(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023106173
(43)【公開日】2023-08-01
(54)【発明の名称】浮体
(51)【国際特許分類】
B63B 29/02 20060101AFI20230725BHJP
【FI】
B63B29/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022007341
(22)【出願日】2022-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】518022743
【氏名又は名称】三菱造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】香月 哲幸
(57)【要約】
【課題】状況に応じて空間の使用タイプを転換できるとともに、感染対策を十分に達成することができる浮体を提供する。
【解決手段】浮体は、通路及び通路に接続された主室を有する浮体本体と、通路と主室との間に設けられた主扉と、主室内に設けられて、主室を通路側のロビー空間と奥側の居室空間とに区画する第一位置と、ロビー空間と居室空間とを開放して主室の壁面に沿う開放位置との間で開閉可能なロビー区画扉と、居室空間の圧力がロビー空間及び通路の圧力よりも小さくなるように、通路、ロビー空間、及び居室空間の圧力を調整する圧力調整部と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通路及び前記通路に接続された主室を有する浮体本体と、
前記通路と前記主室との間に設けられた主扉と、
前記主室内に設けられて、前記主室を通路側のロビー空間と奥側の居室空間とに区画する第一位置と、前記ロビー空間と前記居室空間とを開放して前記主室の壁面に沿う開放位置との間で開閉可能なロビー区画扉と、
前記居室空間の圧力が前記ロビー空間及び前記通路の圧力よりも小さくなるように、前記通路、前記ロビー空間、及び前記居室空間の圧力を調整する圧力調整部と、
を備える浮体。
【請求項2】
前記ロビー区画扉は、ヒンジによって開閉可能とされている請求項1に記載の浮体。
【請求項3】
前記第一位置の前記ロビー区画扉を外側から囲う扉枠を備え、
前記扉枠には、前記第一位置の前記ロビー区画扉の側縁に沿って、前記ロビー区画扉と前記扉枠との隙間を閉塞するパッキンが設けられ、
前記パッキンのうち下方の前記パッキンは、変形容易である請求項2に記載の浮体。
【請求項4】
前記ロビー空間に折りたたみ式のテーブルを備える請求項1から3のいずれかに記載の浮体。
【請求項5】
前記圧力調整部は、
前記通路に配置され、前記通路の圧力を測定する通路用圧力センサと、
前記居室空間に配置され、前記居室空間の圧力を測定する居室用圧力センサと、
前記ロビー空間に配置され、前記ロビー空間の圧力を測定するロビー用圧力センサと、
を有し、
前記圧力調整部は、前記通路用圧力センサ、前記居室用圧力センサ、及び前記ロビー用圧力センサの測定した圧力に基づいて、前記通路、前記ロビー空間、及び前記居室空間の圧力を自動調整する請求項1から4のいずれか一項に記載の浮体。
【請求項6】
前記居室空間の前記壁面には、窓が設けられている請求項1から5のいずれか一項に記載の浮体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、浮体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、艦船または他の対応する構造物のためのルームユニットが開示されている。ルームユニットは、第一の空間を形成するために壁部分、天井部分及び床部分を備える。また、ルームユニットは、第二の空間のためのアレンジメントを備える。ルームユニットは、様々な使用タイプに転換できるようにするために、仕切り要素アレンジメントを備える。この仕切り要素アレンジメントは、第一の位置に配置された時には第一の空間と第二の空間の少なくも一部とを隔てて船室ユニット及びそれに付属するバルコニーユニットを形成する。また、仕切り要素アレンジメントは、第二の位置に配置された時には第一の空間と第二の空間の少なくとも一部とを連結して一体型船室ユニットを形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のルームユニットでは、仕切り要素アレンジメントによって内部の空間を隔てて船室ユニットとバルコニーユニットを形成できる。