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特開2023-106121光伝送システム、及び光送信機、光受信機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023106121
(43)【公開日】2023-08-01
(54)【発明の名称】光伝送システム、及び光送信機、光受信機
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/508 20130101AFI20230725BHJP
   H04B 10/69 20130101ALI20230725BHJP
【FI】
H04B10/508
H04B10/69
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022007262
(22)【出願日】2022-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000113665
【氏名又は名称】マスプロ電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】遠松 大輔
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA15
5K102AH01
5K102PB14
5K102PB18
5K102PH31
5K102RD05
5K102RD12
5K102RD14
5K102RD15
(57)【要約】      (修正有)
【課題】レーザダイオードを安定動作させるためのダミー信号によって生じる課題を解決する光伝送システム、光送信機及び光送信機を提供する。
【解決手段】光伝送システムにおいて、光送信機2は、複数のE/O変換回路4を備える。各E/O変換回路4では、レーザダイオード41に供給するバイアス電流が流れるバイアス電流経路を介してレーザダイオード41にダミー信号を印加する。光受信機は、受光素子から出力される受信信号に含まれるダミー信号を抑圧するように構成されたフィルタ回路を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光送信機と、一つ以上の光受信機とを備え
前記光送信機は、
ターゲット信号を電気信号から光信号に変換するように構成されたレーザダイオード、及び前記レーザダイオードに流すバイアス電流を生成するように構成された送信バイアス回路を有する複数のE/O変換回路と、
前記複数のE/O変換回路のそれぞれに、前記ターゲット信号を供給するように構成された入力回路と、
前記複数のE/O変換回路のそれぞれに、前記送信バイアス回路に印加するバイアス電圧を供給するように構成されたバイアス線路と、
前記ターゲット信号より低い周波数に設定されたダミー信号を生成するように構成されたダミー信号回路と、
を備え、
前記ダミー信号回路は、前記バイアス電流が流れるバイアス電流経路を介して前記レーザダイオードに前記ダミー信号を印加するように接続され、
前記光受信機は、
前記複数のE/O変換回路のいずれか一つから出力される前記光信号を、電気信号である受信信号に変換するように構成された受光素子と、
前記受光素子にバイアス電圧を印加するように構成された受信バイアス回路と、
前記受光素子から出力される前記受信信号に含まれる前記ダミー信号を抑圧するように構成されたフィルタ回路と、
を備える
光伝送システム。
【請求項2】
ターゲット信号を光信号に変換するように構成されたレーザダイオード、及び前記レーザダイオードに流すバイアス電流を生成するように構成された送信バイアス回路を有する複数のE/O変換回路と、
前記複数のE/O変換回路のそれぞれに、前記ターゲット信号を供給するように構成された入力回路と、
前記複数のE/O変換回路のそれぞれに、前記送信バイアス回路に印加するバイアス電圧を供給するように構成されたバイアス線路と、
前記ターゲット信号より低い周波数に設定されたダミー信号を生成するように構成されたダミー信号回路と、
を備え、
前記ダミー信号回路は、前記バイアス電流が流れるバイアス電流経路を介して前記レーザダイオードに前記ダミー信号を印加するように接続された
光送信機。
【請求項3】
請求項2に記載の光送信機であって、
前記レーザダイオードは、垂直共振器面発光型レーザである
