(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023106126
(43)【公開日】2023-08-01
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
F24F 11/65 20180101AFI20230725BHJP
F24F 13/22 20060101ALI20230725BHJP
F24F 11/48 20180101ALI20230725BHJP
F24F 11/86 20180101ALI20230725BHJP
F24F 11/61 20180101ALI20230725BHJP
F24F 110/10 20180101ALN20230725BHJP
F24F 140/00 20180101ALN20230725BHJP
【FI】
F24F11/65
F24F1/0007 361C
F24F11/48
F24F11/86
F24F11/61
F24F110:10
F24F140:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022007267
(22)【出願日】2022-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000538
【氏名又は名称】株式会社コロナ
(72)【発明者】
【氏名】皆川 大樹
(72)【発明者】
【氏名】莅戸 智史
(72)【発明者】
【氏名】藤田 秀穂
【テーマコード(参考)】
3L050
3L260
【Fターム(参考)】
3L050AA10
3L050BD05
3L260AB02
3L260BA34
3L260BA61
3L260CA12
3L260CA13
3L260CB04
3L260CB06
3L260CB62
3L260DA15
3L260EA07
3L260FA02
3L260FB02
3L260HA06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】洗浄運転における室内熱交換器の洗浄効率低下を阻止可能な空気調和機を提供する。
【解決手段】洗浄用冷房運転の実施時、温度センサで検出された室温が運転切替温度以下になるまで圧縮機を目標回転数で維持することで、室内熱交換器の表面を露点温度以下に保持し、当該室内熱交換器の表面に結露水を発生させ洗浄することができる。温度センサで検出された室温が運転切替温度に近づいたとき、圧縮機の回転数を所定の回転数未満まで低下させることで、室内熱交換器の表面が露点温度より高くなり、当該室内熱交換器の表面に結露水が発生せず洗浄できない時間が生じることを未然に阻止することができる。これにより、室内熱交換器の洗浄効率低下を阻止できる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒が循環して流れる冷媒回路と、
当該冷媒回路に設けられ回転数が可変の圧縮機と、
前記冷媒回路に設けられ室外空気と熱交換する室外熱交換器と、
前記冷媒回路に設けられ冷媒の圧力を下げる膨張弁と、
前記冷媒回路に設けられ室内空気と熱交換する室内熱交換器と、
前記冷媒回路に設けられ冷媒の通流方向を変更する切替弁と、
室温を検出する温度センサと、
前記室内熱交換器を結露させて洗浄する洗浄用冷房運転と、
当該洗浄用冷房運転とは逆方向に前記冷媒回路内を前記冷媒が通流するよう前記切替弁を切り替え、室温を上昇させる洗浄用暖房運転と、
前記洗浄用冷房運転から前記洗浄用暖房運転へ切り替える運転切替温度と、
前記洗浄用冷房運転の実施時、前記温度センサで検出された室温が前記運転切替温度以下になったと判断したら、前記洗浄用暖房運転に切り替える洗浄運転を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記洗浄用冷房運転の実施時、前記温度センサで検出された室温が前記運転切替温度以下になるまで前記圧縮機を所定の回転数以上で維持することを特徴とした空気調和機。
