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特開2023-106340インバータのトランジスタの特性動作パラメータ検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023106340
(43)【公開日】2023-08-01
(54)【発明の名称】インバータのトランジスタの特性動作パラメータ検出方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20230725BHJP
   H02M 1/08 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
H02M7/48 M
H02M1/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023006282
(22)【出願日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】10 2022 200 598.8
(32)【優先日】2022-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】ハディウッザマン・サイード
(72)【発明者】
【氏名】ニコ・ビュステマン
(72)【発明者】
【氏名】クリスチノ・サルシネス
(72)【発明者】
【氏名】カール・オーバーディーク
【テーマコード(参考)】
5H740
5H770
【Fターム(参考)】
5H740BA12
5H740BB05
5H740BB08
5H740BB10
5H740BC01
5H740BC02
5H770AA17
5H770BA02
5H770DA44
5H770EA01
5H770GA01
5H770GA11
5H770HA02Z
5H770HA03Z
5H770JA19X
5H770LB05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】トランジスタの特性動作パラメータ検出に適したインバータを提供すること。
【解決手段】インバータ(1)は、ハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタである第1のトランジスタ(2)および第2のトランジスタ(3)と、第1のトランジスタ(2)がスイッチオンされ、第2のトランジスタ(3)がスイッチオフ状態であり、第1のトランジスタの寄生容量が放電される第1のスイッチング動作をトリガし、第1のトランジスタ(2)がスイッチオフまたは再度スイッチオンされ、同時に第2のトランジスタ(3)がスイッチオフ状態のままであり、第1のトランジスタの寄生容量が、既に放電されている第2のスイッチング動作をトリガし、第1のスイッチング動作の持続時間と、第2のスイッチング動作の持続時間との時間差に基づいて、第1のトランジスタ(2)の特性動作パラメータを特定する制御電子回路(4)と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- インバータ(1)のハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタである第1のトランジスタ(2)および第2のトランジスタ(3)と、
- 制御電子回路(4)であって、
- 前記第1のトランジスタ(2)がスイッチオンされ、前記第2のトランジスタ(3)がスイッチオフ状態であり、前記第1のトランジスタの寄生容量が第1のスイッチング動作時に放電される、第1のスイッチング動作をトリガし、
- 前記第1のトランジスタ(2)がスイッチオフまたは再度スイッチオンされ、同時に前記第2のトランジスタ(3)が前記スイッチオフ状態のままであり、前記第1のトランジスタの寄生容量が、第2のスイッチング動作時に既に放電されている、第2のスイッチング動作をトリガし、
- 前記第1のスイッチング動作の持続時間と、前記第2のスイッチング動作の持続時間との差を表す時間差を検出し、かつ、
- 前記時間差に基づいて、前記第1のトランジスタ(2)の特性動作パラメータを特定する、
ように構成されている制御電子回路(4)と、
を含む、インバータ(1)。
【請求項2】
前記寄生容量はミラー容量であり、前記特性動作パラメータは、前記ミラー容量の電荷または容量値である、請求項1に記載のインバータ(1)。
【請求項3】
