(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023001063
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】電荷キャリア発生源
(51)【国際特許分類】
H01J 27/08 20060101AFI20221222BHJP
H01J 37/08 20060101ALI20221222BHJP
【FI】
H01J27/08
H01J37/08
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022094238
(22)【出願日】2022-06-10
(31)【優先権主張番号】10 2021 115 731.5
(32)【優先日】2021-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】519133020
【氏名又は名称】スキア システムズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100104765
【弁理士】
【氏名又は名称】江上 達夫
(74)【代理人】
【識別番号】100131015
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 浩誉
(72)【発明者】
【氏名】エンリコ ルース
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ネスラー
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101AA31
5C101DD03
5C101DD25
5C101DD30
(57)【要約】 (修正有)
【課題】経時的な変化を軽減または回避する電荷キャリア生成源が提供される。
【解決手段】電荷キャリアを提供するように構成されたキャリア生成領域120と、グリッド電極106と、を備え、グリッド電極は、導電性キャリアを含み、キャリアは、第1の側面と、第1の側面と対向する第2の側面とを有し、第1の側面は、キャリア生成領域に直接隣接し、キャリアは、第1の側面からキャリアを通って第2の側面に延びる複数のスルーホール116を有し、複数のスルーホール各々は、第1の側面に第1の開口面を有し、複数のスルーホール各々は、第2の側面に第2の開口面を有し、第1の開口面は、第2開口面よりも大きい電荷キャリア生成源100。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電荷キャリアを提供するように構成されたキャリア生成領域(120)と、
グリッド電極(106)と、
を備え、
前記グリッド電極(106)は、導電性キャリアを含み、
キャリアは、第1の側面と、前記第1の側面と対向する第2の側面とを有し、
前記第1の側面は、前記キャリア生成領域(120)に直接隣接し、
前記キャリアは、前記第1の側面から前記キャリアを通って前記第2の側面に延びる複数のスルーホール(116)を有し、
前記複数のスルーホール(116)各々は、前記第1の側面に第1の開口面を有し、
前記複数のスルーホール(116)各々は、前記第2の側面に第2の開口面を有し、
前記第1の開口面は、前記第2開口面よりも大きい
電荷キャリア生成源(100)。
【請求項2】
前記複数のスルーホール(116)は、前記キャリアを通る前記複数のスルーホール(116)の断面領域の使用が、前記グリッド電極(106)の磨耗を調整するように構成される
請求項1に記載の電荷キャリア発生源(100)。
【請求項3】
前記複数のスルーホール(116)は、前記第1の側面から前記第2の側面に向かってテーパ状に形成されている
請求項1又は2に記載の電荷キャリア発生源(100)。
【請求項4】
前記複数のスルーホール(116)は、円錐形状を有する
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電荷キャリア発生源(100)。
【請求項5】
前記第1の開口面及び/又は前記第2の開口面は、円形又は略円形である
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電荷キャリア発生源(100)。
【請求項6】
前記キャリア生成領域(120)において、キャリアプラズマを生成するように構成されたキャリア生成デバイスをさらに備える
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の電荷キャリア発生源(100)。
【請求項7】
前記グリッド電極(106)で電位を形成するように構成された制御デバイスをさらに備える
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の電荷キャリア発生源(100)。
【請求項8】
