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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023106371
(43)【公開日】2023-08-01
(54)【発明の名称】溶融加工可能な組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 71/10 20060101AFI20230725BHJP
   C08L 27/18 20060101ALI20230725BHJP
   C08L 27/12 20060101ALI20230725BHJP
   C08F 8/00 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
C08L71/10
C08L27/18
C08L27/12
C08F8/00
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023065997
(22)【出願日】2023-04-13
(62)【分割の表示】P 2019548034の分割
【原出願日】2018-03-05
(31)【優先権主張番号】62/469,629
(32)【優先日】2017-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Leistritz
2.Coperion
(71)【出願人】
【識別番号】512323929
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ ユーエスエー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ルイス, シャンタル
(72)【発明者】
【氏名】ハモンズ, ライアン
(72)【発明者】
【氏名】バッシ, マッティア
(72)【発明者】
【氏名】メルロ, ルカ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】フルオロプラスチックの耐薬品性及び誘電特性、並びにポリ(アリールエーテルケトン)の機械的性能を組み合わせて室温靭性を提供する、フルオロプラスチックとポリ(アリールエーテルケトン)との組成物を提供する。
【解決手段】TFEホモポリマー、及びTFEコポリマー、熱可塑性TFEコポリマーから選択される、20~59重量%の量のテトラフルオロエチレン(TFE)ポリマー[ポリマー(F)]と、40~79重量%の量の少なくとも1つのポリ(アリールエーテルケトン)[ポリマー(PAEK)]と、0.05~20重量%の量の、(i)-SOX基(XがF、Clである);及び(ii)式-SO-Ar*-(X*)のうちの少なくとも1つを有する少なくとも1つのフッ素化ポリマー[ポリマー(I)]とを含む組成物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- (i)TFEホモポリマー(以下、PTFE)、及び、TFEコポリマーであって、前記TFEコポリマーの全重量に対して、TFE以外の1つ又は2つ以上のエチレン性不飽和フッ素化モノマーに由来する繰り返し単位0.5重量%未満、好ましくは0.1重量%未満を含むTFEコポリマー(以下、修飾PTFE)(これらのPTFE及び修飾PTFEは、1mm×10mmのハステロイダイを使用して372℃及び1000s-1でASTM D3835に従って測定されるとき、高くても1.5x10Pa×secの溶融粘度を有する)、並びに
(ii)熱可塑性TFEコポリマーであって、前記TFEコポリマーの全重量に対して、TFE以外の1つ又は2つ以上のエチレン性不飽和フッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を少なくとも1重量%を含む熱可塑性TFEコポリマー(以下、熱可塑性TFEコポリマー)
からなる群から選択される少なくとも1つのテトラフルオロエチレン(TFE)ポリマー[ポリマー(F)](前記ポリマー(F)は、ポリマー(F)、ポリマー(PAEK)及びポリマー(I)の重量の合計に対して20~59重量%の量で存在している)と、
- ポリマー(F)、ポリマー(PAEK)及びポリマー(I)の重量の合計に対して、40~79重量%の量の少なくとも1つのポリ(アリールエーテルケトン)[ポリマー(PAEK)]と、
- ポリマー(F)、ポリマー(PAEK)及びポリマー(I)の重量の合計に対して0.05~20重量%の量の、(i)-SOX基(XがF、Clである);及び(ii)式-SO-Ar-(X(式中、Arが炭化水素基、一般的に芳香族基であり、Xが-COOM基であり、MがH又はカチオン(例えば金属カチオン又はアンモニウムカチオン)であり、及びnがゼロ又は1~3の整数である))のうちの少なくとも1つを有する少なくとも1つのフッ素化ポリマー[ポリマー(I)]と
を含む組成物[組成物(C)]。
【請求項2】
- ポリマー(F)、ポリマー(PAEK)及びポリマー(I)の重量の合計に対して25~55重量%の量の、少なくとも1つのポリマー(F)と、
- ポリマー(F)、ポリマー(PAEK)及びポリマー(I)の重量の合計に対して44~73重量%の量の、少なくとも1つのポリマー(PAEK)と、及び
- ポリマー(F)、ポリマー(PAEK)及びポリマー(I)の重量の合計に対して0.1~5重量%の量の、上に詳述されたような少なくとも1つのポリマー(I)を含む、請求項1に記載の組成物(C)。
【請求項3】
- ポリマー(F)、ポリマー(PAEK)及びポリマー(I)の重量の合計に対して44~55重量%、好ましくは46~53重量%の量の、少なくとも1つのポリマー(F)と、
- ポリマー(F)、ポリマー(PAEK)及びポリマー(I)の重量の合計に対して44~55重量%、好ましくは46~53重量%の量の、少なくとも1つのポリマー(PAEK)と、及び
- ポリマー(F)、ポリマー(PAEK)及びポリマー(I)の重量の合計に対して1~4重量%、好ましくは1~3重量%の量の、少なくとも1つのポリマー(I)を含む、請求項2に記載の組成物(C)。
【請求項4】
- ポリマー(F)、ポリマー(PAEK)及びポリマー(I)の重量の合計に対して27~35重量%の量の、少なくとも1つのポリマー(F)と、
- ポリマー(F)、ポリマー(PAEK)及びポリマー(I)の重量の合計に対して64~72重量%の量の、少なくとも1つのポリマー(PAEK)と、及び
- ポリマー(F)、ポリマー(PAEK)及びポリマー(I)の重量の合計に対して1~3重量%の量の、少なくとも1つのポリマー(I)を含む、請求項2に記載の組成物(C)。
【請求項5】
ポリマー(F)、ポリマー(PAEK)及びポリマー(I)の全重量が、組成物(C)の全重量の少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも70重量%に相当し、及び/又は前記組成物(C)が本質的にポリマー(F)、ポリマー(PAEK)及びポリマー(I)によって構成される、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
ポリマー(I)中の-SOX及び/又は-SO-Ar-(X基の量が、少なくとも0.01meq/g、好ましくは少なくとも0.05meq/g、より好ましくは少なくとも0.1meq/g及び/又は高くても1meq/g、好ましくは高くても0.8meq/g、より好ましくは高くても0.5meq/gである、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
ポリマー(I)が、式-SO-Ar-(X(式中、Arがフェニル基である)の少なくとも1つの基、好ましくは式-SO-Φ-COOM(MがH又はカチオン(例えば金属カチオン又はアンモニウムカチオン)であり、好ましくはMがHである)の少なくとも1つの基を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
ポリマー(I)が、-SOX官能性モノマー(それが場合により官能化されて-SO-Ar-(Xを生じる)に由来する繰り返し単位に共有結合した側基として前記-SOX基及び/又は-SO-Ar-(Xを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
ポリマー(PAEK)が、繰り返し単位(RPAEK)50モル%超を含むポリマーであり、前記モル%が、前記ポリマー(PAEK)中の総モル数に基づいており、それらが、以下の式(K-A)~(K-O)の単位、及び同単位の2つ以上の混合物:
[上記の式(K-A)~(K-O)のそれぞれにおいて、互いに等しいか又は異なるR’のそれぞれが、独立して、出現ごとに、1つ又は2つ以上のヘテロ原子を任意選択的に含むC~C12基;スルホン酸及びスルホネート基;ホスホン酸及びホスホネート基;アミン及び第四アンモニウム基から選択され;及び互いに等しいか又は異なるj’のそれぞれが、独立して、出現ごとに、0及び1~4の整数から選択され、好ましくはj’がゼロに等しい]からなる群から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記繰り返し単位(RPAEK)が、式(J’-A)~(J’-D):
の単位からなる群から選択される、請求項9に記載の組成物(C)。
【請求項11】
ポリマー(F)がTFEホモポリマー、修飾PTFE及び熱可塑性TFEコポリマーから選択され、前記修飾PTFE及び熱可塑性TFEコポリマーが、TFEに由来する繰り返し単位及びTFE以外の少なくとも1つの過フッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含み、TFE以外の前記過フッ素化モノマー[モノマー(PFM)]が、
(a)好ましくはヘキサフルオロプロピレン(HFP)及びパーフルオロイソブチレン(PFIB)からなる群から選択される、C~Cパーフルオロオレフィンと、
(b)式CF=CFORf1(式中、Rf1は、CF(PMVE)、C又はCなどの、C~Cパーフルオロアルキル基である)のパーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)と、
(c)式CF=CFOX(式中、Xは、1つ又は2つ以上のエーテル性酸素原子を含むC~C12パーフルオロオキシアルキル基である)のパーフルオロオキシアルキルビニルエーテル、特に式CF=CFOCFORf2(ここで、Rf2は、-CFCF、-CFCF-O-CF、及び-CFなどの、C~Cパーフルオロ(オキシ)アルキル基である)のパーフルオロメトキシアルキルビニルエーテルと、
