(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023106485
(43)【公開日】2023-08-01
(54)【発明の名称】抄紙機が製作した孔部上へのセキュリティデバイスの表面適用方法
(51)【国際特許分類】
B42D 25/29 20140101AFI20230725BHJP
B42D 25/40 20140101ALI20230725BHJP
B42D 25/24 20140101ALI20230725BHJP
B42D 25/333 20140101ALI20230725BHJP
B42D 25/324 20140101ALI20230725BHJP
D21H 21/40 20060101ALN20230725BHJP
【FI】
B42D25/29
B42D25/40
B42D25/24
B42D25/333
B42D25/324
D21H21/40
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080271
(22)【出願日】2023-05-15
(62)【分割の表示】P 2020532047の分割
【原出願日】2018-12-14
(31)【優先権主張番号】15/842,142
(32)【優先日】2017-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516166085
【氏名又は名称】クレイン アンド カンパニー、 インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】プレット、キルズ、ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ジェイン、マニッシュ
(72)【発明者】
【氏名】ブリガム、クレイグ、エム.
(57)【要約】 (修正有)
【解決手段】抄紙機により作られた、ソフトエッジ付きの貫通孔111上に適用されるセキュリティデバイス112を有するシート材110、及びシート材110を調製する方法を提供する。貫通孔(複数可)は、抄造する繊維状紙匹に、十分に圧密化される前に形成され、完全に抄造された湿紙匹を成すときに、セキュリティデバイスは、繊維状紙匹上に、好ましくは、抄紙機のクーチロール又は同様の器具において、又はこの近くにおいて貫通孔上に適用される。繊維が移動しないときに、デバイスの下にある領域を更に圧密化し、貫通孔が閉塞する又は遮断される可能性を大幅に低減させる。
【効果】流通シミュレーション試験を受けるときに、紙/セキュリティデバイス界面において最小限の損傷を示した。セキュリティデバイスは、彫刻凹版インキ付着性の許容可能なレベルを示し、紙は、より高い横方向引張強度を有し、対向側面上でさらに少ない透き通しを有する。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維状シート材であって、
対向面、一方の対向面の凹部、及び前記凹部から前記繊維状シート材の対向面を通り延伸する1つ以上の貫通孔を含み、
前記1つ以上の貫通孔はソフトエッジ付き貫通孔であり、
前記繊維状シート材は、
前記凹部の下に配置され、前記1つ以上の貫通孔を囲む繊維状サブ領域、及び前記凹部と前記繊維状サブ領域に接して配置される、直接隣接するバルク領域、
前記凹部において前記1つ以上の貫通孔上に配置されるセキュリティデバイス、ならびに
前記セキュリティデバイスと、前記繊維状サブ領域及び前記バルク領域との間の界面、
を含み、
前記1つ以上の貫通孔を囲む繊維状サブ領域は繊維の不規則な蓄積を備え、繊維が前記貫通孔のソフトエッジ中及び前記貫通孔の開口部に延在し、
前記繊維状サブ領域の繊維は、前記繊維状サブ領域の単位面積当たりの繊維量が少なくとも前記直接隣接するバルク領域の単位面積当たりの繊維量に等しいように、さらに圧密化される、繊維状シート材。
【請求項2】
前記1つ以上のソフトエッジ付き貫通孔は、エッジ領域に特有の不規則さと、4から15ミクロンに及ぶ最大直径または幅と、円形、楕円形、星形、平行四辺形及び台形の形状の群から選択される形状と、のうちの少なくとも1つを有する、請求項1に記載の繊維状シート材。
【請求項3】
前記1つ以上のソフトエッジ付き貫通孔の前記形状は、前記セキュリティデバイスの形状または外郭、又は前記セキュリティデバイスによって表示されるまたは投影される画像の少なくとも1つと一致する、請求項2に記載の繊維状シート材。
【請求項4】
前記セキュリティデバイスは、構造フィルムから形成され、前記セキュリティデバイスは、少なくとも10ミクロンの厚さを有する、請求項1に記載の繊維状シート材。
【請求項5】
前記セキュリティデバイスは、10から75ミクロンに及ぶ厚さを有する、または、
前記セキュリティデバイスは前記繊維状シート材の一方の対向面に対して、-10から25ミクロンに及ぶ厚さの差を有する、
請求項1に記載の繊維状シート材。
【請求項6】
前記繊維状サブ領域の繊維密度は、少なくとも前記直接隣接するバルク領域の繊維密度より高い、
請求項1に記載の繊維状シート材。
【請求項7】
前記セキュリティデバイスは、集束素子のアレイ、及び前記集束素子のアレイの集束素子と光学的に相互作用し、少なくとも1つの合成画像を生成する画像アイコンのアレイを備える、請求項1に記載の繊維状シート材。
【請求項8】
前記セキュリティデバイスは、ストライプまたはパッチを含む、請求項1に記載の繊維状シート材。
【請求項9】
前記セキュリティデバイスは、前記繊維状シート材の上で、または前記繊維状シート材内で少なくとも1つの他の特徴と、前記繊維状シート材の長さ方向または幅方向に沿って位置を合わせ、
前記少なくとも1つの他の特徴は、透かし、印刷された画像、レリーフ構造または別のセキュリティデバイスの少なくとも1つである、請求項1に記載の繊維状シート材。
【請求項10】
セキュリティデバイスの、繊維状シート材の抄造する繊維状紙匹への表面適用方法であって、
製紙中に、1つ以上のソフトエッジ付き貫通孔を前記抄造する繊維状紙匹に形成し、前記1つ以上のソフトエッジ付き貫通孔を囲む繊維状シート材のサブ領域は繊維の不規則な蓄積を備え、繊維が前記貫通孔のソフトエッジ中及び前記貫通孔の開口部に延在し、
製紙中に導入ポイントにおいて前記セキュリティデバイスを、前記抄造する繊維状紙匹中に、または前記抄造する繊維状紙匹上であって、前記1つ以上の貫通孔上に導入することと、
サブ領域の中の単位面積当たりの繊維量が前記繊維状紙匹の少なくとも1つの直接隣接するバルク領域の単位面積当たりの繊維量に等しいように、前記繊維状シート材の前記サブ領域で繊維をさらに圧密化することと、
を備える、方法。
【請求項11】
前記1つ以上のソフトエッジ付き貫通孔は、前記抄造する繊維状紙匹が十分に圧密化されるようになる前の製紙の間であって、前記繊維状紙匹の総重量に基づき水分レベルが98重量%を上回るときに、前記繊維状シート材の前記抄造する繊維状紙匹に形成される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記セキュリティデバイスが導入されるときに、前記繊維状紙匹は、少なくとも前記導入ポイントにおいて十分に圧密化され、前記繊維状紙匹の総重量に基づき水分レベルが98重量%を下回る、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記繊維状紙匹は、十分に圧密化され、前記セキュリティデバイスが前記繊維状シート材に導入されるときに、前記繊維状紙匹の総重量に基づき水分レベルが95重量%を下回る、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記繊維状紙匹の張力を調節することによって、前記セキュリティデバイスの前記繊維状紙匹上または前記繊維状紙匹中への前記導入ポイントは連続して調整されることを含む、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1つの態様において、本発明は、貫通孔を含むシート材に関し、これらの貫通孔に1つ以上のセキュリティデバイスが連結されている。これらのシート材を例示的に使用して、前述された貫通孔を含み、セキュリティデバイスが連結されるセキュリティ書類を形成する。別の態様において、本発明は、また、一般に、このようなシート材を調製する方法、セキュリティ書類を形成する方法、及びセキュリティデバイス(複数可)と貫通孔の結合を通してこれらの書類を保護する手段に関連する。本明細書に記述される貫通孔は、「ソフトエッジ付き」貫通孔を含む。その結果、本発明のさらなる態様は、シート材中に、またはさらに特にセキュリティ書類中にソフトエッジ付き貫通孔を形成する方法も含む。
【背景技術】
【0002】
セキュリティデバイスは、ストライプ、バンド、スレッド、またはリボンのさまざまな形態を非排他的に含み、機密性の高い書類、及び価値の高い書類を保護し、または美化し、これらの書類の真正性を検証するための視覚及び/または機械検出可能な手段を提供するために広範に使用される。これらのセキュリティデバイスは、これらの書類中に完全に埋め込まれる、または部分的に埋め込まれるか、それらの表面上に取り付けられるかのいずれかであることができる。
【0003】
少なくとも部分的に埋め込まれるセキュリティデバイスは、製紙工程のウェットステージ中に、セキュリティデバイスを繊維状紙匹中に導入することによって、抄造する繊維状紙匹に適用されることができる。しかしながら、このステージ中のセキュリティデバイスの繊維状紙匹中への導入は、セキュリティデバイスが埋め込まれ、そして部分的に埋め込まれるのに適しているが、結果として得られるシート材または書類が低下した耐久性(例えば、流通耐久性)の影響を受けやすいことから、表面に適用されたセキュリティデバイスはこれまで非実用的であった。
【0004】
抄造する繊維状紙匹へのセキュリティデバイスの導入のウェットステージ中に、これらの繊維の一部はそれらが繊維状紙匹中にプレスされる場合にセキュリティデバイス周囲に流れるように移動することがわかった。これは、繊維状紙匹と、または結果として得られるシート材もしくは書類の基材と、セキュリティデバイスの相互作用に影響するのに十分である、サブ領域(すなわち、セキュリティデバイスの真下に、またはこれの下に位置している繊維状紙匹の領域)、及びヒンジ領域(すなわち、セキュリティデバイスのエッジまたは側部に接して位置している繊維状紙匹の領域)からの、ある量の繊維の移動をもたらす。サブ領域及びヒンジ領域中の結果として得られる繊維濃度は、少なくとも隣接するバルク領域(複数可)中の繊維濃度を下回る。これは、セキュリティデバイスと、シート材または書類の基材との界面において弱い結合性相互作用をもたらし、特に、セキュリティデバイスの界面で接する表面及び/またはエッジにおいて弱い結合性相互作用をもたらす。結果として得られる書類の使用または流通中に、これらの弱い領域は、セキュリティデバイスと基材との間の界面で接するエッジ沿いのシート材もしくは書類中の裂け目を非常に生じやすい、またはヒンジ作用(すなわち、界面で接するエッジ間の分離した領域)を生成する。さらに、書類は、裏側透き通しを示す傾向にあり、すなわち、繊維状紙匹の一方の側の上に適用されたセキュリティデバイスは、いずれかの結果として得られる繊維状シート材、またはいずれかの結果として得られる書類を繊維状紙匹の対向する側から観察可能であるシャドー作用を生じる。これは、この問題に対処するために裏側カモフラージュコーティングの使用を必要とすることが多い。また、結果として得られるシート材または書類が横方向(cross-direction(CD))引張強度における低下を示すことが観察された。
