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特開2023-106423銀粒子、銀粒子の製造方法、ペースト組成物及び半導体装置並びに電気・電子部品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023106423
(43)【公開日】2023-08-01
(54)【発明の名称】銀粒子、銀粒子の製造方法、ペースト組成物及び半導体装置並びに電気・電子部品
(51)【国際特許分類】
   B22F 1/00 20220101AFI20230725BHJP
   B22F 1/054 20220101ALI20230725BHJP
   B22F 1/17 20220101ALI20230725BHJP
   B22F 9/24 20060101ALI20230725BHJP
   B22F 9/08 20060101ALI20230725BHJP
   B22F 1/05 20220101ALI20230725BHJP
   B82Y 30/00 20110101ALI20230725BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20230725BHJP
【FI】
B22F1/00 K
B22F1/054
B22F1/17
B22F9/24 E
B22F9/08 A
B22F9/24 F
B22F1/05
B82Y30/00
B82Y40/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074142
(22)【出願日】2023-04-28
(62)【分割の表示】P 2021542701の分割
【原出願日】2020-08-07
(31)【優先権主張番号】P 2019153954
(32)【優先日】2019-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】似内 勇哉
(72)【発明者】
【氏名】藤原 正和
(57)【要約】      (修正有)
【課題】銀粉と、当該銀粉よりも小さい一次粒子からなる銀層とを有する銀粒子、該銀粒子の製造方法、および当該銀粒子を含むペースト組成物の提供。
【解決手段】液相還元法により、銀粉の表面にさらに銀層を形成する工程を有する銀粒子を製造する方法により、銀粒子を得ること。および当該銀粒子を含むペースト組成物を得ること。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀粉と、当該銀粉よりも小さい一次粒子からなる銀層とを有する銀粒子。
【請求項2】
タップ密度が4.0~7.0g/cmであり、かつBET法により求めた比表面積が0.5~1.5m/gである請求項1に記載の銀粒子。
【請求項3】
液相還元法により、(A)銀粉の表面にさらに銀層を形成する工程を有する銀粒子の製造方法。
【請求項4】
前記工程において、液相中で(A)銀粉と、(B)銀化合物と、(C)還元性化合物とを混合する請求項3に記載の銀粒子の製造方法。
【請求項5】
前記(A)銀粉が、アトマイズ法、電解法、又は化学還元法により調製されたものである請求項3又は4に記載の銀粒子の製造方法。
【請求項6】
前記(B)銀化合物が、硝酸銀、塩化銀、酢酸銀、シュウ酸銀、及び酸化銀から選ばれる少なくとも1種である請求項4又は5に記載の銀粒子の製造方法。
【請求項7】
前記工程において、さらに(D)有機保護化合物を添加する請求項3~6のいずれかに記載の銀粒子の製造方法。
【請求項8】
前記(D)有機保護化合物が、カルボン酸、アルキルアミン、及びカルボン酸アミン塩から選ばれる少なくとも1種である請求項7に記載の銀粒子の製造方法。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の銀粒子を含むペースト組成物。
【請求項10】
請求項9に記載のペースト組成物を用いて接合されてなる半導体装置。
【請求項11】
請求項9に記載のペースト組成物を用いて接合されてなる電気・電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、銀粒子、銀粒子の製造方法、ペースト組成物及び半導体装置並びに電気・電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子の高効率化が進められており、それに伴い半導体素子の発熱量増加および駆動温度が上昇している。また、高温下での信頼性および放熱性が接合材に求められている。接合材の候補としては、従来から使用されている、はんだおよび銀ペーストが挙げられるが、信頼性および放熱性の不足により対応不可であり、高温動作に適合した接合方法の提供が切望されている。例えば、特許文献1には、低温焼成によって優れた導電性が発現する銀ナノ粒子を用いた銀シンタリング(焼結)ペーストが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-142173号公報
【発明の概要】
【0004】
すなわち、本願開示は、以下に関する。
[1]銀粉と、当該銀粉よりも小さい一次粒子からなる銀層とを有する銀粒子。
[2]液相還元法により、(A)銀粉の表面にさらに銀層を形成する工程を有する銀粒子の製造方法。
