で互いに対面している。
【0021】
接続部18の、側縁部18cの側方には、第1フック部12が突出して設けられている。第1フック部12は、変形したコの字形の棒状に形成され、長手方向の一端部である基端部12aは、接続部18の側縁部18c側の、連結部20に連続している。そして、連結部20から側縁部18aの延長線に沿って外側に突出し、所定位置で、側縁部18cに対して略平行につまり鋭角に折り曲がり、さらに、側縁部18bの延長線上に達する位置で、側縁部18bに対して略平行につまり鈍角に接続部18に向かって折り曲がり、第1フック部12の先端部12bは、接続部18から所定間隔離間した位置に達している。第1フック部12の先端部12bと接続部18の間の空間は、第1フック部12に物品を入れる開口部28となる。先端部12bの、第1フック部12のコの字形の外側となる外側面が、側縁部18bの延長線に位置している。
【0022】
先端部12bには、係合爪30が設けられている。係合爪30は、先端部12bの長手方向に交差する断面よりも小さい断面を有する細い形状に形成され、厚み方向に離れて一対が設けられ、先端部12bから接続部18に向かって突出する。各係合爪30は、先端部12b付近の、側縁部18bの延長線上に位置する外側面と面一の側面30aと、外側面30aとは反対側の側面30bと、側面30aと側面30bの間に位置する側面30c,30dから形成されている。側面30cは、一対の係合爪30の互いに離れた外側の面であり、側面30dは一対の係合爪30の互いに対面する内側の面である。側面30bは、先端部12bの、コの字形の内側面の延長線よりも外側面30a側に移動した位置にある。これにより内側面30bは先端部12bからくぼんだようになり、くぼんだ空間は、後述する揺動部材40の閉鎖部42の当接部50が収容される収容部32となる。
【0023】
また、各係合爪30の側面30cは、先端部12b付近の側面と面一であり、側面30dは、所定間隔離れて空間に面し、この空間は揺動部材40の閉鎖部42の被係止部52が収容される収容部34となる。収容部34は収容部32と連通している。係合爪30の側面30dには、第1フック部12の先端部12bから離れた先端部分に、収容部34へ突出する突起部36が各々設けられている。突起部36の、先端部12bに対向する面には、収容部32と反対側に位置する側縁部に沿って形成された鉤部収容凹部38が設けられている。鉤部収容凹部38は、揺動部材40の閉鎖部42の被係止部52の、鉤部52aが収容される。
【0024】
接続部18の、側縁部18dの側方には、第1フック部12と点対称形状の第2フック部14が突出して設けられている。第2フック部14は、変形したコの字形の棒状に形成され、長手方向の一端部である基端部14aは、接続部18の側縁部18d側の、連結部20に連続している。そして、連結部20から側縁部18bの延長線に沿って外側に突出し、所定位置で、側縁部18dに対して略平行につまり鋭角に折曲がり、さらに側縁部18aの延長線上に達する位置で、側縁部18aに対して略平行につまり鈍角に接続部18に向かって折り曲がり、第2フック部14の先端部14bは、接続部18から所定間隔離間した位置に達している。第2フック部14の先端部14bと接続部18の間の空間は、第2フック部14に物品を入れる開口部28となる。先端部14bの、第2フック部14のコの字形の外側となる外側面が、側縁部18aの延長線に位置している。
【0025】
先端部14bには、先端部12bと同形状の係合爪30が設けられている。係合爪30は、先端部14bの長手方向に交差する断面よりも小さい断面を有する細い形状に形成され、厚み方向に離れて一対が設けられ、先端部14bから接続部18に向かって突出する。各係合爪30は、先端部14b付近の、側縁部18aの延長線上に位置する外側面と面一の側面30aと、外側面30aとは反対側の側面30bと、側面30aと側面30bの間に位置する側面30c,30dから形成されている。側面30cは、一対の係合爪30の互いに離れた外側の面であり、側面30dは一対の係合爪30の互いに対面する内側の面である。側面30bは、先端部14bの、コの字形の内側面の延長線よりも外側面30a側に移動した位置にある。これにより内側面30bは先端部14bからくぼんだようになり、くぼんだ空間は、後述する揺動部材40の閉鎖部42の当接部50が収容される収容部32となる。
