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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023010636
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/136 20060101AFI20230113BHJP
   A61K 31/704 20060101ALI20230113BHJP
   A61K 31/485 20060101ALI20230113BHJP
   A61K 31/137 20060101ALI20230113BHJP
   A61K 31/165 20060101ALI20230113BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20230113BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20230113BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20230113BHJP
   A61P 11/10 20060101ALI20230113BHJP
   A61K 36/346 20060101ALI20230113BHJP
   A61P 11/02 20060101ALI20230113BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
A61K31/136
A61K31/704
A61K31/485
A61K31/137
A61K31/165
A61K9/14
A61K9/20
A61K9/48
A61P11/10
A61K36/346
A61P11/02
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107922
(22)【出願日】2022-07-04
(31)【優先権主張番号】P 2021112764
(32)【優先日】2021-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002819
【氏名又は名称】大正製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鍬 拓晃
(72)【発明者】
【氏名】阿部 茂樹
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA30
4C076AA31
4C076AA36
4C076AA53
4C076CC10
4C076CC15
4C076FF36
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC27
4C086EA10
4C086GA13
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA41
4C086MA43
4C086NA03
4C086ZA62
4C086ZC75
4C088AB30
4C088AC11
4C088BA06
4C088MA02
4C088MA35
4C088MA37
4C088MA41
4C088MA43
4C088NA03
4C088ZA63
4C088ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA10
4C206FA11
4C206FA31
4C206GA09
4C206GA22
4C206MA03
4C206MA04
4C206NA03
4C206ZC75
(57)【要約】
【課題】
アンブロキソール又はその塩と、キキョウを含有する固形製剤において、アンブロキソール又はその塩の含量低下を抑制した優れた固形製剤を提供すること。
【解決手段】
(a)アンブロキソール又はその塩、(b)キキョウ、(c)グリチルリチン酸及びその塩、デキストロメトルファン及びその塩、フェニレフリン及びその塩、ヨウ化イソプロパミド、並びにメトキシフェナミン及びその塩、エフェドリン類からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする医薬組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)アンブロキソール又はその塩、(b)キキョウ、(c)グリチルリチン酸及びその塩、デキストロメトルファン及びその塩、フェニレフリン及びその塩、ヨウ化イソプロパミド、メトキシフェナミン及びその塩、並びにエフェドリン類からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする医薬組成物。
【請求項2】
(a)アンブロキソール又はその塩がアンブロキソール塩酸塩である請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