【請求項2】
前記運転切替温度は、前記洗浄用冷房運転で前記圧縮機の回転数を低下させる所定の低下開始温度としたことを特徴とする請求項1記載の空気調和機。
【請求項3】
前記制御部は、前記洗浄用暖房運転の実施後、前記洗浄用暖房運転の実施継続時間が所定の基準時間を経過したか、前記温度センサでの検知値が所定の設定温度以上になったと判断したら、前記洗浄用冷房運転に切り替えることを特徴とした請求項1又は2記載の空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内機内にある室内熱交換器を洗浄する洗浄運転が実施可能な空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のものでは、室内に設置された室内機内にある室内熱交換器が蒸発器として機能する洗浄用冷房運転により室内熱交換器の表面に結露水を発生させ、結露水を利用して室内熱交換器の表面に付着した塵埃を洗い流す洗浄運転を実施する空気調和機があった。(例えば、特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、洗浄用冷房運転により室内熱交換器を露点温度以下まで冷却し、当該室内熱交換器の表面に結露水を発生させるものである。そのため、洗浄用冷房運転により室内熱交換器の温度が低下し続けると当該室内熱交に発生した結露水が凍結し、当該室内熱交換器の表面に付着した塵埃を洗い流せなくなる。
これを阻止すため、洗浄用冷房運転中における室温を温度センサが検出し、温度センサで検出された室温が運転切替温度以下になったら当該洗浄用冷房運転を停止し、冷媒回路内の切替弁を切り替えて室内熱交換器を凝縮器として機能させる洗浄用暖房運転を実施することで室温を上昇させ、室温が上昇したら冷媒回路内の切替弁を切り替えて室内熱交換器を蒸発器として機能させる洗浄用冷房運転を再開する制御を洗浄時間中に繰り返すことで、洗浄運転における室内熱交換器の凍結を阻止するものが考えられる。
【0005】
しかし、洗浄運転における洗浄用暖房運転は室内熱交換器の洗浄に寄与しないため実施時間を短くしたい。よって、洗浄用冷房運転の実施時に室温が運転切替温度に近づいたとき、圧縮機の回転数を低下させることで運転切替温度に短時間で到達しないようにし、洗浄用冷房運転の時間を延ばそうとする。圧縮機の回転数が低下すると、室内熱交換器内を通流する冷媒温度が上昇して室内熱交換器の表面温度が露点温度より高くなるので、当該室内熱交換器に結露水が発生しない。洗浄用冷房運転を実施しているにも関わらず、結露水による室内熱交換器の洗浄ができない時間が発生し、洗浄運転における当該室内熱交換器の洗浄時間が短くなり洗浄効率が低下するため、改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る空気調和機は、上述した課題を解決するために、請求項1では、冷媒が循環して流れる冷媒回路と、
当該冷媒回路に設けられ回転数が可変の圧縮機と、
前記冷媒回路に設けられ室外空気と熱交換する室外熱交換器と、
前記冷媒回路に設けられ冷媒の圧力を下げる膨張弁と、
前記冷媒回路に設けられ室内空気と熱交換する室内熱交換器と、
前記冷媒回路に設けられ冷媒の通流方向を変更する切替弁と、
室温を検出する温度センサと、
前記室内熱交換器を結露させて洗浄する洗浄用冷房運転と、
当該洗浄用冷房運転とは逆方向に前記冷媒回路内を前記冷媒が通流するよう前記切替弁を切り替え、室温を上昇させる洗浄用暖房運転と、
前記洗浄用冷房運転から前記洗浄用暖房運転へ切り替える運転切替温度と、
