(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023106302
(43)【公開日】2023-08-01
(54)【発明の名称】接点部片との電気的なケーブルの結合のための方法
(51)【国際特許分類】
H01R 4/18 20060101AFI20230725BHJP
H01R 4/02 20060101ALI20230725BHJP
H01R 43/02 20060101ALI20230725BHJP
H01R 43/048 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
H01R4/18 A
H01R4/02 C
H01R43/02 B
H01R43/048 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200213
(22)【出願日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】22152340
(32)【優先日】2022-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】506058451
【氏名又は名称】コマックス ホルディング アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】KOMAX HOLDING AG
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ペーター・クー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・ツェルツァー
【テーマコード(参考)】
5E051
5E063
5E085
【Fターム(参考)】
5E051LA03
5E051LA06
5E051LB03
5E063CB05
5E063CC06
5E063XA05
5E085BB02
5E085BB12
5E085CC09
5E085DD04
5E085DD14
5E085FF01
5E085FF08
5E085HH06
5E085HH12
5E085HH34
5E085JJ03
5E085JJ36
5E085JJ38
(57)【要約】 (修正有)
【課題】接点部片とケーブルとの間の結合の形成の際のプロセス安定性、並びに、そのような結合の品質を改善する方法を提供する。
【解決手段】ケーブル1の複数の導電性の素線3の軸線方向の端部が圧着領域6の窪み部8内への導入の以前に締付け工具によって固定され、従って複数の導電性の素線の軸線方向の端部が軸線方向に締付け工具から突出し、且つ軸線方向にこの締付け工具から突出する複数の導電性の素線の端部が横方向に切断工具によってせん断され、従って素線3の軸線方向の端部において、閉鎖された端面9が生成すること、複数の導電性の素線の軸線方向の端部が窪み部8内へと導入されること、および閉鎖され窪み部8内において配置された端面9が端面9へと整向された放射線の放射エネルギーによって溶融されることによって複数の導電性の素線が接点部片5と溶接される。
【選択図】
図1a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接点部片(5)との、複数の導電性の素線(3)を有する電気的なケーブル(1)の結合のための方法であって、
その際、前記接点部片(5)に、少なくとも部分的に圧着タブ(7)によって囲繞されている、中央の窪み部(8)を有する圧着領域(6)が成形されており、および、
前記複数の導電性の素線(3)の軸線方向の端部が、前記窪み部(8)内に導入され、且つ、前記圧着タブ(7)との電気的な結合の形成のために加圧される前記方法において、
前記複数の導電性の素線(3)の軸線方向の前記端部が、前記窪み部(8)内への導入の以前に、締付け工具(33)によって固定され、
従って、前記複数の導電性の素線(3)の軸線方向の前記端部が、長さ(L)だけ、軸線方向にこの締付け工具(33)から突出し、且つ、軸線方向にこの締付け工具(33)から突出する前記複数の導電性の素線(3)の前記端部が、横方向に、切断工具(32)によってせん断され、
従って、前記素線(3)の軸線方向の前記端部において、閉鎖された端面(9)が生成すること、
前記複数の導電性の素線(3)の軸線方向の前記端部が、前記窪み部(8)内へと導入されること、および、