【0026】
また、各係合爪30の側面30cは、先端部14b付近の外側面と面一であり、側面30dは、所定間隔離れて空間に面し、この空間は揺動部材40の閉鎖部42の被係止部52が収容される収容部34となる。収容部34は収容部32と連通している。係合爪30の側面30dには、第2フック部14の先端部14bから離れた先端部分に、収容部34へ突出する突起部36が各々設けられている。突起部36の、先端部14bに対向する面には、収容部32と反対側に位置する側縁部に沿って形成された鉤部収容凹部38が設けられている。鉤部収容凹部38は、揺動部材40の閉鎖部42の被係止部52の、鉤部52aが収容される。
【0027】
カラビナ10は、本体16の2つの開口部28を閉鎖する1つの揺動部材40が設けられている。揺動部材40について、
図9、
図10に基づいて説明する。揺動部材40は、本体16の開口部28を閉鎖する閉鎖部42と、閉鎖部42を付勢するバネ部44とを一体に備えている。揺動部材40は、バネ性のある合成樹脂で一体に成形されている。
【0028】
揺動部材40のバネ部44は、一方向に長い棒状であり、長手方向に交差する断面形状は長方形であり、長方形の長手方向が、本体16に取り付けた時に本体16の厚み方向に一致する。そして、人の手で一定以上の力を加えると容易に弾性変形する。バネ部44はZ形状に折り曲げられ、中間部分の直線である直線部44aと、直線部44aの両端に連続する湾曲部44bからなる。湾曲部44bは、直線部44aに対して鋭角に折り曲げて形成され、一対の湾曲部44bの折り曲げる方向は、直線部44aを含む同一面上で、直線部44aから互いに離れる方向である。なお、直線部44aと湾曲部44bが位置する面は、揺動部材40を本体16に取り付けた時に本体16の厚み方向に交差する。また、一対の湾曲部44bの角部は丸く湾曲している。湾曲部44bの、直線部44aとは反対側の端部付近は直線となり、一対の湾曲部44bのこの直線部分は、互いに略平行である。
【0029】
湾曲部44bの、直線部44aとは反対側の端部に、閉鎖部42が各々設けられている。閉鎖部42は、湾曲部44bの端部の直線部分の延長線方向に長い棒状である。閉鎖部42は、長手方向の一端部である基端部42aと、湾曲部44bの角部の内側に連続する内側面42bと、内側面42bとは反対側の外側面42cと、基端部42aとは反対側に位置し外側面42cに対して略直角に交差する先端部42dから形成されている。閉鎖部42の長手方向の一端部である基端部42aがバネ部44の湾曲部44bの端部に連続し、湾曲部44bとの境界が段部となる。
【0030】
閉鎖部42の長手方向は、本体16の開口部28を閉鎖する長さである。長手方向に交差する断面形状は長方形であり、本体16に取り付けた時に本体16の厚み方向に一致する厚み方向は、第1フック部12の先端部12bや、第2フック部14の先端部14bよりも小さく、バネ部44の厚み方向よりは少し大きい。厚み方向に交差する幅方向の長さ、つまり内側面42bと外側面42cの間隔は、厚み方向よりも長く、第1フック部12の先端部12bや、第2フック部14の先端部14bの幅とほぼ同じであり、バネ部44の幅方向よりも広い。
【0031】
基端部42aと湾曲部44bの境界である段部の、厚み方向から見た外郭線は、内側面42bと外側面42cに連結し、中間部分が閉鎖部42の中央に向かって膨出する曲線となり、外側面42cに連結する位置は、内側面42bに連結する位置よりも先端部42dから遠い。つまり、湾曲部44b側に向かって長く張り出している。