前記キャリア発生領域(120)から前記複数のスルーホール(116)を通るキャリアの流れを制御するように構成された制御デバイスをさらに備える
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の電荷キャリア発生源(100)。
【請求項9】
前記グリッド電極(106)は、第1のグリッド電極(106)であり、
当該電荷キャリア発生源(100)は、第2のグリッド電極(104)をさらに備え、
前記第2のグリッド電極(104)は、前記第1のグリッド電極(106)の第2の側面から離間(lg)され、
前記第2のグリッド電極(104)は、一又は複数のスルーホール(114)を含む
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の電荷キャリア発生源(100)。
【請求項10】
前記第2のグリッド電極(104)の前記一又は複数のスルーホール(114)は、キャリアが前記キャリア発生領域(120)から、前記第1のグリッド電極(106)の前記複数のスルーホール(116)及び前記第2のグリッド電極(104)の前記一又は複数のスルーホール(114)を通るように、前記第1のグリッド電極(106)の前記複数のスルーホール(116)に対して配置される
請求項9に記載の電荷キャリア発生源(100)。
【請求項11】
第1の電位を前記第1のグリッド電極(106)に印加し、前記第1の電位とは異なる第2の電位を前記第2のグリッド電極(104)に印加するように構成された制御デバイスをさらに備える
請求項9又は10に記載の電荷キャリア発生源(100)。
【請求項12】
前記複数のスルーホールが第1の複数のスルーホール(402)であり、
前記キャリアは、第2の複数のスルーホール(404、406、408、410)を含み、
前記第2の複数のスルーホール(404、406、408、410)は、前記第1の側面から前記キャリアを通って前記第2の側面に延びており、
前記第2の複数のスルーホール(404、406、408、410)各々は、前記第1の側面に第3の開口面を有し、
前記第2の複数のスルーホール(404、406、408、410)各々は、第2の側面に第4の開口面を有し、
前記第3の開口面は前記第4の開口面より大きく、
前記第1の開口面は前記第3の開口面と異なり、及び/又は、前記第2の開口面は前記第4の開口面と異なる
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の電荷キャリア発生源(100)。
【請求項13】
前記第1の複数のスルーホール(402)と前記第2の複数のスルーホール(404、406、408、410)とは互いに同心である
請求項12に記載の電荷キャリア発生源(100)。
【請求項14】
前記第2の複数のスルーホール(402、404、406、408、410)の複数のスルーホールは、前記第1の側面及び前記第2の側面に互いに異なる開口面を有する
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の電荷キャリア発生源(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電荷キャリア発生源に関する。
【背景技術】
【0002】
工業的には、例えば、物質が多すぎ又は少なすぎ、部品の表面に凹凸があり、表面が対象の形状(即ち、対象の表面)から逸脱する場合に、コーティングされた半導体又は他の部品表面の表面を処理するために複数の処理が使用される。
【0003】
種々の表面処理は、例えば、指向性電荷キャリアビームに基づいている。電荷キャリアビームは、電荷キャリア、例えばイオンビーム又は電子線から構成される。
【発明の概要】
【0004】
図1は、従来の電荷キャリアビーム源10の部分を概略的に示す。電荷キャリアビーム12は、電荷キャリア、例えばイオン又は電子を、キャリア生成領域20から、例えばプラズマから取り出すことによって、電荷キャリアビーム源10内で生成される。キャリア発生領域20を離れた後、電荷キャリアは、電荷キャリア出口方向に、チャンバ内で指向的かつビーム状(湾曲又は直線状)に移動する。
【0005】
電荷キャリアビーム源10は、キャリア発生領域20から電荷キャリアを所定の方向に抽出し、加速し、任意に偏向させるために、第1の電極16と、電荷キャリアを抽出する第2の電極14とを有する。電極14、16は、少なくともいくつかの領域に導電性材料、例えば黒鉛を有する。電位Vtを電極14、16に印加して、電荷キャリアを抽出し、加速するか、又は電荷キャリア(サブ)ビームを遮断することができる。個々の電極に電位が印加されると、電荷キャリアは、電荷キャリア(サブ)ビームとして、電極のスルーホールを通過することができる。通常、少なくとも2つの電極が、一方が他方の後ろに配置された層に設けられる。電極はプラズマ、スクリーン又はビーム電極16、加速又は加速電極14と呼ばれる。任意選択の第3の電極は、その機能に応じてグリッド3又は接地電極(図示せず)と呼ばれる。
