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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023106147
(43)【公開日】2023-08-01
(54)【発明の名称】歯科用適合試験材組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 6/25 20200101AFI20230725BHJP
   A61C 13/00 20060101ALI20230725BHJP
   A61K 6/71 20200101ALI20230725BHJP
   A61K 6/15 20200101ALI20230725BHJP
【FI】
A61K6/25
A61C13/00 Z
A61K6/71
A61K6/15
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022007298
(22)【出願日】2022-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】515279946
【氏名又は名称】株式会社ジーシー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】上之薗 佳也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 純
【テーマコード(参考)】
4C089
【Fターム(参考)】
4C089AA20
4C089BA04
4C089BA05
4C089BA06
4C089BA13
4C089BA20
4C089BC20
4C089BE08
4C089BE11
4C089CA03
(57)【要約】
【課題】適合の確認がしやすい歯科用適合試験材を提供すること。
【解決手段】第1ペースト及び第2ペーストを含む歯科用適合試験材組成物であって、前記第1ペースト及び前記第2ペーストを練和してから35秒後の練和物の23℃における稠度が37mm以上43mm以下である、歯科用適合試験材組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ペースト及び第2ペーストを含む歯科用適合試験材組成物であって、
前記第1ペースト及び前記第2ペーストを練和してから35秒後の練和物の23℃における稠度が37mm以上43mm以下である、
歯科用適合試験材組成物。
【請求項2】
ずり速度100(1/秒)のときの23℃における粘度が、前記第1ペースト及び前記第2ペーストの何れも20,000mPa・s以上60,000mPa・s以下である、
請求項1に記載の歯科用適合試験材組成物。
【請求項3】
前記歯科用適合試験材組成物は、
1分子中に脂肪族不飽和炭化水素を少なくとも2個を有するオルガノポリシロキサン、
1分子中にケイ素原子に直結した水素原子を少なくとも3個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
シリコーン可溶性白金化合物、及び
無機充填材、を含有する、
請求項1又は2に記載の歯科用適合試験材組成物。
【請求項4】
前記オルガノポリシロキサンは、前記第1ペーストに含まれる第1成分と、前記第2ペーストに含まれる第2成分とからなり、
前記第1成分に対する第2成分の質量比が1.1以上である、
請求項3に記載の歯科用適合試験材組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用適合試験材組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科治療において、適合試験材が広く用いられている。適合試験材の使用方法は、歯科補綴物内面に塗布し、その補綴物が装着される口腔内に装着された後、撤去される。このとき支台歯や口腔粘膜との間に接触不良が生じている場合は、歯科補綴物内面と支台歯や口腔粘膜とが部分的に強く接するので歯科補綴物内面の適合試験材の皮膜が他の部分より薄くなる。この適合試験材が薄くなった部分を研磨することで、歯科補綴物の部分的な適合不良が改善される。
【0003】
特許文献1には、ポリジオルガノシロキサン、顔料及び水溶性高分子粉末とからなる義歯床過圧部診査用ペーストが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許2650060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の歯科用適合試験材は、適合の確認のしやすさに課題がある。
【0006】
本発明の課題は、適合の確認がしやすい歯科用適合試験材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、第1ペースト及び第2ペーストを含む歯科用適合試験材組成物であって、前記第1ペースト及び前記第2ペーストを練和してから35秒後の練和物の23℃における稠度が37mm以上43mm以下である、歯科用適合試験材組成物である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、適合の確認がしやすい歯科用適合試験材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
