(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023106353
(43)【公開日】2023-08-01
(54)【発明の名称】クリップシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 17/122 20060101AFI20230725BHJP
A61B 17/128 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
A61B17/122
A61B17/128
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006727
(22)【出願日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】63/301,121
(32)【優先日】2022-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】304050923
【氏名又は名称】オリンパスメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100207789
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 良平
(72)【発明者】
【氏名】湯淺 勝
(72)【発明者】
【氏名】原口 林太郎
(72)【発明者】
【氏名】新藤 尚吾
(72)【発明者】
【氏名】田中 雄樹
(72)【発明者】
【氏名】滝澤 直輝
(72)【発明者】
【氏名】鎌形 真世
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 京介
(72)【発明者】
【氏名】船越 靖生
(72)【発明者】
【氏名】上阪 健輔
(72)【発明者】
【氏名】川除 昌一郎
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160CC02
4C160CC07
4C160CC18
4C160CC40
(57)【要約】
【課題】生体組織を縫縮する処置に最適なクリップシステムを提供する。
【解決手段】クリップシステムは、開閉可能な第一アームと第二アームとを有するクリップユニットと、前記クリップの開閉を操作可能なワイヤと、前記ワイヤが挿通可能なシースと、備え、前記クリップユニットは、前記第一アームと前記第二アームとスイング可能に支持する支持部を有する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉可能な第一アームと第二アームとを有するクリップユニットと、
前記第一アームおよび前記第二アームの開閉を操作可能なワイヤと、
前記ワイヤが挿通可能なシースと、
を備え、
前記クリップユニットは、前記第一アームと前記第二アームとをスイング可能に支持する支持部を有する、
クリップシステム。
【請求項2】
前記第一アームおよび前記第二アームがスウィングする平面は、前記第一アームおよび前記第二アームが開閉する平面と略一致する、
請求項1に記載のクリップシステム。
【請求項3】
前記支持部は、
前記第一アームを前記シースに近付ける方向にスイング可能であり、
前記第二アームを前記シースから遠ざける方向にスイング可能である、
請求項1に記載のクリップシステム。
【請求項4】
前記第一アームおよび前記第二アームは、板状に形成されており、
前記第一アームおよび前記第二アームの板厚方向は、前記第一アームおよび前記第二アームのスイング方向と略一致する、
請求項1に記載のクリップシステム。
【請求項5】
前記第一アームおよび前記第二アームは、板状に形成されており、
前記第一アームおよび前記第二アームの板厚方向は、前記第一アームおよび前記第二アームの開閉方向と略一致する、
請求項1に記載のクリップシステム。
【請求項6】
前記シースは、前記第一アームおよび前記第二アームがスウィングする方向にシースの撓みを規制する規制部を有する、
請求項1に記載のクリップシステム。
【請求項7】
前記シースは、コイルシースであり、
前記規制部は、前記コイルシースの外周面を溶接した部分である、
請求項6に記載のクリップシステム。
【請求項8】
前記支持部は、前記第一アームと前記第二アームの少なくとも一方が生体組織と接触することより、前記第一アームおよび前記第二アームをスウィングさせる、
請求項1に記載のクリップシステム。
【請求項9】
前記支持部は、前記第一アームと前記第二アームの少なくとも一方に外力が加えられることより、前記第一アームおよび前記第二アームをスウィングさせる、
請求項1に記載のクリップシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
この出願は、2022年01月20日に出願された米国仮出願第63/301,121号の利益を主張し、その全文が参照により本明細書に援用される。
【0002】
[技術分野]
本発明は、クリップシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
内視鏡的治療において、生体組織を処置するクリップユニット等の医療器具が使用されている。これらの医療器具は、内視鏡のチャンネルを挿通可能な導入装置によって処置位置に導入される。
【0004】
特許文献1には、生体組織に穿刺させる処置具が記載されている。特許文献1に記載の処置具は、生体組織に穿刺された状態で体内に留置することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しがしながら、特許文献1に記載の処置具は、例えば組織の切除部や欠損部を縫縮する処置を実施するために必ずしも最適な処置具ではなかった。
【0007】
上記事情を踏まえ、本発明は、生体組織を縫縮する処置に最適なクリップシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の第一の態様に係るクリップシステムは、開閉可能な第一アームと第二アームとを有するクリップユニットと、前記クリップの開閉を操作可能なワイヤと、前記ワイヤが挿通可能なシースと、備え、前記クリップユニットは、前記第一アームと前記第二アームとスイング可能に支持する支持部を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のクリップシステムは、例えば切除部や欠損部を縫縮する処置を好適に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】第一実施形態に係るクリップユニットの斜視図である。
【
図3】一対のアームがスウィングした同クリップユニットの斜視図である。
【