【0005】
表面に適用されたセキュリティデバイスを得るための1つの代替案は、セキュリティデバイスを完全に形成された繊維状基材の表面に適用することである。しかしながら、完全に形成された繊維状基材への適用は、他の実質的な制限を伴う。例えば、これは、使用されることができるセキュリティデバイスの厚さの範囲を実質的に制限する。一般に、表面適用は、15ミクロン(μm)未満などの、非常に薄いセキュリティデバイスに限定される。結果として得られるシート材上での結果として得られる厚さの差が下流の加工処理に影響することから、より厚いセキュリティデバイスは、少なくとも部分的にこれらのような適用から一般に除外される。本明細書に使用される場合に、用語「厚さの差」は、シート材のバルク領域の上面からセキュリティデバイスの上面までの測定される高さの差を指す。したがって、厚さの差は、正または負である場合がある。例えば、セキュリティデバイスの上面がシート材のバルク領域の上面の高さを下回ったままである場合に、厚さの差は、負である。反対に、セキュリティデバイスの上面がシート材のバルク領域の上面の高さを上回ったままである場合に、厚さの差は、正である。代替に、厚さの差がゼロであることは、セキュリティデバイスの上面がバルク領域の上面と同一平面上にあることを示す。製紙工程のドライステージ中か、適用工程後かのいずれかに導入される、より厚いセキュリティデバイスによって生成される厚さの差により、ATMを通したワインディング、シーティング、スタッキング、断裁及び加工処理などの下流工程は、時間及びコストの点で影響される。有意に、この方式で生成されるスタックは、プレス準備、または印刷準備ができていない。
【0006】
上記を考慮して、厚さにかかわらず表面に適用されたセキュリティデバイスを含む改良されたシート材について、そしてこれらのシート材を製造することができる改善された工程について依然として必要性がある。また、無許可の複製を防止するのに役立ちながら、書類の真正性を立証することが可能である、追加の真正性機能を有するセキュリティ書類を提供する継続した必要性がある。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、シート材、セキュリティ書類、及び製紙のウェットステージ中に抄造する繊維状紙匹にセキュリティデバイスを導入することによる繊維状シート材または書類へのセキュリティデバイスの表面適用方法を提供することによって上記の必要性のうちの少なくとも1つに対処する。1つの実施形態において、セキュリティデバイスは、繊維状紙匹中に形成される1つ以上の「ソフトエッジ付き」貫通孔上に適用される。この実施形態においてセキュリティデバイスは、構造フィルムから調製され、少なくとも約10ミクロンの厚さを有することにより、このデバイスに貫通孔(複数可)にわたる十分な耐久性を提供する。用語「「ソフトエッジ付き」貫通孔」は、本明細書で使用される場合に、シート材中の繊維が貫通孔によって周囲を囲まれる開口部中に延在する、製紙中に製作される貫通孔を意味する。貫通孔の開口部は、紙匹の一方の側または表面から、対向する側または表面まで延在し、エッジ領域に特有の不規則さを示す。特有の不規則さは、鋭く断裁されたエッジの欠如に起因し、エッジ領域中の繊維、及び/または開口部中に延在する繊維の不規則な蓄積を有する。これらのような貫通開口部が変化することが多く、複製することが難しい、特有の不規則さを有する場合、これらの開口部は、高いセキュリティ価値を有する真正性特徴として機能する。本発明の方法は、繊維状紙匹が十分に圧密化される製紙工程のウェットステージの間に、抄造する繊維状紙匹上に、またはこの中に、任意選択でその中に形成される1つ以上の「ソフトエッジ付き」貫通孔上に、セキュリティデバイスを導入することを備える。1つの実施形態において、繊維状紙匹は、繊維状紙匹の総重量に基づき、繊維状紙匹が98重量%未満の水または水分含量を有するときに十分に圧密化される。好ましくは、繊維状紙匹は、繊維状紙匹が抄紙機のクーチロールまたは同様の器具にある、またはこの近くにあるときに十分に圧密化される。
【0008】
また、本発明は、上記の方法によって製造される繊維状シート材、この繊維状シート材を含む、結果として得られる書類を提供する。第一実施形態において、繊維状シート材は、対向面、それらの1つの表面中に少なくとも1つの凹部、この凹部の真下に、またはこれの下に配置される三次元体積である繊維状サブ領域、ならびに凹部及びサブ領域に接して配置される三次元体積でもある繊維状バルク領域と、凹部中に配置される表面に適用されたセキュリティデバイスと、この表面に適用されたセキュリティデバイスとシート材料のバルク領域及びサブ領域との間の界面とを含み、実質的に等しい量で存在する繊維状サブ領域中の、そして繊維状バルク領域中の繊維がある。繊維状サブ領域は、表面に適用されたセキュリティデバイスに関して横方向または側方向に同一の広がりをもつ。換言すれば、三次元サブ領域は、セキュリティデバイスの真下に位置している繊維状シート材の体積を占める。繊維状バルク領域は、凹部及びサブ領域に接して配置され、繊維状シート材の残りの体積を占める。
【0009】
繊維の実質的に等しい量がシート材のサブ領域及びバルク領域の両方の中に存在するという確認は、セキュリティデバイスの下のシート材の三次元領域(セキュリティデバイスが除去された後(例えば、
図11中に幅A、高さa及び奥行き寸法(示されない)によって画定される領域を参照))の質量(重量)を、等しい幅(すなわち、セキュリティデバイスの幅と等しい幅)を有するセキュリティデバイスに隣接するシート材の三次元領域(例えば、
図11中の幅B、高さb及び奥行き寸法(示されない)によって画定される領域を参照)の質量(重量)と比較することによって達成される。貫通孔がセキュリティデバイス下のシート材の領域に存在する、下記の実施形態において、この領域中の質量(重量)は、この領域(サブ領域)の質量(重量)をバルク領域の質量(重量)と比較する前に、貫通孔によって占められる領域の質量(重量)を追加して戻すことによって、最初に調整される。
【0010】
本発明の第二の実施形態または態様において、繊維状シート材は、対向面、及び抄紙機が作製した、または1つ以上の「ソフトエッジ付き」貫通孔を含む。表面に適用されたセキュリティデバイスは、貫通孔(複数可)上に適用され、このデバイスの形状及びサイズは、貫通孔(複数可)のものと実質的に、同一である、または異なる場合がある。例えば、表面に適用されたセキュリティデバイスは、貫通孔とは異なり、この貫通孔よりも大きい形状にされる場合がある、またはそれは、貫通孔に類似した、そしてこの貫通孔よりもごくわずかに大きいサイズに作られる場合がある。両方の場合に、繊維状シート材、及びそれらから形成される書類は、貫通孔(複数可)が凹部から繊維状シート材の対向面を通り延伸することを除き、上述されるものに類似する。したがって、三次元体積を有する繊維状サブ領域は、貫通孔に隣接する凹部のこれらの領域の真下に、またはこれらの領域の下に配置され、そこから表面に適用されたセキュリティデバイスの外周まで横方向に延在する。換言すれば、上述のように、繊維状サブ領域は、表面に適用されたセキュリティデバイスによって占められる空間より下を占める。
【0011】
驚いたことに、繊維状紙匹が例えば、完全に抄造された湿紙匹として、十分に圧密化されるウェットステージ中に、表面に適用されたセキュリティデバイスが導入されることができることがわかった。製紙工程のこのウェットステージにおいてセキュリティデバイスを導入することによって、セキュリティデバイスを繊維状紙匹中に適切に押し込み、それらの繊維を移動させるよりもむしろ、サブ領域中の繊維をさらに圧密化することができる。これは、ひいては、繊維と表面に適用されたセキュリティデバイスとの間の増大した結合性相互作用を提供する際に役立つ。その結果、耐久性、インキ付着性、横方向(CD)引張強度、及び裏側の透き通しのうちの少なくとも1つを改善する。これらの驚くべき利点は、インキ付着性を改善する、引張強度を改善する、または裏側の透き通しをカモフラージュする、さらなる加工処理ステップについての要件を回避する。さらに、繊維状紙匹が十分に圧密化されるウェットステージ中にセキュリティデバイスを導入するため、セキュリティデバイスを繊維状紙匹中に押し込むことにより、それらの厚さの差が実質的に減少することができることから、より厚いセキュリティデバイスの使用を可能にすることができるようになる。結果として得られる厚さの差は、これにより、下流工程に対する影響が少なくなる。
【0012】
本明細書に提供される方法として、出願人は、驚いたことに、表面に適用されたセキュリティデバイスが繊維状紙匹、繊維状シート材または結果として得られる書類中の少なくとも1つ他の特徴との位置合わせに適用されることができることも見いだした。本発明の第二態様において、表面に適用されたセキュリティデバイスは、貫通孔(複数可)との位置合わせに適用される。当業者によって容易に理解されるように、繊維状紙匹中のさらに別の特徴との位置合わせにセキュリティデバイスを適用することにより、結果として得られるシート材または書類の偽造耐性を非常に向上させる。さらに、セキュリティデバイスが繊維状紙匹製造工程のウェットステージ中に導入されるため、製紙工程中に位置合わせを調整することが可能である。その結果、さらなる加工処理ステップにより、他の特徴とセキュリティデバイスのミスアライメントを補正することが本来であれば必要とされることを回避する。また、セキュリティデバイスを連続した方式において導入することにより、セキュリティデバイスを断裁加工し/打抜き加工し、単一導入デバイスとともに繊維状紙匹に導入することができることから、担体基材についての要件を回避する。本明細書に使用される場合に、用語「導入デバイス」は、ウェットステージ中にセキュリティデバイスを繊維状紙匹に断裁加工する/打抜き加工する、及び/または導入するために使用されるデバイスを指す。適切な導入デバイスは、本明細書にさらに記述される。
【0013】
当業者は、以下の発明を実施するための形態、及び図面によって本発明の他の特徴及び利点を理解することができるであろう。別段の定めがない限り、本明細書に使用される、すべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する当該技術の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に言及されている、すべての刊行物、特許出願、特許及び他の参考文献は、それらの全体が参照により援用されている。矛盾する場合、定義を含む本明細書が支配する。加えて、材料、方法、及び例は、例示に過ぎず、限定することが意図されない。さらに、本明細書に明示的に列挙されるすべての範囲は、部分範囲を黙示的に網羅する。
【0014】
