(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023106365
(43)【公開日】2023-08-01
(54)【発明の名称】カットシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 17/15 20060101AFI20230725BHJP
A61F 2/28 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
A61B17/15
A61F2/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061440
(22)【出願日】2023-04-05
(62)【分割の表示】P 2022179485の分割
【原出願日】2022-11-09
(31)【優先権主張番号】63/301,240
(32)【優先日】2022-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】521478142
【氏名又は名称】AUSPICIOUS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000693
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人滝田三良法律事務所
(72)【発明者】
【氏名】横山 靖治
【テーマコード(参考)】
4C097
4C160
【Fターム(参考)】
4C097AA03
4C160LL12
4C160LL27
4C160LL28
4C160LL29
(57)【要約】
【課題】ブロック体に罫書き操作を行わなくとも、ブロック体を高精度に且つ迅速に三角形もしくは楔状に加工することができるカットシステムを提供する。
【解決手段】ブロック体4を把持する把持装置1と、加工刃物2が設けられた受け台24と、把持装置1を受け台24に対して移動自在に保持するガイド機構3とを有する。把持装置1は、ブロック体4の第一面5に接する底部面9aを有する底部9と、ブロック体4の第二面6に接する第1の基準面10aを有する第1の基準部材10と、ブロック体4の第三面7若しくは第三面7上の一点と接する第2の基準面11aを有する第2の基準部材11と、底部面9aに対して垂直に延びる軸を回転中心として、第1の基準面10aを回転自在に支持する回転支持部である軸部材12とを有する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工刃物を用いて、互いに交差する第一面と第二面と第三面を有するブロック体を切削加工するためのカットシステムであって、
前記ブロック体を把持する把持装置と、前記加工刃物が設けられた受け台と、前記把持装置を前記受け台に対して相対的に移動自在に保持するガイド機構とを有し、
前記把持装置は、前記ブロック体の第一面に接する底部面を有する底部と、前記ブロック体の第二面に接する第1の基準面を有する第1の基準部材と、前記ブロック体の第三面若しくは第三面上の一点と接する第2の基準面を有する第2の基準部材と、前記底部面に対して垂直に延びる軸を回転中心として、前記第1の基準面を回転自在に支持する回転支持部とを有し、
前記第1の基準部材は、前記回転支持部に連結する支持受け部を有し、
前記第2基準部材は、前記第1の基準部材に接続されていて、前記第1の基準部材に沿って前記軸に向かって相対的に移動するように構成され、
前記把持装置が前記受け台の前記加工刃物に対して相対的に移動することで、把持した前記ブロック体の第一面を分割するように加工することを特徴とするカットシステム。
【請求項2】
前記把持装置は、前記底部の前記底部面に対向する天板を有し、
前記天板を、前記ブロック体に当接することで前記天板と前記底部面とにより前記ブロック体を固定するように構成されていることを特徴とする請求項1記載のカットシステム。
【請求項3】
前記天板は、前記加工刃物の通過部をまたがる形で2つに分割されていることを特徴とする請求項2記載のカットシステム。
【請求項4】
前記把持装置の前記回転支持部は、前記軸を中心軸とする棒部からなることを特徴とする請求項1~3の何れか1項記載のカットシステム。
【請求項5】
前記把持装置の前記回転支持部は、前記軸を中心とする略円弧状のレールからなることを特徴とする請求項1~4の何れか1項記載のカットシステム。
【請求項6】