【0010】
本実施形態の歯科用適合試験材組成物は、第1ペースト及び第2ペーストを含む。本明細書において、歯科用適合試験材は、歯科用補綴物の内面の支台歯や口腔粘膜との適合を測定するための材料を示す。
【0011】
第1ペーストは、歯科用適合試験材組成物において触媒ペーストとして機能し得る。また、第2ペーストは、歯科用適合試験材組成物においてベースペーストとして機能し得る。本実施形態の歯科用適合試験材組成物は、これらの第1ペースト及び第2ペーストを練和した練和物として得られる。
【0012】
第1ペースト及び第2ペーストの配合量は、任意であるが、例えば、歯科用適合試験材組成物において質量比で8:2~2:8であり、好ましくは7:3~3:7、より好ましくは6:4~4:6である。
【0013】
本実施形態の歯科用適合試験材組成物は、第1ペースト及び第2ペーストを練和して得られる練和物の稠度が37mm以上43mm以下であり、好ましくは38mm以上42mm以下、より好ましくは38mm以上41mm以下である。ここで、稠度は、第1ペーストと第2ペーストを練和してから35秒後の練和物の23℃における稠度を示す。
【0014】
本実施形態の歯科用適合試験材組成物では、このように第1ペースト及び第2ペーストの練和物の稠度が37mm以上43mm以下であることで、歯科補綴物内面上で練和物が流れやすくなるのを抑制することができる。そのため、本実施形態の歯科用適合試験材組成物は、歯科補綴物内面と支台歯や口腔粘膜との間で練和物が均一に広がり、適合の確認がしやすくなる。
【0015】
また、本実施形態の歯科用適合試験材組成物は、第1ペースト及び第2ペーストの練和物の稠度が37mm以上43mm以下であることで、ディスペンサー等による練和物の押し出し性の低下やペーストの練和感不良を抑制することができる。そのため、本実施形態の歯科用適合試験材組成物は、取り扱いが容易である。
【0016】
また、第1ペースト及び第2ペーストは、何れも、練和前の粘度が20,000mPa・s以上60,000mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは21,000mPa・s以上55,000mPa・s以下、更に好ましくは22,000mPa・s以上50,000mPa・s以下である。本明細書において、粘度は、ずり速度100(1/秒)のときの23℃における粘度を示す。
【0017】
本実施形態の歯科用適合試験材組成物では、このように練和前の第1ペースト及び第2ペーストの粘度が20,000mPa・s以上60,000mPa・s以下であることで、歯科補綴物内面上で練和物が流れやすくなるのをさらに抑制することができる。そのため、本実施形態の歯科用適合試験材組成物は、歯科補綴物内面と支台歯や口腔粘膜との間で練和物が均一に広がりやすくなり、歯科補綴物内面の適合の確認が容易になる。
【0018】
また、本実施形態の歯科用適合試験材組成物は、練和前の第1ペースト及び第2ペーストの粘度が20,000mPa・s以上60,000mPa・s以下であることで、歯科補綴物内面で硬化した練和物を剥がす際に該練和物が千切れにくくなる。そのため、本実施形態の歯科用適合試験材組成物は、歯科補綴物内面の適合性を確認した後の歯科補綴物内面からの練和物の撤去が容易である。
【0019】
本実施形態に係る歯科用適合試験材組成物の組成は、特に限定されないが、例えば、付加型シリコーン組成物であり、縮合型シリコーン組成物とは異なるものを含有する。
【0020】
付加型シリコーン組成物は、特に限定されないが、例えば、オルガノポリシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサン、シリコーン可溶性白金化合物、及び無機充填材、を含む。
【0021】
[オルガノポリシロキサン]
オルガノポリシロキサンは、特に限定されないが、1分子中に脂肪族不飽和炭化水素を少なくとも2個を有するオルガノポリシロキサンであることが好ましく、より好ましくはアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンである。
【0022】
アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンは、平均組成式
SiO(4-a)/2
(式中、Rは、炭素数1~10、好ましくは1~8の置換又は無置換の1価の炭化水素基であり、aは1.95~2.05、好ましくは2.00~2.02であり、a個のRのうち、0.0001~20mol%、好ましくは0.001~10mol%、更に好ましくは0.01~5mol%が炭素数2~8、好ましくは2~6のアルケニル基である。)
で表されることが好ましい。
【0023】
ここで、Rにおける1価の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基等が挙げられる。
【0024】
における置換基としては、例えば、フッ素原子、臭素原子、塩素原子等のハロゲン原子、シアノ基等が挙げられる。