光送信機。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の光送信機であって、
前記ダミー信号回路は、前記バイアス線路に前記ダミー信号を印加するように構成された
光送信機。
【請求項5】
請求項2又は請求項3に記載の光送信機であって、
前記ダミー信号回路は、前記ダミー信号を複数に分配して、前記複数のE/O変換回路のそれぞれに供給し、
前記E/O変換回路は、前記ダミー信号回路から供給される前記ダミー信号が、前記レーザダイオードの入力端又は出力端のいずれか一方に印加されるように構成された
光送信機。
【請求項6】
請求項2から請求項5までのいずれか1項に記載の光送信機であって、
前記ダミー信号の周波数が、100~300kHzの範囲内の値に設定されている
光送信機。
【請求項7】
請求項2から請求項6までのいずれか1項に記載の光送信機であって、
前記ダミー信号回路は、それぞれが前記ダミー信号を生成する複数のダミー信号源を備え、
前記複数のE/O変換回路は、複数のグループに分けられ、前記グループ毎に異なる前記ダミー信号源から前記ダミー信号の供給を受けるように構成された
光送信機。
【請求項8】
ターゲット信号に基づく信号成分及び前記ターゲット信号より低い周波数に設定されたダミー信号に基づく信号成分を含む光信号を、電気信号である受信信号に変換するように構成された受光素子と、
前記受光素子にバイアス電圧を印加するように構成された受信バイアス回路と、
前記受光素子から出力される前記受信信号に含まれる前記ダミー信号を抑圧するように構成されたフィルタ回路と、
を備える
光受信機。
【請求項9】
請求項8に記載の光受信機であって、
前記フィルタ回路は、前記ターゲット信号の周波数帯を通過域に含み、前記ダミー信号の周波数帯を阻止域に含むように設定されたハイパスフィルタを含み、
前記ハイパスフィルタは、前記受光素子から前記受信信号を出力する出力端子に到る経路に設けられている
光受信機。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載の光受信機であって、
前記フィルタ回路は、前記ダミー信号の周波数帯を通過域に含み、前記ターゲット信号の周波数帯を阻止域に含むように設定されたローパスフィルタを含み、
前記ローパスフィルタは、前記受光素子から前記受信信号を出力する出力端子に到る経路とは異なる経路に設けられている
光受信機。
【請求項11】
請求項10に記載の光受信機であって、
前記ローパスフィルタは、出力端が抵抗器を介して接地されている
光受信機。
【請求項12】
請求項8又は請求項9に記載の光受信機であって、
前記フィルタ回路は、前記ダミー信号の周波数を共振周波数とするトラップ回路を含み、
前記トラップ回路は、前記受光素子から前記受信信号を出力する出力端子に到る経路とは異なる経路に設けられている
光受信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光信号を送受信する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、分布帰還型(DFB)レーザダイオードにおいて生じる干渉ノイズを抑制するために、レーザダイオードに低周波数(数百kHz程度)のダミー信号を重畳する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-198913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術を、垂直共振器面発光型レーザ(VCSEL)等を用いたレーザアレイに適用した場合、レーザダイオード毎にダミー信号源及びダミー信号源からレーザダイオードに到るダミー信号専用の信号線を用意する必要がある。この場合、基板面積が大きくなり、機器が大型化するという問題があった。
【0005】
本開示の1つの局面は、レーザダイオードを安定動作させるためのダミー信号によって生じる課題を解決する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、光伝送システムであって、光送信機と、一つ以上の光受信機とを備える。
