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▶ ハニータ レンズ アール.シー.エーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023106458
(43)【公開日】2023-08-01
(54)【発明の名称】多焦点眼内レンズ
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/16 20060101AFI20230725BHJP
   G02C 7/02 20060101ALI20230725BHJP
   G02C 7/00 20060101ALI20230725BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
A61F2/16
G02C7/02
G02C7/00
G02B3/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077732
(22)【出願日】2023-05-10
(62)【分割の表示】P 2021539694の分割
【原出願日】2019-09-12
(31)【優先権主張番号】62/730,769
(32)【優先日】2018-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】521106050
【氏名又は名称】ハニータ レンズ アール.シー.エー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】アッティア,ミカエル
(72)【発明者】
【氏名】ブロッドスカイ,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】カプラン,ナタン
(72)【発明者】
【氏名】グロシンガー,イスラエル
(57)【要約】      (修正有)
【課題】多焦点眼内レンズを提供する。
【解決手段】多焦点眼内レンズ100は、複数の離散した隣接する回折同心リング102を含む少なくとも1つの回折面を含み、リングは、フレネルゾーン(102-1/102-2)に沿って分布している。前記少なくとも1つの回折面は、ほぼ対称的な回折面のトポグラフィを有する径方向位相プロファイル断面と、3つより多い奇数の回折次数と、を有する少なくとも1つの回折面と、回折次数にわたるエネルギー流束の非対称分布と、を含む。
【選択図】図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の離散した隣接する回折同心フレネルゾーンを含む少なくとも1つの回折面を備える多焦点眼内レンズ(IOL)であって、
前記少なくとも1つの回折面は、3つより多くの連続する回折次数にわたるエネルギー流束の非対称分布を生成し、
前記3つより多くの連続する回折次数は、前記多焦点IOLの遠焦点を提供する、前記3つより多くの連続する回折次数のうち最も低い回折次数、前記多焦点IOLの近焦点を提供する、前記3つより多くの連続する回折次数のうち最も高い回折次数、および、前記多焦点IOLの第1の中間焦点を提供する屈折次数0を備える視力生成次数を含み、
前記フレネルゾーンは、第1の回折プロファイルの反復パターンを有する第1のゾーンを備え、
前記第1のゾーンによって生成される3つより多くの連続する回折次数は、前記視力生成次数に加え、第1の抑制された次数から成る抑制された次数を備える、
多焦点IOL。
【請求項2】
前記3つより多くの連続する回折次数は、奇数個の回折次数から成る、請求項1に記載の多焦点IOL。
【請求項3】
前記第1の回折プロファイルは非対称である、請求項1に記載の多焦点IOL。
【請求項4】
前記第1の回折プロファイルは、非対称の二重ピーク形状を有する、請求項1に記載の多焦点IOL。
【請求項5】
前記第1の回折プロファイルは、ほぼ対称的な局所回折面トポグラフィを特徴とする、請求項4に記載の多焦点IOL。
【請求項6】
前記少なくとも1つの回折面は回折ステップを備える、請求項1に記載の多焦点IOL。
【請求項7】
前記回折ステップは、前記多焦点IOLのベース曲率の部分的に内側および部分的に外側にある、請求項6に記載の多焦点IOL。
【請求項8】
前記多焦点IOLの厚さは可変であり、前記多焦点IOLの曲率は前記回折ステップの間に維持される、請求項6に記載の多焦点IOL。
【請求項9】
前記多焦点IOLの厚さは可変であり、前記多焦点IOLの曲率は前記回折ステップの間に可変である、請求項6に記載の多焦点IOL。