前記洗浄用冷房運転の実施時、前記温度センサで検出された室温が前記運転切替温度以下になったと判断したら、前記洗浄用暖房運転に切り替える洗浄運転を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記洗浄用冷房運転の実施時、前記温度センサで検出された室温が前記運転切替温度以下になるまで前記圧縮機を所定の回転数以上で維持することを特徴とした。
【0007】
また、請求項2では、前記運転切替温度は、前記洗浄用冷房運転で前記圧縮機の回転数を低下させる所定の低下開始温度としたことを特徴とした。
【0008】
また、請求項3では、前記制御部は、前記洗浄用暖房運転の実施後、前記洗浄用暖房運転の実施継続時間が所定の基準時間を経過したか、前記温度センサでの検知値が所定の設定温度以上になったと判断したら、前記洗浄用冷房運転に切り替えることを特徴とした。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、洗浄用冷房運転の実施時、運転切替温度以下になるまで圧縮機を所定の回転数以上で維持するので、洗浄運転において結露水による室内熱交換器の洗浄時間が短くなることを未然に阻止し、洗浄効率の低下を阻止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態における空気調和機の模式図である。
【
図3】同実施形態の洗浄用暖房運転の制御内容を説明するフローチャートである。
【
図4】同実施形態の洗浄用冷房運転及び洗浄用乾燥運転の制御内容を説明するフローチャートである。
【
図5】同実施形態の比較例における洗浄運転の制御内容を説明する図である。
【
図6】同実施形態の洗浄運転の制御内容を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【0012】
図1には、内部を冷媒が流れる冷媒回路11を備えたエアコン装置10(空気調和機)が示されている。エアコン装置10は、室内Rを冷却する冷房運転と、室内Rを暖める暖房運転と、を行う機能を備えている。冷媒回路11は、室外Ouに配置された室外機20と、室内Rに配置された室内機30とを、含んでいる。以下、特に説明のない限り、冷媒の循環する方向は、冷房運転時を基準とする。
【0013】
室外機20は、冷房運転時及び暖房運転時における冷媒の通流方向を切り替える切替弁21と、この切替弁21を通過した冷媒が流され冷媒を圧縮する圧縮機22と、この圧縮機22において圧縮され高温高圧となった冷媒が流れる室外熱交換器23と、この室外熱交換器23に向かって室外空気を送るプロペラファン24と、室外熱交換器23を通過した冷媒を減圧する膨張弁25と、を有する。
【0014】
室内機30は、室内Rにおいて壁Waに掛けられている。室内機30は、室内から空気を取り込むと共に室内へ空気を送風する室内ファン31と、この室内ファン31が取り込んだ室内空気と熱交換する室内熱交換器32と、室内ファン31及び室内熱交換器32を収納しているケース33と、を有している。
【0015】
ケース33は、室内ファン31が送り出す風の吹出口となる送風口33aを有する。送風口33aには、吹き出される送風の左右の向きを調整する左右ルーバ34と、吹き出される送風の上下の向きを調整する上下ルーバ35と、が配置されている。
【0016】
冷房運転について説明する。圧縮機22により高温高圧とされた冷媒は、室外熱交換器23において室外空気と熱交換を行い、熱を放出する。このとき、プロペラファン24が回転することによって、外気を強制的に室外熱交換器23の外周に流し、熱交換を促す。室外熱交換器23を通過し熱を放出した冷媒は、膨張弁25において減圧され、温度が低下する。温度が低下した冷媒は、室内熱交換器32へ流れる。
【0017】
室内熱交換器32に流れ込んだ低温の冷媒は、室内熱交換器32において室内Rの室内空気と熱交換を行い、室内Rの空気を冷却する。冷却された空気は、室内ファン31によって室内Rに送風される。室内ファン31は、空気を強制的に室内熱交換器32の外周に流し、冷媒との熱交換を促す。
