IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アート食品株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-野菜の処理方法 図1
  • 特開-野菜の処理方法 図2
  • 特開-野菜の処理方法 図3
  • 特開-野菜の処理方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023106058
(43)【公開日】2023-08-01
(54)【発明の名称】野菜の処理方法
(51)【国際特許分類】
   A23B 7/153 20060101AFI20230725BHJP
   A23L 19/00 20160101ALI20230725BHJP
【FI】
A23B7/153
A23L19/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022007177
(22)【出願日】2022-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】521147134
【氏名又は名称】アート食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148895
【弁理士】
【氏名又は名称】荒木 佳幸
(72)【発明者】
【氏名】沖田 徹
(72)【発明者】
【氏名】田島 郁也
【テーマコード(参考)】
4B016
4B169
【Fターム(参考)】
4B016LC06
4B016LG10
4B016LK01
4B016LP10
4B016LP11
4B016LP13
4B169AA04
4B169CA02
4B169HA09
4B169KA01
4B169KB03
4B169KC18
4B169KC19
(57)【要約】
【課題】電子レンジ加熱時の食感の低下を抑制することが可能な野菜の処理方法を提供すること。
【解決手段】冷蔵保管され、電子レンジによる加熱調理が可能な野菜の処理方法は、処理対象である野菜を喫食サイズにカットする工程Aと、野菜を収容籠に入れる工程Bと、収容籠を洗浄液で満たされた洗浄槽に5~10分間完全に沈めた状態で、収容籠を野菜の表面に傷が付かないように第1の移動速度で移動させる、又は洗浄液を野菜の表面に傷が付かないように第1の水流で循環させる工程Cと、収容籠を殺菌液で満たされた殺菌槽に3~10分間完全に沈めた状態で、収容籠を野菜の表面に傷が付かないように第2の移動速度で移動させる、又は洗浄液を野菜の表面に傷が付かないように第2の水流で循環させる工程Dと、殺菌液を脱水する工程Eと、収容籠から野菜を取り出して、電子レンジ加熱用包材でパックする工程Fと、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷蔵保管され、電子レンジによる加熱調理が可能な野菜の処理方法であって、
処理対象である野菜を喫食サイズにカットする工程Aと、
前記工程Aの実施後に、前記野菜を収容籠に入れる工程Bと、
前記工程Bの実施後に、前記収容籠を洗浄液で満たされた洗浄槽に5~10分間完全に沈めた状態で、前記収容籠を前記野菜の表面に傷が付かないように第1の移動速度で移動させる、又は前記洗浄液を前記野菜の表面に傷が付かないように第1の水流で循環させる工程Cと、
前記工程Cの実施後に、前記収容籠を殺菌液で満たされた殺菌槽に3~10分間完全に沈めた状態で、前記収容籠を前記野菜の表面に傷が付かないように第2の移動速度で移動させる、又は前記洗浄液を前記野菜の表面に傷が付かないように第2の水流で循環させる工程Dと、
前記工程Dの実施後に、前記殺菌液を脱水する工程Eと、
前記工程Eの実施後に、前記収容籠から前記野菜を取り出して、電子レンジ加熱用包材でパックする工程Fと、
を含む野菜の処理方法。
【請求項2】
前記第1及び第2の移動速度が、0.15~0.7m/分であることを特徴とする請求項1に記載の野菜の処理方法。
【請求項3】
前記第1及び第2の水流が、3~10L/分であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の野菜の処理方法。
【請求項4】
前記殺菌液は、50~300ppmの濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の野菜の処理方法。
【請求項5】
前記野菜が、葉物野菜を含むことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の野菜の処理方法。
【請求項6】
前記収容籠は、多数の貫通孔を有する金属製の有底筒状の本体部と、多数の貫通孔を有し、前記本体部の開口部を塞ぐように配置される金属製の蓋体部と、を有することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の野菜の処理方法。