【請求項10】
前記多焦点IOLは、前記3つより多くの連続する回折次数において90%よりも大きい効率を有する、請求項2に記載の多焦点IOL。
【請求項11】
前記効率は少なくとも93%である、請求項10に記載の多焦点IOL。
【請求項12】
前記フレネルゾーンは、前記第1のゾーンの周辺にあり、かつ第2の回折プロファイルの反復パターンを有する第2のゾーンをさらに備える、請求項1に記載の多焦点IOL。
【請求項13】
前記第2のゾーンによって生成される3つより多くの連続する回折次数は、前記視力生成次数に加え、前記第1の抑制された次数を備える、請求項12に記載の多焦点IOL。
【請求項14】
前記3つより多くの連続する回折次数は、1つ以上の第2の抑制された次数をさらに備える、請求項13に記載の多焦点IOL。
【請求項15】
前記第2の回折プロファイルは、ほぼ対称的な局所回折面トポグラフィを特徴とする、請求項12に記載の多焦点IOL。
【請求項16】
前記第2のゾーンの回折面トポグラフィの高さは、前記多焦点IOLの中心高さに対して径方向外向きに前進するときに一定に維持される、請求項12に記載の多焦点IOL。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年9月13日に出願された、「MULTIFOCAL INTRAOCULAR LENS」と題する、米国仮特許出願第62/730,769号の優先権の利益を主張し、その内容は参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、概して、多焦点眼内レンズに関し、より具体的には、限定されないが、多焦点、回折、眼内の眼科レンズに関する。
【背景技術】
【0003】
眼内レンズ(IOL)は、白内障または近視の治療の一部として眼に移植されるレンズである。利用可能な多焦点眼内レンズ(IOL)は、多くの場合、視覚機能を回復させることができ、移植後に眼鏡を不要にし、患者の満足度を高めることを可能にする。
【0004】
多焦点IOLは、遠見視力、近視、およびすべての中間距離を補正する。多焦点IOLは、光を異なる焦点に分割することで、光が目に入るときに発生する光の分散による視覚の生理機能を変化させて近見視力を改善する。最新の多焦点IOLは、より生理学的な光の分割を提供し、このようにして、眼鏡への非依在性を最適化し、また患者の視力の質を向上させ、視覚症状を軽減する。
【0005】
関連技術の前述の例およびそれに関連する限定は、例証的であり、排他的ではないことが意図される。関連技術の他の制限は、本明細書を読み、図を検討すれば、当業者には明らかになるであろう。
【発明の概要】
【0006】
以下の実施形態およびその態様は、範囲を限定するものではなく、例示的かつ例証的であることを意味するシステム、ツール、および方法と併せて説明および図示される。
【0007】
本発明のいくつかの実施形態によれば、複数の離散した隣接する回折同心リングを含む少なくとも1つの回折面であって、ほぼ対称的な回折面トポグラフィを有する径方向位相プロファイル断面と、3つより多い奇数の回折次数と、を有する少なくとも1つの回折面を含む多焦点IOLが提供される。いくつかの実施形態では、IOLは、回折次数にわたるエネルギー流束の非対称分布を含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、IOLは、5つの回折次数を含む。いくつかの実施形態では、
回折面が、ステップ間で回折プロファイルを不変に維持するように設計された回折ステップを含み、回折ステップが、IOLのベース曲率の部分的に内側および部分的に外側にある。
いくつかの実施形態では、回折同心リングが、回折プロファイルの反復パターンを含む。いくつかの実施形態では、プロファイルは非対称である。
【0009】
いくつかの実施形態では、回折リングは、単一の回折プロファイルの反復パターンを含む。いくつかの実施形態では、回折リングは、2つの異なる回折プロファイルの反復パターンを含み、その場合、回折リングは、1つの回折プロファイルの反復パターンを有する第1のゾーンから、第2の回折プロファイルの反復パターンを有する第2の周辺ゾーンへの単一の遷移を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、第2の周辺ゾーンの回折面トポグラフィの高さは、IOLの中心高さに対して径方向外向きに前進するときに一定に維持される。いくつかの実施形態では、径方向位相プロファイル断面は、非対称の二重ピーク形状を有する。