この場合であっても、船室ユニットとバルコニーユニットとの間で人が移動するために仕切り要素アレンジメントを移動させると、船室ユニット及びバルコニーユニットとの間で空気の移動が妨げなく行われてしまう。このため、例えば、船内にウイルスの感染者が出た場合に、感染者を船室ユニットまたはバルコニーユニットのいずれかで区画したとしても、感染者への物資補給の際にウイルスが他者に感染する場合があった。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、状況に応じて空間の使用タイプを転換できるとともに、感染対策を十分に達成することができる浮体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、浮体は、通路及び前記通路に接続された主室を有する浮体本体と、前記通路と前記主室との間に設けられた主扉と、前記主室内に設けられて、前記主室を通路側のロビー空間と奥側の居室空間とに区画する第一位置と、前記ロビー空間と前記居室空間とを開放して前記主室の壁面に沿う開放位置との間で開閉可能なロビー区画扉と、前記居室空間の圧力が前記ロビー空間及び前記通路の圧力よりも小さくなるように、前記通路、前記ロビー空間、及び前記居室空間の圧力を調整する圧力調整部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示の浮体によれば、状況に応じて空間の使用タイプを転換できるとともに、感染対策を十分に達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の実施形態に係る浮体の側面図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る主室の平面図である。
【
図3】本開示の実施形態に係るロビー区画扉の正面図である。
【
図4】本開示の実施形態に係るロビー区画扉の側方断面図である。
【
図5】本開示の実施形態に係るロビー区画扉の上方断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態に係る浮体について図面を参照して説明する。本実施形態では、浮体として、車両等の貨物が搭載可能であるとともに旅客が乗船可能なフェリーを一例にして説明する。
【0010】
(浮体)
図1に示すように、浮体1は、浮体本体2と、上部構造3と、を備える。
図2に示すように、浮体本体2は、通路7と、通路7に接続された主室8と、を有する。浮体1は、主室8と通路7との間に設けられた主扉8bを備える。浮体1は、主室8内に、折りたたみ式のテーブル14と、扉枠40と、ロビー区画扉15と、水回り区画扉26と、ロビー区画扉15用のパッキン17(
図3参照)と、窓18と、ワードローブ19と、ベッド20と、机21と、椅子22と、タンス23と、テレビ24と、浴槽27と、シャワー(不図示)と、トイレ28と、手洗い台29と、備える。浮体1は、通路7、及び主室8内の圧力を調整する圧力調整部30を備える。
【0011】
(浮体本体)
図1に示すように、浮体本体2は、浮力を発生させて水面に浮かぶ船体である。浮体本体2は、舷側4と、船底5と、上甲板6と、を有する。
舷側4は、左右の舷側4をそれぞれ形成する一対の舷側外板4aを有している。船底5は、一対の舷側4を接続する船底外板5aを有している。これら舷側外板4aと船底外板5aとは、浮体本体2の外板2aを構成する。上甲板6は、一対の舷側外板4aに亘って設けられている。
【0012】
これら舷側4、船底5、及び上甲板6により、浮体本体2は、内部空間を有する箱型に形成されている。
上甲板6には、上部構造3が設けられている。上部構造3は、いわゆる船楼と称されるものである。上部構造3には、操船を行うブリッジ等が形成されている。
浮体本体2の内部空間には、通路7及び主室8が設けられている。
【0013】
(通路)
通路7は、浮体本体2内で旅客や船員が移動するために設けられている。通路7は、水平方向に延在している。通路7の一部は、平面視で直線状に延びている。直線状の通路7に沿って、主室8が設けられている。通路7には、主室8への第一出入口7aが形成されている。第一出入口7aには、主扉8bが設けられている。
【0014】
(主扉)
主扉8bは、閉塞位置と開放位置との間で開閉可能に設けられている。主扉8bは、閉塞位置では、第一出入口7aに位置し、通路7と主室8とを区画する。主扉8bは、開放位置では、主室8内に位置し、通路7と主室8とを開放する。
【0015】
(主室)