【請求項7】
前記本体部の貫通孔の直径及び前記蓋体部の貫通孔の直径が、前記喫食サイズよりも小さいことを特徴とする請求項6に記載の野菜の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜の処理方法に関し、特に、冷蔵保管され、電子レンジによる加熱調理が可能な野菜の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、家庭内での調理が簡便になることから、冷凍食品、レトルト食品、ミールキット等、電子レンジによる加熱調理が可能な食品の需要が急増している。
【0003】
しかし、従来の電子レンジ加熱食品においては、冷凍処理や電子レンジ加熱によって品質が低下するといった問題があるため、メニュー開発が限定される等の欠点がある。例えば、カット野菜を含有する電子レンジ加熱食品においては、電子レンジ加熱の際に食感の低下やカット野菜からドリップが発生することがあり、商品価値が低下してしまうため、野菜類の種類としては、大根、人参、牛蒡、薩摩芋、馬鈴薯等の根菜類、玉葱、カリフラワー等の葉茎菜類、グリーンピース、サヤインゲン等の果菜類が中心である(例えば、特許文献1)。
【0004】
なお、このようなカット野菜は、一般に、トリミング、切断、洗浄、殺菌処理(アルカリ性食品殺菌剤(例えば、次亜塩素酸ナトリウム等)、中性食品殺菌剤(例えば、次亜塩素酸水等)、酸性食品殺菌剤(例えば、過酢酸製剤等)による処理)、洗浄(殺菌剤特有の臭いがとれるまでの入念な洗浄)、脱水、秤量、パック化の手順で行われるが、一般に加工された野菜表皮の微細な傷等には微生物が残存し、しかも傷によっては殺菌剤溶液が接触できない部分(つまり、殺菌処理できない部分)が残ってしまうことがあるため、菌が繁殖し、可食域とされる菌数を短期間内に越えてしまう(つまり、日持ちが短い)のが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-145583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、従来のカット野菜を含有する電子レンジ加熱食品においては、根菜類、葉茎菜類、果菜類が利用されているのが実情であり、特に日保ちが短く(消費期限が短く)、また電子レンジ加熱時の食感の低下が著しい、白菜、キャベツ、レタス、ほうれん草等、いわゆる葉物野菜を含有し、冷蔵保管される電子レンジ加熱食品は、皆無である。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、電子レンジ加熱時の食感の低下を抑制することが可能な(つまり、電子レンジによる加熱調理が可能な)野菜の処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが上記目的を達成するために鋭意検討したところ、電子レンジ加熱時に野菜(特に、冷蔵保管される葉物野菜類)の食感が低下する主な原因は、野菜の保水性の低下に起因することを見出した。そして、保水性の低下は、従来の処理方法(つまり、入念な洗浄と殺菌工程)によって生じる野菜の表面に傷に起因することを見出し、野菜を所定の収容籠に入れ、静かな水流で洗浄、殺菌すると、野菜の表面に傷が入らず、菌の繁殖を抑制すると共に、野菜の変色や退色を抑えつつ、さらに野菜の保水性を維持できることを見出した。
本発明は、このような知見に基づいてなされたものである。
【0009】
すなわち、本発明の野菜の処理方法は、冷蔵保管され、電子レンジによる加熱調理が可能な野菜の処理方法であって、処理対象である野菜を喫食サイズにカットする工程Aと、工程Aの実施後に、野菜を収容籠に入れる工程Bと、工程Bの実施後に、収容籠を洗浄液で満たされた洗浄槽に5~10分間完全に沈めた状態で、収容籠を野菜の表面に傷が付かないように第1の移動速度で移動させる、又は洗浄液を野菜の表面に傷が付かないように第1の水流で循環させる工程Cと、工程Cの実施後に、収容籠を殺菌液で満たされた殺菌槽に3~10分間完全に沈めた状態で、収容籠を野菜の表面に傷が付かないように第2の移動速度で移動させる、又は洗浄液を野菜の表面に傷が付かないように第2の水流で循環させる工程Dと、工程Dの実施後に、殺菌液を脱水する工程Eと、工程Eの実施後に、収容籠から野菜を取り出して、電子レンジ加熱用包材でパックする工程Fと、を含むことを特徴とする。
【0010】
このような野菜の処理方法によれば、洗浄、殺菌の工程で野菜の表面に傷が付かないため、菌の繁殖を抑制すると共に、野菜の変色や退色を抑えることができる。また、野菜の保水性が維持されるため、電子レンジ加熱時の食感の低下を抑制することが可能となる。
【0011】
また、第1及び第2の移動速度が、0.15~0.7m/分であることが望ましい。
【0012】
また、第1及び第2の水流が、3~10L/分であることが望ましい。
【0013】
また、殺菌液は、50~300ppmの濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液であることが望ましい。
【0014】
また、野菜が、葉物野菜を含むことが望ましい。
【0015】
また、収容籠は、多数の貫通孔を有する金属製の有底筒状の本体部と、多数の貫通孔を有し、本体部の開口部を塞ぐように配置される金属製の蓋体部と、を有することが望ましい。また、この場合、本体部の貫通孔の直径及び蓋体部の貫通孔の直径が、喫食サイズよりも小さいことが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明の野菜の処理方法によれば、静かな水流で洗浄、殺菌するため、野菜の表面の傷の発生が抑制され、菌の繁殖が抑制されると共に、野菜の保水性を維持できる。その結果、電子レンジ加熱時の食感の低下を抑制することが可能な(つまり、電子レンジによる加熱調理が可能な)野菜の処理方法が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の実施形態に係る野菜の処理方法の工程Bを説明する図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る野菜の処理方法の工程Cを説明する図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る野菜の処理方法の工程Dを説明する図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係る野菜の処理方法の工程Fを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明者らは、電子レンジ加熱時に野菜(特に、葉物野菜)の食感が低下する主な原因が野菜の保水性の低下に起因することを見出し、さらに保水性の低下は野菜の表面の傷に由来することを見出した。
一般に、従来の洗浄処理及び殺菌処理は、洗浄槽及び殺菌槽に処理対象のカット野菜を入れ、バブリング等によって激しい水流を発生させることによって行われる。本発明者らは、洗浄処理前のカット野菜の表面と、殺菌処理後のカット野菜の表面を比較することによって、洗浄処理及び殺菌処理によってカット野菜の表面に微細な傷が発生することを見出した。これは、バブリング等による激しい水流や缶壁への衝突等によって発生するものと考えられる。
このようにカット野菜の表面に傷が付いた状態でパックされると、野菜の呼気量が増大する。ちなみにホール野菜を1/2カットすることにより、呼気量は約2倍に増えるといわれている。そして、パックされた状態で野菜の呼気量が増大すると、パック内の酸素量が減少し炭酸ガスが増えるため、冷蔵による冷却効果が損なわれることとなる。
そして、一旦冷却効果が損なわれると、菌が増殖することによって、さらに炭酸ガスが増え(呼気量が増大するため)、エチレンガスも誘引される結果、冷却効果はさらに損なわれ、変色や退色が進むと考えられる。
また、野菜からは水分が蒸散し、野菜の呼吸によっても水分が奪われるため、冷却効果が損なわれ、野菜の呼気量が増大すると、野菜の保水性も著しく低下すると考えられる。
本発明は、このようなカット野菜の表面の傷に着目してなされたものであり、カット野菜の表面に傷が付かないように処理することで、菌の繁殖を抑制すると共に、野菜の変色や退色を抑えつつ、さらに野菜の保水性を維持することを可能とするものである。
【0019】
本発明の対象とする野菜としては、特に限定されるものではないが、傷、加熱による劣化が著しい、葉物野菜類(例えば、白菜、キャベツ、レタス、ほうれん草等)に適用するのが好ましい。
【0020】
また、本発明において「カット野菜」とは、電子レンジ加熱食品(冷蔵保管されるミールキット等)に利用する野菜を千切り、角切り等、任意のサイズ(つまり、喫食サイズ)にカットした加工物のことである。
【0021】
(野菜の処理方法)
本発明の野菜の処理方法の一態様(以下、「本実施形態」という。)は、野菜を喫食サイズにカットする工程Aと、カットした野菜を収容籠10に入れる工程Bと、野菜を洗浄する工程Cと、野菜を殺菌する工程Dと、殺菌液を脱水する工程Eと、電子レンジ加熱用包材でパックする工程Fと、を含むものであり、これによって電子レンジによる加熱調理が可能な野菜が得られる。
【0022】
(工程A)
工程Aは、処理対象となる野菜(例えば、キャベツ)を喫食サイズ(例えば、1~5cm)にカットする工程である。工程Aでは、野菜の外葉や皮や芯を予め取り除いた上で、刃物によって、角切り、千切り、短冊切り、銀杏切り、拍子切り、輪切り等にカットしたり、手による「ちぎり」によってカットする。