【0018】
暖房運転時には、切替弁21が冷媒の流路を切り替え、冷房運転時とは逆方向に冷媒を循環させる。
【0019】
図2には、エアコン装置10(
図1参照)の制御ブロック図が示されている。室内機30は、室内ファン31と、左右ルーバ34と、上下ルーバ35とを制御する室内制御部40(制御部)と、室内の温度を検出する温度センサ41と、室内制御部40により運転状況を表示する表示ランプ42と、リモコン12との間で所定の情報をやり取りするリモコン送受信部43と、を内蔵している。
【0020】
室内制御部40は、リモコン送受信部43を介して受信したデータや、温度センサ41の検出値や、後述する設定温度や基準時間や、その他所定のプログラム等が記憶される記憶部44と、経過時間を計測する複数のタイマt1~t4と、を有している。
【0021】
室外機20は、室内制御部40と電気的に接続している室外制御部45を有している。室内制御部40は、室外制御部45を介して、切替弁21と、圧縮機22と、プロペラファン24と、膨張弁25とを制御可能である。
【0022】
エアコン装置10は、室内熱交換器32(
図1参照)の表面に付着した塵埃を洗浄する洗浄運転を行う機能も備えている。以下、エアコン装置10の洗浄運転の制御内容を説明する。
【0023】
図3及び
図4には、エアコン装置10の制御内容を表すフローチャートが示されている。リモコン12(
図2参照)から室内制御部40へ洗浄運転開始の信号が送信された場合、又は、冷房運転又は暖房運転の終了後、所定の条件を満たしている場合(例えば前回の洗浄運転の終了から所定の時間が経過しているなど)、室内制御部40は、表示ランプ42を洗浄運転を行っている旨を示す態様で洗浄運転を開始する(スタート)。
【0024】
洗浄運転が開始されると、ステップSt1では、第1のタイマt1が”0”からスタートする。第1のタイマt1は、洗浄運転の継続時間を計測する。
【0025】
ステップSt2では、温度センサ41が検出した室温Trを室内制御部40が取得する。
【0026】
ステップSt3では、室温Trが所定の温度の範囲内に収まっているか判断する。具体的には、室温Trが、基準室温値Ts1未満、かつ、基準室温値Ts1よりも低く設定された最低基準値Ts2以上か判断する(Ts2 ≦ Tr < Ts1)。基準室温値Ts1と最低基準値Ts2とは、予め設定された値である。
【0027】
室温Trが最低基準値Ts2に満たない場合(Tr < Ts2)、洗浄運転は終了する(エンド)。
【0028】
室温Trが、最低基準値Ts2以上、かつ、基準室温値Ts1未満の場合(Ts2 ≦ Tr < Ts1)、ステップSt4では、第2のタイマt2が”0”からスタートする。
【0029】
その後、ステップSt5では、室内Rを暖める洗浄用暖房運転を実行する。
図1及び
図2も参照する。洗浄用暖房運転は、室内熱交換器32の表面を結露させるのに適した環境を整えることを目的とする。洗浄用暖房運転は、通常の暖房運転と同様に、室内制御部40からの指示を受けた室外制御部45が、圧縮機22と膨張弁25及び切替弁21とを制御することにより実行される。
【0030】
洗浄用暖房運転は、予め設定された条件に基づいて実行される。この条件として、例えば、洗浄用暖房運転では、少なくとも基準室温値Ts1よりも高い温度を設定温度Ts3とし、室内ファン31による風量を最大とする。上下ルーバ35及び左右ルーバ34は、風量最大時における位置で固定する。
【0031】
ステップSt6では、温度センサ41が検出した室温Trを室内制御部40が取得する。
【0032】
ステップSt7では、洗浄用暖房運転により室温Trが所定の設定温度Ts3に達したか判断する(Tr ≧ Ts3)。
【0033】
室温Trが設定温度Ts3に達した場合(Tr ≧ Ts3)、ステップSt8では、第3のタイマt3を”0”からスタートさせる。
【0034】