本開示は、以下の図面を参照してより良く理解されることができる。図面の中の構成要素は、必ずしも縮尺通りではなく、代替に本開示の原理を明確に図示することに重点が置かれている。例示的な実施形態が図面と関連して開示されているが、本明細書に開示されている1つの実施形態、または複数の実施形態に本開示を限定する意図はない。対照的に、意図は、代替物、変更形態及び均等物を網羅することである。
【0015】
開示されている本発明の特定の特徴は、添付の図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】繊維状紙匹が十分に圧密化されていない製紙のウェットステージの間に、セキュリティデバイスを繊維状紙匹中に導入することによって製造される繊維状シート材の側断面図である。
【
図2】含水量が低すぎて基材中へのセキュリティデバイスのプレス加工が繊維をさらに圧密化することができないときの製紙のドライステージ中に、またはこのドライステージ後に、セキュリティデバイスを繊維状紙匹上に導入することによって製造される繊維状シート材の側断面図である。
【
図3】本発明の繊維状シート材の例示的な実施形態の側断面図であり、この繊維状シート材は、その表面に適用されたセキュリティデバイスを含み、セキュリティデバイスは、繊維状紙匹が十分に圧密化されたときに繊維状紙匹中に、またはこの繊維状紙匹上に導入される。
【
図4】ウェットライン後で、クーチロール前に、セキュリティデバイスが連続した紙匹の形態で、ワイヤ上の抄造する繊維状紙匹に導入される、長網抄紙機の概略図である。
【
図5】本発明に従った書類の例示的な実施形態の上面図であり、この書類は、そこに適用される複数の不連続な表面に適用されたセキュリティデバイス(パッチ及びストライプ)を含む。
【
図6】本発明に従った書類の別の例示的な実施形態の上面図であり、この書類は、透かしなど、書類中の別の特徴との位置合わせに適用される、複数の不連続な表面に適用されたセキュリティデバイス(パッチ)を含む。
【
図7a】繊維状シート材または書類の表側の平面図であり、この繊維状シート材または書類は、繊維状シート材または書類が流通シミュレーション試験を一(1)サイクル通して受けた後に、繊維状紙匹が十分に圧密化されていないときの製紙のウェットステージ中に、セキュリティデバイスを、抄造する繊維状紙匹に導入することによって製造される。
【
図7b】繊維状シート材または書類の裏側の平面図であり、この繊維状シート材または書類は、それが流通シミュレーション試験及びショーを通して一(1)サイクルを受けた後に、繊維状紙匹が十分に圧密化されていないときの製紙のウェットステージ中に、セキュリティデバイスを繊維状紙匹に導入することによって製造される。
【
図8a】本発明に従った繊維状シート材または書類の例示的な実施形態の表側の平面図であり、この繊維状シート材または書類は、繊維状シート材または書類が流通シミュレーション試験を一(1)サイクル通して受けた後に、繊維状紙匹が十分に圧密化されているときの製紙のウェットステージ中に、セキュリティデバイスを、抄造する繊維状紙匹に導入することによって製造される。
【
図8b】本発明に従った繊維状シート材または書類の例示的な実施形態の裏側の平面図であり、この繊維状シート材または書類は、繊維状シート材または書類が流通シミュレーション試験を一(1)サイクル通して受けた後に、繊維状紙匹が十分に圧密化されているときの製紙のウェットステージ中に、セキュリティデバイスを繊維状紙匹に導入することによって製造される。
【
図9a】繊維状シート材または書類の表側の平面図であり、この繊維状シート材または書類は、繊維状シート材または書類が流通シミュレーション試験を三(3)サイクル通して受けた後に、繊維状紙匹が十分に圧密化されていないときの製紙のウェットステージ中に、セキュリティデバイスを、抄造する繊維状紙匹に導入することによって製造される。
【
図9b】繊維状シート材または書類の裏側の平面図であり、この繊維状シート材または書類は、繊維状シート材または書類が流通シミュレーション試験を三(3)サイクル通して受けた後に、繊維状紙匹が十分に圧密化されていないときの製紙のウェットステージ中に、セキュリティデバイスを、抄造する繊維状紙匹に導入することによって製造される。
【
図10a】本発明に従った繊維状シート材または書類の例示的な実施形態の表側の平面図であり、この繊維状シート材または書類は、繊維状シート材または書類が流通シミュレーション試験を三(3)サイクル通して受けた後に、繊維状紙匹が十分に圧密化されているときの製紙のウェットステージ中に、セキュリティデバイスを繊維状紙匹に導入することによって製造される。
【
図10b】本発明に従った繊維状シート材または書類の例示的な実施形態の裏側の平面図であり、この繊維状シート材または書類は、繊維状シート材または書類が流通シミュレーション試験を三(3)サイクル通して受けた後に、繊維状紙匹が十分に圧密化されているときの製紙のウェットステージ中に、セキュリティデバイスを繊維状紙匹に導入することによって製造される。
【
図11】対向面、及び抄紙機に作製された、またはソフトエッジ付きの貫通孔を有する、繊維状紙匹中にセキュリティデバイスを導入することによって製造される本発明(第二態様)の繊維状シート材の別の例示的な実施形態の側断面図である。繊維状紙匹が十分に圧密化されると、セキュリティデバイスは、この繊維状紙匹中に、または繊維状紙匹の上に導入される。
【
図12】
図12は、貫通孔がパターン化されたフォーミングワイヤを使用して、抄造する繊維状紙匹中に導入され、次いで、セキュリティデバイスが連続した紙匹の形態で、ウェットライン後の、クーチロール前に繊維状紙匹に導入される、長網抄紙機の概略図である。
【
図12A】紙料がヘッドボックスからフォーミングワイヤ上に出る前のパターン化されたフォーミングワイヤを描く。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、請求されている本発明のある特定の例示的な実施形態の説明として提供される、以下の詳細によってさらに理解されるであろう。
【0018】
本発明の方法により、表面に適用されたセキュリティデバイスを含む繊維状シート材を提供する。本発明の第一態様において、方法は、繊維状シート材へのセキュリティデバイスの表面適用のために提供される。この方法は、セキュリティデバイスを製紙の間に繊維状紙匹中に、またはこの繊維状紙匹上に導入することを備える。第二態様において、この方法は、繊維状紙匹が十分に圧密化されるようになる前の製紙の間に、繊維状紙匹中に1つ以上の「ソフトエッジ付き」貫通孔を形成すること、次いで、繊維状紙匹が十分に圧密化されるようになると、セキュリティデバイスを1つ以上の「ソフトエッジ付き」貫通孔上の、繊維状紙匹中に、またはこの繊維状紙匹上に導入することを備える。製紙中に貫通孔を形成することによって、貫通孔に特有のエッジ不規則さを与え、これらの不規則さは、高いセキュリティ価値を有する真正性特徴として機能する。さらに、製紙工程中にセキュリティデバイスを導入することによって、既知の加工処理ステップを中断せず、追加の加工処理ステップを排除する。さらに、製紙工程のウェットステージ中にセキュリティデバイスを導入することによって、製紙のドライステージ中に適用することができるものよりも厚いセキュリティデバイスを本明細書によって適用することができる。
【0019】
1つの実施形態において、方法は、繊維をサブ領域中でさらに圧密化することを備える。繊維をサブ領域中でさらに圧密化するために、表面に適用されたセキュリティデバイスを十分に圧密化された(均一か不均一かのいずれかに)繊維状紙匹中にプレスする。これらの繊維は、サブ領域の体積が減少するが、この領域中の繊維の量が移動せず、少なくともいかなる有意な量も移動しないように、この領域中で緻密化する。この領域中の繊維が移動しないという実態は、繊維がこの領域中でさらに圧密化されるときに、貫通孔(複数可)が閉塞する、または遮断されるようになる可能性を排除するか、極めて減少させる。
【0020】
本明細書に使用される場合、用語「十分に圧密化される」は、繊維状紙匹が完全に抄造された湿紙匹状態にあることを意味することが、本開示に関連した、当業者によって理解されるであろう。この湿紙匹段階中に、繊維状紙匹は、98%未満の水及び/または水分を含む。その結果、繊維状紙匹は、2%超の繊維及び/またはパルプを含む。別の実施形態において、繊維状紙匹は、95%未満の水及び/または水分を含み、残りの5%の成分が繊維及び/またはパルプである。さらに好ましい実施形態において、繊維状紙匹中の水及び/または水分は、約60%から98%未満に、または約60%から約95%に及ぶ。出願人は、セキュリティデバイスが導入されるときに、98%超の水及び/または水分含量が繊維の移動をもたらすことを見いだした。繊維の有意な移動は、特に基材のサブ領域において、基材中にセキュリティデバイスと繊維との間の弱い相互作用をもたらす。特に、繊維の移動は、基材の耐久性及び強度を低減させ、サブ領域中に、そしてヒンジ領域中に提供されるカモフラージュ効果を減少させる。本明細書に言及されているように、これらの弱い相互作用は、特にセキュリティデバイスの界面で接するエッジにおいて、上記に特定される課題をもたらす。対応して、繊維状紙匹が60%未満の水及び/または水分を含む場合に、製紙工程中のセキュリティデバイスの導入により、セキュリティデバイスの凹部形成が薄い厚さは維持できるが、より厚いセキュリティデバイスの導入には十分でないことがわかった。さらに、60%未満の水及び/または水分において、サブ領域中の繊維は、セキュリティデバイスの界面で接するエッジ近くに繊維を固定するのに十分である以上に圧密化しない。本明細書に使用される場合、用語「凹部を形成する」は、セキュリティデバイスの頂面または上面領域が露出したままでありながら、セキュリティデバイスの高さの少なくとも一部分がバルク領域の表面高さより下にあるように、繊維状シート材の基材面中にレリーフ/凹部を形成するための、繊維状紙匹中へのセキュリティデバイスのプレス加工を指す。
【0021】
ウェットステージは、上記に定義される通り、抄紙機沿いのさまざまな位置にあるように調整されることができ、本発明は、これらの可能性のすべてを企図する。しかしながら、好ましい実施形態において、セキュリティデバイスは、繊維状紙匹が十分に圧密化された、または完全に抄造された湿紙匹(すなわち、繊維状紙匹の総重量に基づき、繊維状紙匹の98重量%未満、好ましくは繊維状紙匹の約60重量%から98重量%未満、またはさらに好ましくは繊維状紙匹の約60重量%から約95重量%、または繊維状紙匹の約60重量%から約90重量%の水分または水レベルを含む)を成すときに、例えば、抄紙機のクーチロールまたは同様の器具に、またはこの近くなどに、製紙工程のウェットステージの間に、抄造する繊維状紙匹中に、またはこの紙匹上に適用される。これらのような位置において、セキュリティデバイスの凹部中への統合に応える、さらなる工程調整の必要がない。例えば、サクションボックスは、クーチロール直前に一般に位置し、抄紙機の乾燥部での負荷を最小限にするために、紙匹が抄紙機のウェットエンドを離れる前にできるだけ多くの水分を除去する。同様に、円網抄紙機のシリンダパートを離れると(そしてクーチロール後に)、繊維状紙匹は、好ましくは、約75%から約95%の水及び/または水分から、そして約5%から約25%のパルプまたは繊維から抄造されるであろう。
【0022】
