(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023106242
(43)【公開日】2023-08-01
(54)【発明の名称】ステップ構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/22 20060101AFI20230725BHJP
B60R 19/48 20060101ALI20230725BHJP
B62D 33/00 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
B62D25/22
B60R19/48 V
B62D33/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022007456
(22)【出願日】2022-01-20
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 販売日 令和3年12月17日 販売した場所 日産自動車販売株式会社(東京都港区三田2-17-20)
(71)【出願人】
【識別番号】000154912
【氏名又は名称】株式会社北村製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】八幡 純
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203AA12
3D203CB33
3D203CB38
3D203DA26
(57)【要約】
【課題】弾性部材を用いずともステップの出し入れを行うことができるステップ構造を提供する。
【解決手段】ステップ5と、ステップ5を引き出し状態から収納状態まで案内する案内レール4と、を備えた貨物自動車のステップ構造3であって、ステップ5は、ステップ5を案内レール4に沿って移動させるローラとして第1のローラと第2のローラを備え、案内レール4は、ステップ5の引き出し方向の手前側が高くなるように傾斜して設けられるとともに、ステップ5の引き出し状態及び収納状態で前記ローラを落とし込みステップを位置決めするための凹部として第1の位置決め部、第2の位置決め部および第3の位置決め部を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステップと、前記ステップを引き出し状態から収納状態まで案内する案内レールと、を備えた貨物自動車のステップ構造であって、
前記ステップは、前記ステップを前記案内レールに沿って移動させるローラを備え、
前記案内レールは、前記ステップの引き出し方向の手前側が高くなるように傾斜して設けられるとともに、前記ステップの前記引き出し状態及び前記収納状態で前記ローラを落とし込み前記ステップを位置決めするための凹部を備えたことを特徴とするステップ構造。
【請求項2】
前記ステップの抜け止め手段として、
前記案内レールに備えた案内側当接板と、前記ステップに備えたステップ側当接板とを備え、前記ステップの前記引き出し状態で前記案内側当接板と前記ステップ側当接板を当接可能とするものとすることを特徴とする請求項1に記載のステップ構造。
【請求項3】
前記案内レールに前記引き出し状態の前記ステップを水平状態に保持する保持部を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のステップ構造。
【請求項4】
前記引き出し状態の前記ステップは、下方を前記ローラと前記保持部によって支持され、上方を前記案内側当接板によって支持されるものとすることを特徴とする請求項3に記載のステップ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は貨物自動車におけるステップ構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、貨物自動車の荷箱の下方に出し入れ可能なステップを固設し、作業者はこのステップを利用して荷箱への乗り降りを行っていた。(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のステップ構造は、ステップの出し入れ動作にコイルスプリングを用いており、このようなコイルスプリング等の弾性部材を用いたステップ構造では、ステップの繰り返し動作による弾性部材のへたりや破損を考慮しなければならないという問題があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、弾性部材を用いることなく、ステップの出し入れを行うことができるステップ構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、ステップと、前記ステップを引き出し状態から収納状態まで案内する案内レールと、を備えた貨物自動車のステップ構造であって、前記ステップは、前記ステップを前記案内レールに沿って移動させるローラを備え、前記案内レールは、前記ステップの引き出し方向の手前側が高くなるように傾斜して設けられるとともに、前記ステップの前記引き出し状態及び前記収納状態で前記ローラを落とし込み前記ステップを位置決めするための凹部を備えたことを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、前記ステップの抜け止め手段として、前記案内レールに備えた案内側当接板と、前記ステップに備えたステップ側当接板とを備え、前記ステップの前記引き出し状態で前記案内側当接板と前記ステップ側当接板を当接可能とするものとすることを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明は、前記案内レールに前記引き出し状態の前記ステップを水平状態に保持する保持部を備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明は、前記引き出し状態の前記ステップは、下方を前記ローラと前記保持部によって支持され、上方を前記案内側当接板によって支持されるものとすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、傾斜を有する案内レールに案内されるステップは自重により収納状態が保持されるので、弾性部材を用いずともステップの出し入れを行うことができるステップ構造を提供することができる。
【0011】
本発明によれば、引き出し状態をステップの脱落を防ぐことができる。
【0012】
本発明によれば、引き出し状態のステップの水平を保持することができる。
【0013】
本発明によれば、3点の支持により、引き出し状態のステップに使用者の荷重がかかった状態でもステップの水平が保持される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施例を示すステップ構造の引き出し状態を示す斜視図である。
【
図2】同上、ステップ構造の収納状態を示す斜視図である。
【
図3】同上、引き出し状態のステップ構造の使用状態を示す側面図である。
【
図4】同上、引き出し状態のステップ構造の詳細な構成を示す側面図である。
【
図5】同上、収納状態のステップ構造の詳細な構成を示す側面図である。
【
図6】同上、引き出し状態のステップ構造の平面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照して説明する。尚、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。
【実施例0016】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1~
図7は本発明の一実施例を示しており、
図1において符号1は、車体フレーム2上に搭載された荷箱であり、この荷箱1の下方にステップ構造3が配置されている。
【0017】
ステップ構造3は、
図1に示すように、車体フレーム2に固定された左右一対の案内レール4と、この案内レール4に沿ってスライド自在に移動するステップ5とによって構成されている。
【0018】
図4及び
図5に示すように案内レール4は、断面コ字型に形成され、その開口部を内側に向けた状態で左右対称に配置して複数の横フレーム6A~6Cによって一体化している。案内レール4の前端部分と後端部分はそれぞれ前端プレート7と後端プレート8によって閉塞されており、後述する第1のローラと第2のローラが案内レール4から離脱するのを防ぐものである。
【0019】
複数の横フレーム6A~6Cは、案内レール4の前端部分に架設される第1の横フレーム6Aと、案内フレーム4の中央部分に架設される第2の横フレーム6Bと、案内フレーム4の後端部分に架設される第3の横フレーム6Cからなる。
【0020】
案内レール4の底面部4Aは、第1の横フレーム6Aと重なる前端部分に形成された第1の位置決め孔9と、第2の横フレーム6Bと重なる中央部分に形成された第2の位置決め孔10と、第3の横フレーム6Cと重なる後端部分に形成された第3の位置決め孔11とを備えている。また、案内レール6の中央部分の上方には前記ステップ5と当接可能とする案内側当接板4Bが架設されている。
図3に示すように案内レール4は、その前端部分が後端部分より低く傾斜するようにその前後を第1の取付金具12及び第2の取付金具13によって車体フレーム2に設置されているため、案内レール4の底面部4Aは後方から前方に向けて下向きに傾斜している。つまり、案内レール4は、ステップ5の引き出し方向の手前側(
図3~
図5のX方向における右方向)が高くなるように傾斜して設けられている。
【0021】
