(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023106355
(43)【公開日】2023-08-01
(54)【発明の名称】プロドラッグおよびその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 14/00 20060101AFI20230725BHJP
C07K 5/06 20060101ALI20230725BHJP
A61K 38/26 20060101ALI20230725BHJP
A61K 31/192 20060101ALI20230725BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20230725BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
C07K14/00
C07K5/06 ZNA
A61K38/26
A61K31/192
A61P3/10
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023007479
(22)【出願日】2023-01-20
(31)【優先権主張番号】63/301,311
(32)【優先日】2022-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】22154309
(32)【優先日】2022-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
2.GIBCO
(71)【出願人】
【識別番号】509091848
【氏名又は名称】ノヴォ ノルディスク アー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】パトリック・ジェイムズ・ナー
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・パトリック・ファイナン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C206
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA09
4C084BA19
4C084BA23
4C084BA36
4C084CA59
4C084DB35
4C084MA02
4C084MA35
4C084MA52
4C084NA12
4C084NA14
4C084NA15
4C084ZA701
4C084ZA702
4C084ZC331
4C084ZC332
4C084ZC351
4C084ZC352
4C084ZC751
4C206AA02
4C206GA07
4C206GA36
4C206KA01
4C206MA02
4C206MA55
4C206MA72
4C206NA11
4C206ZA66
4C206ZC75
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA11
4H045BA19
4H045BA41
4H045EA20
4H045FA10
(57)【要約】
【課題】本発明が解決しようとする課題は、より長時間作用するGLP-1/GIP受容体共作動薬を提供することである。
【解決手段】本発明は、GLP-1/GIP受容体共作動薬のプロドラッグ化合物であって、GLP-1/GIP受容体共作動薬がアミド結合を介したジペプチドのGLP-1/GIP受容体共作動薬への連結によって修飾されている、プロドラッグ化合物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物であって、
B-Z(式I)
(式中、Bがジペプチドまたはその誘導体であり、
ZがGLP-1/GIP受容体共作動薬またはその誘導体である)
前記GLP-1/GIP受容体共作動薬のアミノ酸配列が、
YX2EGTX6TSDYSX12X13LX15X16X17AX19X20X21FX23X24WLX27X28GX30X31X32X33X34X35X36X37X38X39(配列番号1)
(式中、X2がAibまたはAであり、
X6がFまたはVであり、
X12がIまたはYであり、
X13がY、A、L、I、またはAibであり、
X15がDまたはEであり、
X16がKまたはEであり、
X17がQまたはIであり、
X19がAまたはQであり、
X20がQ、R、E、H、またはKであり、
X21がAまたはEであり、
X23がIまたはVであり、
X24がE、Q、またはNであり、
X27がLまたはIであり、
X28がAまたはRであり、
X30がGまたは不在であり、
X31がPまたは不在であり、
X32がE、S、または不在であり、
X33がS、K、または不在であり、
X34がGまたは不在であり、
X35がAまたは不在であり、
X36がPまたは不在であり、
X37がPまたは不在であり、
X38がPまたは不在であり、
X39がSまたは不在である)であり、
前記GLP-1/GIP受容体共作動薬のN末端アミノ基がペプチド結合を介してBに連結している、化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
【請求項2】
前記GLP-1/GIP受容体共作動薬のアミノ酸配列が、
Y-Aib-EGTFTSDYSILLEX16QAAREFIEWLLAGGPSX33GAPPPS(配列番号3)
(式中、X16がKまたはEであり、
X33がSまたはKである)である、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
【請求項3】
X16がEであり、X33がKである、請求項1または2に記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
【請求項4】
X16がKであり、X33がSである、請求項1または2に記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
【請求項5】
前記GLP-1/GIP受容体共作動薬が置換基zを含み、前記置換基zが16位または33位のリジン(K)を介して前記GLP-1/GIP受容体共作動薬に結合している、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
【請求項6】
前記置換基zが、Chem.7、Chem.8、Chem.10、およびChem.11から成る群から選択される、請求項5に記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
【請求項7】
前記ジペプチドBが、式II:
X-Y(式II)
(式中、Xが、Xのアルファ-カルボン酸基とYのアルファ-アミノ基との間に形成されたアミド結合を介してYに連結した任意のアルファ-アミノ酸であり、
Yが、Yのアルファ-カルボン酸基と前記GLP-1/GIP受容体共作動薬のN末端アミノ基との間に形成されたペプチド結合を介してZに連結したN-アルキル化アルファ-アミノ酸である)である、請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
【請求項8】
Yが、サルコシン、N-sec-ブチルグリシン、プロリン、トランス-4-ヒドロキシプロリン、N-メチルグルタメート、N-メチルノルロイシン、N-メチルホモアラニン、N-メチルアラニン、N-メチルリジン、N-(2-アミノエチル)グリシン、N-ヘキシルホモアラニン、N-プロピルアラニン、ホモプロリン、N-プロピルグリシン、N-エチルグリシン、およびN-メチルフェニルアラニンから成る群から選択される、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
Xが、リジン、4-アミノフェニルアラニン、D-リジン、アラニン、グリシン、プロリン、D-バリン、ホモプロリン、D-プロリン、D-ホモプロリン、D-アラニン、およびアゼチジン-2-カルボン酸から成る群から選択される、請求項7または8に記載の化合物。
【請求項10】
Yが、サルコシンまたはN-(2-アミノエチル)グリシンである、請求項7~9のいずれか一項に記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
【請求項11】
Xが、リジン、D-リジン、およびグリシンから成る群から選択される、請求項7~10のいずれか一項に記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
【請求項12】
前記ジペプチドが置換基bを担持し、任意選択で、前記置換基bが、Chem.16、Chem.17、Chem.18、Chem.19、Chem.20、Chem.21、およびChem.22から成る群から選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
【請求項13】
前記化合物が以下から成る群から選択される、請求項1~12のいずれか一項に記載の化合物。
化合物番号1
【化1】
化合物番号2
【化2】
化合物番号3
【化3】
化合物番号4
【化4】
化合物番号5
【化5】
化合物番号6
【化6】
化合物番号7
【化7】
化合物番号8
【化8】
化合物番号9
【化9】
化合物番号10
【化10】
化合物番号11
【化11】
化合物番号12
【化12】
化合物番号13
【化13】
化合物番号14
【化14】
化合物番号15
【化15】
化合物番号16
【化16】
化合物番号17
【化17】
および化合物番号18
【化18】
。
【請求項14】
医薬として使用するための、請求項1~13のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項15】
2型糖尿病の予防および/または治療に使用するための、請求項1~13のいずれか一項に記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトへの経口投与に好適な長期化作用プロファイルを有するグルカゴン様ペプチド1(GLP-1)受容体とグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)受容体の共作動薬である化合物の2,5-ジケトピペラジン(DKP)ベースのプロドラッグ、およびその治療的使用に関する。
【0002】
配列表の参照による組み込み
本出願は、電子形式の配列表とともに提出される。配列表の内容全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
多くの治療的に活性な薬剤は、吸収率が悪く、初回通過代謝に対する感受性が低いため、経口投与後のバイオアベイラビリティが低い(例えば、[非特許文献1])。
【0004】
プロドラッグは、それ自体はほぼ不活性であるが、活性分子実体に変換されると予想される治療薬である(例えば、[非特許文献2])。投与部位から排除され、高度に定義された濃度で血漿中で平衡化された後に、プロドラッグの化学的性質により、薬剤作用の開始および持続時間を正確に制御する機会が提供される。現在の臨床使用におけるプロドラッグの多くが、活性薬剤に変換されるために酵素触媒を必要とする。酵素触媒によるプロドラッグアプローチは、しばしば、胃腸吸収後に血流中に放出される必要のある薬剤に使用される。一般的なプロドラッグアプローチは、エステラーゼ触媒加水分解によって活性薬剤に容易に変換される薬剤のエステル誘導体の使用である(例えば、[非特許文献3])。主に酵素的な切断の欠点は、患者間の変動である。酵素レベルは個人間で著しく異なり、酵素的切断によるプロドラッグ活性化の生物学的変動をもたらす場合がある。酵素レベルは投与部位に応じて変動する場合もある。例えば、皮下注射の場合、身体のある特定の領域が他の領域よりも断定可能な治療効果をもたらすことが知られている。この予測不可能な効果を減少させるために、非酵素的切断または分子内触媒が特に興味深いものである(例えば、[非特許文献4])。
【0005】
DKPベースのプロドラッグ技術は、2つのアルファ-アミノ酸から成る部分が環化して6員環を形成し、それと同時に活性薬剤を放出する化学変換に基づく。DKPベースのプロドラッグ技術は、以前にも説明されている。例えば、[特許文献1]、[特許文献2]、[特許文献3]、および[特許文献4]は、アミド結合を介して、例えば、グルカゴンスーパーファミリーペプチドまたは他の公知の薬剤に連結した様々なペプチド系プロドラッグについて説明している。[特許文献5]および[特許文献6]は、延長された半減期を有するグルカゴンスーパーファミリーペプチドとインスリンのペプチドベースのプロドラッグについて説明している。
【0006】
例えば、GLP-1作用とGIP作用を1つの調製物中で組み合わせることによる、GLP-1受容体とGIP受容体の二重活性化が、2型糖尿病(T2D)および肥満を有するマウスにおいて、市販されているGLP-1作動薬リラグルチドと比較して著しく良好な血糖値の低下、インスリン分泌の増加、および体重の減少を伴う治療原理につながることが説明されている(例えば、[非特許文献5])。天然GLP-1およびGIPは、共注入後にヒトにおいて相加的に相互作用し、GLP-1のみと比較してインスリン分泌刺激効果を有意に増加させることが証明されている([非特許文献6])。
【0007】
GLP-1/GIP受容体共作動薬およびそれらの医学的使用の可能性は、[特許文献7]、[特許文献8]、[特許文献9]、[特許文献10]、[特許文献11]、[特許文献12]、[特許文献13]、[特許文献14]、[特許文献15]、[特許文献16]、[特許文献17]、および[特許文献18]などのいくつかの特許出願に記載されている。GLP-1誘導体の経口送達を開示する特許出願は、例えば、[特許文献19]、[特許文献20]、[特許文献21]、および[特許文献22]に記載されている。
【0008】
しかしながら、経口投与に好適なGIP受容体およびGLP-1受容体において作動薬活性を有する化合物が依然として所望されている。GIP受容体およびGLP-1受容体の両方で延長された作用持続時間を有する化合物により、かかる化合物のより頻度の低い投薬が可能になることが望ましい。したがって、より長時間作用するGLP-1/GIP受容体共作動薬がT2Dなどの疾患の治療においてそれらの潜在能力を十分に発揮する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2010/071807号
【特許文献2】国際公開第2010080605号
【特許文献3】国際公開第2011/163012号
【特許文献4】国際公開第2011/162968号
【特許文献5】国際公開第2014/152460号
【特許文献6】国際公開第2016/049174号
【特許文献7】国際公開第2010/011439号
【特許文献8】国際公開第2013/164483号
【特許文献9】国際公開第2014/192284号
【特許文献10】国際公開第2015/067715号
【特許文献11】国際公開第2015/022420号
【特許文献12】国際公開第2015/086728号
【特許文献13】国際公開第2015/086729号
【特許文献14】国際公開第2016/111971号
【特許文献15】国際公開第2020/023386号
【特許文献16】米国特許第9745360号
【特許文献17】米国特許公開第2014/162945号
【特許文献18】米国特許公開第2014/0357552号
【特許文献19】国際公開第2011/080103号
【特許文献20】国際公開第2012/080471号
【特許文献21】国際公開第2013/189988号
【特許文献22】国際公開第2019/149880号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Salama N.N.,Fasano A.,Thakar M.,Eddington N.D.,The impact of ΔG on the oral bioavailability of low bioavailable therapeutic agents,J.Pharmacol.Exp.Ther.,2005,312,199-205
【非特許文献2】Testa B.,Mayer J.M,Hydrolysis in Drug and Prodrug Metabolism,Wiley-VCH,2003,page 4
【非特許文献3】Yu L.X.,Straughn A.B.,Faustion P.J.,Yang Y.,Parekh A.,Ciavarella A.B.,Asafu-Adjaye E.,Mehta M.U.,Conner D.P.,Lesko L.J.,Hussain A.S.The effect of food on the relative bioavailability of rapidly dissolving immediate-release solid oral products containing highly soluble drugs.Mol.Pharm.2004,1,357-362
【非特許文献4】Testa B.,Mayer J.M,Hydrolysis in Drug and Prodrug Metabolism,Wiley-VCH,2003,page 5
【非特許文献5】V A Gault et al.,Clin Sci(Lond),121,107-117,2011
【非特許文献6】M A Nauck et al.,J.Clin.Endocrinol.Metab.,76,912-917,1993
【発明の概要】
【0011】
ペプチドベースの薬剤は、作用持続時間が比較的短く、かつ治療指標が可変的である、非常に有効な薬剤である。プロドラッグ技術を採用して、薬剤を特定の投薬レジメン、例えば、週1回の投薬に好適なものにする様式で、薬剤の特性を最適化することができる。プロドラッグは、酵素的または非酵素的化学プロセスによって変換され、それにより、インビボでの生物学的に活性な薬剤分子(本明細書では活性薬剤と呼ばれる)の緩徐な放出がもたらされる。
【0012】
本開示は、望ましい特性、例えば、週1回の経口投与に望ましい特性を有するGLP-1/GIP受容体共作動薬プロドラッグを対象とする。本明細書に記載のプロドラッグは、作用の開始を遅延させ、活性薬剤、すなわち、GLP-1/GIP受容体共作動薬の半減期を延長するように設計されている。作用の開始の遅延は、プロドラッグを活性化する前にその組織的分布を可能にするという点で有利である。したがって、プロドラッグの投与により、投与時のピーク活性によって引き起こされる合併症が排除され、活性薬剤の治療指数が増加する可能性がある。インタクトなプロドラッグは、活性薬剤と比較して有意な程度まで生物学的活性を発揮しない。活性薬剤がプロドラッグの変換時に放出されると、活性薬剤から生物学的活性が生じる。放出された活性薬剤と比較したプロドラッグの生物学的活性の低下は、付随する副作用および過剰投与のリスクを伴うことなく比較的大量のプロドラッグの投与を可能にするため、有利である。
【0013】
本発明は、GLP-1/GIP受容体共作動薬プロドラッグに関する。加えて、またはあるいは、本発明は、インビボで延長された終末相半減期を有するGLP-1/GIP受容体共作動薬プロドラッグに関する。
【0014】
第1の態様では、本発明は、GLP-1/GIP受容体共作動薬のプロドラッグである化合物に関する。いくつかの実施形態では、本化合物は、式I:B-Z(式中、ZがGLP-1/GIP受容体共作動薬(活性薬剤)であり、Bがジペプチド(「ジペプチドB」)である)を含み、GLP-1/GIP受容体共作動薬のN末端アミノ基がペプチド結合を介してBに連結している。いくつかの実施形態では、ジペプチドBは、哺乳類血清アルブミンなどの哺乳類血漿タンパク質と非共有結合相互作用を形成することができる置換基などの共有結合部分を含む。いくつかの実施形態では、ジペプチドBは、活性薬剤(すなわち、GLP-1/GIP受容体共作動薬)を放出する分子内反応を介して活性薬剤Zから切断され、副産物として2,5-ジケトピペラジン(DKP)を形成することができる。いくつかの実施形態では、分子内反応は、生理学的条件下で生じる。加えて、またはあるいは、いくつかの実施形態では、分子内反応は、酵素活性の不在下で生じる。
【0015】
第2の態様では、本発明は、本明細書に記載の化合物を含む医薬組成物に関する。
【0016】
第3の態様では、本発明は、医薬として使用するための、本明細書に記載の化合物または本明細書に記載の化合物を含む医薬組成物に関する。
【0017】
一機能的態様では、本発明は、週1回の投薬に好適な変換半減期を有するプロドラッグ(例えば、本明細書に記載の化合物)を提供する。加えて、またはあるいは、本発明は、週1回の投薬に好適な観察された終末相半減期を有するプロドラッグを提供する。加えて、またはあるいは、本発明は、驚くほど高い経口バイオアベイラビリティを有するプロドラッグを提供する。
【0018】