図4】同アプリケータに装填された同クリップユニットの斜視図である。
【
図5】体内の生体組織に形成された欠損部を示す図である。
【
図7】正面アプローチにより同欠損部を処置する同クリップユニットを示す図である。
【
図8】接線アプローチにより同欠損部を処置する同クリップユニットを示す図である。
【
図9】一対のアームがスウィングした同クリップユニットを示す図である。
【
図10】同クリップユニットによる牽引ステップを示す図である。
【
図11】同クリップユニットによる分離ステップを示す図である。
【
図12】同アプリケータのシースの変形例を示す図である。
【
図15】同シースの変形例を用いたアプローチステップを示す図である。
【
図16】第二実施形態に係るクリップユニットの斜視図である。
【
図17】同クリップユニットの組織把持部の側面図である。
【
図18】第一粘膜と第二粘膜とを把持する一対のアームの斜視図である。
【
図19】第一粘膜と第二粘膜とを把持する一対のアームの側面図である。
【
図20】同クリップユニットによる牽引ステップを示す図である。
【
図21】第三実施形態に係るクリップユニットの斜視図である。
【
図22】同クリップユニットの組織把持部の側面図である。
【
図23】第一粘膜と第二粘膜とを把持する一対のアームの斜視図である。
【
図24】第四実施形態に係るクリップユニットの斜視図である。
【
図25】同クリップユニットが装填されるアプリケータを示す図である。
【
図26】同クリップユニットによる第一把持ステップを示す図である。
【
図27】同クリップユニットによる第一把持ステップを示す図である。
【
図28】同クリップユニットによる第二把持ステップを示す図である。
【
図29】同クリップユニットによる分離ステップを示す図である。
【
図30】第五実施形態に係るクリップユニットの斜視図である。
【
図31】同クリップユニットによる第一把持ステップを示す図である。
【
図32】同クリップユニットによる第二把持ステップを示す図である。
【
図33】同クリップユニットによる分離ステップを示す図である。
【
図34】同クリップユニットによる第一把持ステップと第二把持ステップの別の態様を示す図である。
【
図35】第六実施形態に係るクリップユニットの斜視図である。
【
図36】同クリップユニットによる第一把持ステップを示す図である。
【
図37】同クリップユニットによる第二把持ステップを示す図である。
【
図38】同クリップユニットによる牽引ステップを示す図である。
【
図39】同クリップユニットによる分離ステップを示す図である。
【
図40】第七実施形態に係るクリップユニットの斜視図である。
【
図41】同クリップユニットによる第一把持ステップを示す図である。
【
図42】同クリップユニットによる第一分離ステップを示す図である。
【
図43】同クリップユニットによる連結ステップを示す図である。
【
図44】同クリップユニットによる第二把持ステップを示す図である。
【
図45】同クリップユニットによる第二分離ステップを示す図である。
【
図46】第八実施形態に係るクリップユニットおよびアプリケータを示す図である。
【
図47】同クリップユニットの第一アームと第二アームの動作を示す図である。
【
図48】同クリップユニットによるアプローチステップを示す図である。
【
図49】同クリップユニットによる把持ステップを示す図である。
【
図50】同クリップユニットによる把持ステップを示す図である。
【
図51】同クリップユニットによる牽引ステップを示す図である。
【
図52】同クリップユニットによる正面アプローチを示す図である。
【
図53】同クリップユニットによる接線アプローチを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第一実施形態)
本発明の第一実施形態について、
図1から
図12を参照して説明する。
本実施形態に係るクリップシステム(クリップ装置、内視鏡縫縮用装置)300は、クリップユニット100と、アプリケータ200と、を備える。クリップユニット100は、内視鏡のチャンネルを挿通可能なアプリケータ200に装填されて処置位置に導入される。
【0012】
[アプリケータ200]
図1は、アプリケータ200の斜視図である。
アプリケータ(クリップユニット導入装置)200は、シース220と、操作ワイヤ230と、操作部240と、を備える。アプリケータ200は、例えば内視鏡の処置具挿通チャンネルに挿通され、内視鏡と組み合わせて使用される。そのため、シース220は、内視鏡の処置具挿通チャンネルの長さよりも十分に長く形成されている。シース220は、可撓性を有しており、内視鏡の挿入部の湾曲に合わせて湾曲する。
【0013】
シース220は、先端チップ221と、先端側コイル222と、手元側コイル224と、を備え、全体として細長い管状に形成されている。先端側コイル222は、シース220の先端部側に配置されている。先端チップ221は、先端側コイル222の先端部に配置されている。
【0014】
操作ワイヤ(動力伝達部材)230は、
図1に示すように、クリップユニット100に接続される矢尻フック部(接続部)231と、矢尻フック部231を操作するワイヤ232と、を備える。
【0015】
矢尻フック部231は、クリップユニット100と係合する略円錐形状の係合部231aと、係合部231aの基端に設けられたワイヤ接続部231bとを備える。矢尻フック部231は、例えばステンレス鋼材等の金属材により形成されている。
【0016】
ワイヤ232は、シース220に対して進退自在に挿通されている。ワイヤ232の先端部は、ワイヤ接続部231bの基端に例えば溶接によって固定されている。
【0017】
操作部240は、
図1に示すように、操作部本体241と、スライダ242と、サムリング248と、を備える。操作部本体241、スライダ242およびサムリング248は、例えば樹脂材によって射出成型されている。操作部本体241は、スリット部241aと、先端側に回転グリップ241bとを備える。スリット部241aは、スライダ242を進退可能に支持する。
【0018】
スライダ242は、操作部本体241の長手軸方向に進退可能に取り付けられており、ワイヤ232の基端が取り付けられている。スライダ242が操作部本体241に沿って進退することで、ワイヤ232がシース220に対して進退し、矢尻フック部231が進退する。
【0019】
サムリング248は、操作部本体241の基端に、操作部本体241の長手軸周りに回転可能に取り付けられている。
【0020】
[クリップユニット100]
図2は、本実施形態に係るクリップユニット100の斜視図である。