第1の横フレーム6Aは、前後一対の前壁部6A1と後壁部6A2と、前壁部6A1と後壁部6A2の下端同士を連結する底面部6A3と、後壁部6A2の上端から後方に延設された第1のフランジ部6A4を備えた、上部に開口部を有するフレーム材となっている。
【0022】
第2の横フレーム6Bは、前後一対の前壁部6B1と後壁部6B2と、前壁部6B1と後壁部6B2の下端同士を連結する底面部6B3と、前壁部6B1の上端から前方に延設された第2のフランジ部としての第2の前側フランジ部6B4と、後壁部6B2の上端から後方に延設された第2のフランジ部としての第2の後側フランジ部6B5を備えた、上部に開口部を有するフレーム材となっている。
【0023】
第3の横フレーム6Cは、前後一対の前壁部6C1と後壁部6C2と、前壁部6C1と後壁部6C2の下端同士を連結する底面部6C3と、前壁部6C1の上端から前方に延設された第3のフランジ部6C4を備えた、上部に開口部を有するフレーム材となっている。
【0024】
第2の横フレーム6Bの第2の前側フランジ部6B4と第2の後側フランジ部6B5の両端部分には、それぞれ案内レール4の第2の位置決め孔10の周囲において下方へ立設された雄螺子部14、15が挿通可能な取付孔6B6、6B7を備えている。第2の横フレーム6Bは、この取付孔6B6、6B7に案内レール4の雄螺子部14、15を挿通した後、雄螺子部14、15に雌螺子部16、17を螺合することで、案内レール4に取り付けられるものである。
【0025】
第3の横フレーム6Cの後方には、引き出し状態のステップ5の底面を支持してステップ5を水平状態に保持するための保持部18を備えている。保持部18は、第3の横フレーム6に取り付けられる取付片19と、ステップ5の底面に当接する樹脂又は金属製の板材からなる当接片20を備えている。
【0026】
取付片19は、第3の横フレーム6Cの底面部6C3と後壁部6C2に沿うように形成された側面視L型の取付部21と、取付部21の後方上端から後方へ水平に延設された水平部22を備えている。
【0027】
取付部21には、第3の横フレーム6Cの底面部6C3から下方へ立設された雄螺子部23が挿通可能な取付孔24を備えている。保持部18は、この取付孔24に第3の横フレーム6Cの雄螺子部23を挿通した後、雄螺子部23に雌螺子部25を螺合することで、第3の横フレーム6Cに取り付けられるものである。
【0028】
水平部22の上部には、当接片20がビス等の固定手段26によって水平状態が保持されるように取り付けられている。
【0029】
案内側当接板4Bは、左右一対の取付片27と、取付片27の上端同士を連結する当接部28を備えている。取付片27は、前後方向、すなわちステップ5の引き出し方向(X方向)と平行な溝部29を備えている。この取付片27の溝部29に案内レール4の外側面から立設された雄螺子部30を挿通した状態で、雄螺子部30に雌螺子部31を螺合することで、取付片27はステップ5の引き出し方向(X方向)に位置調整可能に取り付けられる。案内側当接板4Bは、溝部29に沿って案内レール4に対して移動させることで位置調整可能とする。
【0030】
当接部28は、案内レール4と平行に形成された底面部32と、底面部32の前端部分から上方向に立設された当接面部33を備えた略L型のフレーム材となっている。尚、底面部32は、ステップ5の上下方向の動作を阻害しないように案内レール4と上下方向の間隔を有している。すなわち、底面部32はステップ5が接触しないようになっている。当接面部33は、垂直方向と平行となるように設定されている。
【0031】
また、案内レール4の上面部4Cには、ステップ5の上下方向の動作に伴い、ステップが案内レール4の上から外側に脱落することを防ぐための断面L型状のフレーム材からなる振れ止め材34を備えている。
【0032】
図4~
図6に示すようにステップ5は、その両側に前記案内レール4に係合する左右一対のガイド杆35を有し、その後端側にステップ板36を固定している。ステップ板36の後端には取手5Aが設置される。また、ガイド杆35の前端側の上部には、ステップ側当接板37が架設されている。各ガイド杆35の前端部分と中央部分とに軸受部38、39をそれぞれ備えており、この軸受部38、39には案内レール4の底面部4A上を転動する第1のローラ40及び第2のローラ41が装着される。各ガイド杆11の外側面には樹脂又は金属製の板材からなるスペーサー材42を備えており、第1のローラ40と第2のローラ41が案内レール4内の側面に衝突するのを防いでいる。尚、ステップ5は車両のディパーチャーアングルに配慮して設定されている。
【0033】
第1の位置決め孔9と第1の横フレーム6Aは、ステップ構造3の収納状態においてステップ5の第1のローラ40を落とし込んで位置決めするための凹部である第1の位置決め部43となる。
【0034】
第2の位置決め孔10と第2の横フレーム6Bは、ステップ構造3の収納状態においてステップ5の第2のローラ41を落とし込んで位置決めするための凹部である第2の位置決め部44となる。
