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▶ タイコエレクトロニクスジャパン合同会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023106135
(43)【公開日】2023-08-01
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/629 20060101AFI20230725BHJP
【FI】
H01R13/629
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022007281
(22)【出願日】2022-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000227995
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクスジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100197583
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 健
(72)【発明者】
【氏名】渡村 大樹
(72)【発明者】
【氏名】秋口 哲朗
【テーマコード(参考)】
5E021
【Fターム(参考)】
5E021FA09
5E021FA14
5E021FA16
5E021FB07
5E021FC31
5E021HB02
5E021HB04
5E021HB05
5E021HB07
5E021HB09
5E021HB11
(57)【要約】
【課題】より好適な操作レバーの保持機構を有するコネクタを提供すること。
【解決手段】アウタハウジングと、該アウタハウジングに設けられ所定方向にスライド移動可能なスライダーと、該スライダーと組み合わされ、回動前の第1の位置と回動完了時の第2の位置との間で回動可能な操作レバーとを有して成り、前記スライダーは、前記操作レバーの回動に伴ってスライド移動可能であり、前記操作レバーが前記第1の位置にある状態において前記アウタハウジングと係合可能となっている、コネクタが提供される。
【選択図】図11A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウタハウジングと、該アウタハウジングに設置され所定方向にスライド移動可能なスライダーと、該スライダーと組み合わされ、回動前の第1の位置と回動完了時の第2の位置との間で回動可能な操作レバーとを有して成り、
前記スライダーは、前記操作レバーの回動に伴ってスライド移動可能であり、前記操作レバーが前記第1の位置にある状態において前記アウタハウジングと係合可能となっている、コネクタ。
【請求項2】
前記操作レバーを回動可能に軸支するワイヤカバーを更に有して成り、前記操作レバーは、前記ワイヤカバーと係合することなく、前記第1の位置にて保持可能となっている、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記操作レバーが前記第1の位置にある状態にて、前記スライダーは、スライド移動前にて、前記アウタハウジングと係合可能な第1領域と、前記第1領域とは別の位置にありかつ前記アウタハウジングと当接可能な第2領域とを有して成る、請求項1または2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記スライダーの前記第2領域および該第2領域に直接対向する前記アウタハウジングの所定部分の少なくとも一方が可撓性部分を含む、請求項3に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記可撓性部分が、前記コネクタの長手方向にて相互に離隔対向する少なくとも2本のスリットにより形成される、請求項4に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記可撓性部分または該可撓性部分に対向する部分が隆起部を有して成る、請求項4または5に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記相互に離隔対向するスリット間に隆起部が位置付けられる、請求項5に記載のコネクタ。
【請求項8】
平面視にて、前記コネクタの長手方向に沿って前記隆起部の両側が内側に向かって傾斜している、請求項6または7に記載のコネクタ。
【請求項9】
前記スライダーの前記第2領域が、前記アウタハウジングと当接する部分と前記アウタハウジングと相互に離隔対向する部分とを有して成る、請求項3~8のいずれかに記載のコネクタ。
【請求項10】
前記離隔対向する部分が、前記当接する部分の前記コネクタの長手方向に沿って両側に設けられている、請求項9に記載のコネクタ。
【請求項11】
前記スライダーと前記アウタハウジングとの間において、前記スライダーの移動に伴って相対的に位置変更される前記隆起部と該隆起部に対向する部分との間の距離が、前記隆起部の非形成部分と該非形成部分に対向する部分との間の距離よりも大きい、請求項6~8のいずれかに従属する請求項9または10に記載のコネクタ。
【請求項12】
前記スライダーが外側主面と内側主面とを備え、前記スライダーの前記第1領域が前記内側主面側に形成され、前記スライダーの前記第2領域が前記外側主面側に形成される、請求項3~11のいずれかに記載のコネクタ。
【請求項13】
前記アウタハウジング内に相手ハウジングを挿入可能となっており、前記相手ハウジングの挿入開始時に前記スライダーを外側へと移動可能となっている、請求項1~12のいずれかに記載のコネクタ。
【請求項14】
前記スライダーが、前記相手ハウジングに設けられたカムピンを受容可能なカム溝を更に備え、前記カムピンの挿入が開始される前記カム溝の一端側に、内側傾斜面が形成されている、請求項13に記載のコネクタ。
【請求項15】
前記相手ハウジングの挿入開始時に、前記カムピンが前記内側傾斜面を有する前記カム溝の前記一端側に位置付け可能となっており、前記カムピンが前記内側傾斜面において前記スライダーを外側に移動させる、請求項14に記載のコネクタ。
【請求項16】
前記内側傾斜面において、前記スライダーの厚み寸法が、前記カム溝の前記一端に向かって漸次減じられている、請求項14または15に記載のコネクタ。
【請求項17】
前記アウタハウジング内に収容されるインナハウジングを更に有して成り、
前記操作レバーが前記第1の位置にある状態にて、前記スライダーと前記インナハウジングとが互いに係合する、請求項1~16のいずれかに記載のコネクタ。
【請求項18】
前記スライダーが少なくとも1つの突起部を更に備え、前記インナハウジングは、前記操作レバーが前記第1の位置にある状態にて前記突起部を受ける切り欠き部を備える、請求項17に記載のコネクタ。
【請求項19】
平面視で、前記突起部が相互に対向する2つの内側傾斜面を含む、請求項18に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタに関する。特に、本開示は、レバー機構を有するコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、相手コネクタとの嵌合に要する力をより低減するためのレバー機構を備えたコネクタが開示されている。
【0003】
かかるコネクタは、ハウジングと、スライド部材(スライダーに相当)と、かかるスライダーをスライド移動させる操作レバーとを備えている。この操作レバーの回動操作によって、スライダーに形成されたカム溝に沿って相手コネクタのカムピンを移動させることで、コネクタと相手コネクタとが嵌合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-99267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明者は、従来のレバー構造を有するコネクタに克服すべき課題があることに気づき、そのための対策をとる必要性を新たに見出した。具体的には、以下の課題があることを見出した。