さらなる態様は、本明細書に記載の化合物の医学的使用に関する。加えて、またはあるいは、本発明は、2型糖尿病の予防および/または治療のための本明細書に記載の化合物の使用に関する。加えて、またはあるいは、本発明は、肥満の予防および/または治療のための本明細書に記載の化合物の使用に関する。加えて、またはあるいは、本発明は、肝疾患の予防および/または治療のための本明細書に記載の化合物の使用に関する。
【0019】
本発明のさらなる態様は、本明細書に記載の化合物を、それを必要とする患者に投与することによって、疾患を治療する方法に関する。いくつかの実施形態では、糖尿病は、2型糖尿病である。いくつかの実施形態では、疾患は、過体重である。いくつかの実施形態では、疾患は、肥満である。
【0020】
本発明は、例示的な実施形態の開示から明らかになるさらなる問題も解決し得る。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下において、ギリシャ文字は、それらの記号または対応する名称で表されてもよく、例えば、αがアルファであり、βがベータであり、εがイプシロンであり、γがガンマであり、ωがオメガであるといった具合である。また、μのギリシャ文字は「u」で表されてもよく、例えば、μlがulであり、μMがuMである。化学図面中の記号
【化1】
は、隣接する部分への結合点を示す。以下では、本明細書に別段の指示がない限り、単数形で提示される用語は複数の状況も含み、例えば、「化合物」について言及する場合、それが当該化合物の広範な定義内に含まれる全ての個々の変形物を包含することを理解されたい。本明細書で使用される場合、「a」は「1つ以上」を意味する。本発明は、望ましい特性、例えば、週1回の経口投薬に望ましい特性を有するGLP-1/GIP受容体共作動薬のプロドラッグなどのGLP-1/GIP受容体共作動薬のプロドラッグである化合物に関する。本化合物は、生理学的条件下で、制御された様式で活性GLP-1/GIP受容体共作動薬(活性薬剤)に変換される。
【0022】
第1の態様では、本発明は、GLP-1/GIP受容体共作動薬のプロドラッグである化合物に関し、当該化合物は、式I:B-Z(式中、Zが、プロドラッグの変換時にBから放出されるGLP-1/GIP受容体共作動薬(活性薬剤)である)を含む。第2の態様では、本発明は、本明細書に記載の化合物を含む医薬組成物に関する。さらなる態様は、本明細書に記載の化合物の医学的使用に関する。加えて、またはあるいは、本発明は、2型糖尿病の予防および/または治療のための本明細書に記載の化合物の使用に関する。加えて、またはあるいは、本発明は、肥満の予防および/または治療のための本明細書に記載の化合物の使用に関する。加えて、またはあるいは、本発明は、肝疾患の予防および/または治療のための本明細書に記載の化合物の使用に関する。
【0023】
一般的な定義
「化合物」という用語は、GLP-1/GIP受容体共作動薬のプロドラッグに関する。本発明の化合物は「化合物」と呼ばれ得、「化合物」という用語は、本明細書の薬学的に関連した形態、すなわち、その薬学的に許容可能な塩、アミド、またはエステルを包含することようにも意図されている。
【0024】
本明細書で使用される場合、「ポリペプチド」または「ポリペプチド配列」という用語は、アミド結合(例えば、ペプチド結合)を介して相互に連結した一連の2つ以上のアミノ酸を指す。ポリペプチドという用語は、「ペプチド」という用語および「タンパク質」という用語と互換的に使用される。
【0025】
「誘導体」という用語は、概して、化学修飾されたポリペプチド(例えば、GLP-1/GIP受容体共作動薬)またはジペプチドを指し、ここで、1つ以上の置換基が、例えば、Lysのε-アミノ基への結合を介して、ポリペプチドまたはジペプチドのアミノ酸配列に共有結合している。いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、誘導体(例えば、GLP-1/GIP受容体共作動薬誘導体および/またはジペプチド誘導体)を含み、これは、長期化特性を有する1つ以上の置換基がポリペプチドまたはジペプチドのアミノ酸配列に共有結合するように改変されている。
【0026】
「ジペプチド誘導体」という用語は、ジペプチドが少なくとも1つの置換基(例えば、本明細書に記載の置換基b)を担持するように化学修飾されていることを意味する。いくつかの実施形態では、これは、2つ以上の置換基を担持してもよい。
【0027】
「GLP-1/GIP受容体共作動薬誘導体」という用語は、GLP-1/GIP受容体共作動薬が置換基を担持するように化学修飾されていることを意味する。例えば、かかるGLP-1/GIP受容体共作動薬誘導体は、例えば、Lysのε-アミノ基への結合を介して、ポリペプチドのアミノ酸配列に共有結合している1つ以上の置換基を含んでもよい。
【0028】
「脂肪酸にコンジュゲートされたアミノ酸」という用語は、脂肪酸への共有結合によって、または好ましくはリンカーを介して脂肪酸にコンジュゲートするように化学修飾された官能基を有する任意のタンパク質原性アミノ酸または非タンパク質原性アミノ酸を指す。かかる官能基の例には、アミノ(例えば、Lys)、チオール(例えば、Cys)、およびカルボキシル(例えば、GluまたはAsp)が挙げられる。いくつかの実施形態では、コンジュゲートされたアミノ酸は、Lysである。脂肪酸を、官能基を有する当該タンパク質原性アミノ酸または非タンパク質原性アミノ酸にコンジュゲートする場合、ジカルボン酸(例えば、CO2H-(CH2)-CO2H(式中、nが10~22である))などの脂肪酸前駆体が使用され得る。
【0029】
「脂肪酸」という用語は、脂肪族または環状炭化水素鎖を有する任意選択で置換されるカルボン酸を指し、ここで、脂肪族鎖が飽和または不飽和である。いくつかの実施形態では、脂肪酸は、C16-C22飽和カルボン酸などのC12-C24飽和カルボン酸である。いくつかの実施形態では、脂肪酸は、追加の官能基を含む。
【0030】
「親油性部分」という用語は、本明細書で使用される場合、合計で6個超30個未満の炭素原子、好ましくは8個超20個未満の炭素原子を有する脂肪族および/または環状炭化水素部分を含む部分を指す。いくつかの実施形態では、親油性部分は、少なくとも8個の連続した-CH2基を含む炭素鎖を含む。いくつかの実施形態では、親油性部分は、少なくとも10個の連続した-CH2-基、例えば、少なくとも12個の連続した-CH2-基、少なくとも14個の連続した-CH2-基、少なくとも16個の連続した-CH2-基、または少なくとも18個の連続した-CH2-基を含む。いくつかの実施形態では、親油性部分は、6~30個の任意の数の連続した-CH2-基(例えば、6、7、8、9個など)を含むことができる。
【0031】
「遠位カルボン酸」という用語は、親油性部分との関連で本明細書で使用される場合、隣接する部分への親油性部分の結合点に対して親油性部分の最も遠い(末端)点に結合しているカルボン酸を指し、例えば、本明細書に記載の化合物では、遠位カルボン酸を有する親油性部分(例えば、Chem.1)は長期化部分であり、このカルボン酸は、隣接するリンカー要素への親油性部分の結合点に対して親油性部分の最も遠い(末端)点に結合している(例えば、Chem.2、Chem.3、Chem.4、またはChem.5)。遠位カルボン酸を有する親油性部分の非限定的な例は、Chem.1である。
【0032】
「治療指数」という用語は、薬剤が毒性になる血中濃度と薬剤が有効である濃度を比較する比率を表す。治療指標(TI)が大きいほど、薬剤は安全である。TIが小さい(2つの濃度間の差が非常に小さい)場合、薬剤は慎重に投与されなければならず、薬剤を投与された人は薬剤毒性の兆候がないか注意深く監視されなければならない。
【0033】
アミノ酸
「アミノ酸」という用語は、本明細書で使用される場合、任意のアミノ酸、すなわち、タンパク質原性アミノ酸および非タンパク質原性アミノ酸の両方を指す。「タンパク質原性アミノ酸」という用語は、本明細書で使用される場合、ヒトにおける遺伝子コードによってコードされる20個の標準アミノ酸を指す。「アミノ酸」という用語は、本明細書で使用される場合、タンパク質原性アミノ酸とみなされない任意のアミノ酸を指す。非タンパク質原性アミノ酸は、タンパク質中に見られないか、または標準細胞機構によって産生されないかのいずれかである(例えば、それらは、翻訳後修飾に供されていない場合がある)。非タンパク質原性アミノ酸の非限定的な例は、Aib(α-アミノイソ酪酸または2-アミノイソ酪酸)、ノルロイシン、ノルバリン、ならびにタンパク質原性アミノ酸のD異性体である。
【0034】
一般に、アミノ酸残基は、例えば、ポリペプチド配列との関連で、本明細書で使用される場合、それらの完全な名称、それらの1文字コード、および/またはそれらの3文字コードによって特定され得る。これらの3つの方法は、完全に同等であり、互換的に使用される。下文において、光学異性体が記載されていない本明細書に記載のペプチドの各アミノ酸は、(別段の指定がない限り)L異性体を意味すると理解されたい。本発明の化合物に組み込まれ得る非タンパク質原性アミノ酸の例が表1に列記される。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【0035】
プロドラッグ
「プロドラッグ」という用語は、本明細書で使用される場合、インビボでの酵素的または非酵素的化学プロセスによる化学変換を受けて、活性薬剤の放出をもたらす化合物を指す。「活性薬剤」という用語は、本明細書で使用される場合、プロドラッグの変換時にプロドラッグから放出される薬理学的に活性な化合物を指す。活性薬剤の非限定的な例は、本明細書に記載の親化合物1~5である。「変換」という用語は、プロドラッグとの関連で本明細書で使用される場合、プロドラッグが酵素的または非酵素的様式で変換されて、活性薬剤の放出をもたらすプロセスを指す。変換が起こる速度は、「変換半減期」によって定量化され得る。「変換半減期」は、変換の結果としてプロドラッグの濃度を半減させるのに必要な時間の長さである。「変換半減期」は、「プロドラッグから薬剤への変換半減期」または「プロドラッグから活性薬剤への変換半減期」とも呼ばれる場合がある。
【0036】
プロドラッグは、意図された薬理学的活性を有意な程度まで発揮せず、例えば、意図された薬理学的活性を対象とする治療レジメンと不適合なものにする程度まで発揮しない。活性薬剤が放出されると、活性薬剤からプロドラッグの意図される治療に関連する薬理学的活性が生じる。活性薬剤がプロドラッグから放出される場合、活性薬剤は、その「遊離形態」であるといわれる。プロドラッグは、末端ジペプチドベースのアミド伸長の分子内環化時に所望の変換を達成することができ、その際に、伸長が活性薬剤から切断されて、活性薬剤のその遊離形態での放出がもたらされる。かかる分子内環化は、例えば、2,5-ジケトピペラジン(DKP)形成を介して、生理学的条件下で酵素非依存性プロセスとして起こり得る。DKPを形成する当該分子内環化を介して活性薬剤に変換されるプロドラッグでは、変換時に活性薬剤が放出される部分は、「DKP部分」と呼ばれる。「DKP部分」は、ジペプチド部分(例えば、ジペプチドまたはジペプチド誘導体)を含む。いくつかの実施形態では、プロドラッグは、DKP部分のジペプチド部分と活性薬剤の脂肪族アミン基との間のペプチド結合などの一時的なアミド結合を有してもよい。いくつかの実施形態では、DKP部分は、GLP-1/GIP受容体共作動薬骨格の1位のアミノ酸のアルファ-アミノ基を介して、すなわち、DKP部分のカルボン酸基とGLP-1/GIP受容体共作動薬骨格の1位のTyrのアルファ-アミノ基との間に形成されたアミド結合を介して、GLP-1/GIP受容体共作動薬に結合している。いくつかの実施形態では、DKP部分は、アシル化を介して、すなわち、DKP部分のカルボン酸基とGLP-1/GIP受容体共作動薬骨格中のTyr1のアルファ-アミノ基との間に形成されたアミド結合を介して、GLP-1/GIP受容体共作動薬骨格中のTyr1のアミノ基に結合している。
【0037】
変換半減期は、DKP部分の構造的性質に影響され得る。例えば、望ましい変換半減期は、本出願に例示されるジペプチドBを使用することによって得られ得る。変換半減期は、DKP部分が結合している活性薬剤のアミノ酸の構造的性質に影響され得る。いくつかの実施形態では、望ましい変換半減期は、本出願に例示される活性薬剤のN末端アミノ酸残基を使用することによって得られ得る。いくつかの実施形態では、DKP部分は、活性薬剤に結合しているジペプチドベースの伸長である。いくつかの実施形態では、DKP部分は、さらなる構造要素、例えば、ジペプチド(本明細書では「ジペプチド誘導体」とも呼ばれる)に共有結合した置換基を含む。プロドラッグの変換時および活性薬剤の放出時に、DKPは副産物として形成される。DKPは、不活性であってもよく、または薬理学的活性に関連してもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のプロドラッグの変換は、主に非酵素的様式で起こる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のプロドラッグの変換は、非酵素的様式でのみ起こる。
【0038】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、プロドラッグ、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミドである。いくつかの実施形態では、プロドラッグは、式I(式中、Bが、置換基bを任意選択で含むジペプチドであり、置換基bが、プロトラクターおよび任意選択でリンカーを含むか、またはそれらから成る)に従う化合物である。いくつかの実施形態では、Zは、置換基zを担持するGLP-1/GIP受容体共作動薬であり、GLP-1/GIP受容体共作動薬のN末端アミノ基は、ペプチド結合を介してBに連結している。本発明のいくつかの実施形態では、Bは、DKP部分である。
【0039】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、DKP部分を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、DKP部分および活性薬剤を含むプロドラッグを含む。いくつかの実施形態では、活性薬剤は、GLP-1/GIP受容体共作動薬(例えば、活性薬剤Z)である。いくつかの実施形態では、DKP部分は、任意選択で1つ以上の置換基を担持する、ジペプチド(例えば、ジペプチドB)を含む。
【0040】
本明細書ではDKP部分および活性薬剤としてGLP-1/GIP受容体共作動薬を含む「プロドラッグ」とも称される本明細書に記載の化合物に使用される命名法の例が以下に提供される。K[(4S)-4-カルボキシ-4-(15-カルボキシペンタデカノイルアミノ)ブタノイル]-Sar-Y-Aib-EGTFTSDYSILLEEQAAREFIEWLLAGGPS-K[2-[2-[2-[[2-[2-[2-[[(4S)-4-カルボキシ-4-(15-カルボキシペンタデカノイルアミノ)ブタノイル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]-GAPPPS-OH。この化合物では、DKP部分は、アミド結合を介して相互に連結したLys残基およびSar残基を含む。(4S)-4-カルボキシ-4-(15-カルボキシペンタデカノイルアミノ)ブタノイル部分は、アミド結合を介してジペプチドのLys残基のε-窒素原子に共有結合しており、2-[2-[2-[[2-[2-[2-[[(4S)-4-カルボキシ-4-(15-カルボキシペンタデカノイルアミノ)ブタノイル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル部分は、アミド結合を介してGLP-1/GIP受容体共作動薬のLys残基のε-窒素原子に共有結合している。Sar残基のカルボキシル基は、アミド結合を介してGLP-1/GIP受容体共作動薬のアミノ酸配列のN末端アミノ基に共有結合している。本化合物の完全構造が以下に示される。
【化2】
【0041】
置換基
「置換基」という用語は、本明細書で使用される場合、ジペプチドまたはポリペプチド(例えば、GLP-1/GIP受容体共作動薬)のアミノ酸に共有結合している部分を指す。いくつかの実施形態では、置換基zは、Lysを介してGLP-1/GIP受容体共作動薬に結合している。いくつかの実施形態では、置換基bは、本発明の化合物中に存在するジペプチド部分(例えば、ジペプチドB)などのGLP-1/GIP受容体共作動薬のDKP部分のアミノ酸残基に結合しており、それ故に、DKP部分の一部を形成する。置換基がポリペプチドまたはジペプチドに結合している場合、このポリペプチドまたはジペプチドは「置換」といわれる。置換基がポリペプチドまたはアミノ酸残基に共有結合している場合、このポリペプチドまたはアミノ酸は置換基を「担持する」といわれる。この置換基は、一連の個別に定義された部分を含み得、これらの部分は「置換要素」と呼ばれ得る。「置換基要素」の非限定的な例は、「プロトラクター」および「リンカー」である。
【0042】
置換基は、アルブミンと非共有結合相互作用を形成することができ、それにより、血流中での化合物の循環が促進され、それ故に、置換基を担持する化合物とアルブミンとの凝集体が化合物の遊離形態を放出するために緩徐にしか崩壊しないため、化合物が血流中に存在する時間を長期化する効果を有し得、それ故に、置換基が、全体として、「アルブミン結合部分」とも呼ばれ得、置換基が「長期化効果」を有するといわれ得る。置換基は、アルブミン結合、ひいては長期化に特に関連する部分を含み得、この部分は「プロトラクター」または「長期化部分」と呼ばれ得る。「プロトラクター」および「長期化部分」という用語は、本明細書で互換的に使用される。「プロトラクター」は、親油性部分(例えば、脂肪酸)であってもよい。「プロトラクター」は、脂肪酸(例えば、C
16-C
22カルボン酸)であってもよい。「プロトラクター」の非限定的な例が表2に示される。化学式Chem.1中、
【化3】
は、共有結合を介したリンカーまたはポリペプチドへの結合点を表すために使用されている。
【表2】
【0043】
置換基は、長期化部分とポリペプチドのアミノ酸残基への結合点との間の部分を含み得、この部分は「リンカー」と呼ばれ得る。リンカーは、いくつかの「リンカー要素」を含み得る。リンカー要素は、それらが分子の全体的特性を改善するように、例えば、それらが経口バイオアベイラビリティ、変換半減期、または長期化効果を改善し、それ故に、本化合物の経口投与時の全体的曝露プロファイルを改善するように選択され得る。
【0044】
リンカー要素の非限定的な例が表3に列記される。化学式Chem.2~5中、
【化4】
は、プロトラクターまたはポリペプチドへの結合点を表すために使用されている。
【表3】
【0045】
いくつかの実施形態では、置換基は、L-P(式III)(式中、Pが遠位カルボン酸を有する親油性部分を含むか、またはそれから成り、Pが長期化特性を有する)である。いくつかの実施形態では、Pは、Chem.1である。いくつかの実施形態では、Pは、Chem.1であり、Lは、リンカー要素A1~A5を含むリンカーであり、
L-P(式III)
式中、Pは、Chem.1であり、Lは、以下の式IV:
A1-A2-A3-A4-A5(式IV)
(式中、A1がジペプチドまたはGLP-1/GIP受容体共作動薬のアミノ酸に共有結合しており、Chem.2、Chem.3、Chem.4、およびChem.5から成る群から選択され、A5がPに共有結合しており、Chem.2であり、A2、A3、およびA4が各々個別に、Chem.2、Chem.3、Chem.4、およびChem.5から成る群から選択されるか、または不在であるが、但し、A2、A3、A4、およびA5が不在である場合、A1もPに共有結合することを条件とする)のものである。
【0046】
親油性部分を含む置換基の非限定的な例が表4に列記される。いくつかの実施形態では、置換基は、表4から選択される。
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
【0047】
置換基が、本明細書に記載の化合物のジペプチド部分(例えば、ジペプチドB)に結合している場合、置換基は、本明細書で「置換基b」と称される。いくつかの実施形態では、置換基bは、Chem.1(式中、nが、14、16、または18である)に従うプロトラクターおよび任意選択でリンカーを含み、ここで、リンカーは、1つ以上のγGlu(Chem.2)、および/または1つ以上のAdo(Chem.3)、および/または1つ以上のGly(Chem.4)、および/または1つ以上のεLys(Chem.5)を含む。いくつかの実施形態では、置換基bは、Chem.16、Chem.17、Chem.18、Chem.19、Chem.20、Chem.21、およびChem.22から成る群から選択される。
【0048】
