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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023106332
(43)【公開日】2023-08-01
(54)【発明の名称】固体酸化物型電解槽の制御
(51)【国際特許分類】
   C25B 9/00 20210101AFI20230725BHJP
   C25B 1/042 20210101ALI20230725BHJP
   C25B 15/08 20060101ALI20230725BHJP
   C25B 9/77 20210101ALI20230725BHJP
   C25B 15/00 20060101ALI20230725BHJP
   C25B 15/021 20210101ALI20230725BHJP
   C01B 3/02 20060101ALI20230725BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20230725BHJP
【FI】
C25B9/00 A
C25B1/042
C25B15/08 302
C25B9/77
C25B15/00 303
C25B15/021
C01B3/02 H
H01M8/12 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023004192
(22)【出願日】2023-01-16
(31)【優先権主張番号】63/299,894
(32)【優先日】2022-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/299,890
(32)【優先日】2022-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514116578
【氏名又は名称】ブルーム エネルギー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ザルガリ,アリ
(72)【発明者】
【氏名】ラオウファット,イーシャン
(72)【発明者】
【氏名】ルナ,ジュリオ
(72)【発明者】
【氏名】シードマネシュ,アリレザ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】柔軟なシステム設置及び動作を提供する、固体酸化物型電解セル(SOEC)システムを提供する。
【解決手段】蒸気を水素と組み合わせて受け取るように構成される電解セルのスタックと、蒸気の一部を再循環させるように構成される蒸気再循環出口とを備える、モジュール式SOECシステムを提供する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気を水素と組み合わせて受け取るように構成される電解セルのスタックと、
前記蒸気の一部を再循環させるように構成される蒸気再循環出口と、
を備える、SOECシステム。
【請求項2】
前記SOECシステムは、ユーザーからの1つ以上のコマンドを受信するように構成される、請求項1に記載のSOECシステム。
【請求項3】
発電機モジュールコントローラーを更に備える、請求項1に記載のSOECシステム。
【請求項4】
パワーモジュールコントローラーを更に備える、請求項1に記載のSOECシステム。
【請求項5】
モジュール式ブロックコントローラーを更に備える、請求項1に記載のSOECシステム。
【請求項6】
スタンプレベルコントローラーを更に備える、請求項1に記載のSOECシステム。
【請求項7】
現場レベルコントローラーを更に備える、請求項1に記載のSOECシステム。
【請求項8】
水素及び蒸気排気の流れを前記スタックに戻して再循環させる、請求項1に記載のSOECシステム。
【請求項9】
前記水素及び蒸気排気の一部を蒸気再循環ブロワーに供給するスプリッターを更に備える、請求項8に記載のSOECシステム。
【請求項10】
前記水素及び蒸気排気の再循環部分は、蒸気を含み、水素を含まない、請求項8に記載のSOECシステム。
【請求項11】
前記電解セルのスタックは、前記SOECシステムの始動時、停止時、又は前記SOECシステムが水素を生成していないとき、水素を受け取るように構成される、請求項1に記載のSOECシステム。
【請求項12】
前記電解セルのスタックは、前記SOECシステムが安全イベントを検出すると、水素の受取りを止めるように構成される、請求項1に記載のSOECシステム。
【請求項13】
前記安全イベントは、圧力検出器又は熱検出器によって検出される、請求項12に記載のSOECシステム。
【請求項14】
前記蒸気再循環出口によって排出される蒸気が水素と混合され、蒸気及び水素の組合せが再循環蒸気入口に供給される、請求項1に記載のSOECシステム。
