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  • 特開-プラズマ反応方法及び反応装置 図1
  • 特開-プラズマ反応方法及び反応装置 図2
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  • 特開-プラズマ反応方法及び反応装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023106117
(43)【公開日】2023-08-01
(54)【発明の名称】プラズマ反応方法及び反応装置
(51)【国際特許分類】
   G21G 1/12 20060101AFI20230725BHJP
   H05H 1/24 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
G21G1/12
H05H1/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022007258
(22)【出願日】2022-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】502030271
【氏名又は名称】石川 泰男
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 泰男
【テーマコード(参考)】
2G084
【Fターム(参考)】
2G084AA18
2G084CC14
2G084FF13
2G084HH02
2G084HH20
2G084HH35
2G084HH45
2G084HH52
(57)【要約】
【課題】電磁波のエネルギーを増幅する増幅材を反応炉内に均一に分散させるとともに増幅材の供給量の供給と反応後の残渣処理を容易にする。
【解決手段】縦型の反応炉本体1の内壁にカーボン材2を内張し、反応炉本体1はその外周に取付けられた電気ヒーター3により加熱され、本体1の上面に溶射装置4を取付け、そのノズル5から増幅材の溶融塩が圧力気体により噴射され、反応残渣が本体1の下端に形成された残渣貯溜部25から回収され、これにより増幅材の供給調整及び反応後の残渣処理が容易となる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱により電磁波を放射する炉壁を備えた縦端のシリンダー状の反応炉内にその上部から増幅材としての溶融塩を噴射して微粒化し、前記電磁波が微粒子を金属イオンと電子とに電離させてプラズマ雰囲気を形成し、前記微粒子は電磁波のエネルギーを増幅し、この増幅された電磁波は、反応炉内に供給される処理すべき気体の原子核をプラズマ崩壊させて陽子と中性子と電子に分離し、陽子と電子とが再結合して生じた水素を外部に取出し、前記プラズマ崩壊の程度に応じて溶融塩の噴射量と処理気体の供給量を調整するようにしたプラズマ反応方法。
【請求項2】
前記処理気体を反応炉の内壁に沿って噴出させて噴射された微粒子が内壁に付着しないようにした請求項1記載のプラズマ反応方法。
【請求項3】
前記溶融塩はNaOH、Zn及びAlの混合物を加熱したものである請求項1記載のプラズマ反応方法。
【請求項4】
縦型のシリンダー状に形成され、加熱により電磁波を放射する反応炉と、この反応炉の上部に設けられ、増幅材からなる溶融塩を噴射する溶射装置と、前記反応炉の内壁に沿って処理すべき気体を噴射する気体噴射装置と、前記反応炉の底部に設けられ、噴射された溶融塩の微粒子が処理気体と反応して生成された残渣を排出する残渣排出装置と、前記反応炉の本体を加熱するための加熱装置とを有するプラズマ反応装置。
【請求項5】
前記気体噴射装置は反応炉の内壁に沿った螺線状のガスパイプであり、このガスパイプに多数の噴出口がそこからの噴出流が内壁に沿うように形成されている請求項4記載のプラズマ反応装置。
【請求項6】
前記反応炉の内壁にカーボン材が付着されている請求項4記載のプラズマ反応装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CO2、水蒸気、空気等のガス中の原子の原子核をプラズマ雰囲気中で崩壊させたり、崩壊により生じた陽子、中性子、電子を再結合させるようにしたプラズマ反応方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本件発明者は、従来、ステンレス製の反応炉内にプラズマ発生体(本明細書では増幅材)を収納し、前記反応炉を加熱して反応空間内に電磁波を発生せしめるとともにプラズマ発生体から微粒子を飛散せしめ、電磁波により微粒子を電離させてプラズマ雰囲気とし、このプラズマ雰囲気内で電磁波を増幅し、この増幅電磁波により反応空間内に供給された水分子中の酸素をプラズマ崩壊させて水素を発生していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願2020-51098号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1では、電磁波によるプラズマ崩壊を開示しているが、電磁波を増幅する増幅材(ステンレス、アルカリ金属)が、炉の運転中に固まってしまい微粒子の発生が少なくなり、プラズマ反応が短時間で停止することが判明した。