(c)グリチルリチン酸の塩がグリチルリチン酸二カリウムである請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
(c)デキストロメトルファンの塩がデキストロメトルファン臭化水素酸塩である請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
(c)フェニレフリンの塩がフェニレフリン塩酸塩である請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
(c)メトキシフェナミンの塩がメトキシフェナミン塩酸塩である請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
(c)エフェドリン類が、プソイドエフェドリン、ノルエフェドリン、及びメチルエフェドリンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
剤形が、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、丸剤、又はカプセル剤である請求項1~7のいずれかに記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンブロキソール又はその塩と、キキョウを含有する医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アンブロキソール塩酸塩は、気道粘膜潤滑作用及び粘液溶解作用を有し、優れた去痰作用を有する化合物として広く知られている。またスイッチOTC薬物として認可され、総合感冒薬や咳止め薬に配合されている(非特許文献1)。
【0003】
キキョウは、キキョウPlatycodon grandiflorum A. De Candolle(Companulaceae)の根で、去痰・鎮咳を目的に民間薬や漢方薬として繁用されている(非特許文献2)。キキョウのサポニン性成分プラチコジンDには、去痰作用、鎮咳作用が報告されており、プラチコジンDが、炎症などで過剰に分泌されるムチンの生成と分泌を抑制することで去痰作用を示し、その作用は緩和である(非特許文献3、4)。
そのため、これらの有効成分の組合せは去痰・鎮咳を目的とした治療に有用であり、アンブロキソール塩酸塩とキキョウとを共に配合した固形剤が知られている(特許文献1)。
【0004】
グリチルリチン酸及びその塩は、カンゾウ(甘草)に含まれる成分として広く知られており、消炎作用、抗アレルギー作用、細胞修復作用等があり、消化性潰瘍や去痰薬としての効果があることが知られている。また、甘味剤や矯味剤としても用いられる(非特許文献5)。
【0005】
デキストロメトルファン及びその塩は、延髄にある咳中枢に直接作用し、咳反射を抑制することにより鎮咳作用を示す化合物として、感冒・急性気管支炎・慢性気管支炎・気管支拡張症・肺炎・肺結核・上気道炎(咽喉頭炎,鼻カタル)に伴う咳嗽に広く用いられている(非特許文献6)。
【0006】
エフェドリン類は、交感神経興奮作用に基づく気管支拡張作用により、鎮咳効果をもたらすことが知られている。このため、鎮咳成分として、総合感冒薬、鎮咳去痰薬に配合され、また、血管収縮作用による鼻づまりの緩和を目的として鼻炎用内服薬等に配合される薬物である(非特許文献7、8)。
【0007】
フェニレフリン及びその塩は、交感神経興奮作用に基づく血管収縮作用により、鼻づまりの緩和を目的として鼻炎用内服薬等に配合される薬物である(非特許文献9)。
【0008】
ヨウ化イソプロパミドは、抗コリン作用に基づく鼻汁分泌抑制作用により、総合感冒薬に配合され、また、鼻づまりの緩和を目的として鼻炎用内服薬等に配合される薬物である(非特許文献10)。
【0009】
メトキシフェナミン及びその塩は、交感神経興奮作用に基づく気管支拡張作用により、鎮咳効果をもたらすことが知られている。このため、鎮咳成分として、鎮咳去痰薬に配合され、また、血管収縮作用による鼻づまりの緩和を目的として鼻炎用内服薬等に配合される薬物である(非特許文献11)。
【0010】
これまでにアンブロキソール塩酸塩はある種の成分と同時に配合することで、安定性の問題を生じることが知られている。例えば、アンブロキソール塩酸塩とビタミン類を配合すると、アンブロキソール塩酸塩の安定性が低下するため、別顆粒化することにより改善している(特許文献2)。また、特許文献3には、アンブロキソールとバニリン又はシンナムアルデヒド、特許文献4には、アンブロキソールとイブプロフェンを同時配合することで、アンブロキソールの安定性が低下することが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】OTCハンドブック 2008-09 株式会社学術情報流通センター第235頁
【非特許文献2】医薬ジャーナル 2010 46号5-11頁