【請求項15】
電解セルのスタックにおいて、蒸気を水素と組み合わせて受け取ることと、
蒸気再循環出口において、前記蒸気の一部を再循環させることと、
を含む、SOECシステムを動作させる方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、包括的には、固体酸化物型電解セル(SOEC)を含む電解槽システム及びその動作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体酸化物型燃料電池(SOFC)は、水素及び酸素を生成するために電解槽として動作することができ、これは、固体酸化物型電解セル(SOEC)と呼ばれる。SOFCモードでは、酸素イオンがカソード側(空気)からアノード側(燃料)に移送され、その駆動力となるのは、電解質にわたる酸素の分圧の化学勾配である。SOECモードでは、セルの空気側に正電位が印加されると、酸素イオンが燃料側から空気側に移送される。SOFCとSOECとの間でカソードとアノードとが逆転している(すなわち、SOFCカソードがSOECアノードとなり、SOFCアノードがSOECカソードとなる)ため、SOFCカソード(SOECアノード)は空気電極と呼ぶことができ、SOFCアノード(SOECカソード)は燃料電極と呼ぶことができる。SOECモードの間、燃料流中の水が還元され(HO+2e→O2-+H)、Hガス及びO2-イオンを形成し、O2-イオンは、固体電解質を通して移送された後、空気側において酸化され(O2-からO)、分子状酸素を生成する。空気及び湿潤燃料(水素、改質天然ガス)を用いて動作するSOFCの開回路電圧は、0.9V~1V程度(含水量に応じる)であるため、SOECモードにおいて空気側電極に印加される正電圧により、セル電圧を、典型的な動作電圧である1.1V~1.3Vまで上昇させる。
【発明の概要】
【0003】
したがって、本発明は、関連技術の制限及び不都合点に起因する1つ以上の問題を実質的に排除するモジュール式電解槽システムに関する。
【0004】
本発明の更なる特徴及び利点は、以下の説明において記載され、その説明から部分的に明らかになるか、又は本発明の実施によって習得することができる。本発明の目的及び他の利点は、特に、添付図面と合わせて記載の説明及び本件の特許請求の範囲に示される構造によって実現及び達成される。
【0005】
以上の一般的な記載及び以下の詳細な記載はいずれも、例示的かつ説明的なものであり、特許請求の範囲に係る本発明の更なる説明を与えることを意図するものであることが理解される。
【0006】
本発明の更なる理解をもたらすために含まれ、本明細書に援用されるとともに本明細書の一部をなす添付図面は、本発明の実施形態を例示するとともに、明細書と合わせて本発明の原理を説明する役目を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明の一例示の実施形態に係るSOFC/SOECモジュール式システムを示す図である。
図2図2は、本発明の一例示の実施形態に係る大規模電解槽システムを示す図である。
図3図3は、本発明の別の例示の実施形態に係る大規模電解槽システムを示す図である。
図4図4は、本発明の一例示の実施形態に係る大規模電解槽システムを示す図である。
図5図5は、本発明の一例示の実施形態に係るSOECシステムの図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について詳細に参照する。それらの例は、添付図面に示されている。前述の包括的な説明及び以下の詳細な説明はいずれも例であり、特許請求される本発明を限定するものではないことを理解されたい。
【0009】
図1は、本発明の一例示の実施形態に係るSOFC/SOECモジュール式システム10を示している。
【0010】
SOFC/SOECシステム10のモジュール式設計は、柔軟なシステム設置及び動作を提供する。以前のモジュール式システムとは対照的に、実施形態は、設置及びメンテナンスのスピードを増大させ、コストを低減するために、配管及び電気配線の地上ルーティングを使用する。加えて、設置を行う専門業者の必要性が低減される。モジュールにより、単一の設計セットを用いて、設置された発電容量の拡縮、信頼性のある発電、燃料処理の柔軟性、並びに電力出力電圧及び周波数の柔軟性が可能になる。モジュール式設計により、非常に高い可用性及び信頼性を有する「常時オン」のユニットが得られ、メンテナンス及びスケールアップの手段も改善される。モジュール式設計は、利用可能な燃料、並びに顧客及び/又は地理的領域によって変動し得る必要な電圧及び周波数の使用も可能になる。
【0011】