長網抄紙機における製紙のいくつかの段階が繊維状紙匹の十分な圧密化(本明細書に定義される通りに)を提供するものとして企図されるが、好ましい実施形態において、セキュリティデバイスが繊維状紙匹に導入される製紙の段階は、ウェットライン直後で、クーチロール前である。これは、繊維状紙匹の上側に表面の水が明らかにないポイントである。代替の実施形態において、セキュリティデバイスは、ウェットエンド中にバキュームボックス上に、またはこのバキュームボックス前に、繊維状紙匹に導入され、これは、このデバイスを紙匹中にセットするのに有利に役立つ。好ましくは、セキュリティデバイスは、デリバリーホイール、ローラーまたは接触シューを介して繊維状紙匹の表面に直接に置かれる。
【0023】
1つの実施形態において、クーチロールを通過して、またはこのクーチロールをさらに越えて移動すると、繊維状紙匹は、それがプレス部及び乾燥部の両方からなる抄紙機のドライエンドに進む場合に、表面に適用されたセキュリティデバイスを含む完全に抄造された紙匹である状態にある。
【0024】
抄紙機の両方のタイプのうちのプレス部において、ローラーとフェルトとの間で湿紙を圧縮することによって水及び/または水分を除去し、水及び/または水分含量を所望のレベルまで減少させる。出願人は、驚いたことに、表面に適用されたセキュリティデバイスを含む完全に抄造された湿紙匹の圧縮により、繊維が移動せずに緻密化される場合に、サブ領域(すなわち、導入されたセキュリティデバイスより下にある、またはこのデバイスの下にある繊維状紙匹の領域)中の繊維をさらに圧密化させることを見いだした。その結果、得られる繊維状シート材、または得られる書類の強度特性、及びセキュリティデバイスのカモフラージュ加工を提供して裏側の透き通しを減少させる裏側不透明性は、改善される。
【0025】
本発明のセキュリティデバイスは、さまざまな厚さのものであることができる。しかしながら、本発明の工程が厚さの範囲のうちより厚いセキュリティデバイスの表面適用を有利に可能にすることがわかった。1つの実施形態において、セキュリティデバイスは、最大100ミクロン(μm)の厚さのものである。別の実施形態において、セキュリティデバイスは、5から75μmまで、またはさらに好ましくは10から50μmまで及ぶ厚さを有する。セキュリティデバイスの幅は、繊維状シート材の幅によってのみ制限される。好ましい実施形態において、この幅は、0.25から20ミリメートル(mm)まで、さらに好ましくは0.5から15mmまで及ぶ。
【0026】
製紙のウェットステージ中にセキュリティデバイスを導入することによって、これらのセキュリティデバイスを繊維状紙匹中にプレスし、結果として得られる繊維状シート材の表面中に凹部を製作することができる。結果として得られる繊維状シート材は、上記に特定される不利な点をもたらさない厚さの差を有する、表面に適用されたセキュリティデバイスを含む。1つの実施形態において、厚さの差は、セキュリティデバイスの厚さと比較して表現される。この実施形態において、厚さの差の絶対値は、セキュリティデバイスの厚さの0%から約80%まで及び、セキュリティデバイスの厚さの10%未満が好ましい。
【0027】
1つの実施形態において、厚さの差は、-10から約50μmまで及ぶ。さらに好ましくは、厚さの差は、-5から30μmまで、または0から25μmまで及ぶ。
【0028】
ある特定の実施形態において、このデバイスは、繊維状湿紙匹中へのセキュリティデバイスのプレス加工が負の厚さの差となる(すなわち、セキュリティデバイスの厚さまたは高さがバルク領域の厚さまたは高さを下回る)ように十分に薄い。これらのような実施形態において、厚さの差は、セキュリティデバイスの厚さに対する厚さの差の絶対値への参照によって最もよく特徴付けられる。例えば、1つの実施形態において、セキュリティデバイスを繊維状紙匹中へプレスするときに、表面に適用されたセキュリティデバイスの厚さの差の絶対値がセキュリティデバイスの厚さの0%から約50%、さらに好ましくは0%から約30%、さらにより好ましくは約0%から約10%に及ぶように、セキュリティデバイスの厚さは、25μmを下回る。1つの他の実施形態において、セキュリティデバイスを繊維状紙匹中にプレスすることによってサブ領域のさらなる圧密化が-10から15μmまで、好ましくは-5から10μmまで及ぶ厚さの差を生じるように、セキュリティデバイスの厚さは、25μmを再度下回る。
【0029】
代替に、1つの実施形態において、セキュリティデバイスを繊維状紙匹中にプレスすることによってサブ領域のさらなる圧密化が-10から50μmまで、好ましくは-5から25μmまで、または0から15μmまで及ぶ厚さの差を生じるように、セキュリティデバイスの厚さは、25μmを上回る。1つの他の実施形態において、セキュリティデバイスも25μmを上回る厚さを有する場合に、セキュリティデバイスの厚さに対する厚さの差の絶対値は、0%から約50%に及ぶ。好ましくは、厚さの差の絶対値は、セキュリティデバイスの厚さの0%から約20%に及ぶ。
【0030】
「クーチロール」は、紙匹がワイヤ(すなわち、ウェットエンドまたは抄造部)を離れ、ワイヤがブレストロールに戻る位置に置かれる、長網抄紙機上の長網ワイヤについてのガイドまたはターニングロールとして当業者によって理解されるであろう。クーチロールは、長網ワイヤパートがシリンダパートによって置換されている円網抄紙機上で同じ目的を果たす。具体的には、紙匹は、シリンダパートを離れ、クーチロールに向かい進む場合に、クーチロールは、紙匹をガイドし、回転させる。
【0031】
また、繊維状紙匹全体が水及び/または水分含量、及び繊維含量について均一な一貫性を有することが企図されるが、繊維状紙匹が不均一に十分に圧密化されることも本発明の範囲内にある。例えば、1つの実施形態において、繊維状紙匹は、導入ポイントで、または導入ポイントに沿ってのみ十分に圧密化される。本明細書に使用される場合に、「導入ポイント」は、セキュリティデバイスによって少なくとも部分的に覆われる繊維状紙匹における、またはこの繊維状紙匹沿いの領域を指す。別の実施形態において、繊維状紙匹は、部分的にのみ十分に圧密化される、または勾配もしくはマトリックスパターンにおいて十分に圧密化されるため、導入ポイントにおいて繊維が有意に分散せず、特定された不利な点に通じる。十分に圧密化された勾配またはマトリックスパターンは、例えば、抄造する繊維状紙匹沿いの位置で選択的に真空にすることによって、提供されることができる。代替に、1つの実施形態において、放射源(すなわち、熱)を適用することによって勾配またはマトリックスパターンにおいて含水量を除去し、抄造する繊維状紙匹沿いの選択された位置において頂面の水を除去する。
【0032】
繊維状紙匹へのセキュリティデバイスの導入は、セキュリティデバイスと繊維状紙匹の基材との間に界面、結果として得られる繊維状シート材、または結果として得られる書類を形成する。用語「界面」は、本明細書に使用される場合、セキュリティデバイスと基材との間の直接的な、または間接的な接触のいずれか一方によって形成されることができる。界面が直接的である場合、セキュリティデバイスは、繊維と基材中で直接的に接触している。しかしながら、セキュリティデバイスが基材に関して一部の、またはすべての底面及び側面沿いに間接的な界面を形成することが企図される。例えば、界面は、セキュリティデバイスと基材との間に他の材料を含むことができる。さまざまな材料が企図されるが、さらなる繊維材料、または高分子材料、例えば、植物源などの天然源から得られる、または高分子溶融組成物などから単独で、もしくは組み合わせて繊維状に加工される、単成分及び/または多成分の繊維は、特に適している。さらに、接着材料は、間接的な界面を形成するために好ましい。活性化可能な接着剤を使用して、セキュリティデバイスを繊維状紙匹の凹部が形成された表面上に、またはこの表面内に固着させる、または接着させることができる。適切な接着剤は、限定されないが、温度が100℃から160℃の間に達する、抄紙機の乾燥部中で活性化する、水、熱、及び/または圧力で活性化する接着剤を含むが、これらに限定されない。これらのコーティングは、溶媒ベースの高分子溶液、または水溶液、または分散液の形態で塗布されることができる。適切な分散液は、アクリル樹脂分散液、エポキシ樹脂分散液、天然ゴム分散液、ポリウレタン樹脂分散液、ポリ酢酸ビニル樹脂分散液、ポリビニルアルコール樹脂分散液、尿素樹脂分散液、酢酸ビニル樹脂分散液、エチレン酢酸ビニル樹脂分散液、エチレンビニルアルコール樹脂分散液、ポリエステル樹脂分散液、及びそれらの混合物の群から選択される。クーチロールを通過すると、表面に適用されたセキュリティデバイスを含む完全に抄造された湿紙匹は、プレス部及び乾燥部の両方からなる抄紙機のドライエンドに進む。代替に、接着剤は、セキュリティデバイスの部分を形成し、これらのような実施形態において、5から約50μm、好ましくは5から約20μmに及ぶ厚さを有する。
【0033】
本発明に適しているセキュリティデバイスは、当業者によって当該技術において一般に使用されるものを含み、模造品または偽造行為に対してセキュリティを提供する。本発明の第二態様において、セキュリティデバイスは、構造フィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)膜)から好ましくは形成され、少なくとも約10~15ミクロンの厚さ(caliper)または厚さ(thickness)を有し、この厚さは、デバイスに十分な耐久性を提供し、それが貫通孔(複数可)にわたることを可能にする。用語「構造フィルム」は、本明細書に使用される場合、例えば、転写箔とともに通常使用されるような取り外し可能な担体膜、または転写箔自体ではないが、セキュリティデバイスの構成の不可欠な部分である構造完全性を有する膜を意味することが意図される。セキュリティデバイスは、代替的に、または付加的に基材に美的特性を適用するのに適しているものであることができる。適切なセキュリティデバイスは、直接か、デバイスを用いてかのいずれかで、人間の力で知覚できる情報を表示することができる、または付加的に、もしくは代替的に機械によって知覚できる情報を表示することができる。セキュリティデバイスは、つぎの機構、脱金属化された、または選択的に金属化された、磁気の、磁気及び金属の組み合わせの、またはエンボス加工された領域または層、色ずれの、虹色の、液晶の、フォトクロミックの、及び/またはサーモクロミックの材料から作れられる変色コーティング、発光及び/または磁性材料のコーティング、ホログラフィック及び/または回析性のセキュリティ機構、ならびにマイクロ光学セキュリティ機構のうちの1つ以上を用いることができる。好ましい実施形態において、セキュリティデバイスは、機密性または価値のある書類が容易に認証されることができるようなセキュリティを提供する。1つの実施形態において、セキュリティデバイスは、集束素子のアレイ、及び画像アイコンのアレイを含み、集束素子及び画像アイコンのアレイは、1つ以上の合成画像がセキュリティデバイスによって投影されるように配置される。本発明に使用される集束素子は、画像アイコンアレイ中の小さな点をハイライトする、拡大する、照射する、または強調するのに役立ち、レンチキュラーレンズ及び非シリンドリカルレンズ(すなわち、マイクロレンズ)の両方を含むが、これらに限定されない。上述される合成撮像は、レンズ(例えば、マイクロレンズ)によって拡大される、数百または数千の個々の画像フラグメントから観察者によって知覚される画像が合成され、観察者の目に向かい投影されるため、インテグラルイメージングの形式である。
