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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023106069
(43)【公開日】2023-08-01
(54)【発明の名称】積載型のミキサーユニット
(51)【国際特許分類】
   B28C 5/42 20060101AFI20230725BHJP
【FI】
B28C5/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022007196
(22)【出願日】2022-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】518255499
【氏名又は名称】日本マーツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】串山 晋吾
【テーマコード(参考)】
4G056
【Fターム(参考)】
4G056AA08
4G056CD44
(57)【要約】
【課題】従来のミキサーユニットの機能や性能を維持しながらその不具合を改善し、構造が簡単で扱い易い、新たなミキサーユニットを提供する。
【解決手段】トラックの荷台に積載して運搬可能なミキサーユニット1である。ドラム2を回転させる油圧モータ10に圧油を供給する油圧ポンプ14を駆動するエンジン12と、油圧ポンプ14と油圧モータ10の間の油圧回路に設置された切替弁15と、エンジン12および切替弁15を操作する操作レバー16と、これら機器が設置されたフレーム50とを備える。操作レバー16を横方に操作してドラム2の回転方向を反転させ、かつ、操作レバー16を縦方に操作してドラム2の回転数を高低に変化させる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラックの荷台に積載して運搬可能なミキサーユニットであって、
正回転することによって収容した生コンクリートを撹拌するとともに逆回転することによって前記生コンクリートを排出するドラムと、
前記ドラムを回転させる1台の油圧モータと、
前記油圧モータに圧油を供給する1台のピストンポンプと、
前記ピストンポンプを駆動する1台のエンジンと、
前記ピストンポンプと前記油圧モータの間の油圧回路に設置された切替弁と、
前記エンジンおよび前記切替弁を操作する操作レバーと、
前記ドラム、前記油圧モータ、前記ピストンポンプ、前記エンジン、前記切替弁、および、前記操作レバーが設置されたフレームと、
を備え、
前記操作レバーを横方に操作して前記切替弁を切り替えることにより、前記油圧モータに供給する圧油の流路を変更して、前記ドラムの回転方向を反転させ、かつ、前記操作レバーを縦方に操作して前記エンジンのアクセルを変位させることにより、前記油圧モータに供給する圧油の流量を調整して、前記ドラムの回転数を高低に変化させる、ミキサーユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のミキサーユニットにおいて、
洗浄水を収容する水タンクを備え、
前記水タンクが前記フレームに当該フレームから独立した状態で設けられている、ミキサーユニット。
【請求項3】
請求項2に記載のミキサーユニットにおいて、
前記水タンクと上流側送水経路を介して接続されたウォータポンプと、
前記ウォータポンプと下流側送水経路を介して接続された洗浄ノズルと、
を更に備え、
前記上流側送水経路に開閉弁が設置され、かつ、前記ウォータポンプと前記下流側送水経路の上流側の端部との間の部分に水抜き弁が設置されている、ミキサーユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示する技術は、トラックの荷台に積載することでトラックミキサーと同様に扱える小型のミキサーユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
道幅が狭く、通常のトラックミキサー(いわゆるミキサー車)では通行できない道路が多く存在する地域がある。そのような地域では、トラックミキサーの代わりとして、以前より、特許文献1に開示されているような、小型のミキサーユニットが利用されている。
【0003】