SOFC/SOECモジュール式システム10は、発電機モジュール12(好ましくは複数の発電機モジュール12、「SGM」とも称する)、1つ以上の燃料処理モジュール16(SOFCシステム内)、及び1つ以上の電力調整モジュール18(すなわち、電気出力、発電機モジュール又は「SPM」とも称する)のうちの少なくとも1つが中に配置されるハウジング14を備える。これらの例示の実施形態において、電力調整モジュール18は、インバーター等の、DCをACに変換する又はACをDCに変換する機構を含むことができる。例えば、システム10は、2個~30個の発電機モジュール、3個~12個の発電機モジュール、6個~12個のモジュール等の任意の所望の数のモジュール、又は発電機モジュールの他の大規模構成を含むことができる。
【0012】
図1の例示のシステム10は、パッド20上に、任意の数の発電機モジュール12(横並びにされた6つのモジュールの1つの列)と、1つの燃料処理モジュール16(SOFCシステム内)と、1つの電力調整モジュール18とを備える。ハウジング14は、各モジュール12、16、18を収容するキャビネットを備えることができる。代替的に、モジュール16及び18は、単一のキャビネット内に配置してもよい。1列の発電機モジュール12が示されているが、システムは、2列以上のモジュール12を備えてもよい。例えば、SOFC/SOECシステム10は、背面対背面/端面対端面で配置された2列の発電機モジュール12を備えることもできる。
【0013】
各発電機モジュール12は、1つ以上のホットボックス13を収容するように構成される。各ホットボックスは、導電性インターコネクトプレートによって分離されるセラミック酸化物電解質を有する固体酸化物型燃料電池の1つ以上のスタック又はカラム等の、燃料電池/電解セル(明確にするために図示せず)の1つ以上のスタック又はカラムを収容する。PEM、溶融炭酸塩、リン酸等の他のタイプの燃料電池を使用することもできる。
【0014】
燃料電池スタックは、外部及び/又は内部でマニホールド化されたスタックを含むことができる。例えば、スタックは、燃料電池層及び/又は燃料電池間のインターコネクトプレート内の開口部を通って延在する燃料及び空気ライザーを有して、燃料及び空気用に内部でマニホールド化することができる。
【0015】
代替的に、燃料電池スタックは、燃料用に内部でマニホールド化し、空気用に外部でマニホールド化してもよく、その場合、燃料入口及び排気ライザーのみが、燃料電池層及び/又は燃料電池間のインターコネクトプレートの開口部を貫通する。これは、米国特許第7,713,649号に記載されており、その全体を参照により本明細書に援用する。燃料電池は、直交流構成(空気及び燃料が、各燃料電池内の電解質の対向する側において互いに対して略垂直に流れる)、向流並列構成(空気及び燃料が、各燃料電池内の電解質の対向する側において、互いに対して略平行であるが対向する方向に流れる)、又は並流並列構成(空気及び燃料が、各燃料電池内の電解質の対向する側において、同じ方向に互いに対して略平行に流れる)を有することができる。
【0016】
燃料処理モジュール16及び電力調整モジュール18は、ハウジング14の1つのキャビネット内に収容してもよい。図1の例示の実施形態に示されているように、6つの(又は任意の数の)発電機モジュール12の1列に対して1つのキャビネット14が設けられ、6つの発電機モジュール12は、入力/出力モジュール14の片側に直線的に横並びで配置される。モジュールの列は、例えば、システムが電力を提供する建造物に隣接して(例えば、モジュールのキャビネットの背面が建造物の壁に面するように)位置決めすることができる。
【0017】
発電機モジュール12の直線状の配列は容易に拡縮される。例えば、燃料電池/電解槽システム10によってサービス提供される建造物又は他の施設の電力需要に応じて、より多数又は少数の発電機モジュール12を設けてもよい。発電機モジュール12及び入力/出力モジュール14は、他の比率で設けることもできる。例えば、他の例示的な実施形態において、より多数又は少数の発電機モジュール12を入力/出力モジュール14に隣接して設けてもよい。さらに、2つ以上の入力/出力モジュール14によって(例えば、別個の燃料処理モジュール16及び電力調整モジュール18キャビネットを用いて)サポート機能をサービス提供することができる。さらに、入力/出力モジュール14が、発電機モジュール12の列の端部にあるが、発電機モジュール12の列の中央又は他の場所に位置することもできる。
【0018】