(d)式:
(式中、Rf3、Rf4、Rf5、及びRf6はそれぞれ、互いに等しく又は異なり、独立して、フッ素原子であるか、-CF、-C、-C、-OCF、又は-OCFCFOCFなどの、1つ以上の酸素原子を任意選択的に含むC~Cパーフルオロ(オキシ)アルキル基である)の(パー)フルオロジオキソールとからなる群から選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項12】
ポリマー(F)がPTFE又は修飾PTFEであり、前記修飾PTFEが、TFEに由来する繰り返し単位と、修飾PTFEの全重量に対して前記モノマー(PFM)に由来する繰り返し単位0.0001~0.5重量%、好ましくは0.001~0.1重量%とから本質的になる、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
ポリマー(F)が、ASTM D3835に従って372℃及び1000s-1で測定されたとき、少なくとも1Pa×sec、好ましくは少なくとも10Pa×sec、より好ましくは少なくとも50Pa×sec、及び/又は高くても1.2×10Pa×sec、好ましくは高くても1.0×10Pa×sec、さらにより好ましくは高くても800Pa×sec、より一層好ましくは高くても500Pa×secの溶融粘度を有する修飾されていてもよいPTFE超微粉末からなる群から選択される、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
ポリマー(F)が、:
- ISO 13320に従ってレーザー光回折によって決定されるとき、高くても25.0μm、好ましくは高くても22.0μm、より好ましくは高くても20.0μm、及び/又は少なくとも0.5μm、好ましくは少なくとも1.0μmの平均粒度d50を有する;及び/又は
- 少なくとも13mmol/kg、好ましくは少なくとも14mmol/kg、より好ましくは少なくとも15mmol/kg及び/又は有利には高くても50mmol/kg、好ましくは高くても40mml/kg、より好ましくは高くても30mmol/kgのカルボン酸鎖の末端基(-COOH及び-COF基)の量を有する、PTFE又は修飾PTFEの超微粉末から選択される、請求項12又は13に記載の組成物。
【請求項15】
ポリマー(F)が熱可塑性TFEコポリマーであって前記TFEコポリマーの全ての繰り返し単位に対して、モノマー(PFM)に由来する繰り返し単位少なくとも1重量%及び高くても25重量%で含む熱可塑性TFEコポリマーであり、それが好ましくは、:
- ヘキサフロオロプロピレン(HFP)に由来する繰り返し単位と、任意選択的に一般式CF=CFORf1’(式中、Rf1’がC-Cパーフルオロアルキルである)に従う少なくとも1つのパーフルオロアルキルビニルエーテルに由来する繰り返し単位とを含むTFEコポリマー;
- 一般式CF=CFORf1’(式中、Rf1’がC-Cパーフルオロアルキルである)に従う少なくとも1つのパーフルオロアルキルビニルエーテルに由来する繰り返し単位、及び任意選択的に少なくとも1つのC-Cパーフルオロオレフィンに由来する繰り返し単位をさらに含むTFEコポリマーからなる群から選択される、請求項11に記載の組成物。
【請求項16】
ポリマー(F)、ポリマー(PAEK)及びポリマー(I)を混合する工程を有利に含み、前記方法はポリマー(F)、ポリマー(PAEK)及びポリマー(I)を溶融混練する工程を好ましくは含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物(C)を製造する方法。
【請求項17】
請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物(C)を溶融状態において加工する工程を含む造形製品の製造方法であって、溶融状態において加工する前記工程が、ワイヤ押出成形、圧縮成形、射出成形、溶融カレンダリング、回転成形、及び熱成形などの、押出成形の少なくとも1つを含んでもよい製造方法。
【請求項18】
請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物(C)から製造される構成要素を含むケーブルであって、前記組成物(C)から作られる前記構成要素が、ジャケット、一次絶縁被覆物を含んでもよく、種々の下位構成要素、例えば、シールドテープ、強度部材、クロスウェブ、フィルム、バッファー、セパレータ、引出しコード、及びサブジャケットを含んでもよい、ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連技術の相互参照
本出願は、2017年3月10日に出願された米国仮特許出願第62/469629号に基づく優先権を主張するものであり、この出願の全内容はあらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、フルオロプラスチックとポリ(アリールエーテルケトン)との組成物に関し、同組成物を製造する方法、とりわけワイヤ被覆物などの、それからの造形製品に関し及びコーティングに関する。
【背景技術】
【0003】
とりわけポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、修飾PTFE、フッ素化エチレン-プロピレンコポリマー(FEP)、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテルコポリマーなどの、過フッ素化されるか又はほとんど過フッ素化されたポリマーである、高フッ素含有量を有するポリマーは、それらの高温定格、それらの化学的不活性、低摩擦、耐候性の他、とりわけ非常に低い誘電特性などの良い電気的性質のために一般に有益である。それにもかかわらず、例えば室温靭性、引張強さ及び剛性、並びに荷重下での高い耐熱性(例えば加熱撓み温度によって表される)などのそれらの機械的性能は特定の非常に要求のきびしい使用分野にともかく不適当であることは一般的に認識されている。
【0004】
他方、ポリ(アリールエーテルケトン)は、特にそれらの高い機械的性能、高い耐熱性の他に特に非常に高い弾性率及び強度のために有益である公知の高性能プラスチックである。それにもかかわらず、それらの耐薬品性及び透過性、及び/又は電気的特性/誘電特性は異なった使用分野において一般的に十分であり得るが、それにもかかわらず、それらの性能はこれらのことを考えると特定の非常に要求のきびしい使用分野に対処するには不適当である場合があることが一般的に認識されている。
【0005】
現在、従来のPTFE又は他の、TFEの過フッ素化熱可塑性コポリマーをポリ(アリールエーテルケトン)を有する配合物中で使用することはそれ自体公知である。
【0006】
特に、欧州特許第0367629A号明細書(BICC PUBLIC LIMITED COMPANY)1990年05月9日には、完全フッ素化ポリマー母材中に分散された少量(0.5~15%)の共役芳香族ポリマー(例えばPEEK)を含む高性能ケーブルのためのポリマー組成物が開示されている。表面でのラベリングのためのレーザーマーキングを可能にする目的でFEP中にPEEKを加えることが特に記載されている。
【0007】
米国特許出願公開第6177518号明細書(E.I.DUPONT DE NEMOURS AND CIE.)2001年01月23日には、2つの成分の有利な性質を組み合わせて、主成分の母材中の少量成分の分散相として、成分間の組成比に応じて提供される、溶融流動性フルオロプラスチックとポリ(エーテルケトンケトン)との組成物が開示されている。
【0008】
米国特許第9051462号明細書(ELRINGKLINGER AG)2015年06月9日には、完全フッ素化熱可塑性加工可能ポリマー材料の或る比率とポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン及びポリエーテルアリールケトンから選択される少なくとも1つの付加的な高性能ポリマーの或る比率とを含むポリマー配合物が開示されており、そこで溶融配合後の配合物は少なくとも1つの付加的な高性能ポリマーとポリマー材料との比率の均質分布を示す。この文献によれば、TFEと単一コモノマー(その含有量は3.5モルパーセント未満になる)とのコポリマーの形態の溶融加工可能なPTFEを含む前記完全フッ素化熱可塑性加工可能ポリマー材料の使用は、分離したドメインがもう検出可能でないように、ポリマー成分の均質分布を達成するために有効である。
【0009】
したがって、特に、実質的に等しい重量部(例えば約50/50)でフルオロプラスチックとポリ(アリールエーテルケトン)とをブレンドするときに性質の累積効果を最大にするために、成分の均質な混合を達成することは、これらの配合物のドメインの広く認められている課題である。
【0010】
現在、コーティング組成物において使用することが意図されるときにフルオロポリマーは接着性の欠陥を生じる場合があることも公知である。この分野において、少量の芳香族樹脂を接着促進剤として使用することが公知である。米国特許第6140410号明細書(E.I.DUPONT DE NEMOURS AND CIE.)2000年10月31日には、少量の官能化フルオロポリマー樹脂及び高温耐性熱可塑性樹脂接着促進剤並びに多量の非官能性フルオロポリマー樹脂を含む、溶融加工可能なフルオロポリマー組成物が開示されている。そこに開示された典型的な実施形態(実施例21を参照)は、TFE/パーフルオロプロピルビニルエーテルコポリマー93.5重量%、PEEK4.0重量%及び式CF=CF-[OCFCF(CF)]-OCFCF-SOFのスルホニルフルオリドモノマーに由来する繰り返し単位2重量%を含有するTFEコポリマー2.5重量%から製造される配合物を提供する。それにもかかわらず、この文献は、ポリ(アリールエーテルケトン)の典型的な有利な機械的性能を示す配合物を提供するために、フルオロポリマーとポリ(アリールエーテルケトン)とを配合し、この後者の成分のかなりの量を含む問題点を検討しない。
【0011】
したがって、両方の成分の有利な性能を組み合わせるフルオロプラスチックとポリ(アリールエーテルケトン)とのブレンドが当技術分野において依然として不足しており、それらは従来の装置によって容易に製造することができ、フルオロプラスチックのとりわけ耐薬品性及び誘電特性並びにポリ(アリールエーテルケトン)の機械的性能と組み合わせて、とりわけ室温靭性を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の組成物(C)から製造される一次絶縁被覆物を含む絶縁ケーブルの断面図である。
図2】ジャケット及び/又は一次絶縁被覆物が本発明の組成物(C)を含むことができる、通信ケーブルの一部切り欠き側面図である。
図3】通信ケーブルのA-A’面(図2を参照)についての、それによって略図を描いた断面図である。
【0013】
発明の概要
フルオロプラスチック及びポリ(アリールエーテルケトン)の特定のブレンドを標準製造技術によって提供することができ、それで両方の成分の利点を組み合わせる上述の性能の範囲を提供することができることを本出願人はここで見出した。特に、本発明のブレンドは、室温における靭性、良い誘電特性の他、絶縁ワイヤの絶縁コーティング又は外被のために本発明のブレンドを使用する際に特に有益であるとりわけ良い切断抵抗などの、すぐれた機械的性能を提供する。
【0014】
本発明はしたがって、
(i)TFEホモポリマー(以下、PTFE)と、TFEコポリマーであって、前記TFEコポリマーの全重量に対して、TFE以外の1つ又は2つ以上のエチレン性不飽和フッ素化モノマーに由来する繰り返し単位0.5重量%未満、好ましくは0.1重量%未満を含むTFEコポリマー(以下、修飾PTFE)(これらのPTFE及び修飾PTFEは、1mm×10mmのハステロイダイを使用して372℃及び1000s-1でASTM D3835に従って測定されるとき、高くても1.5×10Pa×secの溶融粘度を有する)、及び
(ii)熱可塑性TFEコポリマーであって、前記TFEコポリマーの全重量に対して、TFE以外の1つ又は2つ以上のエチレン性不飽和フッ素化モノマーに由来する繰り返し単位少なくとも1重量%を含む熱可塑性TFEコポリマー(以下、熱可塑性TFEコポリマー)からなる群から選択される少なくとも1つの少なくとも1つのテトラフルオロエチレン(TFE)ポリマー[ポリマー(F)](前記ポリマー(F)は、ポリマー(F)、ポリマー(PAEK)及びポリマー(I)の重量の合計に対して20~59重量%の量で存在している)と、
- ポリマー(F)、ポリマー(PAEK)及びポリマー(I)の重量の合計に対して、40~79重量%の量の少なくとも1つのポリ(アリールエーテルケトン)[ポリマー(PAEK)]と、
- ポリマー(F)、ポリマー(PAEK)及びポリマー(I)の重量の合計に対して0.05~20重量%の量の、(i)-SOX基(XがF、Clである);及び(ii)式の基-SO-Ar*-(X*)(式中、Ar*が炭化水素基、一般的に芳香族基であり、X*が-COOM*基であり、M*がH又はカチオン(例えば金属カチオン又はアンモニウムカチオン)であり、及びnがゼロ又は1~3の整数である)のうちの少なくとも1つを有する少なくとも1つのフッ素化ポリマー[ポリマー(I)]と、
を含む組成物[組成物(C)]に関する。
【0015】
実施形態の説明
組成物(C)
組成物(C)は、
- ポリマー(F)、ポリマー(PAEK)及びポリマー(I)の重量の合計に対して20~59重量%、好ましくは25~55重量%の量の、上に詳述されたような少なくとも1つのポリマー(F)、
- ポリマー(F)、ポリマー(PAEK)及びポリマー(I)の重量の合計に対して40~79重量%、好ましくは44~73重量%の量の、上に詳述されたような少なくとも1つのポリマー(PAEK)、及び
- ポリマー(F)、ポリマー(PAEK)及びポリマー(I)の重量の合計に対して0.05~20重量%、好ましくは0.1~5重量%の量の、上に詳述されたような少なくとも1つのポリマー(I)
を含む。
【0016】
必要とされる性能に応じて、組成物(C)は、ポリマー(F)及びポリマー(PAEK)の実質的に同様な重量を含んでもよい。これらの実施形態によれば、組成物(C)は、
- ポリマー(F)、ポリマー(PAEK)及びポリマー(I)の重量の合計に対して44~55重量%、好ましくは46~53重量%の量の、上に詳述されたような少なくとも1つのポリマー(F)、
- ポリマー(F)、ポリマー(PAEK)及びポリマー(I)の重量の合計に対して44~55重量%、好ましくは46~53重量%の量の、上に詳述されたような少なくとも1つのポリマー(PAEK)、及び
- ポリマー(F)、ポリマー(PAEK)及びポリマー(I)の重量の合計に対して1~4重量%、好ましくは1~3重量%の量の、上に詳述されたような少なくとも1つのポリマー(I)
を含む。
【0017】
別の選択肢として、ブレンド中でポリマー(PAEK)が優勢である組成物(C)もまた、含まれ得る;これらの実施形態によれば、組成物(C)は、
- ポリマー(F)、ポリマー(PAEK)及びポリマー(I)の重量の合計に対して27~35重量%の量の、上に詳述されたような少なくとも1つのポリマー(F)、
- ポリマー(F)、ポリマー(PAEK)及びポリマー(I)の重量の合計に対して64~72重量%の量の、上に詳述されたような少なくとも1つのポリマー(PAEK)、及び
- ポリマー(F)、ポリマー(PAEK)及びポリマー(I)の重量の合計に対して1~3重量%の量の、上に詳述されたような少なくとも1つのポリマー(I)
を含む。
【0018】
一般的に、上に記載された実施形態の両方について、ポリマー(F)、ポリマー(PAEK)及びポリマー(I)の全重量が、組成物(C)の全重量の少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも70重量%に相当する。上に詳述されたような、ポリマー(F)、ポリマー(PAEK)及びポリマー(I)によって本質的に構成される組成物(C)は本発明の有益な実施形態であり、上述の3つの記載された成分によって本質的に構成される組成物(C)中に少量の(例えば1重量%未満の量の)不純物、疑わしい成分が許容され得ると理解されているので、上限は特に重要ではない。
【0019】
限られた量又は有意な量で存在していてもよく、例えば、ポリマー(F)、ポリマー(PAEK)及びポリマー(I)以外のポリマーであってもよい、このような他の成分は、充填剤、顔料、安定剤、及び添加剤等であってもよい。
【0020】
それにもかかわらず、組成物(C)は、上に記載されたこれらの3つの成分のブレンドの先述の有利な特性を実質的に損なわない範囲内で、ポリマー(F)、ポリマー(PAEK)及びポリマー(I)以外の他の成分を含有してもよいことは比較的一般的に理解されている。
【0021】
上に記載されたポリマー以外のこのようなポリマーには、例えば、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポルブチレン(polubutylene)テレフタレート、ポリアリーレート、ポリカプロラクトン、フェノキシ樹脂、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレンコポリマー(ABS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ブタジエン/スチレンコポリマー、エチレン/プロピレンコポリマー、エチレン/プロピレン/ジエンゴム(EPDM)、スチレン/ブタジエンブロックコポリマー、ブタジエン/アクリロニトリルコポリマー、アクリルゴム、スチレン/無水マレイン酸コポリマー、スチレン/フェニルマレイミドコポリマー等が含まれる。
【0022】
充填剤は好ましくは、無機充填剤であり、例えば、繊維充填剤(例えばガラス繊維、炭素繊維、硼素繊維、ステンレス鋼ミクロ繊維、ウィスカー、...)、粉状充填剤(例えばタルク、マイカ、黒鉛、二硫化モリブデン、炭酸カルシウム、シリカ、シリカアルミナ、アルミナ、二酸化チタン、酸化マグネシウム...)が含まれる。
【0023】
また、充填剤は、有機顔料又は無機顔料などの着色顔料であってもよい。着色顔料の具体例には、例えば、カーボンブラック、酸化鉄、酸化アルミニウムコバルト、銅フタロアシアニン、ペリレン、ビスマスバナデート等が含まれる。
【0024】
ポリマー(I)
ポリマー(I)は、(i)-SOX基(XがF、Clである);及び(ii)式の基-SO-Ar*-(X*)(式中、Ar*が炭化水素基、一般的に芳香族基であり、X*が-COOM*基であり、M*がH又はカチオン(例えば金属カチオン又はアンモニウムカチオン)であり、好ましくはHであり、及びnがゼロ又は1~3の整数である)のうちの少なくとも1つを含む。
【0025】
ポリマー(I)中の-SOX及び/又は-SO-Ar*-(X*)基の量は一般的に、少なくとも0.01、好ましくは少なくとも0.05、より好ましくは少なくとも0.1meq/gである。ポリマー(I)に含まれる前記-SOX基及び/又は-SO-Ar*-(X*)基の最大量による実質的な制限はない。前記-SOX及び/又は-SO-Ar*-(X*)基は一般的に、高くても1meq/g、好ましくは高くても0.8meq/g、より好ましくは高くても0.5meq/gの量において存在していることは一般的に理解されている。
【0026】
式-SO-Ar*-(X*)の基は好ましくは、Ar*がフェニル基である基であり、好ましくは式-SO-Φ-COOM*(M*がH又はカチオン(例えば金属カチオン又はアンモニウムカチオン)であり、好ましくはM*がHである)の基である。
【0027】
一般的に、ポリマー(I)は、-SOX官能性モノマー(本明細書において以下、モノマー(X))(それが場合により官能化されて上に詳述されたような-SO-Ar*-(X*)を生じる)に由来する繰り返し単位に共有結合した側基として前記-SOX基及び/又は-SO-Ar*-(X*)を含む。
【0028】
本発明の第1の実施形態によれば、ポリマー(I)は、上に詳述されたような少なくとも1つの-SOX基を含むポリマー、すなわちポリマー(ISO2X)である。
【0029】
ポリマー(ISO2X)は、上に詳述したように1つ若しくは2つ以上のモノマー(X)に由来する繰り返し単位から本質的になり得、又は1つ若しくは2つ以上のモノマー(X)に由来する繰り返し単位と、モノマー(X)と異なる1つ若しくは2つ以上の追加のモノマーに由来する繰り返し単位とを含むコポリマーであり得る。
【0030】
一般的に、ポリマー(ISO2X)の-SOX基は、式-SOFの基である。
【0031】
少なくとも1つの-SOX基を含む好適なポリマー(ISO2X)は、少なくとも1つの-SOX基(ここで、Xは、F又はClである)を含有する少なくとも1つのエチレン性不飽和フッ素化モノマー(以下ではモノマー(A))に由来する繰り返し単位と;-SOX基(ここで、Xは、F又はClである)を含まない少なくとも1つのエチレン性不飽和フッ素化モノマー(以下ではモノマー(B))に由来する繰り返し単位とを含むこれらのポリマーである。