その後、ステップSt9では、結露により室内熱交換器32の表面に結露水を発生させる洗浄用冷房運転を実行する。結露により発生した結露水は、室内熱交換器32の表面に付着した塵埃を洗い流す。洗浄用冷房運転は、通常の冷房運転と同様に、室内制御部40からの指令を受けた室外制御部45が、圧縮機22と膨張弁25及び切替弁21とを制御することにより実行される。
【0035】
洗浄用冷房運転は、予め設定された条件に基づいて実行される。例えば、洗浄用冷房運転の設定温度Ts4は、所定の温度(例えば、最低基準値Ts2)とし、左右ルーバ34及び上下ルーバ35は、風量最大時における位置で固定する。風量は、室温Trによって適宜変化させる。そして、設定温度Ts4は洗浄冷房運転から洗浄用暖房運転へ切り替えるための運転切替温度である。
【0036】
また、洗浄用冷房運転は、予め設定された第1の所定時間が経過したら圧縮機22を停止させ室内ファン31のみ駆動させる送風運転を予め設定された第2の所定時間だけ実施するよう室内制御部40により制御される。第1の所定時間は第2の所定時間よりも長くなるように設定される。洗浄用冷房運転の終了条件が満たされるまで、冷房運転と送風運転とが繰り返し実施されるよう室内制御部40により制御される。送風運転を実施することで、室内機30内に溜まった湿気を室内Rへ戻すことで室内の湿度を上昇させ、洗浄用冷房運転による結露水の発生量を上昇させて室内熱交換器32の洗浄効率を高めることができる。洗浄冷房運転時の詳細な制御内容は後述する。
【0037】
なお、ステップSt7において、室温Trが設定温度Ts3に達していない場合(Tr < Ts3)、ステップSt10では、第2のタイマt2による計測時間(洗浄用暖房運転の継続時間)が、予め設定された所定の基準時間m1(第1の基準時間)を経過したか判断する(t2 > m1)。
【0038】
第2のタイマt2による計測時間が基準時間m1を経過している場合(t2 > m1)、第3のタイマt3を”0”からスタートさせ(ステップSt8)、その後に洗浄用冷房運転を実行する(ステップSt9)。
【0039】
第2のタイマt2による計測時間が基準時間m1を経過していない場合(t2 < m1)、洗浄用暖房運転を継続する。
【0040】
なお、ステップSt3において、室温Trが基準室温値Ts1を超えている場合(Tr > Ts1)、室内制御部40は、室内Rがすでに室内熱交換器32の表面を結露させるために適した環境であると判断する。そのため、室内制御部40は、洗浄用暖房運転(ステップSt5)を実行せずに、第3のタイマをスタートさせ(ステップSt8)、洗浄用冷房運転を実行する(ステップSt9)。
【0041】
ステップSt9の洗浄用冷房運転の開始後、ステップSt11では、温度センサ41が検出した室温Trを室内制御部40が取得する。
【0042】
その後、ステップSt12では、室温Trが洗浄用冷房運転の運転切替温度である設定温度Ts4以下になったか判断する(Tr ≦ Ts4)。
【0043】
室温Trが設定温度Ts4以下になった場合(Tr ≦ Ts4)、ステップSt13では、第1のタイマt1による計測時間(洗浄運転の継続時間)が予め設定された基準時間m2(第2の基準時間)を経過したかを判断する(t1 > m2)。
【0044】
第1のタイマt1による計測時間が基準時間m2を経過していない場合(t1≦ m2)、洗浄用冷房運転を停止して、第2のタイマt2をリセット後に再スタートさせ(ステップSt4)、洗浄用暖房運転を再度実行する(ステップSt5)。洗浄用冷房運転を継続すると、室内熱交換器32内を通流する冷媒の温度が下がり続け、当該室内熱交換器32の表面に付着した結露水が凍結する場合がある。結露水が凍結すると、室内熱交換器32の表面に付着した塵埃を結露水により洗い流すことができず、洗浄運転における洗浄効率が低下する。洗浄用冷房運転時、温度センサ41で検出された室温Trが設定温度Ts4以下になり、基準時間m2を経過していない場合は、洗浄用暖房運転を再開して室温を上昇させる。室内熱交換器32の表面温度を上げて結露水が凍結することを未然に防止し、洗浄運転における洗浄効率低下を阻止する。