【0034】
例示的な実施形態において、セキュリティデバイスは、マイクロレンズベースのセキュリティデバイスである。これらのようなデバイスは、(a)光透過高分子基材、(b)この高分子基材上に、またはこの高分子基材内に位置しているマイクロサイズの画像アイコンの配置、及び(c)集束素子(例えば、マイクロレンズ)の配置を一般に含む。画像アイコン及び集束素子の配置は、画像アイコンの配置が集束素子の配置を通して表示されるときに、1つ以上の合成画像が投影されるように構成される。これらの投影された画像は、複数の異なる光学効果を示す場合がある。これらのような効果を提示することができる材料構成は、Steenblikらの米国特許第7,333,268号、Steenblikらの米国特許第7,468,842号、Steenblikらの米国特許第7,738,175号、Commanderらの米国特許第7,830,627号、Kauleらの米国特許第8,149,511号、Kauleらの米国特許第8,878,844号、Kauleらの米国特許第8,786,521号、Kauleらの欧州特許第2162294号、及びKauleの欧州特許出願第08759342.2号(または欧州公開第2164713号)に記載されている。これらの参考文献は、それらの全体が本明細書によって援用される。
【0035】
好ましい実施形態において、本発明の方法によって表面に適用されているセキュリティデバイスは、例えば、米国特許第7,333,268号に記載されているMOTION(商標)マイクロ光学セキュリティデバイス、RAPID(商標)マイクロ光学セキュリティデバイス、ホログラフィックセキュリティデバイス(例えば、金属化されたホログラフィックデバイス)などのマイクロ光学セキュリティデバイスを含むが、これらに限定されない。これらのデバイスは、Massachusetts、USAのCrane Currency US、LLCから入手可能である。他の適切なデバイスは、KINEGRAM(商標)光学データキャリアなどの光学的に可変なデバイス(OVD)、及び色ずれセキュリティデバイスを含むが、これらに限定されない。
【0036】
セキュリティデバイスは、繊維状紙匹に導入されるためにさまざまな形態で提示されることができるが、連続した紙匹の形態でセキュリティデバイスを提供することが最も有利であることがわかった。セキュリティデバイスを連続した紙匹の形態で提供することによって、連続した方式において、セキュリティデバイスを繊維状紙匹に導入することができることがわかった。次いで、連続した紙匹は、複数の不連続なセキュリティデバイスに区分される、または分割される。連続した紙匹を不連続なセキュリティデバイスに区分することは、さまざまな断裁加工及び/または打抜き加工方法によって達成されることができる。好ましい実施形態において、この方法は、抄紙機上で抄造中に、担体膜の使用のない、繊維状紙匹への複数の不連続なセキュリティデバイスのインライン適用工程である。続く方式において連続した紙匹を断裁し、または打抜き加工し、所望の形状及びサイズを各有する不連続なセキュリティデバイスを形成することと、その後、製紙中に連続した方式において不連続なセキュリティデバイスを繊維状紙匹上に適用することとを備える。
【0037】
表面適用、部分埋め込みまたは完全埋め込みのいずれかによって、追加のセキュリティデバイスを繊維状シート材に適用することができることが本明細書において企図される。例えば、1つの実施形態において、追加のセキュリティデバイスを繊維状シート材の表面に適用する。この追加のデバイスは、表面にセキュリティデバイスが適用された繊維状紙匹が導入される前に適用される、または表面にセキュリティデバイスが適用された後に適用されることができる。追加のセキュリティデバイスは、表面に適用されたセキュリティデバイスとは異なる場合と、このセキュリティデバイスに類似する場合がある。例えば、1つの実施形態において、不連続なセキュリティデバイスのうちの1つが25μm以下の厚さを有する場合、そのセキュリティデバイスを、含水量が60%を下回る、好ましくは約90重量%から0重量%に及ぶときに、繊維状紙匹に導入することが企図される。例えば、セキュリティデバイスは、それが抄紙機を通り第一乾燥部とサイズプレスとの間に移動する場合に繊維状紙匹に導入され、任意選択で、再湿潤され、水及び/または水分含量を約4%から約7%の間まで増加させる。
【0038】
セキュリティデバイスは、さまざまなサイズ、形状、または色を取ることができる。例えば、セキュリティデバイスが不連続なセキュリティデバイスの形態で、ストライプ、バンド、スレッド、リボンまたはパッチの非限定的な形態を取ることが企図される。これらのデバイスは、約2から約25mm(好ましくは、約6から約12mm)の全幅、及び約10から約50ミクロン(好ましくは、約20から約40ミクロン)の全厚であることができる。好ましい実施形態において、セキュリティデバイスは、ストライプまたはパッチである。「ストライプ」は、本明細書で使用される場合、セキュリティデバイスを指し、このセキュリティデバイスは、その短手方向の幅寸法よりも実質的に長い、長手方向の長さ寸法を有する。対照的に、「パッチ」は、実質的に等しい長手方向、及び短手方向の長さを有することができ、均一な、またはさまざまな不均一な形状を有することができる。ストライプ及びパッチのさまざまな形状及びサイズは、本明細書に企図されている。しかしながら、ストライプまたはパッチが繊維状シート材、または結果として得られる書類のエッジまで延伸することができるが、好ましい実施形態において、ストライプまたはパッチは、繊維状シート材または書類の周辺内に位置し、シート材または書類のエッジまで延伸しない。
【0039】
言及されているように、さまざまなサイズのセキュリティデバイスは、本発明の方法及び繊維状シート材に適しているものとして企図されている。1つの実施形態において、サイズは、約5から約75mm、好ましくは約15mmから約40mmの全長と、約2mmから約50mm、好ましくは約6mmから約25mmの全幅と、約10から約50ミクロン、好ましくは約15ミクロンから約40ミクロンの全厚に及ぶ。本明細書に言及されているすべての範囲は、整数及び分数を有する、すべての部分範囲を含む。上述されるように、本発明の第二態様において、セキュリティデバイスは、構造フィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)膜)から好ましくは形成され、このデバイスに、それが貫通孔(複数可)にわたることを可能にするのに十分な耐久性を与える、少なくとも約10~15ミクロンの厚さ(caliper)または厚さ(thickness)を有する。
【0040】
言及されているように、さまざまな形状、例えば、パッチ、ストライプ、またはスレッドと、星形、平行四辺形、多角形(例えば、六角形、八角形など)形状などの幾何学的形状と、数字と、文字と、さまざまな記号となども、セキュリティデバイスのために企図されている。単純な、そして複雑な非幾何学的設計もまた、適しているものとして企図されている。これらの形状及び設計は、ロータリーダイ工程によって切断されることができる。
【0041】
本発明の方法の1つの実施形態において、セキュリティデバイスは、それが繊維状紙匹、繊維状シート材または結果として得られる書類の基材上で、またはこの基材中で少なくとも1つの他の特徴と位置を合わせるように、抄造する繊維状紙匹中に導入される。ある特定の実施形態において、セキュリティデバイスは、セキュリティデバイス内の特定の特徴が繊維状紙匹、結果として得られる繊維状シート材または書類中の別の特徴と位置を合わせるように導入される。少なくとも1つの他の特徴は、必要に応じて適用に関して変えることができる。例えば、少なくとも1つの他の特徴は、透かし、印刷された画像、レリーフ構造、別のセキュリティデバイス、または紙由来の特徴である。本発明の第二態様において、セキュリティデバイスは、それが1つ以上の「ソフトエッジ付き」貫通孔と好ましくは位置を合わせるように導入される。セキュリティデバイスを繊維状紙匹に、そのセキュリティデバイスが位置を合わせるように導入する際に、セキュリティデバイスが連続した紙匹の形態で最初に提示され、連続した紙匹を不連続なセキュリティデバイスに断裁する/打抜き加工するために使用されることができる機器またはシステム(本明細書において導入デバイスと称される)の一部分に送達されることが企図される。別のデバイスを使用して断裁し、次いで、セキュリティデバイスを繊維状紙匹に適用することが可能であるが、不連続なセキュリティデバイスを形成するために使用されるシステムを、セキュリティデバイスを繊維状紙匹中に、またはこの繊維状紙匹上に適用するために使用されることが好ましい。単一のデバイスに関して、必要とする可動部品が少ないことから、セキュリティデバイスを位置合わせにさらに正確に適用することが可能である。
【0042】
連続した紙匹を不連続なセキュリティデバイスに断裁し、次いで、これらのセキュリティデバイスを同じ導入デバイスによって繊維状紙匹中に、またはこの繊維状紙匹上に導入する、好ましい実施形態において、誤って位置を合わせられた(少なくとも1つの他の特徴とのミスアライメント)セキュリティデバイスが位置を合わせるために連続した方式で調整されることができるように、セキュリティデバイスの配置が導入デバイスによって調整可能であることも企図される。単一の導入デバイスを使用して、断裁し、適用し、そしてその場で製紙工程に関する位置合わせを調整することによって、この配置を調整するための追加の加工処理は、不要になる。例えば、製紙工程中に、位置を合わせられた適用及び調整は、印刷する前に結果として得られるシート材または書類の二次的な加工処理についての必要性を排除する。
【0043】
適切な導入デバイスは、本開示の後の判断により当業者に明らかであろう。しかしながら、好ましい実施形態において、導入デバイスは、繊維状紙匹、繊維材料または結果として得られる書類中でセキュリティデバイスと少なくとも1つの他の特徴との間の位置合わせを確認する、光または繊維密度センサのいずれかを用いるシステムである。セキュリティデバイスの特定された、もしくは計算された位置、またはセキュリティデバイス及び少なくとも1つの他の特徴の相対的な位置を考慮して、導入デバイスを使用し、セキュリティデバイスの配置における調整を行う。これらのような調整を行うために、導入デバイスは、不連続なセキュリティデバイスが必要に応じて位置合わせに適用されることができるように、連続した紙匹上の張力を制御する、可変速度前進デバイス(例えば、サーボドライブを備える電気サーボ機構)を使用する。それにより、連続した紙匹上の張力を調整することによって、セキュリティデバイスの導入ポイントを連続して調整する。代替に、導入デバイスは、位置合わせにラベルを適用するためにラベル業界で使用されるような、ロータリーダイカット及び転写デバイスであってもよい。
【0044】