前記制御電子回路(4)は、前記第1のトランジスタ(2)のゲート電流を設定または検出し、前記第1のトランジスタ(2)のゲート電流と、前記時間差とに基づいて、前記第1のトランジスタ(2)の前記特性動作パラメータを特定するようにさらに構成されている、請求項1または2に記載のインバータ(1)。
【請求項4】
前記特性動作パラメータは、前記第1のトランジスタ(2)のミラー容量の電荷であり、前記第1のトランジスタ(2)のゲート電流と、前記時間差との乗算によって特定される、請求項3に記載のインバータ(1)。
【請求項5】
前記第1のスイッチング動作と、前記第2のスイッチング動作とは、前記インバータ(1)の無負荷状態で行われる、請求項1~4のいずれか一項に記載のインバータ(1)。
【請求項6】
前記第1のスイッチング動作は、前記インバータ(1)を無負荷状態に切り替えた後の最初のスイッチング動作である、請求項5に記載のインバータ(1)。
【請求項7】
前記第1のスイッチング動作の持続時間および/または前記第2のスイッチング動作の持続時間は、前記スイッチング動作時に前記第1のトランジスタ(2)のゲートソース間電圧が上昇または降下する時間によって定義されている、請求項1~6のいずれか一項に記載のインバータ(1)。
【請求項8】
前記第1のトランジスタ(2)は、前記第2のスイッチング動作時に再度スイッチオンされ、前記第1のトランジスタ(2)は、前記第1のスイッチング動作と、前記第2のスイッチング動作との間に行われる中間スイッチング動作でスイッチオフされ、これにより、続く前記第2のスイッチング動作で再度スイッチオンすることが可能になり、前記第2のトランジスタ(3)は、前記中間スイッチング動作時にスイッチオフ状態のままである、請求項1~7のいずれか一項に記載のインバータ(1)。
【請求項9】
インバータのハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタである、第1のトランジスタ(2)および第2のトランジスタ(3)を含む、インバータ(1)のトランジスタの特定動作パラメータ検出方法であって、
- 前記第1のトランジスタ(2)がスイッチオンされ、前記第2のトランジスタ(3)がスイッチオフ状態であり、前記第1のトランジスタの寄生容量が第1のスイッチング動作時に放電される、前記第1のスイッチング動作をトリガするステップと、
- 前記第1のトランジスタ(2)がスイッチオフまたは再度スイッチオンされ、同時に前記第2のトランジスタ(3)がスイッチオフ状態のままであり、前記第1のトランジスタの寄生容量が、第2のスイッチング動作時に既に放電されている、前記第2のスイッチング動作をトリガするステップと、
- 前記第1のスイッチング動作の持続時間と、前記第2のスイッチング動作の持続時間との差を表す時間差を検出するステップと、
- 前記時間差に基づいて、前記第1のトランジスタ(2)の特性動作パラメータを特定するステップと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータのトランジスタの特性動作パラメータ検出に適したインバータに関する。
【背景技術】
【0002】
MOSFETに代表される炭化ケイ素トランジスタは、自動車環境におけるインバータの主要構成部品である。インバータの耐用年数を通して、インバータの構成部品の経年劣化が発生し、経年劣化はインバータのトランジスタにも該当する。このトランジスタの経年劣化により、経年劣化による、またはトランジスタの使用に起因する一定の負荷条件による、トランジスタの動作パラメータの低下が生じる。トランジスタの動作パラメータが目標値から外れる可能性があるのは、他には製造工程における公差が原因である。
【0003】
インバータのトランジスタは、並列構成で使用される場合が多い。その際、個々のトランジスタの動作パラメータが異なると、電流分布が非対称になり、それに起因する損失によって、トランジスタの熱分布が不均一になる。このように分布が非対称であると、トランジスタの最大電流を流す個々のトランジスタチップのコーナー部分の負荷が高くなる。したがって、経年劣化の過程が加速される。
【0004】