【0005】
また、反応炉の運転中には、加熱源のヒーターをオフしても常温の処理気体の供給にも拘わらず、炉の温度低下が起きないことが判明し、この現象を有効利用することが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のプラズマ反応方法は、加熱により電磁波を放射する炉壁を備えた縦型のシリンダー状の反応炉内にその上部から増幅材としての溶融塩を噴射して微粒化し、前記電磁波が微粒子を金属イオンと電子とに電離させてプラズマ雰囲気を形成し、前記微粒子は電磁波のエネルギーを増幅し、この増幅された電磁波は、反応炉内に供給された処理すべき気体の原子核をプラズマ崩壊させて陽子と中性子と電子に分離し、陽子と電子とが再結合して生じた水素を外部に取出し、前記プラズマ崩壊の程度に応じて溶融塩の噴射量と処理気体の供給量を調整するようにした。
【0007】
また、本発明のプラズマ反応装置は、縦型のシリンダー状に形成され、加熱により電磁波を放射する反応炉と、この反応炉の上部に設けられ、増幅材をなす溶融塩を噴射する溶射装置と、前記反応炉の内壁に沿って処理すべき気体を噴射する気体噴射装置と、前記反応炉の底部に設けられ、噴射された溶融塩の微粒子が処理気体と反応して生成された残渣を排出する残渣排出装置と前記反応炉の本体を加熱するための加熱装置とで構成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明においては、増幅材を溶融塩として液化し、反応炉の上部から圧力気体で噴射をさせるようにしたので、増幅材の微粒子が炉内に均一に分散して反応が安定化し、従来の増幅材の能力が低下した時のその交換作業が不要となるし、増幅材の噴射量を、発生する水素量と処理気体の供給量に合わせて調節すれば、処理気体の処理能力を安定化できる。
【0009】
しかも反応炉は縦型に形成し、その上部に噴射ノズルを設けたので、噴射された増幅材の残渣は、重力により落下して反応炉の下部に形成された残渣収納部に貯溜するので、特に残渣を集める部材を設ける必要もなくなり、装置全体として構造が簡単となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明のプラズマ反応システムの概略構成図である。
図2】反応炉内に設置されるCO2の噴射装置の斜視図である。
図3】溶射装置の構成図である。
図4】Na原子の電磁波増幅作用の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0012】
図1において、プラズマ反応装置Mは、縦型密閉シリンダー状の本体1を有し、この本体1はSUS304からなり加熱により電磁波を発生する。前記本体1の内壁には、カーボン材2が内張りされ、前記本体1の外周には電気ヒーター3が配設されている。前記ヒーター3の加熱(400~500℃)により本体1及びカーボン材2からはマイクロ波程度の周波数(109~1012)を有する電磁波が本体1内に放射される。前記本体1の天壁1a上には溶射装置4が設置され、この溶射装置4はノズル5を有し、このノズル5からは前記カーボン材2から放射される電磁波のエネルギーを増幅する溶融増幅材6が噴射される。前記溶射装置4は、図3に示すように筒状の溶融釜7を備え、この溶融釜7は電気ヒーター8により700℃程度に加熱され、この溶融釜7内には、増幅材としてカセイソーダ粉末(NaOH)、亜鉛粉(Zn)及びアルミ粉(Al)が重量比で1.5:2:0.3の割合で供給され、これら3種の増幅材は700℃の温度で溶融され、釜7の下部出口7に設けられた調整弁9の開口を流下してノズル5に供給される圧力処理気体(CO2、水蒸気、空気等)によって絞られたノズル先端5aから本体空間(プラズマ空間)内に噴射される。前記調整弁9はコントローラCに接続されてその開閉が調節され、これにより溶融増幅材6の噴射量が調整される。
【0013】
前記溶融増幅材6の成分としては、融点及び沸点が低く、活性でイオン化エネルギーが低いアルカリ金属(Li、Na、K)及び周期表2族のMg、Caのうち、いずれか一種を必須とし、これに補助材としてZn、Alを加えるのが好ましい。
【0014】
電磁波のエネルギーは、光子数をn、周波数をν、プランク定数をhとすれば、
E=nhν …(1)
であり、エネルギーの増幅とは、nすなわち光子数を増やすことと、周波数を増やすことである。
【0015】
今、Na原子の電磁波の増幅について説明すると図4において、Na原子は原子核(陽子11個、中性子11個)の周りに11個(K穀2個、L穀8個、M穀1個)の電子が振動しながら回転している。このNa原子にカーボン材2から発生した電磁波γ0が侵入すると、その近傍の電子e-が共鳴して同一方向に電磁波γ1を誘導放出して光子数e-が増加する。また、電磁波γ0が11個の電子e-のうちの1個に当たると、その電子e-は、それよりも外側に位置する外穀にクオンタムジャンプをし、そこから元の位置に戻る時に、電磁波γ0よりも周波数の高い電磁波γ2を放出する。この電磁波γ2は、周囲のNa原子に吸収され、更に周波数の高い電磁波を放出し、このような増幅を光の速度で行っていくので、極短時間で著しく周波数の高いγ線領域の1021Hz以上の周波数の電磁波が発生する。
【0016】