【0006】
上述のようなレバー構造を有するコネクタの嵌合操作においては、操作レバーが初期位置(すなわち、操作レバーの回動前の位置)にある状態で、コネクタと相手コネクタとが組み合わされる。例えば、特許文献1に記載のコネクタでは、カバーに設けられた突起によって操作レバーが保持されている。しかしながら、かかる突起による操作レバーの保持は十分になされているとは言い難いため、例えば操作レバーに荷重がかかることで、意図せず操作レバーが突起から外れて初期位置からずれてしまい、嵌合操作における作業効率が低下する虞がある。
【0007】
本開示は、かかる課題に鑑みてなされたものである。すなわち、本開示の主たる目的は、より好適な操作レバーの保持機構を有するコネクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者は、従来技術の延長線上で対応するのではなく、新たな方向で対処することによって上記問題点の解決を試みた。その結果、上記主たる目的が達成されたコネクタの発明に至った。
【0009】
本開示では、アウタハウジングと、該アウタハウジングに設けられ所定方向にスライド移動可能なスライダーと、該スライダーと組み合わされ、回動前の第1の位置と回動完了時の第2の位置との間で回動可能な操作レバーとを有して成り、
前記スライダーは、前記操作レバーの回動に伴ってスライド移動可能であり、前記操作レバーが前記第1の位置にある状態において前記アウタハウジングと係合可能となっている、コネクタが提供される。
【発明の効果】
【0010】
本開示のコネクタによれば、操作レバーをより好適に保持することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A図1Aは、操作レバーが第1の位置にある状態の本開示のコネクタを模式的に示す斜視図である。
図1B図1Bは、操作レバーが第2の位置にある状態の本開示のコネクタを模式的に示す斜視図である。
図2図2は、本開示のコネクタを模式的に示す分解斜視図である。
図3図3は、本開示のコネクタのアウタハウジングを模式的に示す斜視図である。
図4図4は、図3のアウタハウジングを矢印A-Aで切り取った斜視断面図である。
図5図5は、本開示のコネクタのスライダーの内側主面を模式的に示す斜視図である。
図6図6は、本開示のコネクタのスライダーの外側主面を模式的に示す斜視図である。
図7図7は、図5のスライダーを矢印B-Bで切り取った断面図である。
図8図8は、本開示のインナコネクタを模式的に示す斜視図である。
図9A図9Aは、本開示のコネクタを模式的に示す平面図である。
図9B図9Bは、本開示のコネクタを模式的に示す側面図である。
図10A図10Aは、図9Aのコネクタを矢印C-Cで切り取った模式的断面図である。
図10B図10Bは、相手コネクタの仮挿入状態におけるコネクタの、図9Aに示すC-C断面と同じ箇所を模式的に示す断面図である。
図10C図10Cは、操作レバーの回動途中状態におけるコネクタの、図9Aに示すC-C断面と同じ箇所を模式的に示す断面図である。
図10D図10Dは、操作レバーの回動完了状態におけるコネクタの、図9Aに示すC-C断面と同じ箇所を模式的に示す断面図である。
図11A図11Aは、図9Bのコネクタを矢印E-Eで切り取った模式的断面図である。
図11B図11Bは、図9Bのコネクタを矢印F-Fで切り取った模式的断面図である。
図11C図11Cは、図9Bのコネクタを矢印G-Gで切り取った模式的断面図である。
図12A図12Aは、図9Aのコネクタを矢印D-Dで切り取った模式的断面図である。
図12B図12Bは、図12Aのコネクタにおける部分aの部分拡大図である。
図13A図13Aは、相手コネクタの仮挿入状態におけるコネクタの、図9Aに示すD-D断面と同じ箇所を模式的に示す断面図である。
図13B図13Bは、図13Aのコネクタにおける部分bの部分拡大図である。
図14A図14Aは、手コネクタの仮挿入状態におけるコネクタの、図9Bに示すE-E断面と同じ箇所を模式的に示す断面図である。
図14B図14Bは、相手コネクタの仮挿入状態におけるコネクタの、図9Bに示すF-F断面と同じ箇所を模式的に示す断面図である。
図14C図14Cは、相手コネクタの仮挿入状態におけるコネクタの、図9Bに示すG-G断面と同じ箇所を模式的に示す断面図である。
図15A図15Aは、操作レバーの回動途中状態におけるコネクタの、図9Bに示すE-E断面と同じ箇所を模式的に示す断面図である。
図15B図15Bは、操作レバーの回動途中状態におけるコネクタの、図9Bに示すF-F断面と同じ箇所を模式的に示す断面図である。
図15C図15Cは、操作レバーの回動途中状態におけるコネクタの、図9Bに示すG-G断面と同じ箇所を模式的に示す断面図である。
図16A図16Aは、操作レバーの回動完了状態におけるコネクタの、図9Bに示すE-E断面と同じ箇所を模式的に示す断面図である。
図16B図16Bは、操作レバーの回動完了状態におけるコネクタの、図9Bに示すF-F断面と同じ箇所を模式的に示す断面図である。
図16C図16Cは、操作レバーの回動完了状態におけるコネクタの、図9Bに示すG-G断面と同じ箇所を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、図面を参照して本開示の一実施形態に係るコネクタをより詳細に説明する。図面における各種の要素は、本開示の説明のために模式的かつ例示的に示したにすぎず、外観や寸法比などは実物と異なり得る。
【0013】
さらに、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語を用いる。しかしながら、これらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、これらの用語の意味によって本開示の技術的範囲が制限されるものではない。また、複数の図面の同一符号の部分は、同一または同等の部分を指す。
【0014】
また、本開示の例示態様の説明は、添付の図面(記載された説明全体の一部とみなされる図面)に関連して読まれることを意図している。本願明細書で開示される本開示の態様に関する説明において、方向または向きに関する言及は、単に説明の便宜上であり、本開示の範囲を限定することは意図されていない。「下方」、「上方」、「水平」、「垂直」、「上」、「下」、「頂」、「底」などの相対的な用語、ならびに、その派生用語、「水平に」、「下方に」、「上方に」などは、記載された如くまたは図示される如くの方向に言及すると解されるべきである。かかる相対的な用語は説明の便宜のためのみであり、特に明示的な説明がされない限り、特定の方向に装置が構成または操作されていることを要するものではない。また、「取り付けられた」、「付加された」、「結合された」および「組付けられた」などの用語、ならびに、同様の用語は、別途で明示的に説明されない限り、介在物によって構造物同士が互いに直接的または間接的に固定または取り付けられている関係や、双方が可動もしくは剛性の取り付けまたはその関係であることを述べている。さらに、本開示の特徴または利益は、好ましい態様を参照することによって例示されている。このような態様は十分に詳細に説明されており、当業者が本開示を実施できるようになっている。また、他の態様も利用することができ、プロセス、電気的もしくは機械的な変更が本開示の範囲を逸脱せずに可能であることを理解されたい。したがって、本開示は、考えられる特徴の非制限的な組合せを例示する好ましい態様(単独または他の特徴と組み合わされた態様)に明示的に限定されない。