全てのトランジスタに均等に負荷がかかるインバータにおいて、トランジスタの制御を可能にするためには、個々のトランジスタの動作パラメータを検知することが必要である。ミラー容量によって誘起されるミラー電荷、またはミラー容量の静電容量を算出するために、ドレインソース間電圧と、ゲートソース間電圧の電圧特性を考慮することが知られている。対応する値を特定するために、ゲートソース間電圧が経時的にサンプリングされ、分析される。しかし、このサンプリング動作は不正確になる場合がある。また、ドレインソース間電圧の監視が必要となり、追加のトリガが必要となる。また、トランジスタのスイッチオン動作にわたってゲートソース間電圧を監視することでは、寄生効果を推測できない。特に、トランジスタに内在していない容量は推測できない。例えば、複数のトランジスタチップの使用に起因する効果を考慮することはできない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るインバータは、インバータのハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタである、第1のトランジスタおよび第2のトランジスタと、制御電子回路であって、第1のトランジスタがスイッチオンされ、第2のトランジスタがスイッチオフ状態であり、第1のトランジスタの寄生容量が第1のスイッチング動作時に放電される、第1のスイッチング動作をトリガし、第1のトランジスタがスイッチオフまたは再度スイッチオンされ、同時に第2のトランジスタがスイッチオフ状態のままであり、第1のトランジスタの寄生容量が、第2のスイッチング動作時に既に放電されている、第2のスイッチング動作をトリガし、第1のスイッチング動作の持続時間と、第2のスイッチング動作の持続時間との差を表す時間差を検出し、かつ、時間差に基づいて、第1のトランジスタの特性動作パラメータを特定するように構成されている制御電子回路と、を含む。
【0006】
本発明に係る、インバータのハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタである、第1のトランジスタおよび第2のトランジスタを含む、インバータのトランジスタの特定動作パラメータ検出方法は、第1のトランジスタがスイッチオンされ、第2のトランジスタがスイッチオフ状態であり、第1のトランジスタの寄生容量が第1のスイッチング動作時に放電される、第1のスイッチング動作をトリガするステップと、第1のトランジスタがスイッチオフまたは再度スイッチオンされ、同時に第2のトランジスタはスイッチオフ状態のままであり、第1のトランジスタの寄生容量が、第2のスイッチング動作時に既に放電されている、第2のスイッチング動作をトリガするステップと、第1のスイッチング動作の持続時間と、第2のスイッチング動作の持続時間との差を表す時間差を検出するステップと、時間差に基づいて、第1のトランジスタの特性動作パラメータを特定するステップと、を含む。
【0007】
したがって、第1のトランジスタは2回スイッチオンされるか、最初にスイッチオンされ、その後スイッチオフされるかのいずれかである。特に、第1のトランジスタのスイッチオン動作時のゲート電荷が、第1のトランジスタのスイッチオフ動作時のゲート電荷に相当するか、または同程度であると仮定して、特性動作パラメータが特定される。
【0008】
ハイサイドトランジスタは、典型的には、インバータに供給される電源電圧を、インバータの出力側に対して接続するトランジスタである。ローサイドトランジスタは、典型的には、インバータの出力側を接地電位に接続するトランジスタである。スイッチング動作は、トランジスタが導通状態から非導通状態に変化する、または非導通状態から導通状態に変化する期間である。スイッチング動作は、典型的には、トランジスタに制御信号を供給し、特にゲートソース間電圧を変化させることで開始される。スイッチング動作は、その後、トランジスタがドレインソース接点を介して最小もしくは最大電流を流すことができる時、すなわち、ドレインソース電流が最小もしくは最大である時、またはドレインソース接点を介して降下する電圧が最小、典型的には0ボルト、もしくは最大である時に終了する。
【0009】
第1および/または第2のトランジスタは、特にMOSFETトランジスタである。制御電子回路は、時間差を検出するように構成されている。この時間差は、第1のスイッチング動作の持続時間と、第2のスイッチング動作の持続時間との差を定義する。時間差は、まず第1のスイッチング動作の持続時間を測定し、次に第2のスイッチング動作の持続時間を測定し、最終的に測定値から時間差を算出することによって検出することができる。第1のトランジスタの特性動作パラメータは、時間差に基づいて特定される。つまり、第2のトランジスタがスイッチオフされている際の第1のトランジスタのスイッチオン特性から、第1のトランジスタの特性を特定することができる。