[3]上記[1]又は[2]に記載の銀粒子を含むペースト組成物。
[4]上記[3]に記載のペースト組成物を用いて接合されてなる半導体装置。
[5]上記[3]に記載のペースト組成物を用いて接合されてなる電気・電子部品。
【発明を実施するための形態】
【0005】
以下、本開示について、一実施形態を参照しながら詳細に説明する。
なお、本開示において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。
【0006】
<銀粒子>
本実施形態の銀粒子は、銀粉と、当該銀粉よりも小さい一次粒子からなる銀層とを有する。
上記銀粒子の母体を構成する銀粉は、特に限定されず、例えば、アトマイズ法、電解法、化学還元法、粉砕法/搗砕法、プラズマ回転電極法、均一液滴噴霧法、熱処理法等、公知の方法により調製されたものを用いることができる。上記銀粉は、粒子径および粒子形状制御の観点から、アトマイズ法、電解法、又は化学還元法により調製されたものであってもよい。
また、市販品を用いることもでき、具体的には、Ag-HWQ(福田金属箔粉工業(株)製、D50=1.8μm、球状)、SL01(三井金属鉱業(株)製、D50=1.23μm、不定形状)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0007】
上記銀粉は、平均粒子径が0.5μm以上30μm以下であってもよく、0.5μmよりも大きく20μm以下であってもよく、1μm以上20μm以下であってもよい。また、形状は特に限定されず、球状、プレート型、フレーク状、鱗片状、樹枝状、ロッド状、ワイヤー状、不定形状等が挙げられる。
なお、上記銀粉の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置等を用いて測定した粒度分布において積算体積が50%となる粒径(50%粒径D50)のことである。
【0008】
上記銀層は、例えば、銀化合物を還元性化合物により還元し、該銀化合物から遊離した銀の一次粒子が凝集することにより形成される。
上記銀化合物としては、硝酸銀、塩化銀、酢酸銀、シュウ酸銀、及び酸化銀から選ばれる少なくとも1種であってもよく、水への溶解度の観点から、硝酸銀、酢酸銀であってもよい。
【0009】
上記還元性化合物は、銀化合物を還元し銀を析出させる還元力を有するものであれば、特に限定されない。
上記還元性化合物としては、例えば、ヒドラジン誘導体が挙げられる。ヒドラジン誘導体としては、例えば、ヒドラジン一水和物、メチルヒドラジン、エチルヒドラジン、n-プロピルヒドラジン、i-プロピルヒドラジン、n-ブチルヒドラジン、i-ブチルヒドラジン、sec-ブチルヒドラジン、t-ブチルヒドラジン、n-ペンチルヒドラジン、i-ペンチルヒドラジン、neo-ペンチルヒドラジン、t-ペンチルヒドラジン、n-ヘキシルヒドラジン、i-ヘキシルヒドラジン、n-ヘプチルヒドラジン、n-オクチルヒドラジン、n-ノニルヒドラジン、n-デシルヒドラジン、n-ウンデシルヒドラジン、n-ドデシルヒドラジン、シクロヘキシルヒドラジン、フェニルヒドラジン、4-メチルフェニルヒドラジン、ベンジルヒドラジン、2-フェニルエチルヒドラジン、2-ヒドラジノエタノール、アセトヒドラジン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0010】
上記一次粒子の平均粒子径は10~100nmであってもよく、10~50nmであってもよく、20~50nmであってもよい。上記一次粒子の平均粒子径が10nm以上であると比表面積が増大し過ぎず、ペーストの作業性を向上させることができ、100nm以下であると焼結性が良好となる。
上記一次粒子の平均粒子径は、集束イオンビーム(FIB)装置で切断した球状の銀粒子の断面を電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM)で観察することにより測定した200個の銀粒子の粒子径を個数平均することにより求めることができる。具体的には実施例に記載の方法により測定することができる。
【0011】
上記銀粒子の平均粒子径は、0.5~5.0μmであってもよく、0.5~3.0μmであってもよく、1.0~3.0μmであってもよい。上記銀粒子の平均粒子径が0.5μm以上であると保存安定性が良好となり、5.0μm以下であると焼結性が良好となる。
上記銀粒子の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定した粒度分布において積算体積が50%となる粒径(50%粒径D50)のことであり、具体的には実施例に記載の方法により測定することができる。
【0012】
上記銀粒子のタップ密度は、4.0~7.0g/cmであってもよく、4.5~7.0g/cmであってもよく、4.5~6.5g/cmであってもよい。上記銀粒子のタップ密度が、4.0g/cm以上であるとペースト中に銀粒子を高充填することができ、7.0g/cm以下であるとペースト中で銀粒子の沈降を低減することができる。
上記銀粒子のタップ密度は、タップ密度測定器を用いて測定することができ、具体的には実施例に記載の方法により測定することができる。
【0013】