そのミキサーユニットは、小型トラック(いわゆる2t車等)の荷台に積載することで、トラックミキサーと同様に扱え、道幅の狭い道路でも生コンクリートを輸送することが可能になる。しかも、そのミキサーユニットはトラックの荷台から下ろすことができるので、利便性にも優れる。
【0004】
従来のミキサーユニットは、小型トラックの荷台に積載可能な大きさのフレームを有している。そして、そのフレームに、ドラム、ホッパー、シュート、エンジン、油圧ポンプ、油圧モータ、燃料タンク、油タンクなど、トラックミキサーを構成する各種機器が集約して組み付けられている。
【0005】
ミキサーユニットの操作は手動で行う。すなわち、ミキサーユニットに装備されているレバーの操作により、エンジンで油圧ポンプを駆動する。そうすると、それによって得られる加圧された油(圧油)が油圧モータに供給され、ドラムを回転できるようになる。ドラムの回転方向の切り替え(撹拌と排出)、および、ドラムの回転数の切り替え(高速回転と低速回転)についても、そのレバーを操作することで行える。
【0006】
特許文献1のミキサーユニットにはまた、フレームの内部の空洞に水を貯蔵し、フレームを水タンクとして利用することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭53-88018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した特許文献1が開示するように、従来のミキサーユニットでは、レバーの操作により、ドラムの回転の始動および停止と、ドラムの回転方向および回転数の切り替えとが行える。
【0009】
図9に、その切り替え操作を行うレバー100を簡略化して示す。図9のうち、右側の図は、左側の図の矢印IーI線での概略断面図である。レバー100は、箱形をした支持台101に軸支されていて、図9の左側の図において、矢印Y1およびY2の各方向に揺動できるように構成されている。
【0010】
レバー100には、エンジンのアクセルを操作する第1ロッド102が連結されている。レバー100をY1の方向に揺動することで、それに連動して第1ロッド102もY1の方向にスライドする。第1ロッド102には、コントロールバルブを操作する第2ロッドが、第1ロッド102に直交した状態で連結されている。第2ロッドは、レバー100をY2の方向に揺動することで、第1ロッド102が回動し、それに連動してY2の方向にスライドする。
【0011】
2点鎖線で示すレバー位置P1は、停止位置である。レバー100がY2の方向に傾いていないこの状態では、コントロールバルブは中立(いわゆるニュートラル)である。従って、圧油は油圧モータに供給されない。エンジンを始動した後、レバー100をレバー位置P2に操作することで、エンジンが所定の出力に達し、油圧ポンプでドラムを回転できる圧油が供給できる状態になる。
【0012】
そうして、レバー100をY2の方向の一方に傾けることで、コントロールバルブで圧油の流れる方向が中立から切り替わり、ドラムが正回転する(撹拌)。そのレバー100の傾きを大きくすることで、圧油の流量が増加し、ドラムの回転数が高くなる。逆に、レバー100をY2の方向の他方に傾けることで、コントロールバルブで圧油の流れる方向が中立から切り替わり、ドラムが逆回転する(排出)。そのレバー100の傾きを大きくすることで、圧油の流量が増加し、ドラムの回転数が高くなる。
【0013】
これらの動作を油圧制御によって行うために、従来のミキサーユニットでは、2つの油圧ポンプで構成された複合型ポンプと、それに対応した特定のコントロールバルブとを使用している。そして、レバーの操作でコントロールバルブを切り替えることにより、油圧モータへ送る圧油の流れる方向および流量の双方を切り替えるようにしている。
【0014】
このように従来のミキサーユニットは、複合型ポンプとそれに対応した特定のコントロールバルブとを使用しているために、機器が多くなるし、油圧回路が複雑になる。しかも、特定のコントロールバルブが必要なため、コントロールバルブが必要になっても、その入手は困難である。
【0015】
ちなみに、現時点では、対応するコントロールバルブの生産は中止されている。それにより、新しいコントロールバルブは入手できないことから、従来と同様のミキサーユニットは新設できない状態となっている。
【0016】