【0011】
いくつかの実施形態では、IOLの厚さは可変であり、曲率は維持される。いくつかの実施形態では、IOLの厚さは可変であり、曲率は可変である。
【0012】
上記の例示的な態様および実施形態に加えて、さらなる態様および実施形態は、図を参照することによって、および以下の詳細な説明を検討することによって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
特許または出願ファイルには、カラーで実行された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面(複数可)を有するこの特許または特許出願の公報の複写物は、要求と必要な料金の支払いに応じて、官庁により提供される。
【0014】
例示的な実施形態は、参照図に示されている。図に示されているコンポーネントおよび特徴の寸法は、概して、表示の便宜と明確さのために選択されており、必ずしも縮尺どおりに示されていない。図は以下のとおりである。
【0015】
図1A】多焦点IOLの平面図の簡略図である。
図1B】本発明のいくつかの実施形態による、多焦点IOLの回折面の断面図の簡略図である。
図2A】IOLの一部分の回折面トポグラフィの径方向断面の簡略図である。
図2B図2Aに示す回折面トポグラフィに関連する特定の回折次数にわたるエネルギー流束(パワー)レベルの分布のグラフである。
図3A】IOLの一部分の回折面トポグラフィの径方向断面の簡略図である。
図3B図3Aに示す回折面トポグラフィに関連する特定の回折次数にわたるエネルギー流束(パワー)レベルの分布のグラフである。
図4】本発明のいくつかの例による、2つの径方向位相プロファイルを重ね合わせたグラフである。
図5A】IOLの一部分の回折面トポグラフィの径方向断面の簡略図である。
図5B図5Aに示す回折面トポグラフィに関連する特定の回折次数にわたるエネルギー流束(パワー)レベルの分布のグラフである。
図6】本発明のいくつかの実施形態による、IOLのスルーフォーカス変調伝達関数(MTF)のシミュレーションのグラフである。
図7】は、本発明のいくつかの実施形態による、例示的なレンズの回折部分のプロファイルを示す簡略化されたグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面の図1A図6に示すように、本発明のいくつかの実施形態をよりよく理解するために、最初に、多焦点眼内レンズ(IOL)の構築および動作について言及する。
【0017】
多焦点眼内レンズ(IOL)は、光軸上に1つ、2つ、3つ、またはそれ以上の回折次数または焦点を生成するように設計されているため、画像に関連するオブジェクトが目から対応する距離に位置するときに、各画像の焦点が網膜上に形成される。ほとんどの眼内レンズは、屈折(レンズ)焦点と遠見視力に対応するエネルギー流束(パワー)を有するように設計されていて、つまり、レンズの球面/非球面は、オブジェクトが目から遠視の距離(>5~6メートル)に位置するときに、網膜上に物体の画像の焦点を合わせるように設計されている。ほとんどの二焦点および三重焦点レンズの回折面は、近距離(30~40cm)および中間距離(60~80cm)に追加の焦点を作成する。
【0018】
ほとんどの屈折回折IOLは、同じ一般的な構造、つまり、複数のリングを含むレンズを有し、各リングはリング幅に合わせてスケーリングされた回折プロファイルを有する。回折プロファイルは、各フレネルゾーンの半径に沿って反復される。場合によっては、リングも垂直方向にスケーリングされる(アポダイゼーション)。
【0019】
本発明の一態様によれば、IOLのベース曲率の部分的に内側および部分的に外側にある回折ステップを含むIOLが提供される。いくつかの実施形態では、IOLの厚さは可変であり、曲率は一定である。いくつかの実施形態では、曲率の変化は、ステップ間の球形度の最適化によって生じる。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、球面および非球面を有するIOLが提供される。いくつかの実施形態では、IOLは、眼の光軸に沿って非対称の数のアクティブな回折次数を含む。いくつかの実施形態では、IOLは、眼の光軸上に3つより多い回折次数を含む。いくつかの実施形態では、IOLは、光軸上に5つの回折次数を含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、IOLは、レンズの1つ以上の面上に回折パターンを含む。いくつかの実施形態では、回折パターンは、回折プロファイルの反復パターンを含む。いくつかの実施形態では、プロファイルは非対称である。