主室8は、旅客が寝泊まりする部屋である。主室8では、旅客が食事をとる場合もある。主室8は、第一出入口7aを介して、通路7に接続されている。主室8は、外板2aから所定の間隔をあけて離間している。
【0016】
以下では、水平方向のうち通路7の延在方向と直交する方向を第一方向D1と称し、通路7の延在方向を第二方向D2と称する。第一方向D1のうち、通路7に接近する方向を第一方向D1一側と称し、通路7から離間する方向を第一方向D1他側と称する。第二方向D2のうち、第一方向D1一側から第一方向D1他側に向かう方向を向く人にとっての左手側を第二方向D2一側と称し、第一方向D1一側から第一方向D1他側に向かう方向を向く人にとっての右手側を第二方向D2他側と称する。
【0017】
主室8は、外殻9と、内壁10と、を有する。外殻9は、内部空間を有する箱型に形成されている。外殻9は、平面視で通路7から第一方向D1に延びる長方形状に形成されている。外殻9によって、主室8の空間が区画される。通路7側の外殻9の第二方向D2一側には、前述の第一出入口7aが形成されている。内壁10は、外殻9の内部に設けられている。内壁10は、第一内壁11と、第二内壁12と、第三内壁13と、を有する。
【0018】
第一内壁11は、通路7側の外殻9の第二方向D2中間から第一方向D1他側に延びている。第一内壁11の第一方向D1の寸法は、外殻9の第一方向D1の寸法の半分未満である。第一内壁11の第二方向D2一側には、第二内壁12が設けられている。第二内壁12は、第二方向D2に延びている。第二内壁12は、外殻9と第一内壁11の第一方向D1他側の端部とを接続している。第二内壁12には、第一方向D1に貫通する第二出入口12aが形成されている。第一内壁11の第二方向D2他側には、第三内壁13が設けられている。第三内壁13は、第二方向D2に延びている。第三内壁13は、外殻9と第一内壁11の第一方向D1他側の端部とを接続している。第三内壁13には、第一方向D1に貫通する第三出入口13aが形成されている。
以下では、外壁の内面と内壁10の表面とを総称して、主室8の壁面8aと称する。
【0019】
主室8内の空間は、内壁10によって3つに仕切られる。
以下では、第一内壁11及び第二内壁12によって仕切られた空間をロビー空間S1と称し、第二内壁12及び第三内壁13によって仕切られた空間を居室空間S2と称し、第三内壁13及び第一内壁11によって仕切られた空間を水回り空間S3と称する。
ロビー空間S1及び水回り空間S3は、通路7側に位置し、居室空間S2は、ロビー空間S1及び水回り空間S3よりも奥側に位置する。ロビー空間S1と水回り空間S3とは、通路7に沿って並んでいる。
【0020】
(ロビー空間)
ロビー空間S1には、折りたたみ式のテーブル14が設けられている。
テーブル14上には、通路7から運び込まれた食事等の物資が配置される。テーブル14は、不使用時に折りたたまれ、例えばロビー空間S1の隅に配置される。
ロビー空間S1と居室空間S2とを仕切る第二内壁12の第二出入口12aには、扉枠40が設けられている。
【0021】
(扉枠)
図5に示すように、扉枠40は、正面視で上下方向に延びる長方形枠状に形成されている。扉枠40は、第二出入口12aに沿うように取り付けられている。扉枠40には、ロビー区画扉15が取付けられている。
【0022】
(ロビー区画扉)
ロビー区画扉15は、扉枠40によって外側の側縁を覆われている。ロビー区画扉15は、第一位置P1と開放位置P2との間で開閉可能に設けられている。
第一位置P1では、ロビー区画扉15は、第二出入口12a内に配置され、第二内壁12の両面と面一となる。ロビー区画扉15は、第一位置P1で、主室8をロビー空間S1と居室空間S2とに区画する。開放位置P2では、ロビー区画扉15は、外壁の壁面8aに沿うように配置される。ロビー区画扉15は、開放位置P2で、ロビー空間S1と居室空間S2とを開放する。
【0023】
図2から
図5に示すように、ロビー区画扉15は、ヒンジ16によって開閉可能とされるドアである。ヒンジ16は、扉枠40の第二方向D2一側の端部に複数設けられている。ヒンジ16は、扉枠40の上部に2つ設けられ、扉枠40の下部に1つ設けられている。各ヒンジ16は、扉枠40に沿って、ロビー区画扉15を水平方向に回動可能とする。すなわち、ロビー区画扉15は、平面視でヒンジ16回りに回動可能とされている。ロビー区画扉15は、例えば不燃性材料によって形成される。ロビー区画扉15には、覗き窓15aと、操作部15bと、が設けられている。覗き窓15aは、ロビー区画扉15の上部に設けられている。覗き窓15aは、正面視で水平方向に延びる長方形状に形成されている。覗き窓15aは、可視光透過性を有する材料で形成されている。操作部15bは、覗き窓15aよりも下方に設けられている。操作部15bは、ロビー区画扉15を手動で開閉する際に使用される。