ミキサーユニットの使用後は、直ちに水洗いをしてドラムやシュートに付着した生コンクリートを洗い落とす必要がある。そのため、現場で、比較的多量の洗浄水が必要になるが、このようなミキサーユニットの場合、設置スペースが限られているうえに、積載重量も制限がある。
【0017】
そこで、従来のミキサーユニットでは、フレームを水タンクに利用している。ところが、そうした場合、フレームが腐食し易く、強度や耐久性の面で不利がある。水抜きも困難で、フレームの内部が常に濡れた状態になるため、腐食を促進してしまう。
【0018】
そこで、開示する技術では、従来のミキサーユニットの機能や性能を維持しながら、このような不具合を改善し、構造が簡単で扱い易い、新たなミキサーユニットを提供できるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
開示する技術は、トラックの荷台に積載して運搬可能なミキサーユニットに関する。
【0020】
前記ミキサーユニットは、正回転することによって収容した生コンクリートを撹拌するとともに逆回転することによって前記生コンクリートを排出するドラムと、前記ドラムを回転させる1台の油圧モータと、前記油圧モータに圧油を供給する1台のピストンポンプと、前記ピストンポンプを駆動する1台のエンジンと、前記ピストンポンプと前記油圧モータの間の油圧回路に設置された切替弁と、前記エンジンおよび前記切替弁を操作する操作レバーと、前記ドラム、前記油圧モータ、前記ピストンポンプ、前記エンジン、前記切替弁、および、前記操作レバーが設置されたフレームと、を備える。
【0021】
そして、前記操作レバーを横方に操作して前記切替弁を切り替えることにより、前記油圧モータに供給する圧油の流路を変更して、前記ドラムの回転方向を反転させ、かつ、前記操作レバーを縦方に操作して前記エンジンのアクセルを変位させることにより、前記油圧モータに供給する圧油の流量を調整して、前記ドラムの回転数を高低に変化させる。
【0022】
すなわち、このミキサーユニットには、ドラムの回転方向および回転数を変更するために、従来のミキサーユニットのように、2つの油圧ポンプで構成された複合型ポンプと、それに対応した特定のコントロールバルブとを使用するのではなく、1台のピストンポンプおよび切替弁を使用する。
【0023】
そして、操作レバーを横方に操作することによって切替弁を切り替え、圧油の流路変更によってドラムの回転方向を変更し、操作レバーを縦方に操作することによってアクセルを変位させ、圧油の流量調整によってドラムの回転数を変更するように構成されている。
【0024】
それにより、切替弁は、作動油の流路を切り替えるだけであるので、汎用品が利用でき、容易に入手できる。ドラムの回転数は、1台のピストンポンプで変化させるので、構造を簡素化でき、安価で実現できる。それに伴い、ミキサーユニットの軽量化も図れる。
【0025】
操作レバーも、ドラムの反転時は横方向に操作し、ドラムの回転数の変更時は、同じ縦方向に操作するので、扱い易い。従って、従来のミキサーユニットの機能や性能を維持しながら、その不具合を改善し、構造が簡単で扱い易い、新たなミキサーユニットを提供できる。
【0026】
前記ミキサーユニットはまた、洗浄水を収容する水タンクを備え、前記水タンクが前記フレームに当該フレームから独立した状態で設けられている、とするのが好ましい。
【0027】
従来のミキサーユニットのように、フレームを水タンクに利用すれば、フレームが腐食し易く、強度や耐久性の面で不利がある。水抜きも困難で、フレームの内部が常に濡れた状態になるため、腐食を促進してしまう。
【0028】
それに対し、水タンクをフレームから独立した状態、つまりフレームと別個に水タンクを設置することで、フレームの劣化を防止できる。フレームと異なる材質で水タンクを構成できるので、軽量化、耐水性も向上できる。
【0029】
そうした場合、前記水タンクと上流側送水経路を介して接続されたウォータポンプと、前記ウォータポンプと下流側送水経路を介して接続された洗浄ノズルと、を更に備え、前記上流側送水経路に開閉弁が設置され、かつ、前記ウォータポンプと前記下流側送水経路の上流側の端部との間の部分に水抜き弁が設置されている、とするのが更に好ましい。
【0030】