【非特許文献3】日本薬局方第十七改正解説書D228-231頁
【非特許文献4】Phytomedicine 2014 21号529-533頁
【非特許文献5】医薬品添加物辞典2016 日本医薬品添加物協会編集 薬事日報社
【非特許文献6】添付文書 メジコン錠15mg/メジコン散10%(2016年4月改訂(第11版))塩野義製薬株式会社
【非特許文献7】OTCハンドブック2008-09株式会社学術情報流通センター第290頁
【非特許文献8】OTCハンドブック2008-09株式会社学術情報流通センター第369頁
【非特許文献9】添付文書 ネオシネジンコーワ注1mg/5mg(2019年7月改訂(第6版))興和株式会社
【非特許文献10】今日のOTC薬改訂第4版 株式会社南江堂第91頁
【非特許文献11】OTCハンドブック2006-07株式会社学術情報流通センター第253頁
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平8-337532号公報
【特許文献2】特許4899304号公報
【特許文献3】特開2018-177772号公報
【特許文献4】特許4853818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明者らは、アンブロキソール又はその塩を含有する医薬組成物にキキョウを同時配合したところ、アンブロキソール又はその塩の含量低下が生じることを見出した。したがって、本発明の目的は、アンブロキソール又はその塩と、キキョウを含有する医薬組成物において、アンブロキソール又はその塩の含量低下を抑制した医薬組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決すべく種々の検討を行ったところ、グリチルリチン酸及びその塩、デキストロメトルファン及びその塩、フェニレフリン及びその塩、ヨウ化イソプロパミド、メトキシフェナミン及びその塩、並びにエフェドリン類からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有させると、意外にもアンブロキソール又はその塩の経時的な含量低下が抑えられることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0015】
すなわち、本発明は
(1)(a)アンブロキソール又はその塩、(b)キキョウ、(c)グリチルリチン酸及びその塩、デキストロメトルファン及びその塩、フェニレフリン及びその塩、ヨウ化イソプロパミド、メトキシフェナミン及びその塩、並びにエフェドリン類からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする医薬組成物、
(2)(a)アンブロキソール又はその塩がアンブロキソール塩酸塩である(1)に記載の医薬組成物、
(3)(c)グリチルリチン酸の塩がグリチルリチン酸二カリウムである(1)に記載の医薬組成物、
(4)(c)デキストロメトルファンの塩がデキストロメトルファン臭化水素酸塩である(1)に記載の医薬組成物、
(5)(c)フェニレフリンの塩がフェニレフリン塩酸塩である(1)に記載の医薬組成物、
(6)(c)メトキシフェナミンの塩がメトキシフェナミン塩酸塩である(1)に記載の医薬組成物、
(7)(c)エフェドリン類が、プソイドエフェドリン、ノルエフェドリン、及びメチルエフェドリンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、(1)に記載の医薬組成物、
(8)剤形が、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、丸剤、又はカプセル剤である(1)~(7)のいずれかに記載の医薬組成物、
(9)アンブロキソール又はその塩とキキョウを含有する医薬組成物に、(c)グリチルリチン酸及びその塩、デキストロメトルファン及びその塩、フェニレフリン及びその塩、ヨウ化イソプロパミド、メトキシフェナミン及びその塩、並びにエフェドリン類、からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有させることを特徴とするアンブロキソール又はその塩の安定化方法、
である。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、アンブロキソール又はその塩とキキョウを配合し、アンブロキソール又はその塩の含量低下を抑制した優れた医薬組成物の提供が可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に用いられるアンブロキソール又はその塩(以下、場合により(a)成分とも言う)は、化学式C1318BrOで示される化合物又はその塩であり、これらのうちの一種を単独で用いても二種以上を組み合わせて用いてもよい。このようなアンブロキソール又はその塩としては、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。また、アンブロキソール又はその塩は医薬的に許容されるものであれば特に限定されないが、前記塩とは、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩等の無機酸の塩、及び酢酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、炭酸塩等の有機酸塩等が挙げられ、特に好ましくは塩酸塩である。