第一位置P1のロビー区画扉15の側縁と扉枠40との間には、パッキン17が設けられている。
【0024】
(パッキン)
パッキン17は、扉枠40に設けられ、第一位置P1のロビー区画扉15の側縁に沿うように配置されている。すなわち、各パッキン17は、第一位置P1のロビー区画扉15の上縁、左縁、右縁、及び下縁に沿って延びるように配置されている。パッキン17は、第一位置P1のロビー区画扉15と扉枠40との隙間を閉塞する。4つのパッキン17は、例えばゴムパッキンであり、パッキン17のうち下方のパッキン17は、変形容易に形成されたフレキシブルな部材である。
【0025】
(居室空間)
図1に示すように、居室空間S2には、窓18と、ワードローブ19と、ベッド20と、机21と、椅子22と、タンス23と、テレビ24と、が設けられている。
【0026】
(窓)
窓18は、居室空間S2の壁面8aに設けられている。窓18は、外部から居室空間S2を観察するために設けられている。窓18は、居室空間S2の奥側に設けられている。窓18は、筒部18aと、窓本体18bと、有する、いわゆるウィンドウボックスである。
筒部18aは、主室8の外殻9と外板2aとの間に設けられている。筒部18aは、主室8と外板2aとを接続している。筒部18aの外板2a側の端部には窓本体18bが設けられている。
窓本体18bは、可視光透過性を有する材料で形成されている。窓本体18bは、外部に露出している。
【0027】
ワードローブ19は、居室空間S2の第一方向D1他側、且つ、第二方向D2一側の隅に配置されている。ワードローブ19は、第一方向D1一側に向けて開放可能とされている。
ベッド20は、居室空間S2の第一方向D1他側で、ワードローブ19と第二方向D2に並んで配置されている。
【0028】
机21は、ベッド20の第一方向D1一側に配置されている。机21は、主室8の第二方向D2他側の壁面8aに沿って配置されている。
椅子22は、机21と第二方向D2で対向する位置に配置されている。
【0029】
タンス23は、机21の第一方向D1一側に配置されている。
テレビ24は、タンス23の上方に配置されている。テレビ24は、アーム25を介して主室8の第二方向D2他側の壁面8aに取り付けられている。
【0030】
居室空間S2と水回り空間S3とを仕切る第三内壁13の第三出入口13aには、水回り区画扉26が設けられている。
【0031】
(水回り区画扉)
水回り区画扉26は、閉塞位置と開放位置との間で開閉可能に設けられている。水回り区画扉26は、閉塞位置では、第三出入口13aに位置し、居室空間S2と水回り空間S3とを区画する。水回り区画扉26は、開放位置では、居室空間S2に位置し、居室空間S2と水回り空間S3とを開放する。
【0032】
(水回り空間)
水回り空間S3には、浴槽27と、シャワー(不図示)と、トイレ28と、手洗い台29と、が設けられている。
【0033】
浴槽27は、水回り空間S3の第一方向D1一側、且つ、第二方向D2一側の隅に配置されている。
浴槽27には、シャワーが設けられている。
トイレ28は、水回り空間S3の第一方向D1一側で、浴槽27と第二方向D2に並んで配置されている。
手洗い台29は、トイレ28の第一方向D1他側に配置されている。手洗い台29は、主室8の第二方向D2他側の壁面8aに取り付けられている。
上述した通路7及び各空間の圧力を調整するために、圧力調整部30が設けられている。
【0034】
(圧力調整部)
圧力調整部30は、居室空間S2の圧力がロビー空間S1及び通路7の圧力よりも小さくなるように、通路7、ロビー空間S1、及び居室空間S2の圧力を調整する。圧力調整部30は、給気ファン31と、給気ダクト32と、給気ダンパ33と、排気ファン34と、排気ダクト35と、排気ダンパ36と、圧力センサ37と、制御部38と、備える。
【0035】
給気ファン31は、通路7及び主室8の外側に設けられている。
給気ダクト32は、通路7と、ロビー空間S1と、居室空間S2とに1つずつ設けられている。各給気ダクト32は、給気ライン39aによって、給気ファン31と接続されている。給気ファン31によって送風された空気は、給気ライン39aを通って各給気ダクト32から通路7及び各空間に供給される。
各給気ダクト32の上流には、給気ダンパ33が設けられている。給気ダンパ33は、給気ライン39aを開閉可能に設けられている。給気ダンパ33の開度は、調節可能である。