厳冬期には、ウォータポンプの中の洗浄水が凍結する場合がある。水タンクに多くの洗浄水を貯めていた場合、ウォータポンプに高い水圧が加わるため、ウォータポンプの中に洗浄水が充満した状態になり易い。そうした状態で、ウォータポンプの中の洗浄水が凍結するとウォータポンプが破損するおそれがある。
【0031】
それに対し、このミキサーユニットでは、ウォータポンプの水抜きができる。すなわち、開閉弁を閉じて、水抜き弁を操作して水が抜ける状態にする。その状態で洗浄ノズルのノズルを開けば、ウォータポンプの中の洗浄水を排出できる。
【発明の効果】
【0032】
開示する技術によれば、従来のミキサーユニットと同等の機能や性能が得られるうえに、油圧回路が簡略化されているので、構造が簡単で扱い易いミキサーユニットを提供できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】ミキサーユニットを斜め上前方から見た図である。
図2】ミキサーユニットを左側方から見た図である。
図3】ミキサーユニットを上方から見た図である。
図4】ミキサーユニットを後方から見た図である。
図5】ミキサーユニットが備える油圧回路を示す概略図である。
図6】ミキサーユニットが備える操作機構を示す概略図である。
図7】操作レバーの操作を説明するための図である。
図8】ミキサーユニットが備える水洗い設備を示す概略図である。
図9】従来のレバー操作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、開示する技術について説明する。ただし、以下の説明は、本質的に例示に過ぎない。説明で用いる前後、左右、および上下の方向は、図1に示す矢印に従うものとする。
【0035】
<ミキサーユニット>
図1に、開示する技術を適用したミキサーユニット1を斜め上前方から見た図を示す。図2に、そのミキサーユニット1を左側方から見た図を示す。図3に、そのミキサーユニット1を上方から見た図を示す。図4に、そのミキサーユニット1を後方から見た図を示す。
【0036】
このミキサーユニット1は、小型トラック(いわゆる積載量が2t未満の貨物自動車)の荷台に積載して運搬でき、そうすることで、トラックミキサーと同様に扱えるように構成されている。例えば、例示のミキサーユニット1の場合、総重量は1t程度であり、左右方向の長さである幅Wは1250mm、前後方向の長さLは3413mm、高さHは1916mmである。従って、一般的な小型トラックであれば、荷台に積載した状態で道路を走行できる。
【0037】
ミキサーユニット1には、トラックミキサーと同様に、ドラム2、投入ホッパー3、出口シュート4、延出シュート5などが装備されている。そして、ドラム2をトラックミキサーと同様に回転させるために、油圧モータ10、作動油タンク11、エンジン12、バッテリ13、油圧ポンプ14(ピストンポンプ)、切替弁15、操作レバー16なども装備されている。更に、詳細は後述するが、作業後の水洗いが行えるように、水タンク30、ウォータポンプ31などからなる水洗い設備も装備されている。
【0038】
そして、これら機器は、小型トラックの荷台に積載して運搬できるよう、荷台の面積よりも小さいフレーム50に効率よく設置されている。フレーム50は、上面視で長方形の枠形状をした外枠部51と、外枠部51の内側の各所に設けられた支持台部52と、外枠部51の後部に設けられた支持枠部53とを有している。これら外枠部51、支持台部52、および支持枠部53の各々は、中空角柱状の鋼管、鋼板、鋼板のプレス加工品などを接合(溶接)することによって形成されている。
【0039】
支持枠部53は、図2図4に示すように、外枠部51の左右の後隅部に立設された一対の支柱53a,53aを有し、これら支柱53a,53aの間に上段梁53bや下段梁53cなどが架設されている。下段梁53cには、ドラム2の後部を回転可能に支持する一対のガイドローラ54,54が取り付けられている。上段梁53bには、投入ホッパー3とV形状をした出口シュート4とが取り付けられている。
【0040】
ドラム2は、裁端紡錘形状をした大型の容器からなる。図1図2に示すように、ドラム2の前端面の中心に駆動シャフト2aが設けられている。ドラム2の前端面の外周部位に大径の従動側スプロケット2bが設けられている。そして、ドラム2の後部の外周部位に環状の支持リング2cが設けられている。
【0041】