【0018】
本発明の医薬組成物中におけるアンブロキソール又はその塩の含有量(アンブロキソール又はその塩のうちの2種以上が含有される場合にはそれらの合計含有量、以下同じ)は、その薬効を示す量であれば特に限定されないが、好ましくは0.1~50質量%、より好ましくは0.2~40質量%、さらに好ましくは0.5~30質量%である。
【0019】
本発明に用いられるキキョウ(以下、場合により(b)成分とも言う)とは、医薬品に用いられるものであれば特に限定されず、粉末化したもの、抽出物、エキス末等を含み、市販品を用いることもできる。キキョウは、Platycodon grandiflorum A. De Candolle(Campanulaceae)の根を乾燥させたものが使用可能であるが、これを粉砕し粉末化したもの、又はエキス化したものが使用でき、好ましくはエキス末である。
【0020】
本発明におけるグリチルリチン酸又はその塩は、カンゾウ(甘草)に含まれる成分として広く知られており、市販品にて入手するか、公知の製造方法によって製造することができ、生薬由来であっても良い。
グリチルリチン酸又はその塩は、成分そのものであってもよいし、生薬又は漢方薬に含有されていてもよい。特に、グリチルリチン酸類を含む生薬として、カンゾウ(カンゾウエキスやカンゾウ末)を用いることができ、カンゾウ中には、グリチルリチン酸は遊離酸及び塩の両方の形態で存在する。グリチルリチン酸の塩としては、薬学上許容される塩であれば特に限定されないが、例えばグリチルリチン酸三ナトリウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、グリチルリチン酸二アンモニウム、グリチルリチン酸モノアンモニウム、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸モノカリウムが挙げられる。グリチルリチン酸及びその塩として、好ましくはグリチルリチン酸、グリチルリチン酸二カリウムであり、特に好ましくはグリチルリチン酸二カリウムである。
【0021】
本発明に用いられるデキストロメトルファン又はその塩は、化学式C1825NOで示される化合物又はその塩であり、これらのうちの一種を単独で用いても二種以上を組み合わせて用いてもよい。このようなデキストロメトルファン又はその塩としては、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。また、デキストロメトルファン又はその塩は医薬的に許容されるものであれば特に限定されないが、前記塩とは、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩等の無機酸の塩、及び酢酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、フェノールフタリン塩、炭酸塩等の有機酸塩等が挙げられ、特に好ましくは臭化水素酸塩である。
【0022】
本発明に用いられるフェニレフリン又はその塩は、化学式C13NOで示される化合物又はその塩であり、これらのうちの一種を単独で用いても二種以上を組み合わせて用いてもよい。このようなフェニレフリン又はその塩としては、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。また、フェニレフリン又はその塩は医薬的に許容されるものであれば特に限定されないが、前記塩とは、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩等の無機酸の塩、及び酢酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、フェノールフタリン塩、炭酸塩等の有機酸塩等が挙げられ、特に好ましくは塩酸塩である。
【0023】
本発明に用いられるヨウ化イソプロパミドは、化学式C2333OIで示される化合物であり、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。また、ヨウ化イソプロパミドは医薬的に許容されるものであれば特に限定されない。
【0024】