クリップユニット100は、クリップ2と、押さえ管3と、連結部材4と、を備える。以降の説明において、クリップユニット100の長手方向Aにおけるクリップ2側をクリップユニット100の先端側(遠位側)A1とし、連結部材4側をクリップユニット100の基端側(近位側)A2とする。
【0021】
クリップ(クリップアーム)2は、先端側A1に向かって開閉可能な一対のアーム21と、一対のアーム21を回動可能に支持する支持部28と、を有する。支持部28は、連結部材4の先端に取り付けられている。
【0022】
一対のアーム21は、第一アーム211と第二アーム212とを有する。第一アーム211と第二アーム212とは、クリップユニット100の長手方向Aにおける中心軸線O1を挟んで両側に配置される。第一アーム211と第二アーム212とが中心軸線O1に対して対称な位置に配置される一対のアーム21の位置を、一対のアーム21の「初期位置」とする。なお、クリップ2は3つ以上のアームを有してもよい。
【0023】
第一アーム211および第二アーム212は、板状に形成されており、第一アーム211と第二アーム212との板厚方向は、第一アーム211と第二アーム212との開閉方向Pと略一致する。
【0024】
第一アーム211および第二アーム212は、先端側A1から基端側A2に向かって組織把持部22と、平板状の把持部23と、支持部28に連結される連結部25と、を有する。組織把持部22は、第一アーム211および第二アーム212の先端を内側に向かって折り曲げられて形成されている。第一アーム211および第二アーム212の先端には、内側を向く爪24が形成されている。
【0025】
図3は、一対のアーム21がスウィングしたクリップユニット100の斜視図である。
支持部28は、長手方向Aに略垂直な方向に沿う回転軸ROを中心に、一対のアーム21を回動可能かつスウィング可能(回動可能)に支持する。回転軸ROを回転中心とした一対のアーム21のスウィング方向(回転方向)Qは、一対のアーム21の開閉方向Pと略一致している。すなわち、一対のアーム21がスウィングする平面(スウィングする一対のアーム21が通過する平面)と、一対のアーム21が開閉する平面(開閉する一対のアーム21が通過する平面)と、は略一致している。なお、回転軸ROは、長手方向Aに略垂直な方向に沿う軸に限定されず、長手方向Aに交差する方向に沿う軸であってもよい。
【0026】
支持部28は、第一アーム211と第二アーム212の少なくとも一方が生体組織と接触したときや、第一アーム211と第二アーム212の少なくとも一方に所定以上の外力が加えられたときなど、第一アーム211と第二アーム212の少なくとも一方に所定以上の力が加わったときに、一対のアーム21をスウィングさせる。それ以外の場合、支持部28は、一対のアーム21をスウィングさせない。
【0027】
押さえ管(管状部材)3は、クリップ2の少なくとも一部を格納可能な円管状の部材である。押さえ管3は、クリップ2が長手方向Aに進退する内部空間38を有する。押さえ管3は、内部空間38に引き込んだクリップ2を閉じた状態に固定できる。
【0028】
図4は、アプリケータ200に装填されたクリップユニット100の斜視図である。
連結部材4は、押さえ管3の内部空間38に挿入される挿入部41と、挿入部41の基端に設けられた連結部42と、を備える。挿入部41は、クリップ2の支持部28に取り付けられている。連結部42は、シース220内を挿通する矢尻フック部231に分離可能に連結される。
【0029】
挿入部41は、略円柱棒状に形成されている。挿入部41は、所定の破断力量が加えられたときに破断または変形する破断部を有する。破断部が破断または変形することにより、一対のアーム21と連結部42とは分離する。
【0030】
連結部42は、アプリケータ200の矢尻フック部231が係合(連結)される係合部である。連結部42は、連結部本体43と、弾性アーム部44と、を有する。
【0031】
弾性アーム部44は、連結部本体43の基端に設けられており、二股状に分岐している。弾性アーム部44は、連結部本体43に対して弾性変形可能であり、連結部本体43に対して開閉可能である。弾性アーム部44には、矢尻フック部231の係合部231aを把持して収納する切欠部44mが形成されている。切欠部44mは、矢尻フック部231の係合部231aの外周面に密着する形状に形成されている。
【0032】
[クリップユニット100を用いた縫縮処置]
次にクリップユニット100を用いた縫縮処置について説明する。具体的には、
図5に示すような体内の生体組織に形成された欠損部Dを内視鏡的治療により縫縮する処置について説明する。
【0033】
図6は、縫縮方向Sにおける欠損部Dの断面図である。
術者は、内視鏡を欠損部Dに近づける。術者は、欠損部Dを観察して、欠損部Dの大きさや形状から、欠損部Dを縫縮する縫縮方向Sを決める。以降の説明において、欠損部Dを取り囲む辺縁の粘膜であって、欠損部Dを挟んで縫縮方向Sにおいて対向して配置される粘膜を「第一粘膜M1」および「第二粘膜M2」という。
【0034】
<アプローチステップ>
術者は、アプリケータ200に装填されたクリップユニット100を内視鏡のチャンネルを経由して体内に導入する。術者は、内視鏡やシース220を移動させ、クリップユニット100のクリップ2を処置領域である欠損部Dに近づける。
【0035】
処置領域にクリップユニット100をアプローチする方法には、少なくとも正面アプローチAP1と接線アプローチAP2とがある。正面アプローチAP1では、術者は、内視鏡やシース220を操作することによって、クリップユニット100の長手方向Aが処置領域の表面に対して略垂直となるようにクリップユニット100を配置する。接線アプローチAP2では、術者は、内視鏡やシース220を操作することによって、クリップユニット100の長手方向Aが処置領域の表面に沿うようにクリップユニット100を配置する。
【0036】
<正面アプローチAP1>
図7は、正面アプローチAP1により欠損部Dを処置するクリップユニット100を示す図である。術者は、処置領域である欠損部Dに対して正面アプローチAP1によりクリップユニット100を近付ける。一対のアーム21は、初期位置に配置されている。一対のアーム21は、処置領域である欠損部Dの正面に対向して配置される。第一粘膜M1と第二粘膜M2とは、一対のアーム21により把持される。
【0037】
<接線アプローチAP2>
図8は、接線アプローチAP2により欠損部Dを処置するクリップユニット100を示す図である。術者は、処置領域である欠損部Dに対して接線アプローチAP2によりクリップユニット100を近付ける。一対のアーム21は、初期位置に配置されている。術者は、第一粘膜M1と第二粘膜M2のうち内視鏡側(手前側)にある粘膜(
図8においては第一粘膜M1)に第一アーム211の組織把持部22を引っ掛ける。
【0038】