【0025】
置換基により置換されているアルキル基としては、例えば、クロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられる。
【0026】
なお、アルケニル基は、末端のケイ素原子に結合していてもよいし、末端以外のケイ素原子に結合していてもよいが、両末端のケイ素原子に結合していることが好ましい。
【0027】
アルケニル基以外のRは、メチル基又はフェニル基であることが好ましい。
【0028】
ここで、アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンは、Mユニット(RSiO1/2)と、Dユニット(RSiO)を含むが、Tユニット(RSiO3/2)を更に含んでいてもよい。
【0029】
また、アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンは、単独重合体及び共重合体の何れであってもよい。
【0030】
アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンとしては、例えば、両末端がビニルジメチルシロキシ基により封鎖されているジメチルポリシロキサン、両末端がメチルジビニルシロキシ基により封鎖されているジメチルポリシロキサン、両末端がビニルジメチルシロキシ基により封鎖されているジメチルシロキサン(80mol%)・メチルフェニルシロキサン(20mol%)共重合体、両末端がビニルジメチルシロキシ基により封鎖されているジメチルシロキサン(80mol%)・ジフェニルシロキサン(20mol%)共重合体、両末端がビニルジメチルシロキシ基により封鎖されているジメチルシロキサン(90mol%)・ジフェニルシロキサン(10mol%)共重合体、両末端がトリメチルシロキシ基により封鎖されているジメチルシロキサン・ビニルメチルシロキサン共重合体等が挙げられる。
【0031】
なお、アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンは、二種以上を併用してもよい。
【0032】
アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンは、これらの中でも、両末端がビニルジメチルシロキシ基により封鎖されているジメチルポリシロキサンであることが好ましい。
【0033】
なお、オルガノポリシロキサンの粘度(ずり速度100(1/秒)のときの23℃における粘度)は、7,500mPa・s以上16,000mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは8,000mPa・s以上15,500mPa・s以下であり、更に好ましくは8,500mPa・s以上15,000mPa・s以下である。
【0034】
オルガノポリシロキサンの粘度が7,500mPa・s以上16,000mPa・s以下であると、第1ペースト及び第2ペーストの練和前の粘度を何れも20,000mPa・s以上60,000mPa・s以下に調整することができる。そのため、歯科補綴物内面の適合の確認が容易で、歯科補綴物内面の適合性を確認した後の歯科補綴物内面からの練和物の撤去が容易な歯科用適合試験材組成物を提供することができる。
【0035】
歯科用適合試験材組成物中のオルガノポリシロキサンの含有量は、任意であるが、例えば、45質量%以上80質量%以下であり、好ましくは50質量%以上75質量%以下であり、より好ましくは55質量%以上70質量%以下である。
【0036】
オルガノポリシロキサンは、第1ペースト及び第2ペーストの何れにも含まれていることが好ましい。この場合、オルガノポリシロキサンは、第1ペーストに含まれる第1成分及び第2ペーストに含まれる第2成分からなり、第1ペースト中の第1成分の含有量は、30質量%以上50質量%以下であることが好ましく、より好ましくは35質量%以上48質量%以下、更に好ましくは40質量%以上45質量%以下である。
【0037】
また、オルガノポリシロキサンの第2ペースト中の第2成分の含有量は、50質量%以上95質量%以下であることが好ましく、より好ましくは60質量%以上93質量%以下、更に好ましくは70質量%以上90質量%以下である。
【0038】
また、オルガノポリシロキサンは、第1ペースト及び第2ペーストを含む歯科用適合試験材組成物において、第1成分に対する第2成分の質量比が1.1以上であることが好ましく、より好ましくは1.3以上、更に好ましくは1.4以上である。
【0039】
なお、第1成分に対する第2成分の質量比の上限は、特に限定されないが、第1ペーストと第2ペーストとの練和物が歯科用適合試験材として機能する程度に硬化させる観点から、第1成分に対する第2成分の質量比は2.1以下であればよい。
【0040】
[オルガノハイドロジェンポリシロキサン]
オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、脂肪族不飽和炭化水素を有するオルガノポリシロキサンとヒドロシリル化反応するため、歯科用適合試験材組成物を硬化させることができる。オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、特に限定されないが、1分子中にケイ素原子に直結した水素原子を少なくとも3個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンが好ましい。
【0041】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、平均組成式
SiO(4-b-c)/2
(式中、Rは、炭素数1~10の置換又は無置換の1価の炭化水素基であり、bは0.7~2.1であり、cは0.001~1.0であり、b+cは0.8~3.0である。)
で表されることが好ましい。
【0042】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンが有するヒドロシリル基の個数は、2~300個であることが好ましく、3~200個であることがより好ましく、4~100個であることが更に好ましい。
【0043】
ここで、Rは、アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンにおけるRと同様であるが、脂肪族不飽和結合を有さないことが好ましい。
【0044】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)フェニルシラン、両末端がトリメチルシロキシ基により封鎖されているメチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端がトリメチルシロキシ基により封鎖されているジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端がジメチルハイドロジェンシロキシ基により封鎖されているジメチルポリシロキサン、両末端がジメチルハイドロジェンシロキシ基により封鎖されているジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端がジメチルハイドロジェンシロキシ基により封鎖されているメチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端がトリメチルシロキシ基により封鎖されているメチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端がトリメチルシロキシ基により封鎖されているメチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CHHSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CHHSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C)SiO3/2単位を有する共重合体等が挙げられる。
【0045】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、直鎖状、環状、分岐状の何れであってもよい。
【0046】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンが有するケイ素原子の個数は、2~1,000個であることが好ましく、3~300個であることがより好ましく、4~100個であることが更に好ましい。
【0047】
なお、オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、二種以上を併用してもよい。
【0048】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、これらの中でも、1分子中にケイ素原子に直結した水素原子を少なくとも3個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであることが好ましく、より好ましくは両末端がトリメチルシロキシ基により封鎖されているジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体である。
【0049】
なお、オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、オルガノハイドロジェンポリシロキサン中のケイ素原子に結合している水素原子の含有量が、20質量%以上80質量%以下であることが好ましく、より好ましくは25質量%以上70質量%以下、更に好ましくは30質量%以上60質量%以下である。
【0050】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンの粘度(ずり速度100(1/秒)のときの23℃における粘度)は、5mPa・s以上500mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは5mPa・s以上300mPa・s以下、更に好ましくは5mPa・s以上200mPa・s以下である。
【0051】