【0023】
(工程B)
工程Bは、工程Aの実施後に、カットした野菜Tを収容籠10に入れる工程である。図1は、工程Bを説明する図であり、図1(a)は、カットした野菜Tが収容籠10に入る様子を示す斜視図であり、図1(b)は、工程Bの実施後(つまり、カットした野菜Tが収容籠10に入っている状態)の収容籠10を示す斜視図である。
図1に示すように、工程Bで用いる収容籠10は、多数の貫通孔12aを有する金属製(例えば、ステンレス)の有底筒状(バケツ型)の本体部12と、多数の貫通孔14aを有し、本体部12の開口部を塞ぐように配置される金属製(例えば、ステンレス)の円板状の蓋体部14と、で構成されている。
工程Bでは、所定量(例えば、3~5kg)のカットした野菜Tを収容籠10の本体部12に入れ、蓋体部14を本体部12の開口部に配置して固定する。
なお、本体部12の貫通孔12aの直径と蓋体部14の貫通孔14aの直径は、野菜Tが出ないように、野菜Tのサイズ(喫食サイズ)よりも小さく設定されている。
【0024】
(工程C)
工程Cは、工程Bの実施後に、収容籠10を洗浄液CL(例えば、水等)で満たされた洗浄槽20に完全に沈めた状態で、野菜Tを洗浄する工程である。図2は、工程Cを説明する模式図である。
図2に示すように、工程Cでは、カットした野菜Tが入った収容籠10を洗浄液CLで満たされた洗浄槽20に完全に沈める(a1)。収容籠10を洗浄槽20に完全に沈めると、洗浄液CLが収容籠10の本体部12の貫通孔12a、及び蓋体部14の貫通孔14aから収容籠10内に入り、収容籠10は洗浄液CLが満たされた状態で沈下する。そして、収容籠10が沈下すると、洗浄槽20の底面から所定の距離(例えば、10cm)をおいて上方に設置されたレール22上に配置される(a1)。
次いで、工程Cでは、収容籠10をレール22に沿って、0.15~0.7m/分の移動速度(第1の移動速度)で移動させ、5~10分間かけてa1、a2、a3の位置に移動させ、その後、収容籠10を洗浄槽20から取り出す(a4)。
このように、工程Cでは、収容籠10を洗浄液CLに対して相対的にゆっくり移動させることによって、野菜Tの表面を洗浄液CLが流れ、これによって野菜Tの一片一片をムラなく均一に洗浄している。なお、工程Cで使用する洗浄槽20には、不図示の洗浄液供給装置から常時一定量の洗浄液CLが供給されるようになっており、外壁よりも若干低く形成された洗浄槽20の内壁22上端部から洗浄液CLが溢れるように(つまり、オーバーフローするように)なっている。
従って、野菜Tに付着している比較的軽い異物(例えば、虫など)は、収容籠10の本体部12の貫通孔12a、及び蓋体部14の貫通孔14aを通って洗浄液CL内に取り出され、浮上し、洗浄液CLのオーバーフローによって外部に排出される。また、野菜Tに付着している比較的重い異物(例えば、砂など)は、収容籠10の本体部12の貫通孔12a、及び蓋体部14の貫通孔14aを通って洗浄液CL内に取り出され、洗浄槽20の底面に沈殿する。つまり、工程Cによって、野菜Tの洗浄を行いながら、効率よく異物を除去している。
このように、工程Cでは、収容籠10を洗浄液CLに対して相対的にゆっくり移動させて野菜Tを洗浄するため(つまり、従来のようなバブリング等を行わないため)、野菜Tの表面に傷がつかない。なお、収容籠10を移動させる構成に代えて、収容籠10を洗浄槽20に完全に沈めた状態で、洗浄液CLを3~10L/分のゆっくりした水流(第1の水流)で循環させてもよい。つまり、「収容籠10の移動速度:0.15~0.7m/分」と「水流(循環速度):3~10L/分」は、等価な関係にあり、収容籠10の移動速度を0.7m/分よりも速くしたり、洗浄液CLの水流を10L/分よりも速くすると、野菜Tが収容籠10内で収容籠10の内面に衝突し、表面に傷が発生し易くなる。また、収容籠10の移動速度を0.15m/分よりも遅くしたり、洗浄液CLの水流を3L/分よりも遅くすると、野菜Tの洗浄が不十分になり易い。また、洗浄時間については、5分よりも短いと野菜Tの洗浄が不十分になり易く、10分よりも長いと洗浄工程がボトルネックとなり生産能力が低下する。
【0025】
(工程D)
工程Dは、工程Cの実施後に、収容籠10を殺菌液BS(本実施形態においては、50~300ppmの濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液)で満たされた殺菌槽30に完全に沈めて、野菜Tを殺菌する工程である。図3は、工程Dを説明する模式図である。
図3に示すように、工程Dでは、カットした野菜Tが入った収容籠10を殺菌液BSで満たされた殺菌槽30に完全に沈める(b1)。収容籠10を殺菌槽30に完全に沈めると、殺菌液BSが収容籠10の本体部12の貫通孔12a、及び蓋体部14の貫通孔14aから収容籠10内に入り、収容籠10は殺菌液BSが満たされた状態で沈下する。そして、収容籠10が沈下すると、殺菌槽30の底面から所定の距離(例えば、10cm)をおいて上方に設置されたレール32上に配置される(b1)。