【0032】
バネ部44の湾曲部44bと、基端部42aの間の部分は、本体16に取り付けた時に、本体16の接続部18の保持部24が位置する取付部44cとなる。取付部44cは湾曲部44bと面一であり、つまり湾曲部44bと同じ厚みで、閉鎖部42よりも薄い。取付部44cの、厚み方向から見た形状は、内側面42bの延長線に沿う直線と、先端部42dに対して略平行な直線と、湾曲した基端部42aで囲まれて扇形状となる。扇形状の中心には、揺動中心軸46が一体に設けられている。揺動中心軸46は、厚み方向に対して略平行な中心軸を有する円筒形状であり、取付部44cの両面から厚み方向へ突出している。揺動中心軸46は、閉鎖部42の基端部42aから離間している。揺動中心軸46は、本体16の保持部24に形成された軸受け凹部26に回転可能に保持される。
【0033】
湾曲部44bは、揺動中心軸46よりも閉鎖部42の外側面42c側に連結されている。つまり、揺動中心軸46は、閉鎖部42の、内側面42bと外側面42cの中間の中心線の延長線に対して所定間隔だけ内側面42b側に離れた位置に設けられている。これにより、バネ部44によって閉鎖部42を移動する力は、揺動中心軸46よりも閉鎖部42の外側面42c側に離れた位置に作用する。湾曲部44bは、閉鎖部42に近づくにつれて徐々に幅広になっており、連結強度が高い。
【0034】
閉鎖部42の先端部42dに連続する部分には、内側面42bと外側面42c、先端部42dに交差する側面42eに、閉鎖部42の厚み方向に薄く形成した係止凹部48が設けられている。係止凹部48は、外側面42cと先端部42dに連接して矩形に形成され、内側面42bとの間の細い切り残し部分は、本体16の第1フック部12の先端部12b又は第2フック部14の先端部14bの、収容部32に差し込まれて係合爪30に内側面30bから当接する当接部50である。係止凹部48には、先端部42dに沿う被係止部52が、所定の幅で、当接部50よりも低い所定の高さで形成されている。被係止部52は、本体16の第1フック部12の先端部12b又は第2フック部14の先端部14bの収容部34に差し込まれて係合爪30に位置決めされる被係止部52である。被係止部52の、外側面42cに連続する部分は、外側面42cに沿って基端部42a側へ突出する鉤部52aが連続して形成されている。係止凹部48の、被係止部52と鉤部52a以外の底部分は、外側面42cの厚みの中心に沿う薄い板形状となり、本体16の一対の係合爪30の突起部36の間に差し込まれ、位置決めされる。
【0035】
揺動部材40は、バネ部44の厚み方向に交差する方向に撓むものであり、バネ部44の長手方向の中間で、撓み方向に沿う面に交差する仮想の中心軸に対して、点対称の形状に設けられ、互いに180°回転した形状である。なお、本体16も、接続部18の中心で厚み方向に沿う仮想の中心軸に対して、点対称の形状に設けられ、互いに180°回転した形状である。
【0036】
次に、この実施形態のカラビナ10の組立方法について説明する。本体16と揺動部材40の厚み方向を一致させ、揺動部材40の、一方の閉鎖部42の先端部42dを、接続部18の側縁部18dから収容空間22に差し込み、側縁部18bから出す。この時、揺動中心軸46も側縁部18dから出るまで、揺動部材40を引き伸ばしながら湾曲部44bの角度を大きく弾性変形させながら、引き出し、側縁部18bから保持部24bの軸受け凹部26に入れる。他方の閉鎖部42側の揺動中心軸46も、側縁部18aから保持部24aの軸受け凹部26に入れる。すると、揺動部材40の弾性変形が復元し、揺動中心軸46が軸受け凹部26の奥の半円形の壁部に引き付けられて、外れなくなり、一対の揺動中心軸46は一対の軸受け凹部26に、回転可能に収容され、揺動部材40のバネ部44は、本体16の接続部18の収容空間22に収納される。この時、一対の閉鎖部42は、一対の開口部28に、各々斜めに外側に突出した状態である。
【0037】