前記回転支持部及び前記支持受け部は、前記底部の前記底面部に沿って平行に延びる第1の支柱と、前記底部の前記底面部に対して垂直に上方に延びる第2の支柱とにより支持されて、前記底部上の前記ブロック体と交わらない上方位置に配置されていることを特徴とする請求項1~5の何れか1項記載のカットシステム。
【請求項7】
前記加工刃物の通過部上に前記軸が存在することを特徴とする請求項1~6の何れか1項記載のカットシステム。
【請求項8】
前記軸が前記加工刃物の側面上若しくは側面に接する面上に存在することを特徴とする請求項1~7の何れか1項記載のカットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カットシステムに関し、例えば、骨切り術における開大部分の空隙部に補填する人工骨を切断加工するのに好適なカットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
変形性膝関節症等で変形した膝は、膝の負担が片側に集中して加わることにより、片側の軟骨だけが痛んでいるケースが散見される。
【0003】
膝周囲骨切り術は、脛骨や大腿骨に切り込みを入れ、骨を開大もしくは閉鎖することで膝のアライメントを矯正し、荷重の加わる位置を痛みのない部分にシフトする手術であり、様々な手術方法があるが、その1つに骨に入れた切込みの先端部を回転軸として、骨を開き、矯正する方法がある。
【0004】
この手法では、アライメント矯正後には骨の開大部に空隙が発生することから、矯正位を保持するために金属製プレートとスクリューで固定を行うほか、空隙部に人工骨を補填し、補強している。
【0005】
この空隙部の形状は骨形態や矯正量により異なるが、矯正量を適切に保持し、かつ人工骨と骨との癒合を早期に行うためには骨切り後に発生する空隙に合致し、骨と広範囲で接触する人工骨を補填する必要がある。
【0006】
人工骨は、手術中にカットして、空隙部に合致する形状に調整されるが、このとき、用いられる治具として、従来、例えば、下記特許文献1に記載のものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
骨切り部に補填する人工骨の形状は、レントゲン情報をもとに術前計画にて適切な矯正とするための矯正量を作図し、その際の骨の矯正角度と骨の端部と回転中心からの距離を計測して決定したり、手術時に実際に矯正した際の開大部の角度、開大幅、幅測定部の矯正中心からの距離等を計測し、決定する。手術時の矯正角度や開大幅は角度計やノギス、定規で測定し、回転中心からの距離はワイヤー等の挿入量から算出することが可能である。
【0009】
特許文献1に記載された治具を用いて人工骨を加工する場合には、上記の方法にて決定した形状となるように皮膚ペン等を用いて切断位置を罫書いた後に、その罫書線上を加工刃物が通過するように微調整を行う必要がある。
【0010】
従って、加工予定の人工骨の形状が最適だったとしても、罫書いた線の精度、線のどの位置を刃物が通過することが適切であるかの認識の差異、刃物通過部への人工骨の設置操作の精度により、誤差が生じてしまったり、この操作を慎重に行うことで手術時間が延長してしまう不都合がある。
【0011】
上記の点に鑑み、本発明は、ブロック体に罫書き操作を行わなくとも、ブロック体を高精度に且つ迅速に三角形もしくは楔状に加工することができるカットシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
かかる目的を達成するために、本発明は、加工刃物を用いて、互いに交差する第一面と第二面と第三面を有するブロック体を切削加工するためのカットシステムであって、前記ブロック体を把持する把持装置と、前記加工刃物が設けられた受け台と、前記把持装置を前記受け台に対して相対的に移動自在に保持するガイド機構とを有し、前記把持装置は、前記ブロック体の第一面に接する底部面を有する底部と、前記ブロック体の第二面に接する第1の基準面を有する第1の基準部材と、前記ブロック体の第三面若しくは第三面上の一点と接する第2の基準面を有する第2の基準部材と、前記底部面に対して垂直に延びる軸を回転中心として、前記第1の基準面を回転自在に支持する回転支持部とを有し、前記第1の基準部材は、前記回転支持部に連結する支持受け部を有し、前記第2基準部材は、前記第1の基準部材に接続されていて、前記第1の基準部材に沿って前記軸に向かって相対的に移動するように構成され、前記把持装置が前記受け台の前記加工刃物に対して相対的に移動することで、把持した前記ブロック体の第一面を分割するように加工することを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、ブロック体を把持装置によって底部に固定し、底部面に対して垂直に延びる軸を回転中心として第1の基準部材を回転させ、第1の基準部材の第1の基準面と加工刃物による切断方向との角度が所望の角度となるように設定することで、ブロック体に罫書き操作を行わなくとも、ブロック体を高精度に且つ迅速に三角形もしくは楔状に加工することができる。