【0032】
「少なくとも1つのモノマー」という句は、1つ又は2つ以上のそれぞれのタイプのモノマーが、ポリマーに存在することができることを示すために、タイプ(A)及び(B)の両方のモノマーに関して、本明細書において使用される。本明細書では以下、用語「モノマー」は、所与のタイプの1種及び2種以上のモノマーの両方を意味するために用いられる。
【0033】
好適なモノマー(A)の非限定的な例は:
- 式:CF=CF(CFSOX(ここで、Xは、F又はClであり、好ましくはFであり、式中、pは、0~10、好ましくは1~6の整数であり、より好ましくは、pは、2又は3に等しい)のハロゲン化スルホニルフルオロオレフィン;
- 式:CF=CF-O-(CFSOX(ここで、Xは、F又はClであり、好ましくはFであり、式中、mは、1~10、好ましくは1~6、より好ましくは2~4の整数であり、さらにより好ましくは、mは、2に等しい)のハロゲン化スルホニルフルオロビニルエーテル;
- 式:CF=CF-(OCFCF(RF1))-O-CF(CF(RF2))SOX(ここで、Xは、F又はClであり、好ましくはFであり、
式中、wは、0~2の整数であり、互いに等しいか又は異なるRF1及びRF2は、独立して、F、Cl又は1つ若しくは複数のエーテル酸素で任意選択的に置換されたC~C10フルオロアルキル基であり、yは、0~6の整数であり;好ましくは、wは、1であり、RF1は、-CFであり、yは、1であり、及びRF2は、Fである)のスルホニルフルオリドフルオロアルコキシビニルエーテル;
- 式CF=CF-Ar-SOX(ここで、Xは、F又はClであり、好ましくはFであり、式中、Arは、C~C15の芳香族又はヘテロ芳香族基である)のハロゲン化スルホニル芳香族フルオロオレフィン
である。
【0034】
好ましくは、モノマー(A)は、式CF=CF-O-(CF-SOF(式中、mは、1~6、好ましくは2~4の整数である)のスルホニルフルオリドフルオロビニルエーテルの群から選択される。
【0035】
より好ましくは、モノマー(A)は、CF=CFOCFCF-SOF(パーフルオロ-5-スルホニルフルオリド-3-オキサ-1-ペンテン)である。
【0036】
タイプ(B)の好適なエチレン性不飽和フッ素化モノマーの非限定的な例は、
- テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)などのC~Cパーフルオロオレフィン;
- トリフルオロエチレン(TrFE)、フッ化ビニリデン(VDF)、フッ化ビニル(VF)、ペンタフルオロプロピレン及びヘキサフルオロイソブチレンなどのC~C水素含有フルオロオレフィン;
- クロロトリフルオロエチレン(CTFE)及びブロモトリフルオロエチレンなどのC~Cクロロ、及び/又はブロモ、及び/又はヨード含有フルオロオレフィン;
- 式CF=CFORf1(式中、Rf1は、C~Cフルオロアルキル、例えば-CF、-C、-Cである)のフルオロアルキルビニルエーテル;
- 式CF=CFOX(式中、Xは、1つ又は2つ以上のエーテル性酸素原子を含むC~C12フルオロオキシアルキル基である)のパーフルオロオキシアルキルビニルエーテル、特に式CF=CFOCFORf2(ここで、Rf2は、CFCF、-CFCF-O-CF、及び-CFなどの、C~Cフルオロ(オキシ)アルキル基である)のフルオロメトキシアルキルビニルエーテルなど、
- 式:
(式中、Rf3、Rf4、Rf5、Rf6のそれぞれは、互いに等しいか又は異なり、独立して、フッ素原子であるか、1つ又は複数の酸素原子を任意選択的に含むC~Cフルオロ(ハロ)フルオロアルキル、例えば-CF、-C、-C、-OCF、-OCFCFOCFである)のフルオロジオキソール
である。
【0037】
好ましくは、モノマー(B)は、
- C~Cパーフルオロオレフィン、好ましくはテトラフルオロエチレン(TFE)及び/又はヘキサフルオロプロピレン(HFP);
- クロロトリフルオロエチレン(CTFE)及び/又はブロモトリフルオロエチレンのようなクロロ、及び/又はブロモ、及び/又はヨード含有C~Cフルオロオレフィン;
- 式CF=CFORf1(式中、Rf1は、C~Cフルオロアルキル、例えば-CF、-C、-Cである)のフルオロアルキルビニルエーテル;
- 式CF=CFORO1(式中、RO1は、1つ又は複数のエーテル基を有するC~C12フルオロオキシアルキル、例えばパーフルオロ-2-プロポキシ-プロピルである)のフロオロ-オキシアルキルビニルエーテル;
- それらの混合物;
のなかから選択される。
【0038】
より好ましくは、少なくとも1つのモノマー(B)は、TFEである。
【0039】
好ましくは、ポリマー(ISO2X)は、少なくとも1つの-SOF官能基を含むフッ素化ポリマーであり、少なくとも1つのフッ化スルホニル官能基を含有する少なくとも1つのエチレン性不飽和フッ素化モノマー(A)及び少なくとも1つのエチレン性不飽和フッ素化モノマー(B)に由来する繰り返し単位から本質的になる。
【0040】
末端基、不純物、欠陥及び限定量(繰り返し単位の総モルに対して1モル%未満)での他の擬似単位は、それがポリマーの特性にほぼ影響を与えることなく、上述の繰り返し単位に加えて好ましいポリマー中に存在し得る。
【0041】
好ましいポリマー(ISO2X)は、
(1)テトラフルオロエチレン(TFE)に由来する繰り返し単位であって、ポリマー(I)の総モルに対して一般的に25~99.9モル%、好ましくは40~99.5モル%の量である、繰り返し単位;
(2)
(j)式:CF=CF-O-(CFSOX(ここで、Xは、F又はClであり、好ましくはFであり、式中、mは、1~10、好ましくは1~6、より好ましくは2~4の整数であり、さらにより好ましくは、mは、2に等しい)のハロゲン化スルホニルフルオロビニルエーテル;
(jj)式:CF=CF-(OCFCF(RF1))-O-CF(CF(RF2))SOX(ここで、Xは、F又はClであり、好ましくはFであり、
式中、wは、0~2の整数であり、互いに等しいか又は異なるRF1及びRF2は、独立して、F、Cl又は1つ若しくは複数のエーテル酸素で任意選択的に置換されたC~C10フルオロアルキル基であり、yは、0~6の整数であり;好ましくは、wは、1であり、RF1は、-CFであり、yは、1であり、及びRF2は、Fである)のスルホニルフルオリドフルオロアルコキシビニルエーテル;
(jjj)それらの混合物
からなる群から選択される少なくとも1つのモノマーに由来する繰り返し単位であって、ポリマー(ISO2X)の総モルに対して一般的に0.1~30モル%、好ましくは0.5~20モル%の量である、繰り返し単位;
(3)任意選択的に、TFEと異なる少なくとも1つのフッ素化モノマー、好ましくは過フッ素化モノマーに由来する繰り返し単位であって、一般的に、ヘキサフルオロプロピレン、式CF=CFOR’f1(式中、R’f1は、C~Cパーフルオロアルキル、例えば-CF、-C、-Cである)のパーフルオロアルキルビニルエーテル;式CF=CFOR’O1(式中、R’O1は、1つ又は複数のエーテル基を有するC~C12パーフルオロ-オキシアルキルである)のパーフルオロ-オキシアルキルビニルエーテル、例えば式CF=CFOCFOR’f2(式中、R’f2は、C~Cパーフルオロアルキル、例えば-CF、-C、-Cであるか、又は-C-O-CFのような、1つ又は複数のエーテル基を有するC~Cパーフルオロオキシアルキルである)のパーフルオロアルキル-メトキシ-ビニルエーテルなどからなる群から選択される過フッ素化モノマーに由来する繰り返し単位であって、ポリマー(ISO2X)の総モルに対して一般的に0~45モル%、好ましくは0~40モル%の量である繰り返し単位
から本質的になるフッ素化ポリマーから選択される。
【0042】
特定の実施形態によれば、好ましいポリマー(ISO2X)は一般的に、
(1)TFEに由来する45~79.9モル%、好ましくは55~69.5モル%の繰り返し単位;
(2)上述の通りの-SOX基含有モノマー(2)に由来する0.1~10モル%、好ましくは0.5~5モル%の繰り返し単位;
(3)上述の通りのTFEと異なるフッ素化モノマー(3)に由来する20~45モル%、好ましくは30~40モル%の繰り返し単位
から本質的になる。
【0043】
特定の他の実施形態によれば、最も好ましいポリマー(ISO2X)は一般的に、
(1)TFEに由来する55~95モル%、好ましくは70~92モル%の繰り返し単位;
(2)上述の通りの-SOX基含有モノマー(2)に由来する5~30モル%、好ましくは8~20モル%の繰り返し単位;
(3)上述の通りのTFEと異なるフッ素化モノマー(3)に由来する0~15モル%、好ましくは0~10モル%の繰り返し単位
から本質的になる。
【0044】
少なくとも1つの-SOX官能基を含むフッ素化ポリマーは、当技術分野で公知の任意の重合法により調製され得る。そのようなポリマーの好適な製造方法は、例えば、米国特許第4,940,525号明細書(THE DOW CHEMICAL COMPANY)1990年07月10日、欧州特許出願公開第1323751A号明細書(SOLVAY SOLEXIS SPA)2003年07月02日、欧州特許出願公開第1172382A号明細書(SOLVAY SOLEXIS SPA)2002年11月16日に記載されているものである。
【0045】
少なくとも1つの-SOX、特に-SOF基を含むポリマー(ISO2X)が、任意選択的に、例えば元素フッ素で処理されて、極性鎖末端-基を除去して、完全フッ素化構造物を提供してもよい。
【0046】
本発明の第2の実施形態によれば、ポリマー(I)は、上に記載されたような、少なくとも1つの-SO-Ar*-(X*)基を含む[ポリマー(ISO2ArY)]。
【0047】
この実施形態によれば、ポリマー(ISO2ArY)は、上に詳述されたような前記-SO-Ar*-(X*)基に加えて、1つ又は2つ以上の-SOX及び/又は-SOM基(ここで、MはH又はカチオン(例えば金属カチオン又はアンモニウムカチオン)である)を同時に含むことが可能である。これらの実施形態によれば、ポリマー(ISO2ArY)は、ポリマー(ISO2ArY)中の-SOM、-SO-Ar*-(X*)及び-SOX基の総数に対して少なくとも20%、好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも30%、及び/又は一般的に高くても99%、好ましくは高くても70%、より好ましくは高くても60%の量の-SO-Ar*-(X*)基を含むことが一般的に理解されている。