【0035】
第3の位置決め孔11と第3の横フレーム6Cは、ステップ構造3の引き出し状態においてステップ5の第2のローラ41を落とし込んで位置決めするための凹部である第3の位置決め部45となる。
【0036】
以上の構成のステップ構造3の使用方法について説明する。まず、ステップ5の取付方法について説明する。
図5に示すように案内レール4から第2の横フレーム6Bと保持部18を取り外した状態で、ステップ5を第1のローラ40から案内レール4に入れた後、案内レール4に第2の横フレーム6Bと保持部18を取り付ける。
【0037】
次に、ステップ5の引き出し方法について説明する。
図5にある収納状態にあるステップ5の取手5Aを掴み、引き上げるように手元に引くことで、第1の位置決め部43に落とし込まれていた第1のローラ40と第2の位置決め部44に落とし込まれていた第2のローラ41はそれぞれ案内レール4の底面部4Aに引き上げられ、更に取手5Aを引いていき、案内側当接板4Bとステップ側当接板37が当接し、第2のローラ41が第3の位置決め部45に落とし込まれるまで取手5Aを手前に引いたところで、取手5Aから手を離すと、第1のローラ40は案内レール4の底面部4Aに乗ったままで、ステップ5の底面は保持部18に支持された状態となり、ステップ5は引き出し状態となる。
【0038】
ここで、引き出し状態のステップ5は、下方を第1のローラ40と保持部18によって支持され、上方を案内側当接板4Bによって支持されており、この3点の支持によりステップ板36に使用者が乗った状態でもステップ5の水平が保持される。
【0039】
続いて、ステップ5の収納方法について説明する。
図4に示すような引き出し状態のステップ5の取手5Aを持ち上げ、押し込むことで、第3の位置決め部45に落とし込まれていた第2のローラ41は案内レール4の底面部4Aに引き上げられる。さらにステップ5を押し込んでいき、第1のローラ40が第1の位置決め部43に落とし込まれるとともに第2のローラ41が第2の位置決め部44に落とし込まれるまでステップ5を押し込んだところで、取手5Aから手を離すと、ステップ5は収納状態となる。そして、傾斜を有する案内レール4に案内されるステップ5は自重により収納状態が保持される。尚、収納状態のステップ構造3は、ステップ5は車体フレーム2より突出しない構造としている。
【0040】
以上のように本実施例では、ステップ5と、ステップ5を引き出し状態から収納状態まで案内する案内レール4と、を備えた貨物自動車のステップ構造3であって、ステップ5は、ステップ5を案内レール4に沿って移動させるローラとして第1のローラ40と第2のローラ41を備え、案内レール4は、ステップ5の引き出し方向の手前側が高くなるように傾斜して設けられるとともに、ステップ5の引き出し状態及び収納状態で前記ローラ40、41を落とし込みステップ5を位置決めするための凹部として第1の位置決め部43、第2の位置決め部44および第3の位置決め部45を備えたことにより、傾斜を有する案内レール4に案内されるステップ5は自重により収納状態が保持されるので、弾性部材を用いずともステップ5の出し入れを行うことができるステップ構造3を提供することができる。また、本実施例のステップ構造3では、ステップ5を引き出し状態及び収納状態で位置決めロックする設定及び設定解除の操作を専用の固定部材を用いて行う手間を省くことができるとともに、ステップ構造3の部品点数の削減を図ることができる。また、本実施例のステップ構造3は、第1のローラ40及び第2のローラ41の第1の位置決め部43、第2の位置決め部44および第3の位置決め部45への落とし込みと、傾斜した案内レール4により、ステップ5を引き出し状態と収納状態で確実に位置決めすることができる。
【0041】
また、本実施例では、ステップ5の抜け止め手段として、案内レール4に備えた案内側当接板4Bと、ステップ5に備えたステップ側当接板37とを備え、ステップ5の引き出し状態で前記案内側当接板4Bとステップ側当接板37を当接可能とすることで、引き出し状態のステップ5の脱落を防ぐことができる。
【0042】
また、本実施例では、案内レール4に引き出し状態のステップ5を水平状態に保持する保持部18を備えたことにより、引き出し状態のステップ5の水平を保持することができる。
【0043】
また、本実施例では、引き出し状態のステップ5は、下方を第1のローラ40と保持部18によって支持され、上方を案内側当接板4Bによって支持されており、この3点の支持によりステップ板36に使用者の荷重がかかった状態でもステップ板36の水平が保持される。
【0044】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。例えば、ステップのローラや位置決め部の数や位置は適宜変更可能である。