【0045】
ステップSt13において第1のタイマt1による計測時間(洗浄運転の継続時間)が基準時間m2を経過した場合(t1> m2)や、ステップSt12において室温Trが設定温度Ts4以上となった場合(Tr ≧ Ts4)、ステップSt14では、第3のタイマt3による計測時間(洗浄用冷房運転の継続時間)が予め設定された基準時間m3を経過しているか判断する(t3 > m3)。
【0046】
ステップSt14において第3のタイマによる計測時間が基準時間を経過している場合(t3 > m3)、ステップSt15では、第4のタイマt4を”0”からスタートさせる。
【0047】
その後、ステップSt16では、室内熱交換器32を乾燥させるための洗浄用乾燥運転を開始する。洗浄用乾燥運転は、通常の暖房運転と同様に、室内制御部40からの指令を受けた室外制御部45が、圧縮機22と膨張弁25及び切替弁21とを制御することにより実行される。
【0048】
洗浄用乾燥運転は、予め設定された条件に基づいて実行される。例えば、洗浄用乾燥運転の設定温度Ts6(不図示)を所定の温度とする。暖房運転開始時に冷風の吹き出しを防止するホットスタート機能と、室外熱交換器23を暖めて霜を融かす除霜運転機能と、は無効とする。上下ルーバ35及び左右ルーバ34は、風量最大時における位置で固定する。風量は、室温Trに応じて適宜変化させる。
【0049】
なお、ステップSt14において第3のタイマt3による計測時間(洗浄用冷房運転の継続時間)が基準時間m3を経過していない場合(t3 ≦ m3)、ステップSt17では、第1のタイマt1による計測時間(洗浄運転の継続時間)が予め設定された基準時間m4を経過したかを判断する(t1 > m4 )。
【0050】
第1のタイマt1による計測時間(洗浄運転の継続時間)が基準時間m4を経過していない場合(t1 ≦ m4 )、洗浄用冷房運転(ステップSt9)を継続する。
【0051】
第1のタイマt1による計測時間(洗浄運転の継続時間)が基準時間m4を経過している場合(t1 > m4 )、第4のタイマt4を”0”からスタートさせ(ステップSt15)、その後に洗浄用乾燥運転を開始する(ステップSt16)。
【0052】
ステップSt16の洗浄用乾燥運転の開始後、ステップSt18では、第4のタイマt4による計測時間(洗浄用乾燥運転の継続時間)が予め設定された基準時間m5を経過しているか判断する(t4 > m5)。
【0053】
第4のタイマt4による計測時間(洗浄用乾燥運転の継続時間)が予め設定された基準時間m5を経過していない場合(t4 ≦ m5)、洗浄用乾燥運転を継続する。
【0054】
第4のタイマt4による計測時間が予め設定された基準時間m5を経過した場合(t4 > m5)、室内制御部40は、洗浄運転を終了する(エンド)。洗浄運転の終了の際、室内制御部40は、室内機30に設けられた表示ランプ42を消灯させ、上下ルーバ35及び左右ルーバ34を運転停止時の際の処理を行う。
【0055】
次に、本実施形態における洗浄運転の洗浄用暖房運転と洗浄用冷房運転の切替制御について、詳述する。
【0056】
まず、本発明の比較例について
図5を参照して説明する。洗浄運転の開始指示が出され、温度センサ41が検出した室温Trが最低基準値Ts2以上で、かつ基準室温値Ts1であり、前記St5の洗浄用暖房運転が実施される。洗浄用暖房運転時、圧縮機22は洗浄用暖房運転の終了条件を満たすまで、予め設定された目標回転数で維持される。
【0057】