図2に示すように、フレーム50の前側部分に設けられた支持台部52(前側支持台部52a)の上にブロック台55が設けられている。ブロック台55は、フレーム50の左右方向の中央部に位置している。そのブロック台55の上にプランマブロック17が設置されている。このプランマブロック17に駆動シャフト2aが回転自在に支持され、かつ、上述したように、支持リング2cが一対のガイドローラ54,54に支持されることで、ドラム2は、前傾した状態でフレーム50に支持されている。
【0042】
支持台部52の上の、ブロック台55の左側に隣接した位置に油圧モータ10が設置されている。油圧モータ10の軸に小径の駆動側スプロケットが取り付けられている。駆動側スプロケットと従動側スプロケット2bの双方にリングチェーン18が巻き掛けられている。
【0043】
ドラム2の後端面の中央には、図3に示すように、ドラム2の内部に連通するドラム開口2dが形成されている。図示は省略するが、ドラム2の内部には、ドラム2が逆回転することで、ドラム2に収容されている生コンクリートをドラム開口2dに押し出すように構成された、螺旋状のブレードが設けられている。
【0044】
従って、油圧モータ10が正回転することにより、ドラム2に収容した生コンクリートは撹拌される。そして、油圧モータ10が逆回転することにより、その生コンクリートはドラム2から排出される。
【0045】
投入ホッパー3の下端部はドラム開口2dに連通しており、投入ホッパー3は、ドラム2に生コンクリート等を投入するために用いられる。出口シュート4の上端部もまたドラム開口2dに連通しており、出口シュート4は、ドラム2から排出される生コンクリートを受け止めるために用いられる。出口シュート4の下端部は、フレーム50の幅方向における中央部に位置している。左側の支柱53aには、作業者が昇降できるステップ6が設けられている。
【0046】
出口シュート4の下方には、折り畳み式の延出シュート5が設置されている。すなわち、延出シュート5は、その中間部位で折り曲げることによって折り畳めるように構成されている。そうすることで、小型トラックの荷台に積載可能な所定のスペースに収容できるようになっている。
【0047】
使用状態の延出シュート5は、その基端部から先端部に向かって下り傾斜し、フレーム50の側方から外側に突出した状態になる。延出シュート5の基端部は、出口シュート4の下端部の下方部位に、水平方向に揺動可能な状態でフレーム50に支持されており、側方に向かう位置から、図2に仮想線で示す後方に向かう位置まで自在に配置できる。
【0048】
(駆動系機器)
油圧モータ10に加え、前側支持台部52aの上に、上述した作動油タンク11、エンジン12、バッテリ13、油圧ポンプ14、切替弁15などの駆動系機器が、集約した状態で設置されている。具体的には、図2に示すように、フレーム50の左前隅部に位置する前側支持台部52aの上にタンク台56が設けられていて、そのタンク台56の上に作動油タンク11が設置されている。タンク台56の下側にバッテリ13が設置されている。
【0049】
フレーム50の右前隅部に位置する前側支持台部52aの上にエンジン12が設置されている。このエンジン12は、最大出力が7KW/2600rpmの産業用ディーゼルエンジンである。エンジン12は、約10Lの燃料タンクを搭載している。エンジンキーと操作レバー16を操作することで、バッテリ13の電力でセルモータが作動し、エンジン12が始動するように構成されている。
【0050】
油圧ポンプ14は、前側支持台部52aの上の、作動油タンク11とエンジン12との間の部分に設置されている。エンジン12の左側面に突出した出力軸12aに油圧ポンプ14の入力軸14aが連結されていて、油圧ポンプ14は、エンジン12によって駆動され、油圧モータ10に圧油を供給するように構成されている。
【0051】
このミキサーユニット1では、油圧ポンプ14として、ピストンポンプが採用されている。ピストンポンプは、エンジン12の回転数に応じてピストンが往復動し、所定容積の作動油を吐出する。その入力軸1回転当たりの押しのけ容積は約56cmである。その最低許容回転数は600rpm、最高許容回転数は1800rpmである。そして、圧力は1.2~16MPaの範囲で調整できるタイプが採用されている。
【0052】