上記銀粒子のBET法により求めた比表面積は、0.5~1.5m/gであってもよく、0.5~1.2m/gであってもよく、0.6~1.2m/gであってもよい。上記銀粒子の比表面積が0.5m/g以上であると銀粒子同士の接触を増やすことができ、1.5m/g以下であるとペーストを低粘度化することができる。
上記銀粒子の比表面積は、比表面積測定装置を用いて、窒素吸着によるBET 1点法により測定することができ、具体的には実施例に記載の方法により測定することができる。
【0014】
<銀粒子の製造方法>
本実施形態の銀粒子の製造方法は、液相還元法により、(A)銀粉の表面にさらに銀層を形成する工程(以下、単に銀層形成工程ともいう)を有する。
銀層形成工程では、液相中で(A)銀粉と、(B)銀化合物と、(C)還元性化合物とを混合する。
【0015】
(A)銀粉、(B)銀化合物、及び(C)還元性化合物は、それぞれ上記<銀粒子>の項で説明したものを用いることができる。
【0016】
上記(B)銀化合物は、錯体の安定性の観点から、銀アンミン錯体溶液としてもよい。
銀アンミン錯体溶液は、特に限定されない。一般には、銀化合物をアンモニア水に溶解することで得られるが(例えば、特開2014-181399号公報参照)、銀化合物にアミン化合物を加えた後、アルコールに溶解させて作製してもよい。
【0017】
上記アンモニアの添加量は、(B)銀化合物を含む水溶液中の銀1mol当たり2~50molであってもよく、5~50molであってもよく、10~50molであってもよい。アンモニアの添加量が上記範囲内であると、銀化合物から遊離した銀の一次粒子の平均粒子径を上述の範囲内とすることができる。
【0018】
上記銀アンミン錯体溶液中の銀アンミン錯体を(C)還元性化合物によって還元し、銀粒子含有スラリーを得る。
銀アンミン錯体を(C)還元性化合物によって還元することにより、銀アンミン錯体から銀が遊離し、(A)銀粉の周りに当該銀の一次粒子が凝集した二次粒子を形成し、本実施形態の銀粒子が形成される。
【0019】
銀アンミン錯体中の銀量、(C)還元性化合物の含有量、及び添加する(A)銀粉の平均粒子径を適宜調整することにより、上記一次粒子の凝集を制御することができ、得られる二次粒子(銀粒子)の平均粒子径を上述の範囲内とすることができる。
【0020】
(C)還元性化合物の含有量は、銀アンミン錯体中の銀1mol当たり0.25~20molであってもよく、0.25~10molであってもよく、1.0~5.0molであってもよい。
【0021】
さらに、銀アンミン錯体を還元する際の銀アンミン錯体溶液の温度は30℃未満であってもよく、0~20℃であってもよい。銀アンミン錯体溶液の温度がこの範囲にあれば、上記一次粒子の凝集を制御することができるとともに、得られる二次粒子の平均粒子径を上述の範囲内とすることができる。
【0022】
上述のようにして得られた銀粒子含有スラリーに、さらに(D)有機保護化合物を添加することで、上記銀粒子含有スラリー中の銀粒子に保護基を導入することができる。
(D)有機保護化合物としては、例えば、カルボン酸、アルキルアミン、カルボン酸アミン塩、アミド等が挙げられる。(D)有機保護化合物は、粒子の安定性の観点から、カルボン酸、アルキルアミン、及びカルボン酸アミン塩から選ばれる少なくとも1種であってもよく、分散性を高める観点から、カルボン酸であってもよい。
カルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、カプリル酸、オクチル酸、ノナン酸、カプリン酸、オレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸等のモノカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ジグリコール酸等のジカルボン酸;安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、サリチル酸、没食子酸等の芳香族カルボン酸;グリコール酸、乳酸、タルトロン酸、リンゴ酸、グリセリン酸、ヒドロキシ酪酸、酒石酸、クエン酸、イソクエン酸等のヒドロキシ酸等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
(D)有機保護化合物の配合量は、銀粒子1molに対し、1~20mmolであってもよく、1~10mmolであってもよく、1~5mmolであってもよい。有機保護化合物の配合量が1mmol以上であると銀粒子が樹脂中に分散することができ、20mmol以下であると銀粒子が焼結性を損なわず、樹脂中に分散することができる。
【0024】
(混合物の形成)
反応容器中に、(A)銀粉、(B)銀化合物、及び(C)還元性化合物、さらに必要に応じて(D)有機保護化合物を混合する。これらの化合物の混合の順番は特に限定されず、上記化合物をどのような順番で混合しても構わない。
【0025】
本実施形態の銀粒子の製造方法により得られる銀粒子は、銀粉の表面にナノサイズの銀の一次粒子が凝集した二次粒子であることにより、上記銀の一次粒子の表面が有する高活性を維持し、低温で二次粒子同士の焼結性(自己焼結性)を有する。また、銀粒子同士の焼結と、銀粒子及び接合部材の焼結とが並行して進む。そのため、上記銀粒子を用いることにより、熱伝導性及び接着特性に優れたペースト組成物を得ることができる。