置換基が、本明細書に記載の化合物(例えば、活性薬剤Z)のGLP-1/GIP受容体共作動薬に結合している場合、置換基は、本明細書で「置換基z」と称される。いくつかの実施形態では、置換基zは、Chem.1(式中、nが、14、16、または18である)に従うプロトラクターおよびリンカーを含むか、またはそれらから成り、ここで、リンカーは、1つ以上のγGlu(Chem.2)、および/または1つ以上のAdo(Chem.3)、および/または1つ以上のεLys(Chem.5)を含むか、またはそれらから成る。いくつかの実施形態では、置換基zは、Chem.7、Chem.8、Chem.10、およびChem.11から成る群から選択される。
【0049】
いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、置換基bおよび/または置換基zを含む。
【0050】
GLP-1/GIP受容体共作動薬
本明細書で使用される場合、「GLP-1/GIP受容体共作動薬」とは、GLP-1受容体作動薬およびGIP受容体作動薬である化合物である。本明細書に記載のGLP-1/GIP受容体共作動薬は、ポリペプチドおよび任意選択で定義される置換基zを含むか、またはそれらから成る。いくつかの実施形態では、GLP-1/GIP受容体共作動薬は、上述のように、任意選択でリンカーを介して、C16-C22脂肪酸にコンジュゲートされた共作動薬のアミノ酸残基によって得られた半減期の延長を呈する。
【0051】
いくつかの実施形態では、ペプチドのカルボキシ末端は、-CO2H基を保持する。いくつかの実施形態では、本化合物は、C末端にアミド基(C(=O)-NH2)を任意選択で含んでもよく、これは、親化合物番号5で見られるような-OHを-NH2で置換する修飾である。
【0052】
いくつかの実施形態では、GLP-1/GIP受容体共作動薬は、
YX2EGTX6TSDYSX12X13LX15X16X17AX19X20X21FX23X24WLX27X28GX30X31X32X33X34X35X36X37X38X39(配列番号1)
であり、C末端に任意選択のアミド修飾を有し、
(式中、X2がAibまたはAであり、
X6がFまたはVであり、
X12がIまたはYであり、
X13がY、A、L、I、またはAibであり、
X15がDまたはEであり、
X16がKまたはEであり、
X17がQまたはIであり、
X19がAまたはQであり、
X20がQ、R、E、H、またはKであり、
X21がAまたはEであり、
X23がIまたはVであり、
X24がE、Q、またはNであり、
X27がLまたはIであり、
X28がAまたはRであり、
X30がGまたは不在であり、
X31がPまたは不在であり、
X32がE、S、または不在であり、
X33がS、K、または不在であり、
X34がGまたは不在であり、
X35がAまたは不在であり、
X36がPまたは不在であり、
X37がPまたは不在であり、
X38がPまたは不在であり、
X39がSまたは不在である)
任意選択で、脂肪酸(例えば、C16-C22カルボン酸)などの親油性部分を含む置換基zが、16位、20位、または33位のリジン(K)を介してGLP-1/GIP受容体共作動薬に結合している。
【0053】
いくつかの実施形態では、置換基zは、Chem.1(式中、nが、14、16、または18である)に従うプロトラクターおよび任意選択でリンカーを含むか、またはそれらから成り、ここで、リンカーは、1つ以上のγGlu(Chem.2)、および/または1つ以上のAdo(Chem.3)、および/または1つ以上のGly(Chem.4)、および/または1つ以上のεLys(Chem.5)を含むか、またはそれらから成る。いくつかの実施形態では、置換基zは、Chem.7、Chem.8、Chem.10、およびChem.11から成る群から選択される。
【0054】
ジペプチドB
いくつかの実施形態では、ジペプチドBは、DKP部分である。いくつかの実施形態では、ジペプチドBは、X-Y(式II)(式中、XおよびYがアルファ-アミノ酸である)と呼ばれ得る。いくつかの実施形態では、XとYとの間のアミド結合の立体配座は、求核攻撃のためにXのアルファ-アミノ基をYのアルファ-カルボニル基に好適に近接して配置することによってDKP形成を促進するためにcisであることが好ましい。いくつかの実施形態では、ジペプチドBは、置換基bを担持する。いくつかの実施形態では、Yは、N-アルキル化アルファ-アミノ酸である。いくつかの実施形態では、Yは、Yのアルファ-カルボン酸基と活性薬剤Zのアミンとの間に形成されたアミド結合を介してBに連結したN-アルキル化アルファ-アミノ酸である。「N-アルキル化アルファ-アミノ酸」は、アミノ酸のアルファ-アミノ基におけるC1-C12アルキルまたはC1-C6アルキルなどのアルキル基で置換される任意のアルファ-アミノ酸であり、ここで、当該アルキル基は直鎖状であっても環状であってもよく、非置換であっても、追加の官能基、例えば、アミノ基(N-(2-アミノエチル)グリシンで見られるものなど)で置換されてもよい。いくつかの実施形態では、アルキル基は、メチル、エチル、2-アミノエチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、n-ヘキシルから成る群から選択される。いくつかの実施形態では、アルキル基は、メチル、エチル、2-アミノエチル、n-プロピル、sec-ブチル、およびn-ヘキシルから選択される。いくつかの実施形態では、アルキル基は、メチルである。いくつかの実施形態では、Yは、Sar、N-secBu-Gly、Pro、Pro(4-OH)、N-Me-Glu、N-Me-Nor、N-Me-homoAla、N-Me-Ala、N-Me-Lys、Aeg、N-Hex-homoAla、N-Pr-Ala、homoPro、N-Et-Gly、N-Pr-Gly、およびN-Me-Pheから成る群から選択される。いくつかの実施形態では、Yは、AegまたはSarである。
【0055】
いくつかの実施形態では、Xは、任意のアルファ-アミノ酸である。いくつかの実施形態では、Xは、Xのアルファ-カルボン酸基とYのアルファ-アミノ基との間に形成されたアミド結合を介してYに連結した任意のアルファ-アミノ酸である。いくつかの実施形態では、Xは、Lys、Phe(4-NH2)、D-Lys、Ala、Gly、Pro、D-Val、homoPro、D-Pro、D-homoPro、D-Ala、およびAzeから成る群から選択される。いくつかの実施形態では、Xは、Gly、Asp、Leu、Lys、D-Lys、およびProから成る群から選択される。
【0056】
いくつかの実施形態では、Yは、Sar、N-sBu-Gly、Pro、Pro(4-OH)、N-Me-Glu、N-Me-Nor、N-Me-homoAla、N-Me-Ala、N-Me-Lys、N-Hex-homoAla、N-Pr-Ala、homoPro、N-Pr-Gly、N-Et-Gly、およびN-Me-Pheから成る群から選択され、Xは、Lys、Phe(4-NH2)、およびD-Lysから成る群から選択される。加えて、またはあるいは、いくつかの実施形態では、Yは、SarおよびAegから選択され、Xは、Ala、Gly、D-Lys、Pro、D-Val、homoPro、D-Pro、D-homoPro、D-Ala、およびAzeから選択される。
【0057】
いくつかの実施形態では、置換基bを任意選択で含むジペプチドは、表5aから選択される。
【0058】
いくつかの実施形態では、ジペプチド誘導体は、表5bから選択される。
【表5】
【表6-1】
【表6-2】
【表6-3】
【0059】
活性薬剤Z
本明細書に記載の活性薬剤Zは、上に定義される置換基zを含むGLP-1/GIP受容体共作動薬であり、ここで、置換基zはアミノ酸残基を介してGLP-1/GIP受容体共作動薬に結合されている。
【0060】
機能特性
薬理学的に活性な化合物の治療的使用は、例えば、薬物動態特性がその化合物の投与後に所望の曝露に到達するのに好適ではないため、好適ではない薬物動態特性によって妨げられ得る。プロドラッグ技術を使用して、薬物動態特性を改善する、例えば、週1回の経口投薬に好適なものにすることができる。プロドラッグの投与後の活性薬剤の曝露レベルは、プロドラッグから薬剤への変換半減期に依存し、それ故に、好適な変換半減期を得ることにより、化合物が特定の投薬レジメン(例えば、週1回の投与)に好適なものになり得る。プロドラッグの投与後の活性薬剤の曝露レベルは、活性薬剤の観察された終末相半減期に依存し、それ故に、好適な終末相半減期を得ることにより、化合物が特定の投薬レジメン(例えば、週1回の投与)に好適なものになり得る。経口投与されるプロドラッグの好適性は、消化管での吸収後に全身循環に到達するそれらの能力に依存し、それ故に、好適な経口バイオアベイラビリティを得ることにより、化合物が経口投与(例えば、週1回の経口投与)に好適なものになり得る。
【0061】
第1の機能的態様によれば、本明細書に記載の化合物は、活性薬剤と比較して、ヒトGLP-1受容体および/またはGIP受容体において任意の有意な程度まで意図される効力を発揮しない。加えて、またはあるいは、第2の機能的態様では、本明細書に記載のプロドラッグは、生理学的条件下で活性薬剤に変換される。加えて、またはあるいは、第3の機能的態様では、本明細書に記載のプロドラッグは、静脈内投与、皮下投与、および/または経口投与後の終末相半減期の延長などの改善された薬物動態特性を有する。
【0062】
機能的受容体活性化活性
第1の機能的態様によれば、本発明のプロドラッグは、活性薬剤と比較して、ヒトGlP-1受容体および/またはヒトGIP受容体を任意の有意な程度まで活性化しない。本明細書に記載のGLP-1/GIP受容体作動薬の機能活性は、本明細書のインビトロ機能的効力を測定するための一般的な方法に記載されるようにインビトロで試験することができる。
【0063】
50%効果濃度(EC50)という用語は、概して、用量反応曲線を参照することにより、ベースラインと最大との中間の反応を誘発する濃度を指す。EC50は、化合物の効力の尺度として使用され、その最大効果の50%が観察される濃度を表す。
【0064】
したがって、化合物のインビトロ効力を本明細書に記載されるように決定することができ、EC50を決定することができる。EC50値がより低いほど、効力がより良好である。
【0065】
かかる化合物を特徴付けるために、各々の受容体の天然ホルモンに関連してインビトロ効力を考慮することがさらに関連し得る。
【0066】
インビトロ効力は、例えば、適切なGLP-1受容体および/またはGIP受容体を発現する膜を含む培地中で、および/または適切なGLP-1受容体および/またはGIP受容体を発現する全細胞を用いたアッセイで決定され得る。
【0067】
例えば、ヒトGLP-1および/またはGIP受容体の機能的応答は、受容体遺伝子アッセイで、例えば、ヒトGLP-1および/またはGIP受容体を発現し、かつプロモーターに結合したcAMP応答配列(CRE)のDNAおよびホタルルシフェラーゼ(CREルシフェラーゼ)の遺伝子を含む安定にトランスフェクトされたBHK細胞株中で測定され得る。GLP-1および/またはGIP受容体の活性化の結果としてcAMPが生成されると、次いで、ルシフェラーゼの発現がもたらされる。ルシフェラーゼは、ルシフェリンを添加することによって決定され得、これが酵素によってオキシルシフェリンに変換されて生物発光を生じ、これがインビトロ効力のレポーターとして測定される。かかるアッセイの一例が本明細書に記載の実施例5に記載される。本化合物がアルブミンに結合するように設計された1つ以上の置換基を含み得るため、受容体活性がアッセイ培地中のヒト血清アルブミン(HSA)の存在または不在に影響され得ることに留意することも重要である。HSAの不在下でのEC50と比較したEC50の増加によって示されるHSAの存在下での本化合物の効力の減少は、本化合物とHSAとの相互作用を示し、インビボでの長期化作用時間を予測する。
【0068】
一実施形態では、活性薬剤は、ヒトGLP-1受容体およびGIP受容体を活性化する強力なインビトロ効果を有する。
【0069】
一実施形態では、親化合物は、HSAなしで行われた場合、本明細書の実施例2に記載のCREルシフェラーゼレポーターアッセイにおいて20pM未満のEC50でヒトGLP-1受容体およびGIP受容体をインビトロで活性化することができる。
【0070】
一実施形態では、親化合物は、100pM以下、より好ましくは50pM未満、または最も好ましくは20pM未満のEC50に対応する実施例2の方法を使用して決定されるヒトGLP-1受容体およびGIP受容体でのインビトロ効力を有する。
【0071】
一実施形態では、ヒトGLP-1受容体アッセイおよびヒトGIP受容体アッセイにおけるEC50はいずれも、1~20pMなど、1~15pMなど、または1~10pMなどの1~25pMである。
【0072】
変換半減期
第2の機能的態様によれば、本発明のプロドラッグは、驚くほど良好な変換半減期を有する。
【0073】
プロドラッグから活性薬剤への変換が起こる速度は、変換半減期によって定量化され得る。「変換半減期」という用語は、本明細書で使用される場合、変換の結果としてプロドラッグの濃度を半減させるのに必要な時間の長さである。
【0074】
ヒトにおける週1回の経口投薬用のプロドラッグの望ましい変換半減期は、本明細書の「変換半減期を測定するための一般的な方法」に記載されるようにpH7.4および37℃で測定された場合、50~400時間など、75~300時間など、または100~200時間などの24~500時間であり得る。
【0075】
プロドラッグは、DKP部分の分子内環化時に所望の変換を達成することができ、その際に、DKP部分が活性薬剤から切断されて、活性活性薬剤の放出がもたらされる。かかる分子内環化は、例えば、2,5-ジケトピペラジン(DKP)形成を介して、生理学的条件下で酵素非依存性プロセスとして起こり得る。DKP形成を介して活性活性薬剤に変換されることができるプロドラッグでは、変換時に活性薬剤が放出される部分は、DKP部分と呼ばれる。変換半減期は、とりわけ、DKP部分の性質に依存し、それ故に、例えば、DKP部分の分子設計を用いて、変換半減期を改善して(例えば、それを週1回の経口投与に好適なものにして)、プロドラッグの特性をある特定の投薬レジメン(例えば、週1回の経口投与)に好適なものにすることができる。
【0076】
いくつかの実施形態では、変換半減期は、1日1回投与に好適である。いくつかの実施形態では、変換半減期は、週1回の投与に好適である。いくつかの実施形態では、変換半減期は、24時間超である。いくつかの実施形態では、変換半減期は、50時間超である。いくつかの実施形態では、変換半減期は、75時間超である。いくつかの実施形態では、変換半減期は、100時間超である。いくつかの実施形態では、変換半減期は、500時間未満である。いくつかの実施形態では、変換半減期は、400時間未満である。いくつかの実施形態では、変換半減期は、300時間未満である。いくつかの実施形態では、変換半減期は、200時間未満である。
【0077】
いくつかの実施形態では、変換半減期は、24~500時間である。いくつかの実施形態では、変換半減期は、50~400時間である。いくつかの実施形態では、変換半減期は、75~300時間である。いくつかの実施形態では、変換半減期は、100~200時間である。
【0078】
観察された終末相半減期
多くの薬剤は、最初に急な勾配をたどり、その後に浅い勾配をたどる二相性の血漿配置曲線を呈する。浅い勾配をたどる相は、「末端相」と呼ばれ得る。「終末相半減期」という用語は、本明細書で使用される場合、化合物の血漿濃度が終末相中に半減するのに必要な時間を指す。遊離形態で投与された場合の薬剤の終末相半減期は、プロドラッグとして投与された場合、遊離形態での薬剤の連続放出がインビボでのプロドラッグの変換時に起こるため、プロドラッグとして投与された場合の薬剤の半減期とは異なる。
【0079】
プロドラッグとして投与される活性薬剤の血漿濃度は、とりわけ、血流からの活性薬剤の除去の結果、ならびに活性薬剤へのプロドラッグの段階的変換の結果である。プロドラッグの段階的変換により、活性薬剤の継続的な供給が確実になり、それ故に、薬剤が遊離形態で投与された場合と比較して所望の曝露レベルに必要な投与回数が減少する。血流への活性薬剤の継続的な供給は、観察された終末相半減期(すなわち、測定可能な終末相半減期)に反映され、プロドラッグとして投与された場合の活性薬剤の供給は、遊離形態で投与された場合の活性薬剤の供給よりも高い。
【0080】
本発明のプロドラッグまたは本発明のプロドラッグの活性薬剤の薬物動態特性は、インビボ薬物動態研究によって好適に決定され得る。かかる研究は、医薬化合物が体内でどのように吸収され、分布し、排出されるか、およびこれらの過程が体内の化合物の濃度にどのように影響するかを経時的に評価するために行われる。医薬品開発の発見段階および前臨床段階で、マウス、ラット、サル、イヌ、ミニブタ、またはブタなどの動物モデルを使用して、この特徴付けを行うことができる。これらのモデルのいずれも、本発明のプロドラッグの薬物動態特性を試験するために使用することができる。かかる研究では、動物に、典型的には、関連する製剤で、薬剤の単回投与により、静脈内投与されるか、皮下(s.c.)投与されるか、または経口(p.o.)投与されるかのいずれかが行われる。血液試料が投薬後の所定の時点で採取され、関連する定量アッセイを用いて薬剤の濃度について分析される。これらの測定値に基づいて、試験化合物の血漿濃度プロファイルがプロットされ、データのいわゆるノンコンパートメント薬物動態解析が行われる。大半の化合物について、血漿濃度プロファイルの終末部分は、片対数プロットで描かれたときに直線になり、薬剤が一定の分画速度で体内から除去されることを反映している。この速度(ラムダZまたはλz)は、プロットの終末部分の勾配を差し引いたものに等しい。この速度からも終末相半減期がt1/2=ln(2)/λzとして計算され得る(例えば、Johan Gabrielsson and Daniel Weiner:Pharmacokinetics and Pharmacodynamic Data Analysis.Concepts & Applications,3rd Ed.,Swedish Pharmaceutical Press,Stockholm(2000)を参照されたい)。プロドラッグとして投与される活性薬剤を調査する場合、薬剤が緩徐に放出されるデポーとしてプロドラッグが作用するため、活性薬剤の終末相半減期は、プロドラッグの段階的変換から生じる活性薬剤の連続供給に影響される。したがって、プロドラッグとして投与される活性薬剤の終末相半減期の分析は、活性薬剤がその遊離形態で投与される場合と同じではなくなるため、最も好都合に「観察された終末相半減期」と呼ばれる。
【0081】
いくつかの実施形態では、本発明のプロドラッグの終末相半減期は、本明細書の「ミニブタにおける終末相半減期を測定するための一般的な方法」に記載されるように決定される。ヒトにおける週1回の経口投与に好適な観察された終末相半減期は、ミニブタで決定された場合、50時間超、または好ましくは70時間超、または最も好ましくは90時間超であり得る。ヒトにおける週1回の経口投与に好適な観察された終末相半減期は、ミニブタで決定された場合、250時間未満、または好ましくは180時間未満であり得る。ヒトにおける週1回の経口投与に好適な観察された終末相半減期は、ミニブタで決定された場合、50~250時間の範囲内、または好ましくは90~180時間の範囲内であり得る。
【0082】
経口バイオアベイラビリティ
薬理学的に活性な化合物による経口治療は、バイオアベイラビリティが乏しいため、妨げられる場合がある。「バイオアベイラビリティ」という用語は、投与後に全身循環に到達する化合物の能力を指し、投与時に全身循環に到達する化合物投薬量の分率度(fractional extent)として定量化され得る。経口投与用の薬剤の経口吸収性が高い(すなわち、経口投与後に消化管からの吸収性が高い)ことが望ましく、これは、高い吸収性が、薬剤の意図される全身濃度に到達するのに必要な投薬量を減少させ、それ故に、例えば、錠剤サイズを小さくし、製造コストを削減することができるためである。
【0083】
「経口バイオアベイラビリティ」という用語は、本明細書で使用される場合、経口投与後に全身循環に到達する化合物の能力を指す。経口バイオアベイラビリティは、化合物が経口投与後に消化管に吸収される程度を反映する。言い換えれば、高い経口バイオアベイラビリティは、高い経口吸収性に関連する。薬剤の高い経口バイオアベイラビリティは、経口投与後の高い薬剤曝露に関連する。経口バイオアベイラビリティは、国際公開第2019/149880号に記載されるようにビーグル犬において吸収促進剤N-(8-[2-ヒドロキシベンゾイル]アミノ)カプリル酸ナトリウム(SNAC)との共製剤で測定され得る。
【0084】