【0006】
第2の電極14は、第1の電極16から離間l
gに配置される。電極14、16は、それぞれ、抽出される電荷キャリアが通過する少なくとも1つのスルーホールを有する。電極14,16のスルーホールは互いに対応している。電極14、16は、その横方向寸法がそれらの厚さよりも何倍も大きい、ほとんど平面構成要素である。
図1に示すように、キャリア発生領域20に最も近い第1の極16は厚さt
sを有し、少なくとも1つのスルーホールは直径d
sを有する。スルーホールは、電極14、16の厚さ全体にわたって厚さ方向に延在し、電荷キャリアが電極14、16を通過することを可能にする。電極14、16は、電荷キャリアに対して透過性である複数のスルーホールを有するグリッド形状を有してもよく、電極は、グリッド電極とも呼ばれる。
【0007】
従来技術では、第1電極16の少なくとも1つのスルーホールは、第1電極16の厚さtsに亘って略均一な円筒状をなしている。言い換えれば、関連する技術では、第1の電極16におけるスルーホールは、電荷キャリア出射方向に垂直な全ての厚さ平面において同じ領域を有する。
【0008】
第1の電極16と接触すると、プラズマは、電荷キャリア移動度のために規定された厚さのプラズマ境界層を形成する。プラズマ境界層厚さはエネルギー(電子温度)と電荷キャリア密度(Child―Langmuir方程式)に依存する。グリッド正孔の後ろにも続くプラズマ境界層から、電荷キャリアはグリッド正孔を通り抜ける途中で始まる。プラズマ密度によれば、1領域あたりの一定個数の電荷キャリアがスルーホールを介して電荷キャリア電流を開始し、スルーホールの領域にほぼ比例する。同様に、電荷キャリア電流は、抽出電界強度に比例する。
【0009】
キャリア発生領域20において、摩耗することによって、例えば、プラズマ界面18で第1の電極16(以下、プラズマ電極16と呼ぶ)の表面に衝突する荷電キャリアによって、又は、酸素によって、プラズマ電極16の表面から物質が除去される。経時的に、摩耗は、プラズマ電極16の厚さts又はプラズマ電極16のスルーホールの径dsを減少させ、プラズマ電極16のプラズマ界面18における磁界強度を変化させ得る。これにより、電荷キャリア(サブ)ビーム12のキャリア電流が増加し、電荷キャリア(サブ)ビームの安定性が低下し、均一なキャリア電流を維持するためにキャリア電流密度の調整が必要となる場合がある。
【0010】
即ち、円筒状のスルーホールを有する従来の第1の電極16では、第1の電極の摩耗により、プラズマ界面層18と第2の電極14との間隔leが小さくなる。電極14、16間の一定の電位差により、これは、電界強度(電圧/距離)の増加をもたらす。したがって、摩耗は、電荷キャリア抽出電流の増加を引き起こす。
【0011】
様々な実施形態では、上記の欠点の少なくともいくつかを軽減するか、又は完全に回避する電荷キャリア発生源が提供される。
【0012】
一態様では、キャリアを提供するように構成されたキャリア発生源とグリッド電極とを備え、前記グリッド電極は導電性キャリアを含み、キャリアは第1の側面と、前記第1の側面と対向する第2の側面とを有し、前記第1の側面は、前記キャリア発生領域に直接隣接し、前記キャリアは、前記第1の側面から前記キャリアを通って前記第2の側面に延びる複数のスルーホールを有し、前記複数のスルーホール各々は前記第1の側面に第1の開口面を有し、前記複数のスルーホール各々は前記第2の側面に第2の開口面を有し、前記第1の開口面は第2の開口面よりも大きい、キャリア発生源が提供される。
【0013】
スルーホールは、キャリアを通るスルーホールの断面領域の使用が、グリッド電極の装着を調整するように構成されてもよい。このように、スルーホールは、摩耗に依存する時間依存性の第1の開口面が、結果として生じる電荷キャリア抽出電流における電界強度関連の増加を本質的に補償するような方法で、摩耗によって低減されるように構成することができる。
【0014】
少なくとも1つのスルーホールは、電荷キャリア出口方向に垂直な面内で任意の形状を有していてもよい。例えば、形状は、円形、楕円形、楕円形、三角形、多角形、又は不規則であってもよく、異なるスルーホールに対して異なるものであってもよい。例えば、スルーホールの形状は、グリッド電極の第1の側面から第2の側面までその範囲にわたって大きく変化しない。しかしながら、断面領域は、キャリアを通って第1の側から第2の側に延びるにつれて小さくなることがある。この文脈において、「実質的ではない」とは、例えば、スルーホールの楕円形状が維持され得るが、長軸及び短軸の長さの割合は、電荷キャリアビーム出射方向のスルーホールの範囲にわたって変化し得ることを意味する。
【0015】