閉鎖され、前記窪み部(8)内において配置された、端面(9)が、前記端面(9)へと整向された放射線の放射エネルギーによって溶融されることによって、前記複数の導電性の素線(3)が、前記接点部片(5)と溶接されること、
を特徴とする方法。
【請求項2】
前記閉鎖された端面(9)は、軸線方向に、前記ケーブル(1)と反対側の、前記圧着領域(6)の端縁部(10)から後方に位置ずれされて、前記窪み部(8)内において配置されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
軸線方向に前記締付け工具(33)から突出する、複数の前記素線(3)の前記端部は、前記ケーブル(1)の前記長手方向軸線に対して法線方向にせん断され、
従って、前記端面(9)が、前記ケーブル(1)の前記長手方向軸線に対して法線方向に整向されていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
軸線方向に前記締付け工具(33)から突出する、複数の前記素線(3)の前記端部は、
前記ケーブル(1)の前記長手方向軸線に対して1つの角度(α)でせん断され、
従って、前記端面(9)が、前記ケーブル(1)の前記長手方向軸線に対して1つの角度(α)で整向されていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記窪み部(8)内において配置された前記端面(9)における、前記放射線の遮光を防止するために、前記端縁部(10)の領域内において、切欠き部(14)が前記圧着タブ(7)内において設けられていることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記端縁部(10)は、前記ケーブル(1)の前記長手方向軸線に対して1つの角度(α)で斜めにされており、且つ、前記端面(9)が、この端縁部(10)の角度より急傾斜の角度で斜めにされていることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記素線(3)の軸線方向の前記端部は、前記せん断の以前に、半径方向において加圧、有利には気密に加圧されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記圧着領域(6)内における、前記接点部片(5)の表面における被覆は、前記圧着の以前に、少なくとも領域的に除去されることを特徴とする請求項1から7のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
溶接領域内における、及び/または、前記窪み部(8)内の前記端面(9)の手前の領域内における前記接点部片(5)の表面における被覆は、前記溶接の以前に、少なくとも領域的に除去されることを特徴とする請求項1から7のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
前記被覆は、放射エネルギーによって除去されることを特徴とする請求項8または9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接点部片との、複数の導電性の素線を有する電気的なケーブルの結合のための方法に関し、
その際、前記接点部片に、少なくとも部分的に圧着タブによって囲繞されている、中央の窪み部を有する圧着領域が成形されており、および、
前記複数の導電性の素線の軸線方向の端部が、前記窪み部内に導入され、且つ、前記圧着タブとの電気的な結合の形成のために加圧される。
【背景技術】
【0002】
電気的なケーブルの調製の際に、しばしば、このケーブルの端部において、例えばケーブルラグまたは接触ピンのような接点部片が装着され、この接点部片でもって、ケーブルの使用の際に、このケーブルとケーブル接続部との間の電気的な結合が形成され得る。
接点部片とのケーブルの結合のために、しばしば、圧着結合が使用され、これら圧着結合によって、電気的なケーブル(もしくは、この電気的なケーブルの電気的な導体)は、接点部片の圧着部分内において圧入される。
接点部片とケーブルとの間の、作動の信頼できる、耐久性のある、且つ、電気的に良好に伝導する結合を形成するために、このケーブルと接点部片とは、圧着の後、同様に例えばレーザー溶接を用いて更に溶接されることも可能である。そのような結合方法は、特許文献1または特許文献2から公知である。
【0003】