光送信機は、複数のE/O変換回路と、入力回路と、バイアス線路と、ダミー信号回路と、を備える。E/O変換回路は、レーザダイオードと、送信バイアス回路とを備える。レーザダイオードは、ターゲット信号を電気信号から光信号に変換するように構成される。送信バイアス回路は、レーザダイオードに流すバイアス電流を生成するように構成される。入力回路は、複数のE/O変換回路のそれぞれに、ターゲット信号を供給するように構成される。バイアス線路は、複数のE/O変換回路のそれぞれに、送信バイアス回路に印加するバイアス電圧を供給するように構成される。ダミー信号回路は、ターゲット信号より低い周波数に設定されたダミー信号を生成するように構成される。また、ダミー信号回路は、バイアス電流が流れるバイアス電流経路を介してレーザダイオードにダミー信号を印加するように接続される。
【0007】
光受信機は、受光素子と、受信バイアス回路と、フィルタ回路と、を備える。受光素子は、複数のE/O変換回路のいずれか一つから出力される光信号を、電気信号である受信信号に変換するように構成される。受信バイアス回路は、受光素子にバイアス電圧を印加するように構成される。フィルタ回路は、受光素子から出力される受信信号に含まれるダミー信号を抑圧するように構成される。
【0008】
このような構成によれば、光送信機において、レーザダイオードを安定動作させるために必要なダミー信号を、バイアス電流が流れる既存のバイアス電流経路を介してレーザダイオードに印加する。従って、ダミー信号をレーザダイオードに供給するために必要な回路規模を抑制できる。
【0009】
また、光受信機では、フィルタ回路が、受信信号に含まれるダミー信号を抑圧するため、受信信号を利用する後段の回路が、ダミー信号の影響を受けることを抑制できる。
本開示の一態様は、光送信機であって、前述の光伝送システムにおける光送信機と同様の構成を有する。
【0010】
レーザダイオードは、垂直共振器面発光型レーザであってもよい。
ダミー信号回路は、バイアス線路にダミー信号を印加するように構成されてもよい。
このような構成によれば、ダミー信号をレーザダイオードに供給するために必要な回路規模をより抑制することができる。
【0011】
ダミー信号回路は、ダミー信号を複数に分配して、複数のE/O変換回路のそれぞれに供給するように構成されてもよい。この場合、E/O変換回路は、ダミー信号回路から供給されるダミー信号が、レーザダイオードの入力端又は出力端のいずれか一方に印加されるように構成されてもよい。
【0012】
ダミー信号回路は、それぞれがダミー信号を生成する複数のダミー信号源を備えてもよい。この場合、複数のE/O変換回路は、複数のグループに分けられ、グループ毎に異なるダミー信号源からダミー信号の供給を受けるように構成されてもよい。
【0013】
このような構成によれば、E/O変換回路毎にダミー信号源を設ける場合と比較して、装置規模を削減できる。
本開示の一態様は、光受信機であって前述の光伝送システムにおける光受信機と同様の構成を有する。
【0014】
フィルタ回路は、ターゲット信号の周波数帯を通過域に含み、ダミー信号の周波数帯を阻止域に含むように設定されたハイパスフィルタを含んでもよい。ハイパスフィルタは、受光素子から受信信号を出力する出力端子に到る経路に設けられていてもよい。
【0015】
このような構成によれば、受信信号から抽出されるターゲット信号を、後段の回路に提供することができる。
フィルタ回路は、ダミー信号の周波数帯を通過域に含み、ターゲット信号の周波数帯を阻止域に含むように設定されたローパスフィルタを含んでもよい。ローパスフィルタは、受光素子から受信信号を出力する出力端子に到る経路とは異なる経路に設けられていてもよい。
【0016】
このような構成によれば、出力端子に到る経路に流れ込むダミー信号を減少させることができる。
ローパスフィルタは、出力端が抵抗器を介して接地されていてもよい。
【0017】
このような構成によれば、ローパスフィルタにて抽出されるダミー信号を熱に変換して消費することができる。
フィルタ回路は、ダミー信号の周波数を共振周波数とするトラップ回路を含んでもよい。トラップ回路は、受光素子から受信信号を出力する出力端子に到る経路とは異なる経路に設けられていてもよい。
【0018】
このような構成によれば、ローパスフィルタを設けた場合と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】光伝送システムの概要を示すブロック図である。
図2】第1実施形態の光伝送システムにおける光送信機の構成を示す回路図である。
図3】第1実施形態の光伝送システムにおける光受信機の構成を示す回路図である。
図4】ダミー信号レベルとCNRとの関係を測定した結果を示すグラフである。