【0048】
それにもかかわらず、ポリマー(ISO2ArY)が-SO-Ar*-(X*)基を含むと共に、上に詳述されたような-SOX及び/又は-SOM基を実質的に含まない実施形態はやはり、本発明によって包含される。
【0049】
一般的に、ポリマー(ISO2ArY)は、
-SOX官能性モノマー(上に詳述されたようなモノマー(X))(それが場合により官能化されて上に詳述されたような-SO-Ar*-(X*)を生じる)に由来する繰り返し単位に共有結合した側基として、前記SO-Ar*-(X*)基と、任意選択的に、-SOX及び/又は-SOM基とを含む。
【0050】
したがってポリマー(ISO2ArY)は、ルイス酸の存在下で上述のようなポリマー(ISO2X)を芳香族(ポリ)カルボン酸と反応させることによって得られるポリマーである。
【0051】
ルイス酸の選択は特に限定されない。特にAlClなどのアルミニウム三ハロゲン化物、特にFeClなどの鉄三ハロゲン化物、特にBFなどのホウ素三ハロゲン化物が、使用してもよい典型的なルイス酸である。
【0052】
1つ又は2つ以上のカルボン酸基を含む単核酸及び多核酸などの、任意の芳香族(ポリ)カルボン酸を使用することができる。とりわけ安息香酸を使用することができる。
【0053】
この理論によって縛られずに、ルイス酸の触媒作用下で、ポリマー(ISO2X)の-SOX基の少なくとも一部分による(ポリ)カルボン酸の芳香族基の求電子性置換が介在して、前駆物質(ISO2X)の-SOX基の代わりに、上述のような式-SO-Ar*-(X*)の部分を生成すると出願人は考える。
【0054】
求電子性置換が進むにつれて、基-SOXは基-SO-Ar*-(X*)によって置換される。一般的に、加水分解工程及び任意選択的に中和工程を実施して反応を終結し、-SO-Ar*-(X*)部分の-COOM*基を-COOH基に変化させる。
【0055】
一般的に、上に詳述されたような加水分解はまた、上に詳述されたような、残留-SOX基を式-SOMの基(中和が行われる方法に応じて、MはH又はカチオン(例えば金属カチオン又はアンモニウムカチオン)である)に変化させるのに有効である。
【0056】
特に、リン酸塩緩衝液、すなわちNaHPO/NaHPOの混合物を中和剤(約7の水中のpHをもたらす)として使用するとき、上に詳述されたような、残留-SOX基を式-SONaの基に加水分解する。
【0057】
一般的に、反応条件に応じて、上に詳述されたような基-SOX及び/又は-SOMの総数に対して、基-SO-Ar*-(X*)部分を調節することが可能である。
【0058】
ポリマー(PAEK)
本明細書中で用いられるとき、「ポリ(アリールエーテルケトン)」又はポリマー(PAEK)」という表現は本明細書によって、-O-Ar’-C(=O)-Ar*基(Ar’及びAr*は、互いに等しいか又は異なり、芳香族基である)を含む50モル%超の繰り返し単位(RPAEK)を含む任意のポリマーを意味するために使用され、モル%は、ポリマー(PAEK)中の合計モル数に基づいている。繰り返し単位(RPAEK)は一般的に、以下の式(K-A)~(K-O)の単位、及び同単位の2つ以上の混合物:
[上記の式(K-A)~(K-O)のそれぞれにおいて、互いに等しいか又は異なるR’のそれぞれが、独立して、出現ごとに、1つ又は2つ以上のヘテロ原子を任意選択的に含むC~C12基;スルホン酸及びスルホネート基;ホスホン酸及びホスホネート基;アミン及び第四アンモニウム基から選択され;及び互いに等しいか又は異なるj’のそれぞれが、独立して、出現ごとに、0及び1~4の整数から選択され、好ましくはj’がゼロに等しい]からなる群から選択される。
【0059】
繰り返し単位(RPAEK)のそれぞれのフェニレン部分は、互いに独立して、他のフェニレン部分への1,2-、1,3-又は1,4-結合を有し得る。実施形態によれば、繰り返し単位(RPAEK)のそれぞれのフェニレン部分は、互いに独立して、他のフェニレン部分への1,3-又は1,4-結合を有する。さらに別の実施形態によれば、繰り返し単位(RPAEK)のそれぞれのフェニレン部分は、他のフェニレン部分への1,4-結合を有する。
【0060】
好ましい実施形態によれば、j’は、上に詳述された式(K-A)~(K-O)のそれぞれのR’についてゼロである。
【0061】
好ましい実施形態によれば、繰り返し単位(RPAEK)は、式(J’-A)~(J’-D):
の単位からなる群から選択される。
【0062】
一部の実施形態では、ポリマー(PAEK)は、ポリ(エーテルエーテルケトン)[ポリマー(PEEK)]である。本明細書で使用される場合、「ポリ(エーテルエーテルケトン)」又は「ポリマー(PEEK)」は、その繰り返し単位(RPAEK)の50モル%超が、式K’-A:
の繰り返し単位であり、モル%は、ポリマー(PEEK)中の繰り返し単位の総モル数に基づいている。
【0063】
これらの実施形態によれば、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも99モル%、又はさらに実質的に全ての繰り返し単位(RPAEK)が、上に詳述されたような繰り返し単位(K’-A)である。好ましいポリマー(PEEK)は、実質的に全ての繰り返し単位が式(K’-A)の単位であるポリマーであり、末端基、欠陥及び少量の不純物が存在していてもよいと理解されている。
【0064】
他の実施形態において、ポリマー(PAEK)はポリ(エーテルケトンケトン)[ポリマー(PEKK)]である。本明細書中で用いられるとき、「ポリ(エーテルケトンケトン)」又は「ポリマー(PEKK)」という表現は、繰り返し単位(RPAEK)の50モル%超が式(K’-B)の繰り返し単位及び/又は式(K’’-B)の繰り返し単位:
である任意のポリマーを意味し、モル%はポリマー(PEKK)中の繰り返し単位の総モル数に基づいている。
【0065】
これらの実施形態によれば、繰り返し単位(RPAEK)の少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも99モル%、又はさらに実質的に全てが繰り返し単位(K’-B)又は(K’’-B)、あるいは好ましくはそれらの組み合わせである。好ましいポリマー(PEKK)は、実質的に全ての繰り返し単位が式(K’-B)及び/又は(K’’-B)の単位であるポリマーであり、末端基、欠陥及び少量の不純物が存在していてもよいと理解されている。
【0066】
さらに他の実施形態において、ポリマー(PAEK)は、ポリ(エーテルケトン)[ポリマー(PEK)]である。本明細書で使用される場合、「ポリ(エーテルケトン)」及び「ポリマー(PEK)」は、その繰り返し単位(RPAEK)の50モル%超が、式(K’’-C):
の繰り返し単位であり、モル%はポリマー(PEK)中の繰り返し単位の総モル数に基づいている。
【0067】
これらの実施形態によれば、繰り返し単位(RPAEK)の少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも99モル%、又はさらに実質的に全てが繰り返し単位(K’-C)である。好ましいポリマー(PEK)は、実質的に全ての繰り返し単位が式(K’-C)の単位であるポリマーであり、末端基、欠陥及び少量の不純物が存在していてもよいと理解されている。
【0068】
いくつかの実施形態において、ポリマー(PAEK)はポリ(エーテルジフェニルエーテルケトン)[ポリマー(PEDEK)]である。本明細書中で用いられるとき、「ポリ(エーテルジフェニルエーテルケトン)」又は「ポリマー(PEDEK)」という表現は、繰り返し単位(R)の50モル%超が式(K’-D)の繰り返し単位:
(K’-D)である任意のポリマーを意味し、モル%はポリマー(PEDEK)中の繰り返し単位の総モル数に基づいている。
【0069】
これらの実施形態によれば、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも99モル%、又はさらに実質的に全ての繰り返し単位(R)が、上に詳述されたような繰り返し単位(K’-D)である。好ましいポリマー(PEDEK)は実質的に全ての繰り返し単位が式(K’-D)の単位であるポリマーであり、末端基、欠陥及び少量の不純物が存在していてもよいと理解されている。
【0070】
いくつかの他の実施形態において、ポリマー(PAEK)はポリ(エーテルジフェニルエーテルケトン)-ポリ(エーテルエーテルケトン)コポリマー[ポリマー(PEEK-PEDEK)]である。本明細書中で用いられるとき、「ポリ(エーテルジフェニルエーテルケトン)-ポリ(エーテルエーテルケトン)コポリマー」又は「ポリマー(PEEK-PEDEK)」という表現は、繰り返し単位(R)の50モル%超が、相対的なモル比(K’-A):(K’-D)95:5~5:95、好ましくは80:20~20:80の式(K’-A)及び(K’-D)の繰り返し単位の混合物である任意のポリマーを意味する。
【0071】
好ましくは、ポリマー(PAEK)は、0.5×3.175mmのタングステンカーバイドダイを使用してASTM D3835に従って400℃及び1000s-1で測定されたとき少なくとも0.07kPa×s、より好ましくは少なくとも0.09Pa×s、最も好ましくは少なくとも0.12kPa×s、及び/又は高くても0.65kPa×s、より好ましくは高くても0.55kPa-s、より好ましくは高くても0.50kPa×s、最も好ましくは高くても0.45kPa×sの溶融粘度を示す。
【0072】
好ましい実施形態によれば、PAEKは、PEEKである。PEEKは特に、Solvay Specialty Polymers USA,LLCからKetaSpire(登録商標)PEEKとして市販されている。
【0073】
ポリマー(F)
ポリマー(F)は、
(i)TFEホモポリマー(以下、PTFE)と、TFEコポリマーであって、前記TFEコポリマーの全重量に対して、TFE以外の1つ又は2つ以上のエチレン性不飽和フッ素化モノマーに由来する繰り返し単位0.5重量%未満、好ましくは0.1重量%未満を含むTFEコポリマー(以下、修飾PTFE)(これらのPTFE及び修飾PTFEは、0.5×3.175mmのタングステンカーバイドダイを使用して372℃及び1000s-1でASTM D3835に従って測定されるとき、高くても1.5×10Pa×secの溶融粘度を有する)、及び