この様式の結合方法は、しかしながら、プロセス技術的に手間暇がかかり、且つ、困難性を伴う。
先ず第一に、ケーブルの電気的な導体を露出させるために、その際、この導体を損傷すること無しに、ケーブルの電気的な絶縁部が除去される必要がある。この後、露出された導体部分は、圧着部分内において配置される必要があり、且つ、この圧着部分内において加圧される。その際、その場合に電気的な導体を損傷すること無く、良好な電気的な結合が形成されることは、留意されねばならない。
溶接の際に、溶接飛沫、酸化、または、煙残渣(Schmauchspuren)の状態になり、このことは、ケーブルを同様に阻害する可能性がある。アルミニウムから成る電気的な導体が使用される場合、付加的に、更にこのアルミニウムの表面において迅速に電気的に絶縁性の酸化層が形成し、この酸化層が、導電性を阻害する可能性があり、且つ、溶接の際に阻害を誘起する可能性があることの問題が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第103 58 153A号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第10 2009 056 799A号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、接点部片とケーブルとの間の結合の形成の際のプロセス安定性、並びに、そのような結合の品質を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、
前記複数の導電性の素線の軸線方向の前記端部が、前記窪み部内への導入の以前に、締付け工具によって固定され、
従って、前記複数の導電性の素線の軸線方向の前記端部が、長さだけ、軸線方向にこの締付け工具から突出し、且つ、軸線方向にこの締付け工具から突出する前記複数の導電性の素線の前記端部が、横方向に、切断工具によってせん断され、
従って、前記素線の軸線方向の前記端部において、閉鎖された端面が生成すること、
前記複数の導電性の素線の軸線方向の前記端部が、前記窪み部内へと導入されること、および、
閉鎖され、前記窪み部内において配置された、端面が、前記端面へと整向された放射線の放射エネルギーによって溶融されることによって、前記複数の導電性の素線が、前記接点部片と溶接されること、
によって解決される。
【発明の効果】
【0007】
この素線のせん断によって、ケーブルの軸線方向の端部において、閉鎖された端面が生成し、この端面が、一方では、圧着領域内へのこのケーブルの導入を容易化し、且つ、他方では、同様に圧着の後の端面側の溶接も改善する。これら両方のことは、結合方法のプロセス安定性を向上し、且つ、同様に形成された結合の品質も向上する。
【0008】
前記閉鎖された端面は、軸線方向に、前記ケーブルと反対側の、前記圧着領域の端縁部から後方に位置ずれされて、前記窪み部内において配置される場合、端面側の溶接は改善され得る。
【0009】
それぞれの使用に応じて、
軸線方向に前記締付け工具から突出する、複数の前記素線の前記端部は、前記ケーブルの前記長手方向軸線に対して法線方向にせん断され、
従って、前記端面が、前記ケーブルの前記長手方向軸線に対して法線方向に整向されているか、または、
前記ケーブルの前記長手方向軸線に対して1つの角度でせん断され、
従って、前記端面が、前記ケーブルの前記長手方向軸線に対して1つの角度で整向されている。
【0010】
傾斜した端面は、確かな利点を有している。一方では、基本的に端面の法線方向に照射されるべき、レーザー光線のような放射線が、1つの方向に、ケーブルの長手方向軸線から逸脱して整向されている。このことは、溶接の際の信頼性を向上する。何故ならば、放射線が、これに伴って、ケーブルがこのケーブルの長手軸線方向に導入される、溶接チャンバーのロックゲートから射出可能でないからである。
これに伴って、同様に、それら接点部片において放射線がケーブルの長手軸線方向にこの接点部片の機能部分を通って整向され得ない、該接点部片も溶接され得る。特に、傾斜した端面は、同様に引張強度、および、同様に結合の導電性も改善する。
【0011】
前記窪み部内において配置された前記端面における、前記放射線の遮光を防止するために、前記端縁部の領域内において、切欠き部が前記圧着タブ内において設けられていることが意図されていることは可能である。
【0012】