【0036】
以下では、通路7内の給気ダクト32を「通路用給気ダクト32a」と称し、ロビー空間S1内の給気ダクト32を「ロビー用給気ダクト32b」と称し、居室空間S2内の給気ダクト32を「居室用給気ダクト32c」と称する。また、通路用給気ダクト32aの上流の給気ダンパ33を「通路用給気ダンパ33a」と称し、ロビー用給気ダクト32bの上流の給気ダンパ33を「ロビー用給気ダンパ33b」と称し、居室用給気ダクト32cの上流の給気ダンパ33を「居室用給気ダンパ33c」と称する。
【0037】
排気ファン34は、通路7及び主室8の外側に設けられている。
排気ダクト35は、通路7と、ロビー空間S1と、居室空間S2とに1つずつ設けられている。各排気ダクト35は、排気ライン39bによって、排気ファン34と接続されている。排気ファン34を稼働すると、通路7及び各空間の空気は各排気ダクト35から排気ライン39bを通って外部に排気される。
各排気ダクト35の下流には、排気ダンパ36が設けられている。排気ダンパ36は、排気ライン39bを開閉可能に設けられている。排気ダンパ36の開度は、調節可能である。
【0038】
以下では、通路7内の排気ダクト35を「通路用排気ダクト35a」と称し、ロビー空間S1内の排気ダクト35を「ロビー用排気ダクト35b」と称し、居室空間S2内の排気ダクト35を「居室用排気ダクト35c」と称する。また、通路用排気ダクト35aの下流の排気ダンパ36を「通路用排気ダンパ36a」と称し、ロビー用排気ダクト35bの下流の排気ダンパ36を「ロビー用排気ダンパ36b」と称し、居室用排気ダクト35cの下流の排気ダンパ36を「居室用排気ダンパ36c」と称する。
【0039】
(圧力センサ)
圧力センサ37は、通路7と、ロビー空間S1と、居室空間S2とに1つずつ配置されている。
以下では、通路7内の圧力センサ37を「通路用圧力センサ37a」と称し、ロビー空間S1内の圧力センサ37を「ロビー用圧力センサ37b」と称し、居室空間S2内の圧力センサ37を「居室用圧力センサ37c」と称する。
通路用圧力センサ37aは、通路7の圧力を測定し、ロビー用圧力センサ37bは、ロビー空間S1の圧力を測定し、居室用圧力センサ37cは、居室空間S2の圧力を測定する。
【0040】
(制御部)
制御部38は、通路7及び主室8の外側に設けられている。
制御部38は、給気ファン31、各給気ダンパ33、排気ファン34、各排気ダンパ36、及び各圧力センサ37に電気的に接続されている。制御部38は、通路用圧力センサ37a、居室用圧力センサ37c、及びロビー用圧力センサ37bの測定した圧力に基づいて、給気ファン31、各給気ダンパ33、排気ファン34、各排気ダンパ36の動作を制御し、通路7、ロビー空間S1、及び居室空間S2の圧力を自動調整する。
【0041】
以下、居室空間S2にウイルスの感染者を隔離して感染拡大を防ぐ方法について、
図1を参照して説明する。
まず、感染者を居室空間S2に移動させる。続いて、主扉8bを閉めて通路7とロビー空間S1とを区画する。また、ロビー区画扉15を閉めてロビー空間S1と居室空間S2とを区画する。これにより、感染者は居室空間S2に隔離される。感染者は、他者への感染リスクが十分に低下するまで居室空間S2で生活する。
なお、水回り区画扉26は、感染者が自由に開閉することができる。このため、感染者は、隔離中も外出することなく、入浴や排便等を行うことができる。
【0042】
必要な物資は、通路7からロビー空間S1、ロビー空間S1から居室空間S2へと運び込まれる。以下、例えば感染者に食事を提供する手順について説明する。
まず、船員が主扉8bを開けて通路7からロビー空間S1に食事を運び入れる。続いて、折りたたみ式のテーブル14を組み立て、テーブル14の上に食事を配置する。その後、船員は通路7に出て主扉8bを閉める。主扉8bが閉められると、感染者は、ロビー区画扉15を開けてロビー空間S1内の食事を居室空間S2に運び入れる。感染者は、ロビー区画扉15を閉めて居室空間S2内で食事をとる。
【0043】
感染者は、食事を終えると、ロビー区画扉15を開けて食器をテーブル14の上に戻す。感染者は、居室空間S2に戻りロビー区画扉15を閉める。ロビー区画扉15が閉められると、船員は、主扉8bを開けてロビー空間S1に入り、食器を通路7に運び出す。その後、船員は主扉8bを閉めて、元の居室空間S2とロビー空間S1とが区画され、ロビー空間S1と通路7とが区画された状態に戻す。
【0044】