【0014】
また、本発明において、前記把持装置は、前記底部の前記底部面に対向する天板を有し、前記天板を、前記ブロック体に当接することで前記天板と前記底部面とにより前記ブロック体を固定するように構成されていることを特徴とする。前記天板によれば、ブロック体を底部と挟んで強固に固定することができる。
【0015】
更に、前記天板は、前記加工刃物の通過部をまたがる形で2つに分割されていることを特徴とする。これによれば、加工刃物の通過による天板との干渉を防止することができる。
【0016】
また、本発明においては、前記把持装置の前記回転支持部として、前記軸を中心軸とする棒部を採用することができる。
【0017】
更に、本発明においては、前記把持装置の前記回転支持部として、前記軸を中心とする略円弧状のレールを採用することができる。
【0018】
また、本発明において、前記回転支持部及び前記支持受け部は、前記底部の前記底面部に沿って平行に延びる第1の支柱と、前記底部の前記底面部に対して垂直に上方に延びる第2の支柱とにより支持されて、前記底部上の前記ブロック体と交わらない上方位置に配置されていることを特徴とする。これによれば、回転支持部及び支持受け部と加工刃物との干渉を防止することができる。
【0019】
また、本発明においては、前記第1の基準部材と前記加工刃物の通過部とのなす角度を表示する角度表示部を有していることが好ましい。これによれば、ブロック体をセットする際に角度表示部を容易に確認することができ、円滑な作業が可能となる。
【0020】
また、本発明においては、前記第2の基準部材の前記第2の基準面と前記軸との距離を表示する長さ表示部を有していることが好ましい。これによれば、ブロック体をセットする際に長さ表示部を容易に確認することができ、円滑な作業が可能となる。
【0021】
また、本発明においては、前記加工刃物の通過部上に前記軸が存在することを特徴とする。これによれば、ブロック体を高精度に加工することができる。
【0022】
また、本発明においては、前記軸が前記加工刃物の側面上若しくは側面に接する面上に存在することを特徴とする。これによれば、加工刃物の厚みを考慮してブロック体を一層高精度に加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図9】
図9Aは骨切り後の脛骨の切断面の平面図、
図9Bは人工骨の補填状態を示す図。
【
図13】底部の底部面に設けたスケールの例を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態のカットシステムは、
図1に示すように、ブロック体を把持する把持装置1と、ブロック体を切断加工する加工刃物2と、把持装置1の移動を案内するガイド機構3とを備えている。
【0025】
本実施形態において加工対象となるブロック体4は、
図2に示すように矩形の厚板素材である。本実施形態のカットシステムは、骨切り術で骨に切り込みを入れて開大させた空隙に補填する人工骨を、ブロック体4から切り出し加工するものである。なお、本実施形態においては、ブロック体4のいた面に相当する広い面を第一面5とし、長辺側の厚み面を第二面6とし、短辺側の厚み面を第三面7とする。
【0026】
人工骨として用いるブロック体4は、セラミックス製であることが望ましく、特にアルミナ、ジルコニア、リン酸カルシウム系化合物、炭酸カルシウム系化合物等等のバイオセラミックスを用いることが望ましい。セラミックス製のブロックは加工が容易にできる。なお、ブロック体4は、これに限らず、採取骨や他材料で形成されていてもよい。
【0027】
次に、本実施形態のカットシステムの構成について説明する。把持装置1は、
図3A及び
図3Bに示すように、天板8と、底部9と、第1の基準部材10と、第2の基準部材11とを備えている。
【0028】
図3Aは天板8により上面が覆われた把持装置1の示す平面図であるが、
図4Aは説明の便宜上天板8を取り除いて把持装置1の主要な構成を露出させた説明的平面図である。
【0029】
底部9は、