図9は、一対のアーム21がスウィングしたクリップユニット100を示す図である。術者は、組織把持部22が第一粘膜M1に引っかけられたクリップユニット100を処置領域である欠損部Dに対してさらに近付ける。具体的には、術者は、内視鏡の処置具チャンネルに対してアプリケータ200を前進させる。または、術者は、内視鏡を前進させることで、クリップユニット100を欠損部Dに対してさらに近付ける。その結果、
図9に示すように、一対のアーム21は回転軸ROを中心にスウィングして(SW)、第二アーム212が第二粘膜M2に接触する。具体的には、支持部28は、第一アーム211をシース220に近付ける方向にスイングさせる。また。支持部28は、第二アーム212をシース220から遠ざける方向にスイングさせる。その結果、一対のアーム21は、処置領域である欠損部Dの正面に対向して配置される。第一粘膜M1と第二粘膜M2とは、一対のアーム21により把持される。
【0039】
<牽引ステップ>
図10は、クリップユニット100による牽引ステップを示す図である。
術者は、スライダ242を操作部本体241に沿って後退させることで、矢尻フック部231を後退させる。矢尻フック部231に連結された連結部材4は、クリップ2を牽引する。連結部材4により牽引されたクリップ2は、押さえ管3に引き込まれる。クリップ2が押さえ管3の所定に位置まで引き込まれると、クリップ2は押さえ管3に対する先端側A1への移動が規制され、一対のアーム21が閉状態にロックされる。一対のアーム21が閉状態にロックされると、一対のアーム21は開状態に戻ることはできない。
なお、
図10に示すアプリケータ200は、正面アプローチAP1によりアプリケータ200が処置領域の表面に対して略垂直となるように配置されている。アプリケータ200が接線アプローチAP2により配置された場合、アプリケータ200は処置領域の表面に沿うように配置される。
【0040】
<分離ステップ>
図11は、クリップユニット100による分離ステップを示す図である。
術者は、さらにクリップ2を牽引する。連結部材4の挿入部41の破断部に対して引っ張りによる破断力量が加えられ、破断部は破断する。その結果、一対のアーム21と連結部42とは分離する。術者は、シース220を後退させ、第一粘膜M1と第二粘膜M2とを結紮した状態であるクリップ2と押さえ管3を体内に留置する。
【0041】
本実施形態に係るクリップユニット100によれば、欠損部Dを縫縮する処置を好適に実施できる。接線アプローチAP2により欠損部Dを処置する場合であっても、一対のアーム21を回転軸ROを中心にスウィングさせて、一対のアーム21を処置領域である欠損部Dの正面に対向して配置できる。
【0042】
以上、本発明の第一実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および以下で示す変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0043】
(変形例1-1)
図12は、アプリケータ200のシース220の変形例であるシース220Aを示す図である。シース220Aは、先端チップ221と、先端側コイル222と、手元側コイル224と、規制部225と、を備える。規制部225は、先端側コイル222の外周面において長手方向Aに沿って設けられている。規制部225は、長手方向Aに対する周方向Cの一部にのみ設けられている。規制部225は、先端側コイル222の外周面を固定する部分である。規制部225は、例えば、先端側コイル222の外周面を溶接した部分である。規制部225は、板部材を先端側コイル222の外周面に溶接等により接合した部分であってもよい。
【0044】
図13および
図14は、シース220Aの動作を示す図である。
シース220Aの長手方向Aの中心軸に対して規制部225が設けられている側に先端側コイル222を曲げようとすると、シース220Aの先端側コイル222は
図13に示すようにシース220の先端側コイル222と同様に撓む。一方、シース220Aの長手方向Aの中心軸に対して規制部225が設けられている側と反対側に先端側コイル222を曲げようとすると、規制部225が先端側コイル222の外周面を固定しているため、シース220Aの先端側コイル222は
図14に示すように撓わない。
【0045】
図15は、シース220Aを用いたアプローチステップを示す図である。
術者が、接線アプローチAP2により一対のアーム21で第一粘膜M1と第二粘膜M2とを把持するとき、一対のアーム21を生体組織に対して押さえつける必要がある。このとき、シース220Aの規制部225をシース220Aの長手方向Aの中心軸に対して一対のアーム21がスウィングする方向(生体組織側)に配置しておけば、一対のアーム21を生体組織に対して押さえつけるときに先端側コイル222が撓まず、押さえつけやすい。シース220Aは、規制部225が設けられた位置を内視鏡により視認しやすくするマーカを有してもよい。
【0046】
(第二実施形態)
本発明の第二実施形態に係るクリップシステム300Bについて、
図16から
図20を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0047】
クリップシステム300Bは、クリップユニット100Bと、アプリケータ200と、を備える。クリップユニット100Bは、内視鏡のチャンネルを挿通可能なアプリケータ200に装填されて処置位置に導入される。
【0048】
図16は、本実施形態に係るクリップユニット100Bの斜視図である。
クリップユニット100Bは、クリップ2Bと、押さえ管3と、連結部材4と、を備える。
【0049】
クリップ(クリップアーム)2Bは、先端側A1に向かって開閉可能な一対のアーム21Bと、一対のアーム21Bをスウィング可能に支持する支持部28と、を有する。なお、支持部28は、一対のアーム21Bをスウィング不能に支持してもよい。
【0050】
一対のアーム21Bは、第一アーム211Bと第二アーム212Bとを有する。第一アーム211Bと第二アーム212Bとは、長手方向Aにおける中心軸線O1を挟んで両側に配置される。
【0051】
第一アーム211Bおよび第二アーム212Bは、先端側A1から基端側A2に向かって組織把持部22Bと、平板状の把持部23と、連結部25と、を有する。組織把持部22Bは、第一アーム211Bおよび第二アーム212Bの先端を内側に向かって折り曲げられて形成されている。
【0052】
組織把持部22Bは、組織把持部22Bの先端に設けられた先端部(アンカー)26aを有する。先端部(アンカー)26aは、略円板状に形成されており、板厚方向が一対のアーム21Bの開閉方向Pと略一致している。長手方向Aおよび開閉方向Pに略垂直な上下方向Bにおいて、先端部(アンカー)26aの長さは組織把持部22Bの他の部分の長さより長い。