また、居室空間S2の圧力は、圧力調整部30によって、ロビー空間S1及び通路7の圧力よりも小さくなるように維持されている。以下、圧力調整部30の動作について説明する。
通路用圧力センサ37aは、通路7の圧力を測定する。通路7の圧力の情報は、制御部38に送信される。また、ロビー用圧力センサ37bは、ロビー空間S1の圧力を測定する。ロビー空間S1の圧力の情報は、制御部38に送信される。また、居室用圧力センサ37cは、居室空間S2の圧力を測定する。居室空間S2の圧力の情報は、制御部38に送信される。
【0045】
制御部38は、通路7及び各空間の圧力の情報に基づいて、給気ファン31及び排気ファン34の動作と、各給気ダンパ33及び各排気ダンパ36の開度を調節する。これにより、居室空間S2の圧力がロビー空間S1及び通路7の圧力よりも小さくなるように自動調整される。ロビー空間S1の圧力は、通路7の圧力よりも小さくてもよく、通路7の圧力と等しくてもよい。
【0046】
居室空間S2と、ロビー空間S1及び通路7との差圧によって、ロビー区画扉15が一時的に開放されても、居室空間S2のウイルスを含んだ空気の移動が抑制される。
【0047】
(作用効果)
本実施形態の浮体1は、下記作用効果を奏する。
本実施形態では、浮体1は、主室8を通路7側のロビー空間S1と奥側の居室空間S2とに区画する第一位置P1と、ロビー空間S1と居室空間S2とを開放して主室8の壁面8aに沿う開放位置P2との間で開閉可能なロビー区画扉15を備える。このため、ロビー区画扉15を開放位置P2に配置することで、居室空間S2とロビー空間S1とを一体化することができる。なお、ロビー区画扉15は、開放位置P2では壁面8aに沿うため、居室空間S2とロビー空間S1との間の移動の妨げになることがない。また、ロビー区画扉15を第一位置P1に配置することで、居室空間S2とロビー空間S1とを分けて使用することができる。このように、状況に応じて空間の使用タイプを転換することができる。
【0048】
例えば、居室空間S2に感染者を隔離する必要が無い場合、ロビー区画扉15を開放位置P2に配置して、居室空間S2とロビー空間S1とを一体化する。なお、ロビー区画扉15を開放した時、居室空間S2の給気ダクト32及び排気ダクト35のみ使用してもよく、ロビー空間S1の給気ダクト32及び排気ダクト35のみ使用してよく、居室空間S2及びロビー空間S1の両方の給気ダクト32及び排気ダクト35を使用してもよい。また、居室空間S2に感染者を隔離する必要がある場合、ロビー区画扉15を第一位置P1に配置して、居室空間S2からロビー空間S1にウイルスを含んだ空気が移動することを抑制することができる。
【0049】
また、浮体1は、居室空間S2の圧力がロビー空間S1及び通路7の圧力よりも小さくなるように、通路7、ロビー空間S1、及び居室空間S2の圧力を調整する圧力調整部30と、をさらに備える。これにより、居室空間S2の圧力を、ロビー空間S1及び通路7の圧力よりも小さくすることで、ロビー区画扉15が一時的に開放されても、居室空間S2とロビー空間S1との差圧により居室空間S2のウイルスを含んだ空気がロビー空間S1及び通路7に移動することを抑制することができる。
このように、本実施形態によれば、ウイルスを含んだ空気の移動を確実に抑制し、感染対策を十分に達成することができる浮体1を提供する。
【0050】
本実施形態では、ロビー区画扉15は、ヒンジ16によって開閉可能とされている。これにより、簡単な構成で、居室空間S2の解放時に、ロビー区画扉15を主室8の壁面8aに沿うように配置することができる。したがって、コストを抑えつつ、主室8の利便性を向上させることができる。
【0051】
本実施形態では、扉枠40には、第一位置P1のロビー区画扉15の側縁に沿って、ロビー区画扉15と扉枠40との隙間を閉塞するパッキン17が設けられている。これにより、居室空間S2とロビー空間S1との区画時に、ロビー区画扉15と扉枠40との隙間から居室空間S2の空気がロビー空間S1及び通路7に移動することを良好に抑制することができる。さらに、下側のパッキン17は変形容易であるため、下側のパッキン17がロビー区画扉15から受ける荷重によってシール機能が減衰することを抑制することができる。したがって、居室空間S2に感染者を隔離している場合に、居室空間S2からウイルスを含んだ空気が外部に移動することを抑制することができる。よって、ウイルスが他者に感染することをより確実に抑制することができる。
【0052】