切替弁15は、作動油の流路を切り替える弁であり、油圧ポンプ14と油圧モータ10の間の油圧回路に設置されている。切替弁15は切替レバー15aを有しており、その切替レバー15aを揺動することで作動油の流路が切り替わる(手動式)。切替弁15は、図1図2図3に示すように、切替レバー15aの揺動方向を左右方向に一致させた状態で、ブロック台55の前側に設置されている。
【0053】
(油圧回路)
図5に、このミキサーユニット1が備える油圧回路を示す。油圧回路は、作動油タンク11から油圧ポンプ14に作動油を送る第1給油管61、油圧ポンプ14が吐出する作動油を切替弁15に送る第2給油管62、切替弁15から排出される作動油を作動油タンク11に戻す返油管63、および、切替弁15と油圧モータ10との間で作動油を流入および流出させる一対の送油管64,64を含む。
【0054】
切替弁15は、切替レバー15aを揺動して所定角度に保持することで、油圧モータ10を正回転させる順流位置、油圧モータ10に作動油を供給しない閉止位置、および、油圧モータ10を逆回転させる逆流位置の各々に切り替える。この切替弁15は、標準的なタイプであり、容易に入手できる。図5は、切替レバー15aが閉止位置にある状態を表している。
【0055】
(操作機構)
このミキサーユニット1には、操作レバー16の操作によってエンジン12および切替弁15を操作し、ドラム2の回転方向および回転数の変更を可能にする操作機構が設置されている。図1図2図3に示すように、操作機構は、操作レバー16、操作ケース70、支持管71、第1操作ロッド72、第2操作ロッド73などで構成されていて、その主体はフレーム50の右側縁部に沿うように設置されている。
【0056】
図6に、操作機構の詳細を示す。図6の上側の図は、操作機構を左方から視た概略図であり、図6の下側の図は、操作機構を上方から視た概略図である。
【0057】
操作ケース70は、上面に略U状の挿通孔70aが形成された箱形の支持台からなり、フレーム50の右側側部の後方に配置されている。操作レバー16は、その把持部を挿通孔70aから突出させた状態で、その基端部が操作ケース70の内部に軸支されている。
【0058】
操作レバー16は、挿通孔70aに沿って左右方向および前後方向に揺動できるように構成されている。具体的には、図6の下側の図において、Y1(横方)およびY2(縦方)の方向に、操作レバー16は揺動できる。支持管71は、操作ケース70の前側に設置され、フレーム50の右側縁部に沿ってエンジン12の近傍まで延びている。
【0059】
第1操作ロッド72は、支持管71にスライド自在および回転自在に挿入されている。第1操作ロッド72の後端は、後ブラケット74を介して操作レバー16に連結されている。第1操作ロッド72の前端は、前ブラケット75を介してエンジン12ンのアクセル12bに連結されている。
【0060】
第1操作ロッド72の前端部分に、回動ブラケット76を介して、第2操作ロッド73が第1操作ロッド72に直交して延びるように連結されている。第2操作ロッド73は、屈曲した所定形状に形成されていて、切替弁15の切替レバー15aに連結されている。操作レバー16の揺動操作に連動して、アクセル12bおよび切替レバー15aが変位する。
【0061】
操作レバー16の突端には、操作レバー16の操作を規制する操作ボタン16aが設置されている。すなわち、操作レバー16は、操作ボタン16aを押さない状態では、第1操作ロッド72と操作レバー16との間のリンク機構が外れて操作不能となり、操作ボタン16aを押すことで、そのリンク機構が連結されて操作可能となるように構成されている。
【0062】
図7を参照して、操作レバー16の操作について説明する。図7に示す、AからFの丸字は挿通孔70aにおける操作レバー16の主な位置を示している。Aの位置では、アクセル12bは無負荷であり、エンジン12に燃料が供給されない。従って、エンジン12は始動せず、停止した状態である。また、切替弁15は閉止位置であり、第2給油管62および返油管63と一対の送油管64,64との間が遮断されているので、油圧モータ10に作動油が供給されない。従って、油圧モータ10は駆動せず、ドラム2は回転しない状態である。
【0063】
操作レバー16をY1の縦方向に揺動し、Bの位置にすることで、第1操作ロッド72がスライドし、アクセル12bが所定量変位する。そうすることによって、エンジン12に燃料が供給できるようになり、エンジン12を始動できるようになる。この状態で、エンジン12キーを操作し、エンジン12に通電してセルモータを作動させると、エンジン12が始動する。