経口バイオアベイラビリティは、本明細書のビーグル犬における経口バイオアベイラビリティを測定するための一般的な方法に記載されるように測定され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、高い経口バイオアベイラビリティを有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、活性薬剤と同様の経口バイオアベイラビリティを有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、活性薬剤に劣らない経口バイオアベイラビリティを有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、活性薬剤と少なくとも同じ程度に高い経口バイオアベイラビリティを有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、ヒトにおける週1回の経口投薬に好適な経口バイオアベイラビリティを有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、ビーグル犬において決定され、かつCmax/用量[kg/L]として測定される経口バイオアベイラビリティを有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、ビーグル犬においてCmax/用量[kg/L]として測定される経口バイオアベイラビリティを有し、ここで、Cmax/用量[kg/L]は、0.10超、好ましくは0.15超、最も好ましくは0.20超である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、ビーグル犬において決定され、かつAUC/用量[kg・hr/L]として測定される経口バイオアベイラビリティを有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、ビーグル犬において決定され、かつAUC/用量[kg・hr/L]として測定される経口バイオアベイラビリティを有し、ここで、AUC/用量[kg・hr/L]は、2.0超、好ましくは5.0超、最も好ましくは10.0超である。
【0085】
医薬組成物
本明細書に記載のプロドラッグまたはその薬学的に許容可能な塩と、任意選択で1つ以上の薬学的に許容可能な賦形剤とを含む医薬組成物は、当該技術分野で公知のように調製され得る。
【0086】
「賦形剤」という用語は、活性治療成分以外の任意の成分を広範に指す。賦形剤は、不活性(inert)物質、不活性(iactive)物質、および/または医学的に活性でない物質であり得る。賦形剤は、例えば、担体、ビヒクル、充填剤、結合剤、潤滑剤、滑剤、崩壊剤、流量制御剤、結晶化抑制剤、可溶化剤、安定剤、着色剤、香味剤、界面活性剤、乳化剤、もしくはそれらの組み合わせとして、および/または投与を改善するために、および/または活性物質の吸収を改善するために、様々な目的を果たし得る。使用される賦形剤の各々の量は、当該技術分野において慣習的な範囲内で変動し得る。経口剤形を製剤化するために使用され得る技法および賦形剤は、Handbook of Pharmaceutical Excipients(例えば、第8版、Sheskey et al.,Eds.,American Pharmaceuticals Association and Pharmaceutical Press,publications department of the Royal Pharmaceutical Society of Great Britain(2017)、およびそれ以降のいずれかの版)、およびRemington:The Science and Practice of Pharmacy(例えば、第22版、Remington and Allen,Eds.,Pharmaceutical Press (2013)、およびそれ以降のいずれかの版)に記載されている。
【0087】
本明細書に記載の化合物を含む医薬組成物は、いくつかの剤形、例えば、溶液、懸濁液、錠剤、およびカプセル剤であり得る。本発明のプロドラッグを含む医薬組成物は、それを必要とする患者に、局所部位(例えば、皮膚および粘膜部位)、吸収を迂回する部位(例えば、動脈内、静脈内、心臓内)、および吸収に関与する部位(例えば、皮膚内、皮膚下、筋肉内、経口、または腹部内)などのいくつかの部位で投与され得る。投与される用量は、0.1ug/kg~100mg/kgの本発明の化合物を含み得る。
【0088】
いくつかの実施形態では、本医薬組成物は、固体製剤、例えば、凍結乾燥または噴霧乾燥組成物であり得、これらをそのまま使用してもよく、または医師もしくは患者が使用前に溶媒および/または希釈剤を添加して使用してもよい。一実施形態では、本医薬組成物は、錠剤の形態である。さらなる実施形態では、本医薬組成物は、例えば、国際公開第2012/080471号、国際公開第2013/189988号、または国際公開第2019/149880号に記載の製剤のうちのいずれか1つ以上を使用する、本発明のプロドラッグと、N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸ナトリウム(SNAC)などのN-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸塩と、当該技術分野で公知の1つ以上のさらなる賦形剤とを含むか、またはそれらから成る固体製剤であり得る。一実施形態では、本医薬製剤は、本発明のプロドラッグと、SNACと、1つ以上のさらなる賦形剤とを含む錠剤である。
【0089】
あるいは、本医薬組成物は、水性製剤などの液体製剤である。注射に好適な液体組成物は、必要に応じて成分を溶解させて混合して、所望の最終生成物をもたらすことを伴う医薬産業の従来の技法を使用して調製することができる。したがって、ある手順に従って、本発明による化合物は、好適なpHの好適な緩衝液中に溶解される。本組成物は、例えば、滅菌濾過によって滅菌され得る。
【0090】
薬学的に許容可能な塩
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のプロドラッグは、薬学的に許容可能な塩の形態である。塩は、例えば、塩基と酸との間の化学反応、例えば、2NH3+H2SO4→(NH4)2SO4によって形成される。塩は、塩基性塩であっても酸性塩であってもよく、またはどちらでもなくてもよい(すなわち、中性塩)。水中で、塩基性塩は水酸化物イオンを生成し、酸性塩はヒドロニウムイオンを生成する。本プロドラッグの塩は、それぞれ、アニオン基の間またはカチオン基の間にカチオンまたはアニオンを付加することによって形成され得る。これらの基は、本誘導体のペプチドおよび/または置換基に位置し得る。
【0091】
アニオン基の非限定的な例には、存在する場合、置換基中の任意の遊離カルボン酸基、ならびにペプチド中の遊離カルボン酸基が挙げられる。ペプチドは、存在する場合、C末端に遊離カルボン酸基、ならびにアスパラギン酸およびグルタミン酸などのアミノ酸残基の任意の遊離カルボキシル基を含み得る。
【0092】
カチオン基の非限定的な例には、存在する場合、置換基中の任意の遊離アミノ基、ならびにペプチド中の遊離アミノ基が挙げられる。ペプチドは、存在する場合、N末端に遊離アミノ基、ならびにヒスチジン、アルギニン、およびリジンなどのアミノ酸残基の任意の遊離イミダゾール、グアニジン、またはアミノ基を含み得る。
【0093】
特定の実施形態では、本発明のプロドラッグは、薬学的に許容可能な塩の形態である。
【0094】
薬学的適応
本発明のさらなる態様は、医薬として使用するための本明細書に記載の化合物に関する。「治療」という用語は、本明細書で使用される場合、それを必要とする任意のヒト対象者の医学的処置を指す。治療は、予防的(preventive)、予防的(prophylactic)、緩和的、対症的、および/または治癒的であり得る。当該治療のタイミングおよび目的は、対象者の健康状態に従って、個体によって異なり得る。
【0095】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、以下の医学的処置における使用のためのものである:
(i)高血糖症、2型糖尿病、耐糖能障害、1型糖尿病、非インスリン依存性糖尿病、MODY(若年発症成人型糖尿病)、妊娠糖尿病などの全ての形態の糖尿病の予防および/もしくは治療、ならびに/またはHbA1Cの低減、
(ii)2型糖尿病の進行などの糖尿病疾患の進行の遅延または予防、耐糖能障害(IGT)からインスリンを必要とする2型糖尿病への進行の遅延、インスリン抵抗性の遅延または予防、および/またはインスリンを必要としない2型糖尿病からインスリンを必要とする2型糖尿病への進行の遅延、
(iii)例えば、食物摂取量の減少、体重減少、食欲の抑制、満腹感の誘発による、過体重または肥満などの摂食障害の予防および/もしくは治療;過食性障害、神経性大食症、および/もしくは抗精神病薬もしくはステロイドの投与によって誘発された肥満の治療もしくは予防、胃内容排出の遅延、身体的可動性の増加、ならびに/または骨関節炎および/もしくは尿失禁などの肥満の併存疾患の予防および/もしくは治療、
(iv)(薬剤誘発性または食事と運動による)減量成功後の体重維持、すなわち、減量成功後の体重増加の予防。
(v)肝脂肪症、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝炎症、または脂肪肝などの肝臓障害の予防および/または治療。
【0096】
いくつかの実施形態では、本化合物は、糖尿病および/または肥満を治療および/または予防するための方法に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、本化合物は、糖尿病および/または肥満を治療するための方法に使用するためのものである。
【0097】
いくつかの実施形態では、本化合物は、2型糖尿病を治療および/または予防するための方法に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、本化合物は、2型糖尿病を治療するための方法に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、本化合物は、肥満を治療および/または予防するための方法に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、本化合物は、肥満を治療するための方法に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、本化合物は、体重を管理するための方法に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、本化合物は、食欲を低下させるための方法に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、本化合物は、食物摂取量を減少させるための方法に使用するためのものである。
【0098】
生成プロセス
本発明のプロドラッグ(またはその断片)は、例えば、t-BocもしくはFmoc化学反応または他の十分に確立された技法を使用した古典的なペプチド合成、例えば、固相ペプチド合成によって生成されてもよく、例えば、Greene and Wuts,“Protective Groups in Organic Synthesis”,John Wiley & Sons,1999、Florencio Zaragoza Dorwald,“Organic Synthesis on Solid Phase”,Wiley-VCH Verlag GmbH,2000、および“Fmoc Solid Phase Peptide Synthesis”,Edited by W.C.Chan and P.D.White,Oxford University Press,2000を参照されたい。
【0099】
プロドラッグを調製する方法の特定の例は、実験パートに含まれる。
【0100】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物を調製するための方法は、固相ペプチド合成の工程を含む。ジペプチド部分および/または置換基は、固相ペプチド合成の一部として連続して構築されてもよく、または別個に生成されてペプチド合成後にペプチドの適切な官能基を介して結合してもよい。
【0101】
一実施形態では、本化合物は、置換基が2つのペプチド断片の一方に結合した後にそれらのペプチド断片がライゲーションされる二段階プロセスによって生成される。
【0102】
実施形態
本発明は、以下の非限定的な実施形態によってさらに説明される。
1.式Iの化合物であって、
B-Z(式I)
(式中、Bがジペプチドであり、当該ジペプチドが任意選択で置換基bを含み、
Zが、GLP-1/GIP受容体共作動薬であり、当該GLP-1/GIP受容体共作動薬が任意選択で置換基zを含む)
当該GLP-1/GIP受容体共作動薬のN末端アミノ基がペプチド結合を介してBに連結している、化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
2.当該GLP-1/GIP受容体共作動薬のアミノ酸配列が、
YX
2EGTX
6TSDYSX
12X
13LX
15X
16X
17AX
19X
20X
21FX
23X
24WLX
27X
28GX
30X
31X
32X
33X
34X
35X
36X
37X
38X
39(配列番号1)
(式中、X
2がAibまたはAであり、
X
6がFまたはVであり、
X
12がIまたはYであり、
X
13がY、A、L、I、またはAibであり、
X
15がDまたはEであり、
X
16がKまたはEであり、
X
17がQまたはIであり、
X
19がAまたはQであり、
X
20がQ、R、E、H、またはKであり、
X
21がAまたはEであり、
X
23がIまたはVであり、
X
24がE、Q、またはNであり、
X
27がLまたはIであり、
X
28がAまたはRであり、
X
30がGまたは不在であり、
X
31がPまたは不在であり、
X
32がE、S、または不在であり、
X
33がS、K、または不在であり、
X
34がGまたは不在であり、
X
35がAまたは不在であり、
X
36がPまたは不在であり、
X
37がPまたは不在であり、
X
38がPまたは不在であり、
X
39がSまたは不在である)である、実施形態1に記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
3.当該GLP-1/GIP受容体共作動薬のアミノ酸配列が、
Y-Aib-EGTFTSDYSIX
13LX
15X
16X
17AX
19X
20X
21FX
23X
24WLX
27AGGPSX
33GAPPPS(配列番号2)
(式中、X
13がLまたはAibであり、
X
15がDまたはEであり、
X
16がKまたはEであり、
X
17がQまたはIであり、
X
19がAまたはQであり、
X
20がRまたはKであり、
X
21がAまたはEであり、
X
23がIまたはVであり、
X
24がEまたはQであり、
X
27がLまたはIであり、
X
33がSまたはKである)である、実施形態1に記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
4.当該GLP-1/GIP受容体共作動薬のアミノ酸配列が、
Y-Aib-EGTFTSDYSILLEX
16QAAREFIEWLLAGGPSX
33GAPPPS(配列番号3)
(式中、X
16がKまたはEであり、
X
33がSまたはKである)である、実施形態1に記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
5.X
16がEであり、X
33がKである、実施形態2~4のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
6.X
16がKであり、X
33がSである、実施形態2~4のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
7.当該GLP-1/GIP受容体共作動薬のアミノ酸配列がY-Aib-EGTFTSDYSI-Aib-LDKIAQKAFVQWLIAGGPSSGAPPPS(配列番号4)である、実施形態1~6のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
8.当該GLP-1/GIP受容体共作動薬のアミノ酸配列が、Y-Aib-EGTFTSDYSI-Aib-LDKIAQKAFVQWLIAGGPSSGAPPPS(配列番号4)、Y-Aib-EGTFTSDYSILLEEQAAREFIEWLLAGGPSKGAPPPS(配列番号5)、およびY-Aib-EGTFTSDYSILLEKQAAREFIEWLLAGGPSSGAPPPS(配列番号6)から成る群から選択される、実施形態1~7のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
9.当該GLP-1/GIP受容体共作動薬のアミノ酸配列がY-Aib-EGTFTSDYSILLEEQAAREFIEWLLAGGPSKGAPPPS(配列番号5)またはY-Aib-EGTFTSDYSILLEKQAAREFIEWLLAGGPSSGAPPPS(配列番号6)である、実施形態1~8のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
10.当該GLP-1/GIP受容体共作動薬が置換基zを含み、当該置換基zがリジン(K)を介して当該GLP-1/GIP受容体共作動薬に結合している、実施形態1~9のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
11.X
16および/またはX
20および/またはX
33がリジンである、実施形態2~10のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
12.X
16がリジンである、実施形態2、3、11、または6のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
13.X
20がリジンである、実施形態2、11、または7のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
14.X
33がリジンである、実施形態2、3、11、または5のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
15.当該置換基zが16位、20位、または33位のリジン(K)を介して当該GLP-1/GIP受容体共作動薬に結合している、実施形態1~14のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
16.GLP-1/GIP受容体共作動薬がC末端にアミド修飾を有する、実施形態1~15のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
17.33位の当該リジンが、Chem.8、Chem.7、またはChem.10でのリジン側鎖のイプシロン-アミノ基へのコンジュゲーションにより化学修飾されている、実施形態5、8、または9のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
18.16位の当該リジンが、Chem.7でのリジン側鎖のイプシロン-アミノ基へのコンジュゲーションにより化学修飾されている、実施形態6、8、または9のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
19.20位の当該リジンが、Chem.11でのリジン側鎖のイプシロン-アミノ基へのコンジュゲーションにより化学修飾されている、実施形態7または8に記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
20.当該ジペプチドBが、式II:
X-Y(式II)
(式中、Xが、Xのアルファ-カルボン酸基とYのアルファ-アミノ基との間に形成されたアミド結合を介してYに連結した任意のアルファ-アミノ酸であり、
Yが、Yのアルファ-カルボン酸基と当該GLP-1/GIP受容体共作動薬のN末端アミノ基との間に形成されたペプチド結合を介してZに連結したN-アルキル化アルファ-アミノ酸である)である、実施形態1~19のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
21.当該ジペプチドBが、式II:
X-Y(式II)
(式中、Xが、Xのアルファ-カルボン酸基とYのアルファ-アミノ基との間に形成されたアミド結合を介してYに連結した任意のアルファ-アミノ酸であり、
Yが、Yのアルファ-カルボン酸基とZのN末端アミノ基との間に形成されたペプチド結合を介してZに連結したN-アルキル化アルファ-アミノ酸である)である、実施形態1~16のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
22.Yが、サルコシン、N-sec-ブチルグリシン、プロリン、トランス-4-ヒドロキシプロリン、N-メチルグルタメート、N-メチルノルロイシン、N-メチルホモアラニン、N-メチルアラニン、N-メチルリジン、N-(2-アミノエチル)グリシン、N-ヘキシルホモアラニン、N-プロピルアラニン、ホモプロリン、N-プロピルグリシン、N-エチルグリシン、およびN-メチルフェニルアラニンから成る群から選択される、実施形態20または21に記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