本実施形態では、ロビー空間S1に折りたたみ式のテーブル14を備える。これにより、居室空間S2とロビー空間S1との区画時に、通路7からロビー空間S1に運びこまれた物資をテーブル14上に配置した後、居室空間S2を開放してテーブル14上の物資を居室空間S2に運びこむことができる。したがって、感染者に必要な物資を供給する際、他者にウイルスが感染することを抑制することができる。さらに、テーブル14不使用時には、テーブル14を折りたたむことができる。これにより、主室8の利便性を向上させることができる。
【0053】
本実施形態では、圧力調整部30は、通路用圧力センサ37a、居室用圧力センサ37c、及びロビー用圧力センサ37bの測定した圧力に基づいて、通路7、ロビー空間S1、及び居室空間S2の圧力を自動調整する。これにより、各空間の圧力に基づいて通路7の圧力、ロビー空間S1の圧力、及び居室空間S2の圧力を自動制御することができる。このため、各空間の圧力が変動したとしても、居室空間S2の圧力を、ロビー空間S1及び通路7の圧力よりも小さい状態で維持することができる。したがって、居室空間S2に感染者を隔離している場合に、ロビー区画扉15が一時的に開放されても、居室空間S2からウイルスを含んだ空気が外部に移動することを抑制することができる。よって、ウイルスが他者に感染することを、より確実に抑制することができる。
【0054】
本実施形態では、居室空間S2の壁面8aには、窓18が設けられている。これにより、居室空間S2内の感染者は、居室空間S2から外出することなく、主室8の外の景色を見ることができる。また、居室空間S2とロビー空間S1とを区画した状態で、居室空間S2を外部から観察することができる。したがって、居室空間S2に感染者を隔離している場合に、居室空間S2に入ることなく感染者の様子を観察することができる。
【0055】
本実施形態では、ロビー区画扉15には、覗き窓15aが設けられている。これにより、覗き窓15aを通じて、ロビー空間S1から居室空間S2内の状況を確認することができる。
【0056】
続いて、変形例について説明する。ロビー区画扉15は、制御部38と連動するように設けられてもよい。具体的に、浮体1は以下のように構成されていてもよい。
例えば、ロビー区画扉15には、扉用制御部と、ロック機構とが内蔵される。感染対策として、ロビー空間S1と居室空間S2とがロビー区画扉15によって区画された際、ロビー空間S1の圧力が居室空間S2の圧力よりも小さい場合は、制御部38からロビー区画扉15の扉用制御部に信号が送られる。信号を受信した扉用制御部は、ロビー区画扉15のロック機構に指令を送り、ロック機構よってロビー区画扉15がロックされる。これにより、ロビー区画扉15の閉塞状態が維持される。ロビー空間S1の圧力が居室空間S2の圧力よりも大きくなると、制御部38からロビー区画扉15の扉用制御部に信号が送られ、扉用制御部は、ロック機構にロビー区画扉15のロックを解除させる。
【0057】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
なお、上記実施形態では、主室8内は、居室空間S2と、ロビー空間S1と、水回り空間S3とに仕切られているとしたが、これに限るものではない。主室8内は、水回り空間S3がなく、居室空間S2と、ロビー空間S1とに仕切られていてもよい。
【0058】
なお、上記実施形態では、浮体1は、主室8内に、ワードローブ19と、ベッド20と、椅子22と、机21と、タンス23と、テレビ24と、浴槽27と、シャワー(不図示)と、トイレ28と、手洗い台29と、備えるとしたが、主室8内の家具及び備品等は適宜変更可能である。例えば、主室8内には、ワードローブ19とベッド20は設けられていなくてもよい。
【0059】
<付記>
各実施形態に記載の浮体1は、例えば以下のように把握される。
【0060】
(1)第1の態様に係る浮体1は、通路7及び前記通路7に接続された主室8を有する浮体本体2と、前記通路7と前記主室8との間に設けられた主扉8bと、前記主室8内に設けられて、前記主室8を通路7側のロビー空間S1と奥側の居室空間S2とに区画する第一位置P1と、前記ロビー空間S1と前記居室空間S2とを開放して前記主室8の壁面8aに沿う開放位置P2との間で開閉可能なロビー区画扉15と、前記居室空間S2の圧力が前記ロビー空間S1及び前記通路7の圧力よりも小さくなるように、前記通路7、前記ロビー空間S1、及び前記居室空間S2の圧力を調整する圧力調整部30と、を備える。
【0061】