【0053】
図17は、組織把持部22Bの側面図である。
組織把持部22Bの先端部(アンカー)26aは、開閉方向Pにおける内側に爪24Bを有する。爪24Bは、開閉方向Pにおける内側に向かって延びている。
【0054】
図18は、第一粘膜M1と第二粘膜M2とを把持する一対のアーム21Bの斜視図である。
図19は、第一粘膜M1と第二粘膜M2とを把持する一対のアーム21Bの側面図である。術者は、処置領域である欠損部Dに対して接線アプローチAP2によりクリップユニット100Bを近付ける。術者は、爪24Bを有する先端部(アンカー)26aにより第一粘膜M1と第二粘膜M2とを確実に把持できる。
【0055】
図20は、クリップユニット100Bによる牽引ステップを示す図である。
術者は、クリップ2を押さえ管3の所定に位置まで引き込んで、一対のアーム21Bを閉状態にロックする。爪24Bを有する先端部(アンカー)26aが第一粘膜M1と第二粘膜M2とを確実に把持するため、先端部(アンカー)26aが第一粘膜M1と第二粘膜M2とからズレにくい。
【0056】
本実施形態に係るクリップユニット100Bによれば、欠損部Dを縫縮する処置を好適に実施できる。一対のアーム21Bは、第一粘膜M1と第二粘膜M2とを確実に把持できる。
【0057】
以上、本発明の第二実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および以下で示す変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0058】
(第三実施形態)
本発明の第三実施形態に係るクリップシステム300Cについて、
図21から
図23を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0059】
クリップシステム300Cは、クリップユニット100Cと、アプリケータ200と、を備える。クリップユニット100Cは、内視鏡のチャンネルを挿通可能なアプリケータ200に装填されて処置位置に導入される。
【0060】
図21は、本実施形態に係るクリップユニット100Cの斜視図である。
クリップユニット100Cは、クリップ2Cと、押さえ管3と、連結部材4と、を備える。
【0061】
クリップ(クリップアーム)2Cは、先端側A1に向かって開閉可能な一対のアーム21Cと、一対のアーム21Cをスウィング可能に支持する支持部28と、を有する。なお、支持部28は、一対のアーム21Cをスウィング不能に支持してもよい。
【0062】
一対のアーム21Cは、第一アーム211Cと第二アーム212Cとを有する。第一アーム211Cと第二アーム212Cとは、長手方向Aにおける中心軸線O1を挟んで両側に配置される。
【0063】
第一アーム211Cおよび第二アーム212Cは、先端側A1から基端側A2に向かって組織把持部22Cと、平板状の把持部23と、連結部25と、を有する。組織把持部22Cは、第一アーム211Bおよび第二アーム212Bの先端を内側に向かって折り曲げられて形成されている。
【0064】
図22は、組織把持部22Cの側面図である。
組織把持部22Cは、第一アンカー26bと第二アンカー26cとを有する。第一アンカー26bと第二アンカー26cとは、組織把持部22Cの上下方向Bにおける両側に設けられている。第一アンカー26bと第二アンカー26cは上下方向Bに突出する鋭利な形状に形成されている。上下方向Bにおいて、第一アンカー26bの先端から第二アンカー26cの先端までの長さD1は、組織把持部22Bの他の部分の長さD2より長い。
【0065】
図23は、第一粘膜M1と第二粘膜M2とを把持する一対のアーム21Cの斜視図である。術者は、処置領域である欠損部Dに対して接線アプローチAP2によりクリップユニット100Cを近付ける。第一アンカー26bと第二アンカー26cのうち生体組織側のアンカー(
図23においては第二アンカー26c)は、生体組織に突き刺さる。術者は、第一アンカー26bと第二アンカー26cを有する組織把持部22Cにより第一粘膜M1と第二粘膜M2とを確実に把持できる。
【0066】
本実施形態に係るクリップユニット100Cによれば、欠損部Dを縫縮する処置を好適に実施できる。一対のアーム21Cは、第一粘膜M1と第二粘膜M2とを確実に把持できる。
【0067】
以上、本発明の第三実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および以下で示す変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0068】
(第四実施形態)
本発明の第四実施形態に係るクリップシステム300Dについて、
図24から
図29を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0069】
クリップシステム300Dは、クリップユニット100Dと、アプリケータ200Dと、を備える。クリップユニット100Dは、内視鏡のチャンネルを挿通可能なアプリケータ200Dに装填されて処置位置に導入される。
【0070】
図24は、本実施形態に係るクリップユニット100Dの斜視図である。
クリップユニット100Dは、クリップ2Dと、押さえ管3と、連結部材4と、を備える。クリップユニット100Dは、アプリケータ200Dに装填されて使用され、連結部材4に連結された矢尻フック部231から供給された高周波電流をクリップ2Dに供給できる。
【0071】
クリップ2Dは、先端側A1に向かって開閉可能な一対のアーム21Dと、一対のアーム21Dをスウィング可能に支持する支持部28と、を有する。なお、支持部28は、一対のアーム21Dをスウィング不能に支持してもよい。
【0072】
一対のアーム21Dは、第一アーム211Dと第二アーム212Dとを有する。第一アーム211Dと第二アーム212Dとは、長手方向Aにおける中心軸線O1を挟んで両側に配置される。第一アーム211Dと第二アーム212Dの少なくとも一方は通電性を有する。
【0073】
第一アーム211Dおよび第二アーム212Dは、先端側A1から基端側A2に向かって組織把持部22と、把持部23Dと、連結部25と、を有する。把持部23Dは、先端側A1が内側に屈曲する屈曲部23aを有する。
【0074】
図25は、クリップユニット100Dが装填されるアプリケータ200Dを示す図である。アプリケータ200Dは、シース220と、操作ワイヤ230と、操作部240Dと、を備える。
【0075】
操作部240Dは、操作部本体241と、スライダ242Dと、コネクタ247と、サムリング248と、を備える。
【0076】
スライダ242Dは、操作部本体241の長手軸方向に進退可能に取り付けられており、ワイヤ232の基端が取り付けられている。スライダ242Dが操作部本体241に沿って進退することで、ワイヤ232がシース220に対して進退し、矢尻フック部231が進退する。