23.Xが、リジン、4-アミノフェニルアラニン、D-リジン、アラニン、グリシン、プロリン、D-バリン、ホモプロリン、D-プロリン、D-ホモプロリン、D-アラニン、およびアゼチジン-2-カルボン酸から成る群から選択される、実施形態20~22のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
24.Yが、サルコシン、N-sec-ブチルグリシン、プロリン、トランス-4-ヒドロキシプロリン、N-メチルグルタメート、N-メチルノルロイシン、N-メチルホモアラニン、N-メチルアラニン、N-メチルリジン、N-ヘキシルホモアラニン、N-プロピルアラニン、ホモプロリン、N-プロピルグリシン、N-エチルグリシン、およびN-メチルフェニルアラニンから成る群から選択される、実施形態20~23のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
25.Yが、サルコシンまたはN-(2-アミノエチル)グリシンである、実施形態20~24のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
26.Xが、リジン、D-リジン、アラニン、ロイシン、グリシン、プロリン、およびアスパラギン酸から成る群から選択される、実施形態20~25のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
27.Xが、リジン、D-リジン、およびグリシンから成る群から選択される、実施形態20~26のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
28.ジペプチドが、分子内環化を経て2,5-ジケトピペラジン(DKP)を形成することができ、これにより、AとZとの間のアミド結合が切断されるようになる、実施形態1~27のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
29.ジペプチドが、分子内環化を経て2,5-ジケトピペラジン(DKP)を形成することができ、これにより、AとZとの間のペプチド結合が切断されるようになる、実施形態1~27のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
30.当該ジペプチドが置換基bを含む、実施形態1~29のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
31.当該ジペプチドが置換基bを担持する、実施形態1~29のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
32.当該ジペプチドが置換基bを有する、実施形態1~29のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
33.置換基bが任意選択でアミド結合を介してXに共有結合している、実施形態21~30のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
34.置換基bが任意選択でアミド結合を介してYに共有結合している、実施形態21~30のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
35.当該置換基bがアルブミン結合部分である、実施形態1~34のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
36.当該置換基bがプロトラクターおよび任意選択でリンカーを含むか、またはそれらから成る、実施形態1~35のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
37.当該プロトラクターがC
16-C
22カルボン酸などの脂肪酸である、実施形態36に記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
38.当該プロトラクターがChem.1である、実施形態36または37に記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
39.当該置換基がリンカーを含み、任意選択で、当該リンカーがリンカー要素を含むか、またはそれから成る、実施形態1~38のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
40.当該リンカーが、式IV:
A
1-A
2-A
3-A
4-A
5(式IV)
(式中、A
1がアミド結合を介して当該ジペプチドのアミノ酸に共有結合しており、任意選択でアミド結合を介して当該プロトラクターにも共有結合しており、Chem.2、Chem.3、Chem.4、およびChem.5から成る群から選択され、A
5がChem.1に共有結合しており、Chem.2であるか、または不在であり、A
2、A
3、およびA
4が各々個別に、Chem.2、Chem.3、Chem.4、およびChem.5から成る群から選択されるか、または不在である)のものである、実施形態38または39に記載の化合物。
41.置換基bが、Chem.16、Chem.17、Chem.18、Chem.19、Chem.20、Chem.21、およびChem.22から成る群から選択される、実施形態1~40のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
42.当該化合物が以下から成る群から選択される、実施形態1~41のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
化合物番号1
【化5】
化合物番号2
【化6】
化合物番号3
【化7】
化合物番号4
【化8】
化合物番号5
【化9】
化合物番号6
【化10】
化合物番号7
【化11】
化合物番号8
【化12】
化合物番号9
【化13】
化合物番号10
【化14】
化合物番号11
【化15】
化合物番号12
【化16】
化合物番号13
【化17】
化合物番号14
【化18】
化合物番号15
【化19】
化合物番号16
【化20】
化合物番号17
【化21】
、および
化合物番号18
【化22】
。
43.当該化合物が、化合物番号1、2、3、9、および10から成る群から選択される、実施形態1~42のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
44.当該化合物が化合物番号1である、実施形態1~43のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
45.当該化合物が化合物番号2である、実施形態1~43のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
46.当該化合物が化合物番号3である、実施形態1~43のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
47.当該化合物が化合物番号4である、実施形態1~43のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
48.当該化合物が化合物番号5である、実施形態1~43のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
49.当該化合物がプロドラッグであり、インビトロでいかなる有意な効力も発揮しない、実施形態1~48のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
50.当該化合物がプロドラッグであり、変換半減期を有する、実施形態1~49のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
51.当該変換半減期がpH7.4および37℃でインビトロで測定される、実施形態50に記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
52.当該変換半減期が本明細書の変換半減期を測定するための一般的な方法に記載されるように測定される、実施形態50または51に記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
53.当該変換半減期が1日1回投与に好適である、実施形態50~52のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
54.当該変換半減期が週1回投与に好適である、実施形態50~52のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
55.インビトロで測定された当該変換半減期が90~4300時間である、実施形態50~52のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
56.インビトロで測定された当該変換半減期が90~4300時間である、実施形態50~52のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
57.インビトロで測定された当該変換半減期が300~1100時間である、実施形態50~52のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
58.インビトロで測定された当該変換半減期が450~650時間である、実施形態50~52のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
59.インビトロで測定された当該変換半減期が少なくとも100時間である、実施形態50~52のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
60.インビトロで測定された当該変換半減期が少なくとも200時間である、実施形態50~52のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
61.インビトロで測定された当該変換半減期が少なくとも300時間である、実施形態50~52のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
62.当該化合物が終末相半減期を有する、実施形態1~61のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
63.当該化合物が終末相半減期を有し、当該終末相半減期が1日1回投与に好適である、実施形態1~61のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
64.当該化合物が終末相半減期を有し、当該終末相半減期が週1回投与に好適である、実施形態1~61のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
65.当該終末相半減期がミニブタで決定され、本明細書のミニブタにおける終末相半減期を測定するための一般的な方法に記載されるように測定される、実施形態62~64のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
66.当該終末相半減期が、ミニブタで決定された場合、90時間超である、実施形態62~65のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
67.当該終末相半減期が、ミニブタで決定された場合、110時間超である、実施形態62~65のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
68.当該終末相半減期が、ミニブタで決定された場合、250時間超である、実施形態62~65のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
69.当該終末相半減期が、ミニブタで決定された場合、180時間超である、実施形態62~65のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
70.当該終末相半減期が、ミニブタで決定された場合、80~240時間である、実施形態62~65のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
71.当該終末相半減期が、ミニブタで決定された場合、110~191時間である、実施形態62~65のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
72.実施形態1~71のいずれか1つに記載の化合物と、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤と、を含む、医薬組成物。
73.当該医薬組成物が液体製剤である、実施形態72に記載の医薬組成物。
74.当該医薬組成物が固体製剤である、実施形態72に記載の医薬組成物。
75.当該医薬組成物が経口投与用である、実施形態72に記載の医薬組成物。
76.錠剤の形態の場合の当該組成物、実施形態74~76のいずれか1つに記載の医薬組成物。
77.少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤がN-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリル酸塩であり、例えば、N-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリル酸がN-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリル酸ナトリウム(SNAC)である、実施形態74~77のいずれか1つに記載の医薬組成物。
78.ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤をさらに含む、実施形態74~78のいずれか1つに記載の医薬組成物。
79.実施形態1~71のいずれか1つに記載の化合物と、N-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリル酸塩と、潤滑剤と、任意選択で1つ以上の薬学的に許容可能な賦形剤と、を含む、錠剤。
80.当該N-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリル酸塩がN-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリル酸ナトリウム(SNAC)である、実施形態79に記載の錠剤。
81.当該潤滑剤がステアリン酸マグネシウムである、実施形態79または80に記載の錠剤。
82.医薬として使用するための、実施形態1~71のいずれか1つに記載の化合物、または実施形態72~78のいずれか1つに記載の医薬組成物、または実施形態79~81のいずれか1つに記載の錠剤。
83.2型糖尿病の治療に使用するための、実施形態1~71のいずれか1つに記載の化合物、または実施形態72~78のいずれか1つに記載の医薬組成物、または実施形態79~81のいずれか1つに記載の錠剤。
84.肥満の治療に使用するための、実施形態1~71のいずれか1つに記載の化合物、または実施形態72~78のいずれか1つに記載の医薬組成物、または実施形態79~81のいずれか1つに記載の錠剤。
85.肝脂肪症、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝炎症、および/または脂肪肝などの肝疾患の治療に使用するための、実施形態1~71のいずれか1つに記載の化合物、または実施形態72~78のいずれか1つに記載の医薬組成物、または実施形態79~81のいずれか1つに記載の錠剤。
86.以下のための医薬の製造における、実施形態1~71のいずれか1つに記載の化合物、または実施形態72~78のいずれか1つに記載の医薬組成物、または実施形態79~81のいずれか1つに記載の錠剤の使用:
a.肝脂肪症、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝炎症、および/または脂肪肝などの肝疾患の予防および/または治療、
b.肥満の予防および/または治療、および/または
c.2型糖尿病の予防および/または治療。
87.2型糖尿病の治療のための医薬の製造における、実施形態1~71のいずれか1つに記載の化合物、または実施形態72~78のいずれか1つに記載の医薬組成物、または実施形態79~81のいずれか1つに記載の錠剤の使用。
88.肥満のための医薬の製造における、実施形態1~71のいずれか1つに記載の化合物、または実施形態72~78のいずれか1つに記載の医薬組成物、または実施形態79~81のいずれか1つに記載の錠剤の使用。
89.2型糖尿病を予防および/または治療するための方法であって、それを必要とする対象者に、実施形態1~71のいずれか1つに記載の化合物、または実施形態72~78のいずれか1つに記載の医薬組成物、または実施形態79~81のいずれか1つに記載の錠剤を投与する、方法。
90.肥満を予防および/または治療するための方法であって、それを必要とする対象者に、実施形態1~71のいずれか1つに記載の化合物、または実施形態72~78のいずれか1つに記載の医薬組成物、または実施形態79~81のいずれか1つに記載の錠剤を投与する、方法。
91.肝脂肪症、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝炎症、および/または脂肪肝などの肝疾患を予防および/または治療するための方法であって、それを必要とする対象者に、実施形態1~71のいずれか1つに記載の化合物、または実施形態72~78のいずれか1つに記載の医薬組成物、または実施形態79~81のいずれか1つに記載の錠剤を投与する、方法。
【0103】
本発明は、以下のさらなる非限定的な実施形態によってさらに説明される。
1.式Iの化合物であって、
B-Z(式I)
(式中、ZがGLP-1/GIP受容体共作動薬またはその誘導体であり、
Bが式IIのジペプチドである)
X-Y(式II)
(式中、Xが、Xのアルファ-カルボン酸基とYのアルファ-アミノ基との間に形成されたアミド結合を介してYに連結した任意のアルファ-アミノ酸であり、
Yが、Yのアルファ-カルボン酸基とZのアミンとの間に形成されたアミド結合を介してZに連結したN-アルキル化アルファ-アミノ酸である)化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
2.Yが、サルコシン、N-sec-ブチルグリシン、プロリン、トランス-4-ヒドロキシプロリン、N-メチルグルタメート、N-メチルノルロイシン、N-メチルホモアラニン、N-メチルアラニン、N-メチルリジン、N-(2-アミノエチル)グリシン、N-ヘキシルホモアラニン、N-プロピルアラニン、ホモプロリン、N-プロピルグリシン、N-エチルグリシン、およびN-メチルフェニルアラニンから成る群から選択される、実施形態1に記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
3.Xが、リジン、4-アミノフェニルアラニン、D-リジン、アラニン、グリシン、プロリン、D-バリン、ホモプロリン、D-プロリン、D-ホモプロリン、D-アラニン、およびアゼチジン-2-カルボン酸から成る群から選択される、実施形態1または2に記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
4.Yが、サルコシン、N-sec-ブチルグリシン、プロリン、トランス-4-ヒドロキシプロリン、N-メチルグルタメート、N-メチルノルロイシン、N-メチルホモアラニン、N-メチルアラニン、N-メチルリジン、N-ヘキシルホモアラニン、N-プロピルアラニン、ホモプロリン、N-プロピルグリシン、N-エチルグリシン、およびN-メチルフェニルアラニンから成る群から選択される、実施形態1~3のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
5.Yが、サルコシンまたはN-(2-アミノエチル)グリシンである、実施形態1~4のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
6.Xが、リジン、D-リジン、アラニン、ロイシン、グリシン、プロリン、およびアスパラギン酸から成る群から選択される、実施形態1~5のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
7.Xが、リジン、D-リジン、およびグリシンから成る群から選択される、実施形態1~6のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
