(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023106136
(43)【公開日】2023-08-01
(54)【発明の名称】アンテナ複合体
(51)【国際特許分類】
H01Q 5/35 20150101AFI20230725BHJP
H01Q 5/371 20150101ALI20230725BHJP
H01Q 1/36 20060101ALI20230725BHJP
H01Q 21/28 20060101ALI20230725BHJP
H01Q 9/04 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
H01Q5/35
H01Q5/371
H01Q1/36
H01Q21/28
H01Q9/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022007282
(22)【出願日】2022-01-20
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】000227995
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクスジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100197583
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 健
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 洋平
【テーマコード(参考)】
5J021
5J046
【Fターム(参考)】
5J021AA02
5J021AA13
5J021HA10
5J021JA03
5J021JA07
5J046AA02
5J046AA07
5J046AA12
5J046PA07
(57)【要約】
【課題】シンプルな構造で種類の異なるアンテナの特性をそれぞれ好適に供することが可能なアンテナ複合体を提供すること。
【解決手段】本開示では、相互に異なる周波数帯の2種以上のアンテナを備え、前記2種以上のアンテナが、相対的に高い周波数帯の第1アンテナと、前記第1アンテナと組み合わされ、相対的に低い周波数帯の第2アンテナとを含み、前記第1アンテナおよび前記第2アンテナが、単一の給電部をそれぞれ備え、かつ単一の接地部を相互に共有する、アンテナ複合体が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に異なる周波数帯の2種以上のアンテナを備え、
前記2種以上のアンテナが、相対的に高い周波数帯の第1アンテナと、前記第1アンテナと組み合わされ、相対的に低い周波数帯の第2アンテナとを含み、
前記第1アンテナおよび前記第2アンテナが、単一の給電部をそれぞれ備え、かつ単一の接地部を相互に共有する、アンテナ複合体。
【請求項2】
前記第1アンテナの帯域幅が前記第2アンテナの帯域幅よりも広い、請求項1に記載のアンテナ複合体。
【請求項3】
前記第1アンテナおよび前記第2アンテナがそれぞれ逆F型アンテナである、請求項1又は2に記載のアンテナ複合体。
【請求項4】
各給電部と前記接地部が同一平面に位置付けられている、請求項1~3のいずれかに記載のアンテナ複合体。
【請求項5】
各給電部と前記接地部とが相互に離隔している、請求項1~4のいずれかに記載のアンテナ複合体。
【請求項6】
前記接地部の幅が前記給電部の幅以上である、請求項1~5のいずれかに記載のアンテナ複合体。
【請求項7】
前記第1アンテナが、3GHz以上13GHz以下の周波数帯である、請求項1~6のいずれかに記載のアンテナ複合体。
【請求項8】
前記第2アンテナが、2GHz以上3GHz未満の周波数帯である、請求項1~7のいずれかに記載のアンテナ複合体。
【請求項9】
前記第1アンテナが前記接地部に対して近位側に設けられる第1本体部を有して成り、前記第2アンテナが前記接地部に対して遠位側に設けられる第2本体部を有して成る、請求項1~8のいずれかに記載のアンテナ複合体。
【請求項10】
高さ方向において、前記第1本体部が下段側に位置し、第2本体部が上段側に位置付けられる、請求項9に記載のアンテナ複合体。
【請求項11】
前記第1本体部と前記第2本体部とが離隔対向する部分を有する、請求項9又は10に記載のアンテナ複合体。
【請求項12】
前記第1本体部と前記第2本体部が局所的に連続する、請求項9~11のいずれかに記載のアンテナ複合体。
【請求項13】
前記第1本体部と前記2本体部とが全体としてU字形態をなす、請求項9~12のいずれかに記載のアンテナ複合体。
【請求項14】