【0064】
なお、切替弁15は閉止位置にあるので、油圧モータ10は、圧油の供給が無く駆動しない。圧油が所定の圧力に達すると、油圧ポンプ14は吐出しなくなる。
【0065】
そうして、操作レバー16をY2のCやDが有る横方向に揺動すると、第1操作ロッド72および第2操作ロッド73を介して切替レバー15aが揺動し、切替弁15が順流位置に切り替わる。そうすることによって、油圧モータ10に作動油が供給され、ドラム2は正回転するようになる。
【0066】
そうして、操作レバー16をY1の縦方向に揺動してCの位置にすると、アクセル12bの変位量が小さくなり、エンジン12の出力が減少する。それに伴い、油圧ポンプ14の吐出量が低下して、油圧モータ10に供給される圧油の流量が減少するので、ドラム2の回転数は低くなる。操作レバー16をY1の逆方向に揺動してDの位置にすると、アクセル12bの変位量が大きくなり、エンジン12の出力が増加する。それに伴い、油圧ポンプ14の吐出量が上昇して、油圧モータ10に供給される圧油の流量が増加するので、ドラム2の回転数は高くなる。
【0067】
一方、操作レバー16をY2のEやFが有る横方向に揺動することで、切替弁15が逆流位置に切り替わる。そうすることによって、油圧モータ10に作動油が逆向きに供給され、ドラム2は逆回転するようになる。
【0068】
そうして、操作レバー16をY1の縦方向に揺動してEの位置にすると、アクセル12bの変位量が小さくなり、エンジン12の出力が減少する。それに伴い、油圧ポンプ14の吐出量が低下して、油圧モータ10に供給される圧油の流量が減少するので、ドラム2の回転数は低くなる。操作レバー16をY1の逆方向に揺動してFの位置にすると、アクセル12bの変位量が大きくなり、エンジン12の出力が増加する。それに伴い、油圧ポンプ14の吐出量が上昇して、油圧モータ10に供給される圧油の流量が増加するので、ドラム2の回転数は高くなる。
【0069】
すなわち、このミキサーユニット1では、操作レバー16を横方に操作して切替弁15を切り替えることにより、油圧モータ10に供給する圧油の流路を変更して、ドラム2の回転方向を反転させる。そして、操作レバー16を縦方向に操作してアクセル12bを変位させることにより、油圧モータ10に供給する圧油の流量を調整して、ドラム2の回転数を高低に変化させる。
【0070】
なお、ミキサーユニット1の運転を停止する場合は、操作レバー16をAの位置に戻す。それにより、エンジン12はいわゆるアイドリング状態となる。その状態で、エンジンキーを操作してエンジン12を停止させる。
【0071】
切替弁15は、作動油の流路を切り替えるだけであるので、汎用品が利用でき、容易に入手できる。ドラム2の回転数は、1台の油圧ポンプ14で変化させるので、構造を簡素化でき、安価で実現できる。それに伴い、ミキサーユニット1の軽量化も図れる。操作レバーも、ドラムの反転時は横方向に操作し、ドラムの回転数の変更時は、同じ縦方向に操作するので、扱い易い。
【0072】
(水洗い設備の工夫)
ミキサーユニット1の使用後は、直ちに水洗いをしてドラム2や出口シュート4等に付着した生コンクリートを洗い落とす必要がある。そのため、現場で、比較的多量の洗浄水が必要になるが、このようなミキサーユニット1の場合、設置スペースが限られているうえに、積載重量も制限がある。
【0073】
それに対し、従来のミキサーユニット1では、フレーム50を水タンクに利用している。ところが、そうした場合、フレーム50が腐食し易く、強度や耐久性の面で不利がある。水抜きも困難で、フレーム50の内部が常に濡れた状態になるため、腐食を促進してしまう。そこで、このミキサーユニット1では、このような不具合も解消できるように工夫されている。
【0074】
すなわち、このミキサーユニット1では、フレーム50とは別に、洗浄水を収容する水タンク30が設けられている。水洗いには多量の洗浄水が必要である。例えば、100L程度、洗浄水を使用できるようにするのが好ましい。
【0075】
従って、水タンク30は大型になるが、設置スペースが限られているミキサーユニット1では、設置が難しい。それに対し、このミキサーユニット1では、前傾したドラム2の後部下側のスペースを有効利用し、フレーム50とは別個に設けられた大型の水タンク30をバランスよく設置している。