8.ジペプチドが、分子内環化を経て2,5-ジケトピペラジン(DKP)を形成することができ、これにより、BとZとの間のアミド結合が切断されるようになる、実施形態1~7のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
9.当該ジペプチドが置換基bを含む、実施形態1~8のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
10.当該ジペプチドが置換基bを有する、実施形態1~9のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
11.置換基bが任意選択でアミド結合を介してXに共有結合している、実施形態1~10のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
12.当該置換基bがプロトラクターおよび任意選択でリンカーを含むか、またはそれらから成る、実施形態1~11のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
13.当該プロトラクターがChem.1である、実施形態1~12のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
14.当該置換基bが、Chem.16、Chem.17、Chem.18、Chem.19、Chem.20、Chem.21、およびChem.22から成る群から選択される、実施形態1~13のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
15.当該GLP-1/GIP受容体共作動薬のアミノ酸配列が、
YX2EGTX6TSDYSX12X13LX15X16X17AX19X20X21FX23X24WLX27X28GX30X31X32X33X34X35X36X37X38X39(配列番号1)
(式中、X2がAibまたはAであり、
X6がFまたはVであり、
X12がIまたはYであり、
X13がY、A、L、I、またはAibであり、
X15がDまたはEであり、
X16がKまたはEであり、
X17がQまたはIであり、
X19がAまたはQであり、
X20がQ、R、E、H、またはKであり、
X21がAまたはEであり、
X23がIまたはVであり、
X24がE、Q、またはNであり、
X27がLまたはIであり、
X28がAまたはRであり、
X30がGまたは不在であり、
X31がPまたは不在であり、
X32がE、S、または不在であり、
X33がS、K、または不在であり、
X34がGまたは不在であり、
X35がAまたは不在であり、
X36がPまたは不在であり、
X37がPまたは不在であり、
X38がPまたは不在であり、
X39がSまたは不在である)である、実施形態1~14のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
16.当該GLP-1/GIP受容体共作動薬のアミノ酸配列が、
Y-Aib-EGTFTSDYSIX13LX15X16X17AX19X20X21FX23X24WLX27AGGPSX33GAPPPS(配列番号2)
(式中、X13がLまたはAibであり、
X15がDまたはEであり、
X16がKまたはEであり、
X17がQまたはIであり、
X19がAまたはQであり、
X20がRまたはKであり、
X21がAまたはEであり、
X23がIまたはVであり、
X24がEまたはQであり、
X27がLまたはIであり、
X33がSまたはKである)である、実施形態1~15のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
17.当該GLP-1/GIP受容体共作動薬のアミノ酸配列が、
Y-Aib-EGTFTSDYSILLEX16QAAREFIEWLLAGGPSX33GAPPPS(配列番号3)
(式中、X16がKまたはEであり、
X33がSまたはKである)である、実施形態1~16のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
18.X16がEであり、X33がKである、実施形態1~17のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
19.X16がKであり、X33がSである、実施形態1~18のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
20.当該GLP-1/GIP受容体共作動薬のアミノ酸配列が、Y-Aib-EGTFTSDYSI-Aib-LDKIAQKAFVQWLIAGGPSSGAPPPS(配列番号4)、Y-Aib-EGTFTSDYSILLEEQAAREFIEWLLAGGPSKGAPPPS(配列番号5)、およびY-Aib-EGTFTSDYSILLEKQAAREFIEWLLAGGPSSGAPPPS(配列番号6)から成る群から選択される、実施形態1~19のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
21.当該GLP-1/GIP受容体共作動薬が置換基zを含み、当該置換基zがリジン(K)を介して当該GLP-1/GIP受容体共作動薬に結合している、実施形態1~20のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
22.当該置換基zが16位、20位、または33位のリジン(K)を介して当該GLP-1/GIP受容体共作動薬に結合している、実施形態1~21のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
23.当該化合物が、化合物番号1、化合物番号2、化合物番号3、化合物番号4、化合物番号5、化合物番号6、化合物番号7、化合物番号8、化合物番号9、化合物番号10、化合物番号11、化合物番号12、化合物番号13、化合物番号14、化合物番号15、化合物番号16、化合物番号17、および化合物番号18から成る群から選択される、実施形態1~22のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
24.当該化合物が、化合物番号1、2、3、9、および10から成る群から選択される、実施形態1~23のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはアミド。
25.実施形態1~24のいずれか1つに記載の化合物と、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤と、を含む、医薬組成物。
26.当該医薬組成物が液体製剤である、実施形態25に記載の医薬組成物。
27.当該医薬組成物が固体製剤である、実施形態25または26に記載の医薬組成物。
28.当該医薬組成物が経口投与用である、実施形態25~27のいずれか1つに記載の医薬組成物。
29.当該医薬組成物が非経口投与用である、実施形態25~28のいずれか1つに記載の医薬組成物。
30.当該医薬組成物が錠剤の形態である、実施形態25~29に記載の医薬組成物。
31.医薬として使用するための、実施形態1~24のいずれか1つに記載の化合物。
32.2型糖尿病の予防および/または治療に使用するための、実施形態1~24のいずれか1つに記載の化合物。
33.肥満の予防および/または治療に使用するための、実施形態1~24のいずれか1つに記載の化合物。
34.肝脂肪症、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝炎症、および/または脂肪肝などの肝疾患の予防および/または治療に使用するための、実施形態1~24のいずれか1つに記載の化合物。
【実施例0104】
この実験パートは、略語のリストから始まり、化合物を調製するための一般的な方法の節および曝露プロファイルに関連する特性を測定するための方法の節が続く。本発明を例証するために、いくつかの具体的な実施例を各節に組み込んでいる。全ての実施例化合物を本明細書に記載の一般的な方法に従って調製した。必要に応じて、置換基の化学名を、Accelrys Drawバージョン4.1 SP1ソフトウェアおよびIUPAC命名法を使用して作成した。
【0105】
略語
以下の略語は、アルファベット順に、以下で使用される。
Ado:8-アミノ-3,6-ジオキサオクタン酸
Aeg:N-(2-アミノエチル)グリシン
Aib:α-アミノイソ酪酸
Alloc:アリルオキシカルボンキシル
API:大気圧イオン化
AUC:曲線下面積
BHK:ベビーハムスター腎臓
Boc:t-ブチルオキシカルボニル
Cl-HOBt:6-クロロ-1-ヒドロキシベンゾトリアゾール
DCM:ジクロロメタン
DIC:ジイソプロピルカルボジイミド
DIPEA:N,N-ジイソプロピルエチルアミン
DKP:2,5-ジケトピペラジン
DMEM:ダルベッコ改変イーグル培地
DPBS:ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水
EDTA:エチレンジアミン四酢酸
ELISA:酵素結合免疫吸着アッセイ
equiv:モル当量
FBS:ウシ胎児血清
Fmoc:9-フルオレニルメチルオキシカルボニル
GIP:グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド
GIPR:グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド受容体
GLP-1:グルカゴン様ペプチド1
GLP-1R:グルカゴン様ペプチド1受容体
h:時間
HEPES:4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸
HFIP:1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノールまたはヘキサフルオロイソプロパノール
HPLC:高速液体クロマトグラフィー
HSA:ヒト血清アルブミン
i.v.:静脈内
LCMS:液体クロマトグラフィー質量分析
MeCN:アセトニトリル
MeOH:メタノール
mM:ミリモル
mmol:ミリモル
min:分
Mtt:4-メチルトリチル
NMP:1-メチル-ピロリジン-2-オン
OtBu:tert-ブチルエステル
Oxyma Pure(登録商標):シアノ-ヒドロキシイミノ-酢酸エチルエステル
Pbf:2,2,4,6,7-ペンタメチルジヒドロベンゾフラン-5-スルホニル
PBS:リン酸緩衝生理食塩水
PK:薬物動態
pM:ピコモル
p.o.:経口
rpm:1分当たりのラウンド数
Rt:保持時間
Sar:サルコシン
s.c.:皮下
SNAC:N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸ナトリウム
SPPS:固相ペプチド合成
tBu:tert-ブチル
T2D:2型糖尿病
TFA:トリフルオロ酢酸
TIS:トリイソプロピルシラン
Trt:トリフェニルメチルまたはトリチル
UPLC:超高速液体クロマトグラフィー
【0106】
本発明の化合物を調製するための一般的な方法
固相ペプチド合成法(SPPS法、アミノ酸の脱保護法、樹脂からのペプチドの切断法、およびその精製法を含む)、ならびに結果として得られたペプチドの検出法および特徴付け法(LCMS方法)を以下に記載する。
【0107】
C末端ペプチドアミドの調製に用いた樹脂は、H-Rink Amide-ChemMatrix樹脂(例えば、0.5mmol/gの負荷量)であった。C末端ペプチド酸の調製に用いた樹脂は、好適に保護されたC末端アミノ酸誘導体(例えば、ロード量0.5mmol/g)をプレロードしたWang-ポリスチレン樹脂であった。以下に記載の全ての操作を0.1~1.0mmolの合成スケール範囲内で行った。別段の指定がない限り、使用したFmoc保護アミノ酸誘導体は、例えば、AAPPTEC、Anaspec、Bachem、ChemImpex、Iris Biotech、Midwest Biotech、Gyros Protein Technologies、またはNovabiochemから供給される、Fmoc-Ala-OH、Fmoc-Arg(Pbf)-OH、Fmoc-Asn(Trt)-OH、Fmoc-Asp(OtBu)-OH、Fmoc-Cys(Trt)-OH、Fmoc-Gln(Trt)-OH、Fmoc-Glu(OtBu)-OH、Fmoc-Gly-OH、Fmoc-His(Trt)-OH、Fmoc-Ile-OH、Fmoc-Leu-OH、Fmoc-Lys(Boc)-OH、Fmoc-Met-OH、Fmoc-Phe-OH、Fmoc-Pro-OH、Fmoc-Ser(tBu)-OH、Fmoc-Thr(tBu)-OH、Fmoc-Trp(Boc)-OH、Fmoc-Tyr(tBu)-OH、Fmoc-Val-OH、Fmoc-Lys(Mtt)-OH、Fmoc-Aib-OHなどの推奨標準品であった。他に何も指定がない場合、アミノ酸のタンパク質原性L型を使用する。各化合物のN末端アミノ酸のカップリングのために、アルファ-アミノ基をBoc保護した試薬を使用した。
【0108】
SPPSを使用したジペプチドの結合の場合、Alloc-Aeg(Fmoc)-OH、Boc-Ala-OH、Boc-Asp(OtBu)-OH、Boc-Gly-OH、Boc-Leu-OH、Boc-Lys(Fmoc)-OH、Boc-D-Lys(Fmoc)-OH、Boc-Pro-OH、Fmoc-Aeg(N3)-OH、およびFmoc-Sar-OHなどであるが、これらに限定されない、好適に保護された構成ブロックを使用した。SPPSを使用した置換基の結合の場合、Fmoc-8-アミノ-3,6-ジオキサオクタン酸(Fmoc-Ado-OH)、Boc-Lys(Fmoc)-OH、Fmoc-Glu-OtBu、Fmoc-Gly-OH、ヘキサデカン二酸モノ-tert-ブチルエステル、オクタデカン二酸モノ-tert-ブチルエステル、またはエイコサン二酸モノ-tert-ブチルなどであるが、これらに限定されない、好適に保護された構成ブロックを使用した。
【0109】
1.樹脂に結合した保護ペプチド骨格の合成:
方法:SPPS_A
SPPSを、製造業者から支給されたプロトコルに若干の変更を加えて、Protein Technologies SymphonyX固相ペプチド合成装置でFmocに基づく化学反応を使用して行った。混合を、時折の窒素バブリングによって達成した。段階的構築を、以下:1)DMF中で樹脂を事前膨張させる工程、2)1%(v/v)TFAを含むまたは含まない20%(v/v)ピペリジンのDMF溶液を使用して2回の処理(各々10分)でFmocを脱保護する工程、3)DMFで洗浄してピペリジンを除去する工程、4)2,4,6-コリジンを含むまたは含まないDMF溶液として各々3~12当量のFmoc-アミノ酸、Oxyma Pure(登録商標)、およびDICを添加し、その後、少なくとも30分間混合することによってFmoc-アミノ酸をカップリングする工程、4)DMFで洗浄して過剰試薬を除去する工程、5)構築完了時にDCMで最終洗浄する工程を使用して行った。立体障害アミノ酸(例えば、Aib)に続くアミノ酸などであるが、これらに限定されないいくつかのアミノ酸を長時間の反応時間(例えば、4時間または一晩)でカップリングして、反応完了を確実にした。
【0110】
方法:SPPS_B
SPPSを、製造業者から支給された一般的なFmocプロトコルを使用して、Applied Biosystems 431A固相ペプチド合成装置でFmocに基づく化学を使用して行った。混合を、ボルテックスおよび時折の窒素バブリングによって達成した。段階的構築を、以下の工程:1)1M NMP溶液としてCl-HOBt(10当量)中に固体Fmoc-アミノ酸を溶解させ、その後、1M NMP溶液としてDIC(10当量)を添加し、その後、工程2~3と同時に混合することによってFmoc-アミノ酸を活性化する工程、2)20%(v/v)ピペリジンのNMP溶液を使用して1回目の処理(3分)、その後、2回目の処理(15分)でFmocを脱保護する工程、3)NMPで洗浄してピペリジンを除去する工程、4)活性化Fmoc-アミノ酸溶液を樹脂に添加し、その後、少なくとも45分間混合する工程、4)NMPで洗浄して過剰試薬を除去する工程、5)構築完了時にDCMで最終洗浄する工程を使用して行った。立体障害アミノ酸(例えば、Aib)に続くアミノ酸などであるが、これらに限定されないいくつかのアミノ酸を長時間の反応時間(例えば、4時間)でカップリングし、および/または新鮮なカップリング試薬で繰り返し処理して、反応完了を確実にした。
【0111】
2.樹脂結合保護ペプチド骨格へのジペプチドおよび置換基の結合
方法:DS_A
置換基を担持するN末端LysまたはD-Lysを含む化合物の場合、SPPSを、SPPS_Aと同じプロトコルを使用して継続して、ジペプチドBのアミノ酸および置換基bの要素を結合させた。
【0112】
方法:DS_B
ジペプチドB内に置換基を担持するAegを含む化合物の場合、SPPSを、SPPS_Aと同じプロトコルを使用して継続して、Fmoc-Aeg(N3)-OHおよびNα-Boc-保護N末端アミノ酸を結合させた。樹脂結合ペプチドを、9:1 DMF/水溶液として5~10当量のトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィンで2~3時間処理することによって、アジド保護基をアミンに還元した。樹脂を排出し、9:1 DMF/水およびDMFで洗浄し、その後、SPPS_Aと同じプロトコルを使用して置換基bの要素を結合させた。
【0113】
方法:DS_C
ジペプチドB内に置換基を担持するAegを含む化合物のDS_Bの代案として、SPPSを、SPPS_Aと同じプロトコルを使用して継続して、Alloc-Aeg(Fmoc)-OHおよび置換基bの要素を結合させた。DMF溶液として10当量のボランジメチルアミン複合体および20当量のモルホリンを、アルゴン雰囲気下で5分間処理し、その後、DMF溶液として0.1当量のパラジウム-テトラキス(トリフェニルホスフィン)を添加し、さらに30分間処理することによって、Alloc保護基を除去した。樹脂を排出し、DCM、DMF、MeOH、水、およびDMFで洗浄した。その後、Nα-Boc-保護N末端アミノ酸を、SPPS_Aと同じプロトコルを使用して結合させた。
【0114】
方法:DS_D
置換基zを結合させるために、樹脂を、各々45分間の2回の処理の場合、30%HFIPのDCM溶液で洗浄するか、または5分間、5分間、10分間、10分間、15分間、20分間、および30分間の処理の場合、80%HFIPのDCM溶液で洗浄することによって、置換基を担持するLysのNε-Mtt保護を除去した。樹脂を排出し、DCM、DMF、10% DIPEA/DCM、DCM、およびDMFで洗浄した。SPPSを、SPPS_Aと同じプロトコルを使用して継続して、置換基zの要素を結合させた。
【0115】
3.樹脂結合ペプチドの切断および精製:
方法:CP_A
側鎖合成完了後、ペプチジル樹脂をDCMで洗浄し、乾燥させ、その後、95:2.5:2.5(v/v/v)TFA/水/TISまたは92.5:5:2.5(v/v/v)TFA/水/TISで2~3時間処理し、その後、ジエチルエーテルで沈殿させた。沈殿物を単離し(例えば、濾過または遠心分離によって)、ジエチルエーテルで洗浄し、好適な溶媒(例えば、2:1の水/MeCN)中に溶解させ、全ての不安定付加物が分解するまで放置した。精製を、Luna C8(2)カラム(粒径10μm、孔径100Å、寸法250×21.2mm)またはPhenomenex Gemini-NX C18カラム(粒径5μm、孔径110Å、寸法250×50mm)を用いて逆相分取HPLCによって行った。不純物の分離および生成物の溶出を、0.1%TFA含有水溶液中のMeCNのグラジエントを増加させることによって達成した。関連する分画を分析LCMSによって同一性および純度について調べた。純粋な所望のペプチドを含む分画をプールし、凍結乾燥させて、白色の固体としてペプチドTFA塩を得た。
【0116】
4.TFAからナトリウム塩への塩交換:
方法:SX_A
方法CP_Aから単離した凍結乾燥ペプチドを、適切な水性緩衝液(例えば、4:1の水/MeCN、0.2M酢酸ナトリウム)中に溶解させて5~20mg/mLにし、必要に応じて1M NaOHでpH7~8に調整して、完全に溶解させた。ペプチドを含む緩衝液を、Sep-Pak C18カートリッジ(0.5~2g)を使用して塩交換した。カートリッジを最初に4カラム体積のイソプロパノール、その後、4カラム体積のMeCN、その後、8カラム体積の水で平衡化した。ペプチド溶液をカートリッジに適用し、通過画分を再適用して、ペプチドの完全保持を確実にした。カートリッジを4カラム体積の水、その後、NaHCO3、NaOAc、またはNa2HPO4などを含むが、これらに限定されない10カラム体積の緩衝液(例えば、pH7.5)で洗浄した。カラムを4カラム体積の水で洗浄し、ペプチドを5~10カラム体積の50~80%MeCN水溶液で溶出した。ペプチドを含む溶離液を凍結乾燥させて、白色の固体としてペプチドナトリウム塩を得て、これをそのまま使用した。
【0117】
一般的な検出法および特徴付け法