前記第1アンテナの給電部と前記第2アンテナの給電部との間に、前記接地部が設けられる、請求項1~13のいずれかに記載のアンテナ複合体。
【請求項15】
前記第2アンテナの給電部と前記接地部との間の連続部分の距離が、前記第1アンテナの給電部と前記接地部との間の連続部分の距離よりも大きい、請求項14に記載のアンテナ複合体。
【請求項16】
前記第1アンテナの給電部と前記第2アンテナの給電部とが相互に離隔対向可能に設けられる、請求項1~15のいずれかに記載のアンテナ複合体。
【請求項17】
前記第1アンテナおよび前記第2アンテナがそれぞれ表面実装品である、請求項1~16のいずれかに記載のアンテナ複合体。
【請求項18】
支持体により支持可能となっている、請求項1~17のいずれかに記載のアンテナ複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はアンテナ複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
情報を無線信号によって送受信する情報通信装置において、様々な形状のアンテナが使用されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、近年、アンテナに対して電波の送受信機能と共にセキュリティー機能の要求が高まっている。この要求のため、周波数帯の異なる2種類のアンテナを用いることが考えられる。各アンテナとして1つの給電部および1つの接地部を備えた逆F型アンテナを用いる場合、アンテナ間における電波干渉抑制およびインピーダンス整合等をふまえ、2つの接地部と2つの給電部のそれぞれの位置調整が必要となる。
【0005】
上記事情に鑑み、本開示は、シンプルな構造で種類の異なるアンテナの特性をそれぞれ好適に供することが可能なアンテナ複合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示では、
相互に異なる周波数帯の2種以上のアンテナを備え、
前記2種以上のアンテナが、相対的に高い周波数帯の第1アンテナと、前記第1アンテナと組み合わされ、相対的に低い周波数帯の第2アンテナとを含み、
前記第1アンテナおよび前記第2アンテナが、単一の給電部をそれぞれ備え、かつ単一の接地部を相互に共有する、アンテナ複合体が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示のアンテナ複合体によれば、シンプルな構造で種類の異なるアンテナの特性をそれぞれ好適に供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、所定方向から見た場合における、本開示の一実施形態に係るアンテナ複合体を模式的に示す概略斜視図である。
【
図2】
図2は、他の方向から見た場合における、本開示の一実施形態に係るアンテナ複合体を模式的に示す概略斜視図である。
【
図3】
図3は、所定方向から見た場合における、本開示の別の実施形態に係るアンテナ複合体を模式的に示す概略斜視図である。
【
図4】
図4は、他の方向から見た場合における、本開示の別の実施形態に係るアンテナ複合体を模式的に示す概略斜視図である。
【
図5】
図5は、第2アンテナにおける周波数とVSWRとの関係を示すグラフである。
【
図6】
図6は、第1アンテナにおける周波数とVSWRとの関係を示すグラフである。
【
図7】
図7は、第2アンテナの放射パターン(指向性利得)を示す。
【
図8】
図8は、第1アンテナの放射パターン(指向性利得)を示す。
【
図9】
図9は、表面実装された本開示のアンテナ複合体を模式的に示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示のアンテナ複合体について図面を参照しながら説明する。
【0010】
図1は、所定方向から見た場合における、本開示の一実施形態に係るアンテナ複合体を模式的に示す概略斜視図である。
図2は、他の方向から見た場合における、本開示の一実施形態に係るアンテナ複合体を模式的に示す概略斜視図である。
【0011】
図1および
図2に示すように、本開示の一実施形態に係るアンテナ複合体500は、相互に異なる周波数帯の2種のアンテナ100が組み合わされている。2種のアンテナ100は、相対的に高い周波数帯の第1アンテナ110と、第1アンテナ110と組み合わされ、相対的に低い周波数帯の第2アンテナ120である。なお、
図1および
図2では、2種のアンテナ100を図示しているが、本開示ではこれに限定されることなく2種以上のアンテナが組み合わされてよい。
【0012】