【0026】
<ペースト組成物>
本実施形態のペースト組成物は、上述の銀粒子を含む。したがって、本実施形態のペースト組成物は、低粘度で分散性が良好であり、接着特性及び熱伝導性に優れ、かつ体積収縮が小さく低応力性に優れた硬化物を得ることができる。本実施形態のペースト組成物は、素子接着用ダイアタッチ材料、放熱部材接着用材料等として用いることができる。
【0027】
本実施形態のペースト組成物は、熱硬化性樹脂を含むことで、適度な粘度を有する接着材料(ペースト)とすることができる。
熱硬化性樹脂は、一般に接着剤用途として使用される熱硬化性樹脂であれば特に限定されずに使用できる。上記熱硬化性樹脂は、液状樹脂であってもよく、室温(25℃)で液状である樹脂であってもよい。上記熱硬化性樹脂としては、シアネート樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂及びマレイミド樹脂から選ばれる少なくとも1種であってもよい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
シアネート樹脂は、分子内に-NCO基を有する化合物であり、加熱により-NCO基が反応することで3次元的網目構造を形成し、硬化する樹脂である。シアネート樹脂としては、具体的には、1,3-ジシアナトベンゼン、1,4-ジシアナトベンゼン、1,3,5-トリシアナトベンゼン、1,3-ジシアナトナフタレン、1,4-ジシアナトナフタレン、1,6-ジシアナトナフタレン、1,8-ジシアナトナフタレン、2,6-ジシアナトナフタレン、2,7-ジシアナトナフタレン、1,3,6-トリシアナトナフタレン、4,4’-ジシアナトビフェニル、ビス(4-シアナトフェニル)メタン、ビス(3,5-ジメチル-4-シアナトフェニル)メタン、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-シアナトフェニル)プロパン、ビス(4-シアナトフェニル)エーテル、ビス(4-シアナトフェニル)チオエーテル、ビス(4-シアナトフェニル)スルホン、トリス(4-シアナトフェニル)ホスファイト、トリス(4-シアナトフェニル)ホスフェート、及びノボラック樹脂とハロゲン化シアンとの反応により得られるシアネート類などが挙げられる。また、これらの多官能シアネート樹脂のシアネート基を三量化することによって形成されるトリアジン環を有するプレポリマーも使用できる。当該プレポリマーは、上記の多官能シアネート樹脂モノマーを、例えば、鉱酸、ルイス酸などの酸、ナトリウムアルコラート、第三級アミン類などの塩基、炭酸ナトリウムなどの塩類を触媒として重合させることにより得られる。
【0029】
シアネート樹脂の硬化促進剤としては、一般に公知のものが使用できる。例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、アセチルアセトン鉄などの有機金属錯体;塩化アルミニウム、塩化錫、塩化亜鉛などの金属塩;トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミンなどのアミン類が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの硬化促進剤は1種又は2種以上混合して用いることができる。
【0030】
エポキシ樹脂は、グリシジル基を分子内に1つ以上有する化合物であり、加熱によりグリシジル基が反応することで3次元的網目構造を形成し、硬化する樹脂である。上記エポキシ樹脂は、1分子中にグリシジル基を2つ以上含む化合物であってもよい。これはグリシジル基が1つの化合物のみでは反応させても十分な硬化物特性を示すことができないからである。グリシジル基を1分子中に2つ以上含む化合物は、2つ以上の水酸基を有する化合物をエポキシ化して得ることができる。このような化合物としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビフェノールなどのビスフェノール化合物又はこれらの誘導体、水素添加ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールF、水素添加ビフェノール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジエタノールなどの脂環構造を有するジオール又はこれらの誘導体、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオールなどの脂肪族ジオール又はこれらの誘導体などをエポキシ化した2官能のもの;トリヒドロキシフェニルメタン骨格、アミノフェノール骨格を有する化合物などをエポキシ化した3官能のもの;フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂などをエポキシ化した多官能のものなどが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
また、上記エポキシ樹脂は、ペースト組成物として室温(25℃)でペースト状とするため、単独で又は混合物として室温(25℃)で液状のものであってもよい。通常行われるように反応性希釈剤を使用することも可能である。反応性希釈剤としては、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテルなどの1官能の芳香族グリシジルエーテル類、脂肪族グリシジルエーテル類などが挙げられる。