次に、各閉鎖部42の先端部42dを、本体16の係合爪30を、厚み方向へ弾性変形させて乗り越え、次にバネ部44の湾曲部44bの角度を小さくするように弾性変形させ、係合爪30の内側面30b側に入れる。弾性変形させた力を解除すると、先端部42dはバネ部44の弾発力により、第1フック部12の先端部12bの、一対の係合爪30の間に差し込まれ、当接部50が、係合爪30の内側面30bに付勢されて当接し、係合する。
【0038】
この時、係止凹部48が、一対の係合爪30の突起部36に位置するため、厚み方向に位置決めされる。また、当接部50が、係合爪30の内側面30bに付勢されて当接するため、厚み方向に交差する
図2(b)において左右方向にずれることが無く位置決めされ、第1フック部12では先端部42dが右へずれることが無く、第2フック部14では先端部42dが左へずれることが無い。また、被係止部52の鉤部52aが、係合爪30の突起部36の鉤部収容凹部38に位置するため、厚み方向に交差する
図2(b)において左右方向にずれることが無く位置決めされ、第1フック部12では先端部42dが左へずれることが無く、第2フック部14では先端部42dが右へずれることが無い。なお、厚み方向に交差する
図2(b)において上下方向には、揺動中心軸46が軸受け凹部26に収容されているため、移動することが無い。
【0039】
これにより、揺動部材40は、本体16に、一対の開口部28に閉鎖部42が各々位置決めされ閉鎖された状態となり、組み立てが完了する。各閉鎖部42には、バネ部44の湾曲部44bの角度が大きくなろうとする弾発力で、先端部42d側が揺動中心軸46の軸周りに回転する力が付勢され、先端部42dが係合爪30の内側面30bに押し付けられ、外れることが無い。
【0040】
なお、組立方法はこれと逆に、揺動部材40の、一方の閉鎖部42の先端部42dを、接続部18の側縁部18cから収容空間22に差し込み、側縁部18aから出して、組み立ててもよい。
【0041】
次に、カラビナ10の使用方法について説明する。物品を第1フック部12又は第2フック部14に吊り下げる時は、
図6に示すように、閉鎖部42を開口部28の内側に押してバネ部44を弾性変形させながら揺動中心軸46を中心に回転させ、先端部42dを第1フック部12の係合爪30から離間させて開放させる。先端部42dの鉤部52aが、係合爪30の鉤部収容凹部38に係合して左方向に位置決めされているが、通常は係合面積が小さいため、一定以上の力を加えることで開放可能である。そして、物品を通過させ、力を抜くと、閉鎖部42はバネ部44の弾発力により、再び揺動中心軸46を中心に回転し、開口部28を閉鎖する。閉鎖部42は常に係合爪30に向かって付勢されているため、不用意に開くことが無い。しかも、閉鎖部42の係止凹部48、当接部50、被係止部52、鉤部52aが、本体16の収容部34、収容部32、鉤部収容凹部38に収容され、厚み方向及び厚み方向に交差するいずれの方向にも係止され、外れることが無い。
【0042】
また、一方の閉鎖部42を押し込んで開口部28を開口すると、
図6に示すように湾曲部44bが撓んで僅かに接続部18の側縁部18bから外側に膨出し、バネ部44の直線部44aに、外側へ引く力が生じるが、反対側の閉鎖部42には、揺動中心軸46を中心として開口部28を閉鎖する方向に力が加えられるので、反対側の閉鎖部42が不用意に開くことが無い。
【0043】
第1フック部12に吊り下げた物品に強い力が加えられると、第1フック部12の先端部12bは、閉鎖部42の先端部42dから離れる方へ僅かに弾性変形するが、鉤部52aが鉤部収容凹部38に、より深く差し込まれるため、鉤部52aと鉤部収容凹部38との係合面積が大きくなり、開放が不可能となるので不用意に係合が解除されず安全である。
【0044】