【0022】
ここで、図1Aおよび図1B(縮尺通りに描かれていない)を参照すると、図1Aは、本発明のいくつかの実施形態による、多焦点IOLの平面図の簡略図であり、図1Bは、多焦点IOLの回折面の断面図の簡略図である。
【0023】
図1Aに示す例示的な実施形態に示すように、IOL100は、複数の離散した隣接する回折同心セクションまたはリング102を有する回折面を含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、IOL回折面は、IOLのベース曲率の部分的に内側および部分的に外側にある回折ステップを含む。これにより、2つのステップ間で回折状態が変化する。いくつかの実施形態では、IOLの厚さは可変であるが、曲率は維持される。いくつかの実施形態では、曲率の変化は、ステップ間の球形度の最適化によって生じる。
【0025】
説明されている設計の潜在的な利点は次のとおりである。
1.回折ステップの設計は、ステップ間の回折プロファイルを変更しない。これにより、距離のコントラストを失うことなく、近焦点距離に、任意のパワーが加わったより効率的な多焦点IOLを有することが可能になる。
2.回折ステップの設計により、回折にとって理想的な状態である、光線をステップと平行にすることが可能になる。
【0026】
いくつかの実施形態では、リングは、フレネルゾーン(102-1/102-2)に沿って分布している。いくつかの実施形態では、図1Bに示すように、IOL面150トポグラフィは、レンズのタイプに応じて、反復的な三角形の形態、正方形の形態、または放物線の形態を特徴とする。
【0027】
ここで、図2Aを参照すると、これは、IOLの一部分の回折面トポグラフィの径方向断面の簡略図であり、図2Bを参照すると、これは、図2Aに示す回折面トポグラフィに関連する特定の回折次数にわたるエネルギー流束(パワー)レベルの分布のグラフである。
【0028】
図2Aは、同心リングを通る回折面トポグラフィの径方向断面または径方向位相プロファイル200を示す。径方向位相プロファイルの特定の断面は、Gerchberg-Saxton(GS)反復アルゴリズムを使用して生成される。図2Aは、ほぼ対称的な局所回折面トポグラフィを有する非対称の二重ピーク断面を示す径方向位相プロファイル断面の例示的な実施形態を示す。径方向位相プロファイル200は、特定の焦点距離を有する回折レンズのフレネルゾーン(リング)の各々に径方向および放物線状に統合される高さプロファイルに変換される。
【0029】
本開示の著者は、対称局所回折面トポグラフィ関数が、奇数個の回折の回折次数、例えば、1つ、3つ、5つ、7つ、または9つの回折の回折次数、具体的には、3つより多い回折の回折次数と組み合わされると、IOLの全体的な光透過効率を90%以上に向上させ、場合によっては少なくとも93%まで向上させることを知ることに至った。
【0030】
いくつかの実施形態では、IOL100は、光軸上に5つの回折次数を含む。いくつかの実施形態では、回折次数の1つ、例えば、遠見視力焦点距離は、高いエネルギー流束レベルを有する。いくつかの実施形態では、回折次数の1つは完全に抑制されている。いくつかの実施形態では、5つの回折次数または焦点は、以下の5つの回折次数に対応する。すなわち、回折パターンによって生じる回折の回折次数である-2、-1、+1、および+2と、IOLの球面/非球面によって生じる屈折力である単一の次数0である。いくつかの実施形態では、レンズの球面/非球面は、画像化される物体が眼から近見視力(約30~40cm)と遠見視力(数メートル)との間の中間距離に位置するときに網膜に画像の焦点を合わせるように設計される。
【0031】
いくつかの実施形態では、図2Bに示すように、5つの回折次数のうち、回折次数-2は、遠見視力に対応し、最も高いエネルギー流束レベルを有する。いくつかの実施形態では、残りの回折次数のうち、近見視力に対応する回折次数+2が最も高いエネルギー流束レベルを有する。この実施形態では、回折次数-1が抑制されている。
【0032】
ここで、図3Aを参照すると、これは、IOLの一部分の回折面トポグラフィの径方向断面の簡略図であり、図3Bを参照すると、これは、図3Aに示す回折面トポグラフィに関連する特定の回折次数にわたるエネルギー流束レベルの分布のグラフである。