次いで、工程Dでは、収容籠10をレール32に沿って、0.15~0.7m/分の移動速度(第2の移動速度)で移動させ、3~10分間かけてb1、b2、b3の位置に移動させ、その後、収容籠10を殺菌槽30から取り出す(b4)。
このように、工程Dでは、収容籠10を殺菌液BSに対して相対的にゆっくり移動させることによって、野菜Tの表面を殺菌液BSが流れ、これによって野菜Tの一片一片をムラなく均一に殺菌している。このため(つまり、従来のようなバブリング等を行わないため)、野菜Tの表面に傷がつかない。なお、収容籠10を移動させる構成に代えて、収容籠10を殺菌槽30に完全に沈めた状態で、殺菌液BSを3~10L/分のゆっくりした水流(第2の水流)で循環させてもよい。つまり、「収容籠10の移動速度:0.15~0.7m/分」と「水流(循環速度):3~10L/分」は、等価な関係にあり、収容籠10の移動速度を0.7m/分よりも速くしたり、殺菌液BSの水流を10L/分よりも速くすると、野菜Tが収容籠10内で収容籠10の内面に衝突し、表面に傷が発生し易くなる。また、収容籠10の移動速度を0.15m/分よりも遅くしたり、殺菌液BSの水流を3L/分よりも遅くすると、野菜Tの殺菌が不十分になり易い。また、洗浄時間については、3分よりも短いと野菜Tの殺菌が不十分になり易く、10分よりも長いと殺菌工程がボトルネックとなり生産能力が低下する。また、殺菌液BSとして次亜塩素酸ナトリウム水溶液を用いる場合、濃度を300ppmよりも濃くすると経済的に不利になり、50ppmよりも薄くすると、野菜Tの殺菌が不十分になり易い。
【0026】
(工程E)
工程Dの実施後、殺菌槽30から収容籠10を取出し、収容籠10を回転させて殺菌液BSを遠心脱水する。
【0027】
(工程F)
そして、工程Eの実施後、収容籠10から野菜Tを取り出してパックする。図3は、工程Fを説明する模式図である。
図3に示すように、工程Fは、収容籠10から野菜Tを取り出して、電子レンジ加熱用包材である、レンジ加熱用袋40又はレンジ加熱用トレイ50に入れてパックする工程であり、本実施形態においては、野菜Tをレンジ加熱用袋40又はレンジ加熱用トレイ50に入れることによって、ミールキット用の野菜が得られる。
レンジ加熱用袋40としては、電子レンジによって安全に加熱できるものであればよく、例えば、ポリプロピレン(PP)製、水蒸気透過度4~5g/m2・d、酸素透過度1500ml(m2・d・MPa)の汎用レンジパックを使用することができる。また、一定の圧力に達した時点で圧力を逃がす、圧力調整機能付きの高圧レンジパックを使用することもできる。
また、レンジ加熱用トレイ50としては、電子レンジによって安全に加熱できるものであればよく、例えば、国際公開WO2011/090470、特開2013-255716、特開2000-355367等に記載されているものを使用することができる。
このようにレンジ加熱用袋40又はレンジ加熱用トレイ50に入れられた野菜Tは、冷蔵保管され、調理する際には、家庭用レンジ500~600W、1~2分程度で加熱調理される。
【0028】
上述のように、本実施形態の野菜の処理方法においては、工程Bから工程Eに至るまで、野菜Tを収容籠10に入れた状態で処理される。従って、工程Bから工程Eに至るまで連続生産(一貫生産)が可能であり、多品種同時生産も可能となる。
また、収容籠10は蓋体部14を有し、野菜Tが収容籠10で常に覆われているため、工程B、Cにおいて野菜Tが収容籠10から漏れ出すこともなく、浮上してしまうこともなく、均一な洗浄と殺菌が可能である。
また、本実施形態の野菜の処理方法においては、工程Cにおいて、収容籠10を洗浄液CLに対して相対的にゆっくり移動させることによって野菜Tを洗浄している。従って、従来のような、大量の洗浄液を供給しながら攪拌したりバブリングする洗浄工程と比較して、洗浄液CLの使用量が格段に抑えられると共に、バブリング装置が不要となるため、生産コストが大幅に抑えられる。
また、野菜Tの表面の傷の発生が抑えられるため、雑菌の繁殖が少ない。
【0029】
(効果確認実験1)