その後、洗浄用暖房運転開始から基準時間m1以内に温度センサ41で検出した室温Trが設定温度Ts以上になると、洗浄用暖房運転の終了条件が満たされたとして圧縮機22を停止させ、切替弁21を駆動させて室内熱交換器32が蒸発器として機能するよう冷媒が通流する冷媒回路11に切り替える。準備が完了したら圧縮機22を駆動させ、洗浄用冷房運転を開始する。洗浄用冷房運転時、圧縮機22の回転数は洗浄用暖房運転に切り替える運転切替温度に近づくまで目標回転数で維持される。
【0058】
室内制御部40は、洗浄用冷房運転開始後、当該洗浄用冷房運転の終了条件を満たさない状態で当該洗浄用冷房運転の運転時間が第1の所定時間以上だと判断したら、圧縮機22を停止させ室内ファン31のみを駆動させる送風運転を実施する。送風運転時、室内熱交換器32に低温の冷媒は通流しないので結露水による当該室内熱交換器32の洗浄はされない。送風運転の実施により、室内熱交換器32の周辺に溜まっている湿気を室内へ戻し、室内湿度が高まるので、洗浄冷房運転による室内熱交換器32での結露水の発生量を増加させることができる。送風運転の実施は、特に室内が低湿度の状態において好適である。
【0059】
室内制御部40は、洗浄用冷房運転から送風運転に切り替わった後、送風運転を第2の所定時間だけ継続し、洗浄用冷房運転の終了条件が満たされていなければ、圧縮機22を駆動させ再び洗浄用冷房運転を開始する。なお、第2の所定時間は第1の所定時間よりも短い。
【0060】
ここでの洗浄用冷房運転時、温度センサ41で検出された室温Trが運転切替温度に近い所定の低下開始温度Td1以下になると、室内制御部40は、圧縮機22の回転数を目標回転数から所定値だけ下げた回転数X1まで低下させる。その後、室温が更に低下し、温度センサ41で検出された室温Trが前記所定の低下開始温度Td1よりも低く運転切替温度よりも高い所定の低下開始温度Td2以下になったら、室内制御部40は、圧縮機22の回転数を回転数X1より低い回転数X2まで低下させる((A)の区間)。
【0061】
圧縮機22の回転数をX1、及びX2とした洗浄用冷房運転は、目標回転数で圧縮機22を駆動させる洗浄用冷房運転と比較して能力が低く、室内熱交換器32内を通流する冷媒温度が高くなり当該室内熱交換器32の表面温度が露点温度より高くなる。室内熱交換器32の表面温度が露点温度より高くになると当該室内熱交換器32の表面に結露水が発生せず、室内熱交換器32の洗浄がされない洗浄用冷房運転時間となる。
【0062】
その後、室内制御部40は、温度センサ41で検出された室温Trが運転切替温度である設定温度Ts4以下になり、洗浄運転の継続時間内で洗浄用冷房運転の終了条件が満たされたと判断したら圧縮機22を停止させ、切替弁21を駆動させて室内熱交換器32が凝縮器として機能するよう冷媒が通流する冷媒回路11に切り替える。準備が完了したら、再度洗浄用暖房運転を実施する。
【0063】
以上のように、洗浄用冷房運転時に温度センサ41で検出された室温Trが運転切替温度に近づき、所定の低下開始温度以下になると圧縮機22の回転数を低下させる制御を行った場合、当該洗浄用冷房運転で室内熱交換器32の表面に結露水が発生しない時間が生じる。洗浄運転の実施時間は予め上限が設定されているため、換言すると、結露水が発生しない洗浄用冷房運転時間は、室内熱交換器32の洗浄効率低下の要因となる。
【0064】
次に、本発明の一実施形態について
図6を参照して説明する。なお、洗浄運転の開始指示から洗浄用暖房運転、洗浄用冷房運転、及び送風運転への切替は比較例と同様なので説明を省略する。
【0065】
本実施形態では、比較例で説明した所定の低下開始温度Td1を運転切替温度としている。よって、洗浄用冷房運転の実施時、室内制御部40は、温度センサ41で検出された室温が運転切替温度に近づいていても圧縮機22の回転数を低下させず、所定の回転数以上である目標回転数に維持した状態で駆動させる((B)の区間)。これにより、温度センサ41で検出された室温が運転切替温度に近づいていても室内熱交換器32内を通流する冷媒温度が上昇しない。室内熱交換器32表面を露点温度以下に保持することができ、当該室内熱交換器32の表面に結露水を発生させ続けて洗浄することができる。