(ii)熱可塑性TFEコポリマーであって、前記TFEコポリマーの全重量に対して、TFE以外の1つ又は2つ以上のエチレン性不飽和フッ素化モノマーに由来する繰り返し単位少なくとも1重量%を含む熱可塑性TFEコポリマー(以下、熱可塑性TFEコポリマー)からなる群から選択される、少なくとも1つのテトラフルオロエチレン(TFE)ポリマーである。
【0074】
修飾PTFE及び/又は熱可塑性TFEコポリマーのTFEとは異なる、適したエチレン性不飽和フッ素化モノマーの非限定的な例は、
- ヘキサフルオロプロペン(HFP)、パーフルオロイソブチレンなどのC~Cパーフルオロオレフィン;
- トリフルオロエチレン(TrFE)、フッ化ビニリデン(VDF)、フッ化ビニル(VF)、ペンタフルオロプロピレン及びヘキサフルオロイソブチレンなどのC~C水素含有フルオロオレフィン;
- クロロトリフルオロエチレン(CTFE)及びブロモトリフルオロエチレンなどのC~Cクロロ、及び/又はブロモ、及び/又はヨード含有フルオロオレフィン;
- 式CF=CFORf1(式中、Rf1は、C~Cフルオロアルキル、例えば-CF、-C、-Cである)のフルオロアルキルビニルエーテル;
- 式CF=CFOX(式中、Xは、1つ又は2つ以上のエーテル性酸素原子を含むC~C12フルオロオキシアルキル基である)のフルオロオキシアルキルビニルエーテル、特に、式CF=CFOCFORf2(ここで、Rf2は、-CFCF、-CFCF-O-CF、及び-CFなどの、C~Cフルオロ(オキシ)アルキル基である)のフルオロメトキシアルキルビニルエーテル、
- 式:
(式中、Rf3、Rf4、Rf5、Rf6は、互いに等しいか又は異なり、独立して、フッ素原子であるか、1つ又は複数の酸素原子を任意選択的に含むC~Cフルオロ(ハロ)フルオロアルキル、例えば-CF、-C、-C、-OCF、-OCFCFOCFである)のフルオロジオキソールである。
【0075】
好ましくは、ポリマー(F)は上に詳述されたようなTFEホモポリマー、修飾PTFE及び熱可塑性TFEコポリマーから選択され、前記修飾PTFE及び熱可塑性TFEコポリマーは、TFEに由来する繰り返し単位とTFE以外の少なくとも1つの過フッ素化モノマーに由来する繰り返し単位とを含む(好ましくは、それらから本質的になる)。
【0076】
「から本質的になる」という表現は、修飾PTFE及び熱可塑性TFEコポリマーと共に使用されるとき、末端鎖、不純物、欠陥は、これらが前記修飾PTFE及び熱可塑性TFEコポリマーの性質を損なう/実質的に変えることがなければポリマー中に存在していてもよいことを示すことを意図する。
【0077】
TFE以外の前述の過フッ素化モノマー[モノマー(PFM)]は有利には、
(a)好ましくはヘキサフルオロプロピレン(HFP)及びパーフルオロイソブチレン(PFIB)からなる群から選択される、C~Cパーフルオロオレフィンと、
(b)式CF=CFORf1(式中、Rf1は、CF(PMVE)、C又はCなどの、C~Cパーフルオロアルキル基である)のパーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)と、
(c)式CF=CFOX(式中、Xは、1つ又は2つ以上のエーテル性酸素原子を含むC~C12パーフルオロオキシアルキル基である)のパーフルオロオキシアルキルビニルエーテル、特に式CF=CFOCFORf2(ここで、Rf2は、-CFCF、-CFCF-O-CF、及び-CFなどの、C~Cパーフルオロ(オキシ)アルキル基である)のパーフルオロメトキシアルキルビニルエーテルと、
(d)式:
(式中、Rf3、Rf4、Rf5、及びRf6はそれぞれ、互いに等しく又は異なり、独立して、フッ素原子であるか、-CF、-C、-C、-OCF、又は-OCFCFOCFなどの、1つ以上の酸素原子を任意選択的に含むC~Cパーフルオロ(オキシ)アルキル基である)の(パー)フルオロジオキソールとからなる群から選択される。
【0078】
特定の実施形態によれば、ポリマー(F)は、繰り返し単位の総モルに対して前記モノマー(PFM)に由来する繰り返し単位0.5重量%未満、好ましくは0.1重量%未満を含む、上に詳述されたようなPTFE又は修飾PTFEである。好ましくは、この実施形態による修飾PTFEは、TFEに由来する繰り返し単位と、修飾PTFEの全重量に対して前記モノマー(PFM)に由来する繰り返し単位0.0001~0.5重量%、好ましくは0.001~0.1重量%とから本質的になる。
【0079】
上に説明されたように、この実施形態によるポリマー(F)は低い溶融粘度の、修飾されていてもよいPTFEである。この実施形態に従って使用するのに適したPTFE及び修飾PTFEは一般的に超微粉末によって提供され、それは標準高分子量PTFE/修飾PTFEの照射によって得ることができ、一般的に、標準高分子量/高溶融粘度PTFE/修飾PTFEの典型的な分子量よりもかなり低い分子量を有することで知られ、それによってPTFE及び/又は修飾PTFEの超微粉末はそれらだけで溶融流動性であり得る。
【0080】
好ましくは、この実施形態によるポリマー(F)は、上に詳述されたように、ASTM D3835に従って、372℃及び1000s-1で測定されたとき、少なくとも1Pa×sec、好ましくは少なくとも10Pa×sec、より好ましくは少なくとも50Pa×sec、及び/又は高くても1.2×10Pa×sec、好ましくは高くても1.0×10Pa×sec、さらにより好ましくは高くても800Pa×sec、より一層好ましくは高くても500Pa×secの溶融粘度を有する修飾されていてもよいPTFE超微粉末からなる群から選択される。
【0081】
本発明の組成物(C)において使用するのに適しているPTFE又は修飾PTFEの超微粉末は有利には、ISO 13320に従ってレーザー光回折によって決定されるとき、高くても25.0μm、好ましくは高くても22.0μm、より好ましくは高くても20.0μmの平均粒度d50を特徴とする。d50の下方境界は特に限定されない。それにもかかわらず、取り扱いの便宜のため、PTFE又は修飾PTFEの超微粉末のd50は一般的に少なくとも0.5μm、好ましくは少なくとも1.0μmであると理解されている。
【0082】
2.0μm~15.0μmの間、好ましくは2.5μm~12.0μmの間の平均サイズd50を有するPTFE又は修飾PTFEの超微粉末によって特に良い結果が得られた。
【0083】
PTFE又は修飾PTFEの超微粉末の平均サイズd50は、例えばレーザー回折粒度LS(商標)13320MW-Beckman Coulter計測器を使用して、レーザー光回折によってISO13320に従って決定される。
【0084】
本発明の組成物(C)において使用するのに適しているPTFE又は修飾PTFEの超微粉末は有利には、少なくとも13mmol/kg、好ましくは少なくとも14mmol/kg、より好ましくは少なくとも15mmol/kg及び/又は有利には高くても50mmol/kg、好ましくは高くても40mml/kg、より好ましくは高くても30mmol/kgのカルボン酸鎖の末端基(特に-COOH及び-COF基)の量を特徴としている。
【0085】
カルボン酸鎖の末端基(-COOH及び-COF)の量は、PIANCA,M.ら著、End groups in fluoropolymers.Journal of Fluorine Chemistry.1999,vol.95,p.71-84に記載の方法に従って決定された。当該鎖末端の濃度は、ポリマー(F)の1kg当たりの基のmmolとして表される。
【0086】
本発明の組成物において特に有効であることがわかったPTFE超微粉末は、Solvay Specialty Polymers USA,LLC.から市販されているPOLYMIST(登録商標)PTFE微粉化粉末である。
【0087】
他の実施形態によれば、ポリマー(F)は、熱可塑性TFEコポリマーであって、前記TFEコポリマーの全重量に対してTFE以外の1つ又は2つ以上のエチレン性不飽和フッ素化モノマーに由来する繰り返し単位少なくとも1重量%を含む熱可塑性TFEコポリマー(以下、熱可塑性TFEコポリマー)から選択される。TFE以外のフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位のこのようなかなりの量の存在のために、この実施形態のTFEのコポリマーは溶融加工性を有する。
【0088】
この実施形態の熱可塑性TFEコポリマーは一般的に、上に詳述されたような1つ又は2つ以上のモノマー(PFM)に由来する繰り返し単位を含む。
【0089】
これらの実施形態のTFEコポリマーは、前記TFEコポリマーの全ての繰り返し単位に対してモノマー(PFM)に由来する繰り返し単位を有利には高くても30重量%、好ましくは高くても25重量%で含む。
【0090】
上記TFEコポリマーの全ての繰り返し単位に対して、モノマー(PFM)に由来する繰り返し単位を少なくとも1重量%及び高くても25重量%で含む、上に詳述されたようなTFEコポリマーによって良い結果が得られた。
【0091】
これらの実施形態の特定の代替形態によれば、ポリマー(F)は、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)に由来する繰り返し単位、及び任意選択的に一般式CF=CFORf1’(式中、Rf1’は、C~Cパーフルオロアルキルである)に従う少なくとも1つのパーフルオロアルキルビニルエーテルに由来する繰り返し単位を含むTFEコポリマーからなる群から選択される。
【0092】
この代替形態による好ましいポリマー(F)は、テトラフルオロエチレン(TFE)、及び3~15重量%の範囲の量でのヘキサフルオロプロピレン(HFP)、並びに任意選択的に、上で定義された通りの、0.5~3重量%の少なくとも1種のパーフルオロアルキルビニルエーテルに由来する繰り返し単位を含む(好ましくは、それらから本質的になる)、TFEコポリマーの中から選択される。
【0093】
表現「から本質的になる」は、これがポリマーの本質的な特性を変性することなく、前記ポリマー中に少量含まれていることがある、末端鎖、欠陥、不規則性及びモノマー再配列を考慮に入れるべくポリマーの構成成分を定義するために本発明の文脈の中で使用される。
【0094】
そのようなポリマー(F)についての記述は、とりわけ米国特許第4,029,868号明細書(DUPONT)1977年06月14日に、米国特許第5,677,404号明細書(DUPONT)1997年10月14日に、米国特許第5,703,185号明細書(DUPONT)1997年12月30日に、及び米国特許第5,688,885号明細書(DUPONT)1997年11月18日に見出すことができる。