図4Aに示すように、一方向に長手の平面視長方形に形成され、平坦な上面が、ブロック体4の第一面5に接する底部面9aとされている。即ち、把持装置1の底部9にはブロック体4が載置される。底部9の中央部には長手方向に沿って延びるスリットが形成されている。このスリットは、加工刃物2が通過するための通過部9bとして設けられている。
【0030】
第1の基準部材10は、
図4Aに示すように、底部9の長手方向に延びる形状に形成されており、ブロック体の第二面に接する第1の基準面10aを一側に備えている。第1の基準部材10は、その基端部が棒状の軸部材12により回転自在に枢着されており、その先端部が湾曲する円弧部材13の内側面を指している。軸部材12は、支持受け部14により支持されている。
【0031】
円弧部材13には、加工刃物2の通過部9bに対する第1の基準面10aの角度を示す角度表示部15が設けられている。なお、本実施形態においては、円弧部材13に角度表示部15を設けたものを示しているが、これに限るものではない。例えば、図示しないが、角度表示部15は底部9の底部面9aに直接表示されていてもよい。
【0032】
軸部材12の中心は、回転する第1の基準部材10の軸となっており、軸部材12は本発明における棒部であり回転支持部に相当する。
【0033】
軸部材12は、摘み部16を回転操作することで、第1の基準部材10の回転を所望の位置(加工刃物2の通過部9bに対する所望の角度)で固定させることができる。なお、図示しないが、円弧部材13によって第1の基準部材10の先端側を円弧に案内するように構成してもよい。これによれば、軸部材12を設けることなく、第1の基準面10aの角度を所望の角度とすることができる。この構成においては、円弧部材は本発明のレールに相当する。
【0034】
また、軸部材12は、
図4Bに示すように、支持受け部14と共に第1の支柱17と第2の支柱18とにより支持されている。
【0035】
第1の支柱17は、底部9の底部面9aに対して平行に延び、第2の支柱18は、底部9の底部面9aに対して垂直上方に延びる。第1の支柱17は、軸部材12を平面視において加工刃物2の通過部9b上に支持する。第2の支柱18は、軸部材12に交差する一側方にずれた位置から下方に延びて、その下端部が第1の基準部材10の基端部に連接されている。
【0036】
このように、第1の支柱17と第2の支柱18とにより、軸部材12は、底部9上に載置されたブロック体4よりも高い位置に支持され、第1の基準部材10は、加工刃物2の通過部9bの一側方にずれた位置に支持される(
図4A参照)。
【0037】
第2の基準部材11は、
図4Aに示すように、第1の基準部材10接続されており、ブロック体4の第三面7若しくは第三面7上の一点と接する第2の基準面11aを一側に備えている。
【0038】
第2の基準部材11は、第1の基準部材10の長手方向に沿って移動自在に設けられており、底部9の横方向外側に延びる棒状の操作部19を備えている。
【0039】
操作部19は、第2の基準部材11を第1の基準部材10の長手方向に沿ってスライド操作することができ、更に操作部19を回転操作することにより第2の基準部材11を第1の基準部材10の長手方向の所望の位置で固定することができる。
【0040】
操作部19は、底部9の横方向の一側縁よりも外側に延出する大きさに形成されていることが好ましく、これによって、底部9が邪魔になることなく操作部19を操作することができる。
【0041】
また、第1の基準部材10には、軸部材12の中心から第2の基準面11aまでの距離を示す長さ表示部20が設けられている。
【0042】
天板8は、
図3Bに示すように、底部9の底部面9aの上方に位置して、底部9の底部面9aに平行に対向して設けられている。天板8は、底部面9aとの間にブロック体4を挟んで把持固定する。
【0043】
天板8は、
図3Aに示すように、底部9に形成されたスリット(加工刃物2が通過するための通過部9b)を介してその両側に一対設けられており、その夫々が、底部9の先端部にヒンジ21を介して起立方向に揺動自在に設けられている。これによって、天板8は、片側のみを起立方向に揺動させて、第1の基準部材10及び第2の基準部材11を露出させることができる。
【0044】
天板8はブロック体4に直接に接触するようになっていてもよいが、ブロック体4との接触領域にシリコンゴム等の樹脂(図示しない)を設けてもよい。これにより、ブロック体4の損傷が防止できると共に、ブロック体4の各面に凹凸を有する場合であっても、把持することが可能となる。
【0045】