前記端縁部は、前記ケーブルの前記長手方向軸線に対して1つの角度で斜めにされており、且つ、前記端面が、この端縁部の角度より急傾斜の角度で斜めにされている場合、遮光は、同様に阻止され得る。その際、この端面の領域は、残りの端面よりも、端縁部の近傍に配置されている。これに伴って、端面のより大きな領域が、放射線のために到達可能である。
【0013】
前記素線の軸線方向の前記端部は、前記せん断の以前に、有利には、半径方向において加圧、有利には気密に加圧される。
このことによって生じる、この加圧によって圧縮された、素線の間の少しの中空空間を有する領域は、一方では導電性を改善可能である。他方では、これに伴って、同様に溶接も改善される。何故ならば放射線の放射エネルギーがより良好に軸線方向の端部内へと侵入可能であるからである。
【0014】
しばしば、接点部片の表面において、被覆、例えばニッケル層が存在する。
電気的な結合を改善するために、前記圧着領域内における、前記接点部片の表面におけるそのような被覆が、前記圧着の以前に、少なくとも領域的に除去されることは可能である。
溶接品質を改善するために、同様に溶接領域内における、及び/または、前記窪み部内の前記端面の手前の領域内における前記接点部片の表面におけるそのような被覆が、前記溶接の以前に、少なくとも領域的に除去されることも可能である。
特に有利な実施形態において、前記被覆は、放射線によって除去され、この放射線が同様に溶接のためにも使用される。
【0015】
本発明を、以下で、例示的、概略的、および、限定すること無しに、本発明の有利な実施形態を示している、
図1aから8までとの関連のもとで詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1a】接点部片と、この接点部片と結合されたケーブルとを有する電気的な導体の図である。
【
図1b】接点部片と、この接点部片と結合されたケーブルとを有する電気的な導体の図である。
【
図2a】接点部片とケーブルとの間の結合の形成のための方法の図である。
【
図2b】接点部片とケーブルとの間の結合の形成のための方法の図である。
【
図2c】接点部片とケーブルとの間の結合の形成のための方法の図である。
【
図2d】接点部片とケーブルとの間の結合の形成のための方法の図である。
【
図2e】接点部片とケーブルとの間の結合の形成のための方法の図である。
【
図2f】接点部片とケーブルとの間の結合の形成のための方法の図である。
【
図3a】ケーブルの長手軸線方向に対して法線方向の端面を有する、ケーブルの素線の軸線方向の端部のせん断の図である。
【
図3b】ケーブルの長手軸線方向に対して法線方向の端面を有する、ケーブルの素線の軸線方向の端部のせん断の図である。
【
図4a】ケーブルの長手軸線方向に対して傾斜する1つの角度での端面を有する、ケーブルの素線の軸線方向の端部のせん断の図である。
【
図4b】ケーブルの長手軸線方向に対して傾斜する1つの角度での端面を有する、ケーブルの素線の軸線方向の端部のせん断の図である。
【
図5】接点部片を有する圧着されたケーブルの溶接のための、溶接チャンバーの1つの実施形態の図である。
【
図6a】接点部片と、この接点部片と結合された、傾斜した端面を有するケーブルと、を有する電気的な導体の図である。
【
図6b】接点部片と、この接点部片と結合された、傾斜した端面を有するケーブルと、を有する電気的な導体の図である。
【
図7a】接点部片と、この接点部片と結合された、傾斜した端面および端縁部の領域内においてレーザー光線のための切欠き部を有するケーブルと、を有する電気的な導体の図である。
【
図7b】接点部片と、この接点部片と結合された、傾斜した端面および端縁部の領域内においてレーザー光線のための切欠き部を有するケーブルと、を有する電気的な導体の図である。
【
図8】傾斜した端面を有するケーブルのための、溶接チャンバーの1つの実施形態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1aおよび1bでもって、本発明に従う完成して調製された電気的な導体が示されている。外側の電気的な絶縁材2を有する電気的なケーブル1は、外側の絶縁材が除去されることによって、軸線方向の一方の端部において絶縁被覆を除去され、従って、ケーブル1の電気的な素線3が露出されている。露出された素線3は、接触部片5の圧着領域6内に導入される。素線3を示すために、圧着領域6は、
図1a内において切断されて図示されている。