プラズマ界面での磨耗による電荷キャリア発電装置のグリッド電極の厚さの減少は、例えば、グリッド電極内の円錐形状のスルーホールによって補償され得る。その結果、電荷キャリア生成デバイスからの電荷キャリア電流は、一定又は実質的に一定に維持され得る。円錐形状のスルーホールは、円筒形状のスルーホールの他に簡易な方法で形成してもよい。任意の摩耗補償は、対応する(複雑である)形状のスルーホールによって実現されてもよい。第1の電極(プラズマ電極)の不均一な摩耗は、例えば、スルーホールの角度(円錐度)及び直径を調整することによって補償することができる。
【0016】
電荷キャリア発生源は、いくつかの電極を有することができる。電極は、互いに対応するスルーホールを有する。異なる電極における対応するスルーホールは、電荷キャリア出口方向に垂直な異なる位置に配置され、個々の電極に対応する電位が印加され、電荷キャリアが、電荷キャリアビーム又は電荷キャリアサブビームとして、異なる電極の対応するスルーホールを通過することを可能にするのに適しているスルーホールを意味する用途の意味で理解される。他の電極は、電荷キャリアが出現する方向にグリッド電極(第1電極とも呼ばれる)の後ろに配置される。
【0017】
電荷キャリア発生源は、装置の動作中に異なる電位が印加される少なくとも第1の電極及び第2の電極を有していてもよい。例えば、キャリア発生領域を閉じて遮蔽する第1の電極(プラズマ電極又は格子電極)は、電荷キャリアの電荷に相当する高電位をそれに印加されてもよい。一例として、電荷キャリア発生源によってキャリア発生領域から取り出される電荷キャリアが正電荷イオンである場合、グリッド電極の電位は正電位であるのに対し、負イオン又は電荷キャリアとしての電子ではグリッド電極の電位は負電位である。
【0018】
第2の電極は、キャリア発生領域から電荷キャリア出口(加速電極)の方向に電荷キャリアを加速するために用いられてもよい。動作中、第2の電極は、第1の電極に対して電荷キャリアの電荷とは反対の電位を受けてもよい。これにより、第1電極と第2電極との間に大きな電位差が生じる可能性がある。
【0019】
本発明の実施形態の例を図面に示し、以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図3A】様々な実施形態による装置の効果を示す図である。
【
図3B】様々な実施形態による装置の効果を示す図である。
【
図3C】様々な実施形態による装置の効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の詳細な説明では、その一部を形成し、本発明を実施することができる特定の実施形態を例示目的で示す添付の図面を参照する。この点に関して、「頂」、「底部」、「前部」、「後部」、「前方」、「後方」等のような方向用語は、記載される図の向きを参照して使用される。実施形態の構成要素は、多数の異なる向きに配置されてもよいので、方向用語は、例示の目的のためのものであり、決して限定するものではない。本発明の保護範囲から逸脱することなく、他の実施形態を使用することができ、構造的又は論理的変更を行うことができることを理解されたい。本明細書に記載される様々な例示的な実施形態の特徴は、特に指示がない限り、組み合わされてもよいことが理解される。したがって、以下の詳細な説明は、限定的な意味で解釈されるべきではなく、本発明の保護の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義される。
【0022】
本明細書の文脈では、「接続された」、「取り付けられた」、及び「結合された」という用語は、直接的及び間接的な接続、直接的又は間接的な接続、並びに直接的又は間接的な結合の両方を説明するために使用される。図面において、同一又は類似の要素には、必要に応じて同一の参照符号が付されている。
【0023】
図2A及び
図2Bは、様々な実施形態による電荷キャリア発生源100を概略的に示す。電荷キャリア発生源100は、電荷キャリア発生装置を含むことができる。キャリア生成デバイスは、キャリア生成領域120においてキャリアプラズマを生成するように構成されている。荷電キャリアプラズマは、プラズマ境界108によって
図2A及び
図2Bに示されている。
【0024】
このような電荷キャリア発生源100は、例えば、電荷キャリアビームによって基板の表面を処理するのに適している。電荷キャリア生成源100は、例えば、基板の表面の領域(衝突領域とも呼ばれる)に衝突する電荷キャリアビームを放出するように構成される。電荷キャリア発生源100は、基板の材料をアブレーションする、又は基板の表面上に材料を堆積させるなど、電荷キャリアビームで基板の表面を処理するように構成される。
一実施形態によれば、電荷キャリア生成源100はイオンビーム源であり、電荷キャリアビームは、例えば、ガウス形状の電荷電流分布密度を有する集束イオンビームである。
この例では、イオンビームは、基板から薄膜をアブレーションするために使用される。
イオンビーム源は、ワイドビームイオンビーム源として構成されてもよい。
【0025】
キャリア発生源100は、キャリア発生領域120を含む。キャリア生成領域120は、電荷キャリアを提供するように構成される。電荷キャリアは、例えば、イオン又は電子である。