また、天板8には、軸部材12、支持受け部14及び第1の支柱17に対応する位置に切り欠き22が形成されており、これによって、軸部材12及び支持受け部14に天板8が干渉しないようになっている。
【0046】
第1の基準部材10と第2の基準部材11とは、高さ寸法が天板8よりも低くなるように形成されており、これによって、ブロック体4を天板8と底部9とで確実に把持することができるようになっている。
【0047】
更に、把持装置1は、棒状の持ち手23を設けておくことが好ましい。これによれば、後述するガイド機構3上での移動操作を容易に行うことができる。
【0048】
図5に示すように、加工刃物2とガイド機構3とは、受け台24によって一体的に連結されている。なお、
図5は、説明の便宜上
図1の状態から把持装置を取り除いて平面視したものである。
【0049】
加工刃物2は、受け台24に支持された駆動部25から延びる回転軸26の先端に取り付けられている。本実施形態において採用した加工刃物2は、例えば、骨折観血的手術、人工関節置換術及び靭帯断裂形成術などの整形外科手術の際に使用される丸型のこぎりである。
【0050】
ガイド機構3は、平行に延びる一対の直線レール27を備えている。加工刃物2は、両直線レール27の中央に位置し、回転軸26の軸線が両直線レール27の長手方向に対して直交するように設定されている。そして、両直線レール27は、把持装置1を摺動案内する。
【0051】
次に、本実施形態のカットシステムを用いた加工工程について、一例として、膝周囲骨切り術用の人工骨を挙げて説明する。
【0052】
図6に示すように、骨切り後の矯正により形成された空隙部Wに対応する人工骨の寸法を決定する。具体的には、骨切り長さ寸法(底辺寸法X)と、空隙部Wの端部Pを回転中心として矯正したときの角度(矯正角度θ)とを求める。
【0053】
矯正角度θが不明である場合には、底辺寸法Xと開大幅寸法Zとを用いて矯正角度θを算出し、底辺寸法Xが不明である場合には、矯正角度θと開大幅寸法Zとを用いて底辺寸法Xを算出すればよい。
【0054】
次いで、
図7に示すように、把持装置1の第1の基準部材10を回転させ、第1の基準面10aの角度が矯正角度θに合致したところで第1の基準部材10を固定する。第1の基準面10aの角度は円弧部材13の角度表示部15により容易に確認することができる。
【0055】
同じように、第2の基準部材11をスライドさせ、第2の基準面11aの位置が底辺寸法Xに合致したところで第2の基準部材11を固定する。第2の基準面11aの位置寸法は、第1の基準部材10の長さ表示部20により容易に確認することができる。
【0056】
次いで、底部9上にブロック体4を載置する。このとき、ブロック体4の第二面6を第1の基準部材10の第1の基準面10aに当接させ、ブロック体4の第三面7の一部(角部側の端部)を第2の基準部材11第2の基準面11aに当接させる。
【0057】
続いて、天板8を閉じてブロック体4を把持した把持装置1を、
図8Aに示すように、ガイド機構3上の上流側(加工刃物2から離間した初期位置)にセットする。
【0058】
そして、
図8Bに示すように、加工刃物2を回転させた状態で、ガイド機構3上の把持装置1を直線レール27の案内により下流方向へスライドさせる。これにより、ブロック体4が加工刃物2を通過して、
図8Cに天板8を取り除いて示すように、ブロック体4から切断加工された人工骨4aが得られる。
【0059】
ところで、把持装置1の用法について、
図7を参照して更に説明すると、底辺寸法Xがブロック体4の第二面6の長さ寸法より小さい場合には、ブロック体4から切り出した人工骨は三角形となり、底辺寸法Xがブロック体4の第二面6の長さ寸法より大きい場合には、ブロック体4から切り出した人工骨は四角形となる。
【0060】
このとき、高さの高い方が骨の端側であるため、皮質骨付近に補填するのに適した形状の人工骨を得ることができる。
【0061】
また、
図9Aに示すように、膝周囲骨切り術により形成される脛骨断面形状は平面視において略三角形であるため、底辺寸法Xは、測定する位置によって異なる(図中の符号X1,X2,X3で示す寸法参照)。矯正角度θは測定位置による変化はないが、底辺寸法Xが異なるため、開大幅寸法Zも異なってしまう。
【0062】
このような場合には、
図7を参照して、底辺寸法Xよりも大きい寸法となる位置に第2の基準面11aの位置を設定して第2の基準部材11を固定する。これにより、
図9Bに示すように、少し長めの人工骨4aを作成することができ、補填後に突出部分4bを切除することで、図中破線で示す骨の端の部分まできちんと人工骨4aを補填することが可能となる。