図5】測定条件及び測定結果を示す一覧表である。
図6】第2実施形態の光伝送システムにおける光送信機の構成を示す回路図である。
図7】第3実施形態の光伝送システムにおける光受信機の構成を示す回路図である。
図8】光受信機の他の構成例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態を説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
第1実施形態の光伝送システム1は、図1に示すように、光送信機2と、少なくとも1つの光受信機7とを備える。
【0021】
光送信機2は、電気入力端子21を介して入力されるターゲット信号を複数に分配して、分配された複数のターゲット信号をそれぞれ光信号にして、複数の光出力端子22から出力する。ターゲット信号は、例えば、地上デジタル放送波やBS/CS放送波の受信信号等のRF信号であってもよい。
【0022】
光受信機7は、光入力端子71から入力される光信号を電気信号に変換して、電気出力端子72から出力する。
光送信機2の光出力端子22と、光受信機7の光入力端子71とは、光ファイバ8によって相互に接続される。
【0023】
[1-2.光送信機]
光送信機2は、図2に示すように、入力回路3と、複数のE/O変換回路4と、バイアス線路5と、ダミー信号回路6とを備える。
【0024】
入力回路3は、第1増幅器31と、分配線路32と、複数の第2増幅器33と、を備える。
第1増幅器31は、電気入力端子21から入力されるターゲット信号を増幅する。
【0025】
分配線路32は、第1増幅器31で増幅されたターゲット信号を複数に分配して、複数の第2増幅器33のそれぞれに入力する。
複数の第2増幅器33は、いずれも同様の構成を有する。
【0026】
第2増幅器33は、分配線路32を介して入力されるターゲット信号を増幅して、E/O変換回路4に入力する。
複数のE/O変換回路4は、いずれも同様の構成を有する。
【0027】
E/O変換回路4は、レーザダイオード41と、コンデンサ42,43と、インダクタ44,45と、定電流回路46とを備える。
レーザダイオード41は、垂直共振器面発光型レーザ(VCSEL)である。レーザダイオード41は、他のE/O変換回路4が備えるレーザダイオード41と共にレーザアレイを構成する。レーザダイオード41から発せられる光信号は、光送信機2の光出力端子22を介して出力される。
【0028】
コンデンサ42は、一端がレーザダイオード41のアノードに接続され、他端が第2増幅器33の出力に接続される。コンデンサ43は、一端がレーザダイオード41のカソードに接続され、他端がグランドラインに接続される。つまり、コンデンサ42,43は、入力回路3から分配されるターゲット信号を、レーザダイオード41に入力するターゲット信号経路を形成する。
【0029】
インダクタ44は、一端がレーザダイオード41のアノードに接続され、他端がバイアス電圧+Bを供給するバイアス線路5に接続される。インダクタ45は、一端がレーザダイオード41のカソードに接続され、他端が定電流回路46に接続される。つまり、インダクタ44,45及び定電流回路46は、本開示における送信バイアス回路に相当し、レーザダイオード41に一定のバイアス電流を流すバイアス電流経路を形成する。
【0030】
バイアス線路5は、複数の個別ライン51と共通ライン52とを備える。
個別ライン51は、一端が、各E/O変換回路4のインダクタ44にそれぞれ接続され他端が共通ライン52に接続される。
【0031】
共通ライン52はバイアス電圧+Bの供給元となる電源ラインDLに接続される。
ダミー信号回路6は、ダミー信号源61と、接続回路62とを備える。
ダミー信号源61は、ダミー信号を発生させる。ダミー信号の周波数は、ターゲット信号の周波数より十分に低い周波数(例えば、200kHz)に設定される。ダミー信号の周波数は、200kHzに限定されるものではなく、100kHz~300kHzの範囲内で設定してもよい。ダミー信号源61から出力されるダミー信号は、接続回路62及びバイアス線路5を介して各E/O変換回路4に入力される。E/O変換回路4において、インダクタ44及びコンデンサ43は、ダミー信号をレーザダイオード41に入力するダミー信号経路を形成する。
【0032】