【0010】
第1のスイッチング動作時に、第1のトランジスタの寄生容量が放電される。つまり、寄生容量は第1のスイッチング動作前に充電状態にあり、放電できる。ここで、寄生容量は、トランジスタによって形成される容量で、トランジスタ自体の特性によって生じるものである。したがって、寄生容量は、トランジスタに接続されている独立した構成部品ではない。第2のスイッチング動作では、第1のトランジスタの寄生容量が既に放電されている。例えば、第1のトランジスタの寄生容量は、第1のスイッチング動作時に既に放電されており、第2のスイッチング動作が行われるまで、この状態のままである。
【0011】
引用形式請求項には、本発明の好ましい改善形態が示されている。
寄生容量は、ミラー容量であることが好ましく、特性動作パラメータは、ミラー容量の電荷または容量値である。ここで、ミラー容量は、トランジスタのドレイン接点とゲート接点との間に発生する容量である。ミラー容量は、トランジスタがスイッチングされる前にゲート電流で放電される必要があるため、トランジスタのスイッチング動作を遅らせることができる。したがって、ミラー容量に蓄積された電荷、またはミラー容量の容量値を特定することは、これらの値に基づいてトランジスタのスイッチング動作を時間調整することができるため、有利である。
【0012】
制御電子回路は、第1のトランジスタのゲート電流を設定または検出し、第1のトランジスタのゲート電流と、時間差とに基づいて、第1のトランジスタの特性動作パラメータを特定するようにさらに構成されていることが好ましい。特に、ゲート電流はトランジスタの寄生容量に流れ込む。これにより、ゲート電流は、トランジスタの寄生容量を計算する動作パラメータの計算根拠とすることができる。したがって、必要な計算を行うために既知となるように、第1のトランジスタのゲート電流を設定または検出することが有利である。時間差は、ゲート電流が寄生容量に流れ込む時間を規定する。
【0013】
また、特性動作パラメータは、第1のトランジスタのミラー容量の電荷であり、第1のトランジスタのゲート電流と時間差との乗算によって特定されると有利である。特に、第1のトランジスタのミラー容量は、複数のトランジスタのスイッチング動作を同期化または調整するために重要なパラメータである。第1のトランジスタのゲート電流と時間差との乗算によってミラー容量を計算することで、電圧を測定することなくミラー容量を特定することが可能である。特に、特定するミラー容量値について、特に正確な結果を得ることができる。
【0014】
また、第1のスイッチング動作と、第2のスイッチング動作とは、インバータの無負荷状態で行われると有利である。これにより、接続された負荷を介して、第1のトランジスタと第2のトランジスタとの間の出力接点に電流が流れることが防止される。したがって、測定結果は間違ったものにならない。
【0015】
また、第1のスイッチング動作は、インバータを無負荷状態に切り替えた後の最初のスイッチング動作であると有利である。つまり、インバータが負荷運転後に無負荷状態に切り替えられた後、第1のトランジスタおよび/または第2のトランジスタが他のスイッチング動作を行っていない。つまり、無負荷でない状態で動作した結果、第1および/または第2のトランジスタの寄生容量がまだ十分に充電されている。したがって、インバータが無負荷状態に切り替えられた後、できるだけ早く第1のスイッチング動作が行われる場合も有利である。したがって、第1のスイッチング動作は、無負荷状態が検出された直後に行われることが好ましい。第1および第2のトランジスタの寄生容量が完全に充電されていることにより、特性動作パラメータへの影響を特に正確に特定することができる。
【0016】
第2のスイッチング動作は、第1のスイッチング動作直後の最初のスイッチング動作であることが好ましい。これは、第2のスイッチング動作において、第1のトランジスタがスイッチオフされると特に有利である。これにより、特性動作パラメータを特定する際に、例えば温度変化など他のパラメータによって結果が間違ったものになることを防ぐことができる。
【0017】