【0033】
図3Aおよび図3Bは、図2Aおよび図2Bに示したものとは異なる設計を示すが、どちらもGerchberg-Saxton(GS)反復アルゴリズムを使用したプロファイル生成と、特定の焦点距離を有する回折レンズのフレネルゾーン(リング)の各々に径方向および放物線状に統合される高さプロファイルへの位相プロファイルの変換という同じ方法を使用して設計されている。
【0034】
図3Aは、同心リングを通る回折面トポグラフィの径方向断面または径方向位相プロファイル300の追加の例を示す。図3Aは、ほぼ対称的な局所回折面トポグラフィを有する非対称の二重ピーク断面を示す径方向位相プロファイルの例示的な実施形態を示す。径方向位相プロファイル300は、特定の焦点距離を有する回折レンズのフレネルゾーン(リング)の各々に径方向および放物線状に統合される高さプロファイルに変換される。
【0035】
いくつかの実施形態では、図3Bに示すように、5つの回折次数のうち、回折次数-2は、遠見視力に対応し、最も高いエネルギー流束レベルを有する。いくつかの実施形態では、残りの回折次数のうち、近見視力に対応する回折次数+2が最も高いエネルギー流束レベルを有し、次数0でのエネルギー流束レベルは、回折次数+1でのエネルギー流束レベルよりも高い。この実施形態では、回折次数-1が抑制されている。
【0036】
図4に示すように、これは、径方向位相プロファイル300を径方向位相プロファイル200に重ね合わせたグラフであるが、本発明のいくつかの例による設計間の位相差を実証する。5つ以上の焦点(例えば、7)でこの手法を使用するときに、回折焦点距離は、遠焦点(回折次数-3)と近焦点(回折次数+3)の位置を決定し、屈折焦点距離(球面)は、中間焦点(次数0)のうちの1つの位置を決定する。図4に示される例示的な実施形態では、径方向位相プロファイル200は、1、0、0.333、0.38、および0.637の位相を含み、径方向位相プロファイル300は、1、0、0.6、0.45、および0.65の位相を含む。いくつかの実施形態では、IOLは、2つのゾーン、つまり、中央ゾーン102-1(図1Aおよび図1B)と周辺ゾーン102-2を含む。いくつかの実施形態では、中央ゾーン102-1の回折パターンはアポダイズされない。いくつかの環境では、周辺ゾーン102-2の回折パターンはアポダイズされない。ゾーン102-2の回折面トポグラフィの高さは一定に維持され、IOLの中心の高さに対して径方向外側に進むときに段階的なステップ高さの減少を有さない。この配置と設計は、開口を増やすと強度分布を変化させ、瞳孔拡張(低強度環境)光で、最適に焦点が合わされていなくても光束を増やすことができるような回折次数で計画されている。
【0037】
この設計の潜在的な利点は、アポダイゼーション設計により100%に近い回折効率が可能になり、したがって、光の損失を最小限に抑えられることである。
【0038】
開口サイズに応じて強度分布を修正する場合、本明細書で使用する手法は、パフォーマンスを向上させるために、眼内レンズの任意の半径またはフレネルゾーンの1つ(またはその近く)で回折パターンを変化させることである。本発明では、設計遷移は半径約1.228mmで発生した。
【0039】
図5Aおよび図5Bに示すように、図5Aは、本発明のいくつかの実施形態による、IOLの周辺ゾーンの同心リングを通る回折面トポグラフィの径方向断面または径方向位相プロファイル500の例を示す。図5Aは、IOL周辺ゾーン102-2での径方向位相プロファイル断面の例示的な実施形態を示し、ほぼ対称的な局所回折面トポグラフィを有する非対称の単一ピーク断面を示す。
【0040】
いくつかの実施形態では、IOL周辺ゾーン102-2での径方向位相プロファイル断面は、ほぼ対称の局所回折面トポグラフィを有する非対称の二重ピーク断面を含む。径方向位相プロファイル500は、特定の焦点距離を有する回折レンズのフレネルゾーン(リング)の各々に径方向および放物線状に統合される高さプロファイルに変換される。
【0041】
いくつかの実施形態では、図5Bに示されるように、流束エネルギーレベルは、-1および+1の2つの抑制された次数で、遠回折次数から近回折次数に低下する。
【0042】
図5Aおよび図5Bに示すソース平面で取得され、設計(半径>1.228mm)で使用される位相は、Gerchberg-Saxton(GS)アルゴリズムで正規化されたターゲット強度[1,0,0.5,0,0.34]を使用して取得される。