【0095】
この代替形態によるポリマー(F)は、E.I.DuPont de Nemoursから商標TEFLON(登録商標)FEP 9494、6100及び5100で、又はDaikinから(例えばFEP NP-101材料)、又はDyneon LLCから(FEP 6322)商業的に入手可能である。
【0096】
この実施形態内での最良の結果は、テトラフルオロエチレン(TFE)に由来する繰り返し単位と4~12重量%の範囲の量でのヘキサフルオロプロピレン(HFP)に由来する繰り返し単位と、0.5~3重量%の量でのパーフルオロ(エチルビニルエーテル)かパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)かのどちらかに由来する繰り返し単位とを含む(好ましくは、それらから本質的になる)TFEコポリマーで得られた。
【0097】
これらの実施形態の他の代替形態によれば、ポリマー(F)は、上に定義されたような、少なくとも1つのパーフルオロアルキルビニルエーテルに由来する繰り返し単位を含む、及び少なくとも1つのC~Cパーフルオロオレフィンに由来する繰り返し単位を任意選択的にさらに含むTFEコポリマーからなる群から選択される。
【0098】
この第2代替形態内での良好な結果は、上に明記されたような1つ若しくは2つ以上のパーフルオロアルキルビニルエーテルに由来する繰り返し単位を含むTFEコポリマーで得られ;特に良好な結果は、パーフルオロアルキルビニルエーテルが、(式CF=CFOCFの)パーフルオロメチルビニルエーテル、(式CF=CFOCの)パーフルオロエチルビニルエーテル、(式CF=CFOCの)パーフルオロプロピルビニルエーテル及びそれらの混合物であるTFEコポリマーで達成された。
【0099】
特に、この第2代替形態のポリマー(F)は有利には、
(a)パーフルオロメチルビニルエーテルに由来する3~35重量%、好ましくは5~12重量%の繰り返し単位;
(b)パーフルオロメチルビニルエーテルとは異なり、かつ一般式CF=CFORf1’(式中、Rf1’は、C~Cパーフルオロアルキルである)に従うパーフルオロアルキルビニルエーテル及び一般式CF=CFOX01’(式中、X01’は、1つ若しくは複数のエーテル基を有するC~C12パーフルオロオキシアルキルである)に従うパーフルオロ-オキシアルキルビニルエーテルからなる群から選択される1つ若しくは2つ以上のフッ素化コモノマーに由来する0~6重量%の繰り返し単位;好ましくはパーフルオロエチルビニルエーテル及び/又はパーフルオロプロピルビニルエーテルに由来する繰り返し単位;
(c)繰り返し単位(a)、(b)及び(c)の百分率の合計が100重量%に等しいような量での、テトラフルオロエチレンに由来する繰り返し単位
から本質的になるTFEコポリマーである。
【0100】
本発明の組成物のための使用に好適なMFA及びPFAは、HYFLON(登録商標)PFA P及びMシリーズ並びにHYFLON(登録商標)MFAという商品名で、Solvay Specialty Polymers Italy S.p.A.から商業的に入手可能である。
【0101】
本発明の別の代替形態によれば、ポリマー(F)は、有利には
(a)パーフルオロメチルビニルエーテルに由来する0.5~5重量%の繰り返し単位;
(b)パーフルオロメチルビニルエーテルとは異なり、かつ、上に詳述されたような、パーフルオロアルキルビニルエーテル、及び/又は上に詳述されたような、パーフルオロ-オキシアルキルビニルエーテルからなる群から選択される1つ若しくは2つ以上のフッ素化コモノマーに由来する0.4~4.5重量%の繰り返し単位;好ましくは、パーフルオロエチルビニルエーテル及び/又はパーフルオロプロピルビニルエーテルに由来する繰り返し単位;
(c)少なくとも1つのC~Cパーフルオロオレフィンに由来する、好ましくはヘキサフルオロプロピレンに由来する0.5~6重量%の繰り返し単位;並びに
(d)繰り返し単位(a)、(b)、(c)及び(d)の百分率の合計が100重量%に等しいような量での、テトラフルオロエチレンに由来する繰り返し単位
から本質的になるTFEコポリマーである。
【0102】
本発明はさらに、上に詳述されたような組成物(C)を製造する方法に関し、前記方法は、上に詳述されたような、ポリマー(F)、ポリマー(PAEK)及びポリマー(I)を混合する工程を有利には含む。
【0103】
ポリマー(F)、ポリマー(PAEK)及びポリマー(I)の混合は、ドライブレンディングによって達成することができる。それにもかかわらず、製造方法は好ましくは、ポリマー(F)、ポリマー(PAEK)及びポリマー(I)を溶融混練する工程を含むが、ドライブレンディングの工程は溶融混練工程の前に実施されてもよい。
【0104】
作業効率の観点から、本発明の方法は有利には、押出機、一般的に二軸スクリュー押出機によってポリマー(F)、ポリマー(PAEK)及びポリマー(I)を溶融混練する工程を含む。
【0105】
溶融混練温度は好ましくは280℃~420℃である。
【0106】
本発明の組成物(C)は、熱可塑性材料に適用可能な標準技術によって造形製品に加工することができる。
【0107】
したがって、本発明のさらに別の目的は、組成物(C)を溶融状態において加工する工程を含む造形製品の製造方法である。
【0108】
溶融状態において加工する前記工程は、ワイヤ押出成形、圧縮成形、射出成形、溶融カレンダリング、回転成形、熱成形等の、押出成形の少なくとも1つを含んでもよい。
【0109】
それにより造形された製品は、特にワイヤ被覆物及びコーティングなどの、異なったタイプであってもよいが、ポリマー(PAEK)とポリマー(F)との組み合わせられた性質が特に有利である。
【0110】
より具体的には、一次絶縁体として又はケーブル外被として、ワイヤ被覆物を導体の周りに提供するために組成物(C)を使用することができる。
【0111】
この場合、好ましい製造技術は、ワイヤ押出成形、すなわち押出機によって溶融状態の組成物(C)をワイヤ又は2つ以上のワイヤのアセンブリから製造されるコア上に押し出す技術である。
【0112】
本発明はさらに、上で詳述された通りの組成物(C)を含む構成要素を含むケーブルに関する。
【0113】
組成物(C)から作られる前記構成要素は、ジャケット、一次絶縁被覆物を含んでもよく、種々の下位構成要素、例えば、シールドテープ、強度部材、クロスウェブ、フィルム、バッファー、セパレータ、引出しコード、サブジャケット、この業界で周知の全てを含んでもよく、これらのいずれか1つ以上は、本発明の組成物(C)から作られていてもよく、又はそうでなければそれを含んでもよい。
【0114】
好ましくは、本発明のケーブルは、上で詳述された通りの組成物(C)から作られた一次絶縁被覆物及びジャケットからなる群から選択される少なくとも1つの構成要素を備える。
【0115】
本発明による好ましいケーブルは、絶縁ワイヤ、通信ケーブル、及び光ケーブルである。
【0116】
図1は、本発明の第1の実施形態による、組成物(C)から作られた一次絶縁被覆物を備える絶縁ケーブルの断面図である。図1の絶縁ワイヤ(3)は、本発明の組成物(C)から作られた一次絶縁被覆物(2)により囲まれた、光ファイバー(1)、又は一般にアルミニウム若しくは銅、好ましくは銅の金属導体ワイヤ(1)からなる。この実施形態の好ましいケーブルは、金属導体ワイヤからなる絶縁ワイヤである。
【0117】
一次絶縁被覆物(2)は、有利には、クロスヘッドアセンブリと、中心の導体ワイヤ又は光ファイバー上のコーティングの均一性を最大化するように設計された流路が入っている先端部及びダイ構成とを含む管(半管を含む)技術を使用して、組成物(C)を押し出すことによって得ることができる。本発明の組成物(C)の管は、有利には、導体ワイヤ又は光ファイバーの周りに押し出され、それらから間隔を空けられ、前記管は、有利には、組成物(C)の厚さが、それが導体ワイヤ又は光ファイバーと接触する前に減少させ又は引き下げられるように押し出される。有利には導体ワイヤ又は光ファイバーと、管の形態下で押し出される組成物(C)との間に真空が与えられ、それにより、大気圧が組成物(C)の前記押し出された管を導体ワイヤ又は光ファイバーと接触するように漸進的に加圧するようにさせる。
【0118】
代替として、圧押出し技術による組成物(C)の適用もまた、適切であり得る。圧押出しにおいて、組成物(C)を押出機に供給することができ、そこで導体ワイヤを有利にはクロスヘッドダイ内で溶融組成物(C)と接触させて、導体ワイヤ又は光学繊維上に直接にコーティングを形成する。この実施形態によれば、組成物(C)の予備形成管は押し出されない。
【0119】
図2は、本発明の第2の実施形態による通信ケーブル(7)の、一部切り欠き側面図である。図2に示される本発明の電気ケーブル実施形態は一般的に、複数の単一電気導体を含み、それはそれぞれ、導体ワイヤ(1)と、それらが互いに電気絶縁されるように一次絶縁被覆物(2)とを含む。前記ワイヤの対は、一般に束(5)にねじられ、いくつかの束は、ジャケット(4)により一緒に保持される。ジャケット(4)と一次絶縁被覆物(2)との両方は、上で詳述された通りの組成物(C)を含み得る。
【0120】
ジャケット(4)は、一次絶縁被覆物について上に記載された通りに、管押出し技術又は圧力押出し技術によりのいずれかで、押出しによって同様に形成することができ、この実施形態において、導体ワイヤ又は光ファイバーは、絶縁導体若しくは絶縁ファイバー又はそれらのアセンブリで置き換えられることが理解される。
【0121】
通信ケーブルでは、絶縁ワイヤの4対が一般に一緒にねじられ、前記ねじられた対(5)は、典型的にはジャケット(4)により一緒に保持される。
【0122】
ジャケット(4)及び一次絶縁被覆物(2)のいずれか1つ以上は、上で詳述された通りの組成物(C)から作られていることができる。
【0123】
図3は、本発明の第2の実施形態による通信ケーブル(7)のA-A’面(図2参照)に沿った断面図である。リップコード(6)が存在することができる。
【0124】
本発明の別の実施形態によれば、ケーブルは光ケーブルである。本発明による光ケーブルでは、導体ワイヤは、ガラス光ファイバーストランドで置き換えられる。したがって、本発明による光ケーブルの典型的な構造物は、別のガラスストランド又は被覆鋼ワイヤ若しくはコアの周囲に包まれたガラスファイバー光ストランドの複数の群を備え、前記群のそれぞれは一次被覆材料に囲まれており、前記複数の群はジャケットにより囲まれている。この場合も同様に、一次被覆材料及び/又はジャケットは、上で詳述された通りの組成物(C)から作られていることができる。