第1アンテナ110は、第1本体部111、ならびに第1本体部の長手延在方向に対して異なる方向にそれぞれ延在する第1給電部112および接地部Gを備える。第2アンテナ120は、第2本体部121、ならびに第2本体部の長手延在方向に対して異なる方向にそれぞれ延在する第2給電部122および接地部Gを備える。この接地部Gは、第1アンテナ110と第2アンテナ120との間にて共有された単一の接地部である。
【0013】
以上の事から、本開示では、各アンテナ100が、本体部、ならびに本体部の長手延在方向に対して異なる方向にそれぞれ延在する単一の給電部および単一の接地部Gを備える。更に、本開示では、各アンテナ100が単一の接地部Gを相互に共有可能となっている。
【0014】
なお、本開示でいう「アンテナ複合体」とは、2種以上のアンテナが結合して一体となっているものを指す。本開示でいう「2種以上のアンテナ」とは、種類(タイプ)の異なるアンテナを指し、同種のアンテナ(例えばBluetooth用アンテナ同士)を含まないものである。本開示でいう「アンテナ」とは、電流と、電波または電磁波とを相互に変換することができる部品または装置またはデバイスを意味する。又、本開示でいう「アンテナ」は、モノポールアンテナであり得る。
【0015】
本開示でいうアンテナの「給電部」とは、外部の構造から電力または電気エネルギーが供給され得る点を意味する。給電部の形状に特に制限はない。給電部は板状の形状を有することが好ましい。給電部は、例えば電子回路基板の給電線または電源配線と接続されることが好ましい。給電部は、この電子回路基板との接触部分において、基板の表面形状に沿った形状を有することが好ましい。給電部は、単一の板状の形状であっても、板状の形状でなくともよい。
【0016】
本開示でいう「接地部」とは、外部の構造と接触してグランド(GND)を形成し得る点または部分を意味する。接地部は、例えば電子回路基板のGND層またはGND配線と接続され得る。接地部は、電子回路基板との接触部分において、同基板の表面形状に沿った形状を有することが好ましい。接地部は、単一の板状の形状であっても、板状の形状でなくともよい。
【0017】
各アンテナとして1つの給電部および1つの独立した接地部を備えたものを用いる場合、アンテナ間における電波干渉抑制とインピーダンス整合をふまえ、2つの接地部と2つの給電部のそれぞれの位置調整が必要となり得る。
【0018】
これに対して、本開示では、各アンテナ100が単一の接地部Gを相互に共有可能となっている。即ち、接地部Gは共有接地部として機能する。これにより、各アンテナとして1つの給電部および1つの独立した接地部を備えたものを用いる場合と比べて、シンプルな構造を実現可能となる。その結果、アンテナ複合体500のサイズの低減化が可能となる。即ち、アンテナ複合体500の小型化が可能となる。
【0019】
シンプルな構造の実現により、位置調整が必要な接地部が1つ減じられ、2つの給電部100の位置調整(2つの給電部間の距離調整に相当)と単一の接地部Gの位置調整とにより、目標として設定したインピーダンスを調整することができる。その結果、インピーダンス整合の調整がしやすくなる。
【0020】
更に、本開示では、アンテナ複合体500が上記のように単一の接地部G(共有接地部に相当)を備えたシンプル構造を採った状態においても、利用時における所定のアンテナの利用時における他のアンテナの共振が抑制され、即ち各アンテナ間の電波干渉の抑制が可能となっている。これにより、各アンテナ100のアンテナ特性の安定化を図ることができる。即ち、本開示では、各アンテナ100のアンテナ特性をそれぞれ好適に供することが可能となっている。
【0021】
以上の事から、本開示のアンテナ複合体は、小型でより安定したアンテナ特性を有することから、例えば、自動車、ハイブリッド車、電気自動車などの車輛、スマートフォン、ウェアラブルデバイスなどの電子機器などに搭載され、またはそれら電子機器との通信に使用することができる。
【0022】
又、本開示のアンテナ複合体は、小型化が可能であることから、車輛のコンピュータ、特にECU(エンジン・コントロール・ユニット)の内部の基板、スマートフォンやウェアラブルデバイスの内部の基板に配置して使用することができる。
【0023】
なお、本開示でいう「アンテナ特性」とは、アンテナ特性の全般を意味し、具体的には、指向性利得などの放射パターンおよびインピーダンスなどの特性を意味する。本開示においてアンテナ特性の「安定化」とは、アンテナ特性が大きく変動しないことを意味する。例えば、アンテナ特性が放射パターンである場合、アンテナ特性の安定化とは、アンテナが無指向性であること、特にアンテナ特性が指向性利得の場合にはX-Y面において外形が真円に近い放射パターンを有することなどを意味する。
【0024】
アンテナ特性がインピーダンスである場合、アンテナ特性の安定化とは、例えば、所望の周波数帯または必要周波数帯において、目標として設定したインピーダンスを安定して示すことなどを意味する。本開示では、各アンテナ100が、目標として設定したインピーダンスを含む所定の帯域幅を形成することが好ましい。