【0015】
また、本明細書でいう「略垂直」とは、必ずしも完全な「垂直」でなくてよく、それから僅かにずれた態様(例えば、完全な垂直から90°±20°の範囲、例えば90°±10°までの範囲)を含んでいる。
【0016】
また、本明細書でいう「略平行」とは、必ずしも完全な「平行」でなくてよく、それから僅かにずれた態様(例えば、完全な平行から±20°の範囲、例えば±10°までの範囲)を含んでいる。
【0017】
[コネクタの基本構成]
まず、本開示のコネクタの全体構造の把握のため、図面を参照して、以下に本開示のコネクタの概要を説明する。
【0018】
図1Aおよび図1Bは、本開示のコネクタを模式的に示す斜視図である。また、図2は、本開示のコネクタを模式的に示す分解斜視図である。コネクタ1は、主たる構成要素として、アウタハウジング30と、アウタハウジング30内に備えられたスライダー40(図1Bおよび図2を特に参照のこと)と、スライダー40と組み合わされ、図1Aに示す回動前の第1の位置と、図1Bに示す回動完了時の第2の位置との間で回動可能に取り付けられた操作レバー10とを有して成る。スライダー40は、かかる操作レバー10の回動に伴って、アウタハウジング30内にて所定方向にスライド移動する。すなわち、操作者は、操作レバー10を回動させることにより、スライダー40をスライド移動させることができる。
【0019】
ここで、以下の説明の便宜上、本明細書および図面で用いる“方向”について次のとおり規定する。図1Aおよび図1Bに示すように、本明細書および図面において、コネクタの長手方向は、スライダーがスライド移動する方向に相当するところ、「スライド移動方向」とも称することができる。「スライド移動方向」において、特に操作レバーを第1の位置から第2の位置に回動したときのスライダーのスライド移動方向を「方向X」、その反対の方向を「方向X’」と称する。また、図中における上下方向に相当する方向を「上下方向」と称する。「上下方向」において、特に鉛直方向下向き(すなわち、重力が働く方向)を「下方向Z」と称し、その反対の方向を「上方向Z’」と称する。ある好適な態様では、「スライド移動方向」と「上下方向」とは、互いに直交する。
【0020】
なお、本明細書でいう「平面視」とは、上下方向に沿って対象物を上側または下側からみたときの状態のことである。また、本明細書でいう「断面視」とは、上下方向Zに対して略垂直な方向に沿って対象物をみたときの状態のことである。
【0021】
アウタハウジング30は、図2に示すように、インナハウジング60およびフロントハウジング90を収容するように構成されていてよい。より詳細には、アウタハウジング30は、相手コネクタ2との嵌合の向きに開口している。かかる開口32内に、インナハウジング60およびフロントハウジング90が配置されていてよい。フロントハウジング90は、アウタハウジング30との間に一周にわたる空間を形成する。かかる空間に相手コネクタの相手ハウジング201が挿入されることで、本開示のコネクタ1と相手コネクタ2とが嵌合する。
【0022】
図3は、本開示の一実施形態にかかるアウタハウジングを模式的に示す斜視図である。図示されるように、アウタハウジング30は、長手方向の2つの側壁のそれぞれにおいて、長手方向に沿って貫通する溝31をそれぞれ有して成ってよい。各溝31には、スライダー40が所定方向にスライド可能に、それぞれ収容される。
【0023】
スライダー40は、略板状形状を有し得る。より詳細には、スライダー40は、2つの主面と、かかる主面の間をつなぐ所定厚さの側面とを備える長尺部材である。図5および図6は、本開示の一実施形態にかかるスライダー40の内側主面40aおよび外側主面40bをそれぞれ模式的に示す斜視図である。本明細書における「内側主面」とは、アウタハウジングの溝にスライダーが挿入された状態で、相対的にコネクタの内部側に位置する主面を指す。一方、本明細書における「外側主面」とは、内側主面に対向する主面を指す。スライダーの内側主面40aには、相手コネクタのカムピン202(図2参照)に対応するカム溝42が少なくとも1つ設けられている。カム溝は、スライダーの移動方向(すなわち、方向X-X’)に対して斜め方向に延びている。カム溝の一端は、アウタハウジングの開口側(すなわち、方向Z側)のスライダー40の端縁にて開口している。コネクタと相手コネクタとの嵌合に際して、カムピン202(図2参照)は、かかる開口を有するカム溝の一端から他端に向かって移動する。また、アウタハウジングの開口側とは反対側(すなわち、方向Z’側)に位置するスライダー40の端縁には、ラック41が設けられる。一方、スライダー40に組み合わされる操作レバー10には、ピニオンギア11が設けられている。スライダー40と操作レバー10とは、かかるラック41とピニオンギア11とが噛み合うように組み合わされる(図10A図10D参照)。この構成により、第1の位置と第2の位置の間における操作レバー10の回動に伴って、スライダー40は、アウタハウジング30の長手方向に沿ってスライド移動可能となる。
【0024】
操作レバーは、回動操作によって本開示のコネクタと相手コネクタとの嵌合を助力する。具体的には、操作レバー10の回動操作に伴うスライダー40のスライド移動によって、相手コネクタ2のカムピン202(図2も併せて参照のこと)はスライダー40のカム溝42に引き込まれ、本コネクタ1と相手コネクタ2との嵌合が完了する。図10Aは、図9Aに示す、操作レバーが回動前の第1の位置にある状態の本開示のコネクタのC-C断面を矢印方向に見た模式的断面図である。図10B図10Dは、それぞれ、図9Aに示すC-C断面と同じ箇所の「相手コネクタ仮挿入状態」、「回動途中状態」および「回動完了時の第2の位置にある状態」の断面図である。図10A図10Dに示すように、操作レバー10のピニオンギア11は、スライダーのラック41と常に噛み合うように組み合わされる。操作レバー10が第1の位置にある状態にて、相手コネクタのカムピン202が受け入れられる(図10B)。次いで、図10Cおよび図10Dに示すように、操作レバー10を第2の位置に向かって回動させると、スライダー40は方向Xに向かってアウタハウジングの溝31内(図2参照)をスライド移動する。このスライド移動に伴い、カムピン202はカム溝42に沿って移動する。カムピン202がカム溝42の一端から他端に向かって移動することによって相手コネクタは上方向Z’の向きに引き込まれ、嵌合が完了する。このように、コネクタと相手コネクタとの嵌合に際して、操作レバーおよびスライダーは倍力機構として作用する。つまり、操作レバーおよびスライダーによって、より小さな力でコネクタを相手コネクタに嵌め合わせることが可能となる。
【0025】
上述のように、操作レバーを第1の位置から第2の位置に向かって回動させることで、相手コネクタとの嵌合が為されるところ、本明細書におけるコネクタの「回動前の状態(すなわち、操作レバーが第1の位置にある状態)」、「相手コネクタ仮挿入状態」、「回動途中状態」および「回動完了状態(すなわち、操作レバーが第2の位置にある状態)」は、それぞれ「嵌合前状態」、「仮嵌合状態」、「嵌合途中状態」および「嵌合完了状態」と称すこともできる。すなわち、本明細書において、第1の位置とは、スライダーが相手コネクタのカムピンをカム溝に受け入れ可能である位置に配置されている状態にある際の操作レバーの位置を指す。また、第2の位置とは、相手コネクタのカムピンがカム溝の奥にまで引き込まれ、コネクタと相手コネクタとが完全に嵌合した状態にある際の操作レバーの位置を指す。
【0026】
また、本開示のコネクタは、アウタハウジング30に取り付けられるワイヤカバー20をさらに有して成ってよい。ワイヤカバー20は、本開示のコネクタに差し込まれる複数の端子に接続される電線(図示せず)を所定の配策方向に引き揃え得る。操作レバー10は、コネクタの短手方向に沿ってワイヤカバー20を跨ぐように湾曲して延在し、ワイヤカバー20の両側に回動可能に軸支されていてよい。