【0031】
エポキシ樹脂の硬化剤としては、例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン、ジシアンジアミド、ジヒドラジド化合物、酸無水物、フェノール樹脂などが挙げられる。ジヒドラジド化合物としては、アジピン酸ジヒドラジド、ドデカン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、p-オキシ安息香酸ジヒドラジドなどのカルボン酸ジヒドラジドなどが挙げられる。酸無水物としては、フタル酸無水物、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、無水マレイン酸とポリブタジエンの反応物、無水マレイン酸とスチレンの共重合体などが挙げられる。
【0032】
さらに、硬化を促進するために硬化促進剤を配合することができる。エポキシ樹脂の硬化促進剤としては、イミダゾール類、トリフェニルホスフィン又はテトラフェニルホスフィン及びそれらの塩類、ジアザビシクロウンデセンなどのアミン系化合物及びその塩類などが挙げられる。上記硬化促進剤は、例えば、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-C1123-イミダゾール、2-メチルイミダゾールと2,4-ジアミノ-6-ビニルトリアジンとの付加物などのイミダゾール化合物であってもよく、融点が180℃以上のイミダゾール化合物であってもよい。
【0033】
アクリル樹脂としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,2-シクロヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,3-シクロヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,2-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、1,3-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、1,2-シクロヘキサンジエタノールモノ(メタ)アクリレート、1,3-シクロヘキサンジエタノールモノ(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジエタノールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレートなどの水酸基を有する(メタ)アクリレート及びこれら水酸基を有する(メタ)アクリレートとジカルボン酸又はその誘導体とを反応させて得られるカルボキシ基を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。ここで使用可能なジカルボン酸としては、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸及びこれらの誘導体等が挙げられる。
【0034】
また、アクリル樹脂としては、分子量が100~10,000のポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレートで(メタ)アクリル基を有する化合物;ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート;ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0035】
マレイミド樹脂は、1分子内にマレイミド基を1つ以上含む化合物であり、加熱によりマレイミド基が反応することで3次元的網目構造を形成し、硬化する樹脂である。マレイミド樹脂としては、例えば、N,N’-(4,4’-ジフェニルメタン)ビスマレイミド、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパンなどのビスマレイミド樹脂が挙げられる。マレイミド樹脂は、ダイマー酸ジアミンと無水マレイン酸との反応により得られる化合物;マレイミド酢酸、マレイミドカプロン酸といったマレイミド化アミノ酸とポリオールとの反応により得られる化合物であってもよい。上記マレイミド化アミノ酸は、無水マレイン酸とアミノ酢酸又はアミノカプロン酸とを反応させることで得られる。上記ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリ(メタ)アクリレートポリオールであってもよく、芳香族環を含まないものであってもよい。
【0036】
熱硬化性樹脂の含有量は、銀粒子100質量部に対し、1~20質量部であってもよく、5~18質量部であってもよい。熱硬化性樹脂が1質量部以上であると熱硬化性樹脂による接着性を十分に得ることができ、熱硬化性樹脂が20質量部以下であると銀成分の割合が低下するのを制御し、高熱伝導性を十分に確保することができ、熱放散性を向上させることができる。また、有機成分が多くなり過ぎず、光及び熱による劣化を抑え、その結果、発光装置の寿命を高めることができる。