圧着領域6は、圧着タブ7によって形成されており、この圧着タブが、窪み部(Ausnehmung)8を少なくとも部分的に囲繞し、その際、電気的な素線3が、窪み部8内において配置されている。窪み部8内における素線3は、圧着タブ7によって、公知の方法で圧着工具によって加圧される。
加圧の後、素線3と接触部片5とは、圧着タブ7の領域内において、互いに溶接される。この溶接は、窪み部8内において配置されている、素線3の端面9において行われる。この目的のために、素線3の端面9は、有利には軸線方向に、ケーブル1と反対側の、圧着領域6の端縁部10から後方に位置ずれされて配置されている。
素線3を端面9の領域内において溶融するために、溶接は、放射エネルギーによって、有利にはレーザー光線でもって行われ、このレーザー光線が端面9へと整向される。粘着力によって、溶融され且つ同様に完成した素線の端面9は、
図1a内において図示されているように凹状の表面を形成する。
【0018】
図1aおよび
図1b内において、ケーブル1は外側の絶縁材2を備えており、ケーブル1の素線3と接触部片5との間の電気的な結合の形成のために、この外側の絶縁材が、このケーブル1の軸線方向の端部の領域内において、この素線3を露出させるために先ず第一に除去される必要がある。
もちろん、同様に絶縁材2無しのケーブル1も使用され得、このことによって、絶縁被覆の除去のステップは、同様に省略可能である。同様に、ケーブルが既に軸線方向の端部において絶縁被覆を除去されていることは可能であり、従って、同様にこの状況においても、絶縁被覆の除去のステップが省略可能である。
【0019】
図2aから2fまででもって、ケーブル1の導電性の素線3と接触部片5との間の電気的な結合の形成のための方法が説明される。
【0020】
接触部片5は、軸線方向の一方の端部において圧着タブ7を有しており、この圧着タブが、
図2a内において既に上方へと湾曲されている。軸線方向の他方の端部において、例えば接触プラグ、接触ピン、等のような、接触部片5の機能部分が形成されている。
成形工具11とマンドレル12とを用いて、圧着領域6は、圧着タブ7が所望された方法においてこのマンドレル12を回って変形されることによって形成される。示された実施例において、圧着領域6は、円錐状に収束する走入領域を備える窪み部8を有しており、この走入領域が、円筒形の加圧領域に移行する。ケーブル1の素線3は、走入領域を通って、窪み部8内へと導入され、その際、この円錐部がこの導入を容易化する。素線3の端面9は、圧着領域6の加圧領域内において配置されている。
窪み部8は、しかしながら言うまでも無く、同様にそれぞれの他の適当な形態および幾何学的形状を有することも可能である。
【0021】
圧着タブ7は、変形の後、外周面において、通常、圧着タブ当接部4(
図1b)において互いに接触して位置する。
圧着タブ7は、同様にこの圧着タブが圧着タブ当接部4における外側の外周面において圧着ロック部を形成するように成形されていることも可能であり、このことが、圧着タブ7のより良好な結び合わせを生起可能である。
【0022】
例えば
図2aおよび2bに基づいて説明されているような、圧着領域6の成形のステップは、既に完成して形成された圧着領域6を有する接点部片5が使用される場合、しかしながら言うまでも無く、同様に省略可能である。
図2aおよび2bによるステップは、それに従って、即ち選択的と見なされるべきである。
【0023】
図2c内において、素線3の軸線方向の端部は、圧着領域6の窪み部8内へと導入され、従って、この素線3の端面9が、ケーブル1と反対側の、圧着領域6の端縁部10から、軸線方向に後方に位置ずれされて、この窪み部8内において配置されている。
【0024】
図2dのステップにおいて、素線3は、圧着領域6の窪み部8内において、圧着タブ7によって、圧着工具13を用いて公知の方法で加圧される(矢印によって示唆されている)。有利には、この窪み部は、0.2~0.5mmだけ、完成した加圧された大きさよりも大きい。このことによって、圧着不良個所は回避可能であり、且つ、同様に素線3のための圧潰の危険(これら圧着タブの間の個々の素線3の圧潰)も低減可能である。
圧潰の危険は、同様に、(
図1b内において示されているような)ケーブル1の長手方向軸線に対して傾斜した圧着タブ当接部4の配置によっても減少され得る。
【0025】
その後、圧着された接点部片5を有するケーブル1は、溶接チャンバー20内へと移動され、この溶接チャンバー内において、素線3が圧着タブ7と溶接される(