【0043】
しかしながら、いくつかの実施形態では、他の回折プロファイル(遷移後)は、3つ以上の焦点に基づく異なる回折設計とすることができ、遠見視力で全エネルギーを有する単焦点設計、または遠見視力および中間での他の焦点もしくは近見視力でエネルギーを有する二焦点設計とすることもできる。
【0044】
また、眼内レンズを微調整するために、回折高さプロファイル全体(IOLゾーン102-1からIOLゾーン102-2への遷移の前後)を調整することができる。図5Aおよび図5Bに示す例示的な実施形態では、遷移前の第1の回折プロファイルは5%増加し、遷移後の第2の回折プロファイルは12%増加した。我々の多焦点IOLは、中間視力に対してゼロ次数に基づいており、使用される回折次数(-2、-1、0、1、2)で90%を超える高い効率を有する。
【0045】
ここで、図6を参照すると、これは、本発明のいくつかの実施形態による、IOLのスルーフォーカス変調伝達関数(MTF)のシミュレーションのグラフである。図5に示す例示的な実施形態に示すように、3つのグラフが、3つのレベルの眼の瞳孔直径について描かれている。すなわち、2mmの瞳孔直径(すなわち、強い光の状態)のグラフ602、4.5mmの瞳孔直径(すなわち、弱い光の状態)のグラフ604、および3mmの瞳孔直径(つまり、通常の光の状態)のグラフ606である。
【0046】
図6に示すグラフは、示されている3つのレベルの環境光すべてでIOLの二相性を提示しているが、環境光のレベルが低下し、瞳孔直径が2mmから4.5mmに変化すると、それに応じて、MTF値は、約22~24.5の視度範囲から、約23~23.75のより狭い視度範囲に制限されるとしても、IOLの遠視範囲でMTF値が増加し、弱い光強度での視力を向上させることができる。
【0047】
図7は、本発明のいくつかの実施形態による、例示的なレンズの回折部分のプロファイルを示す簡略化されたグラフ図である。図7に示されるように、描写された断面プロファイルは、0~3000μMのレンズ半径の一部分に沿って分散された1.5~2.5μMの高さを有する複数のピークを含む非対称の単一ピークトポグラフィを含む。
【0048】
本出願全体を通して、本発明の様々な実施形態は、範囲形式で提示されている場合がある。範囲形式での説明は、単に便宜性および簡潔性のためであり、本発明の範囲への確固たる限定として解釈するべきではないことを理解すべきである。したがって、範囲の説明は、すべての可能な部分範囲ならびにその範囲内の個々の数値を具体的に開示していると見なされるべきである。例えば、1~6などの範囲の説明は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの部分範囲、ならびに、その範囲内の個々の数、例えば、1、2、3、4、5、および6を具体的に開示していると見なされるべきである。これは、範囲の幅に関係なく適用される。
【0049】
本明細書で数値範囲が示される場合は常に、指示範囲内の任意の引用数字(分数または整数)を含むことを意味している。第1の指示数~第2の指示数「の範囲にある/との間の範囲」および第1の指示数「~」第2の指示数の「範囲にある/範囲」という表現は、本明細書では互換的に使用され、第1および第2の指示数ならびにそれらの間のすべての分数と整数の数字を含むことを意味する。
【0050】
本出願の説明および特許請求の範囲において、「備える(comprise)」、「含む(include)」、および「有する(have)」という語、ならびにそれらの形態のそれぞれは、必ずしも、その語が関連付けられ得るリスト内のメンバーに限定されない。さらに、本出願と参照により組み込まれる任意の文書との間に不一致がある場合、本出願が支配することが本明細書によって意図されている。
【0051】
本発明の様々な実施形態の説明は、例示の目的で提示されたが、網羅的であること、または開示された実施形態に限定されることを意図したものではない。説明された実施形態の範囲および趣旨から逸脱することなく、多くの修正および変形が当業者には明らかであろう。本明細書で使用される用語は、実施形態の原理、実際の応用、もしくは市場で見られる技術に対する技術的改善を最もよく説明するために、または当業者以外の人が本明細書で開示される実施形態を理解できるように選択されたものである。

図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6
図7