本発明に用いられるメトキシフェナミン又はその塩は、化学式C1117NOで示される化合物又はその塩であり、これらのうちの一種を単独で用いても二種以上を組み合わせて用いてもよい。このようなメトキシフェナミン又はその塩としては、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。また、メトキシフェナミン又はその塩は医薬的に許容されるものであれば特に限定されないが、前記塩とは、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩等の無機酸の塩、及び酢酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、フェノールフタリン塩、炭酸塩等の有機酸塩等が挙げられ、特に好ましくは塩酸塩である。
【0025】
本発明におけるエフェドリン類とは、エフェドリン及びエフェドリンの誘導体並びにそれらの塩が挙げられる。エフェドリンの誘導体としては、ノルエフェドリン(フェニルプロパノールアミン)、メチルエフェドリン、プソイドエフェドリン等が挙げられる。また、塩としては、薬学上許容される無機酸や有機酸の塩ならば限定されるものではないが、例えば、塩酸塩、硫酸塩、サッカリン塩が挙げられ、好ましくは塩酸塩である。また、エフェドリンには2つの不斉炭素が存するため、種々の光学異性体が存するが、本発明においては、いずれの光学異性体をも含み、単一の光学異性体でもよく、各種光学異性体の混合物でもよい。本発明におけるエフェドリン類としては、例えば、l-メチルエフェドリン塩酸塩、dl-メチルエフェドリン塩酸塩、l-メチルエフェドリンサッカリン塩、dl-メチルエフェドリンサッカリン塩、プソイドエフェドリン塩酸塩、プソイドエフェドリン硫酸塩等が挙げられ、これらを単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、エフェドリンとプソイドエフェドリンは互いにエナンチオマーの関係にあるものである。本発明においては、プソイドエフェドリン塩酸塩、dl-メチルエフェドリン塩酸塩が好ましい。これらは公知の化合物であり、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。
【0026】
また、アンブロキソール又はその塩とキキョウの配合比は、アンブロキソール又はその塩1質量部に対し、キキョウを原生薬換算量として10~200質量部が好ましく、より好ましくは、15~150質量部、さらに好ましくは17.7~88.9質量部、特に好ましくは17.7~20.0質量部である。
【0027】
また、(a)アンブロキソール又はその塩と、(c)グリチルリチン酸及びその塩の配合比は、アンブロキソール又はその塩1質量部に対し、グリチルリチン酸及びその塩を0.01~20質量部が好ましく、より好ましくは0.05~10質量部、さらに好ましくは0.08~4質量部である。
(a)アンブロキソール又はその塩と、(c)デキストロメトルファン及びその塩の配合比は、アンブロキソール又はその塩1質量部に対し、デキストロメトルファン及びその塩を0.05~20質量部が好ましく、より好ましくは0.1~10質量部、さらに好ましくは0.5~4質量部である。
(a)アンブロキソール又はその塩と、(c)フェニレフリン及びその塩の配合比は、アンブロキソール又はその塩1質量部に対し、フェニレフリン及びその塩を0.01~20質量部が好ましく、より好ましくは0.05~10質量部、さらに好ましくは0.1~4質量部である。
(a)アンブロキソール又はその塩と、(c)ヨウ化イソプロパミドの配合比は、アンブロキソール又はその塩1質量部に対し、ヨウ化イソプロパミドを0.01~20質量部が好ましく、より好ましくは0.02~10質量部、さらに好ましくは0.03~4質量部である。
(a)アンブロキソール又はその塩と、(c)メトキシフェナミン及びその塩の配合比は、アンブロキソール又はその塩1質量部に対し、メトキシフェナミン及びその塩を0.05~20質量部が好ましく、より好ましくは0.1~10質量部、さらに好ましくは0.6~4質量部である。
(a)アンブロキソール又はその塩と、(c)エフェドリン類の配合比(2種以上が含有される場合にはそれらの合計含有量)は、アンブロキソール又はその塩1質量部に対し、エフェドリン類を0.1~20質量部が好ましく、より好ましくは0.3~10質量部、さらに好ましくは0.6~2質量部である。
【0028】
(c)グリチルリチン酸及びその塩、デキストロメトルファン及びその塩、フェニレフリン及びその塩、ヨウ化イソプロパミド、メトキシフェナミン及びその塩、並びにエフェドリン類からなる群より選ばれる少なくとも1種(以下、場合により(c)成分とも言う)を複数含む場合には、(a)アンブロキソール又はその塩と、(c)成分の合計含有量との配合比は、アンブロキソール又はその塩1質量部に対し、(c)成分を0.01~100質量部が好ましく、より好ましくは0.02~30質量部、さらに好ましくは0.03~22質量部である。
【0029】
本発明の医薬組成物中には本発明の効果を損なわない質的、量的範囲で、通常用いられる他の有効成分、賦形剤、崩壊剤、結合剤、流動化剤、滑沢剤、清涼化剤、着色剤(色素)、甘味剤、吸着剤、懸濁剤、抗酸化剤、安定化剤、界面活性剤、可塑剤、可溶化剤、乳化剤、pH調節剤、緩衝剤、矯味矯臭剤、清涼化剤、香料、コーティング剤などを配合することができる。