図2e)。この目的のために、放射線、有利にはレーザー光線21のような電磁的な放射線が、端面9に、有利には基本的にこの端面9に対して法線方向に整向され、従って、素線3が端面9の領域内において放射エネルギーによって加熱され且つ溶融される。圧着タブ7は、放射線によって、有利には積極的には加熱されない。
【0026】
放射線による端面9の加熱は、有利には、先ず第一に、加圧された素線3の縁部領域が、および、次いで、この加圧された素線3の内部領域が加熱されるように行われる。
【0027】
図2fは、完成して溶接された、ケーブル1と接点部片5とから成る導体を示している。
図2fは、同様に素線の溶融された端面9の粘着力により形成された、完成した端面9の凹状の表面も示している。
【0028】
圧着領域6の窪み部8内への素線3の導入の以前に、この素線3の軸線方向の端部は、本発明に従い、
図3aおよび3bに基づいて説明されるように、前処理される。
【0029】
素線3の軸線方向の端部は、例えば相対的に互いに移動可能な2つの締付けジョー30、31の形態での締付け工具33内において固定され、その際、この素線3の軸線方向の端部が、所定の軸線方向の長さLだけ、この締付け工具33から自由に突出する。
切断工具32により、締付け工具33から突出する素線3の軸線方向の端部は、(この素線3の長手方向に対して横向きの)横方向Qにおいてせん断される。横方向Qにおけるせん断により、清潔な端面9だけでなく、閉鎖された切断面も生成する。何故ならば、素線3の端部が、切断位置において、せん断の際の変形により圧縮されるからであり、または、しかもその上、冷間溶接されるからである。
完成した切断面は、素線3の端面9を形成する。切断工具32の切断エッジ部34は、有利には鈍角である。何故ならば、このことが、閉鎖された切断面9の生成を補助するからである。同様に、切断エッジ部34が、必要に応じて、
図3a内において破線で書かれた示唆されているように、凹状または凸状に形成されていることは可能である。
【0030】
素線3は、締付け工具33によって固定され得るだけでなく、この素線3の軸線方向の端部が、同様に同時に半径方向において、加圧、有利には気密に加圧され得る。この加圧の際に、素線3は、例えば締付けジョー31、32によって、加圧領域内における個々の素線3の間の中空空間を減少するために半径方向に押し潰される。
この気密の加圧の際に、加圧領域内における中空空間は除去される。そのような加圧は、素線3と接点部片5との間の電気的な結合の移行部における導電性を改善可能である。加圧のために、相応する半径方向の圧縮力が素線3に対して作用する。
【0031】
そのような加圧が、しかしながら、同様に別個のプロセスステップとして形成されていることも可能である。その際、軸線方向の端部は、せん断の以前に、固有の装置内において、締付け工具によって加圧される。
【0032】
締付けジョー31、32は、加圧のために、有利には、例えば楕円形または長円形のような、非円形の内側形状を有している。特に、気密の加圧は、非円形の形状内において、より容易に実現可能である。
【0033】
付加的に、素線3の軸線方向の端部は、有利には圧着領域6の形状に従って、加圧の際に同様に軸線方向にも成形され得る。有利には、軸線方向の端部における加圧の際に、円筒形の領域が形成され、この円筒形の領域が円錐形の領域内へと移行し、且つ、次いで、選択的に更に丸味を帯びさせられた走入領域内へと移行可能である。
軸線方向におけるそのような形状は、有利には
図1a内において示されているように、圧着領域6内において使用され得る。
素線3の軸線方向の端部が、圧着領域6に類似して、もしくは、相互嵌合状(gegengleich)に成形されている場合、圧着の際に、この予成形によって、より少ない変形作業が付与される必要があるだけである。気密の加圧の場合に、素線3は、円筒形の領域内において、即ち素線3の軸線方向の端部において気密に加圧される。
【0034】
素線3の軸線方向の端部は、しかしながら、強制的に、この素線3もしくはケーブル1の長手方向軸線に対して直角にせん断される必要は無く、むしろ、
図4aおよび4b内において図示されているように、端面9が、同様に長手軸線方向に対して所定の角度αで形成されていることも可能である。
【0035】
せん断によって生成される閉鎖された端面9は、特に圧着タブ7との素線3の端面側の溶接の際に利点を有している。