ダミー信号のレベルは、光受信機7にて受信されるターゲット信号(O/E変換後の信号)の搬送波対雑音比(CNR)が規格値を満足し、かつ光信号の変調度に関する標準規格(例えば、ITU-T Recommendation J.186)を満足する値に設定される。
【0033】
接続回路62は、コンデンサ621とインダクタ622を備える。コンデンサ621は、一端がダミー信号源61に接続され、他端が共通ライン52に接続される。コンデンサ621は、ダミー信号を共通ライン52に印加するためのカップリングコンデンサである。インダクタ622は、一端が電源ラインDLに接続され、他端が共通ライン52に接続される。インダクタ622は、ダミー信号が電源ラインDLに漏洩することを抑制する。
【0034】
また、E/O変換回路4において、コンデンサ42は、バイアス電流が入力回路3へ漏洩することを抑制する。コンデンサ43は、バイアス電流がグランドラインへ漏洩することを抑制する。インダクタ44は、ダミー信号を通過させ、且つターゲット信号がバイアス線路5へ漏洩することを抑制する。インダクタ45は、ダミー信号及びターゲット信号が定電流回路46へ漏洩することを抑制する。
【0035】
[1-3.光受信機]
光受信機7は、図3に示すように、フォトダイオード73と、インダクタ74と、コンデンサ75と、第1フィルタ回路76と、増幅器77とを備える。
【0036】
フォトダイオード73は、光入力端子71に接続される光ファイバ8を介して光送信機2から受信する光信号を、電気信号である受信信号に変換する受光素子である。フォトダイオード73は、アノードがグランドラインに接続される。受信信号には、ターゲット信号に基づく信号成分及びダミー信号に基づく信号成分が含まれる。
【0037】
インダクタ74は、一端が電源ラインに接続され、他端がフォトダイオード73のカソードに接続される。インダクタ74は、フォトダイオード73に一定のバイアス電圧を印加する受信バイアス回路を構成する。
【0038】
コンデンサ75は、一端がフォトダイオード73のカソードに接続され、他端が第1フィルタ回路76に接続される。コンデンサ75は、フォトダイオード73にて生成される受信信号から直流成分を除去して出力するカップリングコンデンサである。
【0039】
第1フィルタ回路76は、コンデンサ761とインダクタ762とで構成される。第1フィルタ回路76は、ターゲット信号の周波数帯が通過域に含まれ、ダミー信号の周波数帯が阻止帯域に含まれるように設定されたハイパスフィルタである。
【0040】
つまり、第1フィルタ回路76は、コンデンサ75を介して入力される受信信号から、ターゲット信号を抽出して出力する。
増幅器77は、第1フィルタ回路76にて抽出されたターゲット信号を増幅して、電気出力端子72から出力する。
【0041】
[1-4.動作]
光送信機2では、電気入力端子21から入力されるターゲット信号は、入力回路3によって、複数のE/O変換回路4のそれぞれに供給される。E/O変換回路4に入力されたターゲット信号は、コンデンサ42、レーザダイオード41、コンデンサ43が形成するターゲット信号経路を流れる。
【0042】
また、ダミー信号回路6で生成されるダミー信号は、バイアス線路5を介して、複数のE/O変換回路4のそれぞれに供給される。E/O変換回路4に入力されたダミー信号は、インダクタ44、レーザダイオード41、コンデンサ43が形成するダミー信号経路を流れる。
【0043】
ダミー信号が、レーザダイオード41に供給されることにより、レーザダイオード41から出力される光信号に含まれる干渉ノイズが抑制される。但し、光信号には、ターゲット信号に基づく成分だけでなく、ダミー信号に基づく成分が含まれる。
【0044】
光受信機7では、フォトダイオード73で光信号を電気信号である受信信号に変換して出力する。第1フィルタ回路76は、受信信号からターゲット信号を抽出して、換言すれば、ダミー信号を抑圧して、増幅器77に出力する。
【0045】
[1-3.効果]
以上詳述した第1実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1a)光送信機2では、全てのE/O変換回路4に対して、1つのダミー信号源61からダミー信号を供給する。従って、レーザダイオード41毎にダミー信号源61を設ける形態と比較して、ダミー信号をレーザダイオード41に供給するために必要な回路規模を抑制できる。
【0046】