第1のスイッチング動作の持続時間および/または第2のスイッチング動作の持続時間は、スイッチング動作時に第1のトランジスタのゲートソース間電圧が上昇または降下する時間によって定義されていることが好ましい。特に、第1のスイッチング動作の持続時間は、第1のトランジスタのゲートソース間電圧が上昇する持続時間によって定義されている。第2のスイッチング動作が第1のトランジスタのスイッチオフである場合、第2のスイッチング動作の持続時間は、第2のスイッチング動作時に第1のトランジスタのゲートソース間電圧が降下する時間によって定義されている。第2のスイッチング動作が、第2のスイッチング動作時の第1のトランジスタの再度のスイッチオンである場合、第2のスイッチング動作の持続時間は、第1のトランジスタのゲートソース間電圧がスイッチング動作時に最大値まで上昇する時間によって定義されている。このように、スイッチング動作は、ゲートソース間電圧の上昇または降下によって定義されている。
【0018】
また、第1のトランジスタが、第2のスイッチング動作時に再度スイッチオンされ、第1のトランジスタが、第1のスイッチング動作と第2のスイッチング動作との間に行われる中間スイッチング動作でスイッチオフされ、これにより、続く第2のスイッチング動作で再度スイッチオンすることが可能になり、第2のトランジスタが中間スイッチング動作時にスイッチオフ状態のままであると有利である。第1のトランジスタを再度スイッチオンするためには、まず第1のトランジスタをスイッチオフする必要がある。これは、中間スイッチング動作によって行われる。同時に、これによって、中間スイッチオン動作において、第1および/または第2のトランジスタの容量を放電させることが可能となる。したがって、第1のトランジスタの容量が充電された場合と、第1のトランジスタの容量が放電された場合とのスイッチング動作を比較することができる。
【0019】
本発明に係るインバータは、本発明に係る方法の全ての利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
以下に、添付図面を参照して、本発明の実施例を詳細に説明する。
図1】本発明に係るインバータの図である。
図2】第1のスイッチング動作時における第1のトランジスタのゲートソース間電圧特性である。
図3】第2のスイッチング動作時における第1のトランジスタのゲートソース間電圧特性を示す図である。
図4】第1のスイッチング動作時における第1のトランジスタのドレインソース間電圧を示す図である。
図5】第2のスイッチング動作時における第1のトランジスタのドレインソース間電圧特性を示す図である。
図6】第1のトランジスタのゲート電流を検出する回路の回路図である。
図7】連続してスイッチング動作する場合の、第1および第2のスイッチング動作時における第1のトランジスタのドレインソース間電圧およびゲートソース間電圧の図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、第1のトランジスタ2と、第2のトランジスタ3とを含むインバータ1を示す。第1のトランジスタ2は、インバータ1のローサイドトランジスタであり、第2のトランジスタ3は、インバータ1のハイサイドトランジスタである。
【0022】
第2のトランジスタ3は、ドレイン接点がインバータ1の電源電圧の電位に接続されており、これを介して電源電圧VDDが供給される。例えば、300ボルトの電源電圧VDDが供給される。第2のトランジスタ3のソース接点は、インバータ1の出力接点5と、第1のトランジスタ2のドレイン接点とに接続されている。第1のトランジスタ2のソース接点は、回路アースに接続されている。したがって、第1のトランジスタ2と第2のトランジスタ3とは、その開閉接点を介して直列に接続されている。第1のトランジスタ2のゲート接点と第2のトランジスタ3のゲート接点とは、インバータ1の制御電子回路4に結合されている。制御電子回路4は、本発明に係る方法を実行するために構成されている。
【0023】
インバータ1の通常動作では、第2のトランジスタ3と第1のトランジスタ2とが交互に切り替わるため、電源電圧VDDおよび接地電位が出力接点5に交互に印加される。このようにして、例えば、車両のモータを作動させる交流の相が生成される。
【0024】