【0077】
コネクタ247は、図示しない高周波電源装置に接続可能であり、ワイヤ232の基端部と電気的かつ物理的に接続される。コネクタ247は、高周波電源装置から供給された高周波電流を、ワイヤ232を経由して連結部材4およびクリップ2Dに供給可能である。コネクタ247は、スライダ242Dにより支持されており、略円柱状に形成されている。
【0078】
[クリップユニット100Dを用いた縫縮処置]
次にクリップユニット100Dを用いた縫縮処置について説明する。具体的には、
図5に示すような体内の生体組織に形成された欠損部Dを内視鏡的治療により縫縮する処置について説明する。
【0079】
<アプローチステップ>
術者は、アプリケータ200Dに装填されたクリップユニット100Dを内視鏡のチャンネルを経由して体内に導入する。術者は、内視鏡やシース220を移動させ、クリップユニット100Dのクリップ2Dを処置領域である欠損部Dに近づける。術者は、ワイヤ232を進退させてクリップ2Dを適切な状態に展開する。
【0080】
<第一把持ステップ>
図26および
図27は、クリップユニット100Dによる第一把持ステップを示す図である。術者は、クリップ2Dに高周波電流を流すことで欠損部Dの辺縁に小さな孔をあける。または、術者は、生体組織を損傷させて隆起(引っかかり)を形成する。例えば、術者は、
図26に示すように、第一アーム211Dに高周波電流を流して、第一粘膜M1に孔をあける。なお、術者は、
図27に示すように第一アーム211Dと第二アーム212Dとで第一粘膜M1を把持した状態で高周波電流を流してもよい。術者は、形成された小さな孔や隆起(引っかかり)に第一アーム211Dの先端を挿入することにより、第一粘膜M1を把持する。第一アーム211Dの先端は、形成された小さな孔や隆起(引っかかり)に挿入されるため滑りにくい。
【0081】
<第二把持ステップ>
図28は、クリップユニット100Dによる第二把持ステップを示す図である。
術者は、クリップユニット100Dを縫縮方向Sに沿う方向に移動させ、第二アーム212Dの先端を第二粘膜M2付近に移動させる。術者は、第一アーム211Dで第一粘膜M1を把持した方法と同様の方法により、第二アーム212Dで第二粘膜M2を把持する。
【0082】
<止血ステップ>
術者は、生体組織からの出血が生じた場合、クリップ2Dに高周波電流を流すことにより出血部位を焼灼して止血処置を実施してもよい。
【0083】
<牽引ステップ>
術者は、スライダ242Dを操作部本体241に沿って後退させることで、矢尻フック部231を後退させる。矢尻フック部231に連結された連結部材4は、クリップ2Dを牽引する。連結部材4により牽引されたクリップ2Dは、押さえ管3に引き込まれる。クリップ2Dが押さえ管3の所定に位置まで引き込まれると、クリップ2Dは押さえ管3に対する先端側への移動が規制され、一対のアーム21Dが閉状態にロックされる。一対のアーム21Dが閉状態にロックされると、一対のアーム21Dは開状態に戻ることはできない。
【0084】
<分離ステップ>
図29は、クリップユニット100Dによる分離ステップを示す図である。
術者は、さらにクリップ2Dを牽引する。連結部材4の挿入部41の破断部に対して引っ張りによる破断力量が加えられ、破断部は破断する。その結果、一対のアーム21Dと連結部42とは分離する。術者は、シース220を後退させ、第一粘膜M1と第二粘膜M2とを結紮した状態であるクリップ2Dと押さえ管3を体内に留置する。
【0085】
本実施形態に係るクリップユニット100Dによれば、欠損部Dを縫縮する処置を好適に実施できる。高周波電流により形成された小さな孔や隆起(引っかかり)にクリップ2Dの先端を挿入することにより、クリップ2Dが組織に対して滑りにくい。
【0086】
以上、本発明の第四実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および以下で示す変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0087】
(第五実施形態)
本発明の第五実施形態に係るクリップシステム300Eについて、
図30から
図34を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0088】
クリップシステム300Eは、クリップユニット100Eと、アプリケータ200Dと、を備える。クリップユニット100Eは、内視鏡のチャンネルを挿通可能なアプリケータ200Dに装填されて処置位置に導入される。
【0089】
図30は、本実施形態に係るクリップユニット100Eの斜視図である。
クリップユニット100Eは、クリップ2Eと、押さえ管3と、連結部材4と、を備える。クリップユニット100Eは、アプリケータ200Dに装填されて使用され、連結部材4に連結された矢尻フック部231から供給された高周波電流をクリップ2Eに供給できる。
【0090】
クリップ2Eは、先端側A1に向かって開閉可能な一対のアーム21Eと、一対のアーム21Eをスウィング可能に支持する支持部28と、を有する。なお、支持部28は、一対のアーム21Eをスウィング不能に支持してもよい。
【0091】
一対のアーム21Eは、第一アーム211Eと第二アーム212Eとを有する。第一アーム211Eと第二アーム212Eとは、長手方向Aにおける中心軸線O1を挟んで両側に配置される。第一アーム211Eと第二アーム212Eの少なくとも一方は通電性を有する。
【0092】
第一アーム211Eおよび第二アーム212Eは、先端側A1から基端側A2に向かって組織把持部22と、把持部23と、連結部25と、を有する。
【0093】
図31は、クリップユニット100Eによる第一把持ステップを示す図である。
術者は、第一アーム211Eに高周波電流を流して、第一粘膜M1に孔をあける。術者は、形成された小さな孔に第一アーム211Eの先端を挿入することにより、第一粘膜M1を把持する。第一アーム211Eの先端は、形成された小さな孔に挿入されるため滑りにくい。
【0094】
図32は、クリップユニット100Eによる第二把持ステップを示す図である。
術者は、クリップユニット100Eを縫縮方向Sに沿う方向に移動させ、第二アーム212Dの先端を第二粘膜M2付近に移動させる。術者は、第一アーム211Eで第一粘膜M1を把持した方法と同様の方法により、第二アーム212Dで第二粘膜M2を把持する。
【0095】
<止血ステップ>
術者は、生体組織からの出血が生じた場合、クリップ2Eに高周波電流を流すことにより出血部位を焼灼して止血処置を実施してもよい。
【0096】
<牽引ステップ>