(1b)光送信機2では、光送信機2において必須の構成要件であるバイアス線路5を利用して、各E/O変換回路4のレーザダイオード41にダミー信号を供給する。従って、ダミー信号をレーザダイオード41に供給するために必要な回路規模を更に抑制できる。
【0047】
(1c)光受信機7では、第1フィルタ回路76を備えることで、ダミー信号が増幅器77に入力されることを抑制でき、その結果、増幅器77の出力がダミー信号によって歪むことを抑制できる。
【0048】
[1-4.ダミー信号のレベル設定]
光送信機2では、光受信機7にて受信されるターゲット信号(O/E変換後の信号)のCNRが規格値を満足し、かつ光信号の変調度に関する標準規格を満足するように、ダミー信号のレベルが設定される。
【0049】
すなわち、ダミー信号を大きくした方が、干渉ノイズを抑制する効果が大きくレーザダイオード41の動作が安定する傾向がある。但し、光信号の総合変調度の上限が標準規格で規定されているため、ダミー信号を大きくするとその分、ターゲット信号を小さくする必要がある。この制約の中で、良好なCNRが得られるように設定される。
【0050】
図4は、ダミー信号のレベルを変化させてCNR特性を測定した結果の一例を示すグラフである。図5は、測定に用いたダミー信号及びターゲット信号の設定、及び測定結果を示す一覧表である。
【0051】
図4のグラフに示すようなCNR特性が得られる場合、ダミー信号のレベルは、CNRが規格値32.0[dB]より大きくなる範囲(すなわち、73~80[dBμV])に設定すればよい。ダミー信号のレベルが上記範囲より小さい場合、CNRの変動が大きくなり、CNRの最悪値が劣化する。また、ダミー信号のレベルが上記範囲より大きい場合、CNRは安定するが、図5に示すように、総合変調度を一定(33%)にするためにターゲット信号(CATV帯域)のレベル(変調度)を下げる必要がある。
【0052】
なお、光変調度は、信号レベルから計算で求めることができる。例えば信号レベルが80[dBμV]のとき光変調度が2.8[%]であった場合、この値を基準とし、信号レベルを80[dBμV]からA[dB]変化させた場合、光変調度は、10(A/20)×2.8[%]となる。例えば、A=-5[dB]であれば光変調度は1.6[%]となり、A=5[dB]であれば光変調度は5.0[%]となる。
【0053】
[2.第2実施形態]
[2-1.第1実施形態との相違点]
第2実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0054】
第2実施形態では、光送信機2aの構成が第1実施形態と相違する。
[2-2.光送信機]
光送信機2aは、図6に示すように、ダミー信号回路6の代わりに、ダミー信号回路6aを備える。ダミー信号回路6aは、ダミー信号源61と、複数の接続回路62aとを備える。
【0055】
ダミー信号源61にて生成されるダミー信号は、複数に分配され、複数の接続回路62aのそれぞれに供給される。
複数の接続回路62aは、複数のE/O変換回路4のそれぞれに対応づけて設けられる。
【0056】
複数の接続回路62aは、いずれも同様の構成を有する。接続回路62aは、直列接続されたインダクタ623とコンデンサ624を備える。接続回路62aは、一端がレーザダイオード41のカソードに接続され、他端がダミー信号源61に接続される。接続回路62aは、ダミー信号の周波数帯を通過域に含み、ターゲット信号の周波数帯及び直流信号を阻止域に含むように設定されたバンドパスフィルタである。
【0057】
ダミー信号源61で生成されたダミー信号は、接続回路62aを介してE/O変換回路4に供給される。
E/O変換回路4において、接続回路62aは、レーザダイオード41のカソードにダミー信号が印加されるように接続される。なお、接続回路62aは、レーザダイオード41のアノードにダミー信号が印加されるように接続されてもよい。レーザダイオード41のカソード及びアノードは、いずれも、バイアス電流が流れるバイアス電流経路に含まれる。
【0058】
[2-3.効果]
以上詳述した第2実施形態によれば、前述した第1実施形態の効果(1a)(1c)を奏する。
【0059】
[3.第3実施形態]
[3-1.第1実施形態との相違点]
第3実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0060】
第3実施形態では、光受信機7bの構成が第1実施形態と相違する。
[3-2.光受信機]