第1のトランジスタ2と第2のトランジスタ3のスイッチング動作を調整するために、2つのトランジスタ2、3の特性動作パラメータが、制御電子回路4に対して既知であると有利である。例えば、第1のトランジスタの寄生容量が既知であれば、第1のトランジスタのスイッチング時間に影響を与えるため有利である。第1のトランジスタ2の特性動作パラメータによって、例えば、第1のトランジスタ2のミラー電荷QGD特性が説明される。さらに例示的な特性動作パラメータは、第1のトランジスタ2のスイッチオン容量と、ゲートソース容量である。
【0025】
以下に、第1のトランジスタ2のミラー電荷QGDの特定方法について説明する。しかし、他の特性動作パラメータもミラー電荷QGDに依存することが多いため、他の特性動作パラメータもこの方法に基づいて特定できることに留意されたい。
【0026】
制御電子回路4は、まず、インバータ1が無負荷状態である時点を検出する。これは、例えば、インバータ1が搭載された電気自動車が休止状態であり、車両のモータによってインバータ1から電流が取り出されない場合が該当する。特に、この状態では、モータコイルがインバータ1から切り離される。インバータ1の無負荷状態では、典型的には、第1のトランジスタ2および第2トランジスタ3の両方が、最初はスイッチオフ状態である。つまり、この状態では、最初はトランジスタ2、3のドレイン接点およびソース接点を介して電流が流れない。
【0027】
第1のスイッチング動作は、制御電子回路4によってトリガされる。第1のスイッチング動作では、第1のトランジスタ2がスイッチオンされ、第2のトランジスタ3はスイッチオフ状態のままである。第1のスイッチング動作に対する第1のトランジスタ2のゲートソース間電圧が、図2に経時的に示されている。さらに、第1のスイッチング動作に対する第1のトランジスタ1のドレインソース間電圧が、図4に経時的に示されている。
【0028】
図2には、第1のスイッチング動作時における第1のトランジスタ2のゲートソース間電圧VGSの電圧特性10が経時的に示されている。すなわち、図2から、第1のトランジスタ2のゲートソース間電圧が、第1の期間t1において最初に上昇することがわかる。第1の期間t1に続く第2の期間t2において、第1のトランジスタ2のゲートソース間電圧はプラトー上に留まる。このプラトーは、第1のトランジスタ2のドレインおよびゲート間の寄生容量、すなわちミラー容量に起因するものである。第2の期間t2において、第1のトランジスタ2のゲートに流れるゲート電流を介して、第1のスイッチング動作の開始時に充電されたミラー容量が放電され、その結果、この期間、第1のトランジスタ2のゲートソース間電圧は上昇しなくなる。第2の期間t2が経過すると、ゲートソース間電圧は、第3の期間t3において最大値に達するまで上昇し続ける。ゲートソース間電圧は、制御電子回路4から供給される。
【0029】
図4には、第1のスイッチング動作時における第1のトランジスタ2のドレインソース間電圧VDSの電圧特性11が経時的に示されている。第1の期間t1では、ドレインソース間電圧は高電圧レベルのままである。第2のトランジスタ3はスイッチオフ状態であるが、それでもトランジスタ2、3の容量にシステム内の電荷が保持され、その結果、図4の第1の期間t1に示される、第1のトランジスタ2に関する最大ドレインソース間電圧VDSが得られる。この状態を最初に維持するために、第1のスイッチング動作が、インバータ1が無負荷状態に移行した後、そのスイッチング動作よりも前に第1または第2のトランジスタ3によって他のスイッチング動作が行われないスイッチング動作であると有利である。したがって、第1のスイッチング動作は、インバータを無負荷状態に切り替えた後の最初のスイッチング動作である。
【0030】
第2の期間t2にわたって、第1のトランジスタ2のドレインおよびソース間に電流が流れ始め、第1のトランジスタのドレインおよびソースに印加される電圧が降下する。これは、第3の期間t3の終了まで続き、この時、第1のトランジスタ2のドレインソース間電圧は、最小値である0ボルトに到達する。第1のトランジスタ2を介してドレインソース間電圧が0ボルトに降下すると、これはすなわち、インバータ1の出力接点5も0ボルトの電位になることを意味する。したがって、第2のトランジスタ3のドレインソース間電圧VDSは、最大レベルに到達するまで上昇する。スイッチオン期間tONは、第1の期間t1と、第2の期間t2と、第3の期間t3と、を含む。スイッチオン期間tONの持続時間は、例えば、第1のトランジスタ2のゲート電流を監視することによって、制御電子回路4によって検出される。
【0031】