術者は、スライダ242を操作部本体241に沿って後退させることで、矢尻フック部231を後退させる。矢尻フック部231に連結された連結部材4は、クリップ2Eを牽引する。連結部材4により牽引されたクリップ2Eは、押さえ管3に引き込まれる。クリップ2Eが押さえ管3の所定に位置まで引き込まれると、クリップ2Eは押さえ管3に対する先端側への移動が規制され、一対のアーム21Eが閉状態にロックされる。一対のアーム21Eが閉状態にロックされると、一対のアーム21Eは開状態に戻ることはできない。
【0097】
図33は、クリップユニット100Eによる分離ステップを示す図である。
術者は、さらにクリップ2Eを牽引する。連結部材4の挿入部41の破断部に対して引っ張りによる破断力量が加えられ、破断部は破断する。その結果、一対のアーム21Eと連結部42とは分離する。術者は、シース220を後退させ、第一粘膜M1と第二粘膜M2とを結紮した状態であるクリップ2Eと押さえ管3を体内に留置する。
【0098】
図34は、クリップユニット100Eによる第一把持ステップと第二把持ステップの別の態様を示す図である。術者は、第一アーム211Eと第二アーム212Eの両方が生体組織に接触した状態でクリップ2Eに高周波電流を供給してもよい。
【0099】
本実施形態に係るクリップユニット100Eによれば、欠損部Dを縫縮する処置を好適に実施できる。高周波電流により形成された小さな孔にクリップ2Eの先端を挿入することにより、クリップ2Eが組織に対して滑りにくい。
【0100】
以上、本発明の第五実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および以下で示す変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0101】
(第六実施形態)
本発明の第六実施形態に係るクリップシステム300Fについて、
図35から
図39を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0102】
クリップシステム300Fは、クリップユニット100Fと、アプリケータ200と、を備える。クリップユニット100Fは、内視鏡のチャンネルを挿通可能なアプリケータ200に装填されて処置位置に導入される。
【0103】
図35は、本実施形態に係るクリップユニット100Fの斜視図である。
クリップユニット100Fは、クリップ2Fと、押さえ管3と、連結部材4と、を備える。
【0104】
クリップ2Fは、先端側A1に向かって開閉可能な一対のアーム21Fと、一対のアーム21Fをスウィング可能に支持する支持部28と、を有する。なお、支持部28は、一対のアーム21Fをスウィング不能に支持してもよい。
【0105】
一対のアーム21Fは、第一アーム211Fと第二アーム212Fとを有する。第一アーム211Fと第二アーム212Fとは、長手方向Aにおける中心軸線O1を挟んで両側に配置される。
【0106】
第一アーム211Fおよび第二アーム212Fは、先端側A1から基端側A2に向かって組織把持部22Fと、把持部23Fと、連結部25と、を有する。組織把持部22Fは、先端が鋭利な矢尻状に形成されている。組織把持部22Fは、返しを有してもよい。把持部23Fは、先端側が中心軸線O1から遠ざかる方向(外向き)に大きく湾曲しており、フック状に形成されている。
【0107】
図36は、クリップユニット100Fによる第一把持ステップを示す図である。
術者は、第一アーム211Fの先端を第一粘膜M1に穿刺する。具体的には、術者は、欠損部Dの辺縁において内側から外側に向かって第一アーム211Fの先端を穿刺する。
【0108】
図37は、クリップユニット100Fによる第二把持ステップを示す図である。
術者は、クリップユニット100Fを縫縮方向Sに沿う方向に移動させ、第二アーム212Fの先端を第二粘膜M2付近に移動させる。術者は、第二アーム212Fの先端を第二粘膜M2に穿刺する。具体的には、術者は、欠損部Dの辺縁において内側から外側に向かって第二アーム212Fの先端を穿刺する。
【0109】
図38は、クリップユニット100Fによる牽引ステップを示す図である。
術者は、スライダ242を操作部本体241に沿って後退させることで、矢尻フック部231を後退させる。矢尻フック部231に連結された連結部材4は、クリップ2Fを牽引する。一対のアーム21Fは、互いに引き寄せられて、第一粘膜M1と第二粘膜M2とを引き寄せる。
【0110】
図39は、クリップユニット100Fによる分離ステップを示す図である。
術者は、シース220を後退させ、第一粘膜M1と第二粘膜M2とを結紮した状態であるクリップ2Fと押さえ管3を体内に留置する。
【0111】
本実施形態に係るクリップユニット100Fによれば、欠損部Dを縫縮する処置を好適に実施できる。一対のアーム21Fは、第一粘膜M1と第二粘膜M2とを確実に把持できる。
【0112】
以上、本発明の第六実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および以下で示す変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0113】
(第七実施形態)
本発明の第七実施形態に係るクリップシステム300Gについて、
図40から
図45を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0114】
クリップシステム300Gは、クリップユニット100Gと、アプリケータ200と、を備える。クリップユニット100Gは、内視鏡のチャンネルを挿通可能なアプリケータ200に装填されて処置位置に導入される。
【0115】
図40は、本実施形態に係るクリップユニット100Gの斜視図である。
クリップユニット100Gは、クリップ2Gと、押さえ管3と、連結部材4と、を備える。
【0116】
クリップ(クリップアーム)2Gは、先端側A1に向かって開閉可能な一対のアーム21Gと、一対のアーム21Gをスウィング可能に支持する支持部28と、を有する。なお、支持部28は、一対のアーム21Gをスウィング不能に支持してもよい。
【0117】
一対のアーム21Gは、第一アーム211Gと第二アーム212とを有する。第一アーム211Gと第二アーム212とは、長手方向Aにおける中心軸線O1を挟んで両側に配置される。
【0118】
第一アーム211Gは、組織把持部22と、平板状の把持部23と、連結部25と、連結リング27と、を有する。連結リング27は、リング状に形成されており、把持部23の先端部において開閉方向Pにおける外側に設けられている。連結リング27は、別のクリップユニット100Gの第二アーム212が挿通可能である。連結リング27は、第一アーム211Gが湾曲する箇所に設けられていてもよい。なお、第二アーム212は、連結リング27を有していてもよい。