【0027】
また、本開示のコネクタは、インナハウジング60に差し込まれるリテーナ70を備えていてよい。リテーナ70は、インナハウジング60内において相手コネクタの端子(図示せず)を位置決めし、固定し得る。
【0028】
本開示において、アウタハウジングなどのハウジング、スライダー、操作レバー、ワイヤカバーなどの部材は、絶縁性の非導電性材料から形成されてよい。これらの絶縁性の部材は、絶縁性を有する樹脂材を含み得る。特に限定されないものの、かかる絶縁性の部材は、例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、および不飽和ポリエステル樹脂から成る群から選択される少なくとも1種の熱硬化性樹脂を含み得る。また、互いに異なる部材は、それぞれ異なる樹脂材を含んで成ってもよい。
【0029】
さらに、本開示のコネクタは、防水のためのシール材50および80を有して成ってよい。例えば、コネクタは、インナハウジング60の内面および/または外周にシール材50および80を備えていてよい。シール材50および80は、コネクタ内の端子の防水を担っている。シール部材50および80は、例えばインナハウジング60と相手コネクタとの間を止水し得る。
【0030】
[本開示のコネクタの特徴]
本願発明者らは、コネクタが相手コネクタと未嵌合である状態において操作レバーを第1の位置に保持するにあたって、操作レバーと連動するスライダーを保持可能とすることが有用であることを見出した。したがって、本開示のコネクタは、操作レバーではなく、操作レバーの回動に伴うスライダーのスライド移動に関連する構造において特に特徴を有する。より詳細には、第1の位置にて操作レバーを保持可能とするための、スライダーとアウタハウジングとの係合構造において特に特徴を有する。以下では、本開示のコネクタにおける操作レバーの保持構造をより詳細に説明する。
【0031】
[回動前状態]
図11A~11Cは、回動前状態における図9Bのコネクタの、異なる高さにおける断面を模式的に示す断面図である。図示されるように、本開示のコネクタは、操作レバーが回動前の第1の位置にある状態にて、アウタハウジング30とスライダー40とが係合可能となっている。また、アウタハウジング30との係合とは別の位置にて、アウタハウジング30とスライダー40とは、互いに当接していてよい。さらに別の位置では、スライダー40とインナハウジング60とが互いに係合可能であってよい。以下に、各断面における構造について詳細に説明する。
【0032】
図4は、図3に示すアウタハウジングのA-A断面を矢印方向に見た断面図である。図示されるように、アウタハウジング30は、溝31内部において、後述するスライダー40の係止部43(図5参照)を受けるための被係止部33を少なくとも1つ備えていてよい。被係止部33は、溝31の側面が一部切り欠かれることで形成されてよい。例えば、被係止部33は、スライダーの係止部43を受けるように備えられた凹部であってもよい。
【0033】
また、図5に示されるように、スライダー40は、アウタハウジングに向かって突出する少なくとも1つの係止部43を備えていてよい。より詳細には、スライダーの外側主面40bまたは内側主面40aには、操作レバーが第1の位置にある状態にて、アウタハウジングの被係止部33(図4参照)と対向する位置に係止部43が少なくとも1つ設けられていてよい。
【0034】
図11Aは、図9BのコネクタのE-E断面を矢印方向に見た模式的断面図である。図示されるように、操作レバーが第1の位置にある状態において、スライダー40とアウタハウジング30とは、係止部43と被係止部33によって互いに係合されていてよい。具体的には、図11Aに示すように、スライダーの内側主面40aに形成された係止部43が、かかる係止部43に対向するアウタハウジングの溝の内面に形成された被係止部33に入り込むことで、アウタハウジング30とスライダー40とが係合されてよい。
【0035】
このように、本開示のコネクタのスライダーは、操作レバーが回動前の第1の位置にある状態にて、アウタハウジングと係合可能となっている。つまり、スライダーは、操作レバーの回動前の状態にてアウタハウジングと係合することで、所定の位置に保持される。より詳細には、操作レバーの回動前の状態にて、アウタハウジングの溝内でスライダーとアウタハウジングとが互いに係合することによって、スライダーのスライド移動が防止される。上述したように、本開示のコネクタにおいて、スライダーと操作レバーとは互いに噛み合うように組み合わされているため、スライダーの移動および操作レバーの回動は、互いに連動する。そのため、スライダーが所定位置にて保持されると、同時に操作レバーも所定の回動位置にて保持されることになる。これは、本開示のコネクタでは、スライダーのスライド移動を防止することによって、間接的に操作レバーが所定位置に固定され得ることを意味する。つまり、本開示のコネクタでは、アウタハウジングとスライダーとの係合により、第1の位置にある操作レバーを保持可能となっている。
【0036】
また、本コネクタでは、操作レバーを回動可能に軸支するワイヤカバーにおいて、操作レバーの回動を防止するための係合機構を必ずしも必要としない。すなわち、本開示のコネクタでは、操作レバーは、ワイヤカバーと係合することなく、回動前の第1の位置にて保持可能となっている。これは、本開示のコネクタが、コネクタの内部に操作レバーの保持機構を備えることを意味する。したがって、本開示のコネクタは、操作レバーに対して外部から第2の位置に向かう荷重が加えられても、操作レバーの回動をより好適に防止できる。
【0037】
アウタハウジングとスライダーとの係合の確実性をより重視すると、係止部は、平面視にて矩形状であることがより好ましい。同様に、被係止部は、平面視にて矩形状に凹んだ形状を有することがより好ましい。かかる構造において、係止部と被係止部とは、スライド移動方向に対して略垂直な面にて係止され得る。したがって、アウタハウジングとスライダーとがより強固に係合され、スライダーのスライド移動がより確実に阻止され得る。つまり、より確実なスライダーの保持によって、操作レバーがより好適に保持可能となり得る。
【0038】
また、別の実施形態において、スライダーのいずれか一方の主面に被係止部が設けられ、アウタハウジングの溝内部にて、スライダーに向かって突出した係止部が設けられていてもよい。かかる実施形態では、スライダーの被係止部にアウタハウジングの係止部が嵌まり込むことで、アウタハウジングとスライダーとが互いに係合され得る。
【0039】
また、スライダーとアウタハウジングとは、所定の領域にて、互いに当接していてよい。図11Bは、図9BのコネクタのF-F断面を矢印方向に見た模式的断面図である。図示されるように、スライダー40は、係止部43とは異なる領域にてアウタハウジング30と当接していてよい。これは、スライダー40が、スライダー40とアウタハウジング30とが互いに係合する領域、およびスライダー40とアウタハウジング30とが互いに当接する領域の、2つの領域を備え得ることを意味する。つまり、操作レバーが第1の位置にある状態にて、スライダー40は、アウタハウジング30と係合可能な第1領域Iと、かかる第1領域Iとは別の位置にあり、且つアウタハウジング30と当接可能な第2領域IIとを有して成ってよい(図5および図6参照)。ここで、スライダーの第1領域とは、アウタハウジングとの係合に資する係止部または被係止部が設けられる領域を指す。また、スライダーの第2領域とは、アウタハウジングと当接する部分が設けられる領域を指す。図11Aおよび11Bは、それぞれ、回動前状態における図9Bのコネクタの、第1領域および第2領域の断面を模式的に示している。
【0040】