【0037】
本実施形態のペースト組成物は、作業性の観点から、さらに希釈剤を含有してもよい。希釈剤としては、例えば、ブチルカルビトール、酢酸セロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジアセトンアルコール、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、γ-ブチロラクトン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、3,5-ジメチル-1-アダマンタンアミン(DMA)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
本実施形態のペースト組成物が、希釈剤を含有する場合、その含有量は、銀粒子100質量部に対し、3~20質量部であってもよく、4~15質量部であってもよく、4~10質量部であってもよい。希釈剤の含有量が、3質量部以上であると希釈による低粘度化することができ、20質量部以下であると本実施形態のペースト組成物を硬化させる際のボイドの発生が制御される。
【0039】
本実施形態のペースト組成物は、以上の各成分の他、この種の組成物に一般に配合される、硬化促進剤;ゴム、シリコーン等の低応力化剤;カップリング剤;消泡剤;界面活性剤;顔料、染料等の着色剤;重合開始剤;各種重合禁止剤;酸化防止剤;溶剤;その他の各種添加剤を、必要に応じて含有することができる。これらの各添加剤はいずれも1種を使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0040】
本実施形態のペースト組成物は、上述した銀粒子、必要に応じて含有される熱硬化性樹脂、希釈剤及び各種添加剤を十分に混合した後、さらにディスパース、ニーダー、3本ロールミル等により混練処理を行い、次いで、脱泡することにより調製することができる。
【0041】
本実施形態のペースト組成物の硬化物の熱伝導率は、35W/m・K以上であってもよく、40W/m・K以上であってもよい。
上記熱伝導率は実施例に記載の方法により測定することができる。
【0042】
本実施形態のペースト組成物の粘度は、70~200Pa・sであってもよく、100~200Pa・sであってもよい。
上記粘度は、E型粘度計(3°コーン)を使用し、25℃で測定した値とする。具体的には実施例に記載の方法により測定することができる。
【0043】
<半導体装置及び電気・電子部品>
本実施形態の半導体装置及び電気・電子部品は、上述のペースト組成物用いて接合されてなることから、信頼性に優れる。
【0044】
本実施形態の半導体装置は、上述のペースト組成物を用いて、半導体素子を素子支持部材となる基板上に接着してなるものである。すなわち、ここでペースト組成物はダイアタッチ材料として使用され、このダイアタッチ材料を介して半導体素子と基板とが接着し、固定される。
【0045】
ここで、半導体素子は、公知の半導体素子であればよく、例えば、トランジスタ、ダイオード等が挙げられる。さらに、上記半導体素子としては、LED等の発光素子が挙げられる。また、発光素子の種類は特に制限されるものではなく、例えば、MOBVC法等によって基板上にInN、AlN、GaN、InGaN、AlGaN、InGaAlN等の窒化物半導体を発光層として形成させたものが挙げられる。
また、素子支持部材としては、銅、銅メッキ銅、PPF(プリプレーティングリードフレーム)、ガラスエポキシ、セラミックス等の材料で形成された支持部材が挙げられる。
【0046】
上記ダイアタッチ材料を用いることで、半導体素子は金属メッキ処理されていない基材にも接合できる。このようにして得られた半導体装置は、実装後の温度サイクルに対する接続信頼性が従来に比べ飛躍的に向上したものとなる。また、電気抵抗値が十分小さく経時変化が少ないため、長時間の駆動でも出力の経時的減少が少なく長寿命であるという利点がある。
【0047】
また、本実施形態の電気・電子部品は、上述のペースト組成物を用いて、発熱部材に放熱部材を接着してなるものである。すなわち、ここでペースト組成物は放熱部材接着用材料として使用され、当該ペースト組成物を介して放熱部材と発熱部材とが接着し、固定される。
【0048】
発熱部材としては、上記半導体素子又は当該半導体素子を有する部材でもよいし、それ以外の発熱部材でもよい。半導体素子以外の発熱部材としては、光ピックアップ、パワートランジスタ等が挙げられる。また、放熱部材としては、ヒートシンク、ヒートスプレッダー等が挙げられる。
【0049】
このように、発熱部材に上記放熱部材接着用材料を用いて放熱部材を接着することで、発熱部材で発生した熱を放熱部材により効率良く外部へ放出することが可能となり、発熱部材の温度上昇を抑えることができる。なお、発熱部材と放熱部材とは、放熱部材接着用材料を介して直接接着してもよいし、他の熱伝導率の高い部材を間に挟んで間接的に接着してもよい。
【実施例0050】
次に実施例により、本開示を具体的に説明するが、本開示は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0051】
(銀粒子の製造)
[合成例1]