本発明の第二態様において、方法は、抄造する繊維状紙匹中の1つ以上の「ソフトエッジ付き」貫通孔の形成、そしてその後の貫通孔(複数可)上へのセキュリティデバイスの表面適用のために提供される。この第二態様において、この方法は、製紙中に1つ以上の「ソフトエッジ付き」貫通孔を、抄造する繊維状紙匹中に形成することと、繊維状紙匹が十分に圧密化される(均一に、または不均一に)と、1つ以上の「ソフトエッジ付き」貫通孔上に、抄造する繊維状紙匹中に、またはこの紙匹上に、セキュリティデバイスを導入することとを備える。
【0045】
本発明の第二態様が貫通孔(複数可)上に位置しているセキュリティデバイスを含むように記述されているが、セキュリティデバイス及び貫通孔(複数可)は、他の方式で位置を合わされる、またはまったく位置を合わされない場合がある。例えば、セキュリティデバイス及び貫通孔(複数可)は、繊維状紙匹上で/中で貫通孔(複数可)に並んで位置しているセキュリティデバイスとして位置を合わされることができる。
【0046】
本発明の方法の1つの実施形態において、さらに、この方法は、繊維を繊維状シート材のサブ領域中でさらに圧密化することを備える。繊維をサブ領域中でさらに圧密化するために、表面に適用されたセキュリティデバイスを十分に圧密化された繊維状紙匹中にプレスする。これらの繊維は、サブ領域の体積が減少するが、この領域(貫通孔(複数可)を囲む)中の繊維の量が移動せず、少なくともいかなる有意な量も移動しないように、この領域中で緻密化する。上述されるように、この領域中の繊維が移動しないという実態は、繊維がこの領域中でさらに圧密化されるときに、貫通孔(複数可)が閉塞する、または遮断されるようになる可能性を排除するか、極めて減じる。
【0047】
抄造する繊維状紙匹が「十分に圧密化される」ようになる前に、貫通孔(複数可)を製紙の湿紙匹段階中に製作する。換言すれば、繊維状紙匹は、完全に抄造された湿紙匹状態にない。その結果、繊維状紙匹は、繊維状紙匹の98重量%を上回る水及び/または水分含量を有する。この貫通開口部の製作を可能にするために、この領域中でのシート形成を防ぐ、少なくとも1つの不透水性要素を抄紙機のスクリーンに提供しなければならない。製紙用スクリーンは、長網抄紙機の連続して動くフォーミングワイヤ、またはシリンダモールド抄紙機のシリンダであることができる。
【0048】
貫通孔は、いずれかの適切なサイズ及び形状または外郭を採用することができる。例えば、貫通孔は、円形、楕円形、星形、平行四辺形(例えば、正方形、長方形)または不等辺四辺形などであることができる。例示的な実施形態において、孔部は、その上に配置されるセキュリティデバイスよりも狭い/小さい、約1ミリメートル(mm)である少なくとも1つの交差寸法を有する。交差寸法は、セキュリティデバイスの少なくとも一部分を横切る孔部上の2点間の線を指す。そのため、孔部が5mmの直径である場合に、デバイスは、少なくとも約6mmの最小寸法を有さなければならない。孔部が不規則(例えば、星形)である場合、デバイスの最も狭いエッジは、孔部の最も広いエッジから約1mm離れていなければならない。貫通孔(複数可)の形状または外郭は、セキュリティデバイスの、及び/またはこのセキュリティデバイスによって表示される、または投影される画像の形状または外郭と一致する、またはこれと対応することができる。
【0049】
貫通孔(複数可)を形成し、繊維状紙匹を十分に圧密化した後に、セキュリティデバイスを貫通孔(複数可)上に適用する。上述されるように、好ましい実施形態において、例えば、繊維状紙匹が十分に圧密化された、または完全に形成された湿紙匹(すなわち、繊維状紙匹の総重量に基づき、繊維状紙匹の98重量%未満の、好ましくは繊維状紙匹の約60重量%から98重量%未満の、またはさらに好ましくは繊維状紙匹の約60重量%から約95重量%の、または繊維状紙匹の約60重量%から約90重量%の水分または水レベルを有する)を成すときに抄紙機のクーチロールまたは同様の器具に、またはこの近くなどに、製紙工程のウェットステージの間に、セキュリティデバイスを抄造する繊維状紙匹中に、またはこの紙匹上に適用する。
【0050】
表面に適用されたセキュリティデバイスは、貫通孔(複数可)と同じ、または異なる形状であることができ、貫通孔(複数可)よりもさらに大きい、またはわずかにのみ大きいサイズに形成されることができる。上述されるように、セキュリティデバイスは、ストライプ、バンド、スレッド、リボンまたはパッチの非限定的な形態を取ることができ、貫通孔は、円形、楕円形、星形、平行四辺形(例えば、正方形、長方形)または不等辺四辺形、または同様の形であることができる。1つの例示的な実施形態において、表面に適用されたセキュリティデバイスは、繊維状紙匹から作られる繊維状シート材の全長または全幅のすべて、または部分に沿って延在する、約5から約20mm(好ましくは約8から約12mm)に及ぶ幅を有する細長いセキュリティスレッドである。別の例示的な実施形態において、貫通孔は、5から15mm(好ましくは約7から約10mm)の間に及ぶ最大直径を含む円形形状を有し、表面に適用されたセキュリティデバイスは、相補的な、または対照的な形状を有し、孔部よりも少なくとも2mm大きい幅及び長さを有するパッチである。
【0051】
本発明の別の態様において、繊維状シート材を提供する。本明細書に記述されるような繊維状シート材は、セキュリティデバイスがそこに導入された後の繊維状紙匹のさらなる加工処理に起因する。このさらなる加工処理は、セキュリティデバイスを繊維状紙匹中にプレスする前に、またはプレスした後に適用される乾燥ステップを任意選択で含む。繊維状紙匹中へのセキュリティデバイスのプレス加工は、繊維状バルク領域及び繊維状サブ領域を含む繊維状シート材を製作する。
【0052】
第一態様において、結果として得られる繊維状シート材は、対向面、及び対向面の1つに凹部を含み、この凹部中に配置される表面に適用されたセキュリティデバイスと、凹部の下に配置される繊維状サブ領域と、セキュリティデバイス(凹部中に配置される)及びサブ領域に接して配置される繊維状バルク領域と、セキュリティデバイスと繊維状シート材の少なくとも1つ表面との間に界面とを含む。第二態様において、結果として得られる繊維状シート材は、凹部から繊維状シート材の対向面まで延在する、1つ以上の「ソフトエッジ付き」貫通孔を含む。本明細書に使用される場合、セキュリティデバイスに接しているバルク領域への参照により、断面図においてバルク領域がx軸沿いにセキュリティデバイスに隣接する三次元領域であることを示す。本明細書に使用される場合、セキュリティデバイスの下にあるサブ領域への参照により、断面図においてサブ領域は少なくともセキュリティデバイスの部分が覆うy軸沿いの三次元領域であることを示す。このサブ領域はバルク領域の厚さを下回る厚さを有し、セキュリティデバイスが適用された表面はセキュリティデバイスの厚さの80%を下回る、または上述されるような指定された範囲、及び黙示された部分範囲にある、厚さの差を有する。
【0053】
1つの実施形態において、サブ領域中の繊維は、サブ領域中の繊維の量が少なくとも直接隣接するバルク領域中の繊維に実質的に等しいようにさらに圧密化される。1つの他の実施形態において、サブ領域中の繊維量は、バルク領域中の繊維量に実質的に等しい。本明細書に使用される場合、用語「実質的に等しい」は、バルク領域及びサブ領域中の繊維量への参照として、各領域中の繊維量が、繊維の1平方メートルあたりのグラム(gsm)によって特徴付けられるように、他方の量の80%から100%、好ましくは90%から100%内にあることを意味する。好ましい実施形態において、サブ領域中の繊維量は、バルク領域、特に直接隣接するバルク領域の80%から約100%に及ぶ量に等しい。
【0054】
本明細書に言及されるように、さまざまな厚さは、適切なセキュリティデバイスに起因する場合がある。その結果、さまざまな厚さの差も企図されている。繊維状シート材の1つの実施形態において、セキュリティデバイスは、約10から約75ミクロンに及ぶ厚さを有する。厚さの差は、約-10から約30ミクロン、好ましくは0から約25ミクロン、好ましくは0から約15umに及ぶ。
【0055】
本発明の第一及び第二態様の両方の1つの実施形態において、繊維状シート材は、(1)改善された耐久性、(2)許容可能なインキ付着性、(3)高い横方向(CD)引張強度、または(4)減少した裏側透き通しのうちの少なくとも1つを提供する。本明細書に使用される場合、改善された耐久性は、(a)繊維状紙匹が十分に圧密化されていないときに製作されるこれらのようなシート材と比較するときに界面において損傷が最小である、もしくは減少すること、または(b)ほとんどヒンジ作用がないことのうちの少なくとも1つによって特徴付けられる。これらの作用は、書類の流通の影響をシミュレートする既知の業界技術によって定量化される、または適格とされることができる。例えば、紙幣の流通は、耐久性試験によってシミュレートされることができる。このような適切な耐久性試験のうちの1は、「流通シミュレーション」試験(CST)である。これは、紙幣がその流通ライフサイクルを通じて受ける機械的かつ光学的な劣化と近似するように設計される摩耗及び引裂試験である。この試験は、7.5グラムの重さを各有するゴム製グロメットを、紙幣の4隅に取り付けた後、この重み付き紙幣を、30分の固定期間(一(1)サイクル)に、60回毎分(RPM)に較正される速度でロックタンブラーに置くことによって実行される。重み付き紙幣が受けるタンブリング作用は、機械的かつ光学的劣化を引き起こす。次いで、液体及び個体の汚れ剤(例えば、大豆油及び粘土)の制御された量をロックタンブラーに加え、紙幣がそのライフサイクル中に一般的に接するようになる油及び汚れの影響をシミュレートする。機械的劣化(例えば、穴、裂け目、切れ目、ヒンジ、分離した部分及び破れた平でないエッジ、引張強度の損失、耐折性、耐引裂き性、及び耐穿孔性の形態での表面及びエッジ損傷)と、光学的劣化(例えば、印刷インキ色特性における劣化)と、汚れとについてシミュレートされた劣化の各ラウンド前に、そして後に、紙幣を試験する。界面におけるヒンジ作用及び引裂きは、この耐久性試験に特に適している機械的劣化の例である。
【0056】
許容可能なインキ付着性についての試験は、当業者に知られている。例えば、インキセットオフは、複数の繊維状シート材または書類の積み重ね形成において、1つのシートから別のシートへ転写されるインキ量であり、当業者に知られている方法によって定量的に測定されることができる。同様に、引張強度及び裏側透き通しは、当業者に知られている方法によって定量化されることができる。例えば、透き通しは、既知の光反射率または透過率試験によって定量化されることができる。例えば、INSTRON(登録商標)張力試験機、または引張試験機、及び下記の本明細書の表2に示されるようなものを使用するCD引張強度試験において、本発明に従って抄造された紙は、完全に抄造された繊維状紙匹への従来のシリンダによるセキュリティデバイスの適用と比較したときに、CD引張強度における増加を示し、試験された特性が約90%から約100%に及ぶ増加した値を有した。
【0057】