また、図4には、第1のスイッチング動作時の第2のトランジスタ3のドレインソース間電圧VDSの電圧特性12が経時的に示されている。
第1のスイッチング動作では、第1のトランジスタの寄生容量が負荷運転時に充電され、その後放電される。
【0032】
第1のスイッチング動作の完了後、制御電子回路4によって第2のスイッチング動作がトリガされる。この時、第2のトランジスタ3はスイッチオフ状態のままである。第2のスイッチング動作では、第1のトランジスタ2がスイッチオフされる。図3は、第1のトランジスタ2のゲートソース間電圧VGSの電圧特性10を示す。これに対応して、第1のトランジスタ2のドレインソース間電圧VDSの関連する電圧特性11が図5に示されている。図3から、第4の期間t4が経過した後に第2のスイッチング動作が開始されることがわかる。したがって、第2のスイッチング動作は、スイッチオフ期間toffとも呼ばれる第5の期間t5にわたって延びている。第1および第2のスイッチング動作の両方において第2のトランジスタ3がスイッチオフされたため、第1のトランジスタ2の寄生容量に電荷が流れ込んで充電することはできない。したがって、第5の期間t5において、ゲートソース間電圧は連続的に降下するようになる。図5に示される第1のトランジスタ2のドレインソース間電圧VDSの電圧特性11で、第2のスイッチング動作に関連するものを見ると、第1のトランジスタ2に関するドレインソース間電圧VDSが0ボルトのままであることがわかる。これは、第2のトランジスタ3が依然としてスイッチオフされているため、第1のトランジスタ2に関するドレインソース間電圧VDSを確立できるような電流が、第2のトランジスタ3を通って流れないためである。つまり、第2のトランジスタ3がスイッチオフされているため、第1のトランジスタ2はいかなる電圧源からも切り離されている。インバータ1の出力接点5の電圧レベルは0ボルトの電位であるため、第1のトランジスタ2に関する電圧降下も、そのスイッチング状態にかかわらず0ボルトのままである。
【0033】
また、図5には、第2のスイッチング動作時における第2のトランジスタ3のドレインソース間電圧VDSの電圧特性12が経時的に示されている。
また、第2のトランジスタ3は、第1のスイッチング動作と第2のスイッチング動作との間の全ての考えられる時間範囲において、スイッチオフ状態のままである。したがって、第2のスイッチング動作が行われる前に、第1のトランジスタの寄生容量が再充電されることが防止される。ここで説明された状態では、第2のスイッチング動作時に既に第1のトランジスタの寄生容量が全て放電されており、かつ放電されたままになっている。図5に示される第2のトランジスタ3のドレインソース間電圧VDSの電圧特性は、ドレインソース間電圧VDSが第2のスイッチング動作の間、特に電源電圧VDDに相当するその最大値のままであることを示している。
【0034】
第1のスイッチング動作と第2のスイッチング動作とによって、第1のトランジスタの2つのスイッチング動作が行われ、第1のトランジスタ2のミラー容量は、スイッチング動作のうちの1つ、ここでは第1のスイッチング動作時に充放電され、第1のトランジスタ2のミラー容量は、既に第2のスイッチング動作時に放電されている。つまり、第1のトランジスタ2のミラー容量に蓄積されたミラー電荷QGDは、第2のスイッチング動作時、スイッチング時間、すなわち第2のスイッチング動作の持続時間に影響を及ぼさない。したがって、第1のスイッチング動作の持続時間、すなわちスイッチオン期間tONと、第2のスイッチング動作の持続時間、すなわちスイッチオフ期間toffとの時間差から、ミラー電荷QGDを推測することが可能である。このため、制御電子回路4は、第1のスイッチング動作の持続時間と、第2のスイッチング動作の持続時間との間の差を表す時間差を検出する。これは、スイッチオン期間tONと、スイッチオフ期間toffとの間の差からわかる。
【0035】
また、制御電子回路4は、第1のトランジスタ2のゲート電流Iを検出し、これは、第1のスイッチング動作がトリガされた時に第1のトランジスタ2のゲート接点に印加され、また、第1のトランジスタ2のミラー容量の充電に使用される。この第1のトランジスタ2のゲート電流Iと、時間差とを乗算することにより、第1のトランジスタ2のミラー容量QGDの電荷が特定される。
【0036】
ミラー容量の計算は、以下の数学的関係から導かれる。
【0037】
【数1】
【0038】
【数2】
【0039】
【数3】