歯科用適合試験材組成物中のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの含有量は、任意であるが、例えば、0.1質量%以上10質量%以下であり、好ましくは1質量%以上8質量%以下であり、より好ましくは2質量%以上5質量%以下である。
【0052】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、第2ペーストに含まれていることが好ましい。この場合、第2ペースト中のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの含有量は、1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、より好ましくは2質量%以上15質量%以下であり、更に好ましくは3質量%以上10質量%以下である。
【0053】
なお、オルガノポリシロキサンがアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンの場合、アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンのアルケニル基に対する、オルガノハイドロジェンポリシロキサンのヒドロシリル基のモル比は、0.1~4.0であることが好ましい。
【0054】
[シリコーン可溶性白金化合物]
シリコーン可溶性白金化合物は、ヒドロシリル化触媒である。
【0055】
ヒドロシリル化触媒としては、例えば、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と1価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒等の白金族金属触媒が挙げられる。
【0056】
なお、ヒドロシリル化触媒は、二種以上を併用してもよい。
【0057】
歯科用適合試験材組成物中のシリコーン可溶性白金化合物の含有量は、任意であるが、例えば、0.01質量%以上10質量%以下であり、好ましくは0.1質量%以上8質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以上5質量%以下である。
【0058】
シリコーン可溶性白金化合物は、第1ペーストに含まれていることが好ましい。この場合、第1ペースト中のシリコーン可溶性白金化合物の含有量は、0.05質量%以上10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1質量%以上15質量%以下であり、更に好ましくは0.1質量%以上10質量%以下である。
【0059】
[無機充填材]
無機充填材は、特に限定されず、例えば、煙霧質シリカ粒子、湿式系のシリカ粒子、結晶性シリカ粒子、カーボンブラック、ベンガラ粒子、酸化セリウム粒子、酸化チタン粒子、炭酸カルシウム粒子、水酸化アルミニウム粒子、チタン酸エステル粒子等が挙げられる。
【0060】
なお、無機充填材は、二種以上を併用してもよい。
【0061】
歯科用適合試験材組成物中の無機充填材の含有量は、任意であるが、例えば、10質量%以上70質量%以下であり、好ましくは15質量%以上60質量%以下であり、より好ましくは20質量%以上50質量%以下である。
【0062】
無機充填材は、第1ペースト及び第2ペーストの何れにも含まれていることが好ましい。この場合、第1ペースト中の無機充填材の含有量は、1質量%以上70質量%以下であることが好ましく、より好ましくは3質量%以上70質量%以下であり、更に好ましくは5質量%以上70質量%以下である。また、第2ペースト中の無機充填材の含有量は、1質量%以上70質量%以下であることが好ましく、より好ましくは3質量%以上60質量%以下であり、更に好ましくは5質量%以上50質量%以下である。
【0063】
本実施形態に係る歯科用適合試験材組成物には、その特性を失わない範囲で更に各種のシリコーンレジン、シリコーンオイル、ノニオン界面活性剤、顔料等が含まれていてもよい。
【0064】
[シリコーンオイル]
シリコーンオイルとしては、特に限定されないが、例えば、メチルフェニルポリシロキサンやジメチルポリシロキサン等が挙げられる。
【0065】
歯科用適合試験材組成物中のシリコーンオイルの含有量は、任意であるが、例えば、0.1質量%以上20質量%以下であり、好ましくは0.3質量%以上15質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以上10質量%以下である。
【0066】
シリコーンオイルは、第1ペーストに含まれていることが好ましい。この場合、第1ペースト中のシリコーンオイルの含有量は、0.1質量%以上25質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以上20質量%以下であり、更に好ましくは1質量%以上15質量%以下である。
【0067】
[ノニオン界面活性剤]
ノニオン界面活性剤は、任意に配合することができるが、第1ペースト及び第2ペーストの練和物の親水性を向上させ、歯科補綴物内面と支台歯や口腔粘膜との間で練和物が均一に広がりやすくなる観点から、配合することが好ましい。
【0068】
ノニオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、シリコーン系界面活性剤、炭化水素系界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル)、炭化フッ素系界面活性剤、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールブロック共重合体等が挙げられる。ノニオン性界面活性剤は、これらの中でも、シリコーン系界面活性剤、炭化水素系界面活性剤が好ましい。
【0069】
シリコーン系界面活性剤の市販品としては、例えば、KF-351A、KF945、KF640、KF642、KF643、KF644(以上、信越化学工業社製)等が挙げられる。
【0070】
炭化水素系界面活性剤の市販品としては、例えば、ナロアクティー(登録商標)CL40、CL50、CL70、CL90、サンノニック(登録商標)SS30、SS50、SS70、SS90(以上、三洋化成製)等が挙げられる。
【0071】
なお、ノニオン性界面活性剤は、二種以上を併用してもよい。
【0072】
歯科用適合試験材組成物中のノニオン性界面活性剤の含有量は、任意であるが、例えば、0.01質量%以上3質量%以下であり、好ましくは0.1質量%以上2質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以上1質量%以下である。
【0073】
ノニオン性界面活性剤は、第2ペーストに含まれていることが好ましい。この場合、第2ペースト中のノニオン性界面活性剤の含有量は、0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1質量%以上3質量%以下であり、更に好ましくは0.5質量%以上2質量%以下である。
【0074】
[顔料]
顔料としては、特に限定されないが、好ましくは白色顔料を用いる。白色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタンとビニルポリシロキサンの混合物、酸化チタンと酸化アルミニウムとビニルポリシロキサンの混合物、酸化ジルコニウムとビニポリシロキサンの混合物等が挙げられる。これらの白色顔料は、顔料ペーストとして、歯科用適合試験材組成物に配合される。
【0075】
なお、顔料は、二種以上を併用してもよい。
【0076】
歯科用適合試験材組成物中の顔料の含有量は、任意であるが、例えば、0.01質量%以上3質量%以下であり、好ましくは0.1質量%以上2質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以上1.5質量%以下である。
【0077】
顔料は、第1ペーストに含まれていることが好ましい。この場合、第1ペースト中の顔料の含有量は、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以上5質量%以下であり、更に好ましくは1質量%以上3質量%以下である。
【0078】
このような顔料を用いることにより、目視による広範囲な厚み差の確認が容易になり、特に、セラミックスで作製された歯科補綴物の目視による適合性の確認が容易になる。
【0079】
本実施形態の歯科用適合試験材組成物は、上述のように、1分子中に脂肪族不飽和炭化水素を少なくとも2個を有するオルガノポリシロキサン、1分子中にケイ素原子に直結した水素原子を少なくとも3個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、シリコーン可溶性白金化合物、及び無機充填材、を含む。
【0080】
これにより、本実施形態の歯科用適合試験材組成物は、第1ペースト及び第2ペーストを練和してから35秒後の練和物の23℃における稠度を37mm以上43mm以下に調整することができる。そのため、本実施形態によれば、歯科補綴物内面と支台歯や口腔粘膜との間で練和物が均一に広がることで適合の確認が容易で、練和物の押し出し性の低下やペーストの練和感不良が抑制されることで取り扱いが容易な歯科用適合試験材組成物を提供することができる。
【0081】
また、本実施形態の歯科用適合試験材組成物は、ずり速度100(1/秒)のときの23℃における粘度が、第1ペースト及び第2ペーストの何れも20,000mPa・s以上60,000mPa・s以下に調整することができる。そのため、本実施形態の歯科用適合試験材組成物では、歯科補綴物内面の適合の確認が容易で、適合を確認した後の歯科補綴物内面からの練和物の撤去が容易な歯科用適合試験材組成物を提供することができる。
【0082】
また、本実施形態の歯科用適合試験材組成物は、上述のように、オルガノポリシロキサンが第1ペーストに含まれる第1成分及び第2ペーストに含まれる第2成分からなり、第1成分に対する第2成分の質量比が1.1以上であることが好ましい。これにより、本実施形態の歯科用適合試験材組成物は、歯科補綴物内面と支台歯や口腔粘膜との間で練和物がさらに均一に広がりやすくなり、歯科補綴物内面の適合の確認がさらに容易になる。
【0083】
[歯科用適合試験材組成物の使用方法]