言及されているように、繊維状シート材は、セキュリティデバイスの下に繊維状サブ領域、ならびにセキュリティデバイス及びサブ領域に接して繊維状バルク領域を備える。繊維状紙匹が十分に圧密化されたときにセキュリティデバイスを導入したため、シート材中のサブ領域に対応する繊維状紙匹の領域中の繊維は、特定された不利な点をもたらす量で移動しなかった。したがって、繊維状サブ領域中の繊維量は、少なくとも直接隣接するバルク領域中の繊維量に実質的に等しい。本明細書に使用される場合、用語「直接隣接するバルク領域」は、サブ領域及びセキュリティデバイスの凹状部分に当接するバルク領域中の三次元領域を指す。この直接隣接するバルク領域は、凹状部分及びサブ領域から、サブ領域のx軸の長さに等しい断面x軸における一定距離へ、半径方向に延在する。直接隣接するバルク領域とサブ領域との間の体積差を考慮して、サブ領域中の繊維密度は、直接隣接するバルク領域中の繊維密度よりも高い。直接隣接するバルク領域及びサブ領域中の繊維量は、実質的に等しいため、これらの2つの領域の体積における差があるとすれば、サブ領域中の密度が直接隣接するバルク領域中の密度よりも高い。1つの例示的な実施形態において、バルク領域中の繊維量は、88.55gsmから90.15gsmに及び、サブ領域中の繊維量は、87.26gsmから90.69gsmに及ぶ。本明細書に使用される場合、「密度」は、体積中の平均繊維量を指す。
【0058】
本発明の第二態様において、繊維状シート材は、対向面、1つ以上の「ソフトエッジ付き」貫通孔、及びこれら1つ以上の貫通孔上に凹部を含み、この凹部中に配置される表面に適用されたセキュリティデバイスと、貫通孔(複数可)を示す凹部の下に配置される繊維状サブ領域と、セキュリティデバイス(凹部中に配置される)及びサブ領域に接して配置される繊維状バルク領域と、セキュリティデバイスと繊維状シート材の繊維状サブ領域及びバルク領域との間の界面とを備える。繊維状サブ領域は、貫通孔(複数可)の外周、及びセキュリティデバイスの外側境界(複数可)によって画定される領域沿いに延在する。
【0059】
本明細書に言及されているように、本発明に適しているセキュリティデバイスは、複数ある。しかしながら、1つの実施形態において、繊維状シート材は、円筒形及び/または非円筒形集束素子のアレイ、及び集束素子と光学的に相互作用し、少なくとも1つの合成画像を生成する画像アイコンのアレイを含むセキュリティデバイスを備える。好ましい実施形態において、集束素子は、排他的に、シリンドリカルレンズまたは非シリンドリカルレンズ(例えば、マイクロレンズ)のいずれか一方である。しかしながら、レンズのアレイが両方の配合をさまざまな比率で含むことが本明細書において企図される。
【0060】
本明細書に言及されているように、セキュリティデバイスは、ストライプか、パッチか、他の形状か、幾何学的形状の形態にあることができる。1つの実施形態において、セキュリティデバイスは、シート材中の少なくとも1つの他の特徴と位置を合わせるシート材中に存在する。適切な他の特徴は、本明細書に記載されている。
【0061】
別の態様において、本発明は、繊維状シート材を含む書類である。さまざまな書類は、本発明によって企図される。例えば、適切な書類は、紙幣、債券、小切手、トラベラーズチェック、身分証明書、抽選券、パスポート、郵便切手、株券、ならびに文房具、及び美的に使用されるラベルとアイテムなどの非セキュリティ書類を含むが、これらに限定されない。複数のセキュリティデバイスは、繊維状紙匹中に導入されることができ、その結果、複数のセキュリティデバイスは、繊維状シート材及びいずれかの結果として得られる書類に適用されることが見いだされることができる。代替に、1つの実施形態において、書類は、少なくとも1つの表面に適用されたセキュリティデバイス、及び少なくとも1つの他のセキュリティデバイス、例えば、埋め込まれた、または部分的に埋め込まれたセキュリティデバイスまたはセキュリティ機構などを含む。表面に適用されたセキュリティデバイスは、書類の他の特徴、例えば、他のセキュリティデバイス、またはセキュリティもしくは装飾的機構などと位置を合わせることができる。
【0062】
本発明における使用に適している繊維状シート材は、紙または紙のようなシート材である。これらのシート材は、単層または多層のシート材であり、合成もしくは天然繊維、または両方の混合物を含む繊維タイプの範囲から作られることができる。例えば、これらのシート材は、マニラアサ、綿、リネン、木材パルプ、及びそれらの配合物から作製されることができる。当業者に周知されるように、綿、及び綿/リネン、または綿/合成繊維配合物は、紙幣に好ましく、木材パルプは、非紙幣機密書類に一般に使用される。
【0063】
上述されるように、本発明による使用のために企図されるセキュリティデバイスは、ストライプ、バンド、スレッド、リボン、またはパッチ(例えば、マイクロレンズベースの、ホログラフィック及び/または色ずれセキュリティスレッド)を含むが、これらに限定されない、複数の異なる形態を取ることができる。
【0064】
請求されている本発明のさらなる理解は、例示的な実施形態を表す図面の以下の説明によって支援されるであろう。
【0065】
従来の技術は、
図1及び
図2に示される。一般に、
図1に示されるように、セキュリティデバイス(11)を製紙のウェットステージ中に導入し、デバイス(11)を繊維状シート材または書類(10)中に埋め込む。この方法を使用してセキュリティデバイスを表面に適用するときに、結果として得られる繊維状シート材は、低い流通耐久性、不十分なCD引張強度、及び高い裏側透き通しを受ける。本明細書の他の箇所に言及されているように、これは、セキュリティデバイス(11)を抄造する繊維状紙匹に導入するときのサブ領域(12)からの繊維(15)の移動が部分的に原因であることがわかった。示されるように、ヒンジ領域(14)中の繊維量は、有意に減少する。これは、セキュリティデバイスと基材(18)または書類(10)との間の界面(17)に弱い相互作用をもたらす。これは、界面のエッジ(17a)において特に明らかである。
【0066】
不利な点は、
図2に示される従来の実施形態においてもわかる。
図2において、セキュリティデバイス(21)は、製紙のドライステージ中に、または紙が完全に圧密化されているときの製紙後に導入される。ここで、サブ領域(22)中の繊維(25)は、著しく完全に圧密化され、セキュリティデバイス(21)を基材(28)中にプレスすることができない。結果として、厚さの差は、大きい。大きい厚さの差は、シート材または書類(20)への不十分なインキ塗布と関連付けられている。結果として、セキュリティデバイスをドライステージ中に追加する実施形態について、セキュリティデバイスは、適切な厚さの差を有するために非常に薄くなければならない。
【0067】
これらの不利な点のうちの少なくとも1つは、本発明によって対処されている。
図3は、本発明の1つの実施形態を示す。ここで、
図1及び
図2中のものと異なり、セキュリティデバイス(31)は、セキュリティデバイスを繊維状シート材(30)の基材(38)中にプレスするときに繊維(35)の実質的な量がサブ領域(32)から移動しないように、ウェットステージ中で繊維状紙匹が十分に圧密化されているときに導入される。むしろ、繊維(35)は、セキュリティデバイス(31)の真下の、ヒンジ領域(34)中で、さらに圧密化される、または緻密化される。これは、界面(37)において、そして特に界面のエッジ(37a)において、強い繊維相互作用をもたらす。さらに、セキュリティデバイス(31)をウェットステージ中に導入することから、そのセキュリティデバイスを基材(38)中にプレスし、小さい厚さの差を与えることができる。
【0068】
さまざまな方法及び技術を使用して、セキュリティデバイス(41)を繊維状紙匹(49)に導入することができる。
図4に示される、好ましい実施形態において、セキュリティデバイス(41)は、連続した紙匹の形態で与えられ、ウェットライン(42)の直後で、クーチロール(44)の前に、そしてセキュリティデバイスを繊維状紙匹(49)中にセットするのに役立つバキュームボックス(45a、45b)間に、長網抄紙機(40)上の抄造する繊維状紙匹(49)に連続して適用される。
【0069】
図5及び
図6は、複数の表面に適用されたセキュリティデバイス(52a、52b、53、63a、63b)を含む、発明の主題の繊維状シート材または結果として得られる書類(50、60)を示す。これらのデバイス(52a、52b、53、63a、63b)は、異なるサイズ及び形状のパッチ(53、63a、63b)及びストライプ(52a、52b)の形態でここに提示されている。セキュリティデバイス(52a、52b、53、63a、63b)の配置の位置に関してそれほど限定されないが、本発明の1つの実施形態において、セキュリティデバイス(例えば、53、63a、63b)は、それが繊維状紙匹、繊維状シート材または結果として得られる書類(60)中の少なくとも1つの他の機構(例えば、透かし(61))と位置を合わせるように、断裁され、または打抜き加工され、そして製紙中に繊維状紙匹(55)に導入デバイス(図示せず)によって適用される。
図6は、パッチ(63a、63b)として適用される複数のセキュリティデバイスが透かし(61)との位置合わせに適用される実施形態を示す。第一パッチ(63a)は、透かし(61)との短手方向の位置合わせに適用され、第二パッチ(63b)は、透かし(61)との長手方向の位置合わせに適用される。パッチ(63a、63b)中の少なくとも1つの特徴(示されない)が透かし(61)と、または繊維状紙匹、繊維状シート材もしくは結果として得られる書類(60)中の他の特徴と位置を合わせるように、セキュリティデバイス(63a、63b)が透かし(61)とアライメントを取ることも企図される。書類(50、60)は、平行四辺形の側面としてここで描かれるが、他の角度に関して他の形状にも描かれることができる、エッジ(59、69)を含む。セキュリティデバイス(52a、52b、53、63a、63b)は、それが書類(50、60)のエッジ(59、69)を越えて延伸しないように、繊維状紙匹、繊維状シート材または書類に適用される。好ましい実施形態において、セキュリティデバイスは、それが接触せずにエッジから離れて位置しているように、表面上に配置される。
【実施例0070】
比較例1:繊維状紙匹が十分に圧密化されていないときの表面に適用されたセキュリティデバイスのシングルサイクル耐久性試験
第一比較例において、繊維状シート材は、繊維状紙匹の水及び/または水分含量が98%を上回るときの製紙工程中に、セキュリティデバイスを繊維状紙匹に導入する、従来のウェットステージ工程に従って製造される。繊維移動の結果として、ヒンジ領域(74)中の、またサブ領域中の繊維を移動させると、これらの領域においてセキュリティデバイス(71)、及び繊維状シート材(70)の繊維状基材(78)の減少した相互作用をもたらす。流通シミュレーション試験をシングルサイクル(30分)通した後の、この工程に従って形成される繊維状シート材(70)を
図7aに示す。このシングルサイクルの結果として、繊維状シート材(70)は、ヒンジ領域(74)中に示されるようなヒンジ作用の発生によって少なくとも定義される通り、不十分な耐久性を示した。セキュリティデバイス(71)は繊維状シート材(70)の基材(78)から界面のエッジ(77a)沿いのポイントで剥離する。
【0071】
さらに、表面に適用されたセキュリティデバイスは、裏側の透き通しを示した。五(5)人(P1、P2、P3、P4、P5)の専門家の一団は、裏側の透き通しの程度を1から5までで評価するように頼まれ、5は、最も高い透き通しを有し、1は、最も低い透き通しを有する。専門家P1及びP4は、裏側透き通しを4と評価し、専門家P2、P3及びP5は、裏側透き通しを5と評価した。