【0030】
本発明の医薬組成物に配合できる他の有効成分としては、例えば、解熱鎮痛剤、抗ヒスタミン剤、鎮咳剤、ノスカピン類、気管支拡張剤、去痰剤、催眠鎮静剤、ビタミン類、抗炎症剤、胃粘膜保護剤、生薬類、漢方処方、カフェイン類等があげられ、これらからなる群より選ばれる1種又は2種以上を含有しても良い。
【0031】
本発明の医薬組成物に配合できる賦形剤としては、例えば、乳糖、デンプン類、結晶セルロース、ショ糖、糖アルコール、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、リン酸水素カルシウム、無水リン酸水素カルシウム等が挙げられ、崩壊剤としては、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスポビドン、カルメロース、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、アルファー化デンプン等が挙げられ、結合剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ゼラチン、アルファー化デンプン、ポリビニルピロリドン、プルラン等が挙げられ、流動化剤としては、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素等が挙げられ、滑沢剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、硬化油、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等が挙げられ、清涼化剤としては、メントール、ハッカ油、ユーカリ油等が挙げられる。
【0032】
本発明の医薬組成物は、日本薬局方の製剤通則に規定されている剤形であれば特に限定されず、通常使用され得る任意の剤形をとることができる。好ましくは錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、丸剤、カプセル剤(好ましくは硬カプセル剤)などの固形製剤である。日本薬局方の製剤通則に規定されている錠剤には、口腔内崩壊錠、チュアブル錠、発泡錠、分散錠及び溶解錠、フィルムコーティング錠、糖衣錠、有核錠、積層錠などが含まれる。また、錠剤に割線や識別性向上のためのマーク、刻印を設けることができる。さらに、本製剤の錠剤は、丸錠であってもよいし、異型錠であってもよい。
【0033】
本発明の固形製剤は、常法により製造することができ、その方法は特に限定されるものではない。
例えば、(a)アンブロキソール又はその塩(以下、(a)成分ともいう)、(b)キキョウ(以下、(b)成分ともいう)、(c)グリチルリチン酸及びその塩、デキストロメトルファン及びその塩、フェニレフリン及びその塩、及びヨウ化イソプロパミド、メトキシフェナミン及びその塩、並びにエフェドリン類からなる群より選ばれる少なくとも1種を単に混合するだけでも良く、混合後に造粒しても良く、得られた造粒物を被覆してもよい。また、(a)成分、(b)成分又は(c)成分は必ずしも同一の造粒物に含まれている必要はない。 例えば、(a)成分と(c)成分を含有する造粒物を製造後に、(b)成分を混合する、あるいは、(a)成分と(b)成分を含有する造粒物を製造後に、(c)成分を混合する、あるいは、(a)成分と(c)成分を含有する造粒物と、(b)成分と(c)成分を含有する造粒物を製造後、2つの造粒物を混合する、等である。
【0034】
造粒方法も特に限定されず、湿式造粒法、乾式造粒法又は溶融造粒法などにより製造できるが、好ましくは湿式造粒法である。湿式造粒法には、例えば撹拌造粒法、流動層造粒法、練合造粒法、押し出し造粒法、転動流動造粒法が挙げられる。また、必要により、造粒液として水、アルコール、水とアルコールの混液を用いても良く、さらに必要に応じて造粒液に有効成分や結合剤、賦形剤、流動化剤などを溶解または分散させても良い。得られた造粒物に適宜上記有効成分や賦形剤などの慣用の製剤添加剤を配合してもよい。また、このようにして得た混合物を打錠して錠剤とすることもできる。錠剤を製造する場合は、直接打錠法により製造してもよい。
【実施例0035】
以下に実施例、比較例を挙げ、本発明をより詳しく説明するが、本発明はこれら実施例等に限定されるものではない。
(比較例1)
アンブロキソール塩酸塩に適量の水/アルコール混液を加え混合した後乾燥し組成物を得た。
(比較例2)
アンブロキソール塩酸塩1質量部に対し、キキョウエキス末4質量部を量り取り混合し、これに適量の水/アルコール混液を加え混合した後乾燥し組成物を得た。
(比較例3)
アンブロキソール塩酸塩1質量部に対し、キキョウエキス末4質量部及び結晶セルロース4質量部を量り取り混合し、これに適量の水/アルコール混液を加え混合した後乾燥し組成物を得た。