【0040】
電荷QGS1は、第1の期間において、ゲート電流Iを介して第1のトランジスタ2の容量に流れる電荷である。電荷QGS2は、第3の期間tにおいて、ゲート電流Iを介して第1のトランジスタ2の容量に流れる電荷である。電荷QGSは、ミラー電荷であると同時に、第2の期間tにおいて、ゲート電流Iを介して第1のトランジスタ2の容量に流れる電荷である。
【0041】
【数4】
【0042】
【数5】
【0043】
第1のスイッチング動作に必要な電荷QGONは、スイッチオン期間tONにわたって、ゲート電流Iを介して第1のトランジスタ2の容量に流れる電流からわかる。第2のスイッチング動作に必要な電荷QGOFFは、スイッチオフ期間toffにわたって、ゲート電流Iを介して第1のトランジスタ2の容量に流れる電流からわかる。
【0044】
【数6】
【0045】
【数7】
【0046】
【数8】
【0047】
式(1)~(5)を適宜変形すると、ゲート電流Iが既知であれば、スイッチオン期間tONとスイッチオフ期間toffの差からミラー容量の電荷QGDを特定できる。
任意選択的に、第2のスイッチング動作は、第1のトランジスタ2が再度スイッチオンされるスイッチング動作である。これは図7に示されている。第1のトランジスタ2を再度スイッチオンできるようにするために、予めオフにしておく必要がある。これは、中間スイッチング動作時に行うことが好ましい。また、第2のトランジスタ3は、中間スイッチング動作の間、スイッチオフ状態のままである。この場合も、第1のトランジスタの寄生容量の放電は、第1のスイッチング動作時に行われ、第2のスイッチング動作時にも放電されたままとなる。
【0048】
例えば、図7の上部に示されている第1のトランジスタ2のゲートにPWM信号を印加し、第1のトランジスタ2をオンオフさせる。図7に示されている第1のトランジスタ2のドレインソース間電圧VDSの電圧特性からは、第1のトランジスタ2のドレインソース間電圧VDSは、第1のスイッチング動作時のみ上昇し、その後の第2のスイッチング動作時には上昇しないことがわかる。その結果、図7の下部に示されているように、第1のスイッチング動作における第1のトランジスタ2のゲートソース間電圧VGSの上昇が、第2のスイッチング動作に比べて遅れる。
【0049】
ゲートソース間電圧が第1のトランジスタ2を越えて上昇する場合、第2の期間tは省略される。第2のスイッチング動作のスイッチオン時間は、第1の期間tに第3の期間tを加えたものになる。
【0050】
したがって、第1のスイッチング動作では、スイッチオン期間tONは、第1から第3の期間の和t+t+tによって生じる。第2のスイッチング動作において、スイッチオン期間tONは、ミラー容量が既に放電されていることにより第2の期間tが省略されるため、第1と第3の期間の和t+tによって生じる。
【0051】
この場合、ミラー電荷は、ゲート電流Iと、ここではtである時間差との乗算から算出できる。これは、これらの値を乗算することで、先に述べた式(6)~(8)に加えても行われる。
【0052】
【数9】
【0053】
ここで、第2の期間tは、スイッチオン期間tONと、スイッチオフ期間toffとの差に相当する。
第1のトランジスタ2のゲートに供給される電流Iは、例えば、図6に示されている回路によって測定される。したがって、ゲート電流Iは、投入電流源20から供給されて第1のトランジスタ2のゲート接点に流れる。ゲート電流Iに対応する電圧は分圧器21を介して取り出され、アナログ/デジタル変換器22でデジタル値に変換される。このデジタル値を用いて、ここではミラー容量またはミラー電荷である特性動作パラメータを計算することができる。
【0054】
先に説明した実施形態では、第1のトランジスタ2はローサイドトランジスタである。しかし、第2のトランジスタ3、すなわちハイサイドトランジスタの特性動作パラメータも、同じ方法で検出できることに留意されたい。制御電子回路とインバータ1が対称的な構成であるため、これは適宜可能である。
【0055】
数学的背景で記載された値、例えばスイッチオン容量またはスイッチオフ容量CON、Coffおよび/またはインバータ1に関連する電荷および容量特性も検出できることに留意されたい。
【0056】
上記の説明に加えて、図1から図7の開示を明示的に参照する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【外国語明細書】