光受信機7bは、図7に示すように、第1フィルタ回路76の代わりに、第2フィルタ回路76bを備える。第2フィルタ回路76bは、インダクタ763と、コンデンサ764とを備える。インダクタ763は、フォトダイオード73のアノードとインダクタ74との間に挿入される。コンデンサ764は、一端が、2つのインダクタ74,763の接続点に接続され、他端がグランドラインに接続される。
【0061】
第2フィルタ回路76bは、ターゲット信号が電源側に漏洩することを抑制すると共に、ダミー信号が、コンデンサ764を通過してグランドラインに流れ込むように設定される。
つまり、コンデンサ75を介して増幅器77に入力される受信信号は、ダミー信号が抑圧されたものとなる。
【0062】
[3-3.効果]
以上詳述した第3実施形態によれば、前述した第1実施形態の効果(1a)~(1c)を奏し、更に以下の効果を奏する。
【0063】
(3a)光受信機7bでは、第2フィルタ回路76bが、電源ラインへのダミー信号の回り込みを抑制するため、光受信機7bの動作を安定させることができる。
[4.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は前述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0064】
(4a)上記実施形態では、光送信機2,2aに含まれるすべてのE/O変換回路4に対して1つのダミー信号源61を備えるように構成されているが、これに限定されるものではない。例えば、複数のE/O変換回路4を、複数のグループに分けて、グループ毎に、ダミー信号源61を備えるように構成されてもよい。この場合、各グループに含まれるE/O変換回路4の数は、均等でも不均等でもよい。少なくともダミー信号源61の数が、E/O変換回路4の数より少なければよい。
【0065】
(4b)上記実施形態では、光受信機7は、図8の上段に示すように、第1フィルタ回路76は、ハイパスフィルタとして構成され、フォトダイオード73から電気出力端子72に到る経路に設けられているが、これに限定されるものではない。図8は、光受信機の構成を、コンデンサ75及び増幅器77を省略して、簡易的に記載したものである。
【0066】
図8の中段に示す光受信機7cのように、第1フィルタ回路76と並列に、即ち、フォトダイオード73から電気出力端子72に到る経路とは異なる経路に、第3フィルタ回路76cを備えてもよい。第3フィルタ回路76cは、ダミー信号の周波数帯を通過域に含み、ターゲット信号の周波数帯を阻止域に含むローパスフィルタである。第3フィルタ回路76cを備える場合、第3フィルタ回路76cの出力は、直に接地されてもよいし、抵抗器Rを介して接地されてもよい。抵抗器Rを備えた場合、第3フィルタ回路76cによって抽出されるダミー信号は熱に変換されて消費される。なお、第3実施形態で示した第2フィルタ回路76bは、第3フィルタ回路76cの一種である。
【0067】
図8の下段に示す光受信機7dのように、第1フィルタ回路76と並列に、第4フィルタ回路76dを備えてもよい。第4フィルタ回路76dは、ダミー信号の周波数を共振周波数とするトラップ回路である。この場合、ダミー信号に対する第4フィルタ回路76dの入力インピーダンスが極めて小さくなるため、第1フィルタ回路76へのダミー信号の流れ込みが抑制される。
【0068】
(4c)前述した光伝送システム、光送信機、光受信機の他、当該光送信機及び光受信機を構成要素とするシステム、ダミー信号の供給方法等、種々の形態で本開示を実現することもできる。
【符号の説明】
【0069】
1…光伝送システム、2,2a…光送信機、3…入力回路、4…E/O変換回路、5…バイアス線路、6,6a…ダミー信号回路、7,7b~7d…光受信機、8…光ファイバ、21…電気入力端子、22…光出力端子、31…第1増幅器、32…分配線路、33…第2増幅器、41…レーザダイオード、42,43,75,621,624,761,764…コンデンサ、44,45,74,622,623,762,763…インダクタ、46…定電流回路、51…個別ライン、52…共通ライン、61…ダミー信号源、62,62a…接続回路、71…光入力端子、72…電気出力端子、73…フォトダイオード、76…第1フィルタ回路、76b…第2フィルタ回路、76c…第3フィルタ回路、76d…第4フィルタ回路、77…増幅器。
図1
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図8