40gの硝酸銀(東洋化学工業(株)製)を10Lのイオン交換水に溶解させ、硝酸銀水溶液を調製し、これに濃度26質量%のアンモニア水203mLを添加して撹拌することにより銀アンミン錯体水溶液を得た。この水溶液に銀粉(製品名:Ag-HWQ 1.5μm、福田金属箔粉工業(株)製、平均粒子径:1.8μm)50gを投入し、銀粉分散銀アンミン錯体水溶液とした。これを液温10℃とし、撹拌しながら20質量%のヒドラジン一水和物水溶液(林純薬工業(株)製)28mLを60秒間かけて滴下し、銀粉の表面に銀を析出させ、銀粒子含有スラリーを得た。このスラリー中に、銀量に対して1質量%のオレイン酸(東京化成工業(株)製)を加え10分間撹拌した。このスラリーを濾過し、濾物を水洗、メタノール洗浄を行い、60℃、24時間真空雰囲気で乾燥して銀粒子1を得た。
なお、得られた銀粒子1の断面を電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM)(JEOL社製のJSM-6700F)で観察したところ、当該銀粒子1は、銀粉の周りに銀が凝集し、当該銀粉の表面に銀層が形成されていることを確認した。また、銀層を形成する銀の一次粒子の平均粒子径は20nm、当該一次粒子が凝集した二次粒子の平均粒子径は1.9μmであり、得られた銀粒子1のタップ密度は5.7g/cm、比表面積は1.0m/gであった。
【0052】
[合成例2]
40gの硝酸銀(東洋化学工業(株)製)を10Lのイオン交換水に溶解させ、硝酸銀水溶液を調製し、これに濃度26質量%のアンモニア水203mLを添加して撹拌することにより銀アンミン錯体水溶液を得た。この水溶液に銀粉(製品名:AgS1.0、(株)徳力本店製、平均粒子径:1.59μm)50gを投入し、銀粉分散銀アンミン錯体水溶液とした。これを液温10℃とし、撹拌しながら20質量%のヒドラジン一水和物水溶液(林純薬工業(株)製)28mLを60秒間かけて滴下し、銀粉の表面に銀を析出させ、銀粒子含有スラリーを得た。このスラリー中に、銀量に対して1質量%のオレイン酸(東京化成工業(株)製)を加え10分間撹拌した。このスラリーを濾過し、濾物を水洗、メタノール洗浄を行い、60℃、24時間真空雰囲気で乾燥して、銀粒子2を得た。
【0053】
[合成例3]
40gの硝酸銀(東洋化学工業(株)製)を10Lのイオン交換水に溶解させ、硝酸銀水溶液を調製し、これに濃度26質量%のアンモニア水203mLを添加して撹拌することにより銀アンミン錯体水溶液を得た。この水溶液に銀粉(製品名:AgS2.0、(株)徳力本店製、平均粒子径:2.45μm)50gを投入し、銀粉分散銀アンミン錯体水溶液とした。これを液温10℃とし、撹拌しながら20質量%のヒドラジン一水和物水溶液(林純薬工業(株)製)28mLを60秒間かけて滴下し、銀粉の表面に銀を析出させ、銀粒子含有スラリーを得た。このスラリー中に、銀量に対して1質量%のオレイン酸(東京化成工業(株)製)を加え10分間撹拌した。このスラリーを濾過し、濾物を水洗、メタノール洗浄を行い、60℃、24時間真空雰囲気で乾燥して、銀粒子3を得た。
【0054】
[合成例4]
40gの硝酸銀(東洋化学工業(株)製)を10Lのイオン交換水に溶解させ、硝酸銀水溶液を調製し、これに濃度26質量%のアンモニア水203mLを添加して撹拌することにより銀アンミン錯体水溶液を得た。この水溶液に銀粉(製品名:AgS1.0、(株)徳力本店製、平均粒子径:1.59μm)50gを投入し、銀粉分散銀アンミン錯体水溶液とした。これを液温10℃とし、撹拌しながら20質量%のヒドラジン一水和物水溶液(林純薬工業(株)製)20mLを60秒間かけて滴下し、銀粉の表面に銀を析出させ、銀粒子含有スラリーを得た。このスラリー中に、銀量に対して1質量%のオレイン酸(東京化成工業(株)製)を加え10分間撹拌した。このスラリーを濾過し、濾物を水洗、メタノール洗浄を行い、60℃、24時間真空雰囲気で乾燥して、銀粒子4を得た。
【0055】
合成例1~4で得られた銀粒子1~4について下記の方法で評価した。その結果を表1に示す。
【0056】
[一次粒子の平均粒子径]
一次粒子の平均粒子径の測定には、上記各合成例で得られた銀アンミン錯体水溶液1020mLに20質量%のヒドラジン一水和物水溶液2.8mLを60秒間かけて滴下して、固液分離し、得られた固形物を純水で洗浄し、60℃、24時間真空雰囲気で乾燥して得られた銀粒子を用いた。
一次粒子の平均粒子径は、集束イオンビーム(FIB)装置(JEOL社製のJEM-9310FIB)で切断した球状の銀粒子の断面を電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM)(JEOL社製のJSM-6700F)で観察することにより測定した200個の銀粒子の粒子径を個数平均することにより求めた。
【0057】
[二次粒子の平均粒子径]
二次粒子の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置((株)島津製作所製、商品名:SALAD-7500nano)を用いて測定した粒度分布において積算体積が50%となる粒径(50%粒径D50)から求めた。
【0058】
[タップ密度]
タップ密度(TD)は、タップ密度測定器(Tap-Pak Volumeter、Thermo Scientific社製)にて、振動させた容器内の銀粒子の単位体積当たりの質量(単位:g/cm)として測定した。