係合のための第1領域Iと、当接のための第2領域IIとは、スライダーにおいて、互いに異なる主面に位置付けられている。より具体的には、スライダーの内側主面40aと外側主面40bのいずれか一方には第1領域Iが設けられ、他方には第2領域IIが設けられていてよい。例えば、図5および図6に示すように、第1領域Iがスライダーの内側主面40a側に形成され、第2領域IIは外側主面40b側に形成されてよい。これは、係止部43が形成されている主面とは反対側の主面において、スライダーとアウタハウジングとが当接可能となっていることを意味する。第1領域Iと第2領域IIとが互いに異なる主面に位置付けられることで、スライダーは、係合および当接によって、内側主面40aと外側主面40bの双方からより好適に支持され得る。したがって、係止部43と被係止部33とが係合した状態にて、溝31内部におけるスライダー40のがたつきをより好適に防止できる。つまり、係止部43と被係止部33との係合がより好適に保持され得るため、スライダー40とアウタハウジング30とがより確実に係合し得る。結果としてスライダーの固定の確実性がより向上するため、操作レバーが第1の位置にてより好適に保持され得る。
【0041】
第2領域IIでは、スライダー40、およびスライダー40に当接する部分を含むアウタハウジング30の所定箇所の少なくとも一方が、可撓性であってよい。より具体的には、スライダー40の第2領域II、および第2領域IIに対向するアウタハウジング30の所定部分の少なくとも一方が、可撓性部分34を含んでいてよい。つまり、スライダーの第2領域IIおよび/または第2領域IIに対向するアウタハウジングの所定領域は、相対的に撓みやすくてよい。換言すれば、スライダーおよび/またはアウタハウジングは相対的に撓みやすい可撓性部分34を有して成り、かかる可撓性部分34にて、互いに当接していてよい。これは、スライダーの第2領域が、アウタハウジングと当接する可撓性部分が設けられる領域、または、アウタハウジングが可撓性部分を有する場合、かかる可撓性部分と対向する領域を指すことを意味する。スライダーおよびアウタハウジングの少なくとも一方が当接箇所に可撓性部分34を有することで、可撓性部分34の弾性力により、スライダーの第1領域I(図5参照)を、対向するアウタハウジングの溝31の内面に向かってより近接させることができる。したがって、係止部43が被係止部33内により好適に嵌まり込むことが可能となり、スライダー40とアウタハウジング30との係合がより好適に保持され得る。さらに、後述する相手ハウジングの挿入においてスライダーが外側へと移動するに際して、スライダーとアウタハウジングとが当接する可撓性部分が外側に膨らむように撓むことで、スライダーは、より容易に外側へ移動可能となり得る。
【0042】
また、可撓性部分34、または可撓性部分34に対向する部分は、隆起部342を備えていてよい。これは、可撓性部分34を有する第2領域II(図6参照)において、スライダーは、スライダーまたはアウタハウジングに形成された隆起部342にてアウタハウジングと当接し得ることを意味する。スライダーとアウタハウジングとが、可撓性部分34または可撓性部分34に対向する隆起部342にて当接することで、後述するスライダーの外側への移動において、スライダーにかかる押圧力は、隆起部342に集中し得る。結果として、隆起部342を有する可撓性部分34または隆起部342と対向する可撓性部分34が外側に向かって撓むことで、スライダーが全体としてより好適に外側へ移動可能となる。
【0043】
図11Bに示されるように、コネクタの長手方向に位置する隆起部342の両端は、コネクタ1の内部側に向かって漸次傾斜していてよい。つまり、平面視にて、隆起部342は、相互に対向する2つの内側傾斜面451を含み得る。これは、平面視にて、隆起部342が、コネクタ1の内部側に向かって漸次先細りする形状であってよいことを意味する。例えば、隆起部342は、平面視にて、隆起部342の突出方向に向かって漸次先細りする台形形状であってよい。隆起部342が上述の形状を有することで、スライダー40がスライド移動する際に、アウタハウジングとスライダーとの間の干渉を抑制することができる。すなわち、平面視にて、コネクタの長手方向に沿って隆起部342の両端が内側に向かって傾斜することで、より円滑にスライダー40をスライド移動させることが可能となり得る。すなわち、上述の構造により、相手コネクタとの嵌合操作を妨げない、より好適な操作レバーの保持機構が達成され得る。
【0044】
一実施形態において、可撓性部分は、コネクタの長手方向にて相互に離隔対向する少なくとも2本のスリット341によって形成される。例えば、図3および図4に示されるように、アウタハウジング30に2本のスリット341が略平行に形成され、かかるスリット341に挟まれた部分が相対的に高い可撓性を有するように構成されていてよい。つまり、コネクタの長手方向に沿って、相互に離隔して略平行に延在する少なくとも2本のスリット341によって、可撓性部分34が形成されていてよい。複数のスリット341によって可撓性部分34を形成することで、スライダーおよび/またはアウタハウジングの一部分のみを相対的に撓み易くすることを容易に達成できる。また、スリット341の幅を変更することで、所望の可撓性を得ることも可能となり得る。
【0045】
複数のスリット341によって可撓性部分が形成される実施形態において、相互に離隔対向するスリット341間に隆起部342が設けられていてよい。換言すれば、隆起部342は、コネクタの長手方向に略平行に延在する複数のスリット341によって挟まれた位置に形成されていてよい。かかる構造により、相対的に肉厚な隆起部342を有する部分の可撓性をより容易に高くすることができる。より高い可撓性により、後述する相手ハウジングの挿入に際して、より容易に可撓性部分を撓ませることが可能となる。また、可撓性の向上を重視すると、隆起部342は、長手方向に延在するスリット341の中央付近に形成されることがより好ましい。
【0046】
また、スライダーの外側主面40b(図6参照)とアウタハウジング30とは、隆起部342と当該隆起部342に対向する部分においてのみ互いに当接しており、その他の箇所においては、相互に離隔対向し得る。つまり、スライダーの第2領域IIは、アウタハウジングと当接する当接部44と、アウタハウジングと相互に離隔対向する部分とを有して成ってよい。スライダーがアウタハウジングと離間する部分を有することで、相手ハウジングの挿入によってスライダーが外側へと移動するための空間を確保することができる。スライダーとアウタハウジングとが離隔対向する部分は、コネクタ1の長手方向に沿って、互いに当接する部分の両側に設けられていてよい。例えば、図11Bに示すように、操作レバーが第1の位置にある状態にて、アウタハウジングの隆起部342と対向するスライダーの当接部44の両側で、スライダー40とアウタハウジング30とが離隔対向していてよい。
【0047】
また、本開示の一実施形態において、スライダーは、操作レバーが第1の位置にある状態にて、インナハウジングと互いに係合していてよい。図5に示すように、スライダー40は、少なくとも1つの突起部45を更に備えていてよい。より詳細には、スライダー40は、インナハウジングと対向する内側主面にて、インナハウジングに向かって突出するように形成された少なくとも1つの突起部45を更に有して成ってよい。一方、図8は、本開示の一実施形態に係るコネクタのインナハウジングを模式的に示す斜視図である。図示されるように、インナハウジング60は、スライダーの内側主面と対向する主面にて、切り欠き部61を有していてよい。切り欠き部61は、操作レバーが第1の位置にある状態にて、スライダーの突起部45を受けるように形成される。つまり、切り欠き部61は、操作レバーが第1の位置にある状態で、突起部45と対向する位置に形成され、突起部45が嵌まり込むことのできるように、コネクタの内側に向かって凹状に切り欠かれた形状を有し得る。突起部45と切り欠き部61とは、相手ハウジングが挿入される前の状態にて、互いに係合可能であってよい。図11Cは、図9Bに示すコネクタのG-G断面を矢印方向に見た模式的断面図である。図示されるように、操作レバーが第1の位置にある状態にて、スライダーの内側主面に形成された突起部45は、インナハウジングの切り欠き部61内に収められ得る。