SOFC/SOECモジュール式システム10は、システム10の構成要素の整備を容易にするように構成することができる。例えば、日常的に又は高頻度で整備される構成要素(消耗部品等)は、単一のモジュール内に置いて、整備員が必要とする時間が低減されるようにしてもよい。例えば、パージガス(任意選択)を、単一のモジュール(例えば、燃料処理モジュール16又は併合した入力/出力モジュール14キャビネット)内に置くことができる。これは、日常的なメンテナンス中にアクセスされる唯一のモジュールキャビネットとなり得る。したがって、各モジュール12、14、16、及び18は、他のモジュールキャビネットを開けることなく、また、他のモジュールの整備、修理、又は取外しを行うことなく、整備、修理、又はシステムからの取外しを行うことができる。加えて、配管及び電気部品を、コンクリートパッドと発電機モジュール12との間に配置される鋼製上敷きの上に配置することができる。
【0019】
例えば、上述したように、システム10は複数の発電機モジュール12を備えることができる。少なくとも1つの発電機モジュール12がオフラインになる(すなわち、オフラインのモジュール12内のホットボックス13内のスタックによって電力が生成されない)とき、残りの発電機モジュール12、燃料処理モジュール16、及び電力調整モジュール18(又は併合した入力/出力モジュール14)はオフラインにならない。さらに、燃料電池/電解槽システム10は、各タイプのモジュール12、14、16、又は18を2つ以上含むことができる。特定のタイプの少なくとも1つのモジュールがオフラインになるとき、同じタイプの残りのモジュールはオフラインにならない。
【0020】
したがって、複数のモジュールを備えるシステムにおいて、モジュール12、14、16、又は18のそれぞれは、システムにおける他のモジュールの動作を停止することなく、電気的に切断し、燃料電池/電解セルモジュール式システム10から取り外し、及び/又は整備若しくは修理することができ、燃料電池システムは発電を継続することが可能になる。1つのホットボックス13内の燃料電池/電解槽の1つのスタックが故障した又は整備のためにオフラインになった場合、SOFC/SOECモジュール式システム10全体を停止する必要はない。
【0021】
図2は、本発明の一例示の実施形態に係る大規模電解槽システム200を示している。
【0022】
大規模電解槽システム200は、複数のモジュール式ブロック210、220、230、240に始動水素を供給するように構成されるガス分配モジュール(「GDM」)250を備える。SOEC及びSOFCシステムは、通常、始動及び停止のために新たな水素ガスを必要とする。ガス分配モジュール250は、圧力検出器、熱検出器、ガス安全遮断器、及びパージガス分配器を更に備えることができる。
【0023】
上述したように、各モジュール式ブロックは、例えば、1つのパワーモジュール(「SPM」)及び1つ以上の発電機モジュール(「SGM」)を含む。モジュール式ブロックをシステムの集合体にグループ化したものを、スタンプと称する。したがって、大規模電解槽システム200はスタンプである。水素は圧力下で各SGMに供給される可燃性ガスであるため、安全イベントが検出されると、発電機モジュールSGMの群へのガスを遮断する安全な方法が必要となる。したがって、GDM250は、安全イベントが検出されると、SGMに供給される水素を遮断するように構成される。圧力検出、過圧保護、及びガス安全遮断等の安全設計は、GDM250及び/又は燃料処理モジュール(例えば、16)によって電解槽システム200内に容易に適用される。加えて、スタンプレベルコントローラーをGDM250において提供することができる。
【0024】
4つのモジュール式ブロック210、220、230、240のグループ化が一例示の構成となっているが、この構成は、ガスの安全性のための効率的なグループ化である。加えて、4つのモジュール式ブロック210、220、230、240のグループ化は、整備用通路260内の水素生成物の収集に効率的である。整備用通路260内の管路261は、下流の圧縮システムと統合される水素生成物を収集するように構成される。管路261は、発電機モジュールSGM内への凝縮物の逆流を防止するように構成される。また、凝縮物の管理は、様々な監視及び制御装置並びに管路を使用して、水出口(又はBOP1)に戻すことを可能にする。
【0025】
図3は、本発明の一例示の実施形態に係る大規模(例えば、10メガワットシステム)電解槽システム300を示している。図3に示されているように、電解槽システム300は、複数のスタンプ310、320、330、340、350、360、及び370を備える。加えて、電解槽システム300は、水源BOP1、水素生成物収集部BOP2(例えば、管路261を含む)、並びに水素圧縮及び処理部BOP3等の追加のバランスオブプラント構成要素を更に備える。水素圧縮及び処理部BOP3は、それぞれのスタンプ310、320、330、340、350、360、及び370ごとのガス分配モジュール(例えば、GDM250)に圧力下で水素を供給するように機能的に構成される。したがって、スタンプアーキテクチャは、大規模設置のために繰返しの要素を使用して組み上げることで、大規模設計において繰り返すことができる。