【0026】
電荷キャリア発生源100は、第1の電極106をさらに備える。第1の電極106は、グリッド電極106、プラズマ電極106、又はスクリーン電極106とも呼ばれる。
【0027】
グリッド電極106は、導電性キャリアを含む。キャリアは、第1の側面と、第1の側面の反対側の第2の側面とを有する。第1の側面は、プラズマ界面108のようなキャリア発生領域120に直接的に隣接している。
【0028】
キャリアは、複数のスルーホール116を含む。スルーホール116は、第1の側面からキャリアを通って第2の側面に延びている。スルーホール116は、それぞれ、第1の側に第1の開口面を有し(直径d
s1によって
図2Aに示される)、スルーホール116は、それぞれ、第2の側に第2の開口面を有する(直径d
s2によって
図2Aに示される)。第1開口面は第2開口面よりも大きい。
【0029】
グリッド電極116は、厚さt
sを有する。グリッド電極116は、
図2Bに示すように、キャリアの第1面における開口の直径d
s又は開口の開口表面が、キャリアの厚さt
sの関数であるように構成されており、ここで、厚さt
sは、着用による時間tの関数である(d
s1=f(t
s(t)))。
【0030】
グリッド電極106のスルーホール116に対応するスルーホール114を有する第2の電極104は、グリッド電極106から間隔lgに配置される。プラズマ界面108から第2の電極104までの距離le1,le2は、第1の電極106の摩耗(le1>le2及びds1>ds3)によって変化する。換言すれば、摩耗により第1の電極の厚さtsを減少させることにより、プラズマ界面108は第2の電極104に向かってシフトする。
【0031】
第2の電極104は、第2のグリッド電極104であってもよい。第2のグリッド電極104は、第1のグリッド電極106の第2の側面からlg離間していてもよい。第2のグリッド電極104は、1つのスルーホール114又は複数のスルーホール114を含むことができる。第2のグリッド電極104のスルーホール114は、キャリア発生領域120からのキャリアが第1のグリッド電極106のスルーホール116を通り、かつ第2のグリッド電極104のスルーホール114を通るように、第1のグリッド電極106のスルーホール116に対して配置されてもよい。
【0032】
スルーホールは、キャリアにおけるスルーホールの断面領域の変化が、キャリアの厚さが第1の側面から減少する(例示的には、第1の側面の第2の側面への移動)ときに、キャリアの第1の側面におけるスルーホールの開口面に「独立した」減少が存在するように構成される。これにより、キャリア引き出し電流のドリフトを補償することができる。スルーホールが摩耗のために最適に設計されている場合、電荷キャリア抽出フローのアクティブ制御はもはや必要ではない。あるいは、制御努力が低減される。したがって、キャリアの厚さtsが経時的に減少するにつれて、キャリアの第1の側面上の開口面を減少させることによって、一定又は実質的に一定のキャリア電流を達成することができる。
【0033】
第2の電極からプラズマ界面までの距離をleとして、以下の関係が考慮されるべきである:
【0034】
【0035】
【0036】
ここで、lgは、第1の電極の厚さts及び第1の電極と第2の電極との間の距離により与えられ、eは電子の電荷であり、ε0は真空誘電率であり、Jmaxはスルーホール当たりの空間電荷制限キャリア電流であり、dsはスルーホールの径であり、Vtはグリッド電極における電圧であり、Mは電荷キャリアの質量である。
【0037】
円筒形スルーホールの場合、電荷キャリア電流J
maxは、
図3Aのダイアグラム310に示すように、第1の電極の厚さt
sが減少するにつれて増大する。
【0038】
しかしながら、様々な実施形態では、スルーホール116は、第1の側から第2の側に向かって先細になる形状を有する。様々な実施形態では、スルーホール116は、円錐形状を有することができる。例えば、第1の開口面及び/又は第2の開口面は、円形又は実質的に円形であってもよい。例えば、スルーホールは、例えば、充電搬送流の消耗誘導変位を正確又は実質的に正確に補償するような断面変化量(d
s(t
s))を有するように構成してもよい。従って、格子電極106のキャリアの第1の側面の開口面は、
図3Bのダイアグラム320に示すように、摩耗によって誘起される厚さt
sの減少によって減少する。その結果、
図3Cのダイアグラム330に示すように、第1の電極106の厚さが減少するにつれて、開口部当たりの電荷キャリアの一定又は実質的に一定の電流を設定することができる。
【0039】
様々な実施形態では、電荷キャリア発生源100は、制御デバイスを含む。制御デバイスは、グリッド電極106に電位を形成するように構成される。制御デバイスは、さらに、スルーホールを通るキャリア発生領域120からの電荷キャリアの流れを制御するように構成されてもよい。
【0040】