本実施形態の歯科用適合試験材組成物は、シリコーン可溶性白金化合物と、オルガノハイドロジェンポリシロキサンを分離した2剤型の組成物として、使用することが好ましい。
【0084】
一例としては、シリコーン可溶性白金化合物を含む第1剤(第1ペースト)と、オルガノハイドロジェンポリシロキサンを含む第2剤(第2ペースト)を練和した練和物を歯科補綴物内面に塗布した後、該歯科補綴物を支台歯や口腔粘膜に装着し、室温で放置、又は、50~200℃に加熱する。
【実施例0085】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、実施例に限定されるものではない。なお、以下において、単位のない数値又は「部」は、特に断りのない限り、質量基準(質量%)である。
【0086】
(実施例1~6、比較例1~5)
表1に示す配合量[質量部]で、第1ペーストと第2ペーストを調製し、第1ペーストと第2ペーストを1:1で練和して歯科用適合試験材を調製し、評価した。調製条件おび評価結果を表1に示す。
【0087】
なお、表1における各成分の詳細は、以下の通りである。
【0088】
メチルフェニルポリシロキサン:KF50-100cs(信越シリコーン社製)
結晶性シリカ:クリスタライト(登録商標)VX-S(龍森社製)
溶融性シリカ:フューズレックス E2(龍森社製)
疎水化フュームドシリカ:アエロジル(登録商標)RX-200(アエロジルRX-200(日本アエロジル社製)
ポリオキシエチレンアルキルエーテル:ナロアクティー(登録商標)CL-40(三洋化成工業社製)
【0089】
<粘度試験>
試験には、粘度計(RE-85U、東機産業社製)を使用した。23℃恒温水で温度を一定に保ちながら測定を行った。使用するコーンロータナンバーは3°×R7.7を使用し評価した。ずり速度は、100(1/秒)にて測定を行った。
【0090】
<稠度試験>
JIS T 6513-2019を準用し、練和時間を20秒、荷重をかけるタイミングを練和開始から35秒として、稠度を測定した。測定環境は、室温23±1℃、湿度50±10%とした。
【0091】
<適合試験>
上顎の印象を採取し、石膏模型を作製した。石膏模型上で、常温重合レジン(ユニファストラボ タイプB No.8 ライブピンク、ジーシー社製)を、口蓋部分を覆うように築盛し、偽義歯を作製した。その後、作成した偽義歯に対して、実施例及び比較例の適合試験材を盛り、上述の作成した石膏模型上の口蓋部分に圧接を行った。
【0092】
ただし、口腔内の濡れ性を模倣するために、石膏模型は、圧接する前に、水に浸漬した。最後に、適合試験材の硬化を待ち、取り外し、評価を行った。偽義歯の色が透けている部分が接触している部位であると判断した。
【0093】
適合試験の評価基準は、以下の通りである。なお、A、Bは良好、Cは不良と評価した。
A 適切に接触部位のみが検出されている場合
B 接触部位以外の部位も僅かに薄くなっている場合
C 適切に接触部位が検出できない場合
【0094】
<撤去性試験>
適合試験結果後に、硬化した練和物を撤去した際の、撤去性を評価した。評価基準は、以下の通りである。なお、A、Bは良好、Cは不良と評価した。
A 一塊で撤去でき、欠けもなかった場合
B 一塊で撤去できたが僅かに欠けがあった場合
C 一塊で撤去できないか、撤去できてもところどころ千切れてしまう場合
【0095】
<濡れ性試験>
試験には、接触角計(DM-501、協和界面科学社製)を使用し、測定溶液には蒸留水を用いた。練和終了から3分の時点で、練和物に対し蒸留水を滴下した。本試験では、滴下から30秒後の接触角を測定した。接触角が低い程、濡れ性が高い(親水性が高い)と評価した。
【0096】
<押し出し試験>
チューブ口径5mmからの押し出しと、カートリッジディスペンサーからの押し出しを官能的に評価した。評価基準は、以下の通りである。なお、A、Bは良好、Cは不良と評価した。
A 握力の弱い方でも押し出しが非常に容易な場合
B 握力の弱い方でも押し出しが容易な場合
C 押し出しが重い場合
【0097】
【表1】
【0098】
表1から、第1ペースト及び第2ペーストを練和してから35秒後の練和物の23℃における稠度が37mm以上43mm以下であり、ずり速度100(1/秒)のときの23℃における粘度が、第1ペースト及び第2ペーストの何れも20,000mPa・s以上60,000mPa・s以下である組成物は、適合試験、撤去性試験、押し出し試験の何れの結果も良好であり、親水性が高いものであった(実施例1~6)。
【0099】
これに対して、第1ペースト及び第2ペーストを練和してから35秒後の練和物の23℃における稠度が37mm以上43mm以下の条件、及び/又は第1ペースト及び第2ペーストの何れも20,000mPa・s以上60,000mPa・s以下の条件を満たさない組成物は、適合試験、撤去性試験、押し出し試験の少なくとも1つの結果が不良であった(比較例1~5)。
【0100】
このうち、第1ペースト及び第2ペーストの何れも20,000mPa・s未満の組成物は、親水性が低いものであった(比較例1、2)
【0101】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。