【0026】
図4は、本発明の一例示の実施形態に係る大規模電解槽システム400を示している。電解槽システム400の構成要素は、電解槽システム200及び300と同様であり、以下は相違点及び/又は追加の特徴を記載する。特に、図4は、電解槽システム400における様々な通信的に結合された(例えば、イーサネット、インターネット、ハードワイヤード等)コントローラーを示している。
【0027】
本発明の様々な実施形態において、顧客がSOEC現場及びシステムを動作させるための様々なシステム、装置、方法、及び非一時的コンピューター可読命令が提供される。例えば、異なるシステムレベル(例えば、現場レベル安全コントローラー、現場レベルコントローラー、スタンプレベルコントローラー、モジュール式ブロックコントローラー、パワーモジュールコントローラー、発電機モジュールコントローラー)における顧客からのコマンドを受信するように、集中型コントローラー(例えば、組込みコントローラー)が提供される。電解槽システム400の構成要素間の通信バスにおけるデータトラフィックを低減するために、各レベルにおいて様々な決定がなされる。
【0028】
例えば、現場レベルコントローラーを挙げる。各現場に複数のテレメトリキャビネット(TC)がある場合、現場レベルコントローラーは、各テレメトリキャビネット内のコントローラーに対して通信するように構成することができる。別の構成において、現場に単一のテレメトリキャビネットがある場合、テレメトリキャビネット内のコントローラーは、現場レベルコントローラーとして構成することができる。
【0029】
現場レベルコントローラーは、顧客コマンドを受信し、安全信号を監視するIOボードに対して通信するコントローラーとして構成することができる。現場レベルコントローラーは、現場レベル安全コントローラーに接続することができる。さらに、現場レベルコントローラーをユーティリティ(例えば、電力供給者)に接続し、利用可能な電力及びインターロックに関するコマンドを受信することができる。
【0030】
様々な構成において、現場レベルコントローラーは、現場レベルにおける利用可能電力、現場レベルにおける水素発生需要、スタンプごとの算定利用可能電力、スタンプごとの算定水素発生需要、現場レベル安全信号、脱イオン(「DI」)スキッド水質信号、現場レベルにおけるエネルギー計電力リードバック、現場レベルにおけるエネルギー計電力総合計リードバック、各及び/又は全てのスタンプにおける電力リードバック、現場レベルにおける算定電力リードバック、現場レベルにおける水/蒸気温度及び圧力リードバック、現場レベルにおける水素温度及び圧力リードバック、全てのスタンプの水素生成率リードバック、現場レベルにおける算定水素生成率リードバック、現場レベルにおける算定水素発生効率(kW時/kg)、各及び/又は全てのスタンプの収集されたアラームの概要、各及び/又は全てのスタンプに要求される動作等の決定を含む、多様な機能を実行するように構成することができる。
【0031】
例えば、スタンプレベルコントローラーを挙げる。モジュール式ブロック(例えば、モジュール式ブロック210、220、230、240)におけるコントローラーのそれぞれは、スタンプレベルにおいて1つのコントローラーに報告を行うように通信的に及び機能的に結合される。スタンプレベルコントローラーは、各モジュール式コントローラーから様々なデータ(例えば、上記で列挙したもの)を収集するように構成するとともに、現場レベルコントローラー又はテレメトリコントローラーに返報するように更に構成することができる。
【0032】
ここで、スタンプレベルコントローラーは、スタンプレベル圧縮システムと各モジュール式ブロックとの間の通信をリンクするように構成される。換言すれば、スタンプレベルコントローラーは、アラーム及び/又は他のデータを現場レベル及び圧縮スキッドから各モジュール式ブロックコントローラーに渡し、モジュール式ブロックコントローラーから現場レベルコントローラー及び圧縮スキッドに戻すゲートウェイとして機能する。
【0033】
スタンプレベルコントローラーがネットワークから通信切断されるか、又は設計上、取り除かれている場合、テレメトリキャビネット内のコントローラーは、スタンプレベルコントローラーの機能を実装するように構成することができる。
【0034】