【0066】
また、温度センサ41で検出された室温が運転切替温度に近づいても圧縮機22の回転数が低下しないため、能力が低下しないことから温度センサ41で検出された室温が比較例より早期に運転切替温度以下となる。結果的に、比較例よりも早い時期に洗浄用暖房運転、及び洗浄用冷房運転が実施される。よって、洗浄運転が実施可能な上限時間内において同一の環境条件であれば、本実施形態の方が比較例よりも洗浄用冷房運転の実施時間が長くなる。室内熱交換器32の表面に結露水を発生させ当該室内熱交換器32を洗浄する時間が比較例より長くなり、洗浄効率が向上する。
【0067】
なお、本実施形態では所定の低下開始温度Td1を運転切替温度としているが、所定の低下開始温度Td2を運転切替温度としてもよい。洗浄用冷房運転時、温度センサ41で検出された室温が所定の低下開始温度Td2以下となるまで圧縮機22を所定の回転数以上である目標回転数で維持する。洗浄用冷房運転の実施中、室内熱交換器32の表面温度を露点温度以下にすることができ、結露水による当該室内熱交換器32の洗浄効率が向上する。
【0068】
また、本実施形態では洗浄用冷房運転時、運転切替温度以下になるまで圧縮機22を目標回転数で維持した内容で説明したが、これに限られない。洗浄用冷房運転時に室内熱交換器32の表面を露点温度以下に保持し、当該室内熱交換器32の表面に結露水を発生させ洗浄することが可能な圧縮機22の回転数が所定の回転数以上である。よって、洗浄冷房運転時において運転切替温度に近づいたとき、圧縮機22を目標回転数ではない回転数に変更していても、変更後の回転数について所定の回転数以上を維持するように制御していれば、本発明の範疇である。
【0069】
次に、本発明の効果を説明する。
【0070】
室内熱交換器32の表面に結露水を発生させ当該室内熱交換器32の表面を洗浄する洗浄用冷房運転の実施時、温度センサ41で検出された室温が運転切替温度以下になるまで圧縮機22を所定の回転数以上である目標回転数で維持する。洗浄用冷房運転の実施時、温度センサ41で検出された室温が運転切替温度以下になるまで圧縮機22を目標回転数で維持することで、室内熱交換器32の表面を露点温度以下に保持し、当該室内熱交換器32の表面に結露水を発生させ洗浄することができる。温度センサ41で検出された室温が運転切替温度に近づいたとき、圧縮機22の回転数を所定の回転数未満まで低下させることで、室内熱交換器32の表面が露点温度より高くなり、当該室内熱交換器32の表面に結露水が発生せず洗浄できない時間が生じることを未然に阻止することができる。これにより、室内熱交換器32の洗浄効率低下が阻止できる。
【0071】
また、洗浄用冷房運転で圧縮機22の回転数を低下させる所定の低下開始温度を運転切替温度とした。洗浄用冷房運転の実施時、洗浄用暖房運転に切り替わるまで圧縮機22の回転数を所定の回転数以上で維持することができる。室内熱交換器32の表面を露点温度以下に保持し、当該室内熱交換器32の表面に結露水を発生させ洗浄することができる。
【0072】
また、室内制御部40は、洗浄用暖房運転の実施後、洗浄用暖房運転の実施継続時間が所定の基準時間m1を経過したか、温度センサ41での検知値が所定の設定温度Ts3以上になったと判断したら、洗浄用冷房運転に切り替える。洗浄用暖房運転により室温を上昇させ、洗浄用冷房運転により室内熱交換器32の表面で発生させる結露水量が上昇するので、当該室内熱交換器32の洗浄効率低下を阻止できる。
【0073】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0074】
10 エアコン装置(空気調和機)
11 冷媒回路
21 切替弁
22 圧縮機
23 室外熱交換器
25 膨張弁
40 室内制御部(制御部)
41 温度センサ