【0125】
参照により本明細書に組み込まれる任意の特許、特許出願、及び刊行物の開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合は、本記載が優先するものとする。
【実施例0126】
本発明はこれから、その目的が例示的であるにすぎず、本発明の範囲を限定することを意図されない、以下の実施例に関連してより詳細に説明される。
【0127】
原材料
ポリマー(PAEK):KETASPIRE(登録商標)KT-880P及びKT-820Pは、Solvay Specialty Polymers USA,LLC.から入手可能な芳香族ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)ポリマーである。
【0128】
ポリマー(F):
Polymist(登録商標)F5A及びXPP-511は、Solvay Specialty Polymers USA,LLCから入手可能なPTFE超微粉末であり、ASTM D3835に従って372℃及び1000s-1で測定されたとき、それぞれ150Pa×sec(F5A)及び1880Pa×sec(XPP-511)の溶融粘度、レーザー光回折によって測定されたとき3.90μm(F5A)及び24.8μm(XPP-511)のd50を有し、約20mmol/kg(F5A)及び約10mmol/kg(XPP-511)のカルボン酸鎖の末端基の量を有する。Hyflon(登録商標)PFA M620、Hyflon(登録商標)PFA P 420は、Solvay Specialty Polymers Italy SPAから入手可能な、溶融加工可能な、TFEとPAVEとのコポリマーである。
【0129】
ポリマー(I):Aquivion(登録商標)SOF PFSPは、Solvay Specialty Polymers Italy SPAから当量=980g/eq(PFSP980)又は790g/eq(PFSP790)を有する粉末の形態で入手可能な、(それらの-SOF形態の)CF=CF-O-CFCF-SOFに由来する繰り返し単位を含むTFEコポリマーである(以下のパラグラフにおいて「Aquivion(登録商標)SOF」として示される)。
【0130】
ジフェニルスルホン(ポリマーグレード)(純度99.8%)は、Proviron社から調達した。
【0131】
安息香酸(銘柄Reagent Plus)、塩化アルミニウム(無水粉末)、アセトン(試薬用)はAldrichから調達した。
【0132】
酸化マグネシウム、Kyowamag MF-150は、日本の協和化学工業株式会社から調達した。
【0133】
実施例1:Aquivion(登録商標)SOF上のグラフト化安息香酸の調製
攪拌機、N送入管、反応媒体中に沈める熱電対を有するClaisenアダプタ、及びKOHスクラバーに接続された冷却器を備えた1000mLの4首反応フラスコ内に375.00gの安息香酸、138.75gのAquivion(登録商標)SOFを導入した。フラスコ内容物を真空下で排気し、次に(10ppm未満のOを含有する)高純度窒素で満たした。反応混合物を次に一定の窒素パージ(60mL/分)下に置いた。
【0134】
反応混合物を180℃までゆっくり加熱した。180℃で、20.96gの塩化アルミニウムを、20分にわたって粉末ディスペンサーによって反応混合物に添加した。添加後に、反応混合物を180℃に5時間維持し、次に反応器の内容物を反応器からSSパンに流し込み、冷却した。固形物を砕き、2mmスクリーンに通してアトリッションミルで摩砕した。アセトン及び水を使用して安息香酸及び残留触媒を混合物から抽出し、NaHPO/NaHPO緩衝液を使用して、そのように得られた固体を中和した。次いで、粉末を12時間真空下にて50℃で乾燥させ、287gの白色粉末を生成した。NaOH中及びKHCO中の逆滴定によるポリマーの分析は、335μeqのカルボン酸含有基[-SO-Φ-COOH]/gポリマーを示し、したがって496μeqのスルホン酸ナトリウム基[-SONa]/gポリマーに相当する。
【0135】
Aquivion(登録商標)SOF PFSP上のグラフト化安息香酸の使用
実施例C1及びE1の組成物を表1に記載し、Leistritz18mm同時回転噛合二軸スクリュー5バレル押出機を使用して配合した。押出機バレルを供給部に284℃で維持し、その後に、バレル温度を390℃まで上昇させた。それぞれのブレンドの溶融温度はハンドヘルドプローブによって得られ、395~410℃の間であった。真空脱気をバレル部に4つ設け、25mmHgに維持して、残留湿気及び揮発物を除去した。溶融押出物を試験用にストランドにし、ペレット化するか、又は後で射出成形によって加工した。
【0136】
少なくとも2時間150℃において25mmHg超の真空で材料を乾燥させた後に射出成形を実施した。Miniature Plastic Molding Mini-Jectorを使用して、相当するASTM試験方法に適合する試験タイプI試料を成形した。370~380℃のバレル温度及び約190℃の金型温度が材料を加工するために使用された。
【0137】
表1のデータは、安息香酸でグラフトされたAquivion(登録商標)SOFが、高配合PTFE/PEEKブレンドにおいて利用されるときの機械的性能の改良を示す。具体的には、対照材料についての6.5%と比較して12%の破断点引張歪によって示されるように、配合物の延性は改良される。試験は、ASTM D638に従って2インチ/分で実施された。
【0138】
【0139】
実施例C2~E3:Aquivion(登録商標)SOFマスターバッチ方法を使用する組成物の調製
先述のLeistritz18mm押出機を使用して表2の実施例C2~E3を組み合わせた。PEEK/フルオロポリマーブレンドを調製する前に、先述したのと同様な配合条件に従ってPEEK/Aquivion(登録商標)SOF(当量=980g/eqを有するポリマー粉末)のマスターバッチを0.3pphの酸化マグネシウムと80/20wt/wtの比で配合した。マスターバッチは、表2に含まれる記載した比で利用され、そこでPEEKの重量パーセント組成は一定に保持される。射出成形及び試験を先述のように実施した。さらに、衝撃試験をASTM D256に従って実施した。
【0140】
表2は、マスターバッチ方法によってAquivion(登録商標)SOFを利用するときの改良を示す。ここに示される特性は、ノッチ付き衝撃の注目すべき改良以外は同様な引張特性を示す。
【0141】
【0142】
実施例E6~E7:Aquivion(登録商標)SOFを使用して改良された加工性
先述したように表3に記載した作業のためにマスターバッチ方法及び試験をここで再び使用した。前節のものと同様なプロセスをここで使用したが、ただし、より大きな二軸スクリュー押出機、Coperion ZSK26mm同時回転噛合押出機を使用した。溶融物が押出機を出てペレット化される前に26水銀柱ミリメートルの真空で340~360℃の範囲にバレルを設定した。表5において使用されたPEEK/Aquivion(登録商標)SOF80/20wt/wtマスターバッチは0.3pphの酸化マグネシウムを含有した。50%PEEK及び50%Hyflon(登録商標)PFA M620の対照群を同時に製造しようとしたが、押出機を出るストランド強度が不十分であるために、材料を集めることができなかった。集める能力、成形する能力、及びAquivion(登録商標)SOFを含有する試験組成物は、よりよい加工によって相溶性の改良を示す。
【0143】
【0144】
実施例C4~C6:PTFEの選択
表5の以下のデータは、先述のようなLeistritz18mm押出機及びMini-Jector成形機を使用して集められた。表5に使用される80/20wt/wtマスターバッチは、0.3pphの酸化マグネシウムを含有した。表4のデータは、PEEKと高流動性PTFE(F5A)及び相溶化剤としてAquivion(登録商標)SOFマスターバッチとの組み合わせによって最適な特性が得られることを示す。より低流動性のPTFE(XPP-511)を使用して得られた材料は、より低い強度及び延性(破断点伸び)を示す。誘電率は、射出成形によって得られた厚さ3mmの試料上で非接触電極を使用してASTM D150-98に従って10kHzで測定された。以下に要約されたデータは、相溶化において有効でありながら、式-SOFの極性部分を含む、有効量のAquivion(登録商標)SOFを導入することは、配合物の有利な誘電性能全体に有害なまでに影響を与えることはないことをよく示す。
【0145】
【0146】
実施例C7~E10:PEEKの粘度及びPTFEの配合
実施例C7~E9(表5)及びC8~E10(表6)は、Leistritz18mm二軸スクリュー押出機、Mini-Jector射出成形機、及び先述のような.試験方法を利用して調製された。ここでマスターバッチは、52wt%のKT-820、28wt%のKT-880、20wt%のAquivion(登録商標)SOF(当量=980g/eqを有するポリマー粉末)、及び0.3pphの酸化マグネシウムを含有した。比較試料C7は、Aquivion(登録商標)SOFを含有するE9よりも、引張試験から低い強度、弾性率、及び破断歪を示す。表6は、30wt%PTFE70wt%PEEK組成物の改良された衝撃性能を示す。
【0147】
【0148】
【0149】
実施例C9~E11:PEEK粘度及びPTFEの配合
実施例C9及びE11(表7)は、Leistritz18mm二軸スクリュー押出機、Mini-Jector射出成形機、及び先述のような試験方法を利用して調製された。この場合、成形品を2時間200℃の強制空気循環炉内でアニールした。使用されたマスターバッチは、80wt%のKT-820、20wt%のAquivion(登録商標)SOF(当量=980g/eqを有するポリマー粉末)、及び0.3pphの酸化マグネシウムを含有した。比較試料C9は、Aquivion(登録商標)SOFを含有するE11と比較してより低い破断点引張歪及びノッチ付き衝撃性能を示す。さらに、アニーリング工程は、完全に結晶化されていない材料の不自然に高い破断点引張歪又はノッチ付き衝撃性能の可能性を取り除く。アニーリング後の高い破断点引張歪及びノッチ付き衝撃性能の維持は、Aquivion(登録商標)SOFの導入によってさらにもっと改良される。また、前にすでに示したのと同様に、Aquivion(登録商標)SOFポリマーを含有することは誘電率に影響を与えなかった。
【0150】
図1
図2
図3
【外国語明細書】