様々な構成において、スタンプレベルコントローラーは、各及び/又は全てのモジュール式ブロックの算定利用可能電力、各及び/又は全てのモジュール式ブロックの算定水素発生需要、各及び/又は全てのモジュール式ブロックの電力リードバック、スタンプレベルにおける算定電力リードバック、スタンプレベルにおける水/蒸気温度及び圧力リードバック、スタンプレベルにおける水素温度及び圧力リードバック、各及び/又は全てのモジュール式ブロックの水素生成率リードバック、スタンプレベルにおける算定水素生成率リードバック、スタンプレベルにおける算定水素発生効率(kW時/kg)、各及び/又は全てのモジュール式ブロックの収集されたアラームの概要、各及び/又は全てのモジュール式ブロックに要求される動作等の決定を含む、多様な機能を実行するように構成することができる。
【0035】
様々な構成において、モジュール式ブロックコントローラー(及びパワーモジュールコントローラー)は、1つのモジュールにおける発電機モジュールを監視するように構成することができる。加えて、モジュール式ブロックコントローラー(及びパワーモジュールコントローラー)は、発電機モジュールから/への全ての安全アラームのゲートウェイとして構成することができる。モジュール式ブロックコントローラー(及びパワーモジュールコントローラー)は、各及び/又は全ての発電機モジュールの算定利用可能電力、各及び/又は全ての発電機モジュールの算定水素発生需要、各及び/又は全ての発電機モジュールの電力リードバック、モジュール式ブロックレベルにおける算定電力リードバック、モジュール式ブロックレベルにおける水/蒸気温度及び圧力リードバック、モジュール式ブロックレベルにおける水素温度及び圧力リードバック、各及び/又は全ての発電機モジュールの水素生成率リードバック、モジュール式ブロックレベルにおける算定水素生成率リードバック、モジュール式ブロックレベルにおける算定水素発生効率(kW時/kg)、各及び/又は全ての発電機モジュールの収集されたアラームの概要、各及び/又は全ての発電機モジュールに要求される動作等の決定を含む、多様な機能を実行するように構成することができる。
【0036】
例えば、発電機モジュールコントローラーを挙げる。発電機モジュールコントローラーは、それぞれの発電機モジュールにおけるセンサーを監視し、オペレーター及び/又は上位レベルコントローラーから受信したコマンドに基づいて機能を実行するように構成される。発電機モジュールコントローラーは、モジュール式ブロックコントローラーに通信的及び機能的に結合される。例えば、発電機モジュールは、モジュール式ブロックコントローラーに必要な重要データを返報するように構成される。
【0037】
様々な構成において、発電機モジュールコントローラーは、電力リードバック、水素生成率リードバック、水/蒸気温度及び圧力リードバック、水素温度及び圧力リードバック、水素生成率リードバック、算定水素発生効率(kW時/kg)、アラームの概要等の決定を含む、多様な機能を実行するように構成することができる。
【0038】
図5は、本発明の一例示の実施形態に係るSOECシステム500である。
【0039】
図5に示されているように、SOECシステム500は、空気導管105と、空気ブロワー106と、空気入口107と、蒸気導管110と、再循環蒸気入口111と、ホットボックス150と、任意選択の水素導管130と、濃縮空気出口123と、濃縮空気導管125と、濃縮空気ブロワー126と、蒸気及び水素生成物出口120と、スプリッター160と、ベンチュリ流量計165と、蒸気再循環ブロワー170と、熱センサー175と、顧客190(例えば、ユーザー、オペレーター、そのコンピューター)とを備える。
【0040】
一例示の構成及び動作によれば、蒸気導管110において供給される蒸気(例えば、様々な圧力で現場又は施設蒸気を供給する)は、約100℃~110℃(例えば、105℃)の温度と、約1psigの圧力とを有することができる。様々な実施形態において、蒸気は、外部源からSOECシステム500に供給することができ、又は局所的に発生させることができる。いくつかの実施形態において、複数の蒸気入口が、外部蒸気及び局所蒸気をそれぞれ受け取るように構成することができる。代替的又は付加的に、水は、SOECシステム500に供給し、気化させることができる。
【0041】
空気導管105における空気供給(例えば、周囲空気)は、局所大気圧における周囲温度とすることができ、その温度は約-20℃~+45℃であり得る。空気導管105からの空気は、空気ブロワー106において受け取られ、空気ブロワー106によって排出される空気は、圧縮の熱によって周囲よりも僅かに高い温度となる。例えば、空気ブロワー106によって排出される空気の温度は、20℃の周囲空気温度と比較して、1.0psigにおいて約30℃とすることができる。その後、空気導管105の空気供給は、ホットボックス150の空気入口107において受け取られる。
【0042】
任意選択の水素導管130からの水素は、水素がSOECシステム500によって他の方法で生成されていないときの始動及び過渡のためにのみ必要とされ得る。例えば、定常状態において別個の水素給送流又は水素再循環蒸気は必要なくなる。この水素流の圧力は、現場構築時に決定される設計オプションであり、約5psig~3000psigとすることができる。温度は、貯蔵部に由来し得るため、周囲温度付近であり得る。