【0048】
また、別の実施形態において、スライダーの主面に切り欠き部が設けられ、インナハウジングにて、スライダーに向かって突出した突起部が設けられていてもよい。かかる実施形態では、スライダーの切り欠き部がインナハウジングの突起部を受けることで、インナハウジングとスライダーとが互いに係合され得る。
【0049】
操作レバーが第1の位置にあり、かつ相手ハウジングが挿入される前の状態にて、上述の構造を有するスライダーは、アウタハウジングおよびインナハウジングのそれぞれと互いに係合する。上述の構造により、操作レバーが第1の位置にある状態において、スライダーは、アウタハウジングおよびインナハウジングの各々との係合によって、より安定的に保持可能となり得る。結果として、本開示のコネクタでは、回動前の状態にてより好適に操作レバーを保持することが可能となり得る。
【0050】
アウタハウジングとスライダーとの係合と、インナハウジングとスライダーとの係合とは、スライダーの同一主面側にて実施されていてよい。つまり、アウタハウジングとスライダーとの係合が為される第1領域I、およびインナハウジングとスライダーとの係合が為される第3領域IIIは、共にスライダーの同一主面にて設けられていてよい。ここで、第3領域とは、インナハウジング60との係合に資する突起部または切り欠き部が設けられる領域を指す。図5に示すように、第1領域Iは、スライダーの内側主面40aにて、第3領域IIIよりもアウタハウジングの開口32側(すなわち、方向Z側)に形成されていてよい。図11Cは、回動前状態における図9Bのコネクタの、第3領域の断面を模式的に示している。スライダーをより安定的に保持することを重視すると、係止部43と突起部45とは、互いに対向する長辺側の周縁にそれぞれ設けられていることが好ましい。例えば、図5に示すように、スライダーの内側主面40aにて、アウタハウジングの開口32側(すなわち、方向Z側)に位置付けられる長辺側の周縁に係止部43が設けられ、反対の長辺側(すなわち、ラック側に相当する方向Z’側)の周縁に突起部45が設けられていてよい。
【0051】
図5に示されるように、コネクタの長手方向に位置する突起部45の両端は、コネクタの内部側に向かって漸次傾斜していてよい。つまり、平面視にて、突起部45は、相互に対向する2つの内側傾斜面451を含み得る。これは、平面視にて、突起部45が、コネクタの内部側に向かって漸次先細りする形状であってよいことを意味する。また、平面視にて、突起部45における2つの内側傾斜面451は、突起部45の中心を通り、スライダー40の移動方向Xに対して垂直な直線に対して線対称に配置されていてよい。つまり、突起部45の平面視形状は、突起部45の中心を通り、スライダーの内側主面に対して垂直な直線に対して線対称である形状を有していてよい。例えば、突起部45は、平面視にて、突起部45の突出方向に向かって漸次先細りする台形状であってよい。
【0052】
切り欠き部61は、当該切り欠き部61内に突起部45をより好適に受けるため、突起部45の形状に対応した形状を有する。詳細には、スライダーのスライド移動方向に位置する切り欠き部61の側面のうち、少なくとも、操作レバーが第2の位置に向かって回動される際のスライド移動方向側(すなわち、方向X側)に位置する側面は、コネクタの内側に向かって漸次傾斜していてよい。また、コネクタの長手方向に位置する切り欠き部61の両側面が、コネクタの内側に向かって漸次傾斜していてもよい。つまり、図11Cに示すように、平面視にて、切り欠き部61は、相互に対向する2つの内側傾斜面を含み得る。これは、切り欠き部61が、コネクタの内部側に向かって漸次狭くなる形状を有することを意味する。また、平面視にて、切り欠き部61における2つの内側傾斜面は、突起部と同様に、切り欠き部61の中心を通り、スライダー40の移動方向Xに対して垂直な直線に対して線対称に配置されていてよい。つまり、切り欠き部61の平面視形状は、切り欠き部61の中心を通り、スライダーの内側主面に対して垂直な直線に対して線対称である形状を有していてよい。図11Cに示すように、かかる構造において、突起部45と切り欠き部61とは、内側傾斜面にて係合され得る。換言すれば、突起部45と切り欠き部61との係合面は、スライダーの内側主面に対して角度を成すように、コネクタの内側に向かって漸次傾斜していてよい。
【0053】
また、図1Aに示すように、本開示のコネクタは、ワイヤカバー20の少なくとも一方の側面から外側に突出する突起21を備えていてよい。操作レバー10が第1の位置にある状態において、突起21は、操作レバー10の第2の位置への回動の阻止を助力し得る。したがって、コネクタの内部に備えられるスライダーの固定と、突起21とによって、操作レバー10が第1の位置に保持されてよい。これは、本開示のコネクタが、コネクタの内部および外部の双方において、操作レバー10を第1の位置に保持するための構造を有し得ることを意味する。特に、突起21は、スライダーの固定によって保持された操作レバー10のがたつきを抑制することに寄与し得る。したがって、上述の構造により、回動前の状態にてより好適に操作レバーを保持することが可能となり得る。
【0054】
[相手コネクタ仮挿入状態]
本開示のコネクタにおいて、上述したスライダーとアウタハウジングとの係合は、相手コネクタの挿入によって解除できる。より具体的には、アウタハウジングの開口側から相手コネクタの相手ハウジングを挿入することで、係止部と被係止部との係合が解除される。本明細書において、このように相手ハウジングの挿入によって係合が解除され、かつ操作レバー10が第1の位置にある状態(図10B参照)は、相手ハウジングの挿入開始時であり、操作レバーによる嵌合操作の開始直前の状態であるところ、「相手コネクタ仮挿入状態」および「仮嵌合状態」とも称される。以下に、相手コネクタ仮挿入状態における本開示のコネクタについてより詳細に説明する。
【0055】
図12Aは、図9AのコネクタのD-D断面を矢印方向に見た模式的断面図である。また、図12Bは、図12Aのコネクタにおける部分aの部分拡大図である。一方、図13Aは、相手コネクタの仮挿入状態のコネクタにおける、図9Aに示すD-D断面と同じ箇所を模式的に示す断面図である。図13Bは、図13Aにおける部分bの部分拡大図である。図12Bおよび図13Bに示されるように、相手ハウジング201は、アウタハウジング30内に挿入可能となっており、スライダー40は、相手ハウジング201の挿入開始時に外側へと移動可能となっている。つまり、相手ハウジング201がアウタハウジング30内へと挿入開始するに際して、溝31内にてスライダー40が相対的に外側へと移動することで、スライダーの外側主面とアウタハウジング30との間の隙間が狭められる。相対的に外側へと移動し得る。換言すれば、相手ハウジング201は、アウタハウジング30と嵌合するに際して、相対的にコネクタの外側へとスライダー40を移動させることができる。
【0056】