表1及び表2は、本発明者らが行った、野菜の生菌数に関する効果確認実験の結果を示す表である。表1は、従来の処理方法(トリミング、切断、洗浄、殺菌処理(次亜塩素酸ナトリウムによる殺菌)、洗浄(殺菌剤特有の臭いがとれるまでの入念な洗浄)、脱水)で処理した野菜(レタス、キャベツ)の生菌数と、本実施形態の野菜の処理方法で処理した野菜T(レタス、キャベツ)の生菌数の比較表である。本実験においては、従来の処理方法(トリミング、切断、洗浄、殺菌処理(次亜塩素酸ナトリウムによる殺菌)、洗浄(殺菌剤特有の臭いがとれるまでの入念な洗浄)、脱水)で処理した野菜(レタス、キャベツ)のサンプルと、本実施形態の野菜の処理方法で処理した野菜T(レタス、キャベツ)のサンプルを用意し、各サンプルを冷蔵保管し、所定の日数(「D+4」、「D+8」、「D+11」)経過後の生菌数を調べた。なお、表1の「D+4」は「加工日+4日後」の生菌数の数を示し、「D+8」は「加工日+8日後」の生菌数の数を示し、「D+11」は「加工日+11日後」の生菌数の数を示している。
また、表2は、本発明の比較例の処理方法(後述)で処理したときの実験結果を示す表である。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
(従来の処理方法)
表1に示す「従来の処理方法」は、以下の手順で処理したものである。
(1)喫食サイズ(2×4cm)にカットした3kgの野菜(レタス、キャベツ)を、8Lの洗浄液(水)が入った洗浄槽(10L)に入れ、循環速度12~15L/分のバブリング水流によって7分間洗浄する。
(2)野菜(レタス、キャベツ)を、8Lの殺菌液(200ppmの濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液)が入った殺菌槽(10L)に移し、循環速度12~15L/分のバブリング水流によって7分間殺菌する。
(3)野菜(レタス、キャベツ)を、8Lの洗浄液(水)が入った洗浄槽(10L)に移し、循環速度12~15L/分のバブリング水流によって、次亜塩素酸ナトリウムの臭いがなくなるまで(約7~10分間)洗浄する。
(4)野菜(レタス、キャベツ)を洗浄槽から取出し、脱水後、パックする。
なお、循環速度については、渦巻ポンプにて角槽サクション(吸入口)側バルブで循環速度を調整したが、バブリングの影響による誤差が大きいため、試験片(野菜片)の移動速度をモニタし、循環速度を求めた。
【0033】
(本発明の野菜の処理方法)
表1に示す「本発明の野菜の処理方法」は、以下の手順で処理したものである。
(1)喫食サイズ(2×4cm)にカットした3kgの野菜T(レタス、キャベツ)を収容籠10に入れ(工程B)、8Lの洗浄液CL(水)が入った洗浄槽20(10L)に完全に沈め、循環速度8~10L/分の水流によって7分間洗浄する(工程C)。
(2)収容籠10を、8Lの殺菌液BS(200ppmの濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液)が入った殺菌槽30(10L)に移し、循環速度8~10L/分の水流によって7分間殺菌する(工程D)。
(3)収容籠10を回転させて殺菌液BSを遠心脱水し(工程E)、収容籠10から野菜Tを取り出してパックする(工程F)。
なお、循環速度については、渦巻ポンプにて角槽サクション(吸入口)側バルブで循環速度を調整したが、誤差が大きいため、試験片(野菜片)の移動速度をモニタし、循環速度を求めた。
【0034】
(比較例の処理方法)
表2に示す「比較例の処理方法」は、以下の手順で処理したものである。
(1)喫食サイズ(2×4cm)にカットした3kgの野菜(レタス、キャベツ)を収容籠に入れ、8Lの洗浄液(水)が入った洗浄槽(10L)に完全に沈め、循環速度0~2.0L/分の水流によって7分間洗浄する。
(2)収容籠を、8Lの殺菌液(200ppmの濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液)が入った殺菌槽(10L)に移し、循環速度0~2.0L/分の水流によって7分間殺菌する。
(3)収容籠を回転させて殺菌液を遠心脱水し、収容籠から野菜を取り出してパックする。
なお、循環速度については、渦巻ポンプにて角槽サクション(吸入口)側バルブで循環速度を調整したが、誤差が大きいため、試験片(野菜片)の移動速度をモニタし、循環速度を求めた。
【0035】
(実験の考察)
表1に示すように、本実施形態の野菜の処理方法で処理した(つまり、循環速度8~10L/分の水流によって洗浄・殺菌した)野菜T(レタス、キャベツ)の生菌数・大腸菌群は、従来の処理方法で処理した(つまり、循環速度12~15L/分のバブリング水流によって洗浄・殺菌した)野菜(レタス、キャベツ)の生菌数・大腸菌群と比較して格段に少なく、処理から時間が経過しても低く維持されているのが分かる。
また、表2に示すように、洗浄液および殺菌液の水流(循環速度)を0~2.0L/分まで低くしてしまうと、水流が弱過ぎて野菜の一片一片を洗浄、殺菌することができず、野菜屑が残り、変色も進むことが分かる。
そして、表1と表2の実験結果から、洗浄液および殺菌液の水流(循環速度)と、生菌数は密接な関係があり、循環速度3~10L/分の水流によって洗浄、殺菌することにより、十分な洗浄と殺菌を行いつつも、野菜表皮への傷の発生を抑制することができ、処理から時間が経過しても(「加工日+11日後」であっても)生菌数が極めて低く維持されることが分かる。