【0076】
図1図4に示すように、フレーム50の後部におけるドラム2の下方のスペース、詳細には、支持枠部53における一対の支柱53a,53aの間であって下段梁53cの下方のスペースに、横長な箱形の水タンク30が、フレーム50から独立した状態で設置されている。水タンク30は、フレーム50とは異なり、ステンレス製であり、軽量かつ錆び難い。また、水タンク30はフレーム50から脱着可能である。
【0077】
水タンク30は、外枠部51の左右の枠内の間隔と略同一の長さを有し、左右の支柱53a,53aの間に嵌合するように設けられている。水タンク30をこのようにフレーム50の左右方向の略全域に配置したことで、多量の水を収容しても、左右方向における重量の安定したバランスを確保できる。
【0078】
また、水タンク30をフレーム50の後部に配置したことで、フレーム50の前部に集約して配置された駆動系機器類との間で、前後方向における重量のバランスも良くなる。従って、小型トラックに、その積載量の上限近くのミキサーユニット1を積載して運搬しても、重量バランスの偏りが少ないので、比較的安定して運転できる。ミキサーユニット1の積み卸しも容易である。
【0079】
水タンク30の上部には、ドラム2の後部の外周面と対向する傾斜面30aを有している。図1に示すように、傾斜面30aの右側に給水口30bが設けられている。水タンク30にこのような傾斜面30aを設けることで、水タンク30の下部をドラム2の下方に膨出させることが可能になり、水タンク30の大容量化を促進している。それにより、この水タンク30では、約100Lの容量を実現している。駆動系機器の軽量化に伴い、重量制限の範囲内で実現できる。
【0080】
ウォータポンプ31は、図1図2図3に示すように、水タンク30の右前側に近接して設置されている。ウォータポンプ31は、バッテリ13から供給される電力で作動する(エンジン12とでバッテリ13を共用)。図8に、このミキサーユニット1が備える水洗い設備を示す。水タンク30は、その下部に、排水口30cと送水口30dを有している。排水口30cは手動で開閉できる。
【0081】
送水口30dは、上流側送水経路32を介してウォータポンプ31の入水口31aと接続されている。上流側送水経路32には、手動でその流路を開閉できる開閉弁33が設置されている。通常、開閉弁33は開いた状態に設定されている。ウォータポンプ31の吐出口31bは、下流側送水経路34を介して洗浄ノズル35に接続されている。
【0082】
洗浄ノズル35は、レバーを押し込むことでノズルが開いて、洗浄水が噴射されるように構成されている。下流側送水経路34の下流側は、長尺のホース34aで構成されている。下流側送水経路34の上流側の端部には、ウォータポンプ31よりも下方に位置する水抜き弁36が設置されている。
【0083】
厳冬期には、ウォータポンプ31の中の洗浄水が凍結する場合がある。水タンク30に多くの洗浄水を貯めていた場合、ウォータポンプ31に高い水圧が加わるため、ウォータポンプ31の中に洗浄水が充満した状態になり易い。そうした状態で、ウォータポンプ31の中の洗浄水が凍結するとウォータポンプ31が破損するおそれがある。
【0084】
それに対し、このミキサーユニット1では、ウォータポンプ31の水抜きができるので、そのようなトラブルを回避できる。具体的には、開閉弁33を閉じる。そうして、水抜き弁36を操作し、水が抜ける状態にする。その状態で洗浄ノズル35を操作し、ノズルを開けば、ウォータポンプ31の中の洗浄水を排出できる。
【0085】
なお、開示する技術は、上述した実施形態に限定されず、それ以外の種々の構成をも包含する。例えば、水抜き弁36はウォータポンプ31と一体に構成してもよい。
【符号の説明】
【0086】
1 ミキサーユニット
2 ドラム
10 油圧モータ
11 作動油タンク
12 エンジン
12a 出力軸
13 バッテリ
14 油圧ポンプ(ピストンポンプ)
15 切替弁
16 操作レバー
17 プランマブロック
18 リングチェーン
30 水タンク
31 ウォータポンプ
50 フレーム
54 ガイドローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9