本態様によれば、ロビー区画扉15を開放位置P2に配置することで、居室空間S2とロビー空間S1とを一体化することができる。また、ロビー区画扉15を第一位置P1に配置することで、居室空間S2とロビー空間S1とを分けて使用することができる。さらに、居室空間S2の圧力を、ロビー空間S1及び通路7の圧力よりも小さくすることで、居室空間S2の空気がロビー空間S1及び通路7に移動することを抑制することができる。
【0062】
(2)第2の態様の浮体1は、(1)の浮体1であって、前記ロビー区画扉15は、ヒンジ16によって開閉可能とされていてもよい。
【0063】
本態様によれば、簡単な構成で、居室空間S2の解放時に、ロビー区画扉15を主室8の壁面8aに沿うように配置することができる。
【0064】
(3)第3の態様の浮体1は、(2)の浮体1であって、前記第一位置P1の前記ロビー区画扉15を外側から囲う扉枠40を備え、前記扉枠40には、前記第一位置P1の前記ロビー区画扉15の側縁に沿って、前記ロビー区画扉15と前記扉枠40との隙間を閉塞するパッキン17が設けられ、前記パッキン17のうち下方の前記パッキン17は、変形容易であってもよい。
【0065】
本態様によれば、居室空間S2とロビー空間S1との区画時に、ロビー区画扉15と扉枠40との隙間から居室空間S2の空気がロビー空間S1及び通路7に移動することを良好に抑制することができる。さらに、下側のパッキン17は変形容易であるため、下側のパッキン17がロビー区画扉15から受ける荷重によってシール機能が減衰することを抑制することができる。
【0066】
(4)第4の態様の浮体1は、(1)から(3)のいずれかの浮体1であって、前記ロビー空間S1に折りたたみ式のテーブル14を備えてもよい。
【0067】
本態様によれば、居室空間S2とロビー空間S1との区画時に、通路7からロビー空間S1に運びこまれた物資をテーブル14上に配置した後、居室空間S2を開放してテーブル14上の物資を居室空間S2に運びこむことができる。さらに、テーブル14不使用時には、テーブル14を折りたたむことができる。
【0068】
(5)第5の態様の浮体1は、(1)から(4)のいずれかの浮体1であって、前記圧力調整部30は、前記通路7に配置され、前記通路7の圧力を測定する通路用圧力センサ37aと、前記居室空間S2に配置され、前記居室空間S2の圧力を測定する居室用圧力センサ37cと、前記ロビー空間S1に配置され、前記ロビー空間S1の圧力を測定するロビー用圧力センサ37bと、を有し、前記圧力調整部30は、前記通路用圧力センサ37a、前記居室用圧力センサ37c、及び前記ロビー用圧力センサ37bの測定した圧力に基づいて、前記通路7、前記ロビー空間S1、及び前記居室空間S2の圧力を自動調整してもよい。
【0069】
本態様によれば、通路7の圧力、ロビー空間S1の圧力、及び居室空間S2の圧力を自動制御することができる。
【0070】
(6)第6の態様の浮体1は、(1)から(5)のいずれかの浮体1であって、前記居室空間S2の前記壁面8aには、窓18が設けられていてもよい。
【0071】
本態様によれば、居室空間S2内の感染者は、居室空間S2から外出することなく、主室8の外の景色を見ることができる。
【符号の説明】
【0072】
1…浮体 2…浮体本体 2a…外板 3…上部構造 4…舷側 4a…舷側外板 5…船底 5a…船底外板 6…上甲板 7…通路 7a…第一出入口 8…主室 8a…壁面 8b…主扉 9…外殻 10…内壁 11…第一内壁 12…第二内壁 12a…第二出入口 13…第三内壁 13a…第三出入口 14…テーブル 15…ロビー区画扉 15a…覗き窓 15b…操作部 16…ヒンジ 17…パッキン 18…窓 18a…筒部 18b…窓本体 19…ワードローブ 20…ベッド 21…机 22…椅子 23…タンス 24…テレビ 25…アーム 26…水回り区画扉 27…浴槽 28…トイレ 29…手洗い台 30…圧力調整部 31…給気ファン 32…給気ダクト 32a…通路用給気ダクト 32b…ロビー用給気ダクト 32c…居室用給気ダクト 33…給気ダンパ 33a…通路用給気ダンパ 33b…ロビー用給気ダンパ 33c…居室用給気ダンパ 34…排気ファン 35…排気ダクト 35a…通路用排気ダクト 35b…ロビー用排気ダクト 35c…居室用排気ダクト 36…排気ダンパ 36a…通路用排気ダンパ 36b…ロビー用排気ダンパ 36c…居室用排気ダンパ 37…圧力センサ 37a…通路用圧力センサ 37b…ロビー用圧力センサ 37c…居室用圧力センサ 38…制御部 39a…給気ライン 39b…排気ライン 40…扉枠 D1…第一方向 D2…第二方向 P1…第一位置 P2…開放位置 S1…ロビー空間 S2…居室空間 S3…水回り空間