これは、本実施形態の野菜の処理方法で処理した野菜Tの方が、従来の処理方法で処理した野菜よりも表面の微細な傷が少なく、洗浄、殺菌がムラなく均一に行われることに加え、傷内に残存する生菌数が少ないことに因るものと考えられる。
このように、本実施形態の野菜の処理方法によれば、野菜の表面の傷の発生が抑制され、処理から時間が経過しても生菌数が極めて低く維持される。
従って、その結果、野菜の変色や退色が抑えられることとなる。
【0036】
(効果確認実験2)
表3~表5は、本発明者らが行った、野菜の保水性に関する効果確認実験の結果を示す表である。本実験においては、従来の処理方法(トリミング、切断、洗浄、殺菌処理(次亜塩素酸ナトリウムによる殺菌)、洗浄(殺菌剤特有の臭いがとれるまでの入念な洗浄)、脱水)で処理した野菜(比較例1、比較例2)のサンプルと、本実施形態の野菜の処理方法で処理した野菜T(実施例1、実施例2)のサンプルを用意し、各サンプルを冷蔵保管し、D+6日後(加工日+6日後)の保水性と、電子レンジ加熱時の色調、風味、食感の変化について調べた。
表3は、実施例1と比較例1の保水率の比較表であり、D+6日後の実施例1と比較例1の各サンプルを110℃に加熱し、保水率の5分間の経時変化を調べた結果である。
表4は、実施例2と比較例2の保水率の比較表であり、D+6日後の実施例2と比較例2の各サンプルを110℃に加熱し、保水率の5分間の経時変化を調べた結果である。
なお、保水率については、ケット社製(W600型)の水分計を使用し、水分飛散率から、水分保水率を計算した。
表5は、実施例1、2及び比較例1、2の各サンプルと、カット豚肉、調味料を汎用レンジパックに入れ、軽く混ぜた後に電子レンジで500W、1分間レンジ加熱を行ない、色調、風味、食感の変化を調べた結果(官能評価)である。
なお、表5の評価試験は、10人のパネラーに委託して行い、色調、風味、食感を以下に示す基準で10段階評価したものである。なお、表5の各数値は、10人のパネラーの10段階評価の平均値であり、8以上を合格とした。

10:フライパン加熱と同等で野菜の食感、旨味、色調共に遜色が全く無い。
9:フライパン加熱と同等だが食感、旨味、色調のいずれか1点が僅かに劣る。
8:フライパン加熱と同等だが食感、旨味、色調のいずれか1~2点が僅かに劣る。
7:フライパン加熱と同等だが食感、旨味、色調のいずれか1点が異なり劣る。
6:フライパン加熱と同等だが食感、旨味、色調のいずれか1~2点が異なり劣る。
5:フライパン加熱と異なるが、野菜自体の食感、色調、旨味は、全体感は残存する。
4:フライパン加熱と異なり野菜自体の食感、色調、旨味等の全体感も劣る。
3:フライパン加熱と異なり野菜自体の食感、色調、旨味等の全体感も劣りバランスも悪い。
2:野菜自体の食感、色調、旨味等が感じ取れない。
1:野菜自体の食感、色調、旨味等が悪く製品の状態から大きく逸脱している。
【0037】
【表3】
【0038】
【表4】
【0039】
【表5】
【0040】
(実施例1)
葉茎菜類を原料とした回鍋肉を想定し、喫食サイズ(3×3cm)にカットした60gのキャベツと、細切りにした10gのピーマンと、10gのパプリカ赤を、収容籠10に入れ(工程B)、洗浄液CL(水)が入った洗浄槽20に完全に沈め、循環速度8~10L/分の水流によって7分間洗浄し(工程C)、その後、収容籠10を、殺菌液BS(200ppmの濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液)が入った殺菌槽30に移し、循環速度8~10L/分の水流によって7分間殺菌し(工程D)、遠心脱水後(工程E)、80gの試料(野菜T)を取り出して、ポリプロピレン製の汎用レンジパック(福助工業株式会社製ラミパックPP)に入れ実施例1のサンプルを得た。
【0041】
(比較例1)
葉茎菜類を原料とした回鍋肉を想定し、喫食サイズ(3×3cm)にカットした60gのキャベツと、細切りにした10gのピーマンと、10gのパプリカ赤を、洗浄液(水)が入った洗浄槽に入れ、循環速度12~15L/分のバブリング水流によって7分間洗浄し、その後、殺菌液(200ppmの濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液)が入った殺菌槽に移し、循環速度12~15L/分のバブリング水流によって7分間殺菌し、次いで、洗浄液(水)が入った洗浄槽に移し、循環速度12~15L/分のバブリング水流によって、次亜塩素酸ナトリウムの臭いがなくなるまで(約7~10分間)洗浄し、遠心脱水後、80gの試料(野菜)を取り出して、ポリプロピレン製の汎用レンジパック(福助工業株式会社製ラミパックPP)に入れ比較例1のサンプルを得た。