一方では、このことによって、素線3の軸線方向の端部は、より容易に且つより確実に窪み部8内へと導入され得る。何故ならば、如何なる個々の素線3も捩じられない(verbiegen)からである。他方では、このことによって、端面9は、より良好に放射線、有利にはレーザー光線21によって加熱可能である。これら両方の場合、より高いプロセス安定性を誘起する。素線3の軸線方向の端部が更に加圧されている場合、溶接のための端部領域は、更により良好に加熱可能である。
【0036】
このせん断は、しかしながら、同様に容易に電気的な結合の形成の全プロセス内に組み込み可能である。このせん断は、ただ短い時間だけを必要とし、且つ、溶接の直前に実施され得る。このことは、特に、素線3が、周囲空気内におけるような周囲の雰囲気内において迅速に酸化する、例えばアルミニウムのような材料から製造されているときに、特に優れた利点である。
このせん断によって、むき出しの、酸化物の無い表面が生成し、このことは、特に溶接を改善し、しかも同様に形成された電気的な結合の品質も向上する。
【0037】
図5は、レーザー22を用いての、接点部片5との素線3の溶接のための溶接チャンバー20の可能な実施形態を示しており、その際、同様に異なる適当なそれぞれの放射線供給源が、1つの放射線の生成のために使用され得る。圧着された接点部片5を有するケーブル1は、ロックゲート23を通って、溶接チャンバー20内へと導入される。溶接チャンバー20からのレーザー光線21の予期せぬ放出を防止するために、ロックゲート23は、ケーブル1の周囲で閉鎖され得る。
レーザー光線21の方向が長手方向軸線から逸脱するために、ケーブル1は、溶接チャンバー20内において、同様にこのケーブル1の長手方向軸線に対して1つの角度で屈曲され得る。この目的のために、溶接チャンバー20内において、このケーブル1を、例えばケーブル端部の持ち上げによって屈曲するための適当な装置25が設けられていることは可能である。
同様にこのことは、その際にロックゲート23を通っての溶接チャンバー20からのレーザー光線21の予期せぬ放出を防止することのためにも有益である。このことは、特に、素線3の端面9が、基本的にケーブル1の長手方向軸線に対して法線方向に整向されており、且つ、レーザー光線21が、溶接の際に、基本的に法線方向に端面9に照射するべき場合に有利である。
【0038】
接点部片5を有利には圧着領域6の範囲内において少なくとも溶接の間じゅう保持するために、溶接チャンバー20内において、同様に保持装置28が設けられていることも可能である。
【0039】
レーザー光線21は、レーザー22から生成され得、且つ、窓部24を通って、溶接チャンバー20内へと入射され得る。レーザー22が、しかしながら同様に溶接チャンバー20内において配置されていることも可能である。
【0040】
レーザー光線21を所望された領域の異なる位置、例えば端面9に誘導するために、レーザー22は、必要に応じて、公知の装置を備えている。
【0041】
溶接の際の溶接位置に保護ガスを供給するために、溶接チャンバー20内において、同様に保護ガスノズル27が設けられていることは可能である。これに伴って、溶接結合の品質は向上され得る。
【0042】
溶接蒸気および場合によっては保護ガスを吸引するために、溶接チャンバー20内において、同様に吸引装置26が、有利には溶接位置の近傍において設けられていることは可能である。このことは、溶接品質を改善可能である。
【0043】
吸引装置26、及び/または、溶接位置への保護ガスの供給によって、空気流が生成され得、この空気流は、酸化、溶接飛沫、煙残渣、等のような不利な溶接効果を低減する。
【0044】
図6aおよび6bでもって、1つの実施態様が示されており、この実施態様において、端面9は、ケーブル1の長手方向軸線に対して法線方向に整向されているのではなく、むしろ、90°から逸脱した角度で整向されている。溶接を容易化するために、同様に圧着領域6の端縁部10も類似または同じ角度でもって傾斜して配置されていることは可能である。
【0045】
この様式に傾斜した端面9の利点は、放射線、例えば基本的に法線方向に端面9に対して照射されるべきレーザー光線21が、本来1つの方向において、ケーブル1の長手方向軸線から逸脱して整向されていることにある。これに伴って、