この実施形態のカラビナ10によれば、本体16と揺動部材40との、2部材から成り、部品構成が簡素であり、コストが低減され、部品の管理が容易であり、また本体16と揺動部材40の組み立てが容易である。揺動部材40のバネ部44と揺動中心軸46は接続部18の収容空間22に収容され、接続部18の表面から隠されるため外観が良好である。接続部18の表面は広い面積をとることができ、文字や絵柄を設けることができ、商品名やメーカー等を記載することもでき、顧客のロゴを追加する等の処理も可能であり、意匠性や機能性等の付加価値を高めることができる。また組立用の穴が不要であり、外形に凹凸がなくシンプルで意匠にすることができ、意匠性が高い上に、他の部材に引っかかることも抑えられる。
【0045】
また、確実に物品を吊り下げることができ、不用意に開くことを防ぐ。閉鎖部42の先端部42dは、本体16の係合爪30に、2方向に係止され、物品が重量物であったり、強い力が加えられたりして、第1フック部12又は第2フック部14が変形しても、鉤部52aと鉤部収容凹部38との係合面積が大きくなり、開放が不可能となり、安全である。揺動中心軸46は、閉鎖部42の、内側面42bと外側面42cの中間の中心線の延長線に対して所定間隔だけ内側面42b側に離れた位置に設けられているため、閉鎖部42を、揺動中心軸46を中心として回転させて一方の開口部28を開いても、他方の開口部28が開いたり付勢力が弱まったりすることが無い。閉鎖部42は、基端部42aには揺動中心軸46が、先端部42dには当接部50と被係止部52が設けられて、本体16に確実に係合され、強度が高い。これにより第1フック部12と第2フック部14に剛性を持たせる必要がなく、この点からも意匠に自由度が出る。揺動部材40は、2つの揺動中心軸46による2点の軸と、湾曲部44bを有するバネ部44の配置により、一方の閉鎖部42を開く際に開口部28の内側に押し込むと、反対側の閉鎖部42が開く方向へ力がかかり、第1フック部12又は第2フック部14の係合爪30に押し付けられて閉じる構造になっている。これにより、反対側の閉鎖部42が不用意に開くことが無い。
【0046】
本体16は、一対の開口部28が開放され、また一対の開口部28の間には収容空間22が連通しているため、組み立てが容易である。また軸受け凹部26は、本体16の外側に連通しているため、揺動部材40を本体16に組み立てる際は、バネ部44の湾曲部44bの角度を広げるように弾性変形させて、揺動中心軸46を、接続部18の側縁部18a,側縁部18bの外側から軸受け凹部26に入れることで行われ、組み立てが容易である。また、揺動中心軸46が、本体16の外側に露出しないため、意匠性が高まる。
【0047】
揺動部材40は、本体16の厚みに収容され、他の物に引っ掛かることが無く、また、閉鎖部42が開口部28から外れづらい。バネ部44の構造がシンプルであり、クリープの影響を受けにくい。揺動部材40に、バネ性のある樹脂を採用すれば、本体16の材料選定は自由にすることができバネ性を持たない材料でも良く、金属やリサイクル材料等、何でも良い。顧客の要望に応じて、金属による高強度化や、リサイクル材料によるサステナブル製品の提案に利用することができる。
【0048】
なお、この発明のカラビナは、上記実施の形態に限定されるものではなく、本体と揺動部材の形状は適宜変更可能であり、揺動部材が本体に確実に取り付けられるものであれば良く、本体のフック部の数は1つでも良い。吊り下げる物品は、カメラ、ホイッスル、鞄、ケース等、色々なものに使用することができる。本体と揺動部材の材料や色、表面処理、透明度等は自由に変更可能であり、デザインや必要な機能に合わせて適宜変更可能である。金属製でも良い。
【符号の説明】
【0049】
10 カラビナ
12 第1フック部
14 第2フック部
16 本体
18 接続部
20 連結部
22 収容空間
24,24a,24b 保持部
26 軸受け凹部
28 開口部
30 係合爪
32,34 収容部
36 突起部
38 鉤部収容凹部
40 揺動部材
42 閉鎖部
44 バネ部
44a 直線部
44b 湾曲部
46 揺動中心軸
50 当接部
52 被係止部