【0025】
又、本開示において、各アンテナ100は逆F型アンテナであり得る。この場合、各給電部と単一の接地部とは相互に離隔する。かかる構成によれば、はんだ付け等により、各アンテナの給電部を対応する各電子回路基板側に実装し、単一の接地部を所定の電子回路基板又は他の構造体に接地させることができる。又、逆F型アンテナであると、各給電部と接地部とを同一平面に位置付けることができる。これにより、水平面無指向性を実現可能となり得る。なお、本明細書でいう「同一平面」とは、各給電部と接地部との位置関係が所定方向に沿って略同一平面上に又は略同列状態にあることを指し、各給電部と接地部が物理的に完全な同一平面状態までを要求するものではない。
【0026】
これにより、各アンテナ100を表面実装品として使用することができる。本開示において「表面実装品」とは、当該分野で公知の表面実装テクノロジー(SMT)を使用して、例えば電子回路基板などの基板に実装可能な部品または部材を意味する。「表面実装品」は、表面実装デバイス(SMD)と称する場合もある。
【0027】
上述のように、本開示では、第1アンテナ110は相対的に高い周波数帯のアンテナであり、第2アンテナ120は相対的に低い周波数帯のアンテナである。一例では、第1アンテナ110は3GHz以上13GHz以下、好ましくは6GHz以上13GHz以下、より好ましくは6GHz以上8GHz以下の周波数帯(超広帯域(UWB(Ultra Wide Band)と称し得る)のアンテナであり得る。又、一例では、第2アンテナ120は、2GHz以上3GHz未満、好ましくは2.4GHz以上2.5GHz以下の周波数帯のBluetooth用のアンテナであり得る。
【0028】
かかる構成によれば、第1アンテナ110では、周波数が高く波長が短くなるため、アンテナ複合体500から相対的に近い箇所に位置する被測定体に対してパルス波を繰り返し供することができる。これにより、アンテナ複合体500とこの被測定体との間の距離の正確な測定(即ち「測距」)のために用いることができる。
【0029】
なお、第1アンテナ110の短波長の性質に起因して、アンテナ複合体500から相対的に遠い箇所に位置する被測定体までの距離の測定はなされない。そのため、測距により、被測定体が近距離(例えば1m程度)に位置する場合にのみセキュリティーの解除が可能となる。これにより、被測定体が遠距離に位置する場合に、セキュリティーが誤って解除されることを好適に防ぐことができる。以上の性質を利用すれば、 本開示のアンテナ複合体を車輛のコンピュータ、特にECUの基板に配置する場合、いわゆる「リレーアタック」の問題も好適に対応することができる。これにより、車輛の盗難防止が可能となる。
【0030】
一方、第2アンテナ120では、周波数が低く波長が長くなるため、モジュールからの信号に基づき発生させる電波を他の好適な通信目的のために用いることができる。
【0031】
又、本開示では、第1アンテナ110の帯域幅が第2アンテナ120の帯域幅よりも広いことが好ましい。帯域幅が広いと、アンテナを介したデータ通信量を多くし、データ速度をよりはやめることができる点でも有利である。これにより、近距離(例えば1m程度)での高速通信が可能となる。
【0032】
上述のように、第1アンテナ110と第2アンテナ120とを比べると、第1アンテナ110は、短波長であり、周波数帯幅の広いアンテナとなっている。一方、第2アンテナ120は、長波長であり、周波数帯幅の狭いアンテナとなっている。そのため、第1アンテナ110では、接地面G側から距離を離さなくても高いインピーダンスにし得る。一方、第2アンテナ120では、接地面G側に近いとインピーダンスが低くなり得るため、接地面G側から距離を離して上記のインピーダンス値にし得る。
【0033】
以上の事から、第1アンテナ110の第1本体部111は接地部Gに対して近位側に設けられ、第2アンテナ120の第2本体部121は接地部Gに対して遠位側に設けられ得る。即ち、アンテナ複合体100の高さ方向(Z方向)において、第1本体部111が下段側に位置付けられ、第2本体部121が上段側に位置付けられ得る。
【0034】
第1アンテナ110は、上記の周波数帯において、例えば25Ω以上55Ω以下、好ましくは45Ω以上55Ω以下の範囲内のインピーダンス、好ましくは50Ωを目標とするインピーダンスのピーク値を有し得る。第1アンテナ110では、上記範囲内のインピーダンス値を有することで超広帯域での通信に対応することができる。
【0035】