【0043】
空気導管105における空気供給、蒸気導管110における蒸気供給、及び任意選択の水素導管130における水素供給は、ホットボックス150に供給される。さらに、ホットボックス150は、ホットボックス150の蒸気及び水素生成物出口120において蒸気及び水素生成物H-HO-Gを排出する。ここで、Gは総量(Gross)を表す。ホットボックス排出物H-HO-Gは、約100℃~180℃(例えば、130℃)の温度、約0.1psig~0.5psigの圧力を有することができる。
【0044】
加えて、ホットボックス排出物H-HO-Gは、スプリッター160に供給され、蒸気再循環流RECHOLP(ここで、LPは低圧(low pressure)を表す)と、純生成物H-HO-N(ここで、Nは純量(Net)を表す)(例えば、商業使用又は貯蔵のための排出物)とに分割される。ここで、純生成物H-HO-Nは、約100℃~180℃(例えば、130℃)の温度、約0.1psig~0.5psigの圧力を有することができる。蒸気再循環流RECHOLPは、約100℃~180℃(例えば、130℃)の温度、約0.1psig~0.5psigの圧力を有することができる。ホットボックス150は、濃縮空気出口123において濃縮空気導管125を介して、本質的に局所大気圧(例えば、0.5psig未満又は0.05psig未満)において約120℃~300℃の温度を有し得る濃縮空気を更に排出することができる。
【0045】
蒸気再循環流RECHOLPは、蒸気再循環ブロワー170に供給される。結果として生じる再循環蒸気REC-STMは、約100℃~180℃(例えば、140℃、154℃)の温度、約0.5psig~1.5psig(例えば、約1psig)の圧力を有することができ、再循環蒸気入口111においてホットボックス150に供給される。いくつかの実施形態において、再循環水素供給物は、再循環蒸気とともに含まれない場合がある。
【0046】
図5から理解することができるように、蒸気導管110における流入蒸気温度(例えば、105℃)は、内部蒸気発生を伴うSOEC構成と比較して低い。様々な構成において、複数の再循環ループは、内部蒸気発生及び外部蒸気発生の双方を使用するSOECシステムに対して構成することができる。図示されているように、再循環蒸気入口111は、蒸気導管110からの蒸気を受け取るように構成される。ここで、実施形態は、任意選択で、内部蒸気発生コイル、1つ以上の気化器、及び/又は他の加熱素子を通して、典型的には飽和して約105℃の温度にある、蒸気導管110から施設に供給される蒸気を導き、濃縮空気導管125において任意選択のファン又は濃縮空気ブロワー126を通して熱が解放される前に、蒸気供給物を更に加熱(すなわち、過熱)するように、空気排気熱(例えば、約280℃)を使用する。
【0047】
いくつかの実施形態において、顧客190は、固体酸化物型電解セル(SOEC)システムを制御することが可能にされる。1つ以上のインターフェースは、異なる状態のSOECを動作させる顧客コマンドを受信及び実行する、カスタム通信プロトコル(例えば、イーサネット、インターネット、ハードワイヤード等を介する)を提供する。したがって、実施形態は、SOECの安全な動作を保証しながら再生可能水素を利用するという顧客ニーズを満たすためのサポートを提供する。
【0048】
例えば、実施形態は、顧客又は他の第三者が、水素発生、電力制限、及び利用可能な蒸気等のパラメーターを使用して、SOECシステムを制御することを可能にする。いくつかの実施形態において、通信が失われた場合に安全なスタンバイ状態に移行することが可能なシステムが提供される。さらに、安全なスタンバイ状態は、顧客が同意する条件に基づいて定義することができる。
【0049】
付加的又は代替的に、実施形態は、顧客がSOECシステムを動作させるための1つ以上の機構を提供し、動作の安全限界内に留まる安全ロジックを提供し、水素生成のランピング(ramping)を可能にすることによって水素発生が顧客ニーズを満たすことを保証する。いくつかの例において、顧客は、今後の現場制限(例えば、外部水素が利用可能でないこと、利用可能な電力スケジュール、電力貯蔵部に対する通信制限、水及び供給水素の貯蔵制限等)の事前通知を受信することができる。したがって、顧客は、そのような制限に合わせて調整を行う(例えば、現場における水素使用又は水素貯蔵制限に基づいて水素発生を調整する)ことができる。
【0050】
SOECシステム500によって生成される水素の量は、グリッド又は外部電力供給部から取り込まれる電力、利用可能な水及び/又は蒸気源、並びにシステム内のセルの数によって決まる。