今、CO2の処理を考えるに、C及びOの一核子当たりの核力は7.6MeV、7.98MeVであり、これは電磁波の周波数に換算すると、
1.9×1022、1.8×1022となり、
これはJ(ジュール)に換算すると
1.3×10-12J、1.2×10-12Jとなり、
したがって、0の核崩壊には、
1.3×10-12J×16核子(=2.04×10-11J)のエネルギーが、
Cの核崩壊には、
1.2×10-12J×12核子(=1.47×10-11J)のエネルギーが必要となる。
【0017】
すなわち、元素の各崩壊には一定以上の周波数をもった光子を一定以上の数だけ発生させる必要がある。
【0018】
光子の個数は上述したように、Na原子の誘導放出により増えていくし、周波数の増幅はクオンタムジャンプにより生じる。このような2つの増幅が生じるタイミングは、確率的で電磁波の炉壁での反射回数とNa原子との衝突回数によって定まってくるし、その高エネルギーの発生時間はハイデルベルグの不確定性原理に従って定まってくる。すなわち、
【0019】
【数1】
から酸素の原子核が崩壊するエネルギーを2.04×10-11Jとすると、最低2.6×10-24秒の間(Δt)発生していることとなる。すなわち、このような短時間であれば酸素原子核の崩壊するエネルギーが発生することが量子力学上説明され得る。
【0020】
前記ノズル5から噴射された増幅材(NaOH、Zn、Al)は、本体1内の空間に散霧され、この空間は本体1の電気ヒーター3による400~500℃の加熱により200~300℃の温度となり、増幅材の噴霧微粒子はカーボン材2からの放射電磁波により電離してNa+イオン、O2-イオン、H+イオン、Zn2+イオン、Al3+イオンとなり、これに伴って電子e-も放出されてプラスイオンとマイナスの電子からなるプラズマ空間を形成する。
【0021】
一方、前記カーボン材2の内壁に沿って処理すべき気体(CO2ガス、水蒸気、空気)を噴射する第1気体噴射装置20が設けられ、この第1気体噴射装置20は、図2に示すようにコイル状のパイプ20aからなり、このパイプ20aには噴射気体がカーボン材2に沿うように気孔20a、20a2が多数形成されている。一方、反応炉の本体1内の底部には渦巻状の第2気体放射装置21が設けられ、この装置21は螺線パイプ21aからなり螺線パイプ21aには噴射気体が上方に向かうように、気孔21aが多数形成されている。
【0022】
このように、圧力ボンベ23からの処理気体(CO2ガス、水蒸気、空気等)を噴射すると、増幅材の噴霧微粒子は本体1の内壁から隔離されて本体1の中央部に集められて反応性の高いプラズマ空間PZが形成される。
【0023】
前記本体1の下端部には、噴射された増幅材の反応後の残渣を貯溜しておくための残渣貯溜部25が形成され、この中の残渣26は残渣貯溜部25の一端に取り付けられた開閉蓋27を開けて取り出される。
【0024】
前記本体1の天壁1aには、水素排出筒28が設けられ、プラズマ空間PZ内で発生した水素が排出され、この排出操作はコントローラ10に接続されたバルブ29で操作され、その流量は流量計30で測定され、その情報がコントローラ10に送られ、排出された水素ガスは水素ボンベ31に貯溜される。また、コントローラ10は処理気体が入った圧力ボンベ23の流れを調節するバルブ32を操作してプラズマ空間PZに送給される供給量をコントロールする。
【0025】
前記増幅材6の噴射量と処理気体の供給量は以下のようにしてコントロールされる。前記増幅材6を金属ナトリウムを含んだNaOHとし、供給気体をCO2ガスとした場合について具体的に説明する。
【0026】
先ず、炉本体1の内部を真空引きし加熱の為の電気ヒーター3の設定温度を約400℃にし、プラズマ空間PZの温度を250~300℃とする。この状態で溶射装置4を作動せしめ、CO2ボンベ23から圧力CO2ガスをノズル5に送るとともに調整弁9を開放して所定量の溶融増幅材6をノズル5に送り、これにより一定量の増幅材が噴霧される。噴霧されたNaOHはカーボン材2からの電磁波(主として赤外線)が、増幅材微粒子により増幅されてγ線領域の電磁波となりNaOHのNaおよびO原子をプラズマ崩壊させて陽子と中性子と電子に分離せしめ、この内、陽子と電子が再結合してH原子となる。このH原子は水素排出筒28を出てH2ガスとなり、このH2ガス量が流量計30によって測定され炭酸ガスの供給量に対する水素発生量(反応比)がコントローラで計算され表示される。この反応比の値が予定値以下の場合には、増幅材の噴霧量を増すか、又は炭酸ガスの供給量を減少させる。この際、プラズマ空間PZ内の温度計30と、圧力計31からのデータを加味し、特に反応比が低い場合には、温度を上昇せしめる。一定時間運転した後は、残渣貯溜部25から開閉蓋27を開けて残渣を取り出して処理をする。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明はCO2を多量に排出する焼却炉、火力発電等に適用され得るし、水、空気から水素を採集する発電事業に応用できる。
【符号の説明】
【0028】
1…本体
2…カーボン材
7…電気ヒーター
4…溶射装置
5…ノズル
6…増幅材
7…溶融釜
10…コントローラ
20…第1気体装置
21…第2気体装置
23…圧力ボンベ
図1
図2
図3
図4