上記の場合、第1アンテナ110の利用時における第2アンテナ120の共振、および第2アンテナ120の利用時における第1アンテナ110の共振を抑制する観点から、即ち各アンテナ間の電波干渉抑制の観点から、第1本体部111と第2本体部121とが離隔対向する部分を有する。
【0036】
なお、第2アンテナ120が第2本体部121から延在する第2給電部122と接地部Gとを有するための必要最小限の経路を確保するために、第1本体部111と第2本体部は局所的に連続し得る。この場合、第1本体部111と第2本体部121とは、全体としてU字形態をなす構成となる。
【0037】
上記同様に、各アンテナ間の電波干渉を好適に抑制する観点から、第1給電部112と第2給電部122との間に接地部Gが設けられることが好ましい。
【0038】
アンテナ複合体100の安定配置の観点から、接地部Gの幅が各給電部112、122の幅以上であることが好ましい。
【0039】
上記同様に、各アンテナ間の電波干渉を好適に抑制し、インピーダンスを調整するために各給電部112、122間の距離をとる観点から、第2給電部122と接地部Gとの間の連続部分の距離を、第1給電部112と接地部Gとの間の連続部分の距離よりも大きくすることが好ましい。かかる構成については、アンテナ複合体100において切欠き領域のサイズの違いにより実現することができる。
【0040】
又、本開示のアンテナ複合体500は支持体600により支持可能であることが好ましい。
【0041】
かかる支持体600の配置によりアンテナ複合体500の変形を防止することができる。即ち、アンテナ複合体500の形状安定性および自立性を向上させることができ、各アンテナ特性をより安定化することができる。
【0042】
支持体600を構成する材料に特に制限はないが、支持体は、樹脂(例えば、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアミド(PA)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、および液晶ポリマー(LCP)から成る群から選択される少なくとも1種の材料)から構成され得る。支持体の内部に誘電体、特に誘電率が高い誘電体、例えば誘電率が高い樹脂製の誘電体を配置することで各アンテナのアンテナ特性をさらに安定化させることができる。
【0043】
支持体600の形状に特に制限はない。例えば、アンテナ複合体500の形状に合わせて、支持体600は立方体、直方体などの箱形または四角柱の形状を有し得る。又、支持体600は、三角柱、多角柱、円筒などの他の形状を有していてもよい。
【0044】
支持体の少なくとも1つの主面は平坦であることが好ましい。これにより、例えば電子回路基板などの板状の構造物への本開示のアンテナ複合体500の接地を促進させることができる。
【0045】
図3は、所定方向から見た場合における、本開示の別の実施形態に係るアンテナ複合体を模式的に示す概略斜視図である。
図4は、他の方向から見た場合における、本開示の別の実施形態に係るアンテナ複合体を模式的に示す概略斜視図である。
【0046】
図3および
図4に示すように、支持体600Aは、表面の所定箇所に複数の突起部610Aを有して成ることが好ましい。又、アンテナ複合体500Aは支持体600Aの各突起部610Aと係合可能な貫通孔510Aを有して成ることが好ましい。
【0047】
かかる構成によれば、アンテナ複合体500Aと支持体600Aとの接続向上を図ることができる。これにより、アンテナ複合体500の変形をより好適に防止することができる。その結果、アンテナ複合体500の形状安定性および自立性をより向上させることができ、各アンテナ特性を更により安定化することができる。
【0048】
なお、本開示において、上記の支持体は必須の構成ではない。例えば、第1アンテナの給電部と第2アンテナの給電部とを相互に離隔対向可能に設ければ、支持体を用いなくとも、アンテナ複合体の自立が可能となる。
【0049】
又、各アンテナ100は、導体から構成されていることが好ましい。導体として、例えば金属および/または合金などが挙げられる。金属および/または合金に含まれ得る金属元素として、例えば、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、亜鉛(Zn)などが挙げられる。導体として、銅、アルミニウム、ステンレス鋼および真鍮(黄銅またはブラスと称される場合もある)から成る群から選択される少なくとも1種を使用することが好ましい。アンテナ100は、ブラス材から製造されることが特に好ましい。
【0050】
アンテナ100が金属および/または合金などの材料から構成される場合、さらにメッキ層または表面処理層を有していてよい。メッキ層または表面処理層はクロムまたはニッケルなどの元素を含むことが好ましい。
【0051】