(実施例1)
アンブロキソール塩酸塩1質量部に対し、キキョウエキス末4質量部及びグリチルリチン酸二カリウム4質量部を量り取り混合し、これに適量の水/アルコール混液を加え混合した後乾燥し組成物を得た。
(実施例2)
アンブロキソール塩酸塩1質量部に対し、キキョウエキス末4質量部及びデキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物4質量部を量り取り混合し、これに適量の水/アルコール混液を加え混合した後乾燥し組成物を得た。
(実施例3)
アンブロキソール塩酸塩1質量部に対し、キキョウエキス末4質量部及びフェニレフリン塩酸塩4質量部を量り取り混合し、これに適量の水/アルコール混液を加え混合した後乾燥し組成物を得た。
(実施例4)
アンブロキソール塩酸塩1質量部に対し、キキョウエキス末4質量部及びヨウ化イソプロパミド4質量部を量り取り混合し、これに適量の水/アルコール混液を加え混合した後乾燥し組成物を得た。
(実施例5)
アンブロキソール塩酸塩1質量部に対し、キキョウエキス末4質量部及びメトキシフェナミン塩酸塩4質量部を量り取り混合し、これに適量の水/アルコール混液を加え混合した後乾燥し組成物を得た。
(実施例6)
アンブロキソール塩酸塩1質量部に対し、キキョウエキス末4質量部、結晶セルロース4質量部、及びプソイドエフェドリン塩酸塩1質量部を量り取り混合し、これに適量の水/アルコール混液を加え混合した後乾燥し組成物を得た。
(実施例7)
アンブロキソール塩酸塩1質量部に対し、キキョウエキス末4質量部、結晶セルロース4質量部、及びdl-メチルエフェドリン塩酸塩1質量部を量り取り混合し、これに適量の水/アルコール混液を加え混合した後乾燥し組成物を得た。
(実施例8)
アンブロキソール塩酸塩45質量部に対し、キキョウエキス末160質量部及びグリチルリチン酸二カリウム3.9質量部を量り取り混合し、これに適量の水/アルコール混液を加え混合した後乾燥し組成物を得た。
(実施例9)
アンブロキソール塩酸塩45質量部に対し、キキョウエキス末160質量部及びデキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物24質量部を量り取り混合し、これに適量の水/アルコール混液を加え混合した後乾燥し組成物を得た。
(実施例10)
アンブロキソール塩酸塩45質量部に対し、キキョウエキス末160質量部及びフェニレフリン塩酸塩6質量部を量り取り混合し、これに適量の水/アルコール混液を加え混合した後乾燥し組成物を得た。
(実施例11)
アンブロキソール塩酸塩45質量部に対し、キキョウエキス末160質量部及びヨウ化イソプロパミド1.5質量部を量り取り混合し、これに適量の水/アルコール混液を加え混合した後乾燥し組成物を得た。
(実施例12)
アンブロキソール塩酸塩45質量部に対し、キキョウエキス末160質量部及びメトキシフェナミン塩酸塩30質量部を量り取り混合し、これに適量の水/アルコール混液を加え混合した後乾燥し組成物を得た。
(実施例13)
アンブロキソール塩酸塩45質量部に対し、キキョウエキス末160質量部、結晶セルロース119質量部、及びプソイドエフェドリン塩酸塩36質量部を量り取り混合し、これに適量の水/アルコール混液を加え混合した後乾燥し組成物を得た。
(実施例14)
アンブロキソール塩酸塩45質量部に対し、キキョウエキス末160質量部、結晶セルロース65質量部、及びdl-メチルエフェドリン塩酸塩30質量部を量り取り混合し、これに適量の水/アルコール混液を加え混合した後乾燥し組成物を得た。
【0036】
なお、使用したキキョウエキス末は、キキョウエキス末1質量部を原生薬換算にすると5質量部である。上記比較例、実施例の組成を表1、表2に示した。
【0037】
(試験方法)
比較例及び実施例の組成物を室温にて1日以上保存した後、65℃にて7日間保存し、7日後における組成物中のアンブロキソール塩酸塩の残存率をHPLC法により評価した。
表1、表2に、7日保存後のアンブロキソール塩酸塩残存率(%)を示した。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
キキョウとアンブロキソール塩酸塩を配合した比較例2~3ではアンブロキソール塩酸塩の含量に低下が確認された。一方、グリチルリチン酸二カリウム、デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物、フェニレフリン塩酸塩、ヨウ化イソプロパミド、メトキシフェナミン塩酸塩、プソイドエフェドリン塩酸塩、又はdl-メチルエフェドリン塩酸塩をさらに配合した実施例1~14では、アンブロキソール塩酸塩の含量の低下を抑制することができた。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明によれば、アンブロキソール又はその塩とキキョウを含有し、安定性が向上した医薬組成物の提供が可能となる。