図7bは、裏側透き通しを示す、繊維状シート材(70)を示す。これは、この問題に対処するために、ある種の裏側カモフラージュコーティングを必要とする。
【0072】
INSTRON(登録商標)張力試験機、モデル5965を使用して、繊維状シート材の横方向(CD)引張強度も測定した。紙サンプルを125mm幅×15mm高さの寸法に断裁し、紙糸は、サンプルの中心を通り垂直方向に伸びる。次いで、サンプルは、Instron(モデル5965)の引張試験機のグリップ中に置かれ、これらのグリップは、1セットで、グリップ間に40mmの間隔をあけ、紙糸は、この間隙の中の中心にある。次いで、サンプルは、サンプルが破壊されるまで、38mm/分の速度で伸長される。この工程は、5回繰り返され、5個の値の平均は、報告された試験結果である。これらの結果は、CD引張強度が5.4から6.3kgに及んだことを示した。
【0073】
発明例1:繊維状紙匹が十分に圧密化されるときの表面に適用されたセキュリティデバイスのシングルサイクル耐久性試験
第一発明例において、繊維状シート材(80)は、本明細書に開示される本発明に従い製造され、繊維状紙匹の含水量が98%未満であるときの製紙工程中に、セキュリティデバイス(81)を繊維状紙匹に導入する。ヒンジ領域からの減少した繊維移動、及びサブ領域において増加した繊維圧密化の結果として、繊維状シート材(80)の基材(88)とセキュリティデバイス(81)の十分な相互作用がある。流通シミュレーション試験をシングルサイクル通した後の、このプロセスに従い形成される繊維状シート材(80)を
図8a中に示す。明らかであるように、繊維状シート材(80)は、比較例1において製造したものと比較して、改善された耐久性を有する。ここで、繊維状シート材(80)は、ヒンジ作用を示さず、またセキュリティデバイス(81)の界面のエッジ(87a)、及び繊維状シート材(80)の基材(88)沿いの損傷または分離を示さない。繊維状シート材(80)は、無傷のままであり、改善された耐久性を示す。
【0074】
さらに、表面に適用されたセキュリティデバイス(81)は、比較例1と比べてやや少ない裏側透き通しを示した。五(5)人(P1、P2、P3、P4、P5)の専門家の一団は、裏側透き通しの程度を1から5まで評価するように頼まれ、5は、最も高い透き通しを有し、1は、最も低い透き通しを有する。専門家P2は、裏側透き通しを1と評価し、専門家P1、P3、P4及びP5は、裏側透き通しを2と評価した。
図8bは、裏側透き通しを示す、繊維状シート材を描く。代替に、裏側透き通しは、緯糸のグレースケール密度の測定によって特徴付けられた。紙サンプルは、Epson V750の完全なフラットベッドスキャナ上でスキャンされ、IT8基準ターゲットを使用して較正された。この紙は、サンプルの背後に黒色の背景を有する反射光中のグレースケール画像として、600dpiでスキャンされた。スキャンによってキャプチャすると、選択された領域の密度プロファイルを生成した。この機能によって、我々は、紙糸にわたる領域を選択し、そこでソフトウェアは、この紙糸が選択された領域の中心を通り垂直方向に伸びながら、この特定の試験について、選択された領域中のすべての画素についてのグレースケール値をキャプチャし、このソフトウェアは、領域内の垂直方向の画素を平均し、水平方向の画素毎に垂直方向の平均データポイントを報告する(例えば、領域が20画素の高さ×200画素の幅である場合、次いで各水平方向の位置に、対応する垂直方向の画素値は平均され、200データポイントの出力をもたらす)。次いで、結果として得られるデータをグラフ中にプロットし、サンプリングされた領域内のグレースケール値にいずれかの注目すべき変位があるかどうかを示す。密度測定の結果を表1に提供する。発明例の結果は、上側の線によって提供され、比較例の結果は、下側の線によって提供され、測定デバイスがセキュリティデバイスの対向側を横切る場合の繊維密度測定における実質的な低下を示す。より低い値は、高い裏側透き通しを示す。示されるように、本発明の方法(<90%の水及び/または水分)に関して、繊維状シート材にまたがる密度の値は、比較的に一定のままであるが、比較例(>98%の水及び/または水分)について、密度の値は、認識できる実質的に低下した値を取る。比較例(>98%の水)についての緯糸の平均グレースケール密度は、214であり、発明例(<90%の水)についての緯糸の平均グレースケール密度は、226である。
【0075】
また、繊維状シート材(80)の横方向(CD)引張強度は、INSTRON(登録商標)張力試験機、モデル5965を使用して測定された。上記と同じ工程をここで繰り返した。これらの結果は、CD引張強度が比較例1に示されたものよりも優れていたことを示した。比較例(>98%の水)の結果は、表2中の一番目の棒として描かれ、発明例(<90%の水)の結果は、表2中の二番目の棒として描かれる。
【表1】
【表2】
【0076】
比較例2:繊維状紙匹が十分に圧密化されていないときの表面に適用されたセキュリティデバイスの3サイクル耐久性試験
第二比較例において、繊維状シート材(90)は、従来のウェットステージ工程に従い製造され、繊維状紙匹の含水量が98%よりも多いときの製紙工程中に、セキュリティデバイスを繊維状紙匹に導入する。繊維の移動の結果として、ヒンジ領域中の、またサブ領域中の繊維は、これらの領域においてセキュリティデバイス(91)と繊維状シート材(90)の基材(98)との低下した相互作用をもたらすセキュリティデバイス(91)の導入中に移動する。流通シミュレーション試験を3サイクル通した後、この工程に従い形成される繊維状シート材(90)を
図9aに示す。これらの3サイクルの結果として、繊維状シート材(90)は、界面のエッジ(97a)沿いのシート材中での裂け目の発達によって少なくとも定義される通り、不十分な耐久性を示した。繊維状シート材(90)は、界面のエッジ(97a)に沿って2片に引き裂かれている。
【0077】
さらに、表面に適用されたセキュリティデバイス(91)は、裏側透き通しを示した。五(5)人(P1、P2、P3、P4、P5)の専門家の一団は、裏側透き通しの程度を1から5まで評価するように頼まれ、5は、最も高い透き通しを有し、1は、最も低い透き通しを有する。専門家P1及びP5は、裏側透き通しを5と評価し、専門家P2、P3及びP4は、裏側透き通しを4と評価した。
図9bは、裂け目及び裏側透き通しを示す、繊維状シート材(90)を描く。これは、この問題に対処するために、ある種の裏側カモフラージュコーティングを必要とする。
【0078】
発明例2:繊維状紙匹が十分に圧密化されているときの表面に適用されたセキュリティデバイスの3サイクル耐久性試験
第二の発明例において、繊維状シート材(100)は、本明細書に開示される本発明に従い製造され、繊維状紙匹の含水量が98%を下回るときの製紙工程中に、セキュリティデバイス(101)を繊維状紙匹に導入する。ヒンジ領域からの減少した繊維移動、及びサブ領域中の増加した繊維圧密化の結果として、比較例1におけるものと比べて、繊維状シート材(100)の基材(108)とセキュリティデバイスの十分な相互作用がある。流通シミュレーション試験を3サイクル通した後の、この工程に従い形成される繊維状シート材(100)を
図10aに示す。明らかであるように、繊維状シート材(100)は、比較例2において製造したものと比べて、改善された耐久性を有する。ここで、繊維状シート材(100)は、セキュリティデバイス(101)の界面のエッジ(107a)、及び繊維状シート材(100)の基材(108)沿いに、ほとんどか全くヒンジ作用または損傷がないことを示す。繊維状シート材(100)は、無傷のままであり、改善された耐久性を示す。
【0079】
さらに、表面に適用されたセキュリティデバイス(101)は、比較例2と比べて裏側透き通しが少ないことを示した。五(5)人(P1、P2、P3、P4、P5)の専門家の一団は、裏側透き通しの程度を1から5まで評価するように頼まれ、5は、最も高い透き通しを有し、1は、最も低い透き通しを有する。専門家P1は、裏側透き通しを2と評価し、専門家P2、P4及びP5は、裏側透き通しを1と評価し、専門家P3は、裏側透き通しを3と評価した。
図10bは、改善された裏側透き通しを示す、繊維状シート材を示す
【0080】
図11は、本発明の第二態様の1つの実施形態を示す。ここで、繊維状シート材を参照番号110によってマーク付けする。「ソフトエッジ付き」貫通孔(111)は、繊維状シート材(110)が十分に圧密化されるようになる前の製紙のウェットステージの間に、繊維状シート材(110)中に形成される。次いで、セキュリティデバイスを繊維状シート材(110)の基材(115)中にプレスするときに繊維(113)の実質的な量がサブ領域(114)から移動しないように、セキュリティデバイス(112)は、繊維状シート材が十分に圧密化されているときに、貫通孔(111)上に導入される。むしろ、繊維(113)は、貫通孔(111)の輪郭を描くサブ領域(114)中の、そしてヒンジ領域(116)中のセキュリティデバイス(112)の真下で、さらに圧密化される、または緻密化される。これは、界面(117)において、そして特に界面のエッジ(117a)において強い繊維間相互作用をもたらす。さらに、ウェットステージ中にセキュリティデバイス(112)を導入することから、そのセキュリティデバイスを基材(115)中にプレスし、低い厚さの差を与えることができる。さらに、繊維がこの状態において移動しないことから、サブ領域(114)中でのさらなる圧密化により、貫通孔(111)が閉塞する、または遮断されるようになる(排除しない場合)可能性を大幅に低減させる。
【0081】
上述されるように、さまざまな方法及び技術を使用して、貫通孔(111)及びセキュリティデバイス(112)を繊維状シート材(110)に導入することができる。特に、抄紙機のスクリーンは、長網抄紙機の連続して動くフォーミングワイヤ、またはシリンダモールド抄紙機のシリンダであることができる。
図12、
図12A、
図12Bに示される、好ましい実施形態において、少なくとも1つの不透水性要素(120)を提供される長網抄紙機(119)上のパターン化されたフォーミングワイヤ(118)を使用して、この領域中でのシート形成を防いで、貫通孔(111)を形成する。紙料がヘッドボックスからフォーミングワイヤ上に出る前(
図12A)の、そして出た後(
図12B)の、パターン化されたフォーミングワイヤ(118)を示す。
図12Bに示されるように、不透水性要素(120)の領域中でシート形成を防ぐ。貫通孔(111)が形成され、繊維状シート材(110)が十分に圧密化されるようになった後に、セキュリティデバイス(112)は、連続した紙匹の形態で与えられ、ウェットライン(122)の直後で、クーチロール(123)の前に、そしてセキュリティデバイスを繊維状シート材(110)中にセットするのに役立つバキュームボックス(124a、124b)間で、形成する繊維状シート材(110)にセキュリティデバイスを連続して適用する。
【0082】
本発明のさまざまな実施形態が上述されているが、それらが限定ではなく、例としてのみ提示されていることを理解されたい。したがって、本発明の幅及び範囲は、例示的な実施形態のいずれかによって限定されるべきではない。