【0051】
SOECシステム500に給電されると、組込みコントローラーは、システムが始動可能であることを示すように構成することができる。この状態では、顧客190は、始動コマンドを送信し、加熱プロセスを開始することができる。この時点から、SOECシステム500は、サブシステムを内部的に管理する。
【0052】
加熱プロセスが終了すると、H生成可能状態に自動的に遷移する。この状態では、顧客190は、自身の内部安全ニーズが満たされている場合、H生成許可コマンドを送信することができる。また、SOECコントローラーは、H生成状態への遷移を妨げ得る何らかの安全性の問題点がないかをチェックする。
【0053】
生成状態において、H生成率を指示することができる。内部において、SOECは、目標H生成=min(許容H生成率、顧客H生成率)の計算を実行し、利用可能な電力及び水/蒸気供給に基づいて目標H生成率が要件を満たすことを保証する。許容H生成率は、以下のように計算される。
【0054】
許容H生成率=function(利用可能な電力、利用可能な蒸気流、利用可能な新しいH
【0055】
必要とされる水/蒸気源が利用可能でないことを安全アラームが検出した場合、SOECシステム500は、ホットスタンバイ状態に遷移する。この状態では、温度を維持することができるが、顧客が水素を発生させることを可能にしない。しかしながら、上記問題点が解消されると、SOECシステム500は、以前の状態(例えば、H生成、加熱状態)に戻ることができる。
【0056】
アラームに関して、SOECシステムは、トリガーされるとシステムを安全な停止状態にすることができる、安全及び動作アラームの幅広いセットを統合する。また、顧客は、アラームクリアコマンドを通してアラームをクリアし、SOECシステム500を再始動させることが可能である。
【0057】
最後に、顧客190がシステムをクールダウンすることが望ましいと考える場合、それは、SOECシステム500を制御シャットダウン状態にする制御シャットダウンコマンドを通して達成することができる。
【0058】
顧客とSOECシステム500との間の通信が失われた場合、内部ロジックは、利用可能な最新のコマンドを保持する。これにより、システムが、顧客190から送信された最新のコマンドに基づいて安全な動作を継続することができることを保証する。通信が失われたことが検出されると、システムは、SOECオペレーターがシステムを所望の状態に戻すことを可能にする、マスターモードに戻ることもできる。
【0059】
顧客が自身の生産ニーズに基づいてシステムを動作させることを可能にし得ることで、水素供給の利用可能性に関する問題点が軽減する。本発明の実施形態は、SOECにコマンドを送信する通信インターフェースと、安全を保証しながらシステムを異なる動作モードに遷移させる閉ループシステムとを提供する。
【0060】
SOECの主な機能は、電気を使用して、電解プロセスを通して水分子を水素と酸素とに分解することである。その後、水素ガスを捕捉し、特に、天然ガスパイプラインへの注入、水素動力車、及び長期貯蔵等の複数の用途に使用することができる。
【0061】
本明細書に記載の様々な実施形態のそれぞれにおいて、安全イベントを検出するために1つ以上のセンサー又は検出器を使用することができる。例えば、1つ以上の圧力検出器及び1つ以上の熱検出器を使用することができる。1つ以上の圧力検出器は、圧力不足(例えば、5PSI未満)及び圧力過剰を検出するために、供給水素導管に沿って配置することができる。圧力検出器がトリップすると、システム(すなわち、ホットボックス150)は停止する。さらに、1つ以上の熱検出器は、過剰な熱(例えば、230℃超)を検出するために、ホットボックスのキャビネット内に配置することができる。キャビネットの換気は、例えば、濃縮空気ブロワー126によって提供及び維持される。熱検出器がトリップすると、システム(すなわち、ホットボックス150)は停止する。
【0062】
SOECシステム(例えば、100)は、SOECシステムが定常状態で動作しているとき、又は安全イベントを検出すると、水素の受取りを止める。さらに、ホットボックス150内の電解セルのスタックは、SOECシステムの始動時、停止時、又はSOECシステムが水素を生成していないとき、水素を受け取るように構成することができる。
【0063】
本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなく、本発明の電解槽システムの制御において様々な変更及び変形を行うことができることが当業者には明らかであろう。したがって、本発明は、本発明の変更及び変形が添付の特許請求の範囲及びその均等物の範囲内にあるならば、それらを包含することが意図される。

図1
図2
図3
図4
図5
【外国語明細書】