相手ハウジングの挿入は、図13Bに図示されるように、相手ハウジングのカムピン202がスライダーのカム溝42に挿入されることで開始されてよい。本開示の一実施形態において、カムピン202の挿入が開始されるカム溝42の一端側には、内側傾斜面421が形成されていてよい。つまり、カム溝42は、カムピン202の挿入口において、コネクタの内部側に向かって漸次傾斜する内側傾斜面421を有していてよい。ここで、「内側傾斜面」とは、コネクタの内部側に向かって漸次傾斜する面を指す。図7に、図5に示すスライダーのB-B断面を矢印方向に見た模式的断面図を示す。図示されるように、カム溝42は、スライダー40の厚み寸法が、カムピンが挿入開始される一端側に向かって漸次減じられるように傾斜していてよい。つまり、カム溝42の一端側は、断面視にて、スライダー40の主面と略平行な仮想平面に対して角度αを成すように、コネクタの内部側に向かって傾斜していてよい。また、かかる仮想平面はカムピンの挿入方向(上方向Z)と略平行であるところ、内側傾斜面421は、カムピンの挿入方向に対して角度を成すように傾斜していると解することもできる。
【0057】
また、本明細書において、「傾斜」とは、内側傾斜面421が仮想平面に対して成す角度αが、絶対値でゼロではない態様を意味する。さらに、内側傾斜面421は、コネクタの内側に向かって漸次的に傾斜する形状であれば、傾斜角度αは一定でなくてもよい。これは、内側傾斜面421が一様に傾斜した面でなくてよいことを意味する。つまり、内側傾斜面421は、図7に示す断面視にて直線状であってよく、屈曲または湾曲した略曲線形状であってもよい。
【0058】
図7に示す断面視において、内側傾斜面421が仮想平面と成す傾斜角度αは、スライダーの外側への移動が達成される限り特に限定されない。例えば、傾斜角度αは、10°以上85°以下であってよく、例えば20°以上70°以下、または30°以上60°以下であることができる。
【0059】
相手ハウジングの挿入開始時において、カムピンは、内側傾斜面421を有するカム溝42の一端側に位置付け可能となっており、内側傾斜面421にてスライダーを外側に移動させることができる。つまり、カムピンは、内側傾斜面421を有するカム溝42の一端側から挿入され、内側傾斜面421と当接する。カム溝42に形成された内側傾斜面421に沿ってカムピンがさらに挿入されると、カムピンは、スライダーをコネクタの外側に向かって押しのける。すなわち、カムピンは、カム溝42への挿入に際して、内側傾斜面421の傾斜に伴って、スライダーをより外側に移動させる。換言すれば、スライダーは、内側傾斜面421を通るように挿入されるカムピンによって、相対的に外側へと移動させられ得る。
【0060】
図14A~14Cは、相手ハウジングの仮挿入状態における図9Bのコネクタの、異なる高さにおける断面をそれぞれ模式的に示す断面図である。図14Aおよび図14Cに示されるように、スライダーがコネクタの外側へと移動することで、スライダー40と、アウタハウジング30およびインナハウジング60との係合が解除される。また、アウタハウジング30と当接するスライダー40の第2領域では、隆起部342を有する可撓性部分34が、スライダー40の移動に伴って外側に向かって押し付けられ、外側に撓む(図14B参照)。以下に、各断面における構造について詳細に説明する。
【0061】
図14Aは、仮嵌合状態のコネクタ(図10B参照)における、図9Bに示すE-E断面の模式的断面図である。上述したように、仮嵌合状態において、スライダー40はより外側へと移動する。図14Aに示されるように、スライダー40が相対的にコネクタの外側に向かって移動することで、アウタハウジング30とスライダー40との係合が外れる。すなわち、外側へのスライダー40の移動により、アウタハウジング30とスライダー40との係合が解除可能となっていてよい。より具体的には、係止部43が被係止部33から離れる方向に向かって移動することで、係止部43と被係止部33との係合が解除される。換言すれば、仮嵌合状態において、スライダー40は、係止部43が被係止部33から離間する方向に向かって相対的に移動してよい。つまり、アウタハウジング30に挿入された相手ハウジングによって、係止部43と被係止部33との係合を解除するのに十分な距離だけ、スライダー40は相対的に外側へ移動されてよい。これは、本開示のコネクタにおいて、アウタハウジングとスライダーとの係合が、相手ハウジングの挿入によって初めて解除され得ることを意味する。換言すれば、本開示のコネクタのスライダーは、相手ハウジングが挿入されるまでは、アウタハウジングとの係合によって固定されていてよい。つまり、相手ハウジングが未挿入の状態では、操作レバーは回動前の第1の位置にて保持され、相手ハウジングが挿入された仮嵌合状態にて、第2の位置に向かって回動可能となる。かかる構造により、本開示のコネクタは、嵌合前の状態にて、操作レバーを第1の位置にてより好適に保持し、相手コネクタとの嵌合に際しては、保持を解除する操作を別途に必要とすることなく、相手コネクタをアウタハウジングに挿入する操作のみで、容易に操作レバーを回動可能にすることができる。
【0062】
図14Bは、相手コネクタ仮挿入状態のコネクタ(図10B参照)における、図9Bに示すF-F断面を模式的に示す断面図である。上述したように、仮嵌合状態において、スライダー40はより外側へと移動する。この外側への移動に伴い、スライダーとアウタハウジングとの当接箇所において、外側への押圧力が働く。本開示の一実施形態に係るコネクタは、当接箇所が可撓性部分34であるため、かかる押圧力によって可撓性部分34は外側に向かって撓み得る。例えば、図14Bに示されるように、スライダー40が相対的に外側へと移動するに際して、スライダー40の第2領域と当接するアウタハウジングの可撓性部分34は、押圧されることによって外側に向かって撓み得る。このように、相手ハウジングの挿入によって可撓性部分34が撓むことで、スライダー40が外側へと移動可能となり得る。
【0063】
また、既述したように、一実施形態において、可撓性部分34に設けられた隆起部342の両側は、スライダーとアウタハウジングとの間は離隔している。スライダーとアウタハウジングとが互いに当接する部分の両側で離隔対向していることで、当接部の両側にスライダーが外側へ移動するための空間が確保される。結果として、相手ハウジングの挿入に際して、スライダーを全体的に移動させることができ、より好適にスライダーとアウタハウジングとの係合を解除することが可能となり得る。
【0064】
図14Cは、相手ハウジングが仮挿入された状態(図10B参照)における、図9Bに示すG-G断面を模式的に示す断面図である。既述したように、相手ハウジングが挿入開始されると、スライダー40は相対的にコネクタの外側へと移動する。図14Cに示すように、かかる外側への移動により、インナハウジング60からスライダー40が離隔し、突起部45と切り欠き部61との係合が外れる。すなわち、アウタハウジングとスライダーとの係合と同様に、インナハウジングとスライダーとの係合は、相手ハウジングの挿入によって初めて解除され得る。かかる構造により、本開示のコネクタは、嵌合前の状態にて、操作レバーを第1の位置にてより好適に保持し、相手コネクタとの嵌合に際しては、保持を解除する操作を別途に必要とすることなく、相手コネクタをアウタハウジングに挿入する操作のみで、容易に操作レバーを回動可能にすることができる。
【0065】
[回動途中状態および回動完了状態]
相手コネクタの仮挿入により、操作レバーの保持が解除されたコネクタは、次いで、操作レバーを第1の位置から回動完了時の第2の位置にまで回動させることで、相手コネクタと嵌合される。図15A~15Cは、操作レバーの回動途中状態(図10C参照)における図9Bのコネクタの、異なる高さにおける断面をそれぞれ模式的に示す断面図である。また、図16A~16Cは、操作レバーの回動完了状態(図10D参照)における図9Bのコネクタの、異なる高さにおける断面をそれぞれ模式的に示す断面図である。図示されるように、アウタハウジング30およびインナハウジング60との係合が解除されたスライダー40は、操作レバーの回動に伴い、方向Xに向かってスライド移動する。また、アウタハウジング30と当接するスライダー40の第2領域では、スライダー40のスライド移動に伴って隆起部342がアウタハウジング30とスライダー40との間の隙間に収容されるように位置変更し、可撓性部分34の撓みが解消される(図16B参照)。以下に、各断面における構造について詳細に説明する。