LCMS法:
方法:LCMS_A
分析を、適切な体積の試料を、37Cで平衡化したPhenomenex Kinetex C8カラム(粒径2.6μm、孔径100Å、寸法4.6×75mm)に注入することによって、Agilent 1260 Infinity series HPLC/MS systemを用いて行った。溶離液Aは0.05%TFAの水溶液であり、溶離液Bは0.05%TFAの9:1 MeCN/水溶液であった。溶出を、1.0mL/分の流量で10分にわたる20-100%溶離液Bの線形勾配で達成した。UV検出を214nmに設定した。MSイオン化を、500~2000amuの走査質量範囲を用いて、API-ESモードおよび正極性で実行した。各々のm/zの最も豊富な同位体が報告される。
【0118】
方法:LCMS_B
分析を、適切な体積の試料を、40Cで平衡化したACQUITY UPLC BEH130カラム(粒径1.7μm、孔径130Å、寸法2.1×150mm)に注入することによって、Waters ACQUITY UPLC/MS systemを用いて行った。溶離液Aは0.05%TFAの水溶液であり、溶離液Bは0.05%TFAのMeCN溶液であった。溶出を、UV検出の場合、0.4mL/分の流量で16分にわたる5-95%溶離液Bの線形勾配で達成し、MS検出の場合、0.45mL/分の流量で4分にわたる5-60%溶離液Bの線形勾配で達成した。UV検出を214nmに設定した。MSイオン化を、100~2000amuの走査質量範囲を用いて、API-ESモードおよび正極性で実行した。各々のm/zの最も豊富な同位体が報告される。
【0119】
実施例1:化合物の合成
化合物は、Aeg、Aib、D-Lys、およびSarを除いて一文字アミノ酸コードを使用して記載した以下のものである。各置換基を、それが結合している残基の後に括弧内に含める。
【0120】
親化合物番号1
Y-Aib-EGTFTSDYSILLEEQAAREFIEWLLAGGPS-K[2-[2-[2-[[2-[2-[2-[[(4S)-4-カルボキシ-4-(15-カルボキシペンタデカノイルアミノ)ブタノイル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]-GAPPPS-OH
【化23】
配列番号5、置換基:Lys33に結合したChem.8
合成法:SPPS_A、DS_D、CP_A
計算分子量(平均):4901.4Da
LCMS_A:保持時間=6.3分、実測値[M+3H]
3+1634.6、[M+4H]
4+1226.1
親化合物番号2
Y-Aib-EGTFTSDYSILLEEQAAREFIEWLLAGGPS-K[(2S)-2-アミノ-6-[[(2S)-2-アミノ-6-[[(4S)-4-カルボキシ-4-(15-カルボキシペンタデカノイルアミノ)ブタノイル]アミノ]ヘキサノイル]アミノ]ヘキサノイル]-GAPPPS-OH
【化24】
配列番号5、置換基:Lys33に結合したChem.10
合成法:SPPS_A、DS_D、CP_A
計算分子量(平均):4867.5Da
LCMS_A:保持時間=6.1分、実測値[M+3H]
3+1623.1、[M+4H]
4+1217.6
親化合物番号3
Y-Aib-EGTFTSDYSILLEEQAAREFIEWLLAGGPS-K[(2S)-2-アミノ-6-[[(2S)-2-アミノ-6-[[(4S)-4-カルボキシ-4-(17-カルボキシヘプタデカノイルアミノ)ブタノイル]アミノ]ヘキサノイル]アミノ]ヘキサノイル]-GAPPPS-OH
【化25】
配列番号5、置換基:Lys33に結合したChem.7
合成法:SPPS_A、DS_D、CP_A
計算分子量(平均):4895.5Da
LCMS_A:保持時間=6.3分、実測値[M+3H]
3+1632.4、[M+4H]
4+1224.6
親化合物番号4
Y-Aib-EGTFTSDYSILLE-K[(2S)-2-アミノ-6-[[(2S)-2-アミノ-6-[[(4S)-4-カルボキシ-4-(17-カルボキシヘプタデカノイルアミノ)ブタノイル]アミノ]ヘキサノイル]アミノ]ヘキサノイル]-QAAREFIEWLLAGGPSSGAPPPS-OH
【化26】
配列番号6、置換基:Lys16に結合したChem.7
合成法:SPPS_A、DS_D、CP_A
計算分子量(平均):4853.5Da
LCMS_A:保持時間=5.9分、実測値[M+3H]
3+1618.5、[M+4H]
4+1214.2
親化合物番号5
Y-Aib-EGTFTSDYSI-Aib-LDKIAQK[2-[2-[2-[[2-[2-[2-[[(4S)-4-カルボキシ-4-(19-カルボキシノナデカノイルアミノ)ブタノイル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]-AFVQWLIAGGPSSGAPPPS-NH
2
【化27】
C末端アミド修飾を有する配列番号4、置換基:Lys20に結合したChem.11
合成法:SPPS_A、DS_D、CP_A
計算分子量(平均):4813.5Da
LCMS_A:保持時間=6.2分、実測値[M+3H]
3+1605.2、[M+4H]
4+1204.3
化合物番号1
(D-Lys)[(4S)-4-カルボキシ-4-(15-カルボキシペンタデカノイルアミノ)ブタノイル]-Sar-Y-Aib-EGTFTSDYSILLEEQAAREFIEWLLAGGPS-K[2-[2-[2-[[2-[2-[2-[[(4S)-4-カルボキシ-4-(15-カルボキシペンタデカノイルアミノ)ブタノイル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]-GAPPPS-OH
【化28】
Z:親化合物番号1、X=D-Lys、Y=Sar、置換基b:Xに結合したChem.16、置換基z:ZのLys33に結合したChem.8
合成法:SPPS_A、DS_A、DS_D、CP_A
計算分子量(平均):5498.2Da
LCMS_A:保持時間=6.8分、実測値[M+3H]
3+1833.4、[M+4H]
4+1375.3
化合物番号2
G-Aeg[(4S)-4-カルボキシ-4-(15-カルボキシペンタデカノイルアミノ)ブタノイル]-Y-Aib-EGTFTSDYSILLEEQAAREFIEWLLAGGPS-K[2-[2-[2-[[2-[2-[2-[[(4S)-4-カルボキシ-4-(15-カルボキシペンタデカノイルアミノ)ブタノイル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]-GAPPPS-OH
【化29】
Z:親化合物番号1、X=Gly、Y=Aeg、置換基b:Yに結合したChem.16、置換基z:ZのLys33に結合したChem.8
合成法:SPPS_B、DS_B、DS_D、CP_A
計算分子量(平均):5456.1Da
LCMS_A:保持時間=7.0分、実測値[M+3H]
3+1819.4、[M+4H]
4+1364.8
化合物番号3
K[(4S)-4-カルボキシ-4-(15-カルボキシペンタデカノイルアミノ)ブタノイル]-Sar-Y-Aib-EGTFTSDYSILLEEQAAREFIEWLLAGGPS-K[2-[2-[2-[[2-[2-[2-[[(4S)-4-カルボキシ-4-(15-カルボキシペンタデカノイルアミノ)ブタノイル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]-GAPPPS-OH
【化30】
Z:親化合物番号1、X=Lys、Y=Sar、置換基b:Xに結合したChem.16、置換基z:ZのLys33に結合したChem.8
合成法:SPPS_A、DS_A、DS_D、CP_A
計算分子量(平均):5498.2Da
LCMS_A:保持時間=6.9分、実測値[M+3H]
3+1833.7、[M+4H]
4+1375.6
化合物番号4
A-Aeg[(4S)-4-カルボキシ-4-(15-カルボキシペンタデカノイルアミノ)ブタノイル]-Y-Aib-EGTFTSDYSILLEEQAAREFIEWLLAGGPS-K[2-[2-[2-[[2-[2-[2-[[(4S)-4-カルボキシ-4-(15-カルボキシペンタデカノイルアミノ)ブタノイル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]-GAPPPS-OH
【化31】
Z:親化合物番号1、X=Ala、Y=Aeg、置換基b:Yに結合したChem.16、置換基z:ZのLys33に結合したChem.8
合成法:SPPS_B、DS_B、DS_D、CP_A
計算分子量(平均):5470.1Da
LCMS_A:保持時間=7.0分、実測値[M+3H]
3+1823.8、[M+4H]
4+1368.2
化合物番号5
L-Aeg[(4S)-4-カルボキシ-4-(15-カルボキシペンタデカノイルアミノ)ブタノイル]-Y-Aib-EGTFTSDYSILLEEQAAREFIEWLLAGGPS-K[2-[2-[2-[[2-[2-[2-[[(4S)-4-カルボキシ-4-(15-カルボキシペンタデカノイルアミノ)ブタノイル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]-GAPPPS-OH
【化32】
Z:親化合物番号1、X=Leu、Y=Aeg、置換基b:Yに結合したChem.16、置換基z:ZのLys33に結合したChem.8
合成法:SPPS_B、DS_B、DS_D、CP_A
計算分子量(平均):5512.2Da
LCMS_A:保持時間=7.1分、実測値[M+3H]
3+1838.1、[M+4H]
4+1378.9
化合物番号6
P-Aeg[(4S)-4-カルボキシ-4-(15-カルボキシペンタデカノイルアミノ)ブタノイル]-Y-Aib-EGTFTSDYSILLEEQAAREFIEWLLAGGPS-K[2-[2-[2-[[2-[2-[2-[[(4S)-4-カルボキシ-4-(15-カルボキシペンタデカノイルアミノ)ブタノイル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]-GAPPPS-OH
【化33】
Z:親化合物番号1、X=Pro、Y=Aeg、置換基b:Yに結合したChem.16、置換基z:ZのLys33に結合したChem.8
合成法:SPPS_B、DS_B、DS_D、CP_A
計算分子量(平均):5496.2Da
LCMS_A:保持時間=7.0分、実測値[M+3H]
3+1832.4、[M+4H]
4+1374.6
化合物番号7
D-Aeg[(4S)-4-カルボキシ-4-(15-カルボキシペンタデカノイルアミノ)ブタノイル]-Y-Aib-EGTFTSDYSILLEEQAAREFIEWLLAGGPS-K[2-[2-[2-[[2-[2-[2-[[(4S)-4-カルボキシ-4-(15-カルボキシペンタデカノイルアミノ)ブタノイル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]-GAPPPS-OH
【化34】
Z:親化合物番号1、X=Asp、Y=Aeg、置換基b:Yに結合したChem.16、置換基z:ZのLys33に結合したChem.8
合成法:SPPS_A、DS_C、DS_D、CP_A
計算分子量(平均):5514.1Da
LCMS_B:保持時間=10.2分、実測値[M+3H]
3+1838.8、[M+4H]
4+1379.3.
化合物番号8
K[(4S)-4-カルボキシ-4-[[(4S)-4-カルボキシ-4-(15-カルボキシペンタデカノイルアミノ)ブタノイル]アミノ]ブタノイル]-Sar-Y-Aib-EGTFTSDYSILLEEQAAREFIEWLLAGGPS-K[2-[2-[2-[[2-[2-[2-[[(4S)-4-カルボキシ-4-(15-カルボキシペンタデカノイルアミノ)ブタノイル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]-GAPPPS-OH
【化35】
Z:親化合物番号1、X=Lys、Y=Sar、置換基b:Xに結合したChem.18、置換基z:ZのLys33に結合したChem.8
合成法:SPPS_B、DS_A、DS_D、CP_A
計算分子量(平均):5627.3Da
LCMS_A:保持時間=6.9分、実測値[M+3H]
3+1876.3、[M+4H]
4+1407.6
化合物番号9
K[2-[[(4S)-4-カルボキシ-4-(15-カルボキシペンタデカノイルアミノ)ブタノイル]アミノ]アセチル]-Sar-Y-Aib-EGTFTSDYSILLEEQAAREFIEWLLAGGPS-K[2-[2-[2-[[2-[2-[2-[[(4S)-4-カルボキシ-4-(15-カルボキシペンタデカノイルアミノ)ブタノイル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]-GAPPPS-OH
【化36】
Z:親化合物番号1、X=Lys、Y=Sar、置換基b:Xに結合したChem.19、置換基z:ZのLys33に結合したChem.8
合成法:SPPS_B、DS_A、DS_D、CP_A
計算分子量(平均):5555.2Da
LCMS_A:保持時間=6.9分、実測値[M+3H]
3+1852.3、[M+4H]
4+1389.7
化合物番号10
(D-Lys)[2-[2-[2-[[2-[2-[2-[[(4S)-4-カルボキシ-4-(15-カルボキシペンタデカノイルアミノ)ブタノイル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]-Sar-Y-Aib-EGTFTSDYSILLEEQAAREFIEWLLAGGPS-K[2-[2-[2-[[2-[2-[2-[[(4S)-4-カルボキシ-4-(15-カルボキシペンタデカノイルアミノ)ブタノイル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]-GAPPPS-OH
【化37】
Z:親化合物番号1、X=D-Lys、Y=Sar、置換基b:Xに結合したChem.21、置換基z:ZのLys33に結合したChem.8
合成法:SPPS_B、DS_A、DS_D、CP_A
計算分子量(平均):5788.5Da
LCMS_A:保持時間=6.9分、実測値[M+3H]
3+1930.3、[M+4H]
4+1447.8
化合物番号11
(D-Lys)[(2S)-2-アミノ-6-[[(4S)-4-カルボキシ-4-(15-カルボキシペンタデカノイルアミノ)ブタノイル]アミノ]ヘキサノイル]-Sar-Y-Aib-EGTFTSDYSILLEEQAAREFIEWLLAGGPS-K[2-[2-[2-[[2-[2-[2-[[(4S)-4-カルボキシ-4-(15-カルボキシペンタデカノイルアミノ)ブタノイル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]-GAPPPS-OH
【化38】
Z:親化合物番号1、X=D-Lys、Y=Sar、置換基b:Xに結合したChem.20、置換基z:ZのLys33に結合したChem.8
合成法:SPPS_B、DS_A、DS_D、CP_A
計算分子量(平均):5626.4Da
LCMS_A:保持時間=6.7分、実測値[M+3H]
3+1876.2、[M+4H]
4+1407.2
化合物番号12
K[(4S)-4-カルボキシ-4-(15-カルボキシペンタデカノイルアミノ)ブタノイル]-Sar-Y-Aib-EGTFTSDYSILLEEQAAREFIEWLLAGGPS-K[(2S)-2-アミノ-6-[[(2S)-2-アミノ-6-[[(4S)-4-カルボキシ-4-(15-カルボキシペンタデカノイルアミノ)ブタノイル]アミノ]ヘキサノイル]アミノ]ヘキサノイル]-GAPPPS-OH
【化39】
Z:親化合物番号2、X=Lys、Y=Sar、置換基b:Xに結合したChem.16、置換基z:ZのLys33に結合したChem.10
合成法:SPPS_A、DS_A、DS_D、CP_A
計算分子量(平均):5464.2Da
LCMS_A:保持時間=6.6分、実測値[M+3H]
3+1822.2、[M+4H]
4+1366.7
化合物番号13
K[(4S)-4-カルボキシ-4-(17-カルボキシヘプタデカノイルアミノ)ブタノイル]-Sar-Y-Aib-EGTFTSDYSILLEEQAAREFIEWLLAGGPS-K[(2S)-2-アミノ-6-[[(2S)-2-アミノ-6-[[(4S)-4-カルボキシ-4-(15-カルボキシペンタデカノイルアミノ)ブタノイル]アミノ]ヘキサノイル]アミノ]ヘキサノイル]-GAPPPS-OH
【化40】
Z:親化合物番号2、X=Lys、Y=Sar、置換基b:Xに結合したChem.17、置換基z:ZのLys33に結合したChem.10
合成法:SPPS_B、DS_A、DS_D、CP_A
計算分子量(平均):5492.3Da
LCMS_A:保持時間=6.8分、実測値[M+3H]
3+1831.4、[M+4H]
4+1373.7
化合物番号14
K[(2S)-2,6-ビス[[(4S)-4-カルボキシ-4-(15-カルボキシペンタデカノイルアミノ)ブタノイル]アミノ]ヘキサノイル]-Sar-Y-Aib-EGTFTSDYSILLEEQAAREFIEWLLAGGPS-K[(2S)-2-アミノ-6-[[(2S)-2-アミノ-6-[[(4S)-4-カルボキシ-4-(15-カルボキシペンタデカノイルアミノ)ブタノイル]アミノ]ヘキサノイル]アミノ]ヘキサノイル]-GAPPPS-OH
【化41】
Z:親化合物番号2、X=Lys、Y=Sar、置換基b:Xに結合したChem.22、置換基z:ZのLys33に結合したChem.10
合成法:SPPS_A、DS_A、DS_D、CP_A
計算分子量(平均):5989.9Da
LCMS_A:保持時間=7.0分、実測値[M+3H]
3+1997.1、[M+4H]
4+1498.0
化合物番号15
K[(4S)-4-カルボキシ-4-(17-カルボキシヘプタデカノイルアミノ)ブタノイル]-Sar-Y-Aib-EGTFTSDYSILLEEQAAREFIEWLLAGGPS-K[(2S)-2-アミノ-6-[[(2S)-2-アミノ-6-[[(4S)-4-カルボキシ-4-(17-カルボキシヘプタデカノイルアミノ)ブタノイル]アミノ]ヘキサノイル]アミノ]ヘキサノイル]-GAPPPS-OH
【化42】
Z:親化合物番号3、X=Lys、Y=Sar、置換基b:Xに結合したChem.17、置換基z:ZのLys33に結合したChem.7
合成法:SPPS_A、DS_A、DS_D、CP_A
計算分子量(平均):5520.3Da
LCMS_A:保持時間=7.0分、実測値[M+3H]
3+1840.9、[M+4H]
4+1380.9
化合物番号16
K[(4S)-4-カルボキシ-4-(15-カルボキシペンタデカノイルアミノ)ブタノイル]-Sar-Y-Aib-EGTFTSDYSILLE-K[(2S)-2-アミノ-6-[[(2S)-2-アミノ-6-[[(4S)-4-カルボキシ-4-(17-カルボキシヘプタデカノイルアミノ)ブタノイル]アミノ]ヘキサノイル]アミノ]ヘキサノイル]-QAAREFIEWLLAGGPSSGAPPPS-OH
【化43】
Z:親化合物番号4、X=Lys、Y=Sar、置換基b:Xに結合したChem.16、置換基z:ZのLys16に結合したChem.7
合成法:SPPS_A、DS_A、DS_D、CP_A
計算分子量(平均):5450.2Da
LCMS_A:保持時間=6.3分、実測値[M+3H]
3+1817.3、[M+4H]
4+1363.1
化合物番号17
G-Aeg[(4S)-4-カルボキシ-4-(15-カルボキシペンタデカノイルアミノ)ブタノイル]-Y-Aib-EGTFTSDYSILLE-K[(2S)-2-アミノ-6-[[(2S)-2-アミノ-6-[[(4S)-4-カルボキシ-4-(17-カルボキシヘプタデカノイルアミノ)ブタノイル]アミノ]ヘキサノイル]アミノ]ヘキサノイル]-QAAREFIEWLLAGGPSSGAPPPS-OH
【化44】
Z:親化合物番号4、X=Gly、Y=Aeg、置換基b:Yに結合したChem.16、置換基z:ZのLys16に結合したChem.7
合成法:SPPS_A、DS_C、DS_D、CP_A
計算分子量(平均):5408.2Da
LCMS_B:保持時間=9.5分、実測値[M+3H]
3+1803.6、[M+4H]
4+1353.0
化合物番号18
K[(4S)-4-カルボキシ-4-(15-カルボキシペンタデカノイルアミノ)ブタノイル]-Sar-Y-Aib-EGTFTSDYSI-Aib-LDKIAQK[2-[2-[2-[[2-[2-[2-[[(4S)-4-カルボキシ-4-(19-カルボキシノナデカノイルアミノ)ブタノイル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]-AFVQWLIAGGPSSGAPPPS-NH
2
【化45】
Z:親化合物番号5、X=Lys、Y=Sar、置換基b:Xに結合したChem.16、置換基z:ZのLys20に結合したChem.11
合成法:SPPS_A、DS_A、DS_D、CP_A
計算分子量(平均):5410.2Da
LCMS_A:保持時間=6.6分、実測値[M+3H]