制御デバイスは、第1の電位を第1のグリッド電極106に印加し、第1の電位とは異なる第2の電位を第2のグリッド電極104に印加するようにさらに構成されてもよい。
【0041】
制御デバイスは、さらに、電荷キャリアビームを制御するように構成されてもよい。制御デバイスは、電荷キャリアビームのパラメータ及び特性を、自動的に、又は手動で、又は適切な組み合わせで、変更、制御、一時停止、中止、及び/又は再調整するように構成されてもよい。これは、例えば、電荷キャリア生成源の種々の構成要素に対する位置又は電気的動作電流を含むことができる。同様に、この制御デバイスは、ビーム中和デバイスの特性、電荷キャリア発生源のための出力ガスの組成物及びドーズ量、及び/又は様々な構成要素の温度など、電荷キャリアビームの直接的又は間接的パラメータに影響を及ぼすことができる。例えば、加速電圧を変化させることができ、これは、電荷キャリアビーム内の電荷キャリアの運動エネルギーに影響を及ぼす。制御デバイスは、電荷キャリアビーム内の電荷キャリアの数を調整することができるように、電荷キャリア発生源へのガス供給(図示せず)発電プラズマ励起(図示せず)をさらに含み、制御発電調整することができる。キャリア発生源がキャリアビームを維持するために、一般にガス供給が必要とされる場合がある。プラズマ励起は、一般に、供給されたガスから荷電又は非中性電荷キャリアビームのために必要な電荷キャリア(例えば、イオン)を生成するために、荷電キャリアで動作する電荷キャリア生成源に必要とされる。
【0042】
制御デバイスは、プロセッサ、コンピュータ、又は装置の構成要素及びモジュールから個々の信号を受信及び評価し、それらを制御又は調整する他のデータ処理装置(以下、処理モジュールコンピュータPMCと呼ぶ)を含むことができる。PMCは、自由にプログラム可能なプロセッサ(例えば、マイクロプロセッサ又はナノプロセッサ)、ハードワイヤードロジック、又はファームウェア、又は、例えば、特定用途向け集積回路(ASIC)又はフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)であってもよい。PMCと関連しているのは、とりわけ、ビーム源キャリアビームとそのビームプロファイルを制御するためのスイッチ回路によって、キャリアビーム回路と加速回路(加速回路とも呼ばれる)に接続される軸システムである。電荷キャリアビーム回路及び加速器回路は、それぞれ、基本的に互いに技術的に同一であってもよい電源を有してもよい。スイッチ回路はそれぞれ、放射線源と電荷キャリアビーム回路との間、及び/又は放射線源と加速器回路との間に、パワートランジスタなどの電気的に切り替え可能なスイッチを有することができる。スイッチ回路は、電荷キャリアビーム回路及び/又は加速器回路の電位が放射線源に電気的に接続されてもよく、あるいは、接地電位又は他の電位が放射線源に接続されてもよいように構成されてもよい。
【0043】
図4は、様々な実施形態による電荷キャリア発生源100の第1の電極106を示す。様々な実施形態では、複数のスルーホール116は、第1の複数のスルーホール402とすることができ、キャリアは、少なくとも第2の複数のスルーホール404、406、408、410を含むことができる。第2の複数のスルーホール404、406、408、410は、第1の側からキャリアを通って第2の側まで延びることができる。第2の複数個の404、406、408、410のスルーホールはそれぞれ、第1の側面に第3の開口面を有し、第2の複数個のスルーホール404、406、408、410は、第2の側面に第4の開口面を有していてもよい。第3の開口面は、第4の開口面よりも大きくてもよい。第1の開口面は第3の開口面と異なっていてもよく、及び/又は第2の開口面は第4の開口面と異なっていてもよい。第1複数のスルーホール404,406,408,410のうち第1複数のスルーホール402は、互いに同心であってもよい。様々な実施形態では、複数のスルーホール406、408、410を設けることができる。複数は、第1の電極106のキャリアの第1の側面と第2の側面とで互いに異なる開口面を有する。したがって、第1の電極106の空間的磨耗プロファイルを調整することができる。例えば、第1の電極は、第1の電極の中心における(ほぼ)テーパ状スルーホール402から、第1の電極の縁部における(ほぼ)円筒状スルーホール410まで、異なる形状の切頭円錐状スルーホール404、406、408がその間に横方向に配置されるように、第1の電極の中心から縁部に向かってテーパ状に減少するように構成されてもよい。これにより、位置に依存しない定電荷キャリア電流(
図3C)を、第1の電極の表面を横切って設定することが可能になる。例えば、電極の位置依存性装着の場合。一例として、第1の電極106の磨耗は、第1の電極106の端部よりも中心部において顕著であり得る。この位置に依存する摩耗は、位置に依存する異なった形状のスルーホールによって考慮されてもよい。
【外国語明細書】