【0063】
以上のように、把持装置1を備えたカットシステムを用いることにより、ブロック材に対する罫書を不要として、高精度な人工骨4aを迅速に得ることができる。
【0064】
なお、本実施形態においては、骨の矯正時に発生する空隙部に補填する際の人工骨の加工について説明をしたが、本発明のカットシステムを用いることで、任意の角度をなす向かい合う二つの面を有する三角形や四角形が得られ、様々な症例の補填材の加工に使用することができる。
【0065】
また、本発明のカットシステムは、各部を、ステンレス鋼やチタン、チタン合金等の金属材料を選択的に用いて形成することが好ましく。また、一部をシリコンゴム等の樹脂から構成されることが好ましい。
【0066】
また、本発明のカットシステムに用いる加工刃物は手動式の他、電動式や空動式など様々なものが用いられるが、回転刃を用いる場合には直径25mm以上、40mm以下の刃物が望ましい、回転刃の直径が25mmより小さいと厚み方向の切り残しが発生し、40mmより大きい場合には、刃物が過度に突出して加工中に作業の邪魔になるおそれがある。
【0067】
また、本発明のカットシステムにおける把持装置の天板と加工刃物との好ましい位置関係として、加工刃物が天板から突出しないように設定することが挙げられる。
【0068】
また、本発明のカットシステムを、骨の矯正術における人工骨への補填物の加工に用いる場合には、骨切り後の矯正角度に対応する加工刃物の通過路と第1の基準面とのなす角度の調整範囲及び読み取り範囲は、2°~25°とすればよく、更に好ましくは、3°~15°とすればよい。骨切り後の底辺寸法に対応する第1の基準部材の軸から第2の基準面までの調整範囲及び読み取り範囲は、30mm~90mmとすればよく、好ましくは40mm~75mmとすればよい。これにより、カットシステムが小型となり、手術現場で使用するのに好適となる。
【0069】
一方で、ブロック材が直方体からなる場合において、加工刃物の通過路と第1の基準面とのなす角度を90°に設定することができるようにしておくことにより、ブロック材を正確に複数の直方体に分割することができるようになり、1つのブロック体から分割した複数のブロック材を素材として複数の人工骨を作成することができる。
【0070】
また、第2の基準部材の第2基準面のブロック材の第三面に接する面の幅が大きいと加工刃物の通過路と干渉するため、この部分の幅は0.5mm~6mmとし、好ましくは2.5mm~4.5mmとする。これにより、ブロック体との接触面積を確保してブロック材を確実に固定することができる。
【0071】
また、ブロック体の固定位置を規定するために、第1基準面と第2基準面とが交わる角度をブロック体の第一面と第二面とが交わる角度に合致させておくことが好ましい。
【0072】
また、他の実施形態として、最も簡単な構成による把持装置として、
図10A及び
図10Bに示すものが挙げられる。このものでは、底部9と、第1の基準部材10と、第2の基準部材11とを備えるが、加工刃物の通過部9bの終端に軸部材12が存在するため、ブロック体から作成できる人工骨は四角形となる。
【0073】
そこで、
図11A及び
図11Bに示すように、軸部材12が加工刃物2の通過部9bの下方にオフセットさせ、加工刃物を底部9の上方を移動する構成を採用することでも、加工刃物と軸部材12との干渉を防止することができる。
【0074】
また、
図12に示すように、第2の基準部材11にスケール28を設けてもよい。これによれば、スケール28を確認して骨切り後の開大幅寸法に応じて第1の基準部材10と第2の基準部材11とを調整することができる。
【0075】
スケール28は、枢軸29を介して回転させて通過部9bから離間する位置に回転させたり、着脱自在に設けることにより、加工刃物との干渉を防止することができる。
【0076】
また、
図13に示すように、底部9の底部面9aに、通過部9bからの距離を示すスケール30を設けてもよい。これによっても、骨切り後の開大幅寸法に応じて、第1の基準部材10と第2の基準部材11とを容易且つ高精度に調整することができる。
【符号の説明】
【0077】
1…把持装置
2…加工刃物
3…ガイド機構
4…ブロック体
5…第一面
6…第二面
7…第三面
8…天板
9…底部
9a…底部面
9b…通過部
10…第1の基準部材
10a…第1の基準面
11…第2の基準部材
11a…第2の基準面
12…軸部材(回転支持部、棒部)
14…支持受け部
17…第1の支柱
18…第2の支柱
24…受け台