【0066】
図15Aおよび図16Aは、それぞれ、操作レバーが回動途中である状態、および回動完了時の第2の位置にある状態における、図9Bに示すE-E断面の模式的断面図である。図示されるように、スライダー40は、操作レバーの第2の位置への回動に伴い、方向Xに向かってスライド移動する。相手ハウジングの挿入によってスライダー40が外側に移動されているため、被係止部33と係止部43とが干渉することなく、方向Xに向かってスライダー40をより好適にスライド移動させることができる。
【0067】
図15Bおよび図16Bは、それぞれ、操作レバーが回動途中である状態、および回動完了時の第2の位置にある状態における、図9Bに示すF-F断面を模式的に示す断面図である。図示されるように、操作レバーの回動に伴ってスライダー40は方向Xにスライド移動する。かかるスライド移動により、スライダー40とアウタハウジング30との当接部分に形成された隆起部342は、当該当接部分に対して相対的に方向XまたはX’に位置変更する。当接部分の両側にそれぞれ形成された離隔対向部分におけるスライダー40とアウタハウジング30との間の距離は、かかる位置変更の方向に応じて、互いに異なっていてよい。より詳細には、スライダー40とアウタハウジング30との間において、スライダー40のスライド移動に伴って相対的に位置変更される隆起部342と当該隆起部342に対向する部分との間の距離L’は、隆起部342の非形性部分に対向する部分との間の距離Lよりも大きくてよい。例えば、図11Bに示すように、スライダー40の第2領域は、隆起部342と当接する部分より方向X’側にて、内側に向かって傾斜していてよい。かかる構造により、方向X’側におけるスライダー40とアウタハウジング30との間は、方向X側におけるスライダー40とアウタハウジング30との間よりも大きく離間される。
【0068】
図11Bに示されるように、隆起部342がアウタハウジング30に設けられている場合、スライド移動に伴って、隆起部342がスライドに対して相対的に方向X’に向かって位置変更する。かかる実施形態では、当接部44に対して相対的に方向X’側におけるスライダー40とアウタハウジング30との間の距離L’は、方向X側における距離Lよりも大きい。一方、図示されていないものの、隆起部342がスライダー40に設けられている場合は、スライド移動に伴って、アウタハウジングに対して隆起部342は方向Xに向かって相対的に位置変更する。かかる実施形態では、当接部44に対して相対的に方向X側におけるスライダーとアウタハウジングとの間の距離は、方向X’側における当該距離よりも大きくてよい。このような構造において、スライド移動に伴って位置変更した隆起部342は、図15Bおよび図16Bに示すように、より大きく離隔対向することで形成された空間に収容される。つまり、スライド移動に伴って隆起部342が相対的に位置変更することで、隆起部342は、対向するスライダーまたはアウタハウジングとの当接から解放され得る。したがって、当接によって隆起部342が外側へと押圧されることがなくなるため、可撓性部分34における撓みは解消され得る。このように、操作レバーの回動によって、第2領域におけるスライダーとアウタハウジングとの当接が解除されることで、図15Bの回動途中状態から図16Bの第2の位置への回動に際して、スライダーとアウタハウジングとの間の干渉がより好適に防止されるため、より円滑にスライダーをスライド移動させることが可能となり得る。すなわち、上述の構造により、相手コネクタとの嵌合操作を妨げない、より好適な操作レバーの保持機構が達成され得る。
【0069】
図15C図16Cは、それぞれ、操作レバーが回動途中である状態、および回動完了時の第2の位置にある状態における、図9Bに示すG-G断面を模式的に示す断面図である。既述したように、相手ハウジングが挿入開始されると、スライダー40は相対的にコネクタの外側へと移動する。かかる外側への移動により、インナハウジング60からスライダー40が離隔し、突起部45と切り欠き部61との係合が外れる。次いで、操作レバーを第2の位置に向かって回動させると、スライダー40は方向Xに向かってスライド移動する。
【0070】
既述したように、スライダーは、アウタハウジングの開口側から挿入される相手ハウジングによって、相対的にコネクタの外側に移動される。より詳細には、相手ハウジングは、相手ハウジングが挿入されるアウタハウジングの開口側に位置するスライダーの周縁を外側へと押すことで、スライダーを外側へ移動させる。すなわち、スライダーを外側へと押す力は、スライダーの一方の端辺側の周縁のみに対して加えられ得る。そのため、スライダーは、相手ハウジングによって押される端辺側が優先的に外側へ移動し得る。つまり、相手ハウジングの仮挿入状態において、相手ハウジングと当接しているスライダーの端辺側が、当該端辺に対向する端辺側(すなわち、ラック側)よりも大きく外側へ移動し、スライダーのラック側がコネクタの内側に向かって傾いた状態となり得る。スライダーが傾いた状態では、操作レバーのピニオンギアとラックとが正常に噛み合わなくなる可能性があり、スライダーの円滑なスライド移動が妨げられる虞がある。
【0071】
本願発明者らは、インナハウジングとスライダーとの係合面を傾斜面とすることにより、スライド移動に際して、かかる傾斜に沿ってスライダーを外側へと移動可能とした。つまり、相手ハウジングが仮挿入された状態にてスライダーのラック側が傾いた状態であっても、スライダーは、スライド移動に伴って、傾斜面に従ってより外側へと案内され得る。このように、インナハウジングとスライダーとの係合面によって、スライダーが傾いた状態から正常な状態となるように、スライダーの姿勢を規制することが可能となり得る。したがって、インナハウジングとスライダーの係合面は、操作レバーが第1の位置にある状態のスライダーの保持を助力するのみではなく、スライダーの固定が解除され、次いでスライド移動する際のスライダーの姿勢規制にも資することができる。
【0072】
以上、本開示の実施の形態を説明したが、本開示はこれらに限定されるものではなく、上記構成を組み合わせるなど、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づく種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本開示のコネクタのワイヤカバーおよびアウタハウジングは、電気的接続を要する各種技術分野で好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0074】
1 コネクタ
2 相手コネクタ
201 相手ハウジング
202 カムピン
10 操作レバー
11 ピニオンギア
20 ワイヤカバー
21 突起
30 アウタハウジング
31 溝
32 開口
33 被係止部
34 可撓性部分
341 スリット
342 隆起部
40 スライダー
40a 内側主面
40b 外側主面
41 ラック
42 カム溝
421 内側傾斜面
43 係止部
44 当接部
45 突起部
451 内側傾斜面
50 シール部材
60 インナハウジング
61 切り欠き部
70 リテーナ
80 シール部材
90 フロントハウジング
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C
図10D
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図13A
図13B
図14A
図14B
図14C
図15A
図15B
図15C
図16A
図16B
図16C