アンテナ100は、セラミックなどから構成されていてもよい。セラミックとして、高い誘電率を有するセラミックが好ましい。例えばチップアンテナなどに使用することができる誘電体セラミックなどを特に制限なく使用することができる。アンテナは、金属とセラミックの複合材料などから構成されていてよい。
【0052】
特に限定されるものではないが、本開示のアンテナ複合体500は、5mm~50mm、好ましくは10mm~20mm、例えば12~13mmの幅寸法を有する。本開示のアンテナ複合体500は、5mm~30mm、好ましくは8mm~15mm、例えば10mmの高さを有する。本開示のアンテナ複合体500は、3mm~30mm、好ましくは5mm~15mm、例えば7mmの高さを有する。本開示のアンテナ複合体500は、例えば1mm以下、好ましくは0.5mm以下、より好ましくは0.1mm以上0.4mm以下の厚さを有する。厚みは全体として均一であっても、均一でなくともよい。
【実施例0053】
以下、本開示の実施例について説明する。
【0054】
下記構成を有するアンテナ複合体を用意した。用意したアンテナ複合体500Aについては、基板700の表面実装した(
図9参照)。
■第1アンテナ
・6GHz(6000MHz)以上8.5GHz(8500MHz)以下の周波数帯のもの
・給電部1つ
■第2アンテナ
・2.4GHz(2400MHz)以上2.5GHz(2500MHz)以下の周波数帯のもの
・給電部1つ
■第1アンテナおよび第2アンテナの共通事項
・単一の接地部を共有
【0055】
測定結果1(各アンテナにおける周波数とVSWRとの関係)
図5は、第2アンテナにおける周波数とVSWRとの関係を示すグラフである。
図6は、第1アンテナにおける周波数とVSWRとの関係を示すグラフである。
【0056】
図5に示すように、第2アンテナにおいて、使用した周波数帯(2.4GHz以上2.5GHz以下の周波数帯)において、VSWR(電圧定在波比:電圧における入射波と反射波の比に相当)が約2であった。この事から、第2アンテナがアンテナ特性を好適に供していることが分かった。
【0057】
又、
図6に示すように、第1アンテナにおいて、使用した周波数帯(6GHz以上8.5GHz以下の周波数帯)において、VSWR(電圧定在波比:電圧における入射波と反射波の比に相当)が約2であった。この事から、第1アンテナがアンテナ特性を好適に供していることが分かった。
【0058】
測定結果2(各アンテナの放射パターン(指向性利得)
図7は、第2アンテナの放射パターン(指向性利得)を示す。
図8は、第1アンテナの放射パターン(指向性利得)を示す。
【0059】
図7に示すように、第2アンテナにおいて、使用した周波数帯(2400MHz、2440MHz、および2480MHz)のいずれにおいても、XY面にて、指向性利得の外形(XY面)が真円に近い放射パターンを有することが分かった。この事から、第2アンテナがアンテナ特性を好適に供していることが分かった。
【0060】
図8に示すように、第1アンテナにおいて、使用した周波数帯(6000MHz、6500MHz、7000MHz、7500MHz、8000MHz)のいずれにおいても、指向性利得の外形(XY面)が真円に近い放射パターンを有することが分かった。この事から、第1アンテナがアンテナ特性を好適に供していることが分かった。
【0061】
以上の事から、単一の接地部Gを備えたアンテナ複合体500Aを用いても、第1アンテナ110Aおよび第2アンテナ120Aのそれぞれのアンテナ特性の安定化が図られていることが分かった。又、第1アンテナ110Aの第1給電部112A、第2アンテナ120Aの第2給電部122A、および接地部Gが同一平面にあると、水平面無指向性を実現可能であることが分かった。
【0062】
なお、本開示のアンテナ複合体の製造方法に特に制限はない。例えば、本開示のアンテナ複合体を金属や合金などの板状材料から製造する場合、板状材料をカットして折り曲げることで製造することができる。また、板状材料をカットして各部材を溶接などで結合させてもよい。本開示のアンテナ複合体が誘電体セラミックから製造される場合、チップ型セラミックアンテナと同様に製造することができる。例えば、セラミック分野で公知の印刷技術などを利用して耐熱性の支持体上に誘電体セラミックのアンテナ複合体を形成してもよい。
【0063】
以上、本開示の実施の形態を説明したが、本開示はこれらに限定されるものではなく、上記構成を組み合わせるなど、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づく種々の変更が可能である。
本開示のアンテナ複合体は、車輛(例えば、乗用車、ハイブリッド車、電気自動車など)、電子機器(例えばスマートフォン、ウェアラブルデバイスなど)に搭載して通信および測距のためなどに用いることができる。