図7内において見て取れるように、ケーブル1を溶接チャンバー20内において屈曲する必要無しに、この放射線が溶接チャンバー20のロックゲート23を通って放出可能であることが防止され得る。
【0046】
更に、例えば完全な接触ピンにおいてのように、傾斜した端面9は、接点部片5の加工を許容し、この接点部片の機能部分が、放射線、例えばレーザー光線21のための如何なる通過も提供しない。
【0047】
傾斜した端面9は、それに加えて、同様に引張強度および結合の導電性をも改善する。
【0048】
傾斜した端縁部10によって、レーザー光線21のような放射線が、圧着領域6の窪み部8内における端面9の所定の領域内に到達しないことは、しかしながら生じる。何故ならば、この所定の領域が、端縁部10によって遮光されるからである。
このことを防止するために、端縁部10の領域内における圧着タブ7内において、切欠き部(Aussparung)14が設けられていることは可能であり、この切欠き部14を通って、放射線が、同様に端面9の前記の遮光された領域内に到達可能である。このことは、
図7aおよび7b内において図示されている。
【0049】
そのような切欠き部14が、圧着の後、フライス加工または研削加工のような切削仕上げの加工によって生成されることは可能であり、または、例えば金属薄板から成る接点部片5の打抜きにおいて、既に圧着タブ7に前もって製造されていることは可能である。
溶接の際に妨害する、圧着タブ7の部分を、レーザー光線21のような放射線でもって焼き払うことは同様に可能である。この目的のために、この放射線が、例えば異なる出力でもって生成されることは可能である。
更に別の選択肢において、端縁部10と端面9との角度が異なって選択されることは可能である。放射線の遮光の領域内において、端面9が、ほんの僅かにしか端縁部10から離れて配置されていないことは可能であり、且つ、この端面9が、この端縁部10よりもより急傾斜の角度で配置されていることは可能である。
【0050】
図8は、例えば放射線供給源としてのレーザー22を有する溶接チャンバー20を示しており、この溶接チャンバー内において、傾斜した端面9を有するケーブル1が、接点部片5と端面側で溶接される。基本的に法線方向に端面9に照射されるべきレーザー光線21は、ケーブル1の長手方向軸線とは異なる方向に指向しており、且つ、従って、ロックゲート23から放出可能ではない。
更に、そのような実施形態において、同様に如何なる、ケーブル1の屈曲のための装置25も必要ではない。
【0051】
しばしば、接点部片5は、帯状材料から打抜き加工され、且つ、所望された形状に湾曲される。この帯状材料は、しばしば、表面に、ニッケル層のような保護する被覆が与えられている。
そのようなニッケル層は、導電性と同様に溶接品質も阻害する可能性がある。従って、被覆を、存在する限り、圧着の以前に、少なくとも接点部片5の電気的な結合が形成されまたは溶接される位置において除去することは有利である。この被覆の(部分的な)除去は、機械的、熱的、または、化学的に実施され得る。
この被覆の機械的な除去のために、例えば、圧着タブ7の内側面が、研磨ブラシによって加工されることは可能である。化学的な除去のために、エッチング用彫刻刀(Aetzstifte)、または、噴霧ノズルが使用可能である。熱的な除去が、意図された領域内において、例えばレーザーのような放射線を用いて気化されることは可能である。
有利な実施形態において、圧着の後および溶接の以前に、切欠き部8内における端面9の直前で、圧着タブ7の内側における被覆は、溶接チャンバー20内において、レーザー光線21を用いて除去される。
【0052】
素線3および接点部片5が、同様に先ず第一に溶接チャンバー20の内側で圧着されることも可能である。そのような実施態様において、圧着領域内において、少なくとも領域的に、接触部分の被覆を除去するために、例えばレーザー光線21のような放射線は、同様に使用され得る。
【符号の説明】
【0053】
1 ケーブル
2 外側の絶縁材
3 素線
4 圧着タブ当接部
5 接点部片
6 圧着領域
7 圧着タブ
8 窪み部
9 端面
10 端縁部
11 成形工具
12 マンドレル
13 圧着工具
14 切欠き部
20 溶接チャンバー
21 レーザー光線
22 レーザー
23 ロックゲート
24 窓部
25 ケーブルの屈曲のための装置
26 吸引装置
27 保護ガスノズル
28 保持装置
31 締付けジョー
32 締付けジョー
33 締付け工具
34 切断エッジ部
α 角度
L 軸線方向の長さ
Q 横方向