【0059】
[比表面積]
比表面積は、60℃で10分間脱気した後、比表面積測定装置(モノソーブ、カンタクローム(Quanta Chrome)社製)を用いて、窒素吸着によるBET 1点法により測定した。
【0060】
【表1】
【0061】
[実施例1~9、比較例1~4]
表2の配合に従って各成分を混合し、3本ロールミルで混練し、ペースト組成物を得た。得られたペースト組成物を後述の方法で評価した。その結果を表2に示す。なお、表2中、空欄は配合なしを表す。
実施例及び比較例で用いた表2に記載の各材料は、下記のとおりである。
【0062】
〔銀粒子X〕
・(銀粒子1):合成例1で得られた銀粒子(一次粒子の平均粒子径:20nm、二次粒子の平均粒子径:1.9μm)
・(銀粒子2):合成例2で得られた銀粒子(一次粒子の平均粒子径:20nm、二次粒子の平均粒子径:2.2μm)
・(銀粒子3):合成例3で得られた銀粒子(一次粒子の平均粒子径:20nm、二次粒子の平均粒子径:2.7μm)
・(銀粒子4):合成例4で得られた銀粒子(一次粒子の平均粒子径:30nm、二次粒子の平均粒子径:2.0μm)
【0063】
〔本実施形態の銀粒子の製造方法以外の製造方法により得られた銀粒子(銀粒子Y)〕
・TC-505C((株)徳力本店製、商品名、平均粒子径:1.93μm、タップ密度:6.25g/cm、比表面積:0.65m/g)
・Ag-HWQ 1.5μm(福田金属箔粉工業(株)製、商品名、平均粒子径:1.8μm、タップ密度:3.23g/cm、比表面積:0.5m/g)
・AgC-221PA(福田金属箔粉工業(株)製、商品名、平均粒子径:7.5μm、タップ密度:5.7g/cm、比表面積:0.3m/g)
・DOWA Ag nano powder-1(DOWAエレクトロニクス(株)製、商品名、平均粒子径:20nm)
・DOWA Ag nano powder-2(DOWAエレクトロニクス(株)製、商品名、平均粒子径:60nm)
【0064】
〔熱硬化性樹脂〕
・エポキシ樹脂:(三菱化学(株)製、商品名、YL983U)
・アクリル樹脂(KJケミカルズ(株)製、商品名、HEAA(登録商標))
・ビスフェノールF(本州化学工業(株)製、商品名、ビスフェノールF)
【0065】
〔希釈剤〕
・ブチルカルビトール(東京化成工業(株)製)
【0066】
〔その他の成分〕
・イミダゾール(四国化成工業(株)製、商品名、キュアゾール 2P4MHZ-PW)
・ジクミルパーオキサイド(日本油脂(株)製、商品名、パークミル(登録商標)D)
【0067】
<評価方法>
[熱伝導率]
測定器:LFA-502(京都電子工業(株)製)
測定方法:レーザーフラッシュ法
JIS R 1611-1997に従い、上記測定器を用いて、レーザーフラッシュ法によりペースト組成物の硬化物の熱伝導率を測定した。
【0068】
[体積抵抗率]
ペースト組成物を、ガラス基板(厚み1mm)にスクリーン印刷法により厚みが30μmとなるように塗布し、190℃、60分間で硬化させた。得られた配線を製品名「MCP-T600」(三菱化学(株)製)を用い4端子法にて体積抵抗率を測定した。
【0069】
[粘度]
E型粘度計(東機産業(株)製、製品名:VISCOMETER-TV22、適用コーンプレート型ロータ:3°×R17.65)を用いて、温度25℃、回転数0.5rpmでの値を測定した。
【0070】
[ポットライフ]
25℃の恒温槽内にペースト組成物を放置した時の粘度が初期粘度の1.5倍以上増粘するまでの日数を測定した。
【0071】
[反り]
8mm×8mmの接合面に金蒸着層を設けた裏面金シリコンチップを、ペースト組成物を用いて、表面にAgめっきされた銅基板にマウントし、190℃、60分間で硬化して作製した半導体パッケージのパッケージ反りを室温(25℃)にて測定した。測定装置はシャドウモアレ測定装置(ThermoireAXP:Akrometrix製)を用いて、電子情報技術産業協会規格のJEITA ED-7306に準じて測定した。具体的には、測定領域の基板面の全データの最小二乗法によって算出した仮想平面を基準面とし、その基準面から垂直方向の最大値をAとし、最小値をBとした時の、|A|+|B|の値(Coplanarity)をパッケージ反り値とした。
【0072】
[冷熱サイクル試験]
8mm×8mmの接合面に金蒸着層を設けた裏面金シリコンチップを、ペースト組成物を用いて、表面にAgめっきされた銅フレームにマウントし、190℃、60分間の加熱硬化を行い、半導体パッケージを作製した。当該半導体パッケージに冷熱サイクル処理(-55℃から150℃まで昇温し、次いで、-55℃に冷却する操作を1サイクルとし、これを2000サイクル)を行い、処理後チップの剥離有無を超音波顕微鏡(FineSAT II、(株)日立パワーソリューションズ製)で観察し、下記の基準によって評価した。
(判定基準)
A:剥離なし
C:剥離あり
【0073】
【表2】
【0074】
本開示の銀粒子を含むペースト組成物を用いた実施例1~9は、いずれも低粘度で分散性に優れている。当該ペースト組成物の硬化物は、熱伝導率が高く、反りが少ないことがわかる。また、上記ペースト組成物を用いて得られた半導体パッケージは、いずれも冷熱サイクル試験後にチップの剥離が見られず、優れた接着性を有することがわかる。