【0119】
図41は、クリップユニット100Gによる第一把持ステップを示す図である。
術者は、一つ目のクリップユニット100G(以降、「クリップユニット100G1」ともいう)のクリップ2Gの一対のアーム21Gにより第一粘膜M1を把持する。
【0120】
図42は、クリップユニット100Gによる第一分離ステップを示す図である。
術者は、シース220を後退させ、第一粘膜M1のみを結紮した状態であるクリップ2Gと押さえ管3を体内に留置する。
【0121】
図43は、クリップユニット100Gによる連結ステップを示す図である。
術者は、二つ目のクリップユニット100G(以降、「クリップユニット100G2」ともいう)をアプリケータ200に装填する。術者は、クリップユニット100G2のクリップ2Gの第二アーム212を、クリップユニット100G1の第一アーム211Gの連結リング27に通す。
【0122】
図44は、クリップユニット100Gによる第二把持ステップを示す図である。
術者は、クリップユニット100Gを縫縮方向Sに沿う方向に移動させ、第二アーム212の先端を第二粘膜M2付近に移動させる。術者は、クリップ2Gの一対のアーム21Gにより第二粘膜M2を把持する。
【0123】
図45は、クリップユニット100Gによる第二分離ステップを示す図である。
術者は、シース220を後退させ、第二粘膜M2のみを結紮した状態であるクリップ2Gと押さえ管3を体内に留置する。
【0124】
本実施形態に係るクリップユニット100Gによれば、欠損部Dを縫縮する処置を好適に実施できる。クリップユニット100Gは、二つのクリップユニット100Gのクリップ2Gを連結させて、第一粘膜M1と第二粘膜M2とを確実に把持できる。
【0125】
以上、本発明の第七実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および以下で示す変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0126】
(第八実施形態)
本発明の第八実施形態に係るクリップシステム300Hについて、
図46から
図53を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0127】
クリップシステム300Hは、クリップユニット100Hと、アプリケータ200Hと、を備える。クリップユニット100Hは、内視鏡のチャンネルを挿通可能なアプリケータ200Hに装填されて処置位置に導入される。
【0128】
図46は、本実施形態に係るクリップユニット100Hおよびアプリケータ200Hを示す図である。アプリケータ200Hは、第一スライダ242Hと、第二スライダ243Hと、を有する。クリップユニット100Hは、第一アーム211Hと第二アーム212Hとを有する。
【0129】
図47は、第一アーム211Hと第二アーム212Hの動作を示す図である。
第一アーム211Hと第二アーム212Hとは、独立して駆動される。第一アーム211Hは、第一スライダ242Hによって駆動される。第二アーム212Hは、第二スライダ243Hによって駆動される。
【0130】
図48は、クリップユニット100Hによるアプローチステップを示す図である。
術者は、処置領域である欠損部Dに対して接線アプローチAP2によりクリップユニット100Hを近付ける。
【0131】
図49は、クリップユニット100Hによる把持ステップを示す図である。
術者は、第一アーム211Hと第二アーム212Hの長さ(押さえ管3からの突出量)を調節する。具体的には、術者は二つのアームの先端が両方とも粘膜に接触するよう調節する。より好ましくは、術者は、第一アーム211Hを第一粘膜M1に、第二アーム212Hを第二粘膜M2に接触させる。
【0132】
図50は、クリップユニット100Hによる把持ステップを示す図である。
術者は、第一アーム211Hが第一粘膜M1に接触した状態で、クリップユニット100Hを縫縮方向Sに沿う方向に移動させることによって、第二アーム212Hを第二粘膜M2に接触させてもよい。
【0133】
図51は、クリップユニット100Hによる牽引ステップを示す図である。
術者は、第一スライダ242Hおよび第二スライダ243Hを後退させることで、第一アーム211Hと第二アーム212Hを牽引する。第一アーム211Hと第二アーム212Hは、互いに引き寄せられて、第一粘膜M1と第二粘膜M2とを引き寄せる。
【0134】
本実施形態に係るクリップユニット100Hによれば、欠損部Dを縫縮する処置を好適に実施できる。クリップユニット100Hは、正面アプローチAP1においては、
図52に示すように第一アーム211Hの長さと第二アーム212Hの長さとを同じ長さにすることで、第一粘膜M1と第二粘膜M2とを確実に把持できる。クリップユニット100Hは、接線アプローチAP2においては、
図53に示すように第一アーム211Hの長さと第二アーム212Hの長さとを、状況に応じて異なる長さにすることで、第一粘膜M1と第二粘膜M2とを確実に把持できる。
【0135】
以上、本発明の第八実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および以下で示す変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【符号の説明】
【0136】
300,300B,300C,300D,300E,300F,300G,300H クリップシステム(クリップ装置、内視鏡縫縮用装置)
100,100B,100C,100D,100E,100F,100G,100H クリップユニット
2,2B,2C,2D,2E,2F,2G クリップ(クリップアーム)
21,21B,21C,21D,21E,21F,21G 一対のアーム
211,211B,211C,211D,211E,211F,211G,211H 第一アーム
212,212B,212C,212D,212E,212F,212H 第二アーム
22,22B,22C,22F 組織把持部
23,23D,23F 把持部
24,24B 爪
25 連結部
26a 先端部(アンカー)
26b 第一アンカー
26c 第二アンカー
27 連結リング
28 支持部
3 押さえ管(管状部材)
4 連結部材
41 挿入部
42 連結部
43 連結部本体
44 弾性アーム部
200,200D,200H アプリケータ(クリップユニット導入装置)
220,220A シース
221 先端チップ
222 先端側コイル
224 手元側コイル
225 規制部
230 操作ワイヤ(動力伝達部材)
231 矢尻フック部(接続部)
232 ワイヤ
240,240D 操作部
241 操作部本体
242,242D スライダ
242H 第一スライダ
243H 第二スライダ
247 コネクタ