【0042】
(実施例2)
葉茎菜類を原料とした八宝菜を想定し、喫食サイズ(3×3cm)にカットした60gの白菜と、細切りにした10gのピーマンと、1cmに刻んだ5gの白ネギを、収容籠10に入れ(工程B)、洗浄液CL(水)が入った洗浄槽20に完全に沈め、循環速度8~10L/分の水流によって7分間洗浄し(工程C)、その後、収容籠10を、殺菌液BS(200ppmの濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液)が入った殺菌槽30に移し、循環速度8~10L/分の水流によって7分間殺菌し(工程D)、遠心脱水後(工程E)、70gの試料(野菜T)を取り出して、ポリプロピレン製の汎用レンジパック(福助工業株式会社製ラミパックPP)に入れ実施例2のサンプルを得た。
【0043】
(比較例2)
葉茎菜類を原料とした八宝菜を想定し、喫食サイズ(3×3cm)にカットした60gの白菜と、細切りにした10gのピーマンと、1cmに刻んだ5gの白ネギを、洗浄液(水)が入った洗浄槽に入れ、循環速度12~15L/分のバブリング水流によって7分間洗浄し、その後、殺菌液(200ppmの濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液)が入った殺菌槽に移し、循環速度12~15L/分のバブリング水流によって7分間殺菌し、次いで、洗浄液(水)が入った洗浄槽に移し、循環速度12~15L/分のバブリング水流によって、次亜塩素酸ナトリウムの臭いがなくなるまで(約7~10分間)洗浄し、遠心脱水後、80gの試料(野菜)を取り出して、ポリプロピレン製の汎用レンジパック(福助工業株式会社製ラミパックPP)に入れ比較例2のサンプルを得た。
【0044】
(実験の考察)
表3及び表4に示すように、従来の処理方法で処理した(つまり、循環速度12~15L/分のバブリング水流によって洗浄・殺菌した)野菜(比較例1、比較例2)の保水率は、加熱処理(110℃)1分後:約80%、3分後:約60%、5分後:約50%と、著しく低下してしまうのに対し、本実施形態の野菜の処理方法で処理した(つまり、循環速度8~10L/分の水流によって洗浄・殺菌した)野菜T(実施例1、実施例2)の保水率は、加熱処理(110℃)1分後:90%以上、3分後:75%以上、5分後:70%以上となり、高い保水率を維持しているのが分かる。
この保水率の差は、そのまま食感等にも現れ、表5に示すように、従来の処理方法で処理した(つまり、循環速度12~15L/分のバブリング水流によって洗浄・殺菌した)野菜(比較例1、比較例2)の、電子レンジ加熱時の色調、風味、食感は、D+6日後に著しく低下してしまうのに対し、本実施形態の野菜の処理方法で処理した(つまり、循環速度8~10L/分の水流によって洗浄・殺菌した)野菜T(実施例1、実施例2)の、電子レンジ加熱時の色調、風味、食感は、D+6日後であっても良好な状態を維持している(低下しない)。
このことから、本実施形態の野菜の処理方法によれば、野菜Tの保水率を長期間(D+6日以上)に亘って高く維持することができ、その結果、電子レンジ加熱時の色調、風味、食感も劣化しない(維持できる)ことが分かった。
【0045】
このように、本実施形態の野菜の処理方法によれば、野菜の表面に傷が付かないように処理されるため、菌の繁殖が抑制されると共に、野菜の変色や退色を抑えつつ、さらに野菜の保水性を長期間に亘って維持することが可能となる。そして、野菜の保水性が維持されることにより、電子レンジ加熱時の色調、風味、食感の劣化が抑制される結果、電子レンジによる加熱調理が可能な野菜(つまり、野菜を含有する電子レンジ加熱食品)が得られる。
【0046】
以上が本発明の実施形態の説明であるが、本発明は、上記の実施形態の構成に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で様々な変形が可能である。
【0047】
例えば、本実施形態の野菜の処理方法においては、殺菌液BSとして、50~300ppmの濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(つまり、アルカリ性食品殺菌剤)を使用したが、このような態様に限定されるものではない。殺菌液BSとしては、処理対象となる野菜の種類に応じて、中性食品殺菌剤(例えば、次亜塩素酸水等)、酸性食品殺菌剤(例えば、過酢酸製剤等)を使用することもできる。
【0048】
なお、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0049】
10 :収容籠
12 :本体部
12a :貫通孔
14 :蓋体部
14a :貫通孔
20 :洗浄槽
22 :レール
30 :殺菌槽
32 :レール
図1
図2
図3
図4