3+1804.0、[M+4H]
4+1353.5
非変換化合物番号1
K[(4S)-4-カルボキシ-4-(15-カルボキシペンタデカノイルアミノ)ブタノイル]-Val-Y-Aib-EGTFTSDYSILLEEQAAREFIEWLLAGGPS-K[2-[2-[2-[[2-[2-[2-[[(4S)-4-カルボキシ-4-(15-カルボキシペンタデカノイルアミノ)ブタノイル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]-GAPPPS-OH
【化46】
Z:親化合物番号1、X=Lys、Y=Val、置換基b:Xに結合したChem.16、置換基z:ZのLys33に結合したChem.8
合成法:SPPS_A、DS_A、DS_D、CP_A
計算分子量(平均):5526.2Da
LCMS_A:保持時間=6.9分、実測値[M+3H]
3+1842.8、[M+4H]
4+1382.2
非変換化合物番号2
K[(4S)-4-カルボキシ-4-(15-カルボキシペンタデカノイルアミノ)ブタノイル]-Val-Y-Aib-EGTFTSDYSILLEEQAAREFIEWLLAGGPS-K[(2S)-2-アミノ-6-[[(2S)-2-アミノ-6-[[(4S)-4-カルボキシ-4-(15-カルボキシペンタデカノイルアミノ)ブタノイル]アミノ]ヘキサノイル]アミノ]ヘキサノイル]-GAPPPS-OH
【化47】
Z:親化合物番号2、X=Lys、Y=Val、置換基b:Xに結合したChem.16、置換基z:ZのLys33に結合したChem.10
合成法:SPPS_A、DS_A、DS_D、CP_A
計算分子量(平均):5492.3Da
LCMS_A:保持時間=6.6分、実測値[M+3H]
3+1831.4、[M+4H]
4+1373.9
非変換化合物番号3
K[(4S)-4-カルボキシ-4-(15-カルボキシペンタデカノイルアミノ)ブタノイル]-Val-Y-Aib-EGTFTSDYSILLE-K[(2S)-2-アミノ-6-[[(2S)-2-アミノ-6-[[(4S)-4-カルボキシ-4-(17-カルボキシヘプタデカノイルアミノ)ブタノイル]アミノ]ヘキサノイル]アミノ]ヘキサノイル]-QAAREFIEWLLAGGPSSGAPPPS-OH
【化48】
Z:親化合物番号4、X=Lys、Y=Val、置換基b:Xに結合したChem.16、置換基z:ZのLys16に結合したChem.7
合成法:SPPS_A、DS_A、DS_D、CP_A
計算分子量(平均):5478.3Da
LCMS_A:保持時間=6.1分、実測値[M+3H]
3+1826.7、[M+4H]
4+1370.3
非変換化合物番号4
K[(4S)-4-カルボキシ-4-(15-カルボキシペンタデカノイルアミノ)ブタノイル]-Val-Y-Aib-EGTFTSDYSI-Aib-LDKIAQK[2-[2-[2-[[2-[2-[2-[[(4S)-4-カルボキシ-4-(19-カルボキシノナデカノイルアミノ)ブタノイル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]-AFVQWLIAGGPSSGAPPPS-NH
2
【化49】
Z:親化合物番号5、X=Lys、Y=Val、置換基b:Xに結合したChem.16、置換基z:ZのLys20に結合したChem.11
合成法:SPPS_A、DS_A、DS_D、CP_A
計算分子量(平均):5438.3Da
LCMS_A:保持時間=6.6分、実測値[M+3H]
3+1813.4、[M+4H]
4+1360.2
【0121】
変換半減期を測定するための一般的な方法
本発明のプロドラッグのプロドラッグから薬剤への変換半減期を調査するためにアッセイを行った。変換半減期を、37℃でのインキュベーション時にpH7.4で、インビトロで調査した。
【0122】
製剤の調製およびサンプリング
試験化合物を、リン酸緩衝生理食塩水(140mM NaCl、2.07mM KCl、8.05mM Na2HPO4、1.96mM KH2PO4、pH7.4)中で100μMの濃度に溶解させた。溶液のpHを溶解後に測定し、必要に応じてNaOH水溶液を用いてpH7.4に調整した。溶液を0.22μmのシリンジフィルターに通して濾過し、その後、37℃の水浴中でインキュベートした。LCMS分析のために、アリコートを定義された時点で、例えば、24~72時間毎に回収した。
【0123】
分析および計算
LCMS分析を、上記のLCMS_Aに定義される手順を使用して行った。
プロドラッグ、活性薬剤、およびDKPのAUCを、214nmでのUV検出を使用して決定し、プロドラッグ+活性薬剤+DKPの総AUCに対するプロドラッグのAUCの比率を計算した。この比率の負の自然対数を経時的にプロットし、その後、この関係の線形回帰を行った。変換半減期を、AUC比が0.5であった時間としてこの線形回帰から計算した。
【0124】
実施例2
本発明の化合物のプロドラッグから薬剤への変換半減期を、変換半減期を測定するための一般的な方法に記載されるように測定した。結果を表6に提示する。本発明の化合物は、驚くほど長い変換半減期と関連しており、DKP部分の化学構造をわずかに修飾することにより調整することができる。
【表7】
【0125】
ミニブタにおける終末相半減期を測定するための一般的な方法
この方法の目的は、ミニブタへの静脈内投与後の本発明の誘導体のインビボでの半減期、すなわち、体内でのそれらの時間の延長、ひいてはそれらの作用時間の延長を決定することである。これを薬物動態(PK)研究で行い、問題の誘導体の終末相半減期を決定する。終末相半減期とは、概して、初期分布相の後に測定されるある特定の血漿濃度を半減するのにかかる期間を意味する。
【0126】
研究
雌GottingenミニブタをEllegaard Gottingen Minipigs(Dalmose、Denmark)から入手し、およそ7~14ヶ月齢であり、かつ体重およそ16~35kgのミニブタを本研究で使用した。ミニブタを個別に収容し、SDSミニブタ食餌(Special Diets Services、Essex,UK)を制限された状態で1日1回与えた。
【0127】
3週間順応させた後、2つの永久中心静脈カテーテルを各ミニブタの大静脈尾に埋め込んだ。ミニブタを外科処置後1週間回復させ、その後、誘導体連続投与の間に好適なウォッシュアウト期間を伴う反復薬物動態研究に使用した。
【0128】
ミニブタを、投薬前およそ18時間および投薬後0~4時間絶食させたが、全期間中、水に自由にアクセスさせた。
【0129】
実施例1の化合物のナトリウム塩を、本発明の化合物を調製するための一般的な方法の方法SX_Aを使用して調製した。結果として得られたナトリウム塩を、0.007%ポリソルベート20、50mMリン酸ナトリウム、70mM塩化ナトリウムを含む緩衝液(pH7.4)中で、50~300nmol/mLの濃度に溶解させた。化合物の静脈注射(通常1~20nmol/kgに対応する体積、例えば、0.02~0.05mL/kg)を一方のカテーテルを通して与え、血液試料を投与後21日までの所定の時点で(好ましくは他方のカテーテルを通して)採取した。血液試料(例えば、0.8mL)を8mM EDTA緩衝液中に採取し、その後、4℃および1942gで10分間遠心分離した。
【0130】
サンプリングおよび分析
血漿をドライアイス上のMicronicチューブ中にピペットで移し、ELISAまたは類似の抗体ベースのアッセイまたはLCMSを使用して化合物の血漿濃度について分析するまで-20℃で保持した。個々の血漿濃度-時間プロファイルを、Phoenix WinNonLin ver.6.4.(Pharsight Inc.、Mountain View,CA,USA)におけるノンコンパートメントモデルによって分析し、結果として得られた終末相半減期(調和平均)を決定した。
【0131】
実施例3
本明細書のミニブタにおける終末相半減期を測定するための一般的な方法に記載されるように測定した終末相半減期および/または観察された終末相半減期を表7に示す。親化合物番号1、2、および4のそれらの遊離形態での投与は、驚くほど高い観察された終末相半減期と関連しており、この終末相半減期は、非変換ジペプチドおよび置換基(例えば、非変換化合物番号1)の添加によってさらに延長される。変換プロドラッグ(例えば、化合物番号1、3、9、および10)の使用により、非変換対応物(例えば、非変換化合物番号1)よりも短い半減期がもたらされ、これは、変換が変換プロドラッグの除去に寄与するが、非変換化合物には寄与せず、変換と他の除去機構を区別することができないためである。これにより、プロドラッグの親化合物への変換がインビボで生じるという証拠が得られる。変換がプロドラッグの終末相半減期に寄与するため、プロドラッグの終末相半減期は対応する親化合物よりも速い場合も遅い場合もある。
【表8】
【0132】
ビーグル犬における経口バイオアベイラビリティを測定するための一般的な方法
この方法の目的は、ビーグル犬に経口投与した後の本発明の化合物のインビボでの終末相半減期および血漿曝露、すなわち、経時的に循環に到達する被験物質の終末相半減期および濃度を決定することである。これを薬物動態(PK)研究で行い、問題の化合物のこれらのパラメータを決定する。終末相半減期とは、概して、初期分布相の後に測定されるある特定の血漿濃度を半減するのにかかる期間を意味する。
【0133】
錠剤組成物の調製
実施例1から得た試験化合物およびSNAC(N-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリル酸ナトリウム)を含む錠剤組成物を、例えば、国際公開第2019/149880号に記載されるように、被験物質をローラー圧縮SNACおよびステアリン酸マグネシウムと混合することによって、当業者に公知の方法に従って調製した。各錠剤は、7.7mgのステアリン酸マグネシウム、2~4mgの各試験化合物、および300mgのSNACから成った。
【0134】
動物、投薬、およびサンプリング
試験期間中に1~7歳および体重9~17kgであった雄ビーグル犬を本研究に含めた。ビーグル犬に絶食状態で投薬した。ビーグル犬を囲い内に群別に収容し(12時間明:12時間暗)、Royal Canin Medium Adult dog food(Royal Canin Products(中国支店)またはBrogaarden A/S(デンマーク))を個別かつ制限的に1日1回給餌した。ビーグル犬を、連続投与の間に好適なウォッシュアウト期間を伴う反復PK研究に使用した。最初のPK研究の開始前に、適切な順応期間を与えた。ビーグル犬の全ての取り扱い、投薬、および採血を、訓練を受けた熟練したスタッフが行った。研究前に、ビーグル犬を一晩絶食させ、投薬後0~4時間絶食させた。投薬1時間前から投薬4時間後までビーグル犬の水へのアクセスを制限したが、それ以外、全期間を通して水に自由にアクセスさせた。
【0135】
本組成物を単回経口投与により6~8匹の群のビーグル犬に投与した。本錠剤を以下の様式で投与した:錠剤投与の10分前に、ビーグル犬に約3nmol/kgの配列番号7(HSQGTFTSDYSKYLDSRRAQDFVQWLMNT)を皮下投与してもよく、その後、錠剤を咀嚼させないようにビーグル犬の口の奥に置いた。その後、口を閉じ、注射器またはチューブを用いて10mLの水道水を与えて、錠剤の嚥下を促進した。
【0136】
投薬前に1つの血液試料を採取し、投薬後に追加の試料を所定の時点で、例えば、最大600時間にわたって採取して、被験物質の完全な血漿濃度-時間吸収プロファイルを十分に網羅した。採血時点毎に、およそ0.8mLの全血を1.5mLのEDTAコーティングチューブに採取し、チューブを穏やかに回転させて試料をEDTAと混合させた。血液試料をEDTA緩衝液(8mM)中に採取し、その後、4℃および2000gで10分間遠心分離した。血漿をドライアイス上のMicronicチューブにピペットで移し、分析まで-20℃以下で維持した。血液試料を、必要に応じて、例えば、最初の2時間では前肢の橈側皮静脈内のVenflonから採取し、その後、残りの時点では頸静脈から注射器で採取した。最初の数滴をベンフロンから排出させて、Venflonから試料中にヘパリン生理食塩水が入り込むのを回避した。
【0137】
全ての血液試料を安定化のためにEDTAを含む試験管に採取し、遠心分離まで氷上で維持した。血漿を遠心分離によって全血から分離し、血漿を分析まで-20℃以下で貯蔵した。
【0138】
分析および計算
血漿を、当業者に公知のLC-MS(液体クロマトグラフィー-質量分析)を使用して被験物質について分析した。システムは、10弁インターフェースモジュールTurboFlowシステム、CTC HTS PALオートサンプラー、Accela 1250ポンプ、およびHot Pocketカラムオーブンを装備したThermo Fisher QExactive質量分析計、または弁インターフェースモジュールTurboFlowシステム、TriPlus RSIオートサンプラー、Dionex UltiMate 3000ポンプ、Hot Pocketカラムオーブンを装備したThermo Fisher QExactive Plus質量分析計のいずれかから成った。逆相HPLC分離を、Phenomenex Onyx Monolithic C18カラム(50×2.0mm)(30℃で流量0.8mL/分)、またはAgilent Poroshell 120 SB-C18カラム(50×2.1mm、2.7μm)(60℃で流量0.4mL/分)のいずれかを使用して、1%ギ酸水溶液中1:1アセトニトリル/メタノール線形勾配を使用して達成した。質量分析計を、陽イオン化SIMモードまたは陽イオン化PRMモードのいずれかで操作した。
【0139】
個々のビーグル犬毎に、血漿濃度-時間プロファイルを、Pharsight Phoenix WinNonLinバージョン6.4ソフトウェアまたはPK分析用の他の関連ソフトウェアにおけるノンコンパートメントモデルによって分析し、結果として得られた終末相半減期(t1/2)、用量当たりの最大血漿濃度(Cmax/D)、最大血漿濃度までの時間(tmax)、および用量当たりの最大限までの曲線下面積(AUC/D)を決定した。薬物動態結果の要約統計量を、中央値(tmax)、ホルモニック平均(t1/2)、または算術平均(Cmax、AUC)として提示した。
【0140】
実施例4
本明細書のビーグル犬における経口バイオアベイラビリティを測定するための一般的な方法に記載されるように測定した薬物動態特性を表8に示す。経口投与後に化合物の濃度が血漿中で検出された(C
max/D=0超およびAUC/D=0超)ため、試験した本発明の化合物は全て、このモデルにおいて経口バイオアベイラビリティを示す。試験した化合物は全て、実施例3で観察された驚くほど高い観察された終末相半減期とも関連している。
【表9】
【0141】
インビトロ機能的効力を測定するための一般的な方法
この実施例の目的は、ヒトGLP-1受容体およびGIP受容体におけるインビトロでの本化合物の機能的活性または効力を試験することである。インビトロ機能的効力は、全細胞アッセイにおける標的受容体活性化の尺度である。実施例1の親化合物1~5の効力を以下に記載するように決定した。ヒトGLP-1(7-37)(HAEGT FTSDV SSYLE GQAAK EFIAW LVKGR G、配列番号8)およびヒトGIP(YAEGT FISDY SIAMD KIHQQ DFVNW LLAQK GKKND WKHNI TQ、配列番号9)を比較のために参照化合物として適切なアッセイに含めた。
【0142】
原理
インビトロ機能的効力を、個別の細胞株におけるレポーター遺伝子アッセイにおいて標的受容体の応答を測定することによって決定した。このアッセイは、以下のGタンパク質共役受容体:ヒトGLP-1受容体またはヒトGIP受容体のうちの1つを発現し、かつ各々の細胞株がプロモーターに結合したcAMP応答配列(CRE)のDNAおよびホタルルシフェラーゼ(CREルシフェラーゼ)の遺伝子を含む安定にトランスフェクトされたBHK細胞株で行った。それぞれの受容体が活性化されると、cAMPが生成され、次いで、ルシフェラーゼタンパク質の発現がもたらされる。アッセイインキュベーションが完了した時点で、ルシフェラーゼ基質(ルシフェリン)を添加し、ルシフェリンのオキシルシフェリンへの酵素変換を引き起こし、生物発光を生じさせる。発光を本アッセイの読み取り値として測定する。
【0143】
細胞培養および調製
これらのアッセイで使用した細胞株は、親細胞株としてBHKTS13を有するBHK細胞であった。これらの細胞を、CREルシフェラーゼ要素を含むクローンから得て、さらにそれぞれのヒト受容体をトランスフェクトすることによって確立して、関連細胞株:BHK CRE luc2P hGLP-1RまたはBHK CRE luc2P hGIPRを得た。細胞を、細胞培養培地中、37℃/5%CO2で培養した。これらをアリコートし、液体窒素中に保存した。これらの細胞を連続培養し、各アッセイの前日に播種した。
【0144】
材料
以下の化学物質をアッセイで使用した:プルロニックF-68 10%(Gibco 2404)、ヒト血清アルブミン(HSA、Sigma A9511)、10%ウシ胎児血清(FBS、Invitrogen 16140-071)、ニワトリ卵白オボアルブミン(Sigma A5503)、フェノールレッドフリーDMEM(Gibco 21063-029)、DMEM(Gibco 12430-054)、1M Hepes(Gibco 15630)、Glutamax 100x(Gibco 35050)、G418(Invitrogen 10131-027)、ハイグロマイシン(Invitrogen 10687-010)、およびsteadylite plus(PerkinElmer 6016757)。
【0145】
緩衝液
GLP-1R細胞培養培地は、10%FBS、500μg/mLのG418、および300μg/mLのハイグロマイシンを含むDMEM培地から成った。GIPR細胞培養培地は、10%FBS、400μg/mLのG418、および300μg/mLのハイグロマイシンを含むDMEM培地から成った。アッセイ緩衝液は、最終アッセイ濃度の2倍のHSAを添加した、フェノールレッドフリーDMEM、10mMのHepes、1x Glutamax、1%オボアルブミン、および0.1%プルロニックF-68から成った。アッセイ培地を、アッセイ緩衝液中、等体積の試験化合物と1:1で混合して、HSAの最終アッセイ濃度を得た。
【0146】
手順
1)細胞を5000細胞/ウェルでプレーティングし、アッセイプレート中で一晩インキュベートした。
2)細胞をDPBSで1回洗浄した。
3)100~300μMの範囲の濃度の試験化合物のストックおよび参照化合物のストックをアッセイ緩衝液中で1:150に希釈した。その後、化合物を96ディープウェル希釈プレートの列1で1:10に希釈し、その後、その行に移して、3.5倍、12点希釈曲線を作成した。
4)HSAを含むまたは含まないアッセイ培地(50μlアリコート)をアッセイプレートの各ウェルに添加した。
5)化合物またはブランクの50μlアリコートを、希釈プレートから、HSAを含むまたは含まないアッセイ緩衝液を含むアッセイプレートに移した。
6)アッセイプレートを、5%CO2のインキュベーター内で、37℃で3時間インキュベートした。
7)細胞をDPBSで1回洗浄した。
8)DPBSの100μlアリコートをアッセイプレートの各ウェルに添加した。
9)steadylite plus試薬(感光性)の100μlアリコートをアッセイプレートの各ウェルに添加した。
10)各アッセイプレートをアルミホイルで覆って遮光し、室温で30分間にわたって250rpmで振盪した。
11)各アッセイプレートをマイクロタイタープレートリーダーで読み取った。
【0147】
計算および結果
マイクロタイタープレートリーダーからのデータを最初にExcelで回帰分析して、x軸(対数スケール濃度)を個々の試験化合物のストック濃度および本アッセイの希釈に基づいて計算した。その後、このデータをGraphPad Prismソフトウェアに転送してグラフを作成し、統計分析を行った。このソフトウェアは非線形回帰を実行する(対数(作動薬)対応答)。このソフトウェアを用いて計算し、pM単位で報告したEC50を以下の表9に示す。1試料当たり最低2つの複製を測定した。報告値は複製の平均値である。本発明の化合物は、所与の条件下で、ヒトGLP-1R受容体およびヒトGIPR受容体の強力な機能的活性化を呈する。
【0148】
実施例5
本明細書のインビトロ機能的効力を測定するための一般的な方法に記載されるように測定したGLP-1受容体およびGIP受容体の機能的効力を表9に示す。遊離形態で投与した親化合物1~5は、所与の条件下で、ヒトGLP-1受容体およびヒトGIP受容体の強力な機能的活性化を呈する。
【表10】
nd=未決定
【0149】
本発明のある特定の特徴が本明細書に例証および記載されているが、ここで、多くの修正、代用、変更、および等価物が当業者に想到されるであろう。したがって、添付の特許請求の範囲が本発明の真の趣旨の範囲内に含まれる全ての修